1月19日のニュース:プタリン・ジャヤ・シティFCデビュー、またもや給料未払い問題、オールスター戦

MIFAはプタリン・ジャヤ・シティFCとしてスーパーリーグにデビュー
2019年シーズンよりスーパーリーグに昇格するマレーシアインド人サッカー協会MIFAがプタリン・ジャヤ・シティFC(通称PJ City FC)と名称を変更することが発表されました。昨シーズンは2部にあたるプレミアリーグで3位に終わったものの、2位のフェルクラ・ユナイテッドが財政上の問題からチーム解散となったため棚ぼた的に昇格となったこのチームは、EPLのマンチェスター・シティFCのパートナーでもあるQIグループがスポンサーとなっています。K・ディバン監督は「フェニックス」のニックネームを持つPJFCの目標をトップ5としてリーグに臨むと語っています。

QIグループのスリ・ビジェイ・エスワラン会長(左)とPJ City FCのタン・スリ・メガット・ナジムディン・メガット・カース会長

プルリスFA会長は給料未払い問題に真剣に取り組んでいると主張
給料未払い問題が、マレーシア最北端のプルリス州からも報道されています。プルリスサッカー協会PFAの会長は、未払い問題は以前の経営陣によるものであるが、新経営陣はそれを無視したり、無干渉でいるつもりではないと主張。さらには新経営陣を貶めようという悪意が感じられるともしています。その一方で、選手側からはコーチの給料を支払うために選手の給料の一部が天引きされているという話などもあり、経営陣は選手との間で誤解が生じていることも認め、話し合いによる解決を提案しています。2019年末までに給料未払い問題を解決したいとしているのんきなケランタンFA(KAFA)に比べれば、それでもマシなのかも知れません。

MFLオールスター戦がiFlix Cupとして開催
まさに突然、MFLのオールスター戦開催が発表されました。Netflixの安価版(?)iflixが冠スポンサーとなるiFlix Cupですが、シーズン半ばの開催を予定されているようです。ファン投票で選手を選抜するようですが、果たして各チームが主力選手を供出してくれるのでしょうか…。

1月18日のニュース:MFLの新ロゴ、今シーズンの試合日程発表

マレーシアフットボールリーグMFLの新ロゴが発表
国内リーグ戦の運営を行うマレーシアフットボールリーグMFLの新しいロゴが発表になりました。左側の青い3枚のパネルはMFLが運営する3つのカップ戦、マレーシアカップ・チャレンジャーカップ・FAカップを表し、右側の4本の赤い線はスーパーリーグを頂点とする4つの国内リーグを表しています。また中央の六角形はMFLが運営する3つのカップ戦とスーパーリーグ・プレミアリーグ、そしてマレーシアカップの勝者とスーパーリーグの勝者が対戦するサンバンシーカップ(日本で言えばゼロックス・スーパーカップに当たるカップ戦)を象徴しています。そしてその中の三日月と星はマレーシアの国旗を模しています。(三日月はイスラム教を、星の14個の尖頭はマレーシアの13州と連邦直轄地クアラルンプールを表しています。また黄色い色は、マレーシアの王族を象徴する色です)

開幕カードと今シーズンの全日程発表
2月1日から開幕する国内1部リーグにあたるスーパーリーグと2部リーグにあたるプレミアリーグの日程が発表になりました。第1節は以下の通りです。(右側がホーム、試合はいずれも午後9時開始)
2月1日(金)
パハン@KL
PKNS FC@トレンガヌFC
2月2日(土)
ペラ@JDT
MIFA@マラッカ
クダ@PKNP FC
2月3日(日)
フェルダ・ユナイテッドFC@スランゴール

1月15日のニュース:新ユニ発表、移籍情報、帰化選手、給料問題

JDTの新しいナイキ製ユニフォームが予定通り発表されました。
胸のスポンサーのフォレスト・シティーは、ジョホール州と中国企業が合弁で開発する住宅地、リゾート、商業施設からなる複合都市開発地域の名称です。ちなみにこの地域と開発業者については、前政権が中国寄りだったことから、いろいろと取り沙汰されることが多いです。

ホーム用ユニフォーム(Johor Southentigers Facebookより)
アウェイ用ユニフォーム(Johor Southentigers Facebookより)

