1月31日のニュース:2020年マレーシアサッカー重大ニュース(後編)

2020年最後の1日は昨日の前編に続き、今年のマレーシアサッカーをボラセパマレーシアJP的視点」振り返ります。

クラブ民営化がスタートも州サッカー協会の影響力は変わらず
 国内リーグMリーグは州対抗戦から発展した経緯があり、各州のサッカー協会(州FA)が運営するクラブが今季2020年シーズンで言えば、1部は12クラブ中7クラブが、2部は12クラブ中8クラブあります(2部は1部在籍クラブのセカンドチームも含む)。さらに政府系企業や警察、国立大学などの公的機関によって運営されているクラブも含めれば、1部と2部合わせた24クラブ中、民営化されているのは1部ではJDTとPJシティFC、2部はJDTのセカンドチームJDT IIの3クラブだけです。
 過去数年に渡ってリーグ参加クラブを民営化するようアジアサッカー連盟AFCから勧告を受けていたマレーシアサッカー協会FAMがようやく重い腰を上げたのが今年でしたが、そこで起こったのが新型コロナウィルスによるリーグ中断。州政府などの抗菌による支援を受けていたクラブは軒並み経営危機に陥りました。クラブは選手や監督、コーチの給料をカット、カットでも対応できる昨日取り上げた給料未払いとなる最悪のケースもありました。
 この公的資金依存体質を改善することも目的の一つとされるMリーグクラブの民営化ですが、FAMが全クラブが州FAから分離され民営化が完了したことを発表しても、クラブ関連のニュースが相変わらず州FAの公式サイトで発表され、運営会社の役員も州FAからの横滑りといった人事も見られます。FAMは「完全」民営化まで2年間の猶予を各クラブに与えていますが、それまでは見た目が変わっただけの旧態依然とした状況が続きそうです。

代表選手の国外リーグ挑戦はほぼ失敗
 去年から国外でプレーするドミニク・タン(タイ1部ポリス・テロFC)に加え、ノーシャルル・イドラン・タラハ(タイ1部BGパトゥム・ユナイテッド)、モハマドゥ・スマレ(タイ1部ポリス・テロFC)そして期限付き移籍でサファウィ・ラシド(ポルトガル1部ポルティモネンセSC)が今季は国外でのプレーを選びました。
 しかしノーシャルル選手は今年12月いっぱいまでの契約が延長されず退団、給料未払い問題を理由にパハンFAを離脱したスマレ選手も同様に12月以降の契約更新がなく対談が濃厚です。また1年間の期限付き移籍でポルトガルへ渡ったサファウィ選手も1度もリーグ戦に出場することなく帰国が決まっています。
 その一方で2年目のタン選手は先発フル出場する機会も増えているので、1年足らずでマレーシアへ戻る選手たちにはもう少し腰を落ち着けてプレーする覚悟があれば…といったところでしょうか。
 フル代表の選手が国外でパッとしない一方で、U19代表のルクマン・ハキム・シャムスディンがベルギー1部コルレイクKVと5年契約を結び、U23代表のハディ・ファイヤッドがJ2のファジアーノ岡山で3年目の契約更新を行うなど若い選手に期待する方が楽しみかもしれません。(ハディ選手はその後、出場機会を求めてJ3のアスルクラロ沼津へ期限付き移籍しています。)

日本人トリオがクチンFAの躍進に貢献
 クチンFAは昨季2019年はMリーグの3部に当たるM3リーグで2位となり、入れ替え戦に勝利して今季2部に昇格したクラブです。そのクチンFAは今季2部で4位と大躍進を果たしましたが、それを支えたのがMリーグで初の日本人監督となった東山晃監督と昨年からクチンFAでプレーする鈴木雄太選手、そして大卒即プロデビューとなった谷川由来選手の日本人トリオです。
 リーグ上位に与えられるマレーシアカップへもクラブ史上初めて出場も果たし、クラブの歴史に名前を残した3名ですが、東山監督と谷川選手はケランタン・ユナイテッドFCへ加入し、鈴木選手は来季もクチンFAでプレーします。

中武駿介がアシスト王に
 所属したMリーグ2部ヌグリスンビランFAは今季11位となったものの、チームの12ゴールの半数近くに絡む5アシストを記録し、クチンFAのハドソン・ディアスと共にリーグのアシスト王に輝いています。
 今季終了後には複数クラブからオファーを受けながら引退を選択したのは残念でしたが、2016年に今は消滅してしまったクアンタンFAに加入し、PDRM FC、そしてヌグリスンビランFAとMリーグで長きに渡ってプレーした中武選手。本当にお疲れ様でした。

Mリーグに日本出身選手が急増
 昨季2019年シーズンは上記の鈴木選手(クチンFA)や中武選手(ヌグリスンビランFA)の他、1部のフェルダ・ユナイテッドFCに渡邉将基選手、池田圭選手が、2部のトレンガヌFC IIには鈴木ブルーノ選手と5名しかいなかったMリーグの日本出身選手ですが、今季2020年は渡邉選手はケランタンFAへ移籍し、池田選手は退団、他の3選手は昨季と同じチームに所属しました。この4名に加えて、フェルダ・ユナイテッドFCには恵龍太郎選手が、クチンFAには谷川由来選手が、JDT IIには廣瀬慧選手が加入した他、M3リーグにも岸健太(PIB FC)、木下怜耶(アルティメイトFC)、高山龍(ランカウィシティ)、宮崎崚平(ムラワティFC)、米澤淳司(スマラクFC)の5名の日本出身選手が加入し、日本出身選手の数が昨季の倍以上になりました。
 この内、鈴木雄太選手は来季もクチンFA、谷川選手はケランタン・ユナイテッドFC加入、渡邉選手は同じマレー半島東海岸のトレンガヌFC II加入が発表されています。また廣瀬選手は2年契約の2年目で、この4選手は来季もMリーグで観戦できそうです。
 さらにケランタン・ユナイテッドFCにビッグネーム加入!昨日12月30日に元日本代表の本山雅志選手が加入することが発表されました。
 マレーシアのトランスファーウィンドウは来年2月1日までなので、今後も日本人選手が増えることを期待して、今年のブログを締めくくらせていただきます。皆様、良いお年をお迎え下さい。

1月30日のニュース:2020年マレーシアサッカー重大ニュース(前編)

