3月1日のニュース
AFCカップアセアン地区の最終組み合わせが決定
タイ1部リーグ第22節-エルドストールはベンチ外もチョンブリーは連敗ストップ

AFCカップアセアン地区の最終組み合わせが決定

アジアサッカー連盟AFCは公式サイト上で今季2022年シーズンのAFCカップアセアン地区の最終組み合わせを発表しています。

いずれもミャンマーのシャン・ユナイテッドFCとハンタワディ・ユナイテッドFCが、1月19日に今季のAFCカップ出場を辞退を表明したことから、確定していなかったAFCカップアセアン地区のグループステージのG、H、I組について、AFCは当初はプレーオフで対戦予定だったビサカFC(カンボジア)とヤングエレファンツFC(ラオス)にそれぞれグループステージ出場権を与え、新たな組み合わせを発表しています。

4月19日開幕するグループステージから、ビサカFCは本来はプレーオフの勝者が参加する予定だったG組に入り、一方のヤングエレファンツFCは、出場辞退したハンタワディ・ユナイテッドFCに代わってI組に入っています。なお、シャン・ユナイテッドFCが出場予定だったH組についてはこのシャン・ユナイテッドFC以外の3クラブのままでグループステージが行われることも併せて発表されています。

なおAFCカップアセアン地区のG組はビサカFCの他、バリ・ユナイテッドFC(インドネシア)、クダ・ダルル・アマンFC(マレーシア)、堀越大蔵、藤井亮の両選手が在籍するカヤFCイロイロ(フィリピン)で構成され、インドネシアのバリ島にあるデンパサールで集中開催されます。

またH組はマレーシアのクアラルンプールが集中開催地となり、KLシティFC(マレーシア)、仲村京雅、山下柊哉の両選手が所属するタンピネスローヴァーズ(シンガポール)、PSMマカッサル(インドネシア)の3クラブが対戦します。一方、集中開催地が未定のI組は川上典洋選手が所属するヤングエレファンツFC、ベトテルFC(ベトナム)、山崎海秀選手が所属するホウガンユナイテッド(シンガポール)、小川雄大、小林大介、大瀬貴己選手が所属するプノンペンクラウンFC(カンボジア)で構成されています。

タイ1部リーグ第22節-エルドストールはベンチ外もチョンブリーは連敗ストップ

タイ1部リーグ第22節が2月26日と27日に開催され、マレーシア代表のDFジュニオール・エルドストール(タイでの登録名はプテラ・マデル・アマラン・マデルネル)が所属するチョンプリーFCは、2位のバンコク・ユナイテッドFCに1-1で引き分け、リーグ戦連敗を3で止めています。なお順位は5位のままです。

2022年2月26日@チョンブリースタジアム
チョンブリーFC 1-1 バンコク・ユナイテッド
第20節では、後半途中から出場、前節21節は先発しながら33分に交代したとなったジュニオール・エルドストールがですが、今節ではベンチ外でした。試合は78分にバンコク・ユナイテッドのヘベルチ・フェルナンデス・デ・アンドラーデが今季11点目となるPKを決めて先制しましたが、90+3分にチョンブリーFCのユ・ビョンスが放ったシュートがブロックに入ったバンコク・ユナイテッドのプッティナン・ワンナスリにあたりオウンゴールとなり、土壇場でチョンブリーFCが引き分けに持ち込んでいます。
(試合のハイライト映像はタイリーグの公式YouTubeチャンネルより)

タイ1部リーグ順位表(第22節終了時)

順位チーム得失差勝点
1ブリーラムU2316342551
2BGパトゥムU231184941
3バンコクU2311661439
5チョンブリーFC2310671336
順位は上位3チームとマレーシア人選手が所属するチョンブリーFCのみ表示しています。

2月27日のニュース
チャリティーカップはJDTがKLシティに完勝-オーナーのハッパが効いた!?

2022年2月26日(土)
チャリティーカップ2022@スルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
JDT 3-0 KLシティ
得点者:JDT-ナズミ・ファイズ(26分)、フェルナンド・フォレスティエリ(31分)、アフィク・ファザイル(84分)

昨季Mリーグ1部スーパーリーグの優勝チームJDTと昨季マレーシアカップ優勝チームKLシティが対戦するチャリティーカップ2022が開催され、昨季最終戦マレーシアカップの決勝で敗れていたJDTがKLシティを3-0で破り、2018年から続くチャリティーカップの連勝記録を5に伸ばしています。

試合前日には、JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が「今日の試合で敗れることがあれば、自分はサッカーから完全に手を引く。」と発言し、それを受けたJDTのベンジャミン・モラ監督が「ボスが辞めるなら、自分も辞める。」と述べるなど、試合前からJDTにとっては重圧のかかる試合かと思われました。

本拠地での開催となったJDTは、セリエAのウディネーゼから加入したFWフェルナンド・フォレスティエリや、同じスーパーリーグのトレンガヌから加入したDFカルリ・デ・ムルガの新戦力を含むベストの布陣で臨んだのに対し、KLシティは、やはり新戦力のFWケヴィン・クベンバが先発したものの、マレーシアカップ決勝でもゴールを決めたロメル・モラレスを欠く布陣となりました。

試合は重圧どころか開始から積極的に攻め込んだJDTのレアンドロやフォレスティエリがKLゴールを狙いますが、いずれも枠の外に外れ、KLは難を逃れました。

試合が動いたのは26分。それまでも右サイドから何度もKL守備陣を崩していた19歳の代表FWアリフ・アイマンのクロスに守備のマークを外して走り込んだMFナズミ・ファイズが頭で合わせて先制ゴールを決め、JDTが先制します。

マレーシアカップ決勝では、強固な守備でJDTの攻撃に耐え、カウンターを狙う試合展開が功を奏して勝利したKLはこの日の試合でも同じ戦術で臨みましたが、先制点を許したことで苦しくなってしまいまいた。

さらにその5分後にはフォレスティエリがKLのディフェンダーを見事なドリブルでかわし、ペナルティーボックスの外から放ったシュートが決まり、JDTが2-0とリードを広げ、逆にKLは1本もシュートを打つことができずに前半が終了しました。

後半に入ってもJDTは攻撃の手を緩めず、84分には途中出場のアフィク・ファザイルがダメ押しとなるシュートを決め、2ヶ月前のマレーシアカップでのリベンジを果たして完勝しています。

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前日のイスマイル殿下のハッパが効いたのか、勝つことに徹したJDTの強さだけが目立った一方的な試合でした。今季はスーパーリーグ9連覇を目指すJDTですが、この日の試合を見た限りでは、調整が遅れているKLシティ相手だったとは言え、死角なしの印象を受ける完勝でした。またクラブ史上初となるAFCチャンピオンズリーグACLのグループステージ突破すら期待できそうです。

(試合のハイライト映像はMリーグ公式YouTubeチャンネルより)

<KLシティとJDTの先発XI>

2月26日のニュース
「今日の試合に負けたら、自分はサッカーから手を引く」-JDTオーナーの投稿が波紋
アセアンU23選手権グループステージ敗退のマレーシアに続々と陽性者発覚し未だ数名が帰国できず
クランタン・ユナイテッドが湘南ベルマーレーとパートナーシップを締結

いよいよ今日は2022年シーズンの開幕を告げるチャリティーカップ開催日。昨季の1部スーパーリーグチャンピオンJDTと38年振りにマレーシアカップチャンピオンとなったKLシティが対戦します。昨季まではリーグ公式戦の一環として行われていたチャリティーカップですが、今季はリーグ開幕前の前哨戦として行われます。またチャリティーカップの名の通り、この試合の収益は全てユニセフに寄付されることも発表になっています。なお午後9時(マレーシア時間、日本時間は午後10時)キックオフとなるこの試合はTV OkeySukan RTMでも視聴可能とのことです。