シャズワン・アンディックがJDTと正式に契約
JDTネタが続きますが、先週の噂通り、シャズワン・アンディック選手がJDTと正式に契約しました。ジョホール州スクダイ出身で、かつてはJDTの下部組織JDT IIでプレーしていたこともあります。

Johor Southentigers ホームページより

モハマドゥ・スマレーのマレーシア人選手登録が認められる
マレーシア生まれでもなく、マレーシア人の家系でもない初の帰化代表選手となったモハマドゥ・スマレー選手が、2019年シーズンよりマレーシア人選手として登録されることになりました。ガンビア生まれのスマレー選手は17歳のときにマレーシアにやってきて、この国でのサッカー選手としてプレーしていますが、先日のスズキカップでの活躍もありマレーシアサッカーリーグ(MFL)が、マレーシア人選手登録を予定より早めて認めることになりました。彼が所属するパハン州サッカー協会(PBNA)は、1チームに5人が認められている外国人選手枠に1つ余裕ができました。なお、PBNAは2019年シーズンに向け、シンガポール人のサフワン・バハルディン、インドネシア人のサディル・ラムダニと契約済です。

PBNPのFacebookより(右がスマレー選手)

ペナンFAの給料未払い問題の解決は近い?
ペナン州サッカー協会(FAP)のドクター・アマル・プリットパル・アブドラ会長によると、ペナン州政府の協力で(ということは市民の税金を使っているのでしょうか?)ペナンFAの選手、役員の給料の80%(!)が昨年12月前に支払い済みだそうです。残りの20%にあたる2017年シーズン分の給料(!)についての問題も出来るだけ早く解決する予定というコメントを出しています。これまで何度か取り上げてきた給料未払いの問題は根が深いです…。


JDTの2019シーズン用ユニフォームはナイキ製

JDTがホームページで2月1日に開幕するスーパーリーグで着用する新ユニフォームのティーザー画像を掲載しています。選手用は549マレーシアリンギ(約26,000円)、ファン用は185マレーシアリンギ(同約4900円)となっています。

明日1月12日にジョホール州のジョホール・バル(あの「ジョホールバルの歓喜」で有名ないジョホール・バルです。ちなみ私は現地であの試合を観戦しました)のダタラン・バンダラヤ(シティ・スクエア)でファンに披露されることになっています。

JDTサザンタイガースのホームページより

移籍情報:シャズワン、おまえもJDTか!

クアラルンプールFA(KLFA)所属のマレーシア代表選手、シャズワン・アンデックがKLFAを退団することが決定的となりました。昨年末のスズキカップで活躍したシャズワン選手はこれまでもスランゴールFAなどへ移籍の噂が絶えませんでしたが、その度に否定し続けていました。しかし今回は、今シーズンの契約が未払い給料(また出ましたよ、この問題!)によって無効となった結果、シャズワン選手が現在、フリーエージェントとなっていることがわかりました。この2日間はKLFAの全体練習にも参加していないという報道や、既にシャズワン選手が出身地であるジョホール州のJDT(ジョホール・ダルル・タクジム)の練習に参加している映像がソーシャルメディア上に挙げられていることから、この移籍は決定的です。かつてはJDTの下部組織であるJDT IIでプレーした経験もあるシャズンワン選手が加わったJDTは、既にタイリーグのブリーラム・ユナイテッドから昨シーズンの得点王ジオゴを獲得し、昨年はU19、U23、そしてフル代表の各年代で得点を挙げたアクヤ・ラシドをクダFAから獲得(ただしこれについては契約トラブルがありKFAは移籍を認めていませんが)するなど果たしてどこまで補強を続けるのやら…。今シーズンもスーパーリーグは、JDTの一人勝というリーグになってしまうのでしょうか。KLFAファンとしては、残念なニュースです。

<追記>
シャズワン選手自身がなぜKLFA退団に至ったかを語る記事がGoal Malaysiaに掲載されました。やっぱり給料未払いが関連していましたのね…。

1/5のスランゴールFAとの練習試合でプレーするシャズワン選手(Kuala Lumpur HawksのFacebookより)


