1月3日のニュース(3):速報-タン代表監督が辞任

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイトでタン・チェンホー監督の辞任を発表しました。

FAMの発表によれば、先日終了したスズキカップ2020ではグループステージで敗退し、準決勝進出を逃した責任を取り、辞任を申し出ていたタン監督と話し合いを続けていたものの、翻意が困難と判断した結果、FAMは2022年末までとなっていたタン監督との契約を双方合意の上、解除することを決定したとしています。

2005年から2009年まではU20代表、2009年から2010年まではU23代表、またU23代表と同時にA代表のコーチも2009年から2013年まで務めていたタン監督は、この間、2009年の東南アジア競技大会通称シーゲームズではK・ラジャゴパル監督(現ブルネイ代表監督)の元でコーチとして優勝を経験し、翌2010年のスズキカップではA代表監督に就任したラジャゴパル監督を支えてマレーシアの代表のスズキカップ初優勝にも貢献しています。

A代表を離れ、2014年にMリーグ1部のクダFA(現クダ・ダルル・アマンFC)の監督に就任すると、2015年にはMリーグ1部優勝、2016年にはマレーシアカップ優勝を果たしました。

その後タン監督は、2017年5月にはポルトガル出身のネロ・ヴィンガダ氏がA代表の監督に就任するとともに再びA代表のコーチに就任しました。1996年にサウジアラビア代表監督としてAFC選手権アジアカップに優勝、2010年にはFCソウル監督としてKリーグ制覇と実績十分のヴィンガダ氏でしたが、マレーシア代表監督就任後の7試合で0勝2分5敗と1勝も挙げられず、さらにAFC選手権アジアカップ2019年大会予選で敗れたことにより、その就任からおよそ半年後の2017年12月に辞任し、それを受ける形でタン監督はコーチから昇格してA代表監督に就任しました。

A代表監督となった後の2019年に出場したスズキカップでは決勝でベトナムに敗れたものの、優勝した2010年以来7年振りにマレーシアを決勝進出させた他、新型コロナによる中断前のFIFAワールドカップ2020年大会アジア2次予選では一時はグループ2位につけるなど、2017年12月のA代表監督就任以来40試合で20勝4分16敗の成績を残しています。

 スズキカップ2020は惨敗でしたが、果たしてそれがタン監督だけの責任なのでしょうか。シンガポール出発直前にそれまでは「疲労」を理由に辞退していたアリフ・アイマンが加わる一方で、同じ「疲労」を理由に今年ほぼ全ての代表戦に出場してきたラヴェル・コービン=オング、ファリザル・マーリアスを招集せず(あるいは招集を認められず)、その一方で本当に代表に必要なのかが最後まで分からなかったギリェルメ・デパウラや今季試合出場時間がほとんどなかったシャールル・サアドが代わりに招集されましたが、ここで挙げた選手は全員がJDTの選手であることから、それが「偶然」と言われても疑念が拭いきれない代表選出でした。
 あるいはこの辞任は、自身が呼びたい選手を呼べず、それをサポートする気概も覚悟もなければ責任も取らないマレーシアサッカー協会にタン監督が三行半を突き付けたのかも知れません。しかしこのタン監督辞任で得をする人物がいるんだろうなぁ、マレーシアサッカー界には。
 いずれにしてもタン・チェンホー監督、お疲れ様でした。🙇‍♂️

1月3日のニュース(2):スズキカップ2020-決勝第2戦のインドネシアの攻撃的布陣は苦肉の策だった?、また代表選手がサバ加入-今度は代表GKがマラッカUから移籍、2部降格のUITM FCは今季出場辞退の可能性も

スズキカップ2020-決勝第2戦のインドネシアの攻撃的布陣は苦肉の策だった?

