12月1日のニュース
どこでこんなに差がついた?上田綺世とサファウィ・ラシド(アジア大会のハイライト映像あり)

いよいよ今日はグループステージ突破がかかるスペイン戦ですが、このFIFAワールドカップ2022カタール大会に出場中の日本代表の中には、マレーシアでも名前が知られている選手が少なくありません。他の東南アジア諸国同様、マレーシアでも最も人気があるのは英国プレミアリーグEPLということもあり、そこでプレーする冨安健洋選手や三笘薫選手、またかつて在籍した南野拓実選手や吉田麻也選手、浅野拓磨選手らもEPLファンには知られています。

そんな中、今回のワールドカップのコスタリカ戦で先発した上田綺世選手はEPLではプレーしておらず、今季からベルギー1部のサークル・ブルッヘと地味なチームに所属していますが、マレーシアのコアなサッカーファンからは「マレーシアの前に立ちはだかった侍」として記憶されています。

上田選手がU23日本代表のメンバーとしてU23マレーシア代表と対戦したのは、2018年にインドネシアで開催されたアジア競技大会でした。この大会でU23マレーシア代表はグループステージで韓国やバーレーンと同組になりながら、戦前の予想を覆してグループを1位で通過しました。圧巻だったのは、A代表でもプレーするファン・ヒチャンや、当時既にトットナムに在籍していたソン・フンミンを擁する前回2014年の覇者、韓国を2-1で撃破した試合でした。この試合ではサファウィ・ラシド(ジョホール・ダルル・タジムJDT)が2ゴールを決めて活躍しました。そしてベスト16に進出したマレーシアは、グループステージではベトナムに敗れてグループ2位で勝ち上がってきた日本と対戦。ベトナムに敗れていたことで、マレーシアは韓国に続き日本も撃破できるのでは、と期待が高まりました。

今回のW杯カタール大会参加メンバーでは森保一監督を筆頭に、板倉滉、前田大然、そして当時はまだ大学生だった三笘薫などの選手がプレーするU23日本代表がこの対戦では圧倒的な主導権を握る中、U23マレーシア代表は試合終盤まで善戦し、そしてこのまま延長戦かと思われた88分、自陣のペナルティエリア内でマレーシアのドミニク・タン(現サバFC)が上田綺世選手を倒してPKを与えてしまいます。上田選手が自分で蹴ったPKが決まり、このまま日本が1-0で逃げ切り、今大会、ここまで快進撃を続けてきたマレーシアのベスト8進出の夢が潰えました。また日本はこのまま決勝まで勝ち上がったものの、韓国に延長戦で1-2で敗れ、銀メダルに終わっています。

試合終盤にはエース、サファウィ・ラシド(現JDT)のシュートがゴールポストにあたり、シャフィク・アフマド(現JDT)のヘディングシュートが枠を外れるなどチャンスがなかったわけではありませんでしたが、オン・キムスイ監督(当時、現サバFC監督)率いるチームの挑戦は残り数分を持ち堪えられずに終わってしまいました。それでも日本代表相手に冷や汗をかかせるだけのパフォーマンスは示したマレーシア代表でした。ちなみにこの大会では、決勝まで進出した上田綺世選手は大会通算3ゴールだったのに対し、グループステージで敗れたサファウィ・ラシドは、韓国戦の2ゴールを含めて4ゴールを挙げています。

それから4年。上田綺世選手は、クラブレベルではベルギー1部のサークル・ブルッヘへ移籍し、今季17試合全てに先発出場して7ゴールを挙げています。 また、U23代表からA代表へ昇格し、現在開催中のカタールワールドカップに出場し、コスタリカ戦では先発出場を果たしているのはご存知の通りです。その一方で、サファウィ・ラシドは、順調に代表のエースとなることが期待されたものの、所属するJDTでは同じポジションでアリフ・アイマンが台頭してきたこともあり、この2年間は先発機会が激減しています。2018年、2019年と2年続けてリーグMVPとなり、順調にスターへの道を歩んでいたサファウィ選手ですが、2020年にポルティモネンセへ期限付き移籍したものの、トップチームでの出場機会はなく、1年でJDTに戻りましたが、既にアリフ・アイマンがその穴を埋めるどころか、あまり暑活躍をしていたところから、転落が始まりました。今季は試合出場時間が通算631分、先発出場2試合と出場機会が激減し、直近ではクラブ史上初の国内三冠達成となった今季のマレーシアカップ決勝でも先発はおろか、ベンチ外となるなど、歓喜の瞬間に立ち会うことができませんでした。

国外移籍の成功、不成功で2人の間にこんな差がついてしまったのか。

それでも、サファウィ選手の力はキム・パンゴン監督からの評価が高く、多くの選手(噂では11名とも)がケガや家庭の事情などを理由に代表招集を辞退したJDTからはラマダン・サイフラーと共に、今月末に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022出場の代表候補30名に選ばれています。2010年大会以来、優勝から遠ざかっているマレーシアにとっては、出場機会が減っているとは言え、今季4ゴール、6アシストを記録したサファウィ・ラシドの左足からの強烈なシュートは大きな武器です。

三菱電機カップでかつての輝きを見せてJDTの主力に返り咲くのか、それとも出場機会を求めて来季は他のMリーグクラブへ移籍するのか。出場機会が得られれば、実力を示すことができる選手なので、まずは東南アジアの各国代表相手に大暴れしてもらいたいです。

10月12日のニュース
AFCカップ決勝進出のKLシティを支えるガリフオッコはMリーグでプレーした12番目のWC出場選手となるか
U17アジアカップ出場権獲得のU16代表監督は中東や日本への遠征を希望

AFCカップ決勝進出のKLシティを支えるガリフオッコはMリーグでプレーした12番目のWC出場選手となるか

10月22日にKLフットボールスタジアムで開催される今季AFCカップ決勝に出場するMリーグ1部スーパーリーグのKLシティは、2度のPK戦勝利を含む5試合に勝利して決勝に進出しています。ここまでの8試合で4失点(12得点)の強固な守備陣の中心となっているのがオーストラリア出身のセンターバック、ジャンカルロ・ガリフオッコです。28歳のガリフオッコ選手は187cmの長身センターバックで、今季はKLシティで2シーズン目となりますが、昨季のマレーシアカップ優勝などにも大きく貢献し、KLシティ守備陣のまさに大黒柱です。

そんなガリフオッコ選手については、サッカーファンのSNS上では、KLシティでの活躍によって、来月にカタールで開催されるFIFAワールドカップのオーストラリア代表にガリフオッコ選手が招集されるのでは、と言った話題が上がっています。ガリフオッコ選手はオーストラリアのU17、U20、U23など年代別代表でのプレー経験はあるものの、まだA代表に招集されたことはありません。

英字紙ニューストレイトタイムズは、このガリフオッコ選手のオーストラリア代表選出について、KLシティのボヤン・ホダック監督にインタビューしていますが、ホダック監督は、ガリフオッコ選手の招集は、かつてJリーグの広島でもプレーしたグラハム・アーノルド監督次第としながらも、オーストラリア代表のトップ選手は欧州など東南アジアより厳しい環境でプレーしており、またセンターバックには多くの有力選手がいることから、代表入りは容易ではないと話す一方で、代表でプレーするだけの技量は備え持っていると話し、可能性が全く無いとは言えないとも話しています。

また同じニューストレイトタイムズの記事では、Mリーグでプレーしたワールドカップ出場選手を紹介しています。これまでMリーグではワールドカップ出場経験のある11名の選手がプレーしているということです。