「今日の試合に負けたら、自分はサッカーから手を引く」-JDTオーナーの投稿が波紋

上でも書いた通り、本日2月26日にはJDT対KLシティのチャリティーカップが開催されますが、それを前にJDTオーナーで、ジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下のインスタグラム投稿が波紋を読んでいます。「もし明日(2/26)負けたら、自分はサッカーから完全に手を引き、この国のサッカーにはもうこれ以上関わることはないだろう」とJDTの公式インスタグラムに投稿したイスマイル殿下ですが、その真意は不明です。

イスマイル殿下はわずか数日前には「マレーシアカップ決勝で敗れたのはKLシティが強かったからではなく、集中力を欠いていた我々(JDT)の一人一人にミスが多かったからだ。運が我々に味方しなかったという者もいる。KLシティには同じことは2度と起こることはないと伝えてくれ。」とテレビのインタビューに答えており、上記の投稿は自分のチームに対する自信の現れと見る向きもあります。

昨季中には後継に道を譲るような話もしていたイスマイル殿下でしたが、2021年シーズン最終戦となったマレーシアカップで敗れた悔しさは相当だったのか、マレーシアカップ敗戦後には一転、積極的にチームに関わっていることを表明し、シーズンオフには、セリエAのウディネーゼからFWフェルナンド・フォレスティエリを獲得するなど、近年稀に見る大型補強を敢行しています。

アセアンU23選手権グループステージ敗退のマレーシアに続々と陽性者発覚し未だ数名が帰国できず

カンボジアのプノンペンで開催されている東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権ではグループステージで敗退したマレーシアU23代表は、予定を1日繰り上げて一昨日の2月24日にが帰国していますが、選手9名と関係者3名がカンボジアでの新型コロナ検査で陽性となり、カンボジアから出国できていないことがマレーシアサッカー協会FAMの公式Facebook上で明らかにされています。なお、この合計12名はカンボジア政府の方針により、プノンペンでの隔離期間が終わり、検査で陽性となるまでは出国が許可されないということです。

FAMの公式航空会社となっているマレーシア航空に搭乗して、昨日2月26日帰国予定だったU23代表ですが、チーム内の感染が拡大していることから、検査で陰性を示したブラッド・マロニー監督を含む19名は、サイドの検査で要請となり足止めされるのを恐れて、急遽帰国したということです。

プノンペンに残った12名の中にはU23代表のチームマネージャー(TM)を務めたサラワク州サッカー協会会長のポサ・マジャイスも含まれており、マレーシア語紙ハリアンメトロの取材に答えたマジャイスTMは、2月11日の入国時の検査で陽性となったファーミ・ダニエル・ザアアイムは、未だに隔離中で既にその隔離期間が2週間を超えているなど、隔離期間がいつまでつづくは不明だと語っています。

クランタン・ユナイテッドが湘南ベルマーレーとパートナーシップを締結

Mリーグ2部プレミアリーグのクランタン・ユナイテッドFCは、クラブ公式Facebook上でJリーグ1部湘南ベルマーレとのパートナーシップを締結したことを発表しています。ベルマーレ・アジア・フットボール・アライアンス、通称BAFAと名付けられたこのアライアンス(提携関係)では、パートナークラブを一つのグループとして相互の交流を深めながら、クラブが発展することを目的としているということです。なおBASEBALLFAの具体的な提携内容としては以下が挙げられています。
1)トップチームの交流:選手移籍、指導者派遣、トレーニングキャンプのサポート
2)アカデミーの交流:選手の練習参加、指導者の研修、相互の大会参加
3)各種情報の共有:選手情報、指導者情報、大会情報、TRメソッド
4)ビジネス部門の協力:スポンサーセールス、チケッティング、グッズ、ファン創出

湘南はBAFAの第1弾としてとして、今年1月にはボンケットFC(カンボジア1部)、武漢スリータウンズ(中国1部)、スデヴァ・デリFC(インド1部)、FCチャンタボリー(ラオス1部)、ダヴァオ・アギラスFC(フィリピン1部)の5クラブとのパートナーシップを締結したことを発表し、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアのクラブとも提携調整中であることも明らかにしていましたが、マレーシアからは本山雅志、深井脩平両選手が在籍し、ヤクルト、KDDIといった日系企業がスポンサーとなっているクランタン・ユナイテッドがこのアライアンスに加わることになりました。

2月23日のニュース
UITMは資金調達成功で今季リーグ参加へ
ペラは年代別チームがリーグ出場を取り止め-クラブライセンス交付規定抵触の可能性も

昨日2月22日は今季1度目のトランスファーウィンドウ最終日。ここを逃すと次はMリーグ前半戦終了後の5月28日の2度目のトランスファーウィンドウが開くまで選手の入れ替えはできません。この最終日に選手の加入が大量に発表されており、ここ数日掲載してきた1部スーパーリーグチーム紹介にも選手の追加がありますので、そちらも是非、ご覧ください。

UITMは資金調達成功で今季リーグ参加へ

昨季は1部スーパーリーグで最下位となり降格し、今季は2部プレミアリーグに所属するUITM FCは、運営する国立大学のマラ工科大学UITMがチーム予算を50%以上も削減し、今季のリーグ参加が危ぶまれていましたが、Mリーグの今季1度目のトランスファーウィンドウ最終日だった昨日に資金調達に成功し、今季リーグ参加が決まったことを、マレーシア語紙ハリアンメトロが報じています。

ハリアンメトロによれば、総額370万リンギ(およそ1億200万円)の資金が調達できたことで、UITM FCは選手登録最終日となった昨日に選手登録を終えたということです。なおUITM FCは、当初は資金不足から大学生の選手を主体としたチームで今季をスタートし、資金を調達したのちの2度目のトランスファーウィンドウ期間にさらに選手を獲得することを予定していました。ただしこの370万リンギだけではシーズンを通してクラブを運営するには不十分だとして、引き続きスポンサーを探していくということです。

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なおこの資金370万リンギはマレーシア政府高等教育省から得た、という報道もあり、もしこれが事実であれば、プロサッカークラブの資金を政府が支援、言い換えれば税金が投入されることについての議論が巻き起こる可能性があります。またUITM FCからは昨季所属した選手の半数以上が既に退団、移籍し、多くのコーチ陣もチームを去っていることから、チームは存続したものの2部プレミアリーグでも苦戦を強いられそうです。

ペラは年代別チームがリーグ出場を取り止め-クラブライセンス交付規定抵触の可能性も

上のUITM FCと共に1部から降格し、今季は2部プレミアリーグに所属するペラFCは、170万リンギ(およそ4670万円)におよぶ未解決の給料未払い問題を抱えていることから、今回のトランスファーウィンドウ期間中の新規選手登録禁止処分を受けていました。さらに契約済みの選手数がMリーグが下限として規定する20名以下だったことから、リーグ出場辞退の可能性が取り沙汰されていました。しかしペラはU21やU19といった下部組織から選手を昇格させて、この問題を解決し、リーグ出場に漕ぎ着けましたが、その影響についてハリアンメトロが報じています。

トップチームに選手が昇格したことで、ペラFCはU21チームが参加するプレジデントカップ、そしてU19チームが参加するユースカップに出場できるだけの選手数を揃えることができず、この年代別リーグへの今季出場を辞退しています。過去2年間は新型コロナの影響により開催されなかった両リーグですが、最後に開催された2019年のリーグではペラはプレジデントカップでは準優勝、ユースカップではベスト4に進むなど好成績を上げており、今季の両リーグでも優勝候補の一角とされていました。

なお、ペラの両リーグ出場辞退について、マレーシアサッカー協会FAM競技委員会のフィルダウス・モハマド委員長は、ペラは出場辞退したのではなく、FIFAによる処分に基づき「出場取り消し」となったと説明しています。また既に発表されているリーグの試合日程については、変更が予定されているとし、ペラの対戦相手が不戦勝とはならないことも発表しています。

