トレンガヌ監督の契約更新問題は泥試合に発展-ナフジ監督はクラブのプロ意識の欠如を批判
今季のMリーグ1部スーパーリーグで2位、FAカップでは決勝に敗れて準優勝、そして現在開催中のマレーシアカップでは準決勝に駒を進めているトレンガヌFC。チームを率いるナフジ・ザイン監督とクラブの契約は今月11月末までとなっています。今季、これだけの好成績を収めながら、これまでなかなか契約更新が報じられず、ナフジ監督は今季限りか、といった噂も出回る中で爆弾発言が飛び出しました。
11月12日に行われたマレーシアカップ準々決勝セカンドレグのKLシティ戦後の記者会見で、ナフジ監督は、10月27日付の契約更新のオファーレターをその2日後の10月29日に受け取ったこと、来季、チームが求めるKPI(重要業績評価指標)や来季の給料についての事前の話し合いが全く持たれなかったこと、そして極め付けはそのオファーレターを経営陣からではなく、チームの練習中にクラブのキットマン経由で手渡されたことを暴露しました。
ナフジ監督は、2017年にトレンガヌのコーチに就任し、2019年に当時のイルファン・バクティ監督(現クチンシティ監督)がチームの成績不振を理由にシーズン途中で辞任すると、コーチから監督代行に昇格しました。2019年はリーグ7位に終わったものの、正式に監督に就任した2020年は3位、2021年は4位、そして今季2022年は2位と、安定した成績を収めています。
クラブに対する自身の貢献が評価されていないと述べたナフジ監督は、自身の雇用主であるトレンガヌFCは契約内容について決定する権利があることは理解しているとしながらも、クラブの対応はプロ意識も、監督である自身に対する敬意も欠如しているとして、失望をあらわにするとともに、クラブが自分を必要としているのか疑問であるとも話しています。
「契約更新前に、来季、クラブが目指す方向性やその準備について、監督と経営陣の考える計画を互いに理解することが望ましいと思っていたが、そういった機会は全くなかった。」と述べたナフジ監督は、昨季同様、KPIを示されて、それに同意することが条件の契約オファーであったことも明らかにしています。
クラブ側はナフジ監督の発言はクラブとの信頼関係を損なう上、事前に他のクラブと監督就任交渉を行っていたと批判
ナフジ監督が契約更新に関するクラブの対応をメディアに明らかにした翌日、トレンガヌFCを運営するTFC社が、ナフジ監督のメディアに対する発言に驚くとともに失望し、その発言はクラブのイメージ低下を招くだけでなく、クラブとナフジ監督の関係を損なうものであるという声明をクラブ公式Facebookで発表しています。
契約更新のオファーレターは契約が切れる30日前までに出すことが求められており、10月27日付のレターは同29日にナフジ監督に届けられており、ナフジ監督との契約が切れる11月30日まで30日以上あったことから、声明ではこれが問題視されるべきではないとしています。(ただしTFC社からではなく、レターがキットマンから手渡されたことには触れていません。)
さらにナフジ監督はレターを受け取ってから14日以内に契約を更新するか否か、あるいは契約内容の再交渉を求めるかを回答することになっているにもかかわらず、それをしないまま、メディアに対して契約更新についての不満を明らかにしたことは遺憾であると声明ではナフジ監督を批判しています。
さらにTFC社は今年8月にナフジ監督がトレンガヌFCとの契約期間中にもかかわらず、スーパーリーグの他のクラブと事前に交渉し、来季はそのクラブの監督に就任することにも同意しているという情報を掴んでおり、これが明らかな契約違反およびクラブのイメージを失墜させるものであるとも述べ、ナフジ監督に対する処分を検討中であるとも述べています。
UITMも新スーパーリーグの規定が満たせずリーグ離脱か
来季から改編されるMリーグ1部の「新」スーパーリーグは、当初予定されていた18チームから15チームに縮小していますが、さらにUITM FCも撤退して14チーム編成となる可能性があると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。
18チームでスタートする予定だった来季のスーパーリーグが躓いたのは、給料未払い問題が解決していないことから、来季の国内クラブライセンスが交付されなかったマラッカ・ユナイテッドFCとサラワク・ユナイテッドFCが参加不可となったことがその始まりでした。さらに来季のスーパーリーグでは外国籍選手枠が現在の5名から9名(ただしベンチ入りは最大6名)となることから、昨季、今季と外国籍選手不在でリーグに参加していたPJシティFCがこの新規定のもとではリーグ参加は困難であるととして撤退を発表し、来季のスーパーリーグは15チームとなることが決まっています。
そして今回、UITM FCがやはり新規定として導入された「リザーブリーグに出場するセカンドチームの設立」が困難であるとして、リーグ撤退の可能性があるとニューストレイトタイムズが報じています。UITM FCのサザリ・シャヒビ会長は、トップチーム、プレジデントカップ(U21)チーム、ユースカップ(U19)チームといった従来の編成に加えて、U23チームに当たるセカンドチームを新たに設立することで、クラブの年間予算が600万マレーシアリンギ(およそ1億8300万円)が必要となると話しています。UITM FCは、過去2シーズンのクラブ予算は400万マレーシアリンギ(およそ1億2200万円)前後だった一方で、セカンドチームの設立に加え、チーム数増に伴う試合数増もあり、新たに200万マレーシアリンギが必要になるということです。
前述のPJシティFC同様、今季は外国籍選手不在で2部プレミアリーグに参加し、7位となったUITM FCですが、来季に向けては予算不足に加えて、選手全員がUITM(マラ工科大学)の学生であり戦力不足も否めず、セカンドチームは他大学の学生を集めて編成せざるを得ない可能性もあり、こういった点からも、来季のスーパーリーグ参加は未だ確定していません。