  1. カレル・ストロムシック(GK、チェコスロバキア)
    プレーしたのがチェコスロバキアという国名からして時代を感じますが、1982年のワールドカップスペイン大会ではイングランド戦とフランス戦に出場しています。Mリーグでは1989年から1991年までスランゴールFA(現スランゴールFC)でプレーしています。
    *ボラセパマレーシアJP:この選手はよく覚えています。外国籍選手のGKは当時は、珍しかったですが、当時のMリーグではダントツNo.1のGKでした。ストロムシック選手が在籍した3年間は、リーグ優勝2回、カップ戦優勝1回、準優勝2回と今は見る影もないスランゴールがとてつもなく強かった時の守護神でした。
  2. エミール・ムボウ(MF、カメルーン)
    ロジャー・ミラを筆頭にIndomitable Lions「不屈のライオン」として有名になったカメルーン代表で1990年イタリアと1994年アメリカと2大会で合計6試合に出場しているムボウ選手は、1996年にプルリスFA、1997年にはクアラルンプールFA(現KLシティ)、そして1999年から2001年まではサバFA(現サバFC)でプレーしています。
    *ボラセパマレーシアJP:Mリーグでプレーするニュースを聞いて、そんな輝かしい経歴の選手がマレーシアでプレーするんだ!と驚いた記憶があります。Mリーグでプレーした選手の中ではWC最多試合出場を誇るムボウ選手はサバでのプレーを終えて引退しています。
  3. ステファン・ケシ(DF、ナイジェリア)
    1994年のワールドカップアメリカ大会では1試合出場ながら、グループステージのギリシャ戦に先発フル出場しているケシ選手は、長身のセンターバックとして1998年にプルリスFAでプレーしましたが、シーズン終了とともに引退し、その後はトーゴ代表監督としてチームを2006年ドイツ大会でWC初出場に導いた後、ナイジェリア代表の監督として2014年ブラジル大会に出場しています。
  4. ペリツァ・オグニェノヴィッチ(FW、ユーゴスラビア)
    こちらも既に存在しないユーゴスラビアという国名も時代を感じさせますが、1998年のワールドカップフランス大会ではイラン、ドイツ、アメリカとのグループステージ3試合にいずれも途中出場しましたが、ノックアウトステージのオランダ戦ではベンチ入りしたものの、出場はありませんでした。このオグニェノヴィッチ選手は、現在は解散したMPPJ FCに2006年のシーズン途中に加入しています。豊富な資金力から当時は「マレーシアのチェルシー」と呼ばれたMPPJ FCは、レアル・マドリードやレッドスター・ベルグラードなどでもプレーしたこのオグニェノヴィッチ選手を獲得しましたが、チームは給料未払い問題などが明るみに出て、オグニェノヴィッチ選手も半年でチームを去っています。
  5. ジョエル・エパル(MF、カメルーン)
    2002年ワールドカップ日韓共催大会に出場したカメルーン代表入りしたエパル選手は、試合には出場する機会がありませんでした。MリーグではサラワクFA(現サラワクFC)に2012年に加入し、出場5試合で2ゴールという記録が残っています。
  6. エル=ハッジ・ディウフ(FW、セネガル)
    2001年と2002年の2年連続アフリカ年間最優秀選手を受賞したディウフ選手は、2002年の日韓共催大会でセネガルをベスト8に立役者。その後はリバプール、ボルトン、サンダーランドなどを経て、2015年にサバFAに加入しています。その実績から、早速キャプテンとなったディウフ選手でしたが、当時のMリーグで存在感を増していたJDTのアカデミーを母国セネガルに開設する希望や、無給でJDTでプレーしたいなど、「問題発言」を繰り返し、シーズン途中の7月にはキャプテンを解任されています。
  7. ボシュコ・バラバン(FW、クロアチア)
    2002年の日韓共催大会、そして2006年のドイツ大会の2大会でいずれもクロアチア代表チームのメンバーだったバラバン選手は、WC予選では13試合で7ゴールを挙げているものの、2大会とも本戦では全く出場がありませんでした。ディナモ・ザグレブ、アストン・ヴィラなどでプレーしたこのバラバン選手は2012年にスランゴールに加入するとデビュー戦でゴールを決め、シーズン通算でも20試合で12得点と活躍したものの、契約を延長せず1シーズンで退団しています。
  8. パブロ・アイマール(MF、アルゼンチン)
    2002年日韓共催大会、2006年ドイツ大会の2大会で合計6試合に出場したアイマール選手は、リバー・プレート(アルゼンチン)、バレンシア(スペイン)などでプレーした後、2014年にベンフィカからジョホール・ダルル・タジムJDTへ加入しています。公表はされなかったもののMリーグ史上最高額と言われた給料で2年契約を結んだアイマール選手でしたが、リーグ開幕から3ヶ月で度重なるケガのため、退団しています。出場8試合で2ゴールという成績でしたが、2022年まで続く9連覇の1年目の優勝メンバーとして、優勝メダルを受け取っています。なお、アイマール氏は現在はアルゼンチンU17代表の監督を務めています。
  9. キム・ドゥヒュン(MF、韓国)
    2006年ドイツ大会でメンバーに選ばれたものの、試合出場がなかったキム選手は、35歳となった2018年にヌグリスンビランFA(現ヌグリスンビランFC)に加入し、キャプテンを勤めるなどして、1シーズンプレーしています。
  10. ジェリー・パラシオス(FW、ホンジュラス)
    2010年南アフリカ大会では、スペイン戦とスイス戦の2試合に出場したパラシオス選手は、2014年ブラジル大会でもメンバー入りしたものの、出場はありませんでした。アジアでは中国や香港のリーグなどでプレーした後、2016年に当時Mリーグ1部にいた国軍FC(ATM)に加入したものの、WC出場選手という期待に応えられず、出場2試合のみにとどまり、ATMはこのシーズンで1部から降格しています。
  11. アンドリュー・ナバウト(FW、オーストラリア)
    2018年ロシア大会でフランス戦とデンマーク戦の2試合に出場したナバウト選手は、ここまでの10名の選手とは異なり、Mリーグでプレーした後にWCに出場した選手です。2016年にヌグリスンビランFAに加入すると、リーグ前半戦の12試合でチーム最多の8ゴールを量産しました。しかし前半戦終了後にシーズン2度目のトランスファーウィンドウが開くと、何を思ったかヌグリスンビランはナバウト選手との契約を解除してしまいます。その後、母国のニューカッスル・ジェッツに加入し、再びチームトップの得点を挙げると、2018年にはJリーグ浦和へ移籍し、またオーストラリア代表としてW杯出場を果たしています。
U17アジアカップ出場権獲得のU16代表監督は中東や日本への遠征を希望

AFC U17アジアカップ2023年大会予選を突破したマレーシアU16代表の監督は、大会前により強い相手との対戦経験を積むために中東あるいは日本への遠征を希望していると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

予選が行われたインドネシアから帰国した直後の空港で行われた記者会見の席上、U16代表のオスメラ・オマロ監督は、予選突破は果たしたものの、チームはまだ多くの点で改善の余地があるとして、大会前に中東の国々や日本といった強豪と対戦して、さらに経験を積む必要があると話しています。

オスメラ監督は、来年開催される本戦ではベスト4進出を目指したいと話す一方で、チームマネージャーのクリストファー・ラジ氏は、予大会前にはイラン、日本、韓国などへ遠征して試合を行いたいと述べています。

開催地枠での出場も含め、マレーシアはAFC U17アジアカップ(旧AFC U16選手権)にはこれまで6度出場しており、2014年にコギレスラワン・ラジ(PJシティ)、ハジック・ナズリ(JDT)らを擁してベスト8に進出したのが、マレーシアの最高成績です。

マレーシアサッカー2021年の10大ニュース

 今日は大晦日。ということで2021年のマレーシアサッカー界をボラセパマレーシアJP的視点で振り返ります。国内では、昨年同様、新型コロナに翻弄されたMリーグは日程が二転、三転しましたが、それでも2年ぶりに全試合が行われたシーズンになりましたが、その一方で複数のチームで給料未払い問題が明らかになりました。また国外ではU22代表がAFCU23アジアカップ本戦出場を決めた一方で、A代表はW杯予選、東南アジア選手権スズキカップといずれも思うような結果が残せなかった一年でした。