タイの優勝で幕を閉じた東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020ですが、決勝第2戦では逆転勝利を目指して攻撃的な布陣を採用したと見られていたインドネシア代表ですが、どうもうそういうことではなかったというチームの実情をAFPが報じています。

この記事によると、インドネシア代表でいずれもDFのリズキー・リド、エルカン・バゴット、ヴィクター・イグボネフォ、リズキー・ドウィ・フェブリアントの4選手がおよそ2時間の間、宿泊先のホテルを抜け出して「シャンプーと石鹸を買いに出た」ことが判明し、東南アジアサッカー連盟AFFの懲罰委員会による調査の結果、この4選手は新型コロナ感染対策予防手順に違反したとして、大会運営本部からタイ代表との決勝第2戦の出場を禁止されていたということです。

この4選手の内、リズキー・リド選手はタイ代表との決勝第1戦に先発し、バゴット選手も後半開始から途中出場しています。またヴィクター選手とリズキー・ドウィ・フェブリアント選手もベンチ入りしていました。

インドネシア代表のシン・テヨン監督は、決勝第2戦後の記者会見でディフェンダーの4選手が出場禁止となった理由は了承できると話す一方で、この4選手の欠場が決勝第2戦に影響を与えたことを認めて失望していると話しています。

また代表選手がサバ加入-今度は代表GKがマラッカUから移籍

昨季2021年シーズンは降格権から勝点3で1部スーパーリーグ残留を決めたサバFCは、シーズン終了後から大型補強を続けていますが、そこにまた大物が移籍です。

サバFCのクラブ公式Facebookでは、先日終了したスズキカップ2020でもマレーシア代表のゴールキーパーとしてグループステージ4試合全てに先発しフル出場したカイルル・ファーミ・チェ・マットがサバFCへの移籍を告知しています。

32歳のカイルル・ファーミ選手は、昨季途中からサバFCの指揮を取るオン・キムスイ監督のもとでプレー経験があり、2011年に東南アジア競技大会通称シーゲームズでオン監督率いるU23代表が優勝した際の正ゴールキーパーでした。

オン監督就任以来、このオフシーズンは同じスーパーリーグのクダ・ダルル・アマンFCからMFバドロル・バクティアルとDFリザル・ガザリ、またタイ1部のポリス・テロFCからはDFドミニク・タンといずれもスズキカップ2020に出場した代表選手を獲得しています。

2部降格のUITM FCは今季出場辞退の可能性も

昨季2021年シーズンにMリーグ1部スーパーリーグで最下位となり、今季2022年シーズンは2部プレミアリーグ降格が決まっているUITM FCが経営上の問題から今季のリーグ出場を辞退する可能性があると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

昨季のスーパーリーグで3勝4分15敗で最下位となったUITM FCは、国立大学のマラ工科大学UITMを母体とするクラブで、2020年はに大学のクラブとして初めてスーパーリーグでプレーしています。しかもこのシーズンは新型コロナの影響で試合数が半減したとは言え昇格初年度で6位となるなど大きな話題となりました。しかし2020年シーズン終了後にこの大躍進に貢献した外国籍選手5名の内、4名が退団するなど、この時点で運営資金が潤沢ではないことは明らかでした。

2021年シーズンは開幕から連敗が続き、前年から指揮を取るフランク・ベルンハルト監督を交代、外国籍選手を入れ替えるなどしたものの、シーズン初勝利は開幕から17試合目(Mリーグの1シーズンは22試合)では、2部降格は避けられませんでした。

ニューストレイトタイムズの記事では、今季プレミアリーグ参戦のためのスポンサーの獲得に困難を極めているとされており、Mリーグを運営するMFLものスチュアート・ラマリンガムCEOもUITM FCからの状況説明を待っている状態であると話し、Mリーグも事態を憂慮しているとしています。


1月3日のニュース(1):スズキカップ2020-決勝第2戦は引き分けもタイが2大会ぶりの優勝

スズキカップ2020決勝第2戦

2022年1月3日@シンガポール国立競技場(シンガポール)
タイ 2-2 インドネシア
得点者:タイ-アディサク・クライソーン(54分)、サーラット・ユーイェン (56分)、インドネシア-リッキー・カンブアヤ(7分)、エギィ・マウラナ(80分)

スズキカップ2020の決勝タイ対インドネシアの第2戦が行われ、インドネシアはタイと引き分けましたが、第1戦に4−0と勝利していたタイが通算スコアを6-2として、2016年大会以来2大会ぶりとなる通算第6回目の優勝を飾っています。

4点取らなければ優勝がないインドネシアはこの試合に攻撃的な布陣で臨みましたが、試合開始早々はタイに攻め込まれたものの、リッキー・カンブアヤが7分にゴールを決めて、通算スコアを1-4としました。次の1点がインドネシアに入れば2点差となり、勝負の行方がわからなくなりそうなところでしたが、後半に入るとタイがアディサク・クライソーン、サーラット・ユーイェンが立て続けにゴールを決めて逆に5点差に開きました。それでもインドネシアは80分にエディ・マウラナのゴールで1点を返しますが、第1戦のリードを生かして逃げ切ったタイが2大会ぶり6度目の優勝を決めています。

