1月3日のニュース(2):スズキカップ2020-決勝第2戦のインドネシアの攻撃的布陣は苦肉の策だった?、また代表選手がサバ加入-今度は代表GKがマラッカUから移籍、2部降格のUITM FCは今季出場辞退の可能性も

スズキカップ2020-決勝第2戦のインドネシアの攻撃的布陣は苦肉の策だった?

タイの優勝で幕を閉じた東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020ですが、決勝第2戦では逆転勝利を目指して攻撃的な布陣を採用したと見られていたインドネシア代表ですが、どうもうそういうことではなかったというチームの実情をAFPが報じています。

この記事によると、インドネシア代表でいずれもDFのリズキー・リド、エルカン・バゴット、ヴィクター・イグボネフォ、リズキー・ドウィ・フェブリアントの4選手がおよそ2時間の間、宿泊先のホテルを抜け出して「シャンプーと石鹸を買いに出た」ことが判明し、東南アジアサッカー連盟AFFの懲罰委員会による調査の結果、この4選手は新型コロナ感染対策予防手順に違反したとして、大会運営本部からタイ代表との決勝第2戦の出場を禁止されていたということです。

この4選手の内、リズキー・リド選手はタイ代表との決勝第1戦に先発し、バゴット選手も後半開始から途中出場しています。またヴィクター選手とリズキー・ドウィ・フェブリアント選手もベンチ入りしていました。

インドネシア代表のシン・テヨン監督は、決勝第2戦後の記者会見でディフェンダーの4選手が出場禁止となった理由は了承できると話す一方で、この4選手の欠場が決勝第2戦に影響を与えたことを認めて失望していると話しています。

また代表選手がサバ加入-今度は代表GKがマラッカUから移籍

昨季2021年シーズンは降格権から勝点3で1部スーパーリーグ残留を決めたサバFCは、シーズン終了後から大型補強を続けていますが、そこにまた大物が移籍です。

サバFCのクラブ公式Facebookでは、先日終了したスズキカップ2020でもマレーシア代表のゴールキーパーとしてグループステージ4試合全てに先発しフル出場したカイルル・ファーミ・チェ・マットがサバFCへの移籍を告知しています。

32歳のカイルル・ファーミ選手は、昨季途中からサバFCの指揮を取るオン・キムスイ監督のもとでプレー経験があり、2011年に東南アジア競技大会通称シーゲームズでオン監督率いるU23代表が優勝した際の正ゴールキーパーでした。

オン監督就任以来、このオフシーズンは同じスーパーリーグのクダ・ダルル・アマンFCからMFバドロル・バクティアルとDFリザル・ガザリ、またタイ1部のポリス・テロFCからはDFドミニク・タンといずれもスズキカップ2020に出場した代表選手を獲得しています。

2部降格のUITM FCは今季出場辞退の可能性も

昨季2021年シーズンにMリーグ1部スーパーリーグで最下位となり、今季2022年シーズンは2部プレミアリーグ降格が決まっているUITM FCが経営上の問題から今季のリーグ出場を辞退する可能性があると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

昨季のスーパーリーグで3勝4分15敗で最下位となったUITM FCは、国立大学のマラ工科大学UITMを母体とするクラブで、2020年はに大学のクラブとして初めてスーパーリーグでプレーしています。しかもこのシーズンは新型コロナの影響で試合数が半減したとは言え昇格初年度で6位となるなど大きな話題となりました。しかし2020年シーズン終了後にこの大躍進に貢献した外国籍選手5名の内、4名が退団するなど、この時点で運営資金が潤沢ではないことは明らかでした。

2021年シーズンは開幕から連敗が続き、前年から指揮を取るフランク・ベルンハルト監督を交代、外国籍選手を入れ替えるなどしたものの、シーズン初勝利は開幕から17試合目(Mリーグの1シーズンは22試合)では、2部降格は避けられませんでした。

ニューストレイトタイムズの記事では、今季プレミアリーグ参戦のためのスポンサーの獲得に困難を極めているとされており、Mリーグを運営するMFLものスチュアート・ラマリンガムCEOもUITM FCからの状況説明を待っている状態であると話し、Mリーグも事態を憂慮しているとしています。


1月3日のニュース(1):スズキカップ2020-決勝第2戦は引き分けもタイが2大会ぶりの優勝

スズキカップ2020決勝第2戦

2022年1月3日@シンガポール国立競技場(シンガポール)
タイ 2-2 インドネシア
得点者:タイ-アディサク・クライソーン(54分)、サーラット・ユーイェン (56分)、インドネシア-リッキー・カンブアヤ(7分)、エギィ・マウラナ(80分)

スズキカップ2020の決勝タイ対インドネシアの第2戦が行われ、インドネシアはタイと引き分けましたが、第1戦に4−0と勝利していたタイが通算スコアを6-2として、2016年大会以来2大会ぶりとなる通算第6回目の優勝を飾っています。

4点取らなければ優勝がないインドネシアはこの試合に攻撃的な布陣で臨みましたが、試合開始早々はタイに攻め込まれたものの、リッキー・カンブアヤが7分にゴールを決めて、通算スコアを1-4としました。次の1点がインドネシアに入れば2点差となり、勝負の行方がわからなくなりそうなところでしたが、後半に入るとタイがアディサク・クライソーン、サーラット・ユーイェンが立て続けにゴールを決めて逆に5点差に開きました。それでもインドネシアは80分にエディ・マウラナのゴールで1点を返しますが、第1戦のリードを生かして逃げ切ったタイが2大会ぶり6度目の優勝を決めています。

タイの強さはここまでの試合で分かっていたものの、この試合ではインドネシアが決勝まで進出してきた理由が分かったような気がします。新型コロナ前は競った試合になることはあっても、マレーシアが負けることはなかったインドネシアはシン・テヨン監督就任ととものメンバーも変わり、この試合で先制点を決め、MOMにも選ばれたリッキー・カンブアヤはシン監督が初めて代表に選出した選手で、2点目を決めたエディ・マウラナも代表初ゴールはシン監督のもとでプレーした今年になって初めて代表初ゴールを決めるなど、全く別のチームになっていました。6度目の決勝進出となったもの今回も悲願の初優勝には手が届きませんでしたが、インドネシアはシン監督のもとで着実に力をつけているのがわかるプレーぶりでした。

マレーシアのグループステージ敗退後には、チャナティップ選手のようにマレーシア代表の選手も国外のよりタフな環境でプレーして強さを身につけるべき、といった意見もソーシャルメディアだけでなく、現地紙など印刷メディアでも見かけましたが、そもそも海外のクラブがマレーシア人選手を求めるのか、また求められたとしておそらく今よりも低くなる給料を受け入れられるか、またでそういった挑戦をするモチベーションがそもそもあるのかどうかなどの議論が起こっていました。また、今回の結果で、これまではマレーシアでステップアップしてさらに他国のリーグを目指そうとしていた東南アジアの選手は、タイやシンガポール、さらにはインドネシアを飛び石にして、マレーシアには魅力を感じないのではないか、といった意見を掲載している現地紙もあり、いずれもマレーシアサッカーが東南アジアのトップから遅れをとっていることが明らかになった点を指摘しています。

マレーシアサッカーの2022年はタイやベトナム、さらにはインドネシアやシンガポールにどうやって追いつき、追い越すのかを模索する1年になりそうです。

(試合のハイライト映像はスズキカップ2020の公式YouTubeチャンネルより)