○KLシティFCが32年ぶりにマレーシアカップ制覇

 今季の国内カレンダー最後の大会となったマレーシアカップは今回が100周年記念大会でしたが、KLシティFCが戦前の下馬評を覆してJDTを2-0で破り、前身のクアラルンプールFA時代から数えると32年振りとなる優勝を飾りました。昨季はMリーグ2部プレミアリーグで2位となり、今季1部スーパーリーグに昇格したKLシティFCは、今季、リーグ戦、カップ戦ともホームのKLフットボールスタジアムでは無敗を誇り、来季は更なる活躍が期待されます。

○新型コロナの影響で3部リーグ以下やFAカップや各年代大会が中止

 Mリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグは全日程が開催されたものの、新型コロナの感染拡大を受け、日本の天皇杯にあたるFAカップが2年連続で中止となった他、Mリーグ3部に当たるセミプロリーグのM3リーグ以下の各リーグ戦、U21チームのリーグ戦であるプレジデントカップ、U19チームのリーグ戦ユースカップ、さらにはマレーシアプレミアフットサルリーグなどが中止となりました。

○複数のクラブで給料未払い問題発覚

 給料未払い問題はMリーグでは長年問題視されていましたが、新型コロナ禍ともあいまって各クラブとも経営が厳しくなった今季は、未払い給料を理由に開幕戦先発XIの内、最終的には何と9名が退団したペラFCの主力大量退団の他、クダ・ダルル・アマンFC、サバFC、サラワク・ユナイテッドFCなどでも同様の給料未払い問題が明らかになっています。これまではマレーシアの各州サッカー協会が運営していたMリーグクラブはAFCの指導により民営化が義務付けられましたが、州政府の予算を頼りに放漫経営されていたクラブは資金調達に失敗し、それによって選手や監督、コーチがとばっちりを受ける形になっています。

○JDTが前人未到のリーグ8連覇

 Mリーグ1部スーパーリーグではジョホール州皇太子がオーナーのJDT(ジョホール・ダルル・タジム)がリーグ8連覇を達成しています。22試合で16勝3分1敗、得点50失点9はいずれもリーグ1位で、2位のクダ・ダルル・アマンFCに勝点差14をつける圧勝でした。帰化選手を集め、他のクラブからも有力選手が集まる布陣はマレーシアA代表の選手でも控えに回ることがある選手層の厚さで国内では敵なしですが、アジアの壁は越えられず、AFCチャンピオンズリーグでは今季もグループステージ突破には至りませんでした。

○元日本代表本山雅志選手がMリーグでプレー

 隣国タイではかつては岩政大樹選手や茂庭照幸選手、ここ数年ではハーフナー・マイク選手や細貝萌選手など「元日本代表」の選手たちがプレーしていた時期がありましたが、ついにマレーシアにもその時が来ました。しかもこの国にやってきたのはあの本山雅志選手です。所属するケランタン・ユナイテッドFCはMリーグ2部プレミアリーグのチームですが、それでもその注目度は非常に高いものでした。
 ケランタン・ユナイテッドFCでは、深井脩平選手、Mリーグでは先輩に当たる谷川由来選手、さらに東山晃監督(現テクニカルディレクター)らとともに今季を戦った本山選手は、自身はケガなどもあり満足なシーズンとはならなかったかも知れませんが、それでもマレーシア人選手たちに対しては圧倒的な存在感は見せたMリーグ1年目でした。

○Mリーグのチケット販売が完全デジタル化

 無観客試合で開幕したMリーグがスタジアムでの観戦を許可したのは4月初旬でしたが、その翌月には再び無観客となり、それが10月下旬まで続きました。スタジアム観戦再開後は新型コロナ対策もありMリーグのチケットはスタジアムでの当日売りがなくなり、オンラインで購入し自身でプリントアウトする完全デジタル化に移行しました。チケット購入時には身分証明書番号、外国人であればパスポート番号の入力が必要になり、スタジアムでの入場の際もチケットとパスポートの提示を求められる徹底振りでした。まぁそこはマレーシアなんで、コロナが落ち着けば元に戻ってしまうかも知れません。

○外国籍選手ゼロのPJシティFCがスーパーリーグ7位

 今季のMリーグ1部スーパーリーグで唯一、登録選手全員がマレーシア人選手のみ、つまり外国籍選手ゼロだったPJシティFCは開幕前の大方の予想に反し、12チーム中7位と大健闘しました。チームからは10月の中東遠征でGKカラムラー・アル=ハフィズが初の代表招集となった他、スズキカップ2020に出場した代表にはこのカラムラー選手とMFコギレスワラン・ラジ、FWダレン・ロック(ただしケガで辞退)の3選手が招集されるなど、マレーシア人選手だけのクラブが外国籍選手を補強した他のMリーグクラブと対等に戦えることを証明しました。

○スーパーリーグ昇格初年度でペナンFCが3位に

昨季のMリーグ2部プレミアリーグで優勝し、KLシティFCとともに今季1部に昇格したペナンFC。昨季の優勝監督でもあるマンズール・アズウィラ監督が1部スーパーリーグで監督を務めるのに必要なAFCプロ指導者ライセンスを保持していなかったことから、マンズール関東はコーチとなり、チェコ出身のトマス・トゥルカ監督が監督に就任しました。するとチームはMリーグの台風の目となり、一時はAFCカップ出場権が与えられるリーグ2位も見えましたが、最後は力尽きて3位に終わりました。それでも昇格初年度の3位は立派ですが、リーグ戦後のマレーシアカップに入るとチームは勝ち星から見放され、グループステージで敗退するとトゥルカ監督退陣を求める一部サポーターも現れるなど、少なくともリーグ戦終了時は順風満帆に見えたペナンFCですが、来季に不安を残してシーズンを終えています。

○スズキカップ2020で代表はベスト4進出を逃す

 隔年で行われる東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップの2020年大会がシンガポールで集中開催され、マレーシア代表はグループステージで敗退しています。2020年に予定されていた大会が順延となったことからスズキカップ2020と銘打たれたこの大会に前回2018年大会の準優勝チームとして出場したマレーシア代表でしたが、ラオス、カンボジアに勝利したものの、前回大会の覇者ベトナム、そしてFIFAランキングではマレーシアより順位が低いインドネシアに完敗しています。
 本来は選手30名を登録できるところを24名しかしないなど不可解なことも多く、代表選手選考には「見えない手」の影響があったのではなどとも言われていますが、真相は藪の中です。いずれにしても準決勝に進んだタイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアには明らかに見劣りするプレーにタン・チェンホー監督更迭論なども出ましたが、マレーシアサッカー協会FAMはこれを否定しました。

U23代表はAFC U23アジアカップ予選を突破

 愚兄賢弟と言えば言い過ぎ。A代表が思うような結果を出せなかった2021年ですが、U23代表は10月にモンゴルで開催されたAFC U23アジアカップ予選を突破し、来年2022年6月にウズベキスタンで開催される本戦出場を決めています。前回2020年大会予選では中国と同組になるも勝点で並びながら得失差で涙を飲んだU22代表でしたが、今回はタイとの引き分けを含む3試合全てを完封して予選J組を首位で突破しています。このU22代表は2月には東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権、5月には東南アジア競技大会通称シーゲームズも控えており、サポーターの信頼を失い気味の兄の分まで頑張って欲しいです。