プルリスが新たなダイレクターオブフットボールと契約

マレーシア半島の北部にあるプルリス州サッカー協会(PFA)が、タイの強豪ブリーラム・ユナイテッドから、イギリスのウェールズ出身のマット・ホランド氏を、新たなダイレクターオブフットボールとして招聘したことを発表しました。ノーザンライオンズの愛称で知られ、今シーズンは2部に当たるプレミア・リーグで戦うプルリスは、現代表監督のタン・チェンホーの招聘に動いていましたが、FAMがタン監督と2020年までの契約を更新したことで、このマット・ホランド氏がPFAのダイレクターオブフットボールとなりました。このホランド氏は、かつてはNFDPでリム・ティオンキムとも指導にあったこともあり、タイやインドでもアシスタントコーチの経験があります。また、マレーシア語も堪能だということですので、低迷しているノーザンライオンズを彼がどう立て直すのかに注目が集まります。

ところでダイレクターオブフットボールとは何でしょうか。ネット上でしらべてみたところ、ウイキペディア以外にもこんな記事やまたこんな記事さらにこんな記事も見つかりました。このマット・ホランド氏はブリーラム・ユナイテッドではテクニカルダイレクターをしていたようなので、ヘッドコーチをサポートあるいは監督する現場に直結する役割を担うのかも知れません。

2016年から続いている(!)監督や選手への給料不払い問題が未だに解決していないPFAですが、昨年10月にPFAの会長に就任したダト・アーマド・アミザル・シャイフィット・アーマド・ラフィ氏とマレーシアサッカー協会FAMやマレーシアフットボールリーグMFLとの交渉の結果、猶予期間として60日が与えられ、その間に問題の解決ができない場合にはFAM、MFLからPFAへの2019年度分の供与金は全て未払い給料の解消に当てられることも決まりました。(元記事はマレーシア語です)

ちなみのこの給与未払い問題はPFAに限ったことではなく、マレーシアのチームでは毎年どこかで起こるので、またどこかで触れることがあるでしょう。

PFAのダイレクターオブフットボールに就任したマット・ホランド氏(PFAのFacebookより)

マレーシア代表の2018年 (5) フル代表 Part3

2018年を締めくくるスズキカップ の決勝は、大会3連覇を目指したタイを破ったマレーシアと、もう一方の準決勝でフィリピンをホーム、アウェイともに2-1で破ったベトナムの対戦となりました。マレーシアは2010年以来の、ベトナムは2008年以来のそれぞれ2回目の優勝を目指します。決勝第1戦はマレーシアのホーム、ブキ・ジャリル国立競技場で開催されました。公式発表で8万8433人の観衆が見守る中、マレーシアは22分にグエン・フイ・フンのゴールで先制を許し、25分にはファム・ドゥック・フイにゴールを決められリードを広げられます。しかしマレーシアも36分にシャマル・クティ・アバが倒されて得たフリーキックをシャルル・サアドが頭で合わせてまず1点、60分にはサファウィ・ラシドが自ら獲得したフリーキックを直接、ゴールに叩き込み同点とします。ディフェンダーのアミル・アザン・アズマンに代えて、フォワードのシャフィック・アーマドを投入し、より攻撃重視のフォーメーションに切り替えた直後のことでした。その後も一進一退を繰り返し、この試合は2-2の引き分けとなりました。

続いてハノイのミーディン国立競技場で行われた決勝第2戦は、試合開始直後の6分にグエン・クアン・ハイの左からのクロスをグエン・アイン・ドゥックがボレーでシュート、一見オフサイドに見えなくもなかったのですが、ベトナムが1点を先制しました。このままマレーシアがゴールを割ることができず試合終了。0-1でベトナムが2度めのスズキカップ制覇を果たしました。

次のスズキカップまではまた2年待たなければいけませんが、2018年はベテランのノーシャルル・イドラン・タラハ の復活があった一方で、若手ではU19、U23、フル代表と全ての代表チームげゴールを挙げたアクヤ・ラシドや、U23から昇格しスズキカップのノックアウトステージでそれぞれタイとベトナムを相手にゴールを挙げたシャミ・サファリとサファウィ・ラシド(彼はアジア競技大会の韓国戦でも2得点を挙げています)などが活躍した年となりました。スズキカップでの決勝敗退は残念でしが、2019年に向けて、フル代表には今後の期待が持てる1年の終わり方であったのは間違いありません。

