10月11日のニュース
マレーシアが予選を1位突破し来年のAFC U17アジアカップ出場権を獲得
MFLはマレーシアカップ出場権剥奪のマラッカの選手の特例移籍案を拒否

マレーシアが予選を1位突破し来年のAFC U17アジアカップ出場権を獲得

見事なお手並み、お見逸れ致しました。

インドネシアのボゴールで開催されていたAFC U17アジアカップ予選B組は10月9日に最終第5節が行われ、ここまで2勝1分で2位につけていたマレーシアU16代表と、3勝全勝で首位のインドネシアU16代表が激突し、5-1で勝利したマレーシアがB組1位として本戦出場権を獲得しています。

前節第4節にアラブ首長国連邦UAEを相手にロスタイムのゴールで3-2と勝利し、代わってグループ2位となったマレーシアは、B組1位突破をかけて、開催国インドネシアと対戦しました。ここまでの3試合を3勝0敗、得点19失点2のインドネシアに対し、マレーシアのオスメラ・オマロ監督は、前節のUAE戦と全く同じ先発XIを起用しました。

試合は開始からからインドネシアに攻め込まれる展開となりましたが、マレーシアのGKファリシュ・ファルハンが再三、好セーブを見せてピンチを防ぐと、徐々にペースを掴み始めたマレーシアはザイヌルハキミ・ザイン(AMD U16)が今大会2点目となるゴールを17分に決めてマレーシアが先制すると、20分にはアラミ・ワフィ(AMD U16)がパレスチナ戦、UAE戦に続く今大会3点目となるゴールを決めてリードを広げます。さらに23分にはアンジャスミルザ・サフルディン(AMD U16)がやはり今大会3点目となるゴールを、また26分にはアフィク・ダニシュ(AMD U16)が今大会初ゴールを決め、試合開始から26分で4-0と大量リードします。さらに38分には相手パスを奪い、ドリブルでペナルティエリアに持ち込んだアンジャスミルザ・サフルディンが倒されてPKを得ると、アラミ・ワフィがこのPKを決めてさらにリードを広げます。

試合はこのまま進み、後半のロスタイムに失点し完封は逃したものの、マレーシアが5-1でインドネシアを破り、3勝1分で勝点10となりB組1位として、来年のU17アジアカップ本戦出場を決めています。マレーシアは開催国枠で出場した2018年大会に以来、通算6回目の出場、予選を突破しての出場は、アリフ・ハイカル(スランゴール)、アリフ・サフワン(UITM)、イズリーン・イズワンディ(KLシティ)らを擁した2016年以来となります。

また第5節のもう一つの試合は、パレスチナがグアムを4-0で破り、今回の予選で初勝利を挙げ、通算成績を1勝3敗で4位に、またグアムは通算成績を0勝1分3敗として5位で今回の予選を終えています。

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マレーシアは、1-1で引き分けたグアム戦以外の3試合はほぼ同じメンバーが先発し、グアム戦で主力を休ませるオスメラ・オマロ監督の戦略が功を奏しました。
 この日の試合でも、14-0と大勝したグアム戦と8名が同じ先発メンバーだったインドネシアに対し、マレーシアは1-1と引き分けたグアム戦の先発メンバーとは9名が異なっています。4試合をほぼ同じメンバーで戦ったインドネシアと、グアム戦を利用して選手を上手くローテーションしたマレーシアの選手マネージメントの差が出たと言っても良いでしょう。
 もちろんグアム戦で引き分けたときには、UAE戦、インドネシア戦が残っている中で、まさかこのまま予選敗退…という不安もよぎり、UAE戦もロスタイムのゴールで薄氷を履む勝利だったところから、この日のインドネシア戦も大丈夫か?という感じでしたが、蓋を開けてみれば堂々のグループ1位突破となりました。

AFC U17アジアカップ予選B組第5節
2022年10月9日@パカンサリスタジアム(インドネシア、ボゴール)
インドネシア 1-5 マレーシア
⚽️インドネシア:アルハン・カカ・プトラ(90+3分)
⚽️マレーシア:ザイヌルハキミ・ザイン(17分)、アラミ・ワフィ2(20分、38分)、アンジャスミルザ・サハルディン(23分)、アフィク・ダニシュ(38分)
🟨インドネシア(2):ナビル・アシュラ、アンドレ・パンゲストゥ
🟨マレーシア(1):アフィク・ダニシュ

AFC U17アジアカップB組 最終順位表

チーム勝点
1MYS4310134910
2IDN4301207139
3UAE420217966
4PSE4103710-33
5GUM4013128-271
UAE-アラブ首長国連邦、IDN-インドネシア、MYS-マレーシア、PSE-パレスチナ、GUM-グアム

AFC U17アジアカップは、昨日までに本戦出場する16チームが決定しています。東南アジアからはB組1位のマレーシアの他、ベトナム、タイ、ラオスの4チームが出場します。本戦が新型コロナ感染拡大のために中止になってしまった2020年大会ではインドネシアが東南アジア唯一の本戦出場、2018年はインドネシア、タイ、ベトナム(マレーシアは開催国として出場)、2016年はマレーシア、ベトナム、タイ、2014年はマレーシア(タイは開催国として出場)が出場と、過去5大会では東南アジアから4チームが予選を突破したことはありません。2023年大会は当初の開催国だったカタールが開催を辞退したため、未だ開催国は決まっていませんが、東南アジアの4チームには是非、その存在感を見せつけて欲しいです。

MFLはマレーシアカップ出場権剥奪のマラッカの選手の特例移籍案を拒否

給料未払い問題が未解決のため、今季のマレーシアカップ出場権剥奪処分を受けたMリーグ1部スーパーリーグのマラッカ・ユナイテッド(以下マラッカ)の選手について、マレーシアプロサッカー選手会PFAMは、Mリーグを運営するMFLに対して、マラッカ所属の選手がマレーシアカップに出場する他のクラブへの期限付き移籍を特例として認めるよう提案していましたが、MFLはこれを拒否したと、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

あと2節を残す今季のスーパーリーグですが、このリーグ戦終了後の10月25日開幕するのが、国内最大のカップ戦、マレーシアカップです。昨年開催100周年を迎えたこのマレーシアカップは、スーパーリーグ1位から11位までの11チームと、2部プレミアリーグの上位5チームの合計16チームが対戦しますが、もともとカップ戦から始まったマレーシアサッカーの原点とも言える大会です。

この伝統ある大会に出場できなくなったマラッカは、収入面でも痛手を受け、その結果、選手への未払い給料問題がさらに長引く可能性他があることから、マラッカ所属のの選手の救済策として、PFAMはMFLに対して特例としてマレーシアカップ期間中の期限付き移籍を認めるよう提案していました。、