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U21とU19チームから選手を昇格させてトップチームの人数を補充したペラですが、SNS上ではこの方法によりU21とU19が消滅してしまったことが、Mリーグのクラブライセンス規定に抵触しているとの指摘もあります。Mリーグは1部スーパーリーグと2部プレミアリーグのクラブライセンス交付の条件として年代別チームを複数持つことを義務付けていますが、ペラがU21とU19チームを「取り消した」ことがこの規定に抵触するとの指摘です。クラブのMリーグ存続のために年代別チームを犠牲にするのか、年代別チームを生かすためにMリーグの出場を辞退するのか、どの観点から見るかで判断が分かれますが、いずれにしてもFAMとMリーグを運営するMFLはこの状況についての見解を発表する必要があります。

2022年シーズン開幕直前!
Mリーグ1部スーパーリーグクラブ紹介第6回
ヌグリスンビランFC & サラワク・ユナイテッドFC

Mリーグ2022年シーズンは2月26日のピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介する最終回は、いずれも今季スーパーリーグに昇格する昨季Mリーグ2部プレミアリーグ1位のヌグリスンビランFCとプレミアリーグ2位のサラワク・ユナイテッドFCです。この2クラブは昨季は2部プレミアリーグに所属していたため、ボラセパマレーシアJPが情報不足なところもありますので、内容はこれまでの5回に比べると薄くなっている点をご容赦ください。

ヌグリスンビランFC(2021年シーズンプレミアリーグ1位)

本拠地:トゥンク・アブドル・ラーマンスタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
2021年シーズン成績:2部プレミアリーグ1位(12勝5分3敗)得点33(リーグ4位)失点16(同2位)
過去5シーズンの成績:2017年2部5位-2018年12位-2019年2部6位-2020年2部11位-2021年2部1位
監督:K・ディヴァン(マレーシア)
外国籍選手:
 *DFエラルド・グロン(フランス)
 *FWマテウス・アウヴェス(ブラジル)
 *FWコッシ・アデトゥ(トーゴ)
 *MFデヴィッド・マウーター(タジキスタン/ガーナ-AFC枠)
 *MFオミド・ナザリ(フィリピン/イラン-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 *GKシャイハン・ハズミ(PJシティより加入)
 DFザムリ・ピン・アムリ
 DFナスルラー・ハニフ・ジョハン
 *DFアフマド・クザイミ・ピー(UITMより加入)
 *DFチェ・ラシド・チェ・ハリム(マラッカ・ユナイテッドより加入)
 *DFカイル・ジョーンズ(サラワク・ユナイテッドより加入)
 MF K・サルクナン
 MFシーン・セルヴァラジ
 MFサイフル・リズワン
 FWザクアン・アドハ

チーム紹介:
4年振りに1部スーパーリーグに復帰するヌグリスンビランFC(以下ヌグリスンビラン)。外国籍選手を全て入れ替え、マレーシア人選手も昨季のメンバーからは、5ゴールを挙げたMFのR・バラトクマル、その弟のDFのR・アルーン・クマル(いずれもPJシティに移籍)、正GKとして16試合に出場したGKダミアン・リム(サバに移籍)らが退団と、昨季からはメンバーが大きく変わっています。その一方で、新加入のマレーシア人選手はクザイミ・ピー、チェ・ラシドなど実績ある選手を獲得しているだけに、戦力面ではむしろ昨季からはアップしていそうです。となれば外国籍選手の活躍が1部での成績に直結しそうです。

昨季は失点を抑えて勝つというチームカラーからヌグリスンビランですが、同じことが1部スーパーリーグでもできるのか。そして昨季のチーム総得点33点中、退団した選手たちが挙げた21点分の穴をどのように埋めていくのか。この二つの問いの正解が見つけられれば、1部残留、見つけられなければ1シーズンで2部に降格もあり得る、というのが今季のヌグリスンビランです。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・ザクアン・アドハ
昨季は17試合に出場し、マレーシア選手としてはチーム1位の7ゴールを挙げたザフアン・アドハは、主将としてもチームを牽引しました。今年35歳になるベテランは、自身にとっては2季ぶりとなる1部スーパーリーグでも同じような活躍を見せらられるのかに注目です。

・マテウス・アウヴェス
2017年シーズンにパハンに加入すると、リーグ2位となる18ゴール(21試合)を挙げたマテウス・アウヴェスが5季ぶりにMリーグに戻って来ます。パハン退団後は水原FC(韓国2部)、チョンブリーFC、PTプラチュワップFC、ポリス・テロFC(いずれもタイ1部)そして昨季は忠南牙山FC(韓国2部)と渡り歩いて経験を積んだマテウスは28歳となり、5年前はなかった円熟味も加味されていれば、今季の得点王争いに絡んでくる可能性大の選手です。またそうなれば、チーム自体も1部初年度ながら躍進が期待できます。

サラワク・ユナイテッドFC(2021年シーズンプレミアリーグ2位)

本拠地:サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
2021年シーズン成績:2部プレミアリーグ2位(11勝5分4敗)得点37(リーグ2位タイ)失点14(同1位)
過去5シーズンの成績:2017年3部6位-2018年3部2位-2019年2部9位-2020年2部10位-2021年2部2位
監督:E・エラヴァラサン(マレーシア)
外国籍選手:
 FWウチェ・アグバ(ナイジェリア)
 *FWフランシス・コネ(トーゴ)
 DFゴンサロ・ソト(アルゼンチン)(2/22追加)
 DFリー・チャンフン(韓国-AFC)
 DFボリス・コック(カンボジア-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 GKシャルビニー・アラウィー
 *DFカライハラサン・レチュマナン(PDRM FCより加入)
 DFカイル・ジョーンズ
 DFアメル・サイディン
 *DFアミルル・アシュラフ(ペラFCより加入)
 MFラヒム・ラザク
 MFシャミー・イスズアン
 MFクリスティ・ジャヤシーラン
 MFスチュアート・ウォーク
 *MFカイルル・アヌアル(PJシティFCより加入)
 FWスピアー・チャントゥル
 FWゴピ・リズキ

チーム紹介(2/22一部追記しました):
2月22日のトランスファーウィンドウ最終日にフランシス・コネ、ゴンサロ・ソト、そしてボリス・コックとの契約を発表したサラワクユナイテッドFC(以下サラワク)。Mリーグでプレー経験のあるコネ選手はKL(2020年)、ヌグリスンビラン(2021年)に続いてこのサラワクが3クラブ目で、ソト選手は2016年と2017年の両シーズンにPKNS FC(現スランゴール2)でエラヴァラサン監督の元でのプレー経験もあります。(ちなみにボリス・コックはウィキペディアでは代表キャップ数2となっており、Mリーグではアセアン枠で獲得する選手に『最低キャップ数』といった条件がないことを初めて知りました。)

2部では得点リーグ2位タイ、失点はリーグ1位と圧倒的な強さを見せたサラワクですが、昨季はシーズン中に給料未払い問題が明らかになり、しかもオーナーが未払いではなく遅配であると言い張るなど、運営が不安定なチームという印象が強く、ボラセパマレーシアJP的には今季2部降格の最有力候補です。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・ウチェ・アグバ
昨季はリーグ戦とカップ戦を合わせたチームの全試合26試合に出場し、総得点46点中、19点を挙げたチームの大黒柱。Mリーグでは4季目を迎え、2020年はマラッカでプレーするなど1部スーパーリーグでもプレー経験があるエースですが、1部では当然マークも厳しくなり、昨季同様の活躍は期待できないかも知れません。昨季のチーム2位の得点を挙げたのは退団したサンドロとラヒム・ラザクの5点ですので、アグバ選手が封じられると、チーム全体の得点力も大きく下がりそうです。