スズキカップ2020日程および結果

*既に終了している試合の詳細については、試合結果をクリックするとスズキカップ2020公式サイト(英語)へ飛ぶことができます。

<グループステージA組>

2021年12月5日(日)
東ティモール 2-0 タイ
シンガポール 3-0 ミャンマー

2021年12月8日(水)
ミャンマー 2-0 東ティモール
フィリピン 1-2 シンガポール

2021年12月11日(土)
東ティモール 0-7 フィリピン
タイ 4-0 ミャンマー

2021年12月14日(火)
フィリピン 1-2 タイ
シンガポール 2-0 東ティモール

2021年12月18日(土)
タイ 2-0 シンガポール
ミャンマー 2-3 フィリピン

<グループステージB組>

2021年12月6日(月)
カンボジア 1-3 マレーシア
ラオス 0-2 ベトナム

2021年12月8日(水)
マレーシア 4-0 ラオス
インドネシア 4-2 カンボジア

2021年12月12日(日)
ラオス 1-5 インドネシア
ベトナム 3-0- マレーシア

2021年12月15日(水)
カンボジア 3-0 ラオス
インドネシア 0-0 ベトナム

2021年12月19日(日)
ベトナム 4-0 カンボジア
マレーシア 1-4 インドネシア

グループステージA組順位

順位チーム得失差勝点
1タイ4400912
2シンガポール430149
3フィリピン420266
4ミャンマー4103-63
5東ティモール4004-130

グループステージB組最終順位
*インドネシアとベトナムは勝点と得失点差で並んだものの、インドネシアの総得点13に対してベトナムは9のため、インドネシアがB組の1位に決定

順位チーム得失差勝点
*1インドネシア4310910
2ベトナム4310910
3マレーシア420206
4カンボジア4103-53
5ラオス4004-130

<準決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
シンガポール 1-1 インドネシア

2021年12月23日(木)
タイ 2-0 ベトナム

<準決勝第2回戦>

2021年12月25日(土)
インドネシア4 2- シンガポール

2021年12月26日(日)
ベトナム 0-0 タイ

<決勝第1回戦>

2021年12月29日(木)
インドネシア – タイ

<決勝第2回戦>

2022年1月1日(土)
タイ2 -2 インドネシア

マレーシアサッカー2021年の10大ニュース

 今日は大晦日。ということで2021年のマレーシアサッカー界をボラセパマレーシアJP的視点で振り返ります。国内では、昨年同様、新型コロナに翻弄されたMリーグは日程が二転、三転しましたが、それでも2年ぶりに全試合が行われたシーズンになりましたが、その一方で複数のチームで給料未払い問題が明らかになりました。また国外ではU22代表がAFCU23アジアカップ本戦出場を決めた一方で、A代表はW杯予選、東南アジア選手権スズキカップといずれも思うような結果が残せなかった一年でした。

○KLシティFCが32年ぶりにマレーシアカップ制覇

 今季の国内カレンダー最後の大会となったマレーシアカップは今回が100周年記念大会でしたが、KLシティFCが戦前の下馬評を覆してJDTを2-0で破り、前身のクアラルンプールFA時代から数えると32年振りとなる優勝を飾りました。昨季はMリーグ2部プレミアリーグで2位となり、今季1部スーパーリーグに昇格したKLシティFCは、今季、リーグ戦、カップ戦ともホームのKLフットボールスタジアムでは無敗を誇り、来季は更なる活躍が期待されます。

○新型コロナの影響で3部リーグ以下やFAカップや各年代大会が中止

 Mリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグは全日程が開催されたものの、新型コロナの感染拡大を受け、日本の天皇杯にあたるFAカップが2年連続で中止となった他、Mリーグ3部に当たるセミプロリーグのM3リーグ以下の各リーグ戦、U21チームのリーグ戦であるプレジデントカップ、U19チームのリーグ戦ユースカップ、さらにはマレーシアプレミアフットサルリーグなどが中止となりました。

○複数のクラブで給料未払い問題発覚

 給料未払い問題はMリーグでは長年問題視されていましたが、新型コロナ禍ともあいまって各クラブとも経営が厳しくなった今季は、未払い給料を理由に開幕戦先発XIの内、最終的には何と9名が退団したペラFCの主力大量退団の他、クダ・ダルル・アマンFC、サバFC、サラワク・ユナイテッドFCなどでも同様の給料未払い問題が明らかになっています。これまではマレーシアの各州サッカー協会が運営していたMリーグクラブはAFCの指導により民営化が義務付けられましたが、州政府の予算を頼りに放漫経営されていたクラブは資金調達に失敗し、それによって選手や監督、コーチがとばっちりを受ける形になっています。

○JDTが前人未到のリーグ8連覇

 Mリーグ1部スーパーリーグではジョホール州皇太子がオーナーのJDT(ジョホール・ダルル・タジム)がリーグ8連覇を達成しています。22試合で16勝3分1敗、得点50失点9はいずれもリーグ1位で、2位のクダ・ダルル・アマンFCに勝点差14をつける圧勝でした。帰化選手を集め、他のクラブからも有力選手が集まる布陣はマレーシアA代表の選手でも控えに回ることがある選手層の厚さで国内では敵なしですが、アジアの壁は越えられず、AFCチャンピオンズリーグでは今季もグループステージ突破には至りませんでした。

○元日本代表本山雅志選手がMリーグでプレー

 隣国タイではかつては岩政大樹選手や茂庭照幸選手、ここ数年ではハーフナー・マイク選手や細貝萌選手など「元日本代表」の選手たちがプレーしていた時期がありましたが、ついにマレーシアにもその時が来ました。しかもこの国にやってきたのはあの本山雅志選手です。所属するケランタン・ユナイテッドFCはMリーグ2部プレミアリーグのチームですが、それでもその注目度は非常に高いものでした。
 ケランタン・ユナイテッドFCでは、深井脩平選手、Mリーグでは先輩に当たる谷川由来選手、さらに東山晃監督(現テクニカルディレクター)らとともに今季を戦った本山選手は、自身はケガなどもあり満足なシーズンとはならなかったかも知れませんが、それでもマレーシア人選手たちに対しては圧倒的な存在感は見せたMリーグ1年目でした。

○Mリーグのチケット販売が完全デジタル化

 無観客試合で開幕したMリーグがスタジアムでの観戦を許可したのは4月初旬でしたが、その翌月には再び無観客となり、それが10月下旬まで続きました。スタジアム観戦再開後は新型コロナ対策もありMリーグのチケットはスタジアムでの当日売りがなくなり、オンラインで購入し自身でプリントアウトする完全デジタル化に移行しました。チケット購入時には身分証明書番号、外国人であればパスポート番号の入力が必要になり、スタジアムでの入場の際もチケットとパスポートの提示を求められる徹底振りでした。まぁそこはマレーシアなんで、コロナが落ち着けば元に戻ってしまうかも知れません。

○外国籍選手ゼロのPJシティFCがスーパーリーグ7位

 今季のMリーグ1部スーパーリーグで唯一、登録選手全員がマレーシア人選手のみ、つまり外国籍選手ゼロだったPJシティFCは開幕前の大方の予想に反し、12チーム中7位と大健闘しました。チームからは10月の中東遠征でGKカラムラー・アル=ハフィズが初の代表招集となった他、スズキカップ2020に出場した代表にはこのカラムラー選手とMFコギレスワラン・ラジ、FWダレン・ロック(ただしケガで辞退)の3選手が招集されるなど、マレーシア人選手だけのクラブが外国籍選手を補強した他のMリーグクラブと対等に戦えることを証明しました。

○スーパーリーグ昇格初年度でペナンFCが3位に

昨季のMリーグ2部プレミアリーグで優勝し、KLシティFCとともに今季1部に昇格したペナンFC。昨季の優勝監督でもあるマンズール・アズウィラ監督が1部スーパーリーグで監督を務めるのに必要なAFCプロ指導者ライセンスを保持していなかったことから、マンズール関東はコーチとなり、チェコ出身のトマス・トゥルカ監督が監督に就任しました。するとチームはMリーグの台風の目となり、一時はAFCカップ出場権が与えられるリーグ2位も見えましたが、最後は力尽きて3位に終わりました。それでも昇格初年度の3位は立派ですが、リーグ戦後のマレーシアカップに入るとチームは勝ち星から見放され、グループステージで敗退するとトゥルカ監督退陣を求める一部サポーターも現れるなど、少なくともリーグ戦終了時は順風満帆に見えたペナンFCですが、来季に不安を残してシーズンを終えています。