MFLは、現在が移籍が可能となるトランスファーウィンドウ期間でないこと、また1クラブのために特例としてトランスファーウィンドウを開くことはできないことを理由に挙げて、この提案は受け入れられないとしています。さらにマラッカは現在も継続中のスーパーリーグでプレーしており、中断期間でない時期のトランスファーウィンドウは開くことはできないこと、マレーシアカップの規定では大会のための追加登録はできないことなどを、MFLのスチュアート・ラムリンガムCEOは説明しています。

マラッカは、現在のオーナーであるケンチーム社のCEOで、マラッカの運営会社のCEOでもあるジャスティン・リム氏が、未払い給料問題を解決した後にクラブの全株式を売却するつもりであることも明らかにしており、この株式の売却が実現しなければ、マラッカは来季のスーパーリーグから撤退する最悪の可能性もあります。

7月22日のニュース
シンガポールのレジェンド、ファンディ・アフマドがスリ・パハンのテクニカルディレクターに就任
協会が各代表の下半期の予定を発表-A代表は9月に中東や南米の代表チームと対戦も

シンガポールのレジェンド、ファンディ・アフマドがスリ・パハンのテクニカルディレクターに就任

今季ここまで2勝2分7敗と低迷するMリーグ1部スーパーリーグのスリ・パハンはクラブ公式Facebookで、クリストファー・ギャメル監督の退団とドラー・サレー チームマネージャー(TM)の監督代行就任、そして元シンガポール代表監督のファンディ・アフマド氏のテクニカルディレクター(TD)就任を発表しています。ドラーTDは昨季のトマス・ドゥーリー監督解任後の監督代行に続き、2年連続での監督代行就任となりました。

昨季は4勝6分12敗、降格権とは勝点2差の10位という際どいところでスーパーリーグ残留を果たしたスリ・パハンは、昨季、U21チームの監督を務めたギャメル氏を監督に据え、若手の起用とチーム立て直しを期待しました。しかし直近の5試合でも引き分けを挟んで4連敗中と復調の兆しも見えないことから、ギャメル監督更迭の噂はここ数ヶ月間、ソーシャルメディア上で囁かれていました。

そんな中、ファンディ氏が先月6月にシンガポールサッカー協会FASのエリートユースプログラムのトップを辞任したことから、すわギャメル監督の後任にファンディ氏か、と色めき立ちましたが、蓋を開けてみれば、まさかのテクニカルディレクター就任となりました。

シンガポールのレジェンドのファンディ氏は、1992年シーズンには当時のパハンFA、現在のスリ・パハンでリーグ優勝とマレーシアカップの2冠を達成した他、指導者として2012年から2013年にはJDTで、そして2018年にシンガポール代表で、そして今年5月の東南アジア競技大会通称シーゲームズではシンガポールU23代表の監督なども務めています。

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ボラセパマレーシア的には、ファンディ選手はやはりクアラルンプール(当時はKLシティホール)でプレーしていた印象が強いです。同じシンガポール出身のK・カナン、マレク・アワブとともに1987年からマレーシアカップ3連覇を果たしたKLの黄金時代を築いた立役者でした。

協会が各代表の下半期の予定を発表-A代表は9月に中東や南米の代表チームと対戦も

マレーシアサッカー協会FAMは今年5度目となる理事会を開催し、各代表チームの今後の活動について話し合われた内容を公開しています。

U16/17代表は、今月7月31日から8月12日までインドネシアで開催される東南アジアサッカー連盟AFF U16選手権に向けて、今月7月18日から29日まで代表候補合宿を開催、さらに10月の1日から9日まで同じインドネシアでAFF U16選手権予選が開催されることから、9月にも2度の合宿を予定していることが発表されています。

AFF U19選手権優勝が記憶に新しいU19/20代表は、9月14日から18日の日程で開催されるAFC U19選手権予選(モンゴル)に参加するため、今月末から8月にかけてと、9月の2回の合宿を予定しているということです。

U23代表は東南アジア競技大会通称シーゲームズは準決勝敗退、、AFC U23選手権はグループステージで敗退し、その責任をとる形でブラッド・マロニー監督が契約解除となり、現在は監督が不在です。また当初出場予定だった今年9月のアジア競技大会(中国)が来年に延期となり、当面は試合がないことから、新監督決定が最優先課題となりそうです。

AFCアジアカップ出場を決めた代表の次の目標は12月21日開幕のAFF選手権三菱電機カップ2022となりますが、その前には9月22日から25日の日程でタイ南部で開催されるという4ヶ国対抗に出場することが発表されています。中東と南米の代表チームも参加するということの大会は、格上チームとの対戦が少ないマレーシアにとってAFF選手権の前哨戦となりそうです。

6月11日のニュース
U17代表首脳陣と代表候補合宿参加者が発表-MLSクラブのアカデミー所属の選手も
キム監督がJDTオーナーのイスマイル殿下に職務縮小を再考を求める意見に疑問の声
クダは元タイ代表MFの加入を発表

U17代表首脳陣と代表候補合宿参加者が発表-MLSクラブのアカデミー所属の選手も

マレーシアサッカー協会FAMは東南アジアサッカー連盟AFF U16選手権2022年大会とAFC U17アジアカップ2023年大会予選に出場するU17代表の監督およびコーチを発表しています。AFF U16選手権2022年大会は7月31日から8月13日まで、AFC U17アジアカップ予選は10月1日から9日まで、いずれもインドネシアで開催されます。

FAMとスポーツ青年省傘下の国家スポーツ評議会NSCが共同で運営するエリートアカデミーのモクタル・ダハルアカデミーAMDの前ヘッドコーチを務めたオスメラ・アマロ氏がU17代表の監督に就任したことも併せて発表され、オスメラ監督と6名のコーチからなる首脳陣は、パハン州ガムバンにあるモクタル・ダハリアカデミーで今月13日から26日まで行われる代表候補合宿から指導にあたるということです。

スランゴール州プタリンジャヤにあるFAM本部で行われた発表では、U17代表候補合宿に参加する37名も併せて発表されています。この37名は代表候補合宿を経て最終メンバー23名まで絞り込まれます。

記者会見の席上で、AFF U16選手権は準決勝、AFC U17アジアカップは本戦出場という目標を挙げたオスメラ監督はを挙げていますが、AFF U16選手権ではグループステージC組でオーストラリア、ミャンマー、カンボジアと同じC組に、AFC U17アジアカップ予選では開催国インドネシア、アラブ首長国連邦、パレスチナ、グアムと同じB組に入っており、いずれも厳しい戦いになりそうです。

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今回発表になったU17代表候補は大半がエリートアカデミーのAMD所属、それ以外はJDTのU16所属の選手が数名という構成ですが、その中に所属がアメリカMLSのニューヨーク・レッドブルズとなっているオン・ワイリーという選手がいました。検索してみるとアメリカ生まれでニューヨーク・レッドブルズのU15に所属するミッドフィルダーのようです。名前からすると父親がマレーシア人なのかも知れませんが、この年代でも帰化選手を積極的に獲得する動きが出ているのかもしれません。