6月18日のニュース:代表チームが「マラヤの虎」チャーター便で帰国、FAMはJDTオーナーの代表チームマネージャー就任希望に未だ回答せず

代表チームが「マラヤの虎」チャーター便で帰国
 アラブ首長国連邦UAEで開催されたFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選に出場したマレーシア代表は、昨日の午後に無事マレーシアへ帰国したとマレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 5月20日にマレーシアを出国して以来、ほぼ1ヶ月ぶりの帰国となった代表チームは、出国時と同様にマレーシア航空特別機で帰国しました。
 帰国途中にはバンコクを経由し、タイで6月22日から開催されるAFCチャンピオンズリーグに出場するJDTの選手13名を降ろし、マレーシアに帰国した選手は8名のみとで、マレーシア国外でプレーするディオン・コールズ(デンマーク1部FCミッティラン)、ルクマン・ハキム・シャムスディン(ベルギー1部KVコルトレイク)、リリドン・クラスニキ(オーストラリア1部ニューカッスルジェッツ)、ジュニオール・エルドストール(タイ1部チョンブリーFC)、ドミニク・タン(タイ1部ポリステロFC)の各選手は既に別途帰途についたということです。
 今回予選G組では首位UAE(勝点18)、2位ベトナム(同17)に次ぐ3位(同12)となったマレーシアは、来年2022年2月あるいは3月に行われる予定のアジアカップ3次予選出場権を獲得しています。
 (代表カラーに塗装された特別機に登場する代表チーム-FAMのFacebookより)

FAMはJDTオーナーの代表チームマネージャー就任希望に未だ回答せず
 W杯予選G組最終戦のタイ戦を前に、Mリーグ1部JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下がマレーシアサッカー協会FAMに対し、代表チームのマネージャー就任を希望していると自身のインスタグラムに投稿しましたが、これに対してFAMは回答を保留していると英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。。
 イスマイル殿下は、ハミディン・アミンFAM会長に宛てて「代表チームに対して最高の練習環境と最高のコーチングスタッフを提供することを約束し、代表チームを強化するためには自分をチームマネージャに就任させて欲しい。短期間での成功は約束できないが、現実的な目標を一つ一つ達成し、必ずチームを改善する」と述べる一方で、「一部の選手は代表チームへの招集を夏休みのように考えているようだ。また今後は簡単に帰化選手を生み出すべきではない。」と述べ、代表のプレースタイルにあった選手だけを帰化させるためにその分析を行う技術委員会が管理するべきだとも述べています。
 これは今回のW杯予選に出場したマレーシア代表にはモハマドゥ・スマレ(JDT-ガンビア出身)、ギリェルメ・デ・パウラ(JDT-ブラジル出身)、リリドン・クラスニキ(JDTから期限付き移籍でAリーグのニューカッスルジェッツ-コソボ)の3名の帰化選手がいましたが、3名が3名とも不調であったことから、国内サポーターだけでなく国内サッカー界からも帰化選手と帰化選手プログラムを推し進めるFAM双方に対する批判が高まっています。
 イスマイル殿下は、JDTがMリーグ7連覇を含む多くのトロフィーを獲得している秘訣は、選手をメデイアなど外部から遮断し、ソーシャルメディアの使用も管理した上でサッカーという仕事に集中できる環境を提供している自身のリーダーシップによるものだと話しています。
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 ジョホール州皇太子の略称TMJの愛称でも呼ばれるイスマイル殿下ですが、自身の代表チームマネージャー就任希望を投稿したのは予選G組の最終戦タイ戦の前でしたが、正直なぜこのタイミングで?というのが最初の印象でした。FAM会長はじめとする役員の尻に火をつけるためのなのか、はたまた代表に13名いるJDTの選手に気合いを入れるためなのか。いずれにせよ、大事な最終戦前にマイナスに作用することはあってもプラスには採用しないのでは、というタイミングでした。(もちろんこのハッパが効いて、タイに勝利したのであればそれはそれで効果的だったとも言えますが…。)
 2017年から2018年までは自身がFAMの会長を務めたイスマイル殿下ですが、退任後のFAMはそれまではとは違い、王族も中央政府の政治家もいない組織として機能しており、また代表チームも2019年末まではタイを破り、UAEと接戦を繰り広げるなどここ数年来、最も期待できるチームでした。しかし新型コロナ蔓延後は他国も条件は同じとはいえ、代表合宿は行えず、強豪との練習試合も組めず、正確な日数は調べていないのでわかりませんが、移動制限令が連発されたマレーシアは、2020年以降で見ればおそらく代表合宿開催日数は予選G組では最低ではないかと思います。コロナ禍が落ち着けば、2019年のように代表の強化ができれば、アジアカップ本戦出場も夢ではないような気がします。
 そんな中でのイスマイル殿下の投稿は、Mリーグの優秀な選手を片っ端からJDTが獲得している手腕と合わせた上でうがった見方をすれば、自身の手中に代表チームを納めたいのという思惑があるようにすら思えてしまいます。FAMによる代表強化が手ぬるいから、と言われてしまえばそれまででしょうが、FAMがイスマイル殿下に「預けて」しまった後は、批判的な意見が出にくくなる恐ればあり、また万が一、その強化が失敗と判明した場合に誰が殿下を解任できるのか、という最大の問題が残ります。

  • BERNAMA

6月17日のニュース:W杯アジア2次予選G組-タイに辛勝のマレーシアは3位確保、UAEがベトナムに勝利し1位通過、上位2チームはW杯3次予選、3位と4位はアジアカップ3次予選へ、5位はアジアカッププレーオフへそれぞれ進出

 勝利の余韻を楽しんでいたら1日以上経ってしまいました、一昨日の試合について戦い方が云々、選手の出来が云々とサポーターの皆さんには言いたいことがあるでしょうが、この試合は勝利という結果のみが重要でした。そしてその結果を出したマラヤの虎を今日1日くらいは讃え、明日からはアジアカップ3次予選に向けて山積みとなった宿題を一つ一つ片付けてもらうことに期待しましょう。

W杯アジア2次予選G組-タイに辛勝のマレーシアは3位確保
 FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組の最終戦が行われ、勝点9で並んでいたマレーシアとタイが対戦し、マレーシアがタイを2-1で破りG組3位となり、アジアカップ3次予選進出を決めています。
 集中開催地のアラブ首長国連邦UAE入り後は練習試合2試合で連敗、そしてこの予選でもUAEに0-3、ベトナムに1-2で敗れていたマレーシアは3試合目にして初勝利となりました。
 前戦の先発メンバー3選手が累積警告により出場停止となったマレーシアは、攻守のキーマン、DFラヴェル・コービン=オング(JDT)に代わってUAE入り後初先発のDFシャミ・サファリ(スランゴールFC)を左サイドバックに、またGKファリザル・マーリアスに代わりこちらも初先発のGKカイルルアズハン・カリド(スランゴールFC)を起用するなど、前戦のベトナム戦の先発メンバーから6選手を入れ替えてタイ戦に臨みました。
 試合開始直後からやはり初先発となったFWアキヤ・ラシド(JDT)がタイ守備陣の裏に入りチャンスを作る一方で、タイは21歳のMFタナワット・スエンチッタウォン(英国1部レスターシティU21)、18歳のFWスファナット・ムエアンタ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)がマレーシアゴールに襲いかかる展開となりましたが、タン・チェンホー監督の起用が当たりGKカイルルアズハン・カリドが好セーブを連発、前半は0-0で折り返します。
 こう着状態を打開するためタン監督はこの予選で初めて先発を外れたFWサファウィ・ラシド(JDT)をMFブレンダン・ガン(スランゴールFC)と、またFWシャフィク・アフマド(JDT)をFWアリフ・アイマン(JDT)と交代で投入します。するとこの交代が功を奏し、52分にはタイDFエルネストがサファウィ・ラシドをペナルティエリアで倒し、マレーシアはPKを得ます。サファウィ・ラシド自身がこのPKを決め、1-0とついにマレーシアが先制します。追う展開となったタイもその直後にMFティティパン・プアンチャン(タイ1部BGパトゥム・ユナイテッド)がヘディングでゴールを狙いますが、惜しくもゴールポストに阻まれます。
 試合はその後も両チームが一進一退を繰り返すも得点には至らず1-0のスコアのまま終了。マレーシアはUAEでの予選初勝利、またタイは未勝利のままUAEを去ることになりました。