○スズキカップ2020で代表はベスト4進出を逃す

 隔年で行われる東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップの2020年大会がシンガポールで集中開催され、マレーシア代表はグループステージで敗退しています。2020年に予定されていた大会が順延となったことからスズキカップ2020と銘打たれたこの大会に前回2018年大会の準優勝チームとして出場したマレーシア代表でしたが、ラオス、カンボジアに勝利したものの、前回大会の覇者ベトナム、そしてFIFAランキングではマレーシアより順位が低いインドネシアに完敗しています。
 本来は選手30名を登録できるところを24名しかしないなど不可解なことも多く、代表選手選考には「見えない手」の影響があったのではなどとも言われていますが、真相は藪の中です。いずれにしても準決勝に進んだタイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアには明らかに見劣りするプレーにタン・チェンホー監督更迭論なども出ましたが、マレーシアサッカー協会FAMはこれを否定しました。

U23代表はAFC U23アジアカップ予選を突破

 愚兄賢弟と言えば言い過ぎ。A代表が思うような結果を出せなかった2021年ですが、U23代表は10月にモンゴルで開催されたAFC U23アジアカップ予選を突破し、来年2022年6月にウズベキスタンで開催される本戦出場を決めています。前回2020年大会予選では中国と同組になるも勝点で並びながら得失差で涙を飲んだU22代表でしたが、今回はタイとの引き分けを含む3試合全てを完封して予選J組を首位で突破しています。このU22代表は2月には東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権、5月には東南アジア競技大会通称シーゲームズも控えており、サポーターの信頼を失い気味の兄の分まで頑張って欲しいです。

12月27日のニュース(2):スズキカップ2020-タイがベトナムを完封し2大会ぶりに決勝進出

スズキカップ2020準決勝第2戦

2021年12月26日@シンガポール国立競技場(シンガポール)
タイ 0-0 ベトナム(通算スコア 2-0)
得点者:なし

スズキカップ2020の準決勝タイ対ベトナムの第2戦が行われ、結果は0-0のスコアレスドローとなり、第1戦に2-0と勝利していたタイが通算スコアを2-0として2大会ぶりの決勝進出を決めています。昨日の準決勝でシンガポールを破り既に決勝進出を決めているインドネシアとタイの決勝戦は奇しくも2017年大会の決勝戦と同じカードとなりました。

第1戦で0-2と敗れているベトナムはゴールを決めない限り決勝進出の可能性がないことから、試合開始と同時に攻撃モードでタイゴールに迫りますが、タイもこのリードを守るための引き気味の布陣ではなく最終ラインを高く保ってベトナムに対抗します。

しかし33分にはこの最終ラインを抜けたベトナム選手と1対1となったタイGKチャッチャイ・ブドプロムがこの選手と交錯し負傷退場となるアクシデントが起こりますが、交代出場のシワラック・テースーンヌーンもベトナムの猛攻に対して危なげないプレーでゴールを死守、チームもベトナムを完封しました。

タイが安定した強さを見せて、ここ数年間東南アジアで1強だったベトナムを破り、盟主交代が見えた試合でした。しかし決勝の相手インドネシアはシンガポールと延長戦を戦った疲労も残っているとは言え、悲願のスズキカップ初優勝、そして2017年大会決勝で敗れた雪辱を果たすために全力で向かってくるでしょう。来年元旦の決勝第2戦までまだまだ熱い試合が続きそうです。

(映像はスズキカップ2020公式YouTubeチャンネルより)

スズキカップ2020日程および結果

*既に終了している試合の詳細については、試合結果をクリックするとスズキカップ2020公式サイト(英語)へ飛ぶことができます。

<グループステージA組>

2021年12月5日(日)
東ティモール 2-0 タイ
シンガポール 3-0 ミャンマー

2021年12月8日(水)
ミャンマー 2-0 東ティモール
フィリピン 1-2 シンガポール

2021年12月11日(土)
東ティモール 0-7 フィリピン
タイ 4-0 ミャンマー

2021年12月14日(火)
フィリピン 1-2 タイ
シンガポール 2-0 東ティモール

2021年12月18日(土)
タイ 2-0 シンガポール
ミャンマー 2-3 フィリピン

<グループステージB組>

2021年12月6日((月))
カンボジア 1-3 マレーシア
ラオス 0-2 ベトナム

2021年12月8日(水)
マレーシア 4-0 ラオス
インドネシア 4-2 カンボジア

2021年12月12日(日)
ラオス 1-5 インドネシア
ベトナム 3-0- マレーシア

2021年12月15日(水)
カンボジア 3-0 ラオス
インドネシア 0-0 ベトナム

2021年12月19日(日)
ベトナム 4-0 カンボジア
マレーシア 1-4 インドネシア

グループステージA組順位

順位チーム得失差勝点
1タイ4400912
2シンガポール430149
3フィリピン420266
4ミャンマー4103-63
5東ティモール4004-130

グループステージB組最終順位
*インドネシアとベトナムは勝点と得失点差で並んだものの、インドネシアの総得点13に対してベトナムは9のため、インドネシアがB組の1位に決定

順位チーム得失差勝点
*1インドネシア4310910
2ベトナム4310910
3マレーシア420206
4カンボジア4103-53
5ラオス4004-130

<準決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
シンガポール 1-1 インドネシア

2021年12月23日(木)
タイ 2-0 ベトナム

<準決勝第2回戦>

2021年12月25日(土)
インドネシア4 2- シンガポール

2021年12月26日(日)
ベトナム 0-0 タイ

<決勝第1回戦>

2021年12月29日(木)
インドネシア – タイ(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第2回戦>

2022年1月1日(土)
タイ – インドネシア(20時30分@シンガポール国立競技場)

12月27日のニュース:マレーシアの最新FIFAランキングは154位と変わらず、女子代表GKがインドのアマチュアリーグで「武者修行」、国外からの代表監督招聘に元代表監督がクギ、サラワク・ユナイテッドFCは未払い給料を完済

 スズキカップ2020はタイがベトナムを2試合連続完封して決勝進出を決め、12月29日と来年2022年元旦の決勝(2試合制)でインドネシアと対戦します。地力に勝るタイと勢いのインドネシアの対戦は今年の東南アジアサッカーのフィナレーとして面白い試合になりそうで今から楽しみです。

マレーシアの最新FIFAランキングは154位と変わらず

 最新のFIFAランキングが発表されマレーシア代表は男子が154位、女子が88位となっています。男子は前回発表となった11月から変わっていませんが、女子は前回8月の発表の92位から順位を4位上げています。
 昨年2020年最後のランキング発表では男子が153位、女子が83位だったことから、2021年通年では男子は1位、女子は5位とそれぞれランキングを下げたことになります。
 なお次回のFIFAランキングは来年2022年2月10日に発表される予定ですが、男子はグループステージで敗退したスズキカップ2020で166位のインドネシアに敗れており、次回発表ではランキングが下がる可能性があります。。

女子代表GKがインドのアマチュアリーグで「武者修行」

 今年9月にパレスチナで行われたAFC女子アジアカップにも出場したマレーシア女子代表のGKヌルル・アズリン・マズランがインドのアマチュアリーグに参戦するとマレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。
 21歳のヌルル・アズリン選手は12月22日にマレーシアを出発し、インド南部のバンガロールを拠点とするアマチュアクラブのミサカ・ユナイテッドFCに合流し、既に練習に参加しているということで、気温18度とマレーシアでは経験できないような寒さの中で練習をこなしているようです。
 ヌルル・アズリン選手が出場するアマチュアリーグのカルナタカ女子リーグは来年2月までおよそ2ヶ月間続くということですが、その際の宿泊費や食費さらには移動の費用もクラブが負担するということも報じられています。
 AFC女子アジアカップ予選ではパレスチナに2-0で勝利したマレーシアですが、同じH組のタイには0-4で敗れて来年2022年にインドで開催される本戦出場を逃しています。