キム監督がJDTオーナーのイスマイル殿下に職務縮小を再考を求める意見に疑問の声

JDTオーナーでジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿下がクラブの日常業務から手を引き、自身の職務を縮小することを発表したことは、昨日のこのブログでも取り上げましたが、これについてマレーシア代表のキム・パンゴン監督が再考を求めるよう発言しています。

マレーシアサッカー協会FAMの公式Facebookに掲載されたコメントの中でキム監督は「イスマイル殿下には決断内容を再考することを求めたい。もし殿下が国内サッカーから手を引くのであれば、マレーシアのサッカーにとって大きな損失となる。イスマイル殿下は止まるところを知らぬ愛情で、(JDTに関わってから)10年もかからない内にクラブを遥かな高みに押し上げた。現時点ではマラーシアのサッカー界はイスマイル殿下が必要である。」と述べています。

マレーシアにやってくる以前から、イスマイル殿下がマレーシアのサッカーに及ぼした大きな影響については十分理解していたとするキム監督は「イスマイル殿下のおかげで、JDTはアジア中で賞賛を得ただけでなく、Mリーグの水準を引き上げた。」と、この投稿はキム監督の口からイスマイル殿下への礼賛で溢れています。

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イスマイル殿下の功績は素晴らしく、現在のJDTは殿下がいなければ存在していないのも事実です。しかし代表チームの監督が、言わば1クラブのオーナーについてこれほど言及するしていることについては、多くのサッカーファンが違和感を感じているようです。これがFAMの公式Facebookに投稿されると、「イスマイル殿下の決断を尊重すべき」といったものから、「アジアカップ予選中の代表監督は試合以外のことに気を散らすべきではない。」と、トルクメニスタンに勝って勢いづいているチームに水を差すものだと言った指摘もあります。また「キム監督の個人的意見がなぜFAMの公式Facebookに投稿されるのか」、さらには「FAMがキム監督の口を借りて発言しているのではないか。」といったものから、「キム監督は正論を述べている。」と擁護するものまで、FAMの投稿には2000件を超えるコメントがついています。

現在開催中のアジアカップ2023年大会最終第3次予選に出場しているマレーシア代表のメンバー23名中13名がJDTの選手であり、もし今後JDTが弱体化すればキム監督自身の首筋が寒くなりかねないことからの発言かと邪推もできますが、実際には記者会見で尋ねられたことに対する回答をFAMがそれらしくまとめたもののようであり、キム監督自身が積極的に意見を述べたわけではない、というのがことの真相のようです。

クダは元タイ代表MFの加入を発表

Mリーグ1部スーパーリーグのクダは、クラブ公式Facebookで元タイ代表MFサンワット・デーミットがタイ1部バンコク・ユナイテッドから今季末までの期限付き移籍での加入を発表しています。

32歳のサンワット選手は、アキレス腱を痛めて今季の残り試合の出場が絶望となっているFWデニス・ブシェニングに代わって、アセアン東南アジア枠で登録されます。

サンワット選手は2018年の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップで大会のベストXIに選ばれた他、シンガポール1部のタンピネス・ローヴァーズなどでもプレー経験があり、昨季はラーチャブリーFCへ期限付き移籍し、リーグ戦とカップ戦合わせて18試合に先発しています。またサンワット選手は2018年のスズキカップでは大会XIに選ばれています。

なおサンワット選手はすでにチームに合流しており、昨日6月10日に行われたMリーグ2部ペラとの練習試合にも出場しています。

2月19日のニュース
アセアンU23選手権-マレーシアはラオスに逆転負け
キム新代表監督はマレーシア人コーチ候補全員と面談を希望

アセアンU23選手権-マレーシアはラオスに逆転負け

カンボジアのプノンペンで開催中の東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権に出場中のマレーシアU23代表は、昨日2月18日のラオスU23代表と対戦し1-2で敗れています。

2月11日のカンボジア入り以来、やっと大会初戦を迎えたマレーシアは、試合開始からチャンスをたびたび作るものの要所でパスが繋がらず、繋がってもそれがシュートまで持ち込めない展開が続きます。それでも前半終了間際にMFのA・セルヴァン(ヌグリスンビラン)がコーナーキックからのこぼれ球を押し込んでゴール!マレーシアは前半を1-0で折り返しました。後半に入ってもマレーシアは同様の展開で追加点を奪えない中、今度はラオスが同点に追いつきます。先のスズキカップ2020でも全試合に先発したMFブウンファチャン・ブウンコンがペナルティーエリアの外でボールを受けると、2人のマレーシアディフェンダーを振り切って55分に同点ゴールを決めます。さらに78分には左サイドで得たフリーキックにDFフェダヴァン・サンウィライがピタリと頭で合わせてラオスが2-1とリード奪い、試合はそのまま終了しました。

マレーシアが入るグループステージB組は、インドネシアとミャンマーが新型コロナで陽性者が出たことなどを理由に大会出場を辞退しており、マレーシアとラオスの2カ国となっていました。これによりグループステージはこの2カ国の直接対決1試合のみが予定されていましたが、試合数減を憂慮したマレーシアサッカー協会FAMとブラッド・マロニーU23代表監督はラオス側に2試合制への変更を申し入れました。これが承諾されたことから、昨日2月18日と2月21日の2試合が行われることになっており、マレーシアはノックアウトステージ出場をかけて、来週月曜日にラオスと再戦します。

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マレーシア国内メディアはこの結果について、「格下に敗れる」「ショッキングな敗戦」といった見出しをつけていますが、上でも書いたようにラオスの同点ゴールを決めたブウンファチャン・ブウンコンはスズキカップ2020に出場に加え、既にA代表で10試合以上出場しています。一方、攻撃陣を中心に主力選手を招集せず、チームの底上げを図ったマレーシアU23代表にはA代表経験者は1人もおらず、今大会のラオスを格下扱いすること自体が間違っているようにも思えます。

ちなみにマレーシアの年代別代表が最後にラオスに敗れたのは2016年のAFF U16選手権まで遡らなければなりません。今回と同じカンボジアのプノンペンで開かれた大会で、マレーシアはラオスに0-2で敗れています。今から6年前のU16代表は、現在はU23代表に当たりますが、この6年前の試合でもラオスU16代表でプレーしていたブウンファチャン・ブウンコンはゴールを決めており、歴史は繰り返した、といったところでしょうか。

(以下のダイジェスト映像はGoal.comの公式チャンネルより)

キム新代表監督はマレーシア人コーチ候補全員と面談を希望

2月17日に就任後初の記者会見を開いたマレーシア代表のキム・パンゴン新監督は、自身が引き連れたきた4名のコーチに加えて、マレーシア人コーチをコーチングスタッフに加えることを希望しています。これを受けたマレーシアサッカー協会FAMは人選を行い、最終候補が2名に絞られていることはこのブログでも取り上げましたが、キム監督は最終候補2名に加えて他の候補者5名とも面談を希望していると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。キム新監督は、マレーシアのサッカーやMリーグの選手についての情報源としてコーチングスタッフに加わるこのマレーシア人コーチについて、信頼関係を築き上げるために自分に対して忠誠を尽くす誠実な人物であることを望んでいると話しています。