世界中が新型コロナウィルスに振り回された2020年はマレーシアも御多分に洩れませんでした。異例ずくめだった今年のマレーシアサッカーをボラセパマレーシアJP的視点で2日間に分けて振り返ります。

Mリーグの長期中断と試合数半減
 2月28日に昨年2019年のMリーグ1部覇者ジョホール・ダルル・タジムJDTと同年のFAカップ覇者クダFAの対戦で開幕した今季のMリーグでしたが、新型コロナウィルスの影響を受け3月15日に開催された第4節をもって中断期間に入りました。
 その後、8月28日の第5節開催まで5ヶ月以上の中断期間を強いられたMリーグ主催者のマレーシアンフットボールリーグMFLは、今季の日程をMリーグ1部、2部ともに通常の22試合から11試合へと半減して開催することを発表。今季のMリーグは最終的に各チーム1回戦総当たりという変則日程となりました。
 マレーシアサッカーの年間カレンダーは、1年間を大きく分けると前半はMリーグ、後半はマレーシアカップ、そしてMリーグの合間にFAカップという日程が通例ですが、今季は5ヶ月を超える中断期間によりFAカップは中止となりました。
 また8月のリーグ再開後はMリーグの全試合が無観客試合として開催されました。

マレーシアカップが1回戦開催後中止
 第1回大会が1921年(大正10年)に開催されたマレーシアカップは日本の天皇杯とともにアジア最古のカップ戦の一つです。マレーシア(当時は英領マラヤ)も戦場となった1942年から47年の太平洋戦争による中断時期を除き、毎年開催されてきたこの大会も、10月31日のMリーグ閉幕から1週間ほどで開催された11月初旬の1回戦終了後に国内感染者数が急増したことから、急遽、中止に追い込まれました。

M3リーグが中止
 Mリーグ3部にあたるセミプロリーグのM3リーグは、1部と2部より遅れて3月初旬に開幕しましたが、第2節を終えた時点で今季の中止が発表されました。
 1部と2部のクラブと比べると、スタジアムでなく観客席のないフィールドをホームとするクラブもあり、いわゆるソーシャルディスタンスを厳格に適応することができないことが理由とされましたが、M3リーグには経営基盤が万全でないクラブもあり、長期中断よりは中止を歓迎する声が上がったことも報じられました。
 今季のM3リーグには岸健太(PIB FC)、木下怜耶(アルティメイトFC)、高山龍(ランカウィシティ)、宮崎崚平(ムラワティFC)、米澤淳司(スマラクFC)の5名の日本出身選手が加入し、個人的には観戦をとても楽しみにしていましたが、残念ながら実現しませんでした。

JDTがMリーグ7連覇
 短縮日程となったMリーグ1部はJDTが9勝2分0敗、得失差25で2位のクダFAに勝点差7をつけた圧勝で7連覇を飾っています。
 優勝を決めたホームゲームでは、リーグ再開後は無観客試合とされていたにも関わらず選手家族をスタジアム観戦させて味噌をつけました(但しこれはJDTには何の落ち度もなく、それを許可したリーグ主催者MFLに非があります)が、対抗馬とされたクダFAやスランゴールFCが取りこぼしを繰り返すのを尻目に淡々と勝利を積み重ねた結果の順当な連覇でした。

JDTのACL辞退
 昨季のリーグ王者としてAFCチャンピオンズリーグACLに出場したJDTは、グループステージ開幕戦となったアウェイのヴィッセル神戸戦では1−5と大敗を喫したものの、次戦のホームでは今大会ベスト8に残った水原三星を2-1と撃破し、昨季の鹿島アントラーズ戦に続くACL2勝目を挙げ、1勝1敗と星を五分に戻したところでACLが新型コロナウィルスにより中断しました。
 一時はマレーシア国内での集中開催も発表されたACLグループステージでしたが、マレーシア国内の新規感染者が増加傾向にあったことから開催は取りやめ、結局は11月にカタールで集中開催が決定したものの、この時点で出入国を厳しく管理していたマレーシア政府は国外で開催されるACLへの出場に対してJDTに「強い勧告」を行い、これを受け入れたJDTは残り試合への参戦を辞退、これにより既に終了していたグループステージ2試合の結果も無効となりました。

複数クラブで給料未払いが明らかに
 今季ピッチ外での話題の中でボラセパマレーシアJPが最も多く取り上げたのが給料未払い問題でした。給料未払い問題はいわばマレーシアプロサッカーが抱える慢性的な問題であり、今に始まったことではありませんが、今季は特に新型コロナウィルスの影響で主な収入源の入場料収入を失い、さらに後ろ盾となる州政府(リーグ参加クラブの半数以上を占める州サッカー協会が運営するMリーグクラブは州政府から運営資金援助を受けています)がやはり新型コロナウィルスへの対応で予定外の出費を強いられた皺寄せで資金が削減されるなど、例年にも増して給料未払い問題がほじられる回数が多かった気がします。例えば今季Mリーグ1部に昇格したばかりのPDRM FCは、給料未払い問題を理由にリーグ開幕前に勝点3剥奪の処分を受け、勝点-3からのリーグスタートとなったことを皮切りに、同じ1部のマラッカ・ユナイテッドFC、さらに2部のケランタンFAも勝点3剥奪処分を受けました。(なおPDRM FCは結局、勝点-1でシーズンを終えています。)
 この他、開幕前に大型補強を行いJDTの連覇を阻む最有力候補の一つと見られていたクダFAがリーグ中断前の4試合を1勝1分2敗と予想に反する苦戦ぶりを見せましたが、のちに選手や監督、コーチには3月途中から給料が未払いとなっていることが明らかとなりました。給料未払い問題解決の目処がついたリーグ再開後は6勝0分1敗の成績を収めただけに残念でした。
 さらにリーグ中断期間中の8月には給料未払いを理由に1部パハンFAに所属するモハマドゥ・スマレがチームを離脱し、タイ1部のポリス・テロFCへ加入、一方のパハンFAは契約違反でスマレ選手を非難する事態になっています。