2月22日のニュース
アセアンU23選手権-16名のU23代表はラオスに敗れてグループステージ敗退
MFL-UITM FCは今日中に選手登録を終えればリーグ出場に問題なし
タイ1部リーグ第21節-チョンブリーは連敗で5位降格、エルドストールは前半途中で交代

アセアンU23選手権-16名のU23代表はラオスに敗れてグループステージ敗退

カンボジアのプノンペンで開催中の東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権に出場中のマレーシアU23代表は、昨日行われたラオスU23代表との第2回戦に0-2で敗れ、2試合の通算スコアが1-4となり、グループステージ敗退が決まりました。

初戦を1-2で敗れていたマレーシアは、この第2回戦では2点差以上をつけての勝利が準決勝進出の条件でしたが、この日の朝に行われた新型コロナ検査で複数の陽性反応者が出たことから、ラオス戦出場可能なのは16名となる逆風の中、試合に臨みました。

先制点が欲しいマレーシアは試合開始から積極性を見せ、ボールを保持する時間はラオスに勝るものの、ペナルティエリア付近では肝心のパスがことごとく繋がらず、ゴールを奪えません。そんな中、前半終了間際の43分に、第1回戦でもゴールを決めているブウンファチャン・ブウンコンのフリーキックが決まり、ラオスが先制。そのまま1-0とラオスのリードで前半を終えます。後半に入ると、まずは同点に追いつきたいマレーシアですが、機会らしい機会も作れない中、逆に86分にはディフェンダーのミスコミュニケーションからさらに失点を許し万事休す。ラオスに2連敗したマレーシアはグループステージ敗退、ラオスは準決勝出場が決定しました。

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5月の東南アジア競技大会シーゲームズ(ベトナム)、そして6月のAFC U23アジアカップ(ウズベキスタン)、そして9月のアジア競技大会(中国)に向けたチームの底上げを目指して、マレーシアは今大会には昨年10月のAFC U23アジアカップ予選出場メンバー以外が中心のチーム編成で臨みました。昨年末のスズキカップに続いて、東南アジアの大会でベスト4に進めなかったことで、SNS上でそれなりの騒ぎになっていますが、目的を持って臨んだ大会なので、結果に一喜一憂する必要はないでしょう。ただしメンバーを落としたチームでは、この年代では東南アジアであっても勝つことができないという現実を突きつけられた格好になりました。

MFL-UITM FCは今日中に選手登録を終えればリーグ出場に問題なし

今日2月22日は、Mリーグ今季1度目のトランスファーウィンドウ最終日ですが、昨季1部スーパーリーグで最下位の12位となり、今季は2部プレミアリーグに降格するUITMは、選手の大半が退団し、コーチングスタッフの多くも他のクラブへ移籍していることから今季リーグ出場辞退の可能性が噂されています。これについてMリーグを運営するMFLのスチュアート・ラマリンガムCEOは、既にクラブからは今季のリーグ出場に必要な書類は全て提出されており、今日までに選手を登録すれば、UITM FCのリーグ出場については何も問題がないと述べていると、マレーシア語紙ハリアンメトロが報じています。

クラブを運営するマラ工科大学UITMからの予算が50%以上削減されたことにより、新たな選手の獲得ができていないUITM FCは、開幕前に経営権譲渡が実現しなかったにより、プレシーズンの活動がほとんど行われていません。これに端を発するリーグ不参加の噂についてラマリンガムCEOは、UITM FCとは頻繁に連絡をとっていると話し、少なくとも現時点でのリーグ不参加の意思表示はされていないと話しています。「プレシーズンマッチをほとんど行っていないことは知っているが、それだけでUITM FCがリーグ出場を辞退するということにはならない。もし、今日中に選手登録を終えなければ、その時点でMFLはUITM FCは出場辞退したと判断する。」と述べたスチュアートCEOはSNS上でささやかれている出場辞退の噂を否定しています。

タイ1部リーグ第21節-チョンブリーは連敗で5位降格、エルドストールは前半途中で交代

タイ1部リーグ第21節が2月19日と20日に開催され、マレーシア代表のDFジュニオール・エルドストール(タイでの登録名はプテラ・マデル・アマラン・マデルネル)が所属するチョンプリーFCは、スパンブリーFCに1-2で敗れ、リーグ戦3連敗となり、順位も4位から5位に転落しています。

2022年2月13日@スパンブリー県立スタジアム
スパンブリーFC 2-1 チョンブリーFC
前節第20節では、後半途中から出場となったジュニオール・エルドストールですが、今節では33分に交代しています。試合は開始5分チョンブリーFCのGKチャニン・サエイアがペナルティエリア外のハンドで一発退場となり、スパンブリーFCが終始リードする展開となったものの前半は0-0で折り返しました。後半に入るとダニーロ・アルメイダ・アウヴェスが先制ゴールをヘディングで決めるなど2-0としてスパンブリーFCは、ダニーロ選手がオウンゴールでチョンブリーに1点を与えたものの、そのまま2−1で逃げ切っています。
(試合のハイライト映像はタイリーグの公式YouTubeチャンネルより)

タイ1部リーグ順位表(第21節終了時)

順位チーム得失差勝点
1ブリーラムU2215342248
2バンコクU2111561438
3BGパトゥムU221084738
5チョンブリーFC2210571335
順位は上位3チームとマレーシア人選手が所属するチョンブリーFCのみ表示しています。

2022年シーズン開幕直前!
Mリーグ1部スーパーリーグクラブ紹介第5回
サバFC & スリ・パハンFC

Mリーグ2022年シーズンは2月26日のピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介する第4回は、昨季Mリーグ7位のPJシティFCと同8位のマラッカ・ユナイテッドFCです。

サバFC(2021年シーズンスーパーリーグ9位)

本拠地:リカススタジアム(サバ州コタキナバル)
2021年シーズン成績:9位(4勝7分11敗)得点21(リーグ9位)失点38(同10位)
過去5シーズンの成績:2017年2部7位-2018年2部6位-2019年2部1位-2020年10位-2021年9位
監督:オン・キムスイ(マレーシア)
外国籍選手:
 DFパク・タエス(韓国-AFC枠)
 *DFジャクソン・デ・ソウザ(ブラジル)
 *FWネト・ペソア(ブラジル)
 *FW加賀山泰毅(日本-AFC枠)
 FWサディル・ラムダニ(インドネシア-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 *#GKカイルル・ファーミ・チェ・マット(マラッカ・ユナイテッドFCより加入)
 *GKダミアン・リム(ヌグリスンビランFCより加入)
 DFロウィルソン・バタイル
 *#DFリザル・ガザリ(クダ・ダルル・アマンFCより加入)
 *#DFドミニク・タン(タイ1部ポリス・テロFCより加入)
 *DFバドルル・アフェンディ(サラワク・ユナイテッドFCより加入)
 *DFトミー・マワト(サラワク・ユナイテッドFCより加入)
 *DFナジルル・ナイム(ペラFCから期限付き移籍で加入)
 MFアルト・リナス
 *#MFバドロル・バクティアル(クダ・ダルル・アマンFCより加入)
 *MFイルファン・ファザイル(JDT IIより期限付き移籍で加入)
 *MFスチュアート・ウィルキン(JDT IIより期限付き移籍で加入)
 *MFゲイリー・スティーヴン・ラバト(JDTより期限付き移籍で加入)
 *MFアフィク・ユヌス(キナバルジャガーズ-M3リーグ-より加入)
 *FWアズハド・ハラズ(FAM-MSNプロジェクトより加入)
 *FWディルガ・スルギ(UITM FCより加入)
 FWアムリ・ヤハヤ
 FW N・タナバラン