FAMが最終候補とした2名が誰なのかは明らかになっていませんが、7名の候補者は、イスマイル・イブラヒム(前JDTコーチ)、フィルダウス・タン・アジジ(背ウランゴールU19コーチ)、ワン・ムスタファ・ワン・イスマイル(前代表コーチ)、ワン・ロハイミ・ワン・イスマイル(PDRM監督)、E・エラヴァラサン(サラワクユナイテッド監督)、ザイナル・アビディン・ハサン(前マラッカユナイテッド監督)そしてアズライ・コー・アブドラ(元クダ監督)であることが明らかになています。また複数のメディアでは最終候補の1人はサラワクユナイテッドのE・エラヴァラサン監督で決定しているといった報道も出ていますが、正式な発表はまだありません。

12月1日のニュース:タイ1部第13節-ドミニク・タンは途中出場もスマレとノーシャルルはベンチ入りせず、ポルトガル1部第8節-サファウィはベンチ入りも出場なし、国立エリートアカデミー第2期卒業生の主力はJDTとスランゴールFCへ、PJシティFCとサバFCはいずれもマレーシア人新監督就任

タイ1部第13節ドミニク・タンは途中出場もスマレとノーシャルルはベンチ入りせず
 11月27日から30日にかけてタイ1部リーグ第13節が行われました。11月27日に行われたナコーンラーチャシーマーマツダFC対BGパトゥム・ユナイテッドFCは首位のBGパトゥム・ユナイテッドが2-0で勝利しましたが、マレーシア代表で12月いっぱいでの退団が決まっているノーシャルル・イドラン・タラハはベンチ入りしませんでした。
 また11月30日に行われたトゥルー・バンコク・ユナイテッドFC対ポリステロFCの試合は1-1の引き分けでした。マレーシア代表のドミニク・タンは74分から出場しましたが、同じ代表のモハマドゥ・スマレはやはりベンチ入りしませんでした。(その後、スマレ選手は練習中に負ったケガのため、チームの遠征に帯同しなかったことをポリス・テロFCのラングサン監督が明らかにしています。なお、ケガの具合については深刻なものではないとのことです。)

ポルトガル1部第8節-サファウィはベンチ入りも出場なし
 11月29日(現地時間)にポルトガル1部第8節の数試合が行われ、マレーシア代表のサファウィ・ラシドが所属するポルティモネンセSCがCDナシオナルを1-0で破っています。なお、サファウィ選手は3試合連続でベンチ入りしましたが、この試合も出場機会はなく、ポルトガルリーグデビューは果たせませんでした。
 この試合まで1勝1分5敗のポルティモネンセSCと、同じく2勝4分1敗のCDナシオナルの対戦となったこの試合は、ブラジル出身FWファブリシオのゴールでポルティモネンセSCが10月17日の第4節以来となる今季2勝目を挙げています。

国立エリートアカデミー第2期卒業生の主力はJDTとスランゴールFCへ
 マレーシア政府青年スポーツ省とFAMが共同で運営する国家サッカー選手養成プログラムNFDPの中核となるモクタル・ダハリ・アカデミーAMDは国立のエリートアカデミーですが、その第2期生となる17歳の選手40名がこの度卒業となりました。
 その40名中、Mリーグ1部7連覇中のジョホール・ダルル・タジムJDTとやはり1部のスランゴールFCが合わせて12名の選手と契約したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 なおこの記事によると、この両クラブはAMDの主力選手12名に卒業生全員に2年から3年の複数年契約をオファーしたということです。
 主力選手の一人MFジアド・アル・バシールや、現在はベルギー1部リーグのKVコルトレイクに所属するルクマン・ハキム・シャムスディンと2016年のAFC U16選手権ではコンビを組んだFWムハマド・ナジムディン・アクマル・カマル・アクマルはJDTと、またDFムハマド・ファイズ・アメル・ルニザルはスランゴルFCとそれぞれ契約しています。なおこの12名の大半は今年2月に鹿児島で開催されたJENESYS2019青少年サッカー交流大会にマレーシアU17代表として出場したということです。
 なお、昨年AMDを卒業した第1期生34名はJDTが6名、スランゴールFCが28名と契約しています。
 以下はJDTとスランゴールFCが契約したAMD第2期生の氏名です。

氏名ポジション契約先
Muhammad Haziq Ridhwan Mohd RosliDFJDT
Muhammad Naqiu Aiman Abdul Hadi DFJDT
Muhammad Najmudin Akmal Kamal AkmalFWJDT
Ziad El Basheer NorhishamMFJDT
Mohammad Marwan Abdul RahmanDFJDT
Muhammad Syukur Fariz JanuriMFJDT
Muhammad Faiz Amer RunnizarDFスランゴール
Syahmi Adib Haikal Mohd ShukriGKスランゴール
Abdul Afiq Hilman Abdul HalimFWスランゴール
Muhammad Haiqal Haqeemi HairiDFスランゴール
Muhammad Khairi Suffian KhaineyusriFWスランゴール
Syed Zaris Irfan Syed Putra Hasdiana Faizal DFスランゴール

PJシティFCとサバFCはいずれもマレーシア人新監督就任
 今季Mリーグ1部で7位に終わったPJシティFCと同10位のサバFC(来季より、今季はサバFA)はそれぞれ新監督の就任を発表しています。
 PJシティFCは、今季アシスタントコーチを務めたマニアム・パチャイアパン氏が監督に昇格します。マレーシアU16、U19、U21代表の監督経験の他、2017年シーズンはスランゴールFA(現スランゴールFC)でも監督を務めたマニアム監督率いるPJシティFCは、来季は外国籍選手なし、全員マレーシア選手という布陣でMリーグ1部に臨むということです。
 これについてマニアム監督は、若い選手により多くの機会を与えて、特に外国籍選手に頼ることの多いストライカーとセンターバックで実力を発揮して欲しいと話し、今季のメンバーの6割が残るチームにはトレンガヌFCから獲得した元代表のダレン・ロックとU21のプレジデントカップチームのメンバーもトップチームに呼ぶことになるだろうとも述べています。
 またサバFC(来季から、今季はサバFA)は、サバ州に隣接するサラワク州出身のルーカス・カラン氏の新監督就任を発表しています。
 今季1部に昇格したサバFAは、昨季監督を務めたジュリアス・アティン氏がMリーグ1部での監督に必要なAFCプロライセンスを保持していなかったことから、インドネシア出身のクルニアワン・ドゥイ・ユリアン監督が就任しましたが、今季終了後に契約が更新され図、事実上の解任となっていました。
 サバFCのヴァードン・バハンダCEOは、AFCプロライセンスを持ち、スポーツ科学の専門家でもあることから、ルーカス氏が複数の候補者から選ばれたと話しています。
 