フェルダ・ユナイテッドFCがMリーグ撤退
 短縮された今季日程も最終節第11節を残すばかりとなった10月初旬に発表されたのがフェルダ・ユナイテッドFCが今季をもってMリーグから撤退するというニュースでした。
 政府系機関の連邦土地開発公社フェルダが運営するフェルダ・ユナイテッドFCは2007年創設と新しいクラブではあるものの、2部での優勝2回、1部でも2016年は2位、翌2017年も3位の成績で、2017年にはAFCカップに出場経験もあります。
 今季は降格圏との境界を行き来する成績だったフェルダ・ユナイテッドFCは、これまでのクラブ運営会社から本社に経営権が移った直後の撤退発表により、最終節に勝利すれば1部残留の可能性が残されていた中、スランゴールFCに6−1と大敗し、2部降格となりました。
 その後、旧運営会社の関係者が新たなスポンサーを獲得しクラブの存続を目指したものの、MFLはそのスポンサーの経営基盤が脆弱だとして旧経営会社関係者によるMリーグ参加存続の申請を却下し、Mリーグ撤退が決まりました。
 この他、同様に主要スポンサーだったマレーシア国立大学UKMがスポンサー撤退を表明した2部のUKM FCもMリーグ撤退が決まっています。

12月16日のニュース:FAMは前AMD責任者のリム氏のコメントに反論、タイ1部リーグ第14節-タンとスマレが揃って先発しチームは9試合ぶりの勝利、前スランゴールFC監督はサラワクUのTDに就任

FAMはリム氏のコメントに反論
 マレーシアサッカー協会FAMとマレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会NSCが共同で運営する「U20育成チーム」は来季2021年のMリーグ2部に参加しますが、この案にNSC傘下の国家サッカー選手養成プログラムやその中核となるエリートアカデミーのモクタル・ダハリアカデミーAMDの前責任者であるリム・ティオンキム氏が反対しているという記事を昨日、紹介しましたが、FAMは早速これに反論しています。
 FAMのスバハン・カマル会長代理は、リム氏のコメントはあくまでも彼個人の見解であり、FAMは国内の若い選手に継続して実践経験を積ませることを重視しており、今回のリーグ参加はその場を提供することが目的である。」と話しています。
 さらにカマル会長代理は「FAMは若い選手、特にAMDの卒業生については、国内リーグでしか通用しない選手に育てるのではなく、フル代表で他国の代表選手と渡り合った際に役立つような経験を積ませたい。」と話し、将来的にはさらに経験を積むために国外遠征も視野に入れていることを明らかにしています。
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 アイディア自体は悪くないとは思いますが、カマル会長代理が話すように、将来の代表育成が目的ならば、なぜAMD卒業生40名全員を囲い込まず、トップ層の12名だけはスランゴールFCとJDTと契約させたのかが疑問です。この年代のトップの育成はクラブ任せで、いわばどのチームも欲しがらなかった残り物の選手(失礼!)をFAMとNSCで育成、しかもその方法は単に既存のリーグに参加させるだけで将来の代表選手が育成できるのなら、苦労はありません。

タイ1部リーグ第14節-タンとスマレが揃って先発しチームは9試合ぶりの勝利
 タイ1部リーグは第14節が行われ、代表のドミニク・タンとモハマドゥ・スマレが所属するポリス・テロFCは滝雅美監督率いるラヨーンFCとホームのブンヤジンダースタジアムで対戦し1−0と勝利しています。この勝利は9月13日以来となる9試合ぶりの勝利です。
 これまでの出場はいずれも途中からだったスマレ選手が初めてスタメン出場し、タン選手と揃ってスタメンに名を連ねた初の試合で、タン選手はフル出場、前節はケガのためにチームの遠征にも帯同しなかったスマレ選手は57分に交代しています。なおスマレ選手と交代して出場したキーラティ・ケアウソムバットがポリス・テロFCの唯一のゴールを決めています。
 この勝利でポリス・テロFCは5勝4分5敗となり9位に浮上、敗れたラヨーンFCは2勝1分11敗で最下位の16位となっています。
 次節第15節でポリス・テロFCは現在、14位のナコーンラーチャシーマー・マツダFCとアウェイで対戦します。

前スランゴールFC監督はサラワクUのTDに就任
 マレーシアの通信社ブルナマはMリーグ1部スランゴールFCのサティアナタン・バスカラン前監督がMリーグ2部のサラワク・ユナイテッドFCのテクニカルディレクターに就任したと報じています。契約期間は2年ということです。
 2013年のMリーグ2部プレミアリーグ優勝以来タイトルから遠ざかっているサラワク・ユナイテッドFCは今季は2部で10位と低迷しています。
 サティアナタンTDは、2022年シーズンでの1部昇格を果たすため、U21やU19チームを含めた若手の育成プログラムを担当し、今季に続き来季もチームの指揮を取るエラヴァラサン・エランゴワン監督とともに、サラワクFA時代のかつての栄光を取り戻す力になりたいと話しています。
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 サラワク・ユナイテッドFCについては、代表FWのノーシャルル・イドラン・タラハや今季のスランゴールFCで主将を務めたテイラー・リガンの加入をニュースを取り上げましたが、即戦力補強だけでなく、このサティアナタンTDの就任によりサラワク・ユナイテッドFCの本気度が伝わってきます。
 ただし気になるのが、サラワク・ユナイテッドFCにはこのサティナ監督と反りが合わず、スランゴールFCを退団しこのサラワク・ユナイテッドFCに移籍したアムリ・ヤハヤがいます。TDが直接、トップチームの運営に関わることはないかも知れませんが、遺恨再燃が心配ではあります。

12月14日のニュース:スランゴールFCはドイツ出身DFと契約、ペナンFCはタジキスタン出身FW獲得、サラワクUにはマットヨーと前スランゴールFC主将が加入か、クアラルンプールUのCEOにMリーグ中継のコメンテーターが就任