国外からの代表監督招聘に元代表監督がクギ

 スズキカップ2020ではグループステージで敗退したマレーシア代表ですが、前回2018年大会準優勝からのグループステージ敗退となったことで2022年まで契約が残るタン・チェンホー監督の更迭論なども浮上し、さらにその後任候補としてマレーシアU16代表元監督で、今年のマレーシアカップでKLシティFCを32年ぶりに優勝させたボジャン・ホダック監督の名前も上がっています。また、ホダック監督自身も自身は十分、代表監督の候補になるうるとして、成績に話があれば検討すると発言するなど賑やかになっています。
 そんな中、2007年から2009年まで代表監督を務めたB・サティアナタン氏は、来年6月に予定されているAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選を控えた現時点の監督交代は大きな「賭け」であり、決定に際してマレーシアサッカー協会FAMは様々な角度から検討するべきであるとマレーシアの通信社ブルナマの取材に答えています。
 現在は今季Mリーグ2部で2位となり来季は1部に昇格するサラワク・ユナイテッドFCのテクニカルディレクターを務めるサティアナタン氏は、特に外国籍の監督を採用する場合の給与を例に挙げています。
 「ベトナム代表のパク・ハンソ監督は手取りで月給5万5000米ドル(およそ630万円)と聞いているが、それはパク監督の月給であり、他のコーチの月給はこれとは別である。もしFAMが同様に有能な外国籍の代表監督を採用するのであれば、FAMだけでこの給料を支払うことは容易ではなく、スポンサーを探す必要があるだろう。しかし果たしてそんなスポンサーは見つかるだろうか。」と述べたサティアナタン氏は、今回のスズキカップ2020の準決勝に進出した4チームの内、ベトナムはパク監督、インドネシアはシン・テヨン監督、そしてシンガポールは吉田達磨監督と韓国と日本から指導者を招いていることを指摘し、アジア出身の監督も含めて外国籍監督の招聘そのものには反対ではないとしながらも、ベトナムの躍進はパク監督が2017年から長期にわたって指導を続けた結果だとして、外国籍監督を採用する場合でもこのベトナム同様に長期的なプランを検討するべきであるとも述べています。
 「外国籍監督を採用する場合でも、FAMは短期の成功を期待するのではなく、選手やコーチの選択、さらにチームのプレースタイルなども全て監督に一任した上で、一定の期間は任せる覚悟が必要である。」とも述べて、そのためにもキュ葉面などを含めた条件を慎重に検討することが大事だとしています。

サラワク・ユナイテッドFCは未払い給料を完済

今季Mリーグ2部プレミアリーグで2位となり、来季は1部スーパーリーグへ昇格するサラワク・ユナイテッドFCはおよそ200万リンギ(およそ5450万円)に及ぶ未払い給料を完済したと、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。
 サラワク・ユナイテッドFCの共同オーナーでサラワク州サッカー協会のポサ・マジャイス会長は過去3ヶ月分の未払い給料は既に完済されたことを明らかにしています。
 未払い給料が完済されたことで、サラワク・ユナイテッドFCは1部昇格に備えてチーム編成に取り掛かりたいと話すポサ会長は、未払い給料は様々な要因による単なる遅配であり、支払うつもりがないということではなかったとこれまでの主張を繰り返し、さらには今回の未払い給料については、一部の選手が問題を大ごとにして、チームの評判を落とそうとしていたと責任転嫁とも言える発言もこれまで通り繰り返しています。
 また来季に向けては5名の主力選手との契約を解除し、このチームで来季もプレーしたいという選手だけが残ったと述べたポサ会長は、給料未払い問題が解決したことで、直ちに来期へ向けてのチーム編成に取り掛かりたいと話しています。
*****
 給料未払い問題が発覚したことで、来季2022年のクラブライセンスが条件付きで発給されていたサラワク・ユナイテッドFCは、この問題が長期化すれば、1部昇格取り消しの可能性も取り沙汰されていましたが、期限とされていた12月31日までに全ての選手への未払い給料支払いが終わったようです。ただし、Mリーグの選手とクラブの契約は11月末までが一般的とされており、契約期間を終えて未払い給料があった事態に対してFAMあるいはMリーグを運営するMFLが何の処分も科さないとすれば、未払い給料問題を容認したことにもなり、今後も結果的に払えば「未払い」ではなく「遅配」という説明がまかり通ることになりますが、毎度毎度の通り今回もマレーシア的決着で誰も処分されず、うやむやになるのだろうなぁ。



12月26日のニュース:スズキカップ2020-インドネシアがシンガポールとの死闘を制して2大会ぶりの決勝進出

 インドネシアとシンガポールの対戦は両チームのプライドが真正面からぶつかり合う「死闘」と表現したくなるほど白熱した試合は、微妙な判定は複数あったものの、個人的には今大会ここまでのベストマッチでした。両チームが見せた勝利への執念は、グループステージ敗退のマレーシアには見られなかったものでした。いずれもマレー系選手が代表チームの主力となっているインドネシア、シンガポール、マレーシアですが、なんでこんなに差がついちゃったんだろう。

スズキカップ2020準決勝第2戦
2021年12月25日@シンガポール国立競技場(シンガポール)
インドネシア 4-2 シンガポール(フルタイム2-2、2試合通算スコア 4-3)
得点者:インドネシア-エズラ・ワリアン(11分)、プラタマ・アルハン(87分)、シャワル・アヌワル(91分OG)、エギ・マウラナ(107分)、シンガポール-ソン・イニョン(49分)、シャーダン・スライマン(74分)

 スズキカップ2020の準決勝インドネシア対シンガポールの第2戦が行われ、インドネシアが延長の末4-2でシンガポールに勝利し、通算スコアを5-3としたインドネシアが2大会ぶりの決勝進出を決めています。
 12月22日の準決勝第1戦を1-1としていた両チームは、試合開始から果敢にゴールを狙い、11分にはインドネシアのウィタン・スラエマンがゴール前に持ち込み、シンガポールのGKハサン・サニをかわしてゴール前に出したクロスに合わせたエズラ・ワリアンがシュートを決めインドネシアが先制します。
 このままハーフタイムかと思われた前半終了直前、MリーグのスランゴールFCでプレーするサフアン・バハルディンがゴール前でインドネシア選手と小競り合いとなり、カシム・マタル・アル=ハトミ主審(オマーン)はサフアン選手にこの試合2枚のイエローカードを出し、サフアン選手は退場、シンガポールは10名となってしまいますが、残りわずかとなった前半のロスタイムには右サイドからのシャーダン・スライマンが蹴ったフリーキックのこぼれ球を今年8月にシンガポールに帰化した韓国出身のソン・イニョンが押し込んで1人少ないシンガポールが前半で同点追いつき、試合は1-1で後半に入ります。
 10名のシンガポールはスーパーセーブを連発するハサン・サニと最終ラインをコントロールする元JDTのハリス・ハルンを中心にインドネシアの攻撃を防ぐだけでなく、インドネシアゴールにも迫りますが、そんな中、67分にはペナルティエリアの外でインドネシアのイルファン・ジャヤを倒したイルファン・ファンディが痛恨の1発レッドで退場となり、シンガポールは9名となってしまいます。
 シンガポールの吉田達磨監督は同点ゴールを決めているソン・イニョンに代えてディフェンダーのアミルル・アイディルを投入するなど守備的な布陣を敷く中、インドネシアのペナルティエリアのすぐ外でファリス・ラムリが倒されて得たフリーキックをシャーダン・スライマンがゴールポスト隅に決めて9名のシンガポールが74分にリードを奪います。
 しかし87分にハサン・サニがウィタン・スラエマンのシュートを弾いたところにプラタマ・アルハンが詰めて2-2の同点に追いつきます。このまま延長かと思われた後半ロスタイムにインドネシアのペナルティエリア内でシャワル・アヌアルが倒されてシンガポールはPKを得ます。これを決めれば決勝進出となるところでしたがファリス・ラムリのPKをインドネシアGKナデオ・アルガウィナタが止めてインドネシアは九死に一生を得ます。そして2-2のまま試合は延長戦に入り、延長戦開始直後にはインドネシアのエギ・マウラナのシュートをシンガポールGKハサン・サニが弾いたものの、それをシャワル・アヌアルが自分の足に当ててオウンゴールとしてしまい、数的有利ながら苦しんでいたインドネシアがついに3-2とリードします。
 さらに延長前半の終了間際にもエギ・マウラナがコーナーキックからのこぼれ球を押し込んで4-2と点差を広げる中。延長後半119分にはペナルティエリアを飛び出したGKハサン・サニがイルファン・ジャヤに危険なタックルで1発レッドで最後は8名となったシンガポールはここで力尽き、インドネシアが準優勝に終わった2016年大会以来の決勝進出を決め、悲願のスズキカップ初優勝に一歩近づきました。