7月6日のニュース:元U16監督の外国クラブへの若手派遣は意味なしの意見に元U23監督が反論、スランゴール州FAがサッカーコンサルとの契約を発表、ルクマンの渡欧が決定

元U16監督-外国クラブへの若手派遣は意味なし
 かつてU 16代表の監督を務めた他、マレーシア政府青年スポーツ省とマレーシアサッカー協会が共同して運営する国家サッカー選手養成プログラムNFDP内のエリートアカデミーであるモクタル・ダハリアカデミーAMDのテクニカルダイレクターも務めたリム・ティオンキム氏は、若手選手の外国クラブへの「派遣」は時間の無駄であり、教育を受ける機会を奪うものだと、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版とのインタビューで話しています。
 リム氏は、コーチの外国クラブへの派遣には、コーチの育成という観点から意味があるので賛成する一方で、若手選手の派遣には反対であると述べています。
 「マレーシアは日本や韓国と違い、外国のクラブのスカウト網には含まれていない。もし、スカウトされたという話があれば、それはうそだ。また、高校や大学に在学中の選手を外国のクラブへ派遣するとなった場合、その間の教育はどうなるのだろうか。教育は重要であり、もしその選手がプロになれなかった場合には、その後の人生では何を頼りに生きていくのかまで検討されているようには思えない。」
 自身は1980年代後半にドイツ1部リーグのヘルタ・ベルリンでもプレーし、その後はバイエルン・ミュンヘンのユースチームのコーチを務めたリム氏は、若手選手が外国クラブの目に留まる機会を作るためには国際大会に出場させることが近道であると述べています。
 「当初は10年計画として2002年に始まったNFPDだが、その後の2013年にNFPDの計画責任者として参加した私が直近の目標としていたのは2019年のU17 W杯への出場だった。具体的にはこの大会に出場し、各国から集まる監督、コーチ、そして世界各地のクラブのスカウトの目に留まる機会を作り、その後はNFDPの卒業生が海外のクラブでプレーするという目標を立てていた。」
 「海外、特にヨーロッパのクラブにマレーシアの選手が評価されるのは難しい。現在のNFPDも卒業生に海外のクラブでプレーさせるという目的は変わっていないが、実現は難しくなっている。と言うのもFAMは日本に選手を送り込んでおり、これは単なるマーケティングが目的である。」と話すリム氏は、自分をドイツから招聘した当時の青年スポーツ相のカイリ・ジャマルディン現科学技術およびイノベーション相とともに現在のNFDPの状況を憂いており、「若い選手には技術習得や性格形成などの機会を十分に与えるべきだが、現在のNFDPは直ちに結果を求めようとしている。」と批判的な意見を述べています。
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 2013年にバイエルン・ミュンヘンからNFDPへ三顧の礼をもって迎え入れられたリム氏は、2016年にはAMDのテクニカルダイレクターに、さらに2019年のU17W杯出場を目指したU16監督にも就任しました。しかしU17W杯のアジア予選を兼ねたアジアサッカー連盟AFC U16選手権2018年大会がマレーシアで開催されながら、グループステージ最下位で敗退した結果、リム氏はU16監督を解任され、2019年以降はNFDPとの契約が更新されず、事実上の解任となりました。
 ただしこの「解任」は、この年の選挙で1953年のイギリスからの独立後初の政権交代が起こった結果、旧与党が推奨するもの全てを否定するような「魔女狩り」にも似た風潮が生まれ、そのとばっちりを受けたような面もある解任だったと言う印象です。

元U23監督-海外クラブへの派遣は時間の無駄ではない
 上で取り上げたリム氏の意見に対して、元U23代表監督で、現在はマレーシアサッカー協会FAMのユース育成部門の責任者を務めるオン・キムスイ氏は、高いレベルの海外クラブに派遣することは、若い選手が成長するための道を切り開くものであると反論しています。
 「FAMは海外のクラブへ派遣した選手の状況を把握しており、派遣先のクラブもきちんとした組織を選んでいる。ヨーロッパのクラブは運営しているアカデミーが複数のレベルに分かれており、派遣する若手選手はアカデミーで練習中の選手ではなく、派遣する選手と同じ年代のトップチームと一緒に練習させることを目標にしている。」
 「我々は派遣先のクラブを選別する必要があるが、どのクラブであっても選手を派遣して直ちに我々の求めることが実現するわけではない。そのためにはクラブとの関係を構築して、長期間にわたって派遣を続ける必要があり、結果が出るまでには時間がかかることも承知している。」と話すオン氏は、FAMは現在、これまでの日本サッカー協会JFAとの関係に加えて、韓国サッカー協会KFAやヨーロッパの複数のクラブとの練習参加などの派遣プログラムを計画中ということです。
 またNFDPの状況にも常に目を配っていると話すオン氏は、第1期卒業生のサッカー人生が不安定な状況であるという指摘に対しては、全員がMリーグクラブに所属しており、10月に開催予定のAFC U19選手権に出場するチームの核となっていることまた、さらに昨年はこの卒業生たちが東南アジアサッカー連盟AFF U19選手権やAFC U19選手権に出場したことを指摘し、放置されているという指摘は当たらないとしています。

スランゴール州FAがサッカーコンサルとの契約を発表
 Mリーグ1部スランゴールFCを運営するスランゴール州サッカー協会FASは公式サイト上で、サッカー専門のコンサルティング会社であるハーカス・コンサルタンシー・グループHCG社と契約したことを発表しています。
 HCG社はバレンシア(スペイン)、ベンフィカ(ポルトガル)、AZアルクマール(オランダ)、レンジャーズ(スコットランド)といったヨーロッパのクラブの他、サイゴンFC(ベトナム)やタンピネス・ローバーズ(シンガポール)などとも契約しているということです。
 持続可能な運営、そしてスランゴールFCの完全民営化を目指すFASは、スカウティングやトレーニング、大会の開催やスタジアムの商業価値増大などサッカー関係の様々なサポートを行うHCG社と契約することで、ビジネスとしてサッカークラブ運営だけでなく、かつての黄金期を取り戻せるようクラブとしてのレベルアップを目指すということです。

ルクマンの渡欧が決定
 同じFASの公式サイトでは、Mリーグ2部、スランゴールFCのBチームであるスランゴール2に所属するルクマン・ハキム・シャムスディンのKVコルトレイクへの移籍を発表しています。
 マレーシア人富豪のヴィンセント・タン氏がオーナーを務めるベルギー1部リーグのKVコルトレイクはルクマン選手と5年契約を結んでいますが、新型コロナウィルスノエ教により、ルクマン選手はクラブに合流できないまま、ベルギーリーグは中断後にリーグ日程を短縮して2019/2020年シーズンを終えてしまったことから、練習環境を求めてスランゴール2と契約していました。
 上記でも取り上げたNFDPの第1期卒業生の一人でもあるルクマン選手は、チームはグループステージ敗退となりながら、2018年のAFC U16選手権では唐山翔自(現ガンバ大阪)らと得点王を分け合い、今年10月に開催されるAFC U19選手権予選でもやはり試合出場は2試合ながら得点王となるなど、マレーシアサッカーの将来を担う期待の星ですが、この度、FASとKVコルトレイクの間で移籍が合意されたということです。
 FASが育てたわけではないルクマン選手の移籍について、かなりの量の説明付きで報じているのは個人的には少々違和感がありますが、18歳のルクマン選手を暖かく送り出そうというFASの気持ちは伝わってくる移籍告知です。