スランゴールFCはドイツ出身DFと契約
 Mリーグ1部のスランゴールFCは公式Facebook上で、ドイツ出身のティム・ホイバッハの加入を正式発表しています。
 32歳のホイバッハ選手は身長192cmのDFで、イスラエル1部リーグのマッカビ・ネタニヤFCからの加入となっています。2017年にマッカビ・ネタニヤFCへ移籍する前にはドイツリーグのボルシア・メンヒェングラートバッハや1.FCカイザースラウテルンのリザーブチームなどでのプレー経験もあるということです。
 2017年からプレーするマッカビ・ネタニヤFCでは過去4シーズンで82試合に出場しています。
 「アジアではこれまでプレーしたことがないが、新たな挑戦の場としたい。」と話すホイバッハ選手はに、ドイツ出身で来季からスランゴールFCの指揮を取るカルステン・ナイチェル新監督とすでにドイツ国内で面会を済ませていることも明かしています。
 「ナイチェル監督の元でプレーしたことはないが、かつては敵味方に分かれて試合をしたことはある。面会した際にはナイチェル監督の考えや自分に期待していることなどを聞くことができた。」と話すホイバッハ選手は、スランゴールFCの試合はYoutubeなどで観戦済みということで、ナイチェル新監督とともにスランゴールFCでの新たな挑戦を楽しみにしていると話しています。
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 この記事とは別に、昨年の東南アジア競技大会通称シーゲームズに出場するU23代表に招集されながら、書類不備で参加できなかったアメリカ在住でアメリカ1部MLSのスポーティングカンザスシティに所属するワン・クザイン・ワン・カマルが最近、クラブから放出されており、スランゴールFCが彼を獲得するのではという噂が実しやかに流れています。

ペナンFCはタジキスタン出身FW獲得
 今季はMリーグ2部で優勝し、来季1部へ昇格するペナンFCは、公式インスタグラムでタジキスタン出身のシェリディン・ボボエフの加入を発表しています。
 21歳のボボエフ選手は182cmのセンターフォワードで、タジキスタン1部リーグで7連覇中のイスティクロル・ドゥシャンベから加入します。トランスファマルクトの記録では今季2020年シーズンは16試合に出場し、10ゴールを挙げているようです。
 ペナンFCは今季もプレーしたカサグランデ、エンドリック・サントス、ラファエル・ヴィトールのブラジルトリオは残留することが決まっている他、インドネシア1部のプルシジャ・ジャカルタよりリュウジ・ウトモが期限付き移籍で加入しており、外国籍選手のアジア枠を埋めるボボエフ選手の加入で、外国籍選手枠は全て埋まりました。
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 ペナンFCのアジア枠には日本人選手も候補に上がっているという報道もありましたが、実現しなかったようです。

サラワクUにはマットヨーと前スランゴールFC主将が加入か
 サッカー専門サイトのヴォケットFCは、今月いっぱいでタイ1部BGパトゥム・ユナイテッドを退団する代表FWのマットヨーことノーシャルル・イドラン・タラハと今季はスランゴールFCで主将を務めたオーストラリア出身のDFテイラー・リガンが、Mリーグ2部のサラワク・ユナイテッドFCに加入すると報じています。
 ノーシャルル選手のMリーグ復帰を明かした代理人のワン・モハマド・アンワリ氏は、サラワク州サッカー協会が運営するサラワク・ユナイテッドFCがかつての栄光を取り戻したいという目標に対し、BGパトゥム・ユナイテッドで出場機会がなかった代表FWノーシャルル選手がタイからの移籍に合意した結果であると話しています。
 またスポーツ専門サイトのスタジアムアストロは、今季スランゴールFCで主将を務めたテイラー・リガンも同じサラワク・ユナイテッドFCへ加入すると報じています。
 2016年にヌグリスンビランFAでプレーした後、一旦は母国オーストラリアの1部リーグのアデレード・ユナイテッドに復帰しましたが、2019年にスランゴールFCに加入し、今季まで2年間プレーしています。
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 同じサラワク州内に拠点を持つクチンシティFCは今季2部で4位に躍進し、大きく差をつけられた格好のサラワク・ユナイテッドFCですが、この大型補強で巻き返しとなるのでしょうか。

KLユナイテッドFCのCEOにMリーグ中継のコメンテーターが就任
 今季Mリーグ2部で3位となり来季は1部に昇格するクアラルンプール・ユナイテッド(来季から、今季まではクアラルンプールFA)を運営するKLユナイテッドFC社は、新CEOとしてスタンリー・ベルナルド・ステファン・サミュエル氏の就任を発表しています。
 スタンリー氏は、現在はMリーグ中継やサッカー関連番組のコメンテーターとして知られていますが、現役晩年はクアラルンプールFAでプレーした他、インドI(アイ)リーグのスポルティング・クルーベ・デ・ゴアでプレーし、インドリーグでプレーした初めてのマレーシア人でもあります。また代表でのプレー経験もあります。

11月28日のニュース:前TFC主将はパハンFAへ移籍が決定、ニレノルドはUITM FC残留を発表、CIMBとエアアジアはMリーグとのスポンサー契約終了

リー・タックはパハンFAへ移籍が決定
 今季Mリーグ1部のトレンガヌFC(TFC)で主将を務めたリー・タックのパハンFA加入が発表されています。
 マレーシア語紙ブリタハリアン電子版によると、英国出身のFWリー・タックとアルゼンチン出身のFWセルヒオ・アグエロがMリーグ1部でパハンFAへ加入したことを、パハンFAのモハメド・スフィアン・アワン チームマネージャーTMが発表しています。
 「交渉の結果、タック選手とアグエロ選手は来季、パハンFAのユニフォームを着ることになった。今季から残留する外国籍選手は(フランス出身のDF)エラルド・グロンのみなので、来季に向けて残るアジア枠と東南アジア(アセアン)枠の外国籍選手を獲得したい。」とスフィアンTMは話しています。
 タック選手と、昨季はMリーグ2部のペナンFAでプレーし、今季はM3リーグのクアラルンプールローヴァーズでプレーしたアグエロ選手に加えて、ストライカーとディフェンダーの外国籍選手をそれぞれもう一人づつ獲得したいと話すスフィアンTMは、パレスチナ、韓国、オーストラリアやシンガポール出身の選手が現在、セレクションに参加していると話しています。

ニレノルドはUITM FC残留を発表
 今季1部昇格ながらMリーグでは6位と好成績を収めたUITM FCですが、今季在籍した外国籍選手5名の内、フランス出身で今季は主将を務めたDFヴィクトル・ニレノルドだけが契約を更新して来季も残留を決めた様です。
 UITM FCのムスタファ・アフマド チームマネージャー(TM)はニレノルド選手の残留はフランク・ベルンハルト監督の意向もあり決定したことを明かした上で、リーグ4位となる15失点と健闘した守備陣の中心として活躍した今季同様、来季も安定したプレーを見せるだけでなく、若い選手の成長にも力を貸して欲しいと話ています。
 UITM FCの他の外国籍選手はMFラビー・アタヤ(レバノン)がクダFAと契約間近と報じられている他、FWグスタヴォ・ドス・サントス(ブラジル)、MFウスマン・ファネ (フランス)、FWマーク・ハートマン(フィリピン)らも残留を希望しなかったことが既に報じられています。