(映像はスズキカップ2020公式YouTubeチャンネルより)

スズキカップ2020日程および結果

*既に終了している試合の詳細については、試合結果をクリックするとスズキカップ2020公式サイト(英語)へ飛ぶことができます。

<グループステージA組>

2021年12月5日(日)
東ティモール 2-0 タイ
シンガポール 3-0 ミャンマー

2021年12月8日(水)
ミャンマー 2-0 東ティモール
フィリピン 1-2 シンガポール

2021年12月11日(土)
東ティモール 0-7 フィリピン
タイ 4-0 ミャンマー

2021年12月14日(火)
フィリピン 1-2 タイ
シンガポール 2-0 東ティモール

2021年12月18日(土)
タイ 2-0 シンガポール
ミャンマー 2-3 フィリピン

<グループステージB組>

2021年12月6日((月))
カンボジア 1-3 マレーシア
ラオス 0-2 ベトナム

2021年12月8日(水)
マレーシア 4-0 ラオス
インドネシア 4-2 カンボジア

2021年12月12日(日)
ラオス 1-5 インドネシア
ベトナム 3-0- マレーシア

2021年12月15日(水)
カンボジア 3-0 ラオス
インドネシア 0-0 ベトナム

2021年12月19日(日)
ベトナム 4-0 カンボジア
マレーシア 1-4 インドネシア

グループステージA組順位

順位チーム得失差勝点
1タイ4400912
2シンガポール430149
3フィリピン420266
4ミャンマー4103-63
5東ティモール4004-130

グループステージB組最終順位
*インドネシアとベトナムは勝点と得失点差で並んだものの、インドネシアの総得点13に対してベトナムは9のため、インドネシアがB組の1位に決定

順位チーム得失差勝点
*1インドネシア4310910
2ベトナム4310910
3マレーシア420206
4カンボジア4103-53
5ラオス4004-130

<準決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
シンガポール 1-1 インドネシア

2021年12月23日(木)
タイ 2-0 ベトナム

<準決勝第2回戦>

2021年12月25日(土)
インドネシア4 2- シンガポール

2021年12月26日(日)
ベトナム – タイ(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第1回戦>

2021年12月29日(木)
インドネシア – ベトナム/タイ(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第2回戦>

2022年1月1日(土)
ベトナム/タイ – インドネシア(20時30分@シンガポール国立競技場)

12月25日のニュース:スズキカップ早期敗退の原因と指摘された国内日程にMFLが反論、タン代表監督はアジアカップ予選に向けて十分な準備期間を求める、部外者は実情を何も知らない-ファイサル・ハリム、代表チームマネージャーが帰化プログラムの有効性を疑問視する発言

 スズキカップ2020はいよいよノックアウトステージとなり、12月22日と23日には準決勝第1戦が行われました。シンガポール対インドネシア、タイ対ベトナムのいずれの試合も好ゲームでした。ベトナムの対東南アジア代表チーム連勝記録をストップさせたタイは、W杯予選時とは全く別のチームになっていますし、悲願のスズキカップ初優勝を狙うインドネシア、さらには開催国の利点を生かしたシンガポールと、ベトナム1強かと思われた大会はまだまだ予断を許さない試合が続きそうです。

スズキカップ早期敗退の原因と指摘された国内日程にMFLが反論

 スズキカップ2020は準決勝が行われていますが、代表チームがグループステージで敗退したことから、マレーシア国内ではメディア報道も含めて大会そのものへの関心は低下しています。しかしその一方で今回の「戦犯探し」は続いており、その非難の矛先は国内リーグやカップ戦を主催するマレーシアンフットボールリーグMFLにも向けられています。
 国内カップ戦マレーシアカップの決勝が11月30日に開催され、スズキカップ2020に出場する代表メンバー(国内組のみ)の全員が顔を合わせたのがシンガポール出発前日の12月2日でした。そこから12月6日のスズキカップの初戦までの期間が短すぎて、代表チームには十分な準備期間がなかったのは日程を作成するMFLの責任だ、と言うのが非難の内容です。
 これに対してMFLのスチュアート・ラマリンガムCEOは、今季の日程は新型コロナの影響を受けた国内リーグ戦とカップ戦を無事終えるためであった一方で、代表の試合日程にも配慮して作成されたとして、グループステージ敗退の原因がMFLの日程によると言う主張を真っ向から否定していると、スポーツ専門サイトのスタジアムアストロが報じています。
 「スズキカップ前の準備期間が短くなってしまったのは、Mリーグやマレーシアカップの日程が原因ではなく6月のW杯予選と10月の中東遠征、そしていずれも帰国時に義務付けられていた検疫隔離期間が原因である。これによりMリーグとマレーシアカップは合わせて1ヶ月半以上の中断を強いられが、MFLはFAMと協調してこの中断を受け入れた。昨年から今年にかけては新型コロナの影響で国内リーグの日程にも大きな影響が出ていることも理解して欲しい。」と話したスチュアートCEOは、日程については議論の余地があることは理解しているが、マレーシアのサッカー界は現実を理解する必要があるとも述べています。
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 W杯予選は別として、10月の中東遠征に関しては後知恵ではありますが、その実施をもう少し慎重に考えても良かったのかもしれません。遠征と帰国後の検疫隔離期間によってマレーシアカップは1ヶ月ほど中断しましたが、もしこの遠征を行わず、マレーシアカップが1ヶ月早く終了していれば、その期間を代表合宿に活用できたはずですし、さらにミャンマーやインドネシア、シンガポールのように大会前に国外で代表合宿と練習試合を行い、そこから直接、シンガポール入りする方法もありました。
 一方で昨季はMリーグは試合数が半減し、マレーシアカップは途中で中止となったこともあり、入場料収入が貴重な財源となっている各クラブの収入は激減しており、MFLはプロリーグとしての存続をかけてリーグ戦とカップ戦開催に尽力したと思いまし、W杯予選に加え、中東遠征によるリーグ戦やカップ戦の中断を受け入れのはマレーシアサッカー協会FAMに対する最大の譲歩だったはず。まえーシア政府が今後も渡航者全員を対象とする検疫隔離を続けるのであれば、同様のことも起こりうるわけで、そのためにもFAMとMFLの間での日程調整作業が必要になります。

