東南アジアサッカー連盟AFF選手権は、今回から大会スポンサーがスズキ自動車から三菱電機に変わったことで、大会名称もスズキカップから三菱電機カップとなりました。その第1回(選手権通算では14回目)の優勝を飾ったのはタイでした。FIFA国際マッチデー期間外ということで、Jリーグでプレーするチャナティップ・ソングラシン(川崎)やスパチョーク・サラチャート(札幌)は参加しませんでしたが、それ以上に今回のタイが素晴らしかったのは、準決勝までで6ゴールとチーム最多ゴールを挙げていたティーラシン・デーンダーを決勝2試合とも欠きながら優勝したこと。今大会MVPに輝いたティーラトン・ブンマタンの強烈なキャプテンシーもさることながら、試合終了後のインタビューでも述べていたように今回の優勝はまさにチーム力の勝利でした。
一方のベトナムは、東南アジアNo. 1に育て上げたパク・ハンソ監督の最終戦でしたが、花道を飾れませんでしたが、タイとともに東南アジアでは図抜けた存在であることを示しました。今大会を最後にパク監督が去り、またインドネシア代表のソン・テヨン監督も去就に注目が集まっており、東南アジアを席巻した「韓流ブーム」も、マレーシア代表のキム・パンゴン監督1人となってしまう可能性もあります。
大山鳴動して…18チームで開幕予定だった今季のMリーグは結局14チームに
Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLのスチュアート・ラマリンガムCEOは、今季2023年シーズンのMリーグ1部スーパーリーグの参加チームは14となることを発表しています。
MFLは昨年、国内トップリーグの試合数が少ないというFIFAの指摘を受け、Mリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグを統合して「真」スーパーリーグとする大規模な改革案を発表しました。スーパーリーグ12チームにプレミアリーグの6チームを加えた18チーム編成とし、リーグ戦での各チームの試合数は現行の年間22試合から34試合へと増える予定でした。
しかし、昨季終了後に次々と問題が明らかになりました。まずは国内のクラブライセンス交付を担う第一審機関FIBが2つのクラブにクラブライセンス不交付を決定しました。昨季スーパーリーグ10位のマラッカ・ユナイテッドFCに対しては、給料未払い問題を抱えており、来季のクラブ運営資金調達に関する書類に不備があるとして不交付を決定、また同11位のサラワク・ユナイテッドFCに対しては、かつてが在籍した外国籍選手への給料未払いに関して、FIFAの紛争解決室の支払い処分に応じていないことを理由に不交付を決定し、両クラブには不服申し立ての期間が与えられましたが、結局、りょうくらぶともFIBの判断を受けいれた結果、今季のスーパーリーグ参加資格を失いました。(その後、両クラブはセミプロリーグのMリーグ3部、M3リーグからの出直しを発表しています。)
マラッカ・ユナイテッド、サラワク・ユナイテッドの両クラブが不参加となったことで今季の参加チームが16になったスーパーリーグですが、問題はこれで終わりませんでした。
昨季スーパーリーグ9位のPJシティFCは、今季の国内クラブライセンス交付を受けた後、リーグからの撤退を表明しました。2021年、2022年シーズンに渡り、外国籍選手抜きのマレーシア人選手のみでチームを編成してきたPJシティは、その方針が功を奏し、東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022に出場したマレーシア代表にGKカラムラー・アル=ハフィズ、MF V・ルヴェンティラン、FWダレン・ロックが選出されています。しかし「新」スーパーリーグ発足に伴い、各クラブの外国籍選手枠が9名(ただし試合に出場できるのはこれまで通り5名)となることから、外国籍選手0名という現在のクラブ方針では他のクラブと対等に戦うのは難しいとして、スーパーリーグからの撤退を表明しました。その後の一部報道では、新たなオーナー候補が見つかったといったものもありましたが、結局、徹底の方針は変わりませんでした。