タイの強さはここまでの試合で分かっていたものの、この試合ではインドネシアが決勝まで進出してきた理由が分かったような気がします。新型コロナ前は競った試合になることはあっても、マレーシアが負けることはなかったインドネシアはシン・テヨン監督就任ととものメンバーも変わり、この試合で先制点を決め、MOMにも選ばれたリッキー・カンブアヤはシン監督が初めて代表に選出した選手で、2点目を決めたエディ・マウラナも代表初ゴールはシン監督のもとでプレーした今年になって初めて代表初ゴールを決めるなど、全く別のチームになっていました。6度目の決勝進出となったもの今回も悲願の初優勝には手が届きませんでしたが、インドネシアはシン監督のもとで着実に力をつけているのがわかるプレーぶりでした。

マレーシアのグループステージ敗退後には、チャナティップ選手のようにマレーシア代表の選手も国外のよりタフな環境でプレーして強さを身につけるべき、といった意見もソーシャルメディアだけでなく、現地紙など印刷メディアでも見かけましたが、そもそも海外のクラブがマレーシア人選手を求めるのか、また求められたとしておそらく今よりも低くなる給料を受け入れられるか、またでそういった挑戦をするモチベーションがそもそもあるのかどうかなどの議論が起こっていました。また、今回の結果で、これまではマレーシアでステップアップしてさらに他国のリーグを目指そうとしていた東南アジアの選手は、タイやシンガポール、さらにはインドネシアを飛び石にして、マレーシアには魅力を感じないのではないか、といった意見を掲載している現地紙もあり、いずれもマレーシアサッカーが東南アジアのトップから遅れをとっていることが明らかになった点を指摘しています。

マレーシアサッカーの2022年はタイやベトナム、さらにはインドネシアやシンガポールにどうやって追いつき、追い越すのかを模索する1年になりそうです。

(試合のハイライト映像はスズキカップ2020の公式YouTubeチャンネルより)

スズキカップ2020日程および結果

*既に終了している試合の詳細については、試合結果をクリックするとスズキカップ2020公式サイト(英語)へ飛ぶことができます。

<グループステージA組>

2021年12月5日(日)
東ティモール 2-0 タイ
シンガポール 3-0 ミャンマー

2021年12月8日(水)
ミャンマー 2-0 東ティモール
フィリピン 1-2 シンガポール

2021年12月11日(土)
東ティモール 0-7 フィリピン
タイ 4-0 ミャンマー

2021年12月14日(火)
フィリピン 1-2 タイ
シンガポール 2-0 東ティモール

2021年12月18日(土)
タイ 2-0 シンガポール
ミャンマー 2-3 フィリピン

<グループステージB組>

2021年12月6日(月)
カンボジア 1-3 マレーシア
ラオス 0-2 ベトナム

2021年12月8日(水)
マレーシア 4-0 ラオス
インドネシア 4-2 カンボジア

2021年12月12日(日)
ラオス 1-5 インドネシア
ベトナム 3-0- マレーシア

2021年12月15日(水)
カンボジア 3-0 ラオス
インドネシア 0-0 ベトナム

2021年12月19日(日)
ベトナム 4-0 カンボジア
マレーシア 1-4 インドネシア

グループステージA組順位

順位チーム得失差勝点
1タイ4400912
2シンガポール430149
3フィリピン420266
4ミャンマー4103-63
5東ティモール4004-130

グループステージB組最終順位
*インドネシアとベトナムは勝点と得失点差で並んだものの、インドネシアの総得点13に対してベトナムは9のため、インドネシアがB組の1位に決定

順位チーム得失差勝点
*1インドネシア4310910
2ベトナム4310910
3マレーシア420206
4カンボジア4103-53
5ラオス4004-130

<準決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
シンガポール 1-1 インドネシア

2021年12月23日(木)
タイ 2-0 ベトナム

<準決勝第2回戦>

2021年12月25日(土)
インドネシア4 2- シンガポール

2021年12月26日(日)
ベトナム 0-0 タイ

<決勝第1回戦>

2021年12月29日(木)
インドネシア – タイ

<決勝第2回戦>

2022年1月1日(土)
タイ2 -2 インドネシア