Mリーグ2022年シーズンは2月26日のピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕を前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介する第2回は、昨季Mリーグ3位のペナンFCと同4位のトレンガヌFCです。
ペナンFC(2021年シーズンスーパーリーグ3位)
本拠地:シティスタジアム(ペナン州ジョージタウン)
2021年シーズン成績:3位(12勝5分5敗)得点37(リーグ4位)失点30(同6位)
過去5シーズンの成績:2017年12位-2018年2部10位-2019年2部7位-2020年2部1位-2021年1位
監督:トマーシュ・トルーハ (チェコ)
外国籍選手(*は新加入選手):
*FWヒラル・エル=ヘルウェ(レバノン/ドイツ-AFC枠)
FWカサグランデ(ブラジル)
*FWクリスティアン・ロンティーニ(フィリピン/イタリア-アセアン枠)
MFエンドリック(ブラジル)
DFラファエル・ヴィトール
主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
*GKムハマド・ハフィズル・ハキム(ペラFCより加入)
DFアブドル・ラティフ・スハイミ
DFアズミ・ムスリム
DFアディブ・ラオプ
DFシャミン・バハルディン
*DFファイルズ・ザカリア(クダ・ダルル・アマンFCより加入)
MFダニアル・アシュラフ
MFファディル・イドリス
MFタム・シャンツン
MFファイズ・マズラン
MFK・ティヴァンダラン
FWジェフリ・フィルダウス・チュウ
チーム紹介:
2020年シーズンに2部プレミアリーグで優勝し、昨季は4季振りとなる1部昇格を果たすと、昇格初年度ながら快進撃を続け、終わってみれば2位のクダとは勝点差がわずか2と惜しくも3位となったペナン。2部プレミアリーグでも活躍したカサグランデ、エンドリック、ラファエル・ヴィトールのブラジルトリオが1部スーパーリーグでもチームを支え、リュウジ・ウトモ(インドネシア)やシェリダン・ボボエフ(タジキスタン)の外国籍選手とマレーシア人選手がそろって機能した結果でした。しかしリーグ終了後のマレーシアカップに入ると、グループステージ連敗が続きました。すると昇格初年度の3位という成績を忘れたのか、一部サポーターはトマーシュ・トルーハの選手起用がマレーシアカップ不調の原因としてその退陣を求め、チームもグループステージで敗退してしましました。
シーズンオフに入るとさらに混迷を深め、いずれも今年初めて代表に招集されたGKサミュエル・サマーヴィルやFWアル=ハフィズ・ハルンが退団を表明、さらにMFカイルル・アズリン、MFアメル・アズハル、MFデイヴィッド・ロウリーといった主力が退団し、さらに期限付き移籍だったウトモ選手は所属先のインドネシア1部プルシジャ・ジャカルタへ復帰、ボボエフ選手もチームをさり、その結果、2021年シーズンの開幕XIからはブラジルトリオ以外の8選手が移籍してしまう事態となっています。さらに今季がMリーグ5季目となるエンドリックが来季2023年はJDTで帰化選手としてプレーするとタンパリングまがいの発表も行われるなど、昇格1年目で3位という偉業がが忘れ去られてしまっています。
今季の布陣はサマーヴィル選手に加えて、控えGKのブライアン・シーも退団したところに、元代表GKのムハマド・ハフィズール・ハキムがペラから加入し、W杯アジア最終予選のメンバーにも選ばれているレバノン代表のFWヒラル・エル=ヘルウェ、フィリピンU23代表のFWクリスティアン・ロンティーニが加わりました。これら新戦力と残留したブラジルトリオを加えても、主力選手の大量退団による穴は大きく、若い選手がこれを機会と捉えて成長できるかどうかが、そのまま今季のペナンの成績に反映されそうです。
ボラセパマレーシアJP的注目選手:
ムハマド・ハフィズル・ハキム
昨季は給料未払いが数ヶ月間続き、シーズン途中に大量の主力選手が退団したペラで最後までチームに残ったハフィズル選手ですが、ペラは今季2部に降格したことで移籍を決意しています。ペラでは100試合近くに出場しており、28歳と老け込む歳でもないので、スランゴールに移籍したサマーヴィルの穴を埋める以上の活躍をして、代表復帰を目指して欲しいです。
タム・シャンツン
東京生まれながら両親がマレーシア人のタム選手は、昨季はクダに在籍したものの出場機会はほとんどないままペナンに移籍しています。ペナンでもいきなり先発とはならないでしょうが、プレシーズンマッチでは先発の機会も与えられているようなので、そこからスーパーサブ的な役割でも得られれば、そのユニークな背景から注目されるのではないでしょうか。
トレンガヌFC(2021年シーズンスーパーリーグ4位)
本拠地:スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴンバダ)
2021年シーズン成績:4位(11勝5分6敗)得点33(リーグ5位)失点20(同2位)
過去5シーズンの成績:2017年2部2位-2018年5位-2019年7位-2020年3位-2021年4位