マレーシア代表 2018年戦績(注記がないものは国際親善試合、@はアウェイ)
2018.03.22 2-2 モンゴル 得点者:O.G, アクヤ・ラシド
2018.03.27 1-2 @レバノン(アジアカップ3次予選) 得点者:シャフィック・アーマド
2018.04.01 7-0 ブータン 得点者:ワン・ザック・ハイカル, ザクアン・アドハ 4, イフラン・ザカリア, シャフィック・アーマド
2018.07.05 1-0 フィジー 得点者:シャフィック・アーマド
2018.09.07 2-0 @台湾 得点者:なし
2018.10.12 3-1 スリランカ 得点者:ノーシャルル・イドラン, アダム・ノー・アズリン, O.G, モハマド・スマレ
2018.10.16 1-0 キルギスタン 得点者:なし
2018.11.03 3-0 モルジブ 得点者:ザクアン・アドハ, サファウィ・ラシド, Mohamadou Sumareh

<AFF選手権 Suzuki Cup>
グループステージ
2018.11.08 @カンボジア 1-0 得点者:ノーシャルル・イドラン
2018.11.16 @ベトナム 0-2 得点者:なし
2018.11.12 ラオス 3-1 得点者:ザクアン・アドハ , ノーシャルル・イドラン 22018.11.24 ミャンマー 3-0 得点者:ノーシャルル・イドラン, ザクアン・アドハ2
ノックアウトステージ(準決勝)
2018.12.01 タイ 0-0 得点者:なし
2018.12.05 @タイ 2-2 得点者:シャミ・サファリ,ノーシャルル・イドラン
決勝
2018.12.11 ベトナム 2-2 得点者:シャミ・サファリ, サファウィ・ラシド
2018.12.15 @ベトナム 0-1 得点者:なし

決勝のベトナム戦のモハマド・スマレ(FAMホームページより)

ベトナムとの決勝でのキャプテン ザクアン・アドハ(FAMホームページより)

準決勝のタイ戦でボールを奪いに行くノーシャルル・イドラン(FAMホームページより)

マレーシア代表の2018年 (5) フル代表 Part2

スズキカップの準決勝へは、グループAからは1位のベトナム(FIFAランキング100位)と2位のマレーシア(同167位)が、グループBから1位のタイ(同118位)と2位のフィリピン(116位)が進出しました。準決勝からはホームアンドアウェイ方式となりますが、準決勝第1試合はマレーシアの首都クアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場にタイを迎えて行われました。過去47年間ホームではタイには負けたことがないマレーシアでしたが、今回もその記録を更新したものの、ホームでのスコアレスドローという結果でした。数少ない得点の機会を活かすことができず、タイの守備陣に守り切られたという印象でした。その4日後、バンコクのラジャマンガラ国立競技場で行われた第2戦は、勝つか1点以上取って引き分ければアウェイゴールルールでマレーシアの決勝進出が決まります。

試合は21分にティティパン・プアンチャンのヘディングがイフラン・ザカリアに当たりオウンゴールでタイが先制しスタンドが盛り上がりましたが、28分には右サイドを上がったシャミ・サファリがペナルティーエリアの外から放ったスーパーシュートで同点に追いつきます。後半に入ると、63分にフリーキックのこぼれ球をパンサ・ヘーミボーンが頭で叩き込み、タイが再びリードを奪います。これに対してマレーシアは今回のスズキカップで既に3得点を挙げているノーシャルル・イドラン・タラハがゴールを背にしてボールを受けたものの、そこから反転してシュートを放ち71分に同点に追いつきます。そしてこのまま逃げ切ればアウェイゴールルールでマレーシアの決勝進出が決まるという中、90分を過ぎアディショナルタイムに入ったところで同点ゴールを決めたシャミ・サファリが自陣ペナルティーエリアでハンドの反則を犯してしまいます。(しかもシャミ・サファリは2枚目のイエローで退場。)PKを蹴るのは今大会8得点を挙げ得点王争いを独走するアディサク・クライソーン。マレーシアの決勝進出の望みも万事休すか、という場面でしたが、ここでなんとゴールバーの上を超えるミスキック!その後は10人のマレーシアが守りきって2-2の引き分けで試合終了。マレーシアの2014年以来の決勝進出が決まりました。

PKを失敗したアディサク・クライソーン選手(タイ)(タイの新聞The Nationより)

