MFL第18節の結果まとめ

マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグは6月25日(火)と26日(水)に開催された今節第18節を含め、残りは5節。2位のパハンFAに勝点差13をつけて首位を快走するジョホール・ダルル・タクジムJDTの優勝は時間の問題で、むしろ注目されるのは2部プレミアリーグへの降格をめぐる激しい争いです。
 また開幕当初の12チームからプルリスFAが出場停止になり、11チームとなった2部プレミアリーグの昇格争いは、1部スーパーリーグに所属するJDTとトレンガヌFCのフィーダークラブ(Bチーム)であるJDT IIとトレンガヌFC IIに昇格権がないため、この2チームの順位次第では、リーグ3位や4位のチームでも1部昇格のチャンスはあります。

MFL1部スーパーリーグ

フェルダ・ユナイテッド2-3ペラTBG
得点者:フェルダ・ユナイテッド-ハディン・アズマン(81分)、池田圭(83分)、ペラTBG-ロナウド(22分)、パルティバン・ジャネセカラン(34分)、カレッカ(53分)
 この試合の敗戦でフェルダ・ユナイテッドは最下位のままですが、試合数はともに勝点14の10位のKLFA、11位のPKNP FCより1試合少なく、またこの両チームとの直接対決も残しているだけに、MFL1部スーパーリーグ残留の可能性も残っています。
 一方のペラTBGはこの試合でリーグ戦3連勝。今週末のマレーシア FAカップ準決勝のパハンFA戦に向けて勢いがついたのではないでしょうか。
 今シーズン4つ目のゴールを決めた池田圭選手、渡邉将基選手はともにフェルダ・ユナイテッドのスタメンでフル出場しています。

PKNP FC2-2PKNS FC
得点者:PKNP FC-ハフィズ・ラマダン(49分)、ジャンカルロ(76分)、PKNS FC-スレンドラン・ラヴィンドラン(35分)、クパ・シャーマン(84pK)
 ともに州開発公社を母体とするクラブの対戦は、降格圏にいる11位のPKNP FCが貴重な勝ち点を積み上げています。
 一方のPKNP FCはこの試合を含めた5試合で1勝1分3敗と、スランゴールFAの二軍化案が出て以降は精彩がありません。

スランゴールFA5-2パハンFA
得点者:スランゴールFA-カイリル・ムヒミーン(31分)、イフェダヨ・オルセグン3(37分、44分、87分)、エンドリック(46分)、パハンFA-コギレスワン・ラジ(68分)、モハマドゥ・スマレ(77分)
 今週末のマレーシア FAカップ、ペラTBG戦に向けて主力を温存したメンバーで臨んだパハンFAでしたが、前半で0-3となるなど結果は惨敗。計算上は残っていたリーグ優勝の可能性が消滅しただけでなく、リーグ2位の座も危うくなってきました。

トレンガヌFC3-1クアラ・ルンプール(KL)FA
得点者:トレンガヌFC-リー・タック(37分PK)、ムハマド・ファウジ(76分)、マリク・マット・アリフ(83分)、KLFA-ダルコ・マルコヴィッチ(41分)

クダFA3-2プタリン・ジャヤ(PJ)シティ
得点者:クダFA-バドロル・バクティアル(15分)、ファルハン・ロスラン(49分)、フェルナンド・ロドリゲズ(76分)、PJシティFC-ワシントン・ブランダオ(60分)、ガニシュ・グナセガラン(66分)

マラッカ・ユナイテッド1-2ジョホール・ダルル・タクジムJDT
得点者:シュコール・アドナン(84分)、JDT-ナジム・ファイズ(7分)、ジオゴ(27分)
 この第18節でパハンFAが敗れ、JDTが勝利したことで、勝点46のJDTに追いつくことができるチームがなくなり、JDTの6シーズン連続優勝が決まっています。JDTの選手、スタッフの皆さんおめでとうございます。
 第5節でスーパーリーグ首位に立ったJDTは、第7節でパハンFAに首位の座を明け渡すも第8節からは一度も首位から陥落することなく優勝を決めています。また、JDTはこの優勝で、今シーズンに続き、2020年シーズンのアジアサッカー連盟AFCチャンピオンズリーグACL本戦への出場資格を獲得しています。