監督:ナフジ・ザイン(マレーシア)
外国籍選手(*は新加入選手):
*FWクパー・シャーマン(リベリア-クダ・ダルル・アマンFCから加入)
*FWチェチェ・キプレ(コートジボアール-クダ・ダルル・アマンFCから加入)
FWジョーダン・ミンター(ガーナ)
MFハビブ・ハルーン(バーレーン-AFC枠)
*MFマヌエル・オット(フィリピン/ドイツ-アセアン枠)
*MFルーク・ウッドランド (フィリピン/英国-アセアン枠)
*DFパペ・ディアキテ(セネガル)
DF渡邉将基(日本-AFC枠)
DFアルグジム・レゾヴィッチ(モンテネグロ)
主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
GKスハイミ・フシン
GKラハディアズリ・ラハリム
#DFアリフ・ファジラー
#DFシャールル・ニザム
DFアザム・アズミ
DFアザルル・ナズリス
DFアディブ・ザイヌディン(JDT IIから加入)
MFファイズ・ナシル
MFニック・アキフ
#FWハキミ・アブドラー
#FWファイサル・ハリム
チーム紹介:
打倒JDTの一番手と目された臨んだ昨季のトレンガヌは、第10節でJDTにとっては2季ぶりとなる黒星をつけるなど開幕前の予想に違わず、W杯予選によりMリーグが中断された第13節までの成績が8勝3分2敗とJDTを勝点差3で追走しました。しかし、およそ2ヶ月半後にMリーグが再開されると、JDTが残り9試合を全勝したのに対し、トレンガヌは3勝2分4敗と失速、特に最後のシーズン最後の5試合は1勝1分3敗で最終的には2019年シーズンよりも順位を下げて4位となりました。シーズン終了後には終盤の失速劇を重く見た経営陣が2019年途中から指揮を取るナフジ・ザイン監督との契約をなかなか更改せず、一時は交代も報じられましたが、結局、4季目も監督と務めることが発表されました。
終盤失速の原因の一つは、Jリーグのツエーゲン金沢やKリーグの浦項スティーラーズでもプレー経験があり、インドネシア1部のプルスバヤ・スラバヤでは42試合で35得点の実績を背負って加入したダビ・ダ・シルヴァが、シーズン通算7ゴールとMリーグでは前評判通りの結果が出なかったこと、そしてにそれでもナフジ監督がダ・シルヴァ選手の起用にこだわったことが挙げられます。セカンドチームのトレンガヌIIでは12試合で16得点、トレンガヌでも6試合で4得点とゴールを連発したジョーダン・ミンターを年間を通して起用せず、ダ・シルヴァ選手を最後まで使い続けた結果、シーズン最後の5試合を5得点5失点(ダ・シルヴァ選手は2得点)と逆転優勝どころかAFCカップ出場権のかかった2位も逃しています。そんなトレンガヌがシーズンオフに補強したのは、いずれもMリーグで過去3シーズンで33ゴールを挙げているクパー・シャーマン、そして過去5シーズンで46ゴールを挙げているチェチェ・キプレです。昨季はともにクダ・ダルル・アマンFCでプレーした両選手は合わせて23ゴールを挙げており、昨季のチーム総得点が33だったトレンガヌにとっては、得点力不足解消が期待できる補強となっています。
またマレーシア人選手が昨季からほぼ全員が残留したのも今季はプラスに作用しそうです。若い選手を多く起用した昨季は、リーグとマレーシアカップを合わせるとチーム最多の10ゴールを挙げ、覚醒した感のある24歳のファイサル・ハリム、リーグ戦21試合出場中12試合が途中出場とスーパーサブ的な使われ方をしながら5ゴールを挙げて、A代表に今年初めて招集された22歳のハキミ・アブドラ、そして今季はトップチームでの起用が増えるであろう、AFCU23アジアカップ予選で2ゴールを挙げたMFアズファル・フィクリに加えて、リーグ2位の20失点を支えたアリフ・ファジラー、シャールル・ニザム、アザム・アズミのDF陣も全員が20代前半で、昨季の経験を生かすことができれば、今季もJDTを脅かす一番手となりそうです。
ボラセパマレーシアJP的注目選手:
ファイサル・ハリム
それまで5シーズンを過ごしたパハンから移籍した昨季、ファイサル選手は、チームで唯一となるリーグ戦とマレーシアカップ全試合となる31試合先発を果たしています。一時はスペインのクラブが獲得に興味を示したという報道もありましたが、結局、それ以降は何もなかったようで今季もトレンガヌでプレーするようです。本来は左ウィングですが、タン・チェンホー前代表監督は、スズキカップ2020ではセンターフォワードとして起用するなど持ち味が活かされない場面がありましたが、キム・パンゴン新監督の元では自慢のスピードを駆使して本来のポジションでレギュラー獲得を目指して欲しい選手です。
タラハディアズリ・ラハリム
次世代の代表GK候補として19歳ながら昨年3月末のA代表合宿に招集されたものの、その合宿中に膝前十字靭帯ACL断裂の重傷を負ったタラハディアズリ選手は、このケガにより昨季を棒に振っています。今季はまずはセカンドチームのトレンガヌIIでの復活を目指すことになりそうですが、180cmに満たないマレーシア人GKが多い中で190cm超えの長身はそれだけで魅力的なので、是非、トップチームでのプレーを見てみたいです。