マレーシア代表の2018年 (4) フル代表 Part1

2013年と2014年は154位、2015年は170位、2016年161位、2017年は174位、そして昨年2018年は167位。これは過去5年間のマレーシア代表のFIFAランキングの推移です。この低迷状態を打破するため、満を持してポルトガル人のネロ・ヴィンガダが2017年5月に監督に就任しましたが、就任直後7試合で6敗1引き分けの成績で辞任し、彼のもとでアシスタントコーチを務めていたタン・チェンホーが同年12月7日付で監督に昇格したのは自然な流れでした。タン新監督の元、フル代表が2018年を迎えました。

タン監督就任後の初戦は2018年3月22日のモンゴル戦でした。スペイン生まれながらマレーシア人の祖母を持つナチョ・インサ、イギリス生まれカナダ育ちながらマレーシア人の母親を持つラヴェル・コービン=オンなどが初代表に選出されましたが、結果は2−2の引き分けでした。そしてこの試合後、代表チームに選出された29名の内、14名が1部リーグのJDTからの選手であったこと、さらにその内の9名が出場したことで「特定チームに偏重した選手選考」という批判をメディアやファンから浴びることになりました。まぁ一つのチームからレギュラーだけでなく控えの選手まで招集してしまえば、こんな批判が出るのはやむを得ませんが、言い換えれば、それだけJDTの選手層が厚く、充実しているということでもあります。

そのモンゴル戦後、タン監督は、今度はJDTから招集した14選手全員を代表チームから外し、他のチームの選手達と入れ替えるというこれまで驚く行動に出ました。記者会見で理由を問われたタン監督は「ファンの求めることをしたまで。」と答えました。モンゴル戦から5日後に行われたAFC Asian Cupの最終予選レバノン戦は、すでに予選敗退が決まっていたこともあり、モチベーションが上がらなかったのか敵地で1−2の敗戦でした。

て迎えたエイプリルフールならぬ4月1日のブータン戦はレバノン戦とほぼ同じメンバーで臨み、それまでのうっぷんを晴らすかのような7−0のスコアとともに、フル代表は2016年11月のカンボジア戦以来の勝利を挙げ、2016年11月から続いていたインターナショナルマッチ白星なしという状況を脱することができました。ブータン代表の当時のFIFAランキングはFIFAに加盟する211の国と地域中184位であっても良いんです。とにかく勝って良かった!

その後はフィジー、台湾、カンボジア、スリランカ、キルギスタン、モルジブとの試合で勝ち負けを繰り返しながら、今年最大の目標であったAFF スズキカップへの調整を進めました。グループAでカンボジアベトナムラオスミャンマーと同組となったグループステージ初戦は、本田圭佑GM率いるカンボジアが相手です。試合は31分にキャプテンザクアン・アドハのクロスにベテランのノーシャルル・イドラン・タラハが頭で合わせて先制し、そのまま1-0で逃げ切りました。攻撃陣の精度が高ければもっと余裕のある試合展開となったでしょうが、とにかくアウェイの試合で貴重な1勝を挙げました。

その後はホームでラオスに3-1で勝利したものの、アウェイのベトナムには0-2で敗れてしまいました。グループステージ突破の懸かった最終戦は収容人数87000人を超えるブキ・ジャリル国立競技場を満員にしたホームサポーターの前で行われ、3-0でミャンマーに快勝し、ノックアウトステージ(ベスト4)へ進みました。グループステージの殊勲者は、完封されたベトナム戦以外の全ての試合で得点を挙げたフォワードのノーシャルル・イドラン・タラハでしょう。マット・ヨー(Mat Yo)の愛称で呼ばれる32歳のベテランは2010年、2012年、2014年に続いてのスズキカップ出場でした。2014年のスズキカップ準決勝ベトナム戦でゴールを決めたものの、その後は低調で、2017年は一度も代表に招集されませんでしたが、このスズキカップで復活を遂げました。

スズキカップに参加するマレーシア代表メンバー(FAMホームページより)

マレーシア代表の2018年 (3) U16代表

2014年に立ち上げられたNational Football Development Plan(通称NFDP)は、マレーシアの省庁の一つである青年スポーツ省所轄のサッカー選手育成のための国家プログラム。日本の文科省に当たる教育省とFAMマレーシアサッカー協会も協力する大プロジェクトです。そしてその第一期生となる選手たちが2018年のU16代表です。このU16代表は、7月の終わりから8月にかけてインドネシアのスラバヤで開催されるAFF(アセアンサッカー連盟)U16選手権で弾みをつけ、、9月から10月にかけては自国開催となるAFC(アジアサッカー連盟)U16選手権で好成績を収めて、FIFA U17ワールドカップの出場権を獲得することを目標としていました。2018年の年始には当時のカイリー・ジャマルディン青年スポーツ相が、このU16代表のKPI(目標達成度の評価指標)がFIFA U17ワールドカップの出場資格獲得であるとも発言するなど、マレーシアサッカー界の期待が高まりました。