CIMBとエアアジアはMリーグとのスポンサー契約終了
 今季Mリーグ1部スーパーリーグの冠スポンサーをCIMBとMリーグの公式航空会社としてスポンサー契約をしていたエアアジアは、来季2021年シーズンはいずれもスポンサー契約を継続しないことが明らかになりました。
 これを報じたマレーシア語紙ブリタハリアン電子版は、Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOが、今季は新型コロナウィルスによる非常に困難な時期だったとして、両社によるスポンサーシップにMFLは感謝していると話していることを伝えています。さらにガニCEOは、国内第二の金融グループCIMBとアジア最大の格安航空会社の一つエアアジアのスポンサー契約終了によって、来季のリーグ運営に支障が起こることはないとも話しています。
 この他のスポンサーでは、マレーシア最大の通信事業者であるテレコムマレーシアとMFLは既に会合を行い、来季もスポンサー契約を継続することが決まっている他、飲料メーカーのF&N社も物品提供という形でのスポンサー契約を続けるということです。またFAカップの冠スポンサーで電子商取引サイトを運営するShopee社とは、来季、スタジアムでの観戦が許可されることを前提に現在交渉中だとしています。


 

11月24日のニュース:代表監督はW杯予選再開に向けて過密日程による選手のコンディションを憂慮、マット・ヨーは今季限りでBGパトゥムUを退団、トレンガヌFC退団の主将がパハンと交渉

代表監督はW杯予選再開に向けて選手のコンディションを憂慮
 タン・チェンホー代表監督は、来年3月に再開予定のFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選を前に、最大の懸念材料として選手のコンディショニングを挙げていると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 タン監督は代表選が全くなかった2020年は、Mリーグの試合数も半減された上、マレーシアカップも中止となり、代表候補選手たちが真剣勝負の場を失ったことから、選手たちのコンディション不良が問題になる可能性を指摘しています。
 「代表監督として選手たちのコンディションに対する不安はある。今年は一度も代表合宿を開催することができず、国際親善試合も組むことができなかった。選手の健康と安全が心配なことは理解できるが、これほど長期間にわたり代表合宿も代表戦も行われない状況下では、選手のパフォーマンスに影響が出ることは必至である。」と話すタン監督は、年が明けて2021年になっても、2月に開幕するMリーグに備えて選手は所属クラブでの練習が中心となることから、代表合宿への招集はFIFAの国際マッチデー直前の3月半ばまでできないことも悩みの種であるとしています。
 残る3試合のアジア二次予選の内、3月25日にはアラブ首長国連邦戦(アウェイ)、3月30日にはベトナム戦(ホーム)が予定されていますが、両国はいずれも既に国際親善試合や代表合宿を行なっていることから、タン監督はマレーシア代表が難しい状況にいることは認めて上で、2月のMリーグ開幕後の過密日程に備えて選手一人一人が肉体と精神の両面でしっかり準備をしてくれることに期待するしかないと話しています。

マット・ヨーは今季限りでBGパトゥムUを退団
 マット・ヨーの愛称で知られる代表FWノーシャルル・イドラン・タラハは今季限りで在籍するタイ1部リーグのBGパトゥム・ユナイテッドを契約満了により今年いっぱいで退団すると、サッカー専門サイトのGoal. comタイ版が報じています。
 ノーシャルル選手は今季2020年シーズン前に、Mリーグ1部のパハンFAからBGパトゥム・ユナイテッドで移籍しました。2月15日の開幕戦ではスタメン出場で前半し流量とともに交代、第2節でもスタメン出場して75分間プレーしたものの、第3節は出場機会がなく、第4節はベンチ入りせず、タイリーグは新型コロナのため中断しました。
 9月に再開された後も11月21日に開催された第12節までで、第8節は先発出場し61分間プレーし、また第10節は途中出場で12分間プレーしたものの、それ以外は出場機会がなく、ベンチ入りすらしなかった試合も数試合あります。
 しかもBGパトゥム・ユナイテッドはMリーグ1部のジョホール・ダルル・タジムからFWジオゴを獲得した他、Jリーグ清水でプレーするタイ代表FWのティーラシン・デーンダーの獲得もタイメディアが報じており、その辺りもノーシャルル選手の契約が更新されたなかった理由の一つとされています。
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 自由な渡航が制限されているマレーシアでは、国外からの選手の獲得が難しいことから、ノーシャルル選手はMリーグへの復帰が濃厚ですが、個人的にはタイで新たなクラブを探してプレーを続け、ポリス・テロFCのドミニク・タンやムハマドゥ・スマレとともにタイリーグにマレーシア人選手としての足跡を残す様な活躍をして欲しいです。

トレンガヌFC退団の主将がパハンと交渉
 マレーシアカップ中止により、Mリーグ3位ながら棚ぼたでAFCカップ出場枠を獲得したトレンガヌFCは、多くの若手選手との契約を更新する一方で、今季のチーム得点王FWドミニク・ダ・シルバや主将のMFリー・タックなど高額がネックとされる外国籍選手との契約を更新しない方針を明らかにしています。
 2017年のヌグリスンビランFAへ入団して以来、Mリーグでプレーし続けているリー・タックが同じMリーグ1部のパハンFAと交渉をしていることを、パハンFAのチームマネージャーTMが認めていると、マレーシア語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。
 パハンFAのモハマド・スフィアン・アワンTMはタック選手の他に、一昨年はペナンFAでプレーしたアルゼンチン出身のFWセルヒオ・アグエロ(マンCのアグエロとは当然別人です)との交渉中であることを認めています。なおアグエロ選手は、今季はMリーグ3部に当たるM3リーグのクアラルンプールローヴァーズに所属していました。
 この二人との交渉が明らかになったことで、契約期間1年が残っているDFエラルド・グロンが残留する一方で、今季、パハンFAに在籍していたFWイヴァン・カルロス(ブラジル)やDFカリル・カミス(レバノン)、MFアダム・リード(フィリピン)らは対談が濃厚であると記事は結ばれています。