タン代表監督はアジアカップ予選に向けて十分な準備期間を求める

 スズキカップ2020ではグループステージ敗退に終わったマレーシア代表ですが、現場の声も少しずつですが報じられ始めています。そんな中、タン・チェンホー監督は、その原因を準備期間不足と分析しているとスタジアムアストロが報じています。
 今大会の総括としてタン代表監督からはマレーシアサッカー協会FAMに詳細な報告書が提出されることになっていますが、その中では来年6月に予定されているAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選に向けて選手を早めに招集し、練習試合の日程も速やかに確定させるべきだという提言が含まれるようです。
 「国際マッチデー期間には代表チームにの日程を優先させることはFAMとMリーグを運営するMFLとの間の同意事項であり、これに基づき、練習試合の日程作成と代表合宿の早めの開催が必要になる。(アジアカップ最終予選までの)6ヶ月はあっという間に過ぎてしまうので、最終予選突破のためのベストチームを直ちに編成する必要がある。」とタン代表監督は述べています。
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 上の記事でも書きましたが、FIFAマッチデー期間とは言えマレーシアカップを中断してまで代表チームが10月の中東遠征を行った理由の一つに、9月の国際マッチデー期間(8月30日から9月7日)に国内リーグの日程を優先してリーグ戦を開催し、代表合宿を行わなかったことがあります。しかも10月の中東遠征も「見えない手」の影響があったのかなかったかJDTの選手を中心にタン監督が臨んだ選手全員を招集できたわけではなく、結果として、この10月の中東合宿がスズキカップ2020の準備となったのかどうかを問われれば、その効果は限定的だったように思えます。

部外者は実情を何も知らない-ファイサル・ハリム

 タン代表監督に続いてスズキカップ2020に関して発言したのがFWファイサル・ハリム(トレンガヌFC)です。代表チームが12月3日に大会開催地のシンガポールへ入国した際に行われた新型コロナ検査でファイサル選手は陽性反応を示して10日間の隔離を義務付けられ、グループステージのラオス戦、カンボジア戦、ベトナム戦には出場できず、出場可能となったのはグループステージ最終戦インドネシア戦のみでした。
 スタジアムアストロの取材に対して失望感を隠さずに応じたファイサル選手は、大会前の準備の失敗が敗因だったと認めた一方で、代表チームに起こっていた状況を知らずに批判を受けるのは公平ではないと述べています。
 「初戦までの6日間しか準備期間がなかったチームが成功するはずはなく、我々選手は魔法使いでもない。マレーシアカップ敗退後の休暇を返上して代表のために全力を尽くすことを誓った自分としては、今回の敗戦は残念なだけでなく受け入れることが難しい。」とファイサル選手が述べるように、24名と発表されたスズキカップ2020出場の代表は国内組全員21名が揃ったのが12月1日、しかも海外組2名は12月3日に現地合流する中、初戦となった12月6日のラオス戦に臨みました。しかしもう1人の海外組でデンマーク1部FCミッティランでプレーするディオン・クールズに至ってはインドネシア戦直前の12月16日にシンガポール入りと、全24名が揃ったのがすでに3試合を終えた12月16日ではファイサル選手の指摘を受けるまでもなく準備不足は明らかでした。
 またわざわざデンマークから参戦し、インドネシア戦のみ出場となったクールズ選手は自身のインスタグラムに投稿し、今回の結果については早く忘れ、次の機会にはより強くなってチームで臨みたいと述べています。

代表チームマネージャーが帰化プログラムの有効性を疑問視する発言

 スズキカップ2020に出場したマレーシア代表のチームマネージャー(TM)が帰化選手プログラムの有効性を疑問視する発言をしたことをスタジアムアストロが報じています。
 Mリーグで5年以上プレーし、FIFAが規定する「同一国で5年以上継続して滞在していること」を条件とする帰化選手の資格を得たブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラとコソボ出身のリリドン・クラスニキの両選手に対し、マレーシアサッカー協会FAMは代表チーム強化を目的とする帰化選手プログラムの一環として両選手のマレーシア国籍取得を支援しました。
 その結果、デ・パウラ、クラスニキの両選手は今年6月に行われたFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選に出場しましたが、いずれも活躍というには程遠く、代表チームも2次予選で敗退しました。
 今回のスズキカップ2020には35歳のデ・パウラ選手だけが招集されましたが、グループステージ4試合中で先発したのは1試合だけと今大会でも絶対的な戦力とはならず、準決勝進出を目標としていた代表チームはまさかのグループステージ敗退となったことから、代表チームサポーターを中心に帰化選手不要論なども出ていました。
 スタジアムアストロの取材にたいしてユソフ・マハディ代表TMは、帰化選手が代表チームで効果的な役割を果たしていなかったとして、代表でプレーすることに誇りを持つマレーシア人選手を代わりに招集するべきという意見に同意しています。
 「(6月のW杯予選とは異なり)スズキカップは東南アジア内の大会であり、帰化選手のデ・パウラ選手は今度は活躍できるだろうと期待していたが、大会で見せた彼の能力には全く裏切られた。」と述べたユソフTMは、今大会を見ても帰化選手プログラムの有効性をこれ以上擁護するのは難しくなっているとも話す一方で、タン・チェンホー代表監督が今後も帰化選手を代表チームに招集する場合には、FAMの代表チーム運営委員会でその必要性を議論するとも話しています。

12月20日のニュース:スズキカップ2020-マレーシアはインドネシアに完敗でグループステージ敗退

2021年12月19日@シンガポール国立競技場(シンガポール)
マレーシア 1-4 インドネシア
得点者:マレーシア-コギレスラワン・ラジ(13分)、インドネシア-イルファン・ジャヤ2(36分、43分)、プラタマ・アルハン(50分)、エルカン・バゴット(82分)

スズキカップ2020のグループステージB組の最終節が行われ、インドネシアが先制点を許すものの4-1の逆転勝利でマレーシアを破り、準優勝した2016年大会以来の準決勝進出を決めています。最終節のもう1試合はベトナムがカンボジアを4-0で破っています。この結果、B組は1位インドネシア、2位ベトナムとなり、12月22日(水)から始まる準決勝はタイ対ベトナム、インドネシア対シンガポールのカードに決まりました。前回2018年大会準優勝のマレーシアは今大会はグループステージ敗退となりました。
 準決勝に進出するためにはこの試合での勝利が必要なマレーシア代表のタン・チェンホー監督は、フォワード5人、ミッドフィルダー1人(1-4-1-4)の布陣を選択。開始直後にはインドネシアに攻め込まれるも、13分にインドネシアDFのクリアミスを奪ったFWコギレスラワン・ラジがペナルティエリアの外からゴールを決め、マレーシアに欲しかった先制点が入ります。
 この試合は引き分けでも準決勝進出が決まるインドネシアは、先に失点したことで攻撃陣のギアが入り36分にはDFラインの裏に抜け出したウィタン・スライマンのマイナスのクロスをイルファン・ジャヤが蹴り込んで同点とし、さらに前半終了間際の43分にはプラタマ・アルハンがゴール前に持ち込んで放ったシュートのこぼれ球をイルファン・ジャヤが押し込んで逆転します。
 後半に入るとタン監督は負傷のFWサファウィ・ラシドに代えて、DFドミニク・タンを投入し、前半はセントラルディフェンダーとしてプレーしたディオン・クールズのポジションを上げて攻撃的ミッドフィールダーとして起用して攻撃を続けますが、逆に50分にはコーナーキックからのクリアを奪ったプラタマ・アルハンがペナルティエリアの外からシュートを決めて3点目、さらに82分にはコーナーキックからエルカン・バゴットがGKカイルル・ファミに競り勝つヘディングシュートを決めて駄目押しの4点目が入りました。
 先制点を奪ったところまではシナリオ通りだったマレーシアですが、ベトナム戦と同様にパスを出すタイミングがワンテンポ遅いところにインドネシア選手が詰め、そこでボールを奪われたり、苦し紛れのパスを出すしかなくなるなど、追加点を取るための中盤を組み立てることができませんでした。
 インドネシアの1点目、2点目はいずれも左SBに入ったシャーミ・サファリのマークが不十分でしたが、所属するスランゴールFCでは今季は右SBで出場しており本職ではありません。また3点目はプラタマ・アラハンの狙い澄ましたゴールも見事でしたが、GKカイルル・ファミのポジショニングが前すぎたようにも見えました。さらにCBが本職のドミニク・タンではなく所属クラブでは右SBでプレーするディオン・コールズをCBとして起用するなど、この試合だけでなく大会を通じてタン監督の選手起用法にも疑問が残りました。
 またこの試合ではケガで途中退場したドミニク・タン(サバFC)、第3節のベトナム戦でいずれもハムストリングを痛めたシャールル・サアド、アイディル・ザフアン(ともにJDT)のCB3選手は所属チームではいずれも出場試合が非常に少なく、もしそれが影響しているとすれば、開幕前に指摘されていた大会規定により30名登録可能にもかかわらず、24名しかシンガポールへ連れて行かなかった選択を含め、タン監督とマレーシアサッカー協会FAMの選手選考にも検証が必要でしょう。
 JDTの選手を中心にすぐに倒れてファールをもらおうとする国内リーグでの癖が抜けなかった選手たちに対して、マレーシアのテレビの解説者からは「気力が感じられない」と酷評されるなどいいところが何一つなかった敗戦ですが、来年6月に予定されているAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選に向けては、同じく予選に出場するインドネシアとも明らかに差が開いたことも明らかになった敗戦でもありました。また今大会参加国中、代表監督が外国籍ではなかった唯一の国がマレーシアでしたが、今回のグループステージ敗退によって今後は外国籍監督待望論が出てくる可能性もあります。