チーム紹介:
降格圏から勝点差3の9位で1部スーパーリーグ残留を決めたサバFC(以下サバ)ですが、昨年10月にマレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクターを務めていたオン・キムスイ氏が就任すると、元U23代表監督時代に培った人脈を通じて選手が集まっています。2011年の東南アジア競技大会通称シーゲーム優勝のU23代表からはバドロル・バクティアルやカイルル・ファーミ・チェ・マット、2017年シーゲーム準優勝のU23代表からはドミニク・タンらいずれも昨年末のスズキカップ2020に出場したA代表の選手たちが加入している他、FAMのテクニカルディレクターとして関わったFAM-MSNプロジェクトからは、昨季のプレミアリーグでマレーシア人選手として最多ゴールを挙げた地元サバ州出身で19歳のアズハド・ハラズを獲得するなど、今季のサバは新たな外国籍選手も含めると20名を超える新戦力を補強しています。

1996年には選手としてサバでの優勝を経験しているオン監督ですが、今季のスーパーリーグではトップ5入りを目標に上げています。メンバーを見る限りでは十分達成可能な目標ですが、今季のサバは言わば寄せ集め集団でもあり、選手間の理解や連携をどれだけ高められるかが今季の成績を決める鍵になりそうです。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・加賀山泰毅
隣国タイやシンガポールのリーグに比べると日本人選手の数が少ないマレーシアリーグ。1部スーパーリーグで日本人選手がプレーするのは2020年の鈴木ブルーノ(当時トレンガヌFC)以来2年振り、サバで言えば2017年に地頭薗雅弥選手(現世田谷ユナイテッド代表)が在籍して以来5年振りの日本人選手となる加賀山選手ですが、気候も文化も異なるヨーロッパ(フィンランド1部FCインテル・トゥルク)から東南アジアへの移籍となる中で、どのようなプレーを披露してくれるのか期待が高まります。

・ドミニク・タン
U23代表では主将も務めたタン選手は、JDTから移籍したタイ1部ポリス・テロFCではレギュラーポジションを掴めず、リーグでの試合出場時間の短さが影響し、代表に招集されるものの活躍はできていません。代表のセンターバックはアイディル・ザフアン(JDT)が務めていますが、世代交代となればその一番手候補となるためにもまずはサバで試合出場時間を増やすとともに試合感を取り戻して欲しいです。

・アズハド・ハラズ
18歳ながらAFC U23選手権予選に出場したU22代表にも招集されたのは、昨季所属した2部プレミアリーグでプレーしたFAM-MSNプロジェクトでの活躍があったから。ライバルがいなかったFAM-MSNプロジェクトとは違い、今季のアズハド選手はチーム内での競争に勝って出場機会を得るところがスタートラインとなります。その才能に期待したサバが異例の4年契約を結んだアズハド選手がその競走に勝って1部スーパーリーグで出場機会を得られれば、サバにとってだけでなくU19代表やU23代表の強化にもつながります。

スリ・パハンFC(2021年シーズンスーパーリーグ10位)

本拠地:ダルル・マクモルスタジアム(パハン州クアンタン)
2021年シーズン成績:10位(4勝6分12敗)得点23(リーグ8位)失点37(同9位)
過去5シーズンの成績:2017年2位-2018年4位-2019年2位-2020年8位-2021年10位
監督:クリストフ・ギャメル(フランス)
外国籍選手:
 *GKママドゥ・サマサ(マリ/フランス)
 *DFジョアン・マルシアル (フランス)
 MFマヌエル・イダルゴ(アルゼンチン)
 *FWマフムード・ザアタラ(ヨルダン-AFC枠)
 *FWビリー・ケトケオポムポン(ラオス/フランス-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 GKヘルミ・エリザ
 GKザリフ・イルファン
 DFムスリム・アフマド
 DFアシャル・アル=アフィズ
 DFニコラス・スウィラッド 
 *DFアズワン・アリピン(ペナンFCより加入)
 *DFファイサル・ロスリ(クダ・ダルル・アマンFCより加入)
 DFファンディ・オスマン
 #MFアザム・アジー
 MFリー・タック
 *MFデヴィッド・ローリー(クダ・ダルル・アマンFCより加入)
 FWマリック・アリフ
 FWバキュディン・シャムスディン
 FWエセキエル・アグエロ 
 *FWシーン・ジャネッリ(KLシティFCより加入)

チーム紹介:
昨季は元アメリカ代表主将でフィリピン代表監督の経験もあるトーマス・ドゥリー新監督を迎えながら開幕からわずか2試合で「休養」させるなど、迷走したスリ・パハンFC(以下パハン)は、ドゥリー前監督と共に休養させたフランス出身のクリストフ・ギャメル コーチを今夏は監督に据える人事を敢行し、さらに昨季在籍した外国籍選手5名とマレーシア人選手14名との契約を更新せず、大幅なチームメンバーの入れ替えを敢行しています。昨季はトップチームでのコーチ「休養」後はU19チームを指導したギャメル新監督就任にあわせ、今季は若手を積極的に起用するのかと思いきや、クラブはMリーグでのプレー経験が5年を超えたリー・タック(イギリス)、エセキエル・アグエロ(アルゼンチン)両選手の帰化を進めマレーシア人選手として登録する方針を発表しています。パハンにはこの他にもニコラス・スウィラッド、デヴィッド・ローリー、シーン・ジャネッリらマレーシア人の血を引くハイブリッド帰化選手もおり、帰化選手だけで1チームができてしまうほどで、昨季主将を務めたムスリム・アフマッドらまで退団させた目的が、外国籍と外国生まれの選手に頼ったチーム再建なのか、という声が上がると、今度はムスリム・アフマッドと再契約するなど、経営陣の方針が全く不明な補強を行なっています。個々の選手の顔ぶれは上位のクラブとは引けを取らないものの、昨季のように経営陣が介入すれば、今季も降格争いに加わる可能性は十分あります。
 
 

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・アザム・アジー
コロナ前の2019年予選も含めてほぼレギュラーポジションをつかんでいたにもかかわらず、昨年6月に再開されたFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選以降は代表招集がなかったアザム選手。スーパーリーグでも22試合中19試合に出場するなど不調だったわけではありませんが、スズキカップ2020では自身のポジションである守備的ミッドフィルダーに、当時のタン・チェンホー監督が攻撃的ミッドフィルダーのバドロル・バクティアルを起用するなど不可解な起用で代表招集はありませんでした。代表だけでなく、所属するパハンも突然の監督交代などでゴタゴタしたことから、シーズン終了後には他クラブへの移籍も噂されましたが、結局残留したのは、地元出身でユースからパハン一筋でプレーしてきたからかも知れません。ボラセパマレーシアJP的にはマレーシアでトップ3に入るデッドボール・スペシャリストだと思っているので、アザム選手には代表復帰のためにも、今季はクラブでの活躍を期待したいところです。

・マヌエル・イダルゴ
昨季2度目のトランスファーウィンドウ期間に加入すると、選手登録された最初の試合でゴールを挙げ、それまで2勝2分7敗と不調のクラブの雰囲気を一変させたイダルゴ選手は、加入直後の6試合を2勝4分で終える原動力となりました。その後は他クラブのマークなども厳しくなり、入団当初ほどの劇的な活躍は無くなりましたが、今季新加入のFWコンビの実力次第では攻撃的ミッドフィルダーとしてではなく、司令塔としてより多くのゴールを引き出す可能性もあります。

2022年シーズン開幕直前!
Mリーグ1部スーパーリーグクラブ紹介第4回
PJシティFC & マラッカ・ユナイテッドFC

Mリーグ2022年シーズンは2月26日のピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介する第4回は、昨季Mリーグ7位のPJシティFCと同8位のマラッカ・ユナイテッドFCです。

PJシティFC(2021年シーズンスーパーリーグ7位)