10月23日のニュース:FAMは華人社会のサッカー界へのさらなる参加を期待、U22監督はルクマンの早急な昇格に慎重姿勢

FAMは華人社会のサッカー界へのさらなる参加を期待
 マレーシアサッカー協会のダト・ハミディン・モハマド・アミン会長は、華人社会からのより積極的な国内サッカーへの参加を期待していると述べています。
 マレーシアの通信社ベルナマの報道によれば、FAMはマレーシア華人サッカー協会MCFAと協力して、選手、コーチ、審判、フロントなど様々な分野に華人のより積極的な参加を促すためのプログラムを検討中と言うことです。
 多民族国家のマレーシアは、大雑把に人種構成を見てみるとマレー系と先住民族を含めたブミプトラと呼ばれるグループが全国民の約69%を占め、中華系マレーシア人(華人)が約23%、インド系マレーシア人が約7%、その他が1%となっていますが、例えば先日のFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選ベトナム戦に招集された23名のうち、帰化選手を除いた19名の顔ぶれを見ると、華人はドミニク・タン(タイリーグ2部、ポリス・テロFC)1名のみ、インド系に至っては0名でした。
 しかし1970年代から80年代にかけては多くの中華系やインド系マレーシア人がプレーしていたようです。ちなみにマレーシアが初めてサッカーで出場した1972年のオリンピックチーム19名は11名がマレー系、6名が中華系、2名がインド系でした。
 FAMのハミディン会長によると、中華系の選手が少ない理由としては、中華系家庭の理解不足があるとしています。子どもがサッカーを続けていくことで、たとえプロになれない場合でも、選手の代理人やスポーツ関連産業や企業への就職につながっていくと言った進路もあることなどが理解されれば、中華系の子たちの草の根レベルからの参加も増えることが期待できるともハミディン会長は述べています。
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 子どもの教育は自分の老後のための投資、と考える中華系マレーシア人の親は私の周りでも見かけますが、そう言った方々から見れば、プロサッカー選手はやはり不安定な仕事に見えるのでしょう。そう言った方々からの理解が得られない限り、中華系のサッカー選手数が増えることはなさそうです。
 その一方で、非常に興味深いのは、現在のフル代表のタン・チェンホー監督、U22代表のオン・キムスイ監督、フットサル代表のチュウ・チュンヨン監督はいずれも中華系マレーシア人だということ。さらにU18代表の監督はオーストラリア人ですが、u16代表のマニアム・パチャイアパン監督、女子フル代表のジェイコブ・ジョセフ監督はいずれもインド系マレーシア人で、ブミプトラ系のマレーシア人指導者が代表レベルにはいないと言うことも書き添えておきます。

U22監督はルクマンの早急な昇格に慎重姿勢
 12月にフィリピンで開催される東南アジア競技大会、通称シーゲームズに参加するU22代表のオン・キムスイ監督は、17歳のルクマン・ハキム・シャムスディンのフル代表への招集を求める多くのサッカーファンに対して、まずはU19代表チームで経験を積み、さらにはU22代表で、それからフル代表へと言う手順を踏んで昇格していくことへの理解を求めています。
 まずは召集されているU19代表で来月11月2日から10日までカンボジアのプノンペンで開催されるAFC U19選手権予選でパフォーマンスを見た上で判断するべきと、ベルナマの取材に答えています。さらにU16代表とU22代表はAFC選手権予選で敗退していることから、U19代表のAFC選手権本大会出場が重要であること、また現在のU19代表の選手たちは、2024年パリオリンピック予選に出場するU22代表の候補でもあることから、アジアのトップが揃うU19選手権本大会出場を優先するべきなど述べた上で、ルクマン選手が今、この時点でフル代表に参加するのは適切でないとしています。
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 ルクマン選手にこれだけ期待が高まるのは、ワントップのノーシャルル・イドラン・タラハ(パハンFA)を含めた攻撃陣の不調が原因として挙げられますが、その他には先日の対アラブ首長連邦国UAE戦で決勝ゴールを決めたタイ代表の20歳エカニット・パンヤ、そしてこの試合で途中出場した17歳のスファナット・ムエアンタの存在があります。隣国のフル代表でプレーする若手を見て、何故、マレーシアにもそう言った選手が現れないのか、と考えるファンもいるようですが、ルクマン選手は国家サッカー選手養成プログラムNFDPといった、いわば純粋培養で育てられた選手です。その一方でパンヤ選手やムエアンタ選手は既に国内リーグ戦でプレーしているなど、その環境も大きく異なります。
 NFDP1期生であるルクマン選手とその同期34名はここでプログラムから卒業しますが、そのうちの多くの選手がJDT、スランゴールFA、クダFAなどの有力クラブと契約済みと言われていますので、そういった選手たちがMFLでプレーするようになれば、マレーシアにもパンヤ選手やムエアンタ選手のように10代で代表入りする選手が現れるかもしれません。

10月11日のニュース:サバFAは新戦力を求めてトライアウト実施、ルクマンが次世代のトップ60に選ばれる、BBCがマレーシア選手のサクセスストーリーを紹介

サバFAは新戦力を求めてトライアウト実施
 今季2019年にマレーシアフットボールリーグMFL2部プレミアリーグで優勝し、来季2020年はMFL1部スーパーリーグでプレーするサバFAは新戦力を求めてトライアウトを開催しています。
オンラインスポーツサイトのスタジアムアストロが報じる現在開催中のトライアウトにはブラジルとアルゼンチン出身の選手が参加中で、今後はインドネシアや韓国からの選手も参加予定のようです。
 サバ州サッカー協会のピーター・アンソニー会長は、全てのポジションで強化が必要なことから、FW、MF、DFと様々な選手のトライアウトを行うとしています。
 その一方で今季サバFAに在籍する4名の外国籍選手、FWロドルジュブ・パウノヴィッチ(セルビア)、DFパク・タエスー(韓国)、MFアフメット・アタエフ(トルクメニスタン)、FWアギナルド・メンデス・ヴェイガ(アンゴラ)については、今年末に契約が切れるため、近いうちに今後の更新の有無について発表するとしています。