11月5日のニュース:UKM FCは来季のMリーグ2部参加を諦めない、サラワク州FA会長がMリーグ脱退を示唆も反対派が州FA会長に辞任を求める

UKM FCは来季のMリーグ2部参加を諦めない
 Mリーグ2部のUKM FCはクラブ運営のメインスポンサーとなっていたUniverisiti Kebangsaan Malaysia(UKM)マレーシア国立大学が来季以降の運営に関わらないことを発表し、クラブ存続の危機にありました。クラブの新たな運営会社となったヴァーシティボーイズ社は、来季に向けて新たなスポンサーを獲得し、その支援に基づく運営計画をマレーシアサッカー協会FAMに提出しましたが、運営資産に問題ありとの判断から、来季のMリーグ参加は不可との決定を下されています。
 しかしこのバーシティーボーイズ社が新たなスポンサーがさらなる資金の投入を決定したとして、来季もMリーグ2部への参加を画策していると、マレーシア語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。
 ヴァーシティーボーイズ社によると、未だ名前を明かしていないこのスポンサーは、現在のスポンサーという立場からクラブのオーナーになる意思を示しているということです。これにより新たなオーナーは350万リンギ(およそ8760万円)の資金を追加で投入し、これに他の複数のスポンサーからの支援を合わせると、クラブの来季の運営予算はおよそ500万リンギ(およそ1億2500万円)に達するとしています。
 ヴァーシティーボーイズ社の関係者は「追加投入される350万リンギがあれば来季、2部リーグに参加するのに十分だと考えている。他のクラブのような大盤振る舞いはできないものの、手始めに獲得する外国籍選手を2名程度にするなどの方法を考えている。経営状況に関する書類は近々、FAMに提出されることになっており、来季は2部への参加が可能だと確信している。」と話しています。
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 フェルダ・ユナイテッドFCとUKM FCが来季のMリーグ残留をめぐって、FAMとやり取りする様子を見ながら思うのは、両クラブとも来季は3部リーグのM3リーグに参加し、そこで優勝して2部昇格を目指す、という方針ではダメなのだろうか、ということです。Mリーグは両クラブが1部と2部に参加はできないとしていますが、これは2部までがプロリーグという扱いであるからで、セミプロリーグの3部以下への参入については、これを特に否定はしていません。
 またUKM FCの運営会社のコメントにもありますが、例えば外国籍選手枠をフルに使わなければ、他のクラブに比べて戦力は低下するわけで、例え2部に参加することができても他のクラブと争えるだけの戦力を用意できなければ、来季は下位に低迷し、結局は3部に降格、そしてその結果スポンサー撤退となる可能性があります。
 民営化は、クラブにとっても初めての経験ですが、そういったクラブを支援するスポンサーにとっても新たな経験となるはず。クラブに理念がなく、スポンサーもクラブを単なる広告塔としか見ていないのであれば、今年起こるはずだった悲劇が単に来年に先延ばしになるだけのような気がします。

サラワク州FA会長がMリーグ脱退を示唆も反対派が州FA会長に辞任を求める
 サラワク州のサッカー専門サイトのサラワククロックスは、サラワク州サッカー協会(サラワク州FA)のポサ・マジャイス会長が、財務状況が改善しないことからMリーグ撤退の可能性について言及したと報じる一方で、サラワク州FAの全会長を含む州内の有力サッカー関係者がこぞってポサ会長の辞任を求めていることも同時に報じています。
 ポサ会長は財務状況を改善する方法がなければ、サラワク州FAは来季のMリーグから撤退する他に手段はないと話しています。
 ただしここでサラワククロックスが疑問視しているのは、サラワク州FAがMリーグから撤退することによる影響です。サラワク州FAが運営していたMリーグ2部のサラワク・ユナイテッドFCは、このブログでも何度も取り上げた民営化によって、サラワク州FAから独立しており、サラワク州FAが直接、運営するクラブはMリーグには存在しないことになっていることから、その影響が不明であるとしています。
 その一方で、このポサ会長の発言が出た直後にかつてのサラワクFA(クラブ)の元監督を務めたアワン・マーヤン氏やサラワクFAの元選手のルーカス・カラン氏、さらには元サラワク州FA会長のワイリ・アバン氏らがポサ会長の辞任を求める記者会見を開いたことも報じられています。この席上ではサラワク州FA傘下のクラブがMリーグから脱退すればその影響は計り知れないとして、これに反対を表明しただけでなく、ポサ会長に直ちに辞任するよう求め、より経験と能力がある人物を会長にするように求めています。
 ワイリ・アバン元会長は「このような決断は州内の若い選手たちの発展を妨げるものであり、ポサ会長はサラワク州FAの財政問題を解決できる新たな会長に道を譲るべきである。」と話しています。
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 この2017年からサラワク州FA会長を務めるポサ会長は、昨季はリーグからの分配金が削減されたをめぐり、Mリーグからの脱退をほのめかすなど「武闘派」の会長である一方、サラワク州内ではその運営方法をめぐ理、今回同様、サッカー関係者から辞任を求める声が上がったこともある人物です。

10月23日のニュース:今度は国軍FCの元選手が給料未払いをFAMに告発、アイディル監督留任決定のクダFAは来季からクダ・ダルル・アマンFCに、UKM FCは給料以外に社会保障費他の納付金も未払いが発覚