本拠地:MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
2021年シーズン成績:7位(6勝6分10敗)得点16(リーグ11位タイ)失点31(同8位タイ)
過去5シーズンの成績:2017年8位-2018年7位-2019年6位-2020年9位-2021年7位
監督:P・マニアム(マレーシア)
外国籍選手:
在籍外国籍選手なし

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 #GKカラムラー・アル=ハフィズ
 DFラフィ・ナグールガニ
 DF P・カナダサン
 DFシュクリ・ハミド
 DF D・クガン
 DFフィレモン・アニル
 DFマハリ・ジュスリ
 DFラジェス・プルマイ
 MF S・チャンドラン
 MF V・ルヴェンティラン
 MF K・グルサミー
 MFサルモン・ラジ
 #MFコギレスワラン・ラジ
 FWシャーミ・ザムリ
 FWカイリル・ムハイミーン
 #FWダレン・ロック
 *FW S・クマーラン(マラッカ・ユナイテッドFCより加入)
 *FWアルーン・クマル(ヌグリスンビランFCより加入)

チーム紹介:
スーパーリーグで唯一の外国籍選手が1人もいないクラブがこのPJシティFCです。初めてこの方針を採用した昨季は、2部降格の一番手かと思われたものの、フタを開けてみればリーグ最小の16点得点(22試合)ながら勝点24を挙げ、堂々の7位でシーズンを終えています。外国籍選手がいなければ、当然ですがマレーシア人選手の出場時間も増えるわけで、十分な試合出場時間を確保したことで実績も積んだダレン・ロック、コギレスワラン・ラジ、そしてカラムラー・アル=ハフィズの3選手が代表に招集されています。(ただしロック選手はケガしていた箇所を代表合宿中に悪化させ途中辞退)

前身がインド系マレーシア人のためのサッカークラブだったことから、インド系の選手が多いのもこのクラブの特徴でが、今季はヌグリスンビランとマラッカ・ユナイテッドからやはりインド系の選手が加入していますが、アルーン・クマル、S・クマーラン両選手とも昨季所属していたクラブでは攻撃陣の主力選手としてプレーしており、昨季の「負けないサッカー」はマレーシア人選手だけでも十分にスーパーリーグでプレーできることを示せたことから、今季さらに点を取って「勝つサッカー」へと変貌を遂げられるかどうかを見てみたいクラブです。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・ダレン・ロック
昨季は開幕戦からゴールを重ねるもケガで長期離脱。シーズン終盤に復帰し、スズキカップ2020出場の代表合宿に招集されるものまたケガで辞退となったダレン・ロックは、ストライカー不足の代表の救世主となり得る存在ですが、キム・パンゴン新監督にアピールするためにもまずはケガなくシーズンを迎えて欲しいです。身体の強さを生かして泥臭く得点を挙げるスタイルは、現在の代表にはいないタイプの選手です。

・コギレスワラン・ラジ
3年振りの代表復帰となったスズキカップ2020では代表初ゴールを含む2ゴールを決めるなど、昨季はいい形でシーズンを終えたコギレスワラン・ラジですが、今季はPJシティでアタッキングミッドフィルダーとしての地位を確立し、キム監督の元でも代表チームでプレーしたいところ。フォワードのS・クマーランが加入したことで、今季はフォワードとの兼業はなさそうなので、スズキカップでも見せた得意の中盤からのオーバーラップを生かし、まずはチームでゴールを量産したいところです。

マラッカ・ユナイテッドFC(2021年シーズンスーパーリーグ8位)

本拠地:ハン・ジェバスタジアム(マラッカ州マラッカ)
2021年シーズン成績:7位(5勝9分8敗)得点25(リーグ7位)失点31(同8位)
過去5シーズンの成績:2017年8位-2018年7位-2019年6位-2020年9位-2021年8位
監督:リスト・ヴィダコヴィッチ(ボスニア)
外国籍選手:
 *FWイフェダヨ・オルせグン(カタール/ナイジェリア-AFC枠)
 *FWエマヌエル・オッティ(ガーナ)
FWアドリアーノ(ブラジル) 
MFソニー・ノルデ(ハイチ)
 *DFジャスティン・バース(フィリピン/オランダ-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 *GKブライアン・シー(ペナンFCより加入)
 DFワン・アミルル・アフィク
 DFファリス・シャー
 DFカイルル・アンワル
 DFアクマル・ザヒル
 DFシャミン・ヤハヤ
 *DFシャズワン・アンディック(JDT IIより期限付き移籍で加入)
 MFワン・ザハルルニザム
 *MFシャールル・アズワリ(ケランタン・ユナイテッドFCより加入)
 *MFシュクリ・バハルン(サバFCより加入)
 *MFファドリ・イドリス(ペナンFCより加入)
 *FWファドリ・シャス(JDT IIより期限付き移籍で加入)
 *FWノーシャールル・イドラン・タラハ(サラワク・ユナイテッドFCより加入)

チーム紹介:
2020年、2021年シーズンと2季連続で選手や監督、コーチへの給料未払いが発覚し、勝点剥奪処分を受けたマラッカ・ユナイテッドFC(以下マラッカ)は、代表選手で正GKのカイルル・ファーミ・チェ・マットや昨季のチーム得点王S・クマーランらがチームを去っています。その一方でチームに残った選手たちの多くは過去3季指揮を取ったザイナル・アビディン・ハサン監督の残留を条件にしていたとされていますが、今年1月に入るとクラブはリスト・ヴィダコヴィッチ新監督の就任とザイナル監督の退任を発表しています。ザイナル監督では「タイトル」が取れる見込みがないという監督交代の理由をクラブのCEOが明らかにする一方で、給料未払いのままプレーし続けた選手たちがリーグ戦後のマレーシアカップでは1983年以来となる準決勝を果たしたのはザイナル監督が選手を鼓舞し続けたからとも言われており、開幕をおよそ1ヶ月に控えての監督交代が裏目に出る可能性もあります。

それでもCEO自らが「タイトル」を口にするだけのことはあり、シーズンオフの戦力補強は積極的に行われ、中でも最大の補強は昨季のリーグ得点王イフェダヨ・オルセグンの獲得です。マラッカへは2018年シーズン以来4季振りの復帰となるイフェダヨ選手は、昨季は26ゴールを挙げており、これはマラッカのチーム総ゴール数25を上回っています。リーグでも屈指となった得点力に加え、JDTのセカンドチームJDT IIからいずれも元代表のDFシャズワン・アンディックとFWファドリ・シャスも獲得するなどメンバーは揃ったマラッカですが、ここ数年のようなピッチ外での問題がなければトップ5入りが期待できる布陣です。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・イフェダヨ・オルセグン
イフェダヨ・オルセグンは、昨季のリーグ戦26ゴールを含め、過去3季在籍したスランゴールでは。リーグ戦43試合出場で50ゴールを挙げているスーパーリーグ屈指のストライカーです。昨季のスランゴールは若い選手が多く、自身へのマークが厳しくなりがちな中での26ゴールだったことを考えると、昨季から残留するアドリアーノや新戦力のエマヌエル・オティらFW陣や、そしてスーパーリーグでは一二を争う攻撃的MFソニー・ノルデらと共にプレーする今季はさらなるゴール数も期待できそうです。

・ノーシャールル・イドラン・タラハ
2019年シーズンにパハンFA(当時、現スリ・パハンFC)でプレーした後、タイ1部のBGパトゥム・ユナイテッドへ移籍するも出場機会に恵まれず、昨季は2部プレミアリーグのサラワク・ユナイテッドでプレーしていたマット・ヨーことノーシャールル選手。コロナ前の2019年末のFIFAワールドカップ予選では代表FWとして先発にその名を連ねていましたが、昨年6月に再開したW杯予選では出番もなく、昨年末のスズキカップでは代表へ招集されることもなく、このまま表舞台から消えてしまうのかと思われましたが、3年振りのスーパーリーグ復帰となりました。マラッカではスーパーサブ的な起用となるのか、それとも外国籍選手との競争に勝ってレギュラーポジションを奪取するのかは分かりませんが、自身の代表復帰も含め、復活に期待したいです。
 