UAEがベトナムに勝利し1位通過
 G組のもう1試合はグループ1位のベトナムと2位アラブ首長国連邦UAEが対戦。試合開始からベトナムが積極的に攻めますが、相手守備陣を先に崩したのはUAEでした。52分アブドラ・ラーマンがベトナム守備ラインの裏へドンピシャの浮き玉パスを通し、これをアリー・サルミーンが決めてUAEが先制しました。40分にはやはりアブドル・ラーマンがベトナム最終ラインの裏へスルーパス。これに反応したモハメド・ジュマ・エイドをベトナムGKブイ・タン・チュオンが倒してUAEがPKを獲得し、エースのアリー・マブフートが決めてUAEがリードを広げます。ちなみにこのPKはアリー・マブフートにとってこの予選で11点目となるゴールでした。
 前半を2-0で折り返すと50分にはバンダル・アル・アフバビからのクロスにファビオ・ヴィルジニオ・ジ・リマが頭で合わせるもベトナムGKがセーブ。しかしそのこぼれ球に詰めていたマフムード・ハミースが押し込んでこれがUAEの3点目となりました。ベトナムも85分にチャン・ミン・ヴォンのパスを受けたグエン・ティエン・リンがゴールを決め1-3、そして90分過ぎにはGKアリ・ハシーフのパスミスからチャン・ミン・ヴォンがゴールを決め2-3と追いすがりますが、ベトナムの反撃もここまででした。

G組上位2チームはW杯3次予選へ、3位と4位はアジアカップ3次予選へ、5位はアジアカッププレーオフへそれぞれ進出
 FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年予選全日程が終了し、G組1位のUAEはアジア3次予選進出を決めています。また2位のベトナムは予選各組の2位チームのうち上位5チームに入ったことで、唯一の東南アジアチームとしてアジア3次予選進出を決めています。また3位のマレーシアは24チームが参加するアジアカップ3次予選進出、また4位のタイも同じくアジアカップ3次予選へ進出が決まりましたが、5位のインドネシアはアジアカップ3次予選の出場2枠をかけたプレーオフをカンボジア、台湾、グアムと対戦することになりました。

FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組
2021年6月15日@アール・マクトゥーム・スタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
タイ0-1マレーシア
得点者:マレーシア-サファウィ・ラシド(52分)

2021年6月15日@ザビールスタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
ベトナム 2-3 アラブ首長国連邦
得点者:ベトナム-グエン・ティエン・リン(85分)、チャン・ミン・ヴォン(90分)、アラブ首長国連邦-アリー・サルミーン(32分)、アリー・マブフート(40分PK)、マフムード・ハミース(50分)

FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選
兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組最終順位表(2021年6月15日現在)

TeamPWDLGFGAGDPTS
1UAE86022371618
2ベトナム8521135817
3マレーシア84041012-212
4タイ82339909
5インドネシア8017522-171

P-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、PTS-勝点

6月15日のニュース:今晩はG組最終戦のタイ戦-出場停止3選手を欠くマラヤの虎は正念場をどう戦うか、スランゴールFC2に3人目のガーナ出身選手が加入、スタジアム観戦にワクチン接種義務化は国内のワクチン接種促進にも貢献

 6月4日に始まったFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組はマレーシア時間の今晩0時45分に最終戦となるタイ-マレーシア戦、アラブ首長国UAE-ベトナム戦が行われます。
 予選開催国UAE入り後は練習試合での2試合も含め4連敗となったのマレーシア代表は、新型コロナの影響で対外試合が全くできず、当初は試合勘が不足している印象でしたが、敗れたとは言えベトナム戦ではチームとして機能し始めた印象もあり、また短期決戦ではその見極めが重要な使える選手、使えない選手も明らかになってきました。この予選の集大成ともなるタイ戦はアジアカップ3次予選出場がかかる重要な試合でもある一方で、ここで敗れてしまうとアジアカップ3次予選出場をかけたプレーオフに回るだけでなく、ここ数年の好調で高まってきた代表チームへ期待が一気に失望に代わる可能性があり、文字通り正念場の試合です。

今晩はG組最終戦のタイ戦-出場停止3選手を欠くマラヤの虎は正念場をどう戦うか
 ベトナム戦は5枚のイエローカードがマレーシアに出されましたが、これによりDFラヴェル・コービン=オング(JDT)、MFシャマー・クティ・アッバ(JDT)、FWモハマドゥ・スマレ(JDT)の3選手が累積警告によりタイ戦は出場停止となっています。
 この主力選手の出場停止について、タン・チェンホー監督は代わりの選手が臨機応変に対応してくれることを期待していると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 中でも左サイドバックのコービン=オングの欠場は守備面での影響が大きいことを認めた上で、これまで先発機会のなかった選手も全力を尽くしてくれると信じていると話すはタン監督はコーチ陣と相談して布陣を決めたいとしています。
*****
 プレッシャーのかかる1戦なのは事実ですが、タイもFWティーラシン・デーンダー(BGパトゥム・ユナイテッド、前清水)、MFチャナティップ・ソングラシン(札幌)、DFテーラトン・ブンマタン(横浜F・マリノス)ら主力選手を欠いており、マレーシアにとってはFIFAランキングで47位離れているタイを倒す絶好の機会でもあります。このW杯予選でマレーシアは2019年11月14日にホームでタイに2-1と勝利しており、2018年スズキカップ準決勝も合わせれば直近の3試合では1勝2分となっており、ここでタイを叩いてまずはベトナムに続く東南アジアNo.2を目指したいところです。一方のタイは、W杯予選ではベトナムと引き分けた後、インドネシアとUAEを破りながら、このマレーシア戦敗戦以降は未勝利で、タイ国内では結果が出ていない西野監督への批判も高まっているという報道もあり、マレーシア戦には当然勝利を目論んで臨んでくるでしょう。しかしそんなタイを破ってこそ、マレーシアはワールドカップ最終予選出場云々を語る資格が得られるようになると思います。

スランゴールFC2に3人目のガーナ出身選手が加入
 Mリーグ1部のスランゴールFCは、セカンドチームでMリーグ2部のスランゴール2にガーナ出身で20歳のMFアレックス・アグヤルクワがガーナ2部リーグのアクラ・ライオンズFCから期限付き移籍で加入することを公式サイトで発表しています。
 スランゴールFCにはこのアクラ・ライオンズFCからいずれも20歳のDFジョーダン・アイムビラ、FWジョージ・アトラムが加入しており、アイムビラ選手はスランゴールFCで、アトラム選手はスランゴール FC2で今季はここまでプレーしていますが、アトラム選手はスランゴールFCの練習に参加しており、現在中断中のMリーグ再開後はスランゴールFCへ昇格するとも噂されています。
 獲得に関わってスランゴールFCのマイケル・ファイヒテンバイナー スポーツディレクターSDによると、アイムビラ、アトラム両選手のMリーグでの活躍を見て、さらにアクラ・ライオンズFCへオファーを出した結果、今季のガーナ2部リーグでは13試合中8試合でMOMを受賞したアグヤルクワ選手の獲得につながったということです。
 ファイテンバイナーSDは、来週マレーシアに到着するアグヤルクワ選手について、スランゴールFC2で「スランゴールサッカーのDNA」に慣れた後は、トップチームのスランゴールFC昇格も考えていると話しています。