また昨季プレミアリーグ7位のUITM FCも、PJシティ同様に、クラブライセンス交付を受けた後に撤退を決めています。大学が母体のクラブとして初のスーパーリーグクラブとなり、2020年シーズンにはリーグ6位となる躍進を遂げたUITM FCですが、2021年にプレミアリーグへ降格すると、母体となるマラ工科大学(UITM)がクラブ運営資金を削減し、選手の多くは大学生、外国籍選手もシーズン後半になって1名(スランゴールFCからジョージ・アトラム)が期限付き移籍するなど、苦しいメンバーでの戦いを迫られました。また「新」スーパーリーグでは参加クラブに対して、U23、U21、U19といった年代別チームを所有することを義務付けており、複数の年代別チームを持つことによる負担増がクラブ経営を圧迫するとして、リーグ参加表明を先延ばしにしてきましたが、MFLがこれ以上有用は与えないという形で、リーグ参加の道が断たれています。
これにより結局、今季のマレーシア1部スーパーリーグは、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)、トレンガヌ、サバ、ヌグリスンビラン、スランゴール、KLシティ、スリ・パハン、クダ・ダルル・アマン、ペナン、クランタン、クチンシティ、クランタン・ユナイテッド、PDRM、ペラの14チーム編成、試合数は各チーム年鑑26試合と試合数は4試合増えるだけとなっています。
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東南アジア諸国のトップリーグのチーム数は、人口2億7000万人越えのインドネシアが18チーム、人口9000万人越えのベトナムは14チーム、人口7000万人越えのタイは16チームといった数字を見ると、人口3500万人にも満たないマレーシアの市場規模から考えてもスーパーリーグの18チームというのはそもそも無理があるように感じ、むしろ14チームに落ち着いて良かったのでは、という印象すらあります。
さらに言えば、給料未払い問題を抱えるチームはトップリーグではプレーできないというメッセージも明確に伝わり、今後は身の丈にあった運営をするクラブも増えてきそうです。しかし、その反面、2部プレミアリーグが今季と来季は一時的に中止になったことにより、少なくとも2シーズンは下部リーグへの降格や入れ替え戦がありません。全チームが今季どんなに成績が悪くともスーパーリーグに残留が可能になったことで、シーズン終盤になったときに下位のチームがどこまで真剣なプレーを見せてファンを楽しませてくれるのかどうかについて疑問が残ります。
アセアンシールド2023-タイ王者ブリーラム・ユナイテッドがクランタンを一蹴、さらに新加入の代表DFコールズを初披露
昨季はMリーグ2部プレミアリーグ2位に終わったクランタンFCと2020/2021年シーズンのタイ1部リーグチャンピオンのブリーラム・ユナイテッドFCが対戦するアセアンチャリティーシールドがタイ南部のソンクラー県にあるティンスラーノンスタジアムで行われ、石井正忠監督率いるブリーラム・ユナイテッドがクランタンに7-0で圧勝、大会2連勝を果たしています。
マレーシアとも国境を接するソンクラー県で行われたこの試合は、昨年に続く2回目の開催でした。なお昨年は6月にブリーラム・ユナイテッドの本拠地、チャーン・アリーナで開催され、ブリーラム・ユナイテッドがMリーグ1部スーパーリーグのヌグリスンビランを2-1で破っています。この時はブリーラム・ユナイテッドにとってはプレシーズン、ヌグリスンビランにとってはシーズン真っ只中、という時期でしたが、今回はクランタンがプレーシーズン、ブリーラム・ユナイテッドにとっては東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022開催によるリーグ中断期間中に開催されています。
この試合はクランタンチェ・ムンシク新監督にとって初采配となっただけでなく、新外国籍選手のアンドレアス・エッスヴァイン(フィリピン)のデビュー戦となりました。一方のブリーラム・ユナイテッドは1月3日に加入したばかりのマレーシア代表DFディオン・コールズを披露しています。
試合はスパチャイ・ジャイディードとスファナット・ムエンタの両代表FWを擁し、実力で勝るブリーラム・ユナイテッドが、そのスファナット・ムエンタのゴールで8分に先制すると、13分にはジョナサン・ボリンギ、17分にはスパチャイ・ジャイディード、さらに41分にはスファナット・ムエンタがこの試合2点目となるゴールを決めて、前半はブリーラム・ユナイテッドが4-0とリードして終了します。
後半に入っても49分には元スロベニア代表のFWハリス・ヴチキッチ、54分にはMFゴラン・チャウシッチがそれぞれゴールを決めて6-0とすると、終了間際の90分にはディオン・コールズのコーナーキックからタイ代表DFのナルバディン・ウェーラワトノドムが頭で合わせて7点目を挙げたブリーラム・ユナイテッドがクランタンを一蹴しています。