2月20日のニュース
クランタン・ユナイテッドも4名の外国籍枠が埋まる
アセアンU23選手権-負けられないラオス戦を前に3名が陽性反応

クランタン・ユナイテッドも4名の外国籍枠が埋まる

Mリーグ2部プレミアリーグのクランタン・ユナイテッドFC(以下クランタン・ユナイテッド)はあらたな外国籍選手として、ナイジェリア出身のFWジェイコブ・ウンジョクとガーナ出身のMFアミドゥ・サリフの加入をクラブ公式Facebookで発表しています。

24歳のウンジョク選手はバーレーン2部リーグのアル・シャハブFCから加入し、1年契約ということですが、シャムスル・サアド監督はウイングやセカンドストライカーとして起用する可能性について言及しています。一方の29歳のサリフ選手は2010/2011シーズンにセリエBのヴィチェンツァでプロデビューを果たすと、その翌年にはセリエAのフィオレンティーナへ移籍、さらに期限付き移籍でペルージャ、ブレシアなどイタリア、セリエBの複数のクラブでプレーし、昨季はルーマニア1部のFCペトロルル・プロイェシュティでプレーしています。Mリーグ2部プレミアリーグは外国籍選手枠がAFC枠1を含めた4名の登録が可能ですが、クランタン・ユナイテッドは昨季のメンバーからMF本山雅志、DF深井脩平の両選手がが残留しており、ウンジョク選手とサリフ選手の加入で4名の枠が全て埋まりました。

今季の2部プレミアリーグは今季2部に降格するペラが給料未払いにより新規選手獲得の禁止処分を受けており、やはり今季2部に降格するUITM FCもクラブのオーナーシップ途上の問題で2月22日のトランスファーウィンドウ期間最終日までに新戦力獲得が完了しない可能性があります。そうなると昨季5位のクチンシティ、6位のクランタン、そして7位のクランタン・ユナイテッドの3チームが1部昇格を目指して三つ巴の戦いになる可能性があります。イルファン・バクティ監督が今季終了後の退任を表明しているクチンシティはイルファン監督の花道を飾ろうとリーグ戦に臨むでしょうし、クランタンはビジネスマンのノリザム・トゥキマンオーナーが来季の昇格をかけて外国籍選手4名全員をFWの選手で揃えるなど、この3チームの争いは熾烈なものになりそうです。

アセアンU23選手権-負けられないラオス戦を前に3名が陽性反応

2月18日にラオスU23代表に2-1で敗れ、準決勝進出には2月21日の試合で勝利が必要なマレーシアU23代表がピンチに見舞われています。マレーシアサッカー協会FAMは公式Facebook上で、昨日2月19日に行われた検査の結果、3名の選手が新型コロナ陽性反応を示し、隔離されることを発表しています。陽性反応を示したのはアブドル・ハナフィ・トウキョウ(サバ)、ザイナル・アビディン・ジャミル(PJシティ)、そしてT・サラヴァナン(ペナン)の3名です。またカン・ハンメン コーチも陽性反応を示した問いことです。この4名は直ちに隔離され、本日、再検査のためにPCR検査を受けることになっているということです。

その一方で入国時の検査で陽性反応を示して隔離されていたファーミ・ダニエル・ザアアイム(スランゴール2)とシャフィ・アズスワド・サパリ(JDT II)は隔離が終了し、PCR検査結果が陰性ならば、今日中にチームに合流することも発表されています。


2022年シーズン開幕直前!
Mリーグ1部スーパーリーグクラブ紹介第3回
スランゴールFC & KLシティFC

Mリーグ2022年シーズンは3月5日ピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介します。第3回は昨季Mリーグ5位のスランゴールFCと同6位のKLシティFCです。

スランゴールFC(2021年シーズンスーパーリーグ5位)

本拠地:MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
2021年シーズン成績:5位(10勝6分6敗)得点45(リーグ2位)失点30(同6位)
過去5シーズンの成績:2017年6位-2018年8位-2019年3位-2020年5位-2021年5位
監督:ミヒャエル・ファイヒテンバイナー(ドイツ)
外国籍選手(*は新加入選手):
 *FWユーリ・エンリケ・ジ・オリヴェイラ・コスタ(ブラジル)
 *FWカイオン(ブラジル)
 FWハインテットアウン(ミャンマー-アセアン枠)
 *MFバハー・アブドッラフマーン(ヨルダン-AFC枠)
 MFアレックス・アグヤクワ(ガーナ)
 *DFヤザン・アル=アラブ(ヨルダン-AFC枠)
 DFサフアン・バハルディン(シンガポール-アセアン枠)
 DFジョーダン・アイムビラ(ガーナ)
 DFジョージ・アトラム(ガーナ)
 
主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 #GKカイルルアズハン・カリド
 *#GKサミュエル・サマーヴィル(ペナンFCより加入)
 *#DFクエンティン・チェン(ペナンFCへ期限付き移籍終了)
 DFシャルル・ナジーム
 DFハリス・ハイカル
 DFアシュマウイ・ヤキン
 DFR・ディネシュ
 *DFファズリ・マズラン
 #MFブレンダン・ガン
 #MFムカイリ・アジマル
 MFハキム・ハサン
 MFアリフ・ハイカル
 FWダニアル・アスリ
 #FWシャーレル・フィクリ

チーム紹介:
1982年のマレーシアリーグ(ただし当時は現在とは違いアマチュアリーグ)発足以来リーグ優勝6回、1921年創設のマレーシアカップでは優勝33回、準優勝16回、そして1990年創設のFAカップでは優勝5回、準優勝3回とマレーシアサッカー界では圧倒的な歴史を誇る「赤い巨人」も、最後のリーグ優勝は2010年と、近年はマレーシアサッカー盟主の座をMリーグ8連覇中のJDTに奪われて久しいスランゴールFC(以下スランゴール)。特にここ数年は、長期的視点に欠けるチーム補強で迷走していましたが、2019年末にミヒャエル・ファイヒテンバイナーをテクニカルディレクターに迎え入れ、さらにマレーシアサッカー協会FAMと青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会NSCが共同で運営する国家サッカー選手育成プログラムNFDPの中核をなすエリートアカデミーのモクタル・ダハリアカデミーAMDの第1期卒業生34名中、U19代表選手を中心に28名を獲得すると、過去2年はリーグ優勝よりもこの若い選手たちを育成しながら勝つ方針で2年連続5位となりました。

そんなチームからは。U23代表の主将でA代表にも招集されたムカイリ・アジマルや、リーグ戦とマレーシアカップを合わせてマレーシア人選手として昨季チーム最多の6ゴールを挙げたダニアル・アスリ、最終的にはケガで辞退したものの昨年はA代表に初めて招集されたシャルル・ナジーム、期限付き移籍したペナンFCでレギュラーポジションを掴むとU23代表、そしてスズキカップ2020に出場したA代表にも招集されたクエンティン・チャンら経験を積んだ選手たちが今季は主力となってリーグに臨みます。