(試合のハイライト映像はスズキカップ2020nの公式YouTubeチャンネルより)

スズキカップ2020- ベトナムはカンボジアを完封も得失差でグループ2位で準決勝進出

2021年12月19日@ビシャンスタジアム(シンガポール)
ベトナム 4-0 カンボジア
得点者:グエン・ティエン・リン2(3分、27分)、ブイ・ティエン・ドゥン(55分)、グエン・クアン・ハイ(57分)

グループステージB組最終順位
*インドネシアとベトナムは勝点と得失点差で並んだものの、インドネシアの総得点13に対してベトナムは9のため、インドネシアがB組の1位に決定

順位チーム得失差勝点
*1インドネシア4310910
2ベトナム4310910
3マレーシア420206
4カンボジア4103-53
5ラオス4004-130

グループステージA組最終順位

順位チーム得失差勝点
1タイ4400912
2シンガポール430149
3フィリピン420266
4ミャンマー4103-63
5東ティモール4004-130

スズキカップ2020日程および結果

*既に終了している試合の詳細については、試合結果をクリックするとスズキカップ2020公式サイト(英語)へ飛ぶことができます。

<グループステージA組>

2021年12月5日(日)
東ティモール 2-0 タイ
シンガポール 3-0 ミャンマー

2021年12月8日(水)
ミャンマー 2-0 東ティモール
フィリピン 1-2 シンガポール

2021年12月11日(土)
東ティモール 0-7 フィリピン
タイ 4-0 ミャンマー

2021年12月14日(火)
フィリピン 1-2 タイ
シンガポール 2-0 東ティモール

2021年12月18日(土)
タイ 2-0 シンガポール
ミャンマー 2-3 フィリピン

<グループステージB組>

2021年12月6日(月
カンボジア 1-3 マレーシア
ラオス 0-2 ベトナム

2021年12月8日(水)
マレーシア 4-0 ラオス
インドネシア 4-2 カンボジア

2021年12月12日(日)
ラオス 1-5 インドネシア
ベトナム 3-0- マレーシア

2021年12月15日(水)
カンボジア 3-0 ラオス
インドネシア 0-0 ベトナム

2021年12月19日(日)
ベトナム 4-0 カンボジア
マレーシア 1-4 インドネシア

<準決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
A組2位 – B組1位(20時30分@シンガポール国立競技場)

2021年12月23日(木)
A組1位 – B組2位(20時30分@シンガポール国立競技場)

<準決勝第2回戦>

2021年12月25日(土)
B組1位 – A組2位(20時30分@シンガポール国立競技場)

2021年12月26日(日)
B組2位 – A組1位(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
A組2位 – B組1位(20時30分@シンガポール国立競技場)

2021年12月23日(木)
A組1位 – B組2位(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第2回戦>

2021年12月29日(木)
準決勝勝者1 – 準決勝勝者2(20時30分@シンガポール国立競技場)

2022年1月1日(土)
準決勝勝者2 – 準決勝勝者1(20時30分@シンガポール国立競技場)

12月19日のニュース:スズキカップ2020-今日のインドネシア戦を前に隔離終了のアキヤ・ラシドらが出場可能に、来季ペナンでプレーのエンドリックをJDTが23年シーズンに獲得表明

スズキカップ2020-今日のインドネシア戦を前に隔離終了のアキヤ・ラシドらが出場可能に

 昨日のグループステージA組最終節ではタイが追い縋るシンガポールを振り切って2-0で勝利し、1位タイ、2位シンガポールの両チームが準決勝進出を決めています。本日行われるB組の最終節では、現在、グループ3位のマレーシアは首位インドネシアと、2位のベトナムは4位のカンボジアと対戦します。ベトナムの勝利はほぼ確実なので、マレーシアが準決勝に出場するためにはインドネシア戦の勝利あるのみで、この試合に勝利することができればB組の2位として準決勝ではA組1位のタイと対戦します。
 そのマレーシア代表ですが、所属クラブの試合日程の都合から木曜日にシンガポール入りしチームに合流したディオン・クールず(デンマーク1部FCミッティラン)に加え、新型コロナ検査で陽性となっていたアキヤ・ラシド(JDT)が10日間の隔離を終えてチームに復帰した他、初戦のカンボジア戦で腹筋を痛めていたジュニオール・エルドストル(タイ1部チョンブリーFC)も練習に参加していると、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。
 とは言えアイディル・ザフアン、シャールル・サアド(いずれもJDT)の両センターバックはともにハムストリングを痛めてインドネシア戦は出場が絶望視されており、ディフェンダー陣にはやや不安があるマレーシアに対し、この試合は引き分けでも準決勝進出となるインドネシアは先日のベトナム戦と同様に全員が身体を張る守備的な布陣が予想されます。
 インドネシア戦に先立って行われたオンラインの記者会見では、その守備をこじ開けない限り勝利がないマレーシアのタン・チェンホー代表監督は初戦のラオス戦でMOMに選ばれたアキヤ・ラシドがチームに戻ってくることで、ベトナム戦無得点に終わったフォワード陣について、ベトナム戦でセンターフォワードとして起用されたルクマン・ハキム(ベルギー1部KVコルトレイク)に代わり、帰化選手のギリェルメ・デ・パウラ(JDT)がカンボジア戦以来の先発に復帰する可能性やここまでは先発出場のないシャーレル・フィクリ(スランゴールFC)の起用などもほのめかしていたということです。
 なおインドネシアとマレーシアの対戦成績は直近の8試合では4勝4敗ですが、同組となったFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選ではホームとアウェイで2連勝しています。