しかし、U16代表はいきなりAFF U16選手権でつまづきます。ホスト国のインドネシア相手にに準決勝敗退を喫してしまったのです。しかも、勝った方が準決勝進出の懸かったラオス戦すら、相手のオウンゴールのおかげで勝利した試合でした。アセアンのチーム相手に苦しい戦いを繰り広げたU16代表は、続く9月のAFC U16選手権に臨みました。

バイエルン・ミュンヘンのジュニアチームで12年間アシスタントマネージャーを務めたマレーシア人のリム・ティオンキムを監督とするU19代表は、開幕戦ではタジキスタンに6-2と大勝しましたが、アセアン域内のライバルであるタイに2−4と敗れ、勝てば自力でノックアウトステージ進出のチャンスが残っていた最終戦でも日本に0−2と敗れ、結局、グループステージ最下位で敗退しました。また皮肉なことに、この大会ではマレーシアとグループステージで同組だったタジキスタンと日本が決勝で対戦し、1−0で日本が優勝しています。大会後、リム・ティオンキム監督はマレーシアサッカー協会によってU19監督の職を解任されました

しかし、話はここで終わりません。ご存知のかたもいらっしゃるかと思いますが、2018年はマレーシアにとって激動の年でした。1957年のイギリスからの独立以来、政権を守ってきた与党が5月9日の下院議員選挙で大敗を喫し、新しい政権が樹立されたのです。これは多くのメディアの予想も外れる歴史的な出来事でした。政権交代の結果、当然のことながら、首相を始め各省庁の大臣も変わったのですが、新たに就任したサイド・サディック青年スポーツ相は、U16代表が日本に敗れた試合の後に記者会見を開き、リム・ティオンキム元監督の月給が免税の17万5000マレーシアリンギ(現在の為替レートでは450万円強)であることを公表したのです。リム・ティオンキム元監督は、政府が毎年5億円を投じることになっている国家プロジェクトであるNFDPの中心となるサッカーアカデミーの責任者も兼ねていますので、この給料が果たして高いのか安いのかはわかりませんが、青年スポーツ省が雇用主とは言え、担当大臣としてはやや感情的な行動であった印象は否めません。この時期は前政権の行った事業全てを否定するような風潮が感じられる時期でもありましたので、前政権の大臣が任命したリム・ティオンキム元監督を非難するは大臣のスタンドプレーだったようにも思われます。しかもサイド・サディック青年スポーツ相は、2020年まで残っているリム・ティオンキム元監督のNFDPアカデミー責任者としての契約の見直しについても言及しているので、この話題はこれで終了しそうもありません。

追記:ちなみにネット上で探したところ、参考までにJリーグ1部の監督の平均給与は5322万円でした。

U16マレーシア代表 2018年戦績
<AFF U16選手権>
グループステージ
2018.07.30 1-2 タイ   得点者:ムハマド・ヌル・アズラン・モハマド・ユソフ
2018.08.03 6-1 ブルネイ   得点者:ムハマド・アスマン・アスルル・スルカナ2, ムハマド・ファミ・ダニエル・ムハマド・ザイム, モハマド・イクワン・モハマド・ファイゾ, ハリス・ナイム・ジャイネ
2018.08.05 4-0 シンガポール 得点者:アリフ・ダニエル・アブドゥル・アジズ, ハリス・ナイム・ジャイネ, ムハマド・ファミ・ダニエル・ムハマド・ザイム, O.G
2018.08.07 1-0 ラオス    得点者:O.G
ノックアウトステージ(準決勝)
2018.08.09 0-1 インドネシア 得点者:なし

<AFC U16選手権>
グループステージ
2018.09.20 2-6 タジキスタン 得点者:ルクマン・ハキム 4, ナジムディン・アクマル, アリフ・ムタリブ
2018.09.23 2-4 タイ     得点者:ルクマン・ハキム, フィルダウス・カイロニザム
2018.09.27 0-2 日本     得点者:なし

AFC U16選手権に参加したマレーシアU16代表(FAMホームページより)