ルクマンが次世代の注目選手60名の一人に選ばれる
 英国の新聞ガーディアンによる「2002年生まれ注目選手60人」2019年版で17歳のFWルクマン・ハキム・シャムスディンがアジア出身の6名の選手として選ばれています。
 2018年にマレーシア開催となったアジアサッカー連盟AFC U16選手権では、チームはグループステージ敗退ながら得点王を分け合ったルクマン選手は、Jリーグのセレッソ大阪なども獲得に動いていたとされますが、今年9月にはマレーシア人のヴィンセント・タン氏がオーナーを務めるベルギー1部リーグに所属するKVコルトレイクと契約し、18歳になるのを待って入団が決定しています。
 マレーシアサッカー協会FAMとマレーシア政府の青年スポーツ省が合同で運営する国家サッカー選手養成プログラムNFDP出身のルクマン選手はこのリストに選ばれた初めてのマレーシア人で、今回、この他のアジアの選手としてはFW西川潤(桐光学園高校)、FWノア・ボティチ(オーストラリア、ドイツ-TSG1899ホッフェンハイム)、FWスファナット・ムエアンタ(タイ、ブリーラム・ユナイテッド)、GKカサノヴァ・ムクリディン(タジキスタン、パルヴォーズ・ボボジョン・ガフロフ)、MFジャスールベク・ジャロリディノフ(ウズベキスタン、FCブニョドコル)がリストに名を連ねています。

BBCがマレーシア選手のサクセスストーリーを紹介
 英国放送協会BBCのニュースポータルでは「一本の電話がセミプロ選手を代表選手に変えた」と題した記事で、今季2019年はマレーシアフットボールリーグMFL2部プレミアリーグのJDT IIでプレーしたFWダレン・ロークを取り上げています。
 ローク選手は3年前までは英国国民保健サービス下の精神科病棟で勤務する一方、英国国内リーグでは最上位であるプレミアリーグから数えて5つ下のディビジョン、実質6部にあたるナショナルリーグ・サウスのイーストボーン・ボロFCでプレーしていました。しかしあるサッカー雑誌に掲載されたローク選手のインタビュー記事を読んだ代理人からかかってきた一本の電話が彼の人生を大きく変えたとしています。
 電話をかけたのは現在、ローク選手の代理人を務めるオーストラリア人のスコット・オルレンショー氏でした。オーストラリア代表としてのプレー経験もあり、またマレーシアリーグのサバFAでも100試合以上に出場したオルレンショー氏は、ローク選手にマレーシアでプレーするつもりはないかどうかを打診したそうです。その後、オルレンショー氏から、父親がマレーシア人(母親は英国人)であることからマレーシアの国籍が取得できること、そしてマレーシア代表でプレーできる可能性があることを告げられたローク選手は、仕事をしながらセミプロとしてプレーしている状況から、サッカーに集中できる環境に移れる機会を逃すべきではないとして、その決断は簡単ではなかったものの、最終的にマレーシア行きを決めたと述べています。
 2016年5月にJDT IIと契約したものの、マレーシアのパスポート取得に手間取り、同年9月にマレーシア人選手としてMFLデビューしたローク選手は、JDT IIでわずか2試合に出場した後の同年10月7日には早速、シンガポール代表との国際親善試合で代表デビュー、また翌年2017年8月22日のシリア戦では代表初ゴールも挙げています。ローク選手は「わずか数ヶ月前はイギリスのセミプロ選手だった自分がマレーシア代表として国際試合に出場するということは素晴らしい経験だったが、マレーシアへ来てからの数ヶ月間でメディアのインタビューをいくつもこなすという、セミプロだった自分にとっては全く初めての経験もした」「シンガポール代表戦では2万人を超える観衆の前でプレーしたが、これも初めてで、英国ではせいぜい500人程度の観客しかいなかった」などと述べています。
 生まれ故郷の英国から離れて暮らすローク選手ですが、サッカーができる限り、JDTでプレーしたいと最後に語っています。
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 今季2019年はJDT IIでも9試合で2ゴールと振るわなかったローク選手ですが、インタビューの中ではJDT愛が溢れています。BBCのインタビューでは、英国人にJDTの凄さを伝えるために、様々な点を挙げていますが、マレーシアのクラブとしては初めてウイイレにも含まれている、と語っている点が良いなと思いました。

9月23日から24日のニュース:U16代表は日本と引き分けもAFC選手権本選出場を逃す、AFC U19選手権予選の候補選手発表、フル代表もWC予選の候補選手25名を発表

U16代表は日本と引き分けも本選出場を逃す
 ラオスの首都ヴィエンチャンで開催されていたアジアサッカー連盟AFC U16選手権予選グループJは、最終日となった9月22日の大会3日目にマレーシアは日本と2-2で引き分け、最終成績を3位としています。
 大会2日目に開催国ラオスに痛い敗戦を喫したマレーシアは、本選出場の可能性を残すためにこの試合に勝つことが必要でした。前半を0-0で折り返した試合は、61分にゴール前のロングボールに飛び出したマレーシアGKズルヒルミ・シャラニとMF楢原慶輝(サガン鳥栖U15)が接触、映像を見ても足が出ているのは明らかでしたが、このプレーで楢原選手は負傷退場、ズルヒルミ選手はレッドカードで一発退場となり、しかも日本にはPKが与えられました。このPKを大迫塁(神村学園中)が決めて日本が先制しましたが、10名となったマレーシアは攻め続け、MFムハマド・ダニエル・エズアンが72分のPKに続いて、82分にはヘディングシュートを決めて2-1と逆転します。そこからやや引き気味となったマレーシアは90分を過ぎたアディショナルタイムに内藤大和(ヴァンフォーレ甲府U15)にフリーでヘディングシュートを決められ追いつかれます。シュートにつながったクロスもDFが競ることなく、上げさせてしまっていたので、10名でプレーする疲労が限界に達していたのかも知れません。
 AFCのマッチレポートはこちら、またゲキサカのマッチレポートはこちらです。
マレーシア2-2日本
ラオス1-0カンボジア
 写真は両チームのスターティングXII。(マレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

以下は予選グループJの最終成績です。1位の日本は本選出場が決定しています。

順位チーム得点失点得失差勝点
1日本210142127
2ラオス20124-26
3マレーシア1119364
4カンボジア003016-160

AFC U19選手権予選の候補選手発表
 マレーシアサッカー協会FAMのホームページでは、10月31日から11月11日にかけてカンボジアの首都プノンペンで開催されるアジアサッカー連盟AFC U19選手権予選に出場するU18代表候補選手32名を発表しています。予選グループGのマレーシアは、開催国カンボジアの他、タイ、ブルネイ、北マリアナ諸島と同組となっています。
 8名の初招集選手を含む、国家サッカー選手養成プログラムNFDPが運営するモクター・ダハリアカデミー在籍の選手と、マレーシアサッカーリーグMFL所属のクラブのユースチームから選抜された選手からなる32名は、オーストラリア人のブラッド・マロニー監督のもと、スランゴール州クラナジャヤにあるFAMのトレーニング施設で今月9月28日から10月30日までの長期合宿に入り、国外での練習試合を経て、そこから最終候補23名が選ばれます。
 U18代表候補合宿参加メンバーはこちらです。