若い選手たちに期待がかかる一方で、昨季のチーム総ゴール数43(チーム総得点45点中2点はオウンゴール)の内、26ゴールを挙げたイフェダヨ・オルセグンの退団による穴を埋めることができるかどうかが、今季のスランゴールの最大の問題となるでしょう。在籍した過去3シーズンで50ゴール(43試合)とチームの絶対的なエースの代わりをユーリ・エンリケ、カイオンのブラジルFWコンビに託すことになりますが、この2人が期待通りの働きができなければ。若いチームだけに一気にBクラス転落の可能性もあります。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・ブレンダン・ガン
昨年6月のW杯予選後に精巣腫瘍があることが判明し、昨季後半は治療に専念したガン選手ですが、既に今季のプレシーズン練習にも参加しています。また先日はガンの早期検診キャンペーンのイベントにもパネリストとして参加するなど、サッカー選手だけでなくガンを克服した模範として啓発活動を行うことも表明しています。そのガン選手不在が昨年後半のA代表の不振の原因の一つ、そしてスランゴールがスーパーリーグでトップ3に絡むことができなかった原因とも言えるでしょう。いわゆる「ボックストゥボックス」タイプのMFとして攻守に貢献するだけでなく、A代表、スランゴールいずれでも精神的支柱としてチームを鼓舞し続けるリーダーの復帰はクラブ、代表の両方で楽しみです。

・シャーレル・フィクリ、ダニアル・アスリ
新加入のブラジルFWコンビへの期待が高まる一方で、A代表のストライカー不足解消のためにも期待したいのが。昨季は2人合わせてわずか4ゴールに終わった2020年スーパーリーグのマレーシア人得点王シャーレル・フィクリと、同年プレミアリーグのマレーシア人得点王ダニアル・アスリの両選手です。新型コロナにより短縮された2020年シーズンでは、シャーレル選手は11試合で10ゴール、ダニアル選手は11試合で7ゴールを挙げており、実績は十分な2人が今季は合わせて10ゴール以上を挙げることができれば、スランゴールの上位進出の可能性は高まります。

・シャルル・ナジーム
リーグ優勝のJDTは完封勝ちが11試合、2位のペナンFCも無失点勝利が6試合ある一方で、スランゴールのクリーンシートはわずか3試合しかなく、昨季リーグ6位の30失点のDF陣をどう立て直すのかもスランゴールの今季の課題です。シャーミ・サファリ(JDTに移籍)、A・ナマテヴァン(ヌグリスンビランFCに移籍)と経験のあるDF2名がチームを去った中で、シンガポール代表のサフアン・バハルディンとともに今季のDF陣の中心となるのが独特の髪型から「アフロ」の愛称で呼ばれるシャルル・ナジームです。豊富な運動量を誇るものの、張り切りすぎた結果のミスも多い印象だった昨季を経て、チームのセンターバックとして活躍できれば、本人が憧れていると話すアイディル・ザフアン(JDT)に代わって代表のセンターバックとしてプレーする機会もありそうです。

KLシティFC(2021年シーズンスーパーリーグ6位)

本拠地:KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
2021年シーズン成績:6位(8勝9分5敗)得点27(リーグ6位)失点20(同2位)
過去5シーズンの成績:2017年2部1位-2018年10位-2019年12位-2020年2部3位-2021年5位
監督:ボヤン・ホダック(クロアチア)
外国籍選手(*は新加入選手):
 *FWケヴィン・クベンバ(コンゴ/フランス)
 FWロメル・モラレス(コロンビア)
 MFパウロ・ジョズエ(ブラジル)
 DFジャンカルロ・ガリフロッコ
 GKケヴィン・メンドーザ(フィリピン-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 *GKアズリ・アブドル・ガニ(ペラFCより加入)
 #DFイルファン・ザカリア
 DFニック・シャールル
 DFカマル・アジジ
 DFライアン・ランバート
 *DFデクラン・ランバート(オランダ2部FCデン・ボスより加入)
 *DFムハマド・ファウジ(トレンガヌFCより加入)
 *DFナビル・ハキム(PJシティFCより加入)
 #MFアクラム・マヒナン
 MFザフリ・ヤハヤ
 MFハディン・アズマン
 MFファクルル・アイマン
 FWサフィ・サリー(2/21追加)

チーム紹介:
2020年シーズンに2部プレミアリーグで3位となり、昨季は2季振りとなる1部昇格を果たしたKLシティはスーパーリーグを6位で終えると、その後のマレーシアカップでは決勝でJDTを破るなど、ペナンFCとともにスーパーリーグの台風の目となりました。プレミアリーグで監督を務めたニザム・アズハ氏がスーパーリーグで監督を務めるためのAFCプロライセンスを保持していなかったことから、クランタンFA(現クランタンFC)ではリーグ、マレーシアカップ、FAカップの国内三冠を達成した他、現在リーグ8連覇中のJDTの初優勝時の監督だったボヤン・ホダック監督を招聘するとこれがピタリとはまり、今季のAFCカップ出場権まで獲得しています。

5位のスランゴールとは逆に、少ない得点を守り切るスタイルでシーズンを乗り切ったKLシティですが、ホームでは今季のリーグ戦11試合、マレーシアカップ5試合の計16試合で負けなし、さらにリーグ戦7試合、マレーシアカップ5試合の合計12試合がクリーンシートを達成していますが、32年ぶりの優勝を飾ったマレーシアカップの決勝は、守護神GKケヴィン・メンドーサが好セーブを連発し、まさに今季を代表するような試合でした。

そもそも守って勝つ試合運びをせざるを得なくなったのは、エースとして期待されていたFWドミニク・ダ・シルヴァが開幕直後のケガで離脱、2度目のトランスファーウィンドウ期間に獲得したFWキリアン・ヌワブエズもチーム合流後の初戦でケガを負った結果、出場はわずか1試合と、シーズンを通して攻撃力不足に苦しんだことが原因でした。窮余の策としてミッドフィルダーだったロメル・モラレスをシーズン途中でフォワードにコンバートし、結果的にはこの起用が実を結んだものの、年間を通しての得点力不足に悩んだボヤン・ホダック監督にとって今季加入のケヴィン・クベンバがはたして救世主となるのかどうかに注目です。

他のクラブが多くの外国籍選手を入れ替えたのに対し、KLシティは上記のクベンバ選手以外の4名が残留、マレーシア人選手も大半が残るなど、今季も上位を脅かすチームとなっていますが、気になるのはDFダニエル・ティンの退団です。昨季のチームの全試合33試合に出場し、そのうち32試合は先発するなどKLシティ躍進の鍵となったDF陣の中心選手の退団による穴が埋まらなければ、一気に下位転落もあり得ます。

ボラセパマレーシアJP的注目選手:
・ロメル・モラレス
今季は開幕からFWとして起用されるロメル・モラレスは、Mリーグでプレーするのは今季が5シーズン目となり、FIFAが規定する帰化選手の条件を満たすことから、KLシティはモラレス選手の帰化を進めることを明言しています。今年8月に25歳となるモラレス選手は、代表に貢献できていないという批判を受けている帰化選手のギリェルメ・デ・パウラ(JDT、今年36歳)、リリドン・クラスニキ(JDTからインド1部オディサFCに期限付き移籍中、今年30歳)と比べてもその若さが魅力ですが、マレーシア選手を凌駕する圧倒的な実力が帰化選手には求められることから、昨季の5ゴールからどれだけ上積みできるかが、クラブにとっても自身の帰化にとっても重要になりそうです。

・ライアン・ランバート
昨季開幕時はベンチ入りもできなかったライアン・ランバートですが、シーズン終盤には出場幾何も増え、リーグ戦終了後のマレーシアカップでは先発9試合を含めて11試合すべてに出場し、32年ぶりの優勝に貢献するなど、完全にレギュラーポジションを掴んでいます。メルボルン・ヴィクトリーのユースチームやオランダ2部のFCデン・ボスなど経て昨季からKLシティでプレーする23歳のランバート選手は母親がマレーシア人のため、マレーシア人選手として登録されており、今季も主力として活躍できれば、将来の代表入りも見えてきます。今季は双子の兄弟でDFデクラン・ランバートがチームメートとなり、チーム内の競争も激しくなりますが、兄弟揃っての代表入りとなれば話題にもなりそうです。