MFL2部プレミアリーグ

スタンゴール・ユナイテッド2-3PDRM FC
得点者:スランゴール・ユナイテッド-ファン・シンヨン2(8分、61分)、PDRM FC-ウチェ・アグバ2(2分、56分)、エズリ・シャフィジィ(24分)

JDT II2-0UITM FC
得点者:ラマダン・サイフラー(47分)、モハマド・ガダー(58分)

サバFA4-1サラワクFA
得点者:サバFA-ロドリュブ・パウノヴィッチ3(11分、63分、84分)、アギナルド・ポリカルポ(39分)、サラワクFA-ボビー・ゴンザレス(60分)

UKM FC2-4トレンガヌFC II
得点者:UKM FC-マテオ・ロスカム(44分)、ミカエル・イジェジ(84分)、トレンガヌFC II-鈴木ブルーノ3(11分、18分、23分)、タキュディン・ロスラム(58分)
 ハットトリックを決めたトレンガヌFC IIの鈴木ブルーノ選手は、スタメンでフル出場しています。

ペナンFA2-1ヌグリ・スンビランFA
得点者:ペナンFA-ジュリアン・ボッタロ(29分)、アル・ハフィズ・ハルン(37分)、ヌグリ・スンビランFA-アルミール(20分PK)
 ヌグリ・スンビランFAの中武駿介選手はスタメンでフル出場しています。

6月24日から30日のニュース:スランゴールFAの二軍化案にPKNS FCの監督や選手が反論、マレーシアサッカー界のレジェンドがMFLの外国人偏重に警鐘、クダFAは「第二のアキヤ」を出さないよう有望な若手に長期契約を提示

スランゴールFAの二軍化案にPKNS FCの監督や選手が反論
スランゴールサッカー協会のアミルディン・シャリ会長が、同じスランゴール州のシャー・アラムスタジアムをホームとし、州政府から運営資金援助受けているスランゴールFAチームとPKNS FCを統合し、PKNS FCをスランゴールFAの二軍(こちらではフィーダークラブ(feeder club)と呼んでいます)とする可能性があることを発言して以来、PKNS FC関係者からは多くの反論が出ていると当時のメディアが伝えています。
 マレー語紙ブリタ・ハリアンの電子版では、自身もPKNS FCの選手であったラヤゴパル・クリシュナサミPKNS FC監督は、PKNS FCは1967年発足の伝統のあるクラブであり、モクタル・ダハリ(マレーシアサッカー協会FAMのアカデミーが彼の名にちなんでモクタル・ダハリ・アカデミーとされるほどのマレーシアサッカー界のレジェンド)、サントク・シン、ソー・チンアン(いずれも、アジア予選を突破しながらソヴィエト連邦のアフガニスタン侵攻に抗議する形で辞退したモスクワオリンピックに出場する予定だったマレーシア代表のメンバー)など、1970年代から80年代にかけてのマレーシアサッカー黄金期の主力選手を輩出したクラブであり、現在もマレーシアフットボールリーグMFLでは成功しているクラブの一つであると述べ、それ以上は選手の気持ちを考えるとコメントできないとしています。
 また先日行われた国際サッカー連盟FIFAワールドカップアジア一次予選の代表メンバーでもあるDFアクラム・マイナンは、現在MFL1部スーパーリーグ9位のPKNS FCがスランゴールFAの二軍となれば、今シーズンの順位に関係なくMFL2部プレミアリーグ降格となることから、もしそうなれば自分自身の今後について移籍を含めた検討の必要があるとし、同じくDFシャローム・アブドル・カラムも2軍となればチームの輝かしい歴史も忘れられてしまうだけでなく、近い将来リーグのトップ3を狙える有望な若手を含む選手や整った練習環境などが失われてしまうのは残念だとしています。
 PKNS FCの二軍化はあくまでも選択肢の一つであるとアミルディン・シャリ会長は言っていますが、予断を許さない状況であることは間違いありません。