スタジアム観戦にワクチン接種義務化は国内全体のワクチン接種促進にも貢献
 スタジアム観戦者に新型コロナウィルスワクチン接種を義務付けることは、スタジアム内での感染リスクを軽減するだけでなく、国内全体のワクチン接種促進に寄与する可能性があるとMリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLが公式サイトで報じています。
 MFLはMリーグの7月再開に向けて新型コロナ観戦拡大防止のため、Mリーグ各クラブのサポータークラブに向けて、ワクチン接種をスタジアムでの観戦に義務付けたいという提案を行なっていました。
 これに対してスランゴールFCのサポータークラブ会長のモハマド・ファイザル・ワヒド氏は、他国のリーグが実施しているように、ワクチン接種を義務付けた上でスタジアム観戦が許可されれば、多くのサポーターがスタジアムへ足を運ぶだろうと述べて、この提案を歓迎した上で、「ワクチン接種に懐疑的、あるいは消極的な場合でも、スタジアム観戦ではワクチン接種が義務付けられれば、考えを変えて接種を受けるサポーターも出てくるだろう。その結果として、マレーシア政府が目指すできるだけ多くのマレーシア人へのワクチン接種という方針にも貢献できる。」とも話しています。
 またスリ・パハンFCのサポータークラブのモハマド・ファウジ・アブドル・マナフ氏も、このMFLの提案に同意した上で、ワクチン接種が進んでいない現状を考慮して、接種者の数が一定数に達した段階でこの方針を実施して欲しいと述べています。「現時点ではワクチン接種者はまだ少ないが、数ヶ月もすれば集団免疫が達成できると期待している。そうすればスタジアムも他の場所と同じように足を運んでも安全な場所になるだろう。」
 現在中断中のMリーグは7月3日から2部プレミアリーグが、7月24日から1部スーパーリーグがそれぞれ再開予定ですが、MFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは、新型コロナ観戦拡大後から再び無観客試合で行われてきたMリーグについてスタジアム観戦の許可を求めてマレーシア政府と交渉する用意があると話しており、その条件としてスタジアムでの観戦者にはワクチン接種を義務付けたい意向を表明していました。

6月12日のニュース:W杯予選G組-マレーシアはベトナムに敗れる、UAEはインドネシアに圧勝

W杯予選G組-マレーシアはベトナムに敗れる、UAEはインドネシアに圧勝
 マレーシア時間の6月12日早朝にFIFAワールドカップ2022年アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会が行われ、G組1位のベトナムと対戦したマレーシアは1-2で敗れています。
 試合開始8時間前に父親の訃報が届いたタン・チェンホー代表監督は、前戦のアラブ首長国UAE戦で批判を浴びたFWギリェルメ・デ・パウラ(JDT)をこの試合でも先発起用、また前戦では出場停止となっていたMFブレンダン・ガンも先発に戻り、現時点でのベスト布陣を揃えて試合に臨みました。
 スピードで勝るベトナムは試合開始直後からマレーシアを圧倒し、何度か好機を逃した後、27分にコーナーキックから折り返したボールをFWグエン・ティエン・リンがヘディングで決めてベトナムが先制します。一方、マレーシアも38分にDFマシュー・デイヴィーズ(JDT)のクロスにFWシャフィク・アフマッド(JDT)が頭で合わせますが、ベトナムGKブイ・タン・チュオンの好セーブに阻まれ得点に至らず、44分にはFWサファウィ・ラシド(JDT)がフリーキックでゴール狙いますが、これもブイ・タン・チュオンに弾かれ、さらにギレェルメ・デ・パウラのシュートもDFドゥオン・バン・ハオがコースに入って防ぐなどし、前半はベトナムリードのまま1-0で折り返します。
 後半に入るとタン監督はシャフィク・アフマッドに代わりMFナズミ・ファイズ(JDT)を、サファウィ・ラシドに代えてFWアキヤ・ラシド(JDT)を、さらに19歳のFWアリフ・アイマン(JDT)を精彩を欠くFWモハマドゥ・スマレ(JDT)に代えて投入すると、この交代が功を奏し、72分にはナズミ・ファイズからのゴール前へのクロスに合わせようとしたギリェルメ・デ・パウラにドゥオン・バン・ハオに乗りかかるようにファウルをし、佐藤隆治主審はマレーシアにPKを与えます。これをデ・パウラ自身が決めてマレーシアは同点に追いつきます。しかし83分にはブレンダン・ガンがベトナムFWグエン・バン・トアンを倒し、佐藤主審はベトナムにPKを与えます。シミュレーションのようにも見えるプレーでしたが、これをDFクエ・ゴック・ハイが決めてベトナムがリードし、試合はそのまま終了。この結果、ベトナムが勝点3を獲得して合計勝点17としてG組首位をキープ。最終戦となる次戦UAEで引き分け以上でG組1位突破が決まります。一方のマレーシアは勝点9で3位のタイと並んだものの得失差(タイ+1に対しマレーシア-3)で4位のままです。
*****
 マレーシアのメディアは第3次予選出場が消え去った、といった論調の記事を掲載していますが、イエローカード5枚が示すように、スピードで上回るベトナムをマレーシアはファウルでしか止められなかった場面が何度もあり、全く順当な結果に思えます。またこの試合では相手DF陣を何度もドリブルで突破したアリフ・アイマンや、DF陣の空いたスペースに入り込んだアキヤ・ラシドに使える目処がたったことも大きな収穫でした。新型コロナウィルスにより高いレベルでの試合不足だった代表自体もエンジンが温まってきたので、次のタイ戦こそ真価が問われる試合になりそうです。2019年末のスズキカップ準優勝以来、盛り上がってきたマレーシア代表へ声援がここで終わってしまうのか、それとも2023年アジアカップへ続くのか、タイ戦こそがDo-or-Dieの試合と言えそうです。

FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組
2021年6月12日@アール・マクトゥーム・スタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
マレーシア 1-2 ベトナム
得点者:マレーシア-ギリェルメ・デ・パウラ(72分PK)、ベトナム-グエン・ティエン・リン(27分)、クエ・ゴック・ハイ(83分PK)
(写真はマレーシアとベトナムの先発XI、マレーシア、ベトナム両サッカー協会のFacebookより)

2021年6月12日@ザビールスタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
アラブ首長国連邦UAE 5-0 インドネシア
得点者:UAE-アリー・マブフート2(23分、49分PK)、ファビオ・ヴィルジニオ・ジ・リマ2(28分、55分)、セバスティアン・ルーカス・タグリアブエ(86分)

FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選
兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組順位表(2021年6月12日現在)

TeamPWDLGFGAGDPTS
1ベトナム7520112917
2UAE75022051515
3タイ72329819
4マレーシア7304912-39
5インドネシア8017522-171

P-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、PTS-勝点

予選G組今後の日程(時間は現地時間、試合はいずれも午後8時45分キックオフ)
6月15日(火)
ベトナム-アラブ首長国連邦ザビールスタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
タイ-マレーシア@アール・マクトゥーム・スタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ

6月11日のニュース:今夜はベトナム戦-試合前の代表の様子、ベトナム戦は中盤の勝負で長身選手起用が効果的-元Vリーグ選手がアドバイス、消滅クラブのコーチへも未払い給料の支援を求める- 指導者協会