今度は国軍FCの元選手が給料未払いを告発
 今季もMリーグの複数のクラブで明らかになった給料未払い問題ですが、今度は現在、M3リーグに所属する国軍FCの元選手が未払いとなっている給料についてマレーシアサッカー協会FAMに告発したようです。
 マレーシア語紙ブリタハリアン電子版によると、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長はこの告発をもとに元選手と国軍FC経営陣との工廠の仲介を行うとしています。
 「FAMは元選手からの告発を受け取っており、給料未払い問題解決のために双方の話を聞き、国軍FCが元選手との間で同意した予定通りの未払い給料支払いが行われなかった理由を確認した上で、双方が納得する解決方法を模索したい。」とスチュアート事務局長は話しています。
 かつてはMリーグ1部に所属したこともある国軍FCですが、今回の給料未払い問題を告発した選手は身元を明かしてはいませんが、クラブの元主力でマレーシア代表でもプレー経験があるものの、現在は漁師をしているということです。
 この元選手の告発によれば、2015年から毎月分割で支払われていた未払い給料ですが、その支払いが今年の4月から滞っているということです。また、この選手の他にも3名の元選手が合計で28万リンギ(およそ707万円)の未払い給料の支払いを受けていないということです。
 なお、この国軍FCはFAMがMリーグ全クラブに義務付けた民営化をM3リーグ所属ながら申請し認可を受けていますが、国軍FCの民営化認可と来季の国内リーグ参加のためのクラブライセンスについて問われたスチュアート事務局長は、「国軍FCはM3リーグに所属しているため、Mリーグ1部や2部に参加する際に必要とされるクラブライセンスの申請が必要なく、またクラブの民営化とクラブライセンス申請は関係がない。」と答えています。
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 スチュアート事務局長のコメントを読む限りでは、M3リーグ以下のリーグでは参加するクラブにはクラブライセンスが必要ないということのようですが、それでも民営化を申請した国軍FCが未払い給料問題を抱えたいたことを知った上で民営化を認めたとすれば、クラブオーナーが変わることで責任の所在が不明確になり、その結果、給料未払い問題がうやむやにされてしまう危険性に対する認識が不十分な気がします。また、未払い給料問題を把握せずに民営化を認めたとすれば、FAMによる緩い審査とその節穴ぶりがまた露呈した形になります。

アイディル監督留任決定のクダFAは来季からクダ・ダルル・アマンFCに
 アイディル・シャリン・サハク監督は他のクラブとの交渉に断りを入れ、クダFAとの新たな2年契約に同意してことが報じられています。
 マレーシアの通信社ブルナマによれば、アイディル監督の決断は今季Mリーグで2位となり来季のAFCカップの出場権を獲得したことに加え、選手と監督、コーチとの関係が良好であること、またクラブの運営サイドが現状の改善に努力していることが理由であるとしています、また、かつて監督を務めたシンガポールリーグのホーム・ユナイテッド(現ライオンシティセーラーズFC)以来のAFCカップ出場に向けて、主力選手の90%がチームに残るだろうと話しているということです。
 この他、クダFAの来季からの新クラブ名がクダ・ダルル・アマンFCとなったことが発表されています。
 新クラブ名を発表したクダ州サッカー協会(クダ州FA)のムハマド・サヌシ・ムハマド・ノー会長は、このクダ・ダルル・アマンFCの運営会社ダルルアマンFC社の株式の80%をクダ州政府の政策投資会社であるMBI社が購入し、残る20%をクダ州FAが保有することも明らかにしています。またMBI社は購入したダルルアマンFC社の株式を共同事業体を設立して保有していく予定があり、現在、複数の企業と交渉中であることも発表しています。
 またクダ州首相でもあるムハマド・サヌシ会長は、クダ州でのサッカー協会会長という役職の重要性を理解したとして、クダ州FAに提出していた辞職願を取り下げたことも明らかにしています。なおムハマド・サヌシ会長はより適切な人材を会長とすべきとして今月10月15日に辞職願をクダ州FAに提出していましたが、クダ州FAはこの辞職願の受け取りを拒否していました。

UKM FCは給料以外に社会保障費他の納付金も未払いが発覚
 Mリーグ2部で今季は9位に終わったUKM FCは、所属する選手や監督、コーチに対して6月の給料は半額のみ、7月以降は全く給料を支払っていないと、ブリタハリアンが報じています。
 この7月以降の未払い給料に加えて、クラブが負担する従業員積立基金EPFや労災補償制度SOCSOなどの納付金については今年3月から支払われていないことも明らかになっています。
 この結果、UKM FCの選手の中にはプロサッカー選手にも関わらず、生活のためにアルバイトや配車サービスなどの仕事をせざるを得なくなった者もいるということです。
 クラブの運営側も未払い給料の支払い時期を明言しておらず、UKM FCの選手たちはマレーシアプロサッカー選手会PFAMに問題解決の助けを求め、PMAMはクラブ側に2週間の猶予を与え、問題可決を図るように求めたということです。

Mリーグ2部プレミアリーグ2020年シーズン第11節結果

10月9日(金)に、2部プレミアリーグの最終節となる第11節の5試合が行われました。以下結果です。(ホームチームが左側です。) なおクアラルンプールフットボールスタジアム(クアラルンプール)で予定されていたクアラルンプールFA 対クチンFAは順延になっていますが、日程はまだ発表されていません。

10月9日(金)
トゥンク・アブドル・ラーマンスタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
ヌグリスンビランFA 1-2 サラワク・ユナイテッドFC
得点者:ヌグリスンビラン- イゴール・ルイス(48分)、サラワク-アダム・シリーン・タムビ(56分)、ミラード・ザニドプール(61分)
 ヌグリスンビランFAの中武駿介選手は先発してフル出場しています。

スルタン・ムハンマド4世スタジアム(ケランタン州コタバル)
ケランタン・ユナイテッドFC 2-1スランゴール2
得点者:ケランタン-シャールル・ハキム(28分)、ガッサマ・アルフサイネイ(58分)、スランゴール-ダニアル・アスリ(14分)

スルタン・イスマイル・ナシルディン・シャースタジアム(トレンガヌ州クアラトレンガヌ)
トレンガヌFC II 1-0 ペナンFA
得点者:トレンガヌ-ジョーダン・ミンター(88分)
 トレンガヌFC IIの鈴木ブルーノ選手はベンチ入りしませんでしたが、新聞報道によればハムストリングを痛めているということです。

タン・スリ・ダト・ハジ・ハサン・ユノススタジアム(ジョホール州ラーキン)
JDT II 0-1 ケランタンFA
得点者:ケランタン-ダニアル・アシュラフ(28分)
 ケランタンFAの渡邉将基選手はベンチ入りしませんでしたが、JDT IIの廣瀬慧選手は先発してフル出場しています。

UMアリーナ(クアラルンプール)
UKM FC 2-1 ペラII
得点者:UKM-アカニ・サンデイ(19分PK)、バキウディン・シャムスディン(52分)、ペラ-アリフ・ナジミ(48分)