来季ペナンでプレーのエンドリックをJDTが23年シーズンに獲得表明

 今季のマレーシアカップでは大方の下馬評に反しKLシティFCに敗れて連覇を逃したJDTは、クラブ経営から引退をほのめかしていたオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が俄然、やる気を見せて来季に向けて選手の大幅な入れ替えを含めた積極的な補強を行うことを表明しています。トップチームではクラブ歴代最多ゴールを記録しているゴンザロ・カブレラが退団し、代表でもプレーするシャフィク・アフマドを期限付き移籍で放出、またMリーグ2部プレミアリーグでプレーするJDT IIでも外国籍選手との契約を更新せず、複数のマレーシア人選手を他のクラブへ期限付き移籍させるなど、新たな選手を受け入れる準備を着々と進めています。
 そんな中で、既に来季の契約をペナンFCと結んでいるエンドリックを2023年に帰化選手として獲得する予定であることがJDTのクラブ公式Facebookで発表され、ペナンFCのサポーターを中心に波紋を投げかけています。
 Mリーグ1部スーパーリーグで8連覇を果たしたJDTはオーナーが皇族ということもあり、ある意味、国内リーグではやり放題、もとい非常に影響力を持つチームですが、さすがにこの発表はエンドリック選手と契約しているペナンFCに対して敬意を欠くあるいは職業倫理に反するという声が上がっています。(それ以上に選手があるクラブと契約中に他のクラブが獲得に動けば間違いなくタンパリング(tampering、イギリス英語ではtapping up)ですが、マレーシアのメディアではこれについて言及しているものはありません。)、
 ソーシャルメディアではこのJDTの行為に対して、エンドリック選手はもともとJDTの選手であり、ペナンFCには期限付き移籍しているだけなので何の問題もない、といった投稿があると、サッカー専門サイトのラ・ボラが報じていますが、それが真実であれば隠す必要は全くなく、単に期限付き移籍の期間が延長されたとJDTあるいはペナンFCが発表するはずですので、これは事実ではなさそうです。
 現在26歳のエンドリック選手は、2018年にマレーシア政府系企業である連邦土地整理統合局(通称フェルクラ)が運営するMリーグ2部プレミアリーグのフェルクラFC(現在は既に解散)に加入し、翌2019年にはMリーグ1部スーパーリーグのスランゴールFA(当時、現スランゴールFC)へ移籍しています。そのスランゴールFAではケガでたびたび試合を欠場するもその原因は医療スタッフにも解明できずこのシーズン限りで退団し、2020年はプレミアリーグのペナンFCに移籍するとここでは新型コロナの影響で11試合に短縮されたリーグ戦では10試合に出場し8ゴールを挙げなど、クラブのプレミアリーグ優勝に貢献してチームを1部に昇格させる原動力となりました。今季もリーグ戦とカップ戦を合わせた出場試合数ではチーム最多タイの23試合に出場し、昇格初年度に3位となったクラブの躍進を支えました。

12月17日のニュース:スズキカップ2020-インドネシアサポーターが隔離措置をめぐって大会主催者とサファウィ・ラシドを非難

スズキカップ2020-インドネシアサポーターが隔離措置をめぐって大会主催者とサファウィ・ラシドを非難

スズキカップ2020はグループステージB組の第4節が行われ、第1試合はJ3の藤枝MYFCやマレーシアリーグのパハンFA(現スリ・パハンFC)でもプレー経験があるチャン・ワタナカの2ゴールなどでカンボジアがラオスを3-0で破り、今大会初勝利を挙げています。

第2試合のベトナム対インドネシア戦は、ベトナムが勝利すれば準決勝進出が決まりましたが、マレーシア戦に比べると動きも悪かったベトナムに対して、インドネシアが文字通り身体を張った守備でゴールを死守し、0-0のスコアレスドローで終わっています。

この試合のMOMがインドネシアDFのアルフェンドラ・デワンガであったことからもわかるようにインドネシアの守備が光った試合ですが、この大事な試合に出場できなかったのが英国2部イプスウィッチタウンでプレーするDFエルカン・バゴットでした。第3節のラオス戦には後半から出場していたエルカン選手ですが、この試合ではロンドンからシンガポールへ移動する際にエルカン選手が搭乗した便の乗客に新型コロナ陽性者が見つかったことから、シンガポール保健省の指示で5日間の隔離となったことが理由でした。

この措置に対し、東南アジアNo. 1の熱狂度を誇るインドネシアサポーターが噛みつきましたが、その理由はマレーシアのサファウィ・ラシドへの処分との格差からでした。12月9日のラオス戦前に行われた新型コロナの検査でマレーシアのクェンティン・チェンとアキヤ・ラシドが陽性反応を示し、両選手は隔離処分となりました。そしてこのアキヤ選手と同室だったのがラオス戦でハットトリックを決めたサファウィ選手でした。

陽性者と同じ便に登場していたエルカン選手が隔離措置となる一方で、陽性者とホテルで同室だったサファウィ選手が試合に出場し、しかもエルカン選手は既に3度行われたPCR検査でいずれも陰性だったにもかかわらず、インドネシアにとっては重要なベトナム戦への出場が認められなかったことから、東南アジアサッカー連盟AFFやスズキカップ2020の公式サイトに対し、インドネシアサポーターからこの不公平と思える扱いについて非難、中傷するコメントが殺到し、その数は報道によれば数万件に及ぶということです。(現在は投稿されたコメントが読めなくなっています。)

さらにこの影響はサファウィ選手にも及んでおり、サファウィ選手個人のインスタグラムにもインドネシアサポーターから非難や抽象のコメントが集まっていると、マレーシア語紙のハリアンメトロが報じています。

エルカン選手の隔離は5日間ということなので、12月19日のマレーシア戦には出場可能となり、そこでサファウィ選手との対戦も見られそうです。

2021年12月15日@ビシャンスタジアム(シンガポール)
カンボジア 3-0 ラオス
得点者:カンボジア-チャン・ワタナカ2(31分、41分)、SIENG CHANGTHEA(74分)

2021年12月15日@ビシャンスタジアム(シンガポール)
インドネシア 0-0 ベトナム
得点者:なし

グループステージB組順位

順位チーム得失差勝点
1インドネシア321067
2ベトナム321057
3マレーシア320136
4カンボジア3102-13
5ラオス4004-130

グループステージA組順位

順位チーム得失差勝点
1タイ230079
2シンガポール330069
3フィリピン310253
4ミャンマー3102-53
5東ティモール4004-130
スズキカップ2020日程および結果

*既に終了している試合の詳細については、試合結果をクリックするとスズキカップ2020公式サイト(英語)へ飛ぶことができます。

<グループステージA組>

2021年12月5日(日)
東ティモール 2-0 タイ
シンガポール 3-0 ミャンマー

2021年12月8日(水)
ミャンマー 2-0 東ティモール
フィリピン 1-2 シンガポール

2021年12月11日(土)
東ティモール 0-7 フィリピン
タイ 4-0 ミャンマー

2021年12月14日(火)
フィリピン 1-2 タイ
シンガポール2 – 0東ティモール

2021年12月18日(土)
タイ – シンガポール(20時30分@シンガポール国立競技場)
ミャンマー – フィリピン(20時30分@ビシャンスタジアム)

<グループステージB組>

2021年12月6日((月))
カンボジア 1-3 マレーシア
ラオス 0-2 ベトナム

2021年12月8日(水)
マレーシア 4-0 ラオス
インドネシア 4-2 カンボジア

2021年12月12日(日)
ラオス 1-5 インドネシア
ベトナム 3-0- マレーシア

2021年12月15日(水)
カンボジア 3-0 ラオス
インドネシア 0-0 ベトナム

2021年12月19日(日)
ベトナム – カンボジア(20時30分@ビシャンスタジアム)
マレーシア – インドネシア(20時30分@シンガポール国立競技場)

<準決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
A組2位 – B組1位(20時30分@シンガポール国立競技場)

2021年12月23日(木)
A組1位 – B組2位(20時30分@シンガポール国立競技場)

<準決勝第2回戦>

2021年12月25日(土)
B組1位 – A組2位(20時30分@シンガポール国立競技場)

2021年12月26日(日)
B組2位 – A組1位(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第1回戦>

2021年12月22日(水)
A組2位 – B組1位(20時30分@シンガポール国立競技場)

2021年12月23日(木)
A組1位 – B組2位(20時30分@シンガポール国立競技場)

<決勝第2回戦>

2021年12月29日(木)
準決勝勝者1 – 準決勝勝者2(20時30分@シンガポール国立競技場)

2022年1月1日(土)
準決勝勝者2 – 準決勝勝者1(20時30分@シンガポール国立競技場)