 現在、アラブ首長国連邦UAEのドバイで開催中のFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組は、現地時間の6月11日に2試合が予定されています。
 6月2日のUAE戦では0-4と完敗したマレーシアは、タン・チェンホー監督就任以来の対戦成績が4試合で0勝1分3敗のベトナムと対戦します。UAE入り後、インドネシアと引き分け、UAEに敗れたタイと同様、3次予選進出の可能性が限り無く低くなったマレーシアですが、現実的な目標はW杯ではなくアジアカップ2023年大会出場。現在勝点9でタイと並びながら得失差でG組4位のマレーシアは、今夜のベトナム戦で万が一勝利すればタイ戦で引き分けても3位がとなりますが、今夜負ければタイ戦での勝利が必須となります。FIFAランキング153位のマレーシアが同92位のベトナムと同106位のタイを天秤に掛ければ、素人目ではここはタイ戦勝利のためにベトナム戦をどう戦うかという発想も必要かと思います。
 UAE入り後の練習試合と先日のUAE戦を合わせた3試合でマレーシアは1得点10失点と攻守とも不安材料満載ですが、前述したようにタイもこの予選では1分1敗(3得点5失点)と結果を出せておらず、タイと2-2で引き分けたインドネシアを4-1で一蹴したベトナムと比べれば、少なくともタイは与し易い相手に見えます。となれば、毎試合勝利が期待されている代表チームですが、今夜のベトナム戦、次戦のタイ戦の2試合合わせて勝点3獲得を目指す戦略があっても良いと思うのですがどうでしょうか。

今夜はベトナム戦-試合前の代表の様子
 UAEに4-1で敗れてから今夜のベトナム戦まで試合のない期間が8日間続いたマレーシア代表チーム。選手は十分な休養が取れ、首脳陣は次戦に向けて戦術や戦略を用意する時間が確保できる一方で、タン・チェンホー監督は空き過ぎた時間のせいで必要以上に不安や緊張を感じることがあることから、選手を鼓舞し、対話を続け、練習を通じて自信を植えつけることに精を出していたようです。
 UAE戦敗戦の原因を分析し、それを修正するための練習を続けてきたと話すタン監督は、選手が敗戦を引きずらずにベトナム戦に臨む用意ができていると、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版に語っています。
 対戦相手のベトナムについて問われたタン監督は、FIFA U20ワールドカップ2017年大会出場選手を核とするチーム内の連携が良く取れており、相互理解と強い精神力を持ったチームだと称えた上で、前試合のUAE戦から連日の練習で攻守共に改善されたマレーシアにとって今夜の試合はベトナム戦連敗を止める好機だとして、最後まで集中力を切らさずに戦いたいと記者会見で話しています。

ベトナム戦は中盤の勝負で長身選手起用が効果的-元Vリーグ選手がアドバイス
 Mリーグ1部UITM FCの主将でフランス出身のヴィクトル・ニレノルドはベトナム1部VリーグのダナンFCでプレー経験があることから、今夜のW杯予選でベトナムと対戦するマレーシアに対して、自身の経験からアドバイスがあると英字紙スター電子版が報じています。
 「ベトナムの強さは中盤にあり、Mリーグで言えばJDTのように短いパスをつなぐサッカーを展開するので、そこで競り負けないことが第一。一方、攻撃に比べると守備には脆さもあり、マレーシアはギリェルメ・デ・パウラ、リリドン・クラスニキ、ディオン・コールズそしてラヴェル・コービン=オングといった長身選手をセットプレーで活用するべきだ。」と話すニレノルド選手は、マレーシアが注意するべき選手としてプレーメーカーのMFグエン・クアン・ハイ(ただしマレーシア戦は警告累積により出場停止)、FWグエン・バン・トアンを挙げています。

消滅クラブのコーチへも未払い給料の支援を求める- 指導者協会
 先日のこのブログでは、FIFAが国際プロサッカー選手会FIFProが共同で設立したFIFAサッカー選手基金(FIFA FPF)を通じ、かつてMリーグにありながら消滅してしまった5クラブによって給料未払い問題を被っている147選手に対して、一人当たりおよそ1230米ドルから9230米ドル(およそ13万5000円から101万円)が支払われるというニュースを取り上げました。これについて同じ5クラブからの給料がやはり未払いとなっている監督、コーチについての支援がないことから、マレーシアサッカー指導者協会FCAMはFIFAが監督、コーチの窮状を無視していると非難しています。
 プルリスFA、ハネランFC、マルセラ・ユナイテッドFC、クアンタンFA、トレンガヌシティFCの5クラブはかつてMリーグに所属しながら、運営資金不足などを理由にリーグから撤退し、クラブは消滅しています。
 FCAMのB・サティアナタン会長はFIFAが選手のみを支援し、監督、コーチを支援しない理由が理解できないとして、給料未払いとなっている5クラブの監督、コーチを代表してFCAMがFIFAに対し、問題喚起の手紙を送る予定だとニューストレイトタイムズの取材に対して明らかにしています。
 「国際プロサッカー選手会がFIFAサッカー基金創設で重要な役割を果たし、選手の福利を図るという目的を達成できているのは良いことだが、その一方でプロ指導者を統括する国際プロサッカー選手会のような世界的な組織はなく、権利のために戦う環境が整っていないのは残念だ。」
 数年前にFCAMの代表者としてヨーロッパサッカー指導者協会の定款に署名をしたと話すサティアナタン会長は、このヨーロッパサッカー指導者協会がプロ指導者の権利を守る唯一の国際的組織であり、世界各国が指導者協会を設けることを望んでいること、アジア諸国では指導者協会がほとんどなく、現在はインドと日本の指導者協会が中心となり、各国に協会設立を働きかけている最中であることなども述べています。
 最後にサティアナタン会長は、選手の声を代弁し、資金的にも裕福な国際プロサッカー選手会に倣って、FCAMはインドや日本の指導者協会と協力して、選手同様にサッカーに貢献しているプロ指導者の権利を守り、その代弁者となるような組織を設立したいと話しています。

6月9日のニュース:DFエルドストールはベトナム戦欠場か、ペラFCは再建に向けて外国籍選手を総入れ替え、スランゴールFC監督は現有戦力に自信

DFエルドストールはベトナム戦欠場か
 現在アラブ首長国連邦で開催中のFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選ではマレーシア代表は6月11日(現地時間)にベトナムと対戦しますが、この試合にはDFジュニオール・エルドストール(チョンブリーFC-タイ)が欠場するようだと、スポーツ専門サイトのヴォケットFCが報じています。
 スポーツ専門チャンネルのアストロ・アリーナのズルヘルミ・ザイナル・アザム記者のツイートを引用する形で書かれた記事では、エルドストール選手は途中出場となった先日のアラブ首長国連邦UAE戦でアキレス腱を痛め、現在は練習にも参加していないということです。
 主将のアイディル・ザフアン(JDT)に代わって69分から出場したエルドストール選手は、この試合が代表初戦となったDFディオン・コールズ(ミィティランFC-デンマーク)とともにセンターバックとしてプレーしましたが、チームは試合終了前の10分で3失点するなどし、0-4で敗れています。
 守備陣だけの責任とは言えないものの、UAE戦は4失点と大敗し、必勝が求められるベトナム戦を控えた状況でのエルドストール選手の離脱により、タン・チェンホー代表監督は、アイディル・ザフアン選手やコールズ選手の他、まだ起用していないアダム・ノー・アズリン(JDT)、ドミニク・タン(ポリステロFC-タイ)、イルファン・ザカリア(KLシティ)らも含めた守備陣の再編成を迫られています。
*****
 この情報が本当なら、大事な試合の前にベトナムにとっては有益、マレーシアにとっては不利益以外の何物でもないこういった情報は外部に漏らされるべきではないと思うのですが、代表には情報管理というのは概念はないようです。
 代表のマシュー・デイヴィーズ(JDT)がUAE戦敗戦後、インスタグラムに「ミスを修正して次戦に向けて集中します。」と投稿すると、JDTオーナーのTMJことトゥンク・イスマイル ジョホール州皇太子が「まずはソーシャルメディアを止めて集中しろ」とコメント欄で返信したことがサポーターの話題になっているのですが、これも外部に情報がダダ漏れしている現状を野放しにしているチームマネージャーや事務方の力量不足が露呈した形です。