マレーシアプレミアリーグ 2020年シーズン最終順位表

順位クラブ試合得点失点得失差勝点
1+^ペナンFA118212491626
2トレンガヌFC II117131714322
3+^クアラルンプールFA106312112921
4JDT II114342017315
5+ケランタンFA1153313113*15
6+クチンFA104151519-413
7スランゴール2114161723-613
8+ケランタンU114071319-612
9UKM FC113351117-612
10サラワクU113251416-211
11ヌグリスンビランFA113261220-811
12ペラ II101541011-18
^ペナンFAとクアラルンプールFAは2位は2021年シーズンの1部昇格が決定しています。
+は上位5クラブに出場資格が与えられるマレーシアカップ出場権を獲得したクラブ(トップチームがMリーグ1部に在籍するクラブのセカンドチームにはマレーシアカップ出場資格はありません。)
*7位のケランタンFAは給料未払い問題により勝点3が剥奪されています。

マレーシアプレミアリーグ2020年シーズン最終ゴールランキング

ゴール数選手名所属試合数
9カサグランデペナンFA11
8エンドリックペナンFA11
8フェルナンド・ロドリゲスJDT II10
7フランシス・コネクアラルンプールFA10
7ダニアル・サアリスランゴール210
7ジョーダン・ミンタートレンガヌFC II11

10月7日のニュース:タイ1部リーグ第8節-マットヨーが先発もタンは先発落ち、条件付きでクラブライセンスを交付されたクラブの詳細

タイ1部リーグ第8節-ノーシャルルが先発もタンは先発落ち
 隣国タイの1部リーグ第8節が10月2日(土)と3日(日)に行われましたが、マレーシア代表のドミニク・タンとノーシャルル・イドラ・タラハが明暗を分けています。
 ポリス・テロFC所属のドミニク・タンはここ2試合は先発してフル出場していましたが、今節のスコータイFC戦は3試合ぶりのベンチスタートとなり、81分から途中出場しています。なお試合は1−1の引き分けとなり、ポリス・テロFCは4勝2分2敗の7位となっています。
 一方、BGパトゥム・ユナイテッド所属のノーシャルル・イドラ・タラハはここ2試合はベンチ入りするも出場機会が与えられていませんでしたが、今節のラヨーンFC戦では、3試合ぶりの先発出場となり、61分に交代しています。こちらの試合はホームのBGパトゥム・ユナイテッドが2-1と勝利し、新型コロナによる中断を経たリーグ再開から3連勝、開幕からも7試合負けなしと好調を維持して首位を快走しています。
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 「マットヨー」ことノーシャルル選手が久しぶりに先発したのは良いニュースですが、2試合連続でフル出場し、いよいよ監督の信頼を得たかと思えたものの、いずれの試合でも失点に関わるミスを犯し、チームも2連敗となったドミニク・タンの今後の使われかたが気になります。

BGパトゥム・ユナイテッド対ラヨーンFC野ハイライト映像-マットヨーはチラッと映っています。-BGパトゥム・ユナイテッドの公式Youtubeチャンネルより

条件付きでクラブライセンスを交付されたクラブの詳細
 昨日のこのブログではマレーシア サッカー協会FAMが発表した来季2021年の国内クラブライセンス交付状況について書きましたが、今回のその続きです。
 まず国内クラブライセンスの交付条件として、FAMは1)スポーツ、2)設備、3)運営、4)法務、5)財務、6)事業の6つの評価基準での審査を行いますが、今回、FAMが条件付きで国内クラブライセンスを交付した全てのクラブは5)財務に関してさらなる説明が求められています。
 Mリーグ1部ではパハンFAとマラッカ・ユナイテッドFCが、2部ではクチンFA、ケランタンFA、UKM FC、ペナンFA、サラワク・ユナイテッドFCの5クラブが条件付きで国内クラブライセンスの交付を受け、この7クラブは今月10月31日までにさらなる説明資料の提出を求められており、その期限を過ぎた場合にはFAMのクラブライセンス交付を担当する第一審機関FIBにより罰金、勝点剥奪、下部リーグへの降格、そして国内クラブライセンスの失効などの処分が下される可能性があります。
 しかしこの7クラブの他に1部のクダFAとPDRM FCについても財務面での問題があるようですが、この両クラブは国内クラブライセンスを交付されており、その違いなどについてFAMは以下のように説明しています。

クダFA
 クダFAは5月から8月までの4ヶ月分の給料が未払いとなっているが、選手とクダFAを運営するクダ州サッカー協会との間で交わされた分割払いの同意書を提出しており、FAMはこの内容に基づいて、国内クラブライセンスの交付を決定した。なお、この同意書に示された分割払いの期日などが守られない場合には、クラブライセンスの無効化や勝点剥奪などの措置を取る。

マラッカ・ユナイテッドFC
 マラッカ・ユナイテッドFCを運営するマラッカ州サッカー協会による所得税納税を分割で行う申請に対する内国歳入庁(日本の国税庁に該当)の返信によると、申請は受け取ったことは述べられているが、その納税方法を承認したかどうかが明確になっていないため、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。

<パハンFA>
 パハンFAを運営するパハン州サッカー協会から内国歳入庁への所得税未納、および従業員積立基金(積み立て年金)と社会保障制度(労災補償制度)への積立金未納に関しては担当省庁に連絡をしているとのことだが、その連絡内容がFAMには知らされていないため、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。
<ケランタンFA>
 2020年の初めには2017年以降に発生した合計18件、総額400万リンギ(およそ1億180万円)を超える未払い給料があったが、現時点では完済できていないのは3件となり、その3件も支払い過程にあり、ケランタンFAを運営するケランタン州サッカー協会と選手間の同意書が提出されていることから、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。
<クチンFA>
 会計監査報告の内容に不備があることから、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。
<UKM FC>
 入国歳入庁と従業員積立基金への支払いに関する情報が不十分なため、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。
<ペナンFA>
 会計監査報告の内容に不備があることから、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。
<サラワク・ユナイテッドFC>
 会計監査報告とその中間報告が不完全であり、FAMの第一審期間が求める形式担っていないため、条件付きでの国内クラブライセンス交付とする。

 FAMによると審査の厳格化は、各クラブの今季分の未払い給料を来季まで持ち越させないことが理由としていますが、同じ話は何度も繰り返されながら、後になって未払い給料が発覚するなど、その審査自体に問題があるような気もしますが、クラブ民営化元年となる来季には各クラブは文字通りプロらしい経営で、未払い給料問題を起こさないように、またFAMはそれを見逃さないことを期待したいです。