マレーシアサッカー界のレジェンドがMFLの外国人偏重に警鐘
上の記事でも取り上げたマレーシアサッカー界のレジェンドの一人であるサントク・シン氏が、現在のMFLは外国人選手を偏重しすぎで、マレーシア人選手の育成の妨げになっていると発言したと、当地の英字紙ニューストレイトタイムズの電子版が伝えています。
 各クラブが好成績を収めるために重要なポジションに外国人選手を採用し、コーチも彼らに依存することで、FW、MF、DFとどのポジションでもマレーシア人選手が育たず、ひいては「マレーシアサッカーの発展」と言うより大きな目標が達成できない原因となっていると述べています。
 前述したようにモスクワオリンピックの出場資格を獲得し、アジア競技大会でもメダルを獲得した当時のマレーシア代表を知るシン氏には、非常に歯がゆいマレーシアサッカーの現状でしょうが、しかしこの問題は、MFLはそもそも自国人選手育成の場なのか、それとも高いレベルのサッカーを提供する「娯楽」なのか、というどの国内リーグも抱える問題もあります。
 MFLの外国人枠はいわゆる3+1(国籍に関係なく外国人3名プラスアジアサッカー連盟AFC加盟国出身の外国人1名)にアセアンサッカー連盟AFF加盟国出身外国人1名の合計4名が試合に出場可能ですが、お隣タイは3+1にさらに3名のAFF枠を加えています。またJリーグは上記の3+1から、今年は外国人選手の登録選手数を無制限とする一方で、試合に出場できるのは5人まで、さらにJリーグと提携しているタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタールの国籍を有する選手に関しては、日本人選手と同様の扱いとしています。提携国出身の選手は外国人枠の対象から除外されるので、ルール上は日本人が一人も出場しない先発メンバーを組むことも可能です。
 外国人選手依存の問題自体はマレーシアのプロサッカーリーグでは新しいものではありません。過去10年ほどを振り返って見ると以下の通りです。また<>内にはその年の国際サッカー連盟FIFAランキングも合わせて載せてみますので、外国人選手枠数とランキングの相関関係をみていただければと思います。
2009年:外国人選手枠0名 <同160位>
2010年:外国人選手枠0名 <同144位>
2011年:外国人選手枠0名 <同148位>
2012年:外国人選手枠2名 <同158位>
2013年:外国人選手枠3名 <同154位>
2014年:外国人選手枠4名、ただしフィールド上は3名まで。 <同154位>
2015年:外国人選手枠4名(AFC枠1名を含む) <同170位>
2016年:外国人選手枠4名(AFC枠1名を含む) <同161位>
2017年:外国人選手枠4名(AFC枠1名を含む) <同174位>
2018年:外国人選手枠5名(AFC枠1名、AFF枠1名を含む) <同167位>
2019年:外国人選手枠5名(AFC枠1名、AFF枠1名を含む) <同159位*>
*2019年は6月時点でのランキング

クダFAは「第二のアキヤ」とならないよう有望な若手に長期契約を提示
クダFAはFWファヤッド・ズルキフリ・アミン(20)とMFファズルル・ダネル・ニザム(21)の2選手の契約期限をを現在の2021年までから2023年まで延長し、さらに契約解除違約金条項(バイアウト条項)をそれぞれの契約に加え、その金額を500万リンギ(約1億3000万円)としたと、英字紙スターの電子版が伝えています。
 ファズルル選手はクダFAのキャプテン、バドロル・バクティアルと組んで中盤のレギュラーとして活躍し、ファヤッド選手はスーパーサブとしてスーパーリーグの試合でもゴールを決めています。
 タイトルにも書いた「第二のアキヤ」とは、現在MFL1部スーパーリーグのジョホール・ダルル・タクジムJDTでもプレーするマレーシア 代表MFアキヤ・ラシド(20)が昨シーズン末に21万リンギ(約550万円)の契約解除違約金を払ってクダFAからJDTへ移籍した一件を指します。この移籍に不満を持ったクダFAはマレーシアサッカー協会FAMにその可否判断を委託しましたが、FAMはJDTがクダFAに育成費用7万5000リンギ(約200万円)を払うことを条件に、この移籍を認めました。そこで「第二のアキヤ」とならぬよう、有望な若手に対して今回のような長期契約を提示したのだろうと、スターの記事は結んでいます。