ペラFCは再建に向けて外国籍選手を総入れ替え
 このブログでも何度も取り上げたMリーグ1部ペラFCの給料未払い問題とそれに伴う主力選手の流失ですが、スポーツ専門サイトのスタジアムアストロによると、選手の流失は止まり、後半戦へ向けてチームの再建が始まっているようです。
 移籍が噂れながらも残留したペラFCのGKハフィズル・ハキムがアストロ・アリーナの取材に対応し、経営陣が問題解決に対して見せた取り組みにより、残留した選手たちはチームに対しての信用が回復し、2部降格を阻止しようという気持ちを持ち始めているということです。W杯予選開催に伴い現在中断中のMリーグ1部でペラFCは3勝3分7敗の成績で、降格圏の11位とは勝点差1の10位につけています。
 代表FWギリェルメ・デ・パウラやDFシャールル・サアドら流出した6名の主力選手に代わり、ペラFCは先月末に終了したトランスファーウィンドウ期間に英国出身のMFチャーリー・マシェル(カンボジア1部ビサカFCより加入)、いずれも元レバノン代表のDFジャド・ヌールディン(バーレーン2部アル・アハリ・マナマより加入)、MFサミル・アヤス(ブルガリア1部POFKボテフ・ヴラツァより加入)、カメルーン生まれのインドネシア人DFズバイロウ・ガルバ(インドネシア1部ペルセバヤ・スラバヤ より加入)、コートジボアール出身のDFジスラン・コナン(昨季は所属なし)と5名の外国籍選手を総入れ替えした他、マレーシア人選手4名もこのトランスファーウィンドウ期間に獲得しています。
 ペラFCのチョン・イーファット監督はセカンドチームでMリーグ2部のペラFC IIからの選手昇格も明言しており、ハフィズル選手ら残留した4名の主力選手に新たな外国籍選手、そしてセカンドチームから昇格する若手の融合チームで、ペラFCは1部残留を目指して後半戦に臨みます。

スランゴールFC監督は現有戦力に自信
 上の記事でも取り上げたペラFCを含めMリーグ1部の他のクラブが新戦力獲得に動く中、スランゴールFCはトランスファーウィンドウ期間に加入した選手はいませんでしたが、カルステン・ナイチェル監督は現有戦力で後半戦に臨むことに何の心配もしていないとスタジアムアストロが報じています。
 合宿形式での練習を再開したスランゴールFCには、開幕前に同じ1部のスリ・パハンFCから移籍しながらプレシーズンマッチでのケガにより前半戦を棒に振ったMFニック・シャリフ・ハッセフィ、やはり長期離脱中だったDFティム・ホイバッハ、DFサフアン・バハルディンらが復帰した他、セカンドチームでMリーグ2部のスランゴール2からも複数の選手を昇格させています。
 前半最終戦後から各選手とも十分な休養が取れたと話すナイチェル監督は、全選手が今季初めて揃ったチームは残る後半戦9試合に向けて練習を再開できることを喜んでいると話しています。
 スランゴールFCはMFブレンダン・ガンとDFシャミ・サファリがW杯予選を戦う代表に召集されていますが、この2人が戻りベストの布陣となったところで、自身の戦術や戦略を浸透させたいとないチェル監督は語っています。
*****
 正直なところ、今季はトップ3も現実的な目標ではないスランゴールFCですが、これまでのように次々に新戦力を獲得して目先の勝利を追及する方針から、育成しながら勝つ方針へと転向したことは中、長期的には良い結果をもたらす可能性が高そうです。前半戦終盤の試合で起用され始めた国内エリートアカデミーAMD出身者や20代前半の若い外国籍選手たちも1部のサッカーに慣れ、後半戦には期待が持てそうです。

6月8日のニュース:W杯予選G組-ベトナムとUAE勝利で順位は変わらずマレーシアは4位のまま、JDTオーナーが自身のクラブ運営方法批判を一蹴

W杯予選-ベトナムとUAE勝利で順位は変わらずマレーシアは4位のまま
 FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組の試合が行われ、グループ1位のベトナムと2位のアラブ首長国連邦UAEがそれぞれ勝利しています。
 首位ベトナムと最下位インドネシアの対戦は、0-0で前半を折り返したものの、後半のゴールラッシュで順当にベトナムが勝利してグループ首位を堅持しています。
 一方、2019年10月15日のホームでの試合ではUAEを2-1で破っていたタイでしたが、この試合はタイの神童こと18歳のスファナット・ムエアンタがゴールを挙げるも、3−1でUAEがブラジル出身の帰化選手の2ゴールを含む3ゴールで快勝しています。

6月7日@アール・マクトゥーム・スタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
ベトナム 4-0 インドネシア
得点者:ベトナム-グエン・ティエン・リン(51分)、グエン・クアン・ハイ(52分)、グエン・コン・フオン(67分)、ヴー・ヴァン・タン (74分)

6月7日@ザビールスタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
アラブ首長国連邦UAE 3-1 タイ
得点者:UAE-カイオ・カネド (14分)、ファビオ・ヴィルジニオ・ジ・リマ (33分)、ユースィフ・ジャービル(90+4分)、タイ-スファナット・ムエアンタ (54分)

FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選
兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選G組順位表(2021年6月8日現在)

TeamPWDLGFGAGDPTS
1ベトナム642091814
2UAE64021551012
3タイ72329819
4マレーシア6303810-29
5インドネシア7016522-171

P-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、PTS-勝点

予選G組今後の日程(時間は現地時間、試合はいずれも午後8時45分キックオフ)
6月11日(金)
インドネシア-アラブ首長国連邦@ザビールスタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
マレーシア-ベトナム@アール・マクトゥーム・スタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
6月15日(火)
ベトナム-アラブ首長国連邦ザビールスタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ
タイ-マレーシア@アール・マクトゥーム・スタジアム、アラブ首長国連邦ドバイ

JDTオーナーが自身のクラブ運営方法批判を一蹴
 英字紙スター電子版は、Mリーグ1部7連覇中のJDTがMリーグのトップ選手を独占しているという批判に対するオーナーの反論を紹介しています。
 JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が参加して先日行われたインスタグラムライブ中、一人の参加者がイスマイル殿下に対して国内のトップ選手をJDTが次々と獲得していることによりMリーグ全体に悪影響を及ぼしているのではないのではないか、と問いかけました。そこでイスマイル殿下はMリーグで給料未払いとなっている複数のクラブがあることを挙げて、給料未払いのクラブと自身のどちらがリーグにとって悪影響を及ぼしているのかと問い返し、選手の給料や福利に責任を持たないクラブに苦しめられている選手を救っているだけだと主張したということです。
 さらにイスマイル殿下は「JDTは自らの予算の範囲内でクラブを運営している。他のMリーグクラブも同様にするべきで、それができないのであれば、その失敗の責任は各クラブが負うべきである。JDTのオーナーとしてクラブの成功を目指すのは当然で、選手を獲得する必要があれば獲得し、育成する必要があれば育成する。」と述べています。
 またイスマイル殿下は、ややもすると傲慢(ごうまん)とも言える自身のクラブの運営方法に対して問われると、プロサッカークラブを運営するにはプロとして見栄えが重要であり、自身の自尊心を高揚させるためにあらゆる面で最高のものが必要になり、ライバルとの争いには謙虚さは全く必要でない、という自信の考えも明かしています。
 なおJDTはW杯予選、そしてAFCチャンピオンズリーグ後のMリーグ再開に向けて、期限付きでオーストラリア1部のニューカッスルジェッツに移籍していたシャフリアン・アビマニュを復帰させるほか、英国1部ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFCのU23チームでプレーする20歳のナサニエル・シオ・ホング・ワンの獲得も発表しています。