フル代表もWC予選の候補選手25名を発表
 マレーシアサッカー協会FAMのホームページでは、10月10日にベトナムのハノイで行われるFIFAワールドカップアジア二次予選第3戦に向けて、9月30日から始まる代表候補合宿参加メンバー25名を発表しています。
 MFムハマドゥ・スマレのケガからの回復状況が定かではなかったため、過去2試合ではベンチ入り23名プラス1名の計24名を招集しましたが、そこからMFハディン・アズナン(フェルダ・ユナイテッド)が外れ、代わりにDFアイディル・ザフアン・アブドル・ラザク(ジョホール・ダルル・タクジムJDT)とMFアブドル・ハリム・サアリ(スランゴールFA)が招集されています。
 ここまで1勝1敗のマレーシアは、予選の初戦インドネシア戦、そして第2戦となったアラブ首長国連邦UAE戦ともに守備陣に不安が残りましたが、タン・チェンホー監督はそこを修正するためにJDTのセンターバック、アイディル選手を、同じJDTのアダム・ノー・アズリンに代えて起用する可能性があります。また、もう一人のセンターバック、シャルル・サアド(ペラTBG)とは、昨年末に準優勝した東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップでコンビを組んでいることから、戦術的にも問題はなさそうです。
 フル代表は10月5日(土)にスリランカ代表とブキ・ジャリル国立競技場で国際親善試合を行った後、10月10日(金)のアウェイ、ベトナム代表戦に臨みます。また、このメンバーは10月15日(火)に香港で行われる予定の香港代表戦までチームに帯同することになっています。
 今回の招集メンバーの詳細はこちらからどうぞ。(写真は

8月9日から10日のニュース:AFFU15選手権でマレーシアが優勝、クラブライセンス制度導入により問題のあるクラブは排除される(?)、不況と質の低下が観客減の原因、第二のハディ探しをヤクルトがサポート

AFFU15選手権でマレーシアが優勝
 タイのチョンブリで開催されていたアセアンサッカー連盟AFF U15選手権で、マレーシアは決勝でタイを2-1で破り、2013年以来2度目の優勝を飾っています。
 AFFのホームページによると、準決勝でベトナムを3−1で破ったマレーシアは、地元タイに1-0とリードを許して前半を折り返しました。後半に入るとタイ2名、マレーシア1名が退場となる荒れた試合になりましたが、69分にはMFムハマド・イズリン・イブラヒムが同点ゴールを、そして79分にはこの大会で5得点目となる決勝ゴールをMFムハマド・ナビル・カイユームが決めています。
 なお3位決定戦はインドネシアがベトナムをPK戦の末破っています。
決勝
マレーシア2-1タイ
3位決定戦
インドネシア0-0(PK3-2)ベトナム
(写真はマレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

クラブライセンス制度導入により問題のあるクラブは排除される(?)
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版によると、マレーシアサッカー協会FAMのダト・ハミディン・アミン会長は、2021年から完全施行されるクラブライセンス制度によって、橋梁未払いなどの問題を抱えるクラブが一掃されるだろうと語っています。
 マレーシアフットボールリーグMFLに加盟するすべてのクラブチームは2020年末までにクラブライセンスを獲得することが、2021年シーズン参加のための義務となるため、このライセンス申請の過程でFAMが経営状況を精査し、問題のあるクラブに対して厳しく対処できるとしています。
 この発言はプロ選手協会PFAMが12クラブが給料未払い問題を抱え、その総額が640万リンギ(約1億6300万円)であるという発表に対して行われたものですが、これに対してハミディン会長は、PFAMの発表はFAMが国内サッカーを運営する組織として期待外れであるという印象を与えるものであるとし、給料未払い問題を抱えているのはほんのわずかのクラブとしています。その上で、ライセンス制度導入後は健全系のクラブだけが存在することになるだろうとと述べています。
 ここからは私見ですが、MFLの1部と2部を合わせた12クラブのうち、11クラブ(PFAMが指摘したクラブの1つは3部に所属するマレーシア国軍クラブ)が未払い給料を抱えている現状を「ほんのわずかのクラブ」としてしまっている時点で問題の深刻さを果たして理解しているのだろうかという気がしてしまいます。ライセンス発給についてもマレーシア特有の「寛容さ」が発揮されて、厳格な適用がされるかどうかも正直疑問です。

不況と質の低下が観客減の原因
 現在開催中のマレーシアカップ で、リーグチャンピオンのJDTの試合にわずか6000名弱の観客しか集まらなかったことは先日、このブログでも取り上げましたが、この状況についてマレー語紙ウトゥサン・マレーシア電子版が、かつてマレーシアサッカー界で活躍したレジェンドのコメントを掲載しています。
 1980年のモスクワオリンピック出場権を獲得したマレーシア代表(但しマレーシアは、前年1979年12月に起こったソビエト連邦のアフガニスタン侵攻に対し、同じイスラム教国として抗議のためボイコット)でプレーしたDFダト・ジャマル・ナシル・イスマイル氏は、マレーシア国内経済の不況のため、ファンは自分が応援するチームのすべての試合のチケットを購入する金銭的な余裕がなくなっているのではないかと述べています。特に家族そろって観戦するような場合、観戦の際の飲食なども含めると必然的に観戦する試合を選ぶことになっているのではないかと分析しています。代表通算キャップ数165のジャマル氏は、現在はグループステージのマレーシアカップ がベスト16や準々決勝に進む辺りからは観戦者数も増えていくのではないかと述べています。
 その一方でケランタンFA、そしてオーストラリアでもプレーしたオマル・ダリ氏はマレーシアサッカーの質の低下を指摘しています。例えて言えば日本プロ野球界のご意見番張本勲氏のような存在であるオマル氏は、観戦したいと思わない人々に観戦を強制することは無理なので、そういった人々がスタジアムに足を運ぶようになるためには、まずマレーシアサッカーの質を上げる必要があると述べています。

第二のハディ探しをヤクルトがサポート
 マレー語紙コスモ!電子版によると、ヤクルトの現地法人ヤクルトマレーシアの濱田浩志代表取締役社長は、Jリーグのセレッゾ大阪によるアセアンドリームプロジェクトに参加するマレーシアU15代表選手5名の日本行きをサポートし、この中からハディ・ファイヤッドに続くJリーガー誕生を願っていると語っています。
 ハディ・ファイヤッドとは、昨年末にジョホール・ダルル・タクジムJDTからJ2のファジアーノ岡山に移籍したマレーシアU23代表でもプレーする19歳のFWです。
 濱田社長とドリームプロジェクトに参加するラジャ・ハイカル・ラジャ・ザハリ、ダニアル・ハイカル・シャイポル(FAMが国家サッカー選手養成プロジェクトを運営するモクター・ダハリアカデミー出身)、アフィク・ノリザン(マラッカ州スポーツ専門学校)、ファリズディン・アドハム・バッチャ(スランゴール州スポーツ専門学校)、アナス・ナダウィ・シャハルディン(スランゴール州バンダル・バル・バンギ中等学校)の5名は日本到着後、岡山にハディ選手を訪ねたと報じています。