Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第12節結果とハイライト(2)

Mリーグ2部プレミアリーグは、延期されていた第12節の2試合が8月24日と25日に行われています。10チームが争うプレミアリーグは、既に16節まで終了しており、優勝争いはJDT II、クランタン、トレンガヌII、クチンシティの4チームに絞られています。
 Mリーグは来季は1部スーパーリーグと2部プレミアリーグを統合して1部18チームに再編されることが発表されており、今季プレミアリーグ所属のチームはその順位にかかわらず、来季はスーパーリーグでプレーすることが決まっています。このため残る2節はこの4チームがプレミアリーグ優勝というプライドをかけた戦いとなります

2022年8月24日(火)@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチンシティ 1-0 スランゴール2
⚽️クチンシティ:ラメシュ・ライ(25分)
🟨クチンシティ(2):ズルアズラン・イブラヒム、アダム・シリーン・テムビ、
🟨スランゴール(1):ザーリル・アズリ・ザブリ
MOM:シャイフル・ワジジ・モハマド(クチンシティ)
 クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

2022年8月25日(水)@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
FAM-MSNプロジェクト 0-2 JDT II
⚽️JDT II:レヴィ・マディンダ(4分)、ジュニオール・エルドストール(53分)
🟨FAM(0)
🟨JDT(3):アズリフ・ナスルルハク、ダニアル・ハキム、ナフィズディン・ファウジ
🟥JDT(1):ナフィズディン・ファウジ(🟨x2)
MOM:ジュニオール・エルドストール(JDT II)

2022年シーズン プレミアリーグ順位表(第16節終了時)

チーム得失差勝点
1JDT16113234132136
2KEL16113225111436
3TRE1593427151230
4KCH169342718930
5KLU166642116524
6PDRM166372026-621
7UITM1542101524-914
8SEL163491223-1113
9PRK1651101427-137
10FAM161213931-225
ペラ(PRK)は給料未払い問題の解決が遅れたことにより、勝点9の剥奪処分を受けています。
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

2022年シーズン プレミアリーグ 得点ランキング(第16節終了時)

ゴール数選手名所属
110アブ・カマラKCH
28フェルナンド・ロドリゲスJDT
8ンジョク・ジェイコブKLU
8マルティン・アダメックPDRM
57ジョーダン・ミンターTRE
7ダリル・シャムJDT
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

8月28日のニュース
汚職防止委員会がクアラルンプールFAを強制捜索
給料未払いとなっているサラワクの選手らにMFLが金銭的支援を表明
サラワクでベンチ外が続くボリス・コックがその理由をFBに投稿

汚職防止委員会がクアラルンプールFAを強制捜索

マレーシア語紙のブリタハリアンは、マレーシア政府機関の汚職防止委員会がクアラルンプールサッカー協会KLFAと、KLFAが運営するMリーグ1部スーパーリーグのKLシティの事務所に対して強制捜索を行ったと報じています。

この記事の中では、KLFAの理事らに対する職権濫用と背任の容疑による捜索だということで、KLFAの収支が合致しないことに加えて、アカデミーの建つ土地を企業に貸し出す際に正式な手続きを踏んでいないなど手続きに不透明な点があることを指摘されています。

さらに「今回の件には数百万リンギ(1リンギはおよそ30円)が関わっており、汚職防止委員会による強制捜索の結果、KLFAの不正行為が明らかになれば、マレーシアサッカー界における最大のスキャンダルとも言えるだろう。KLFAの一部理事がこの件について理事会での説明を求めたものの、理事会トップからは納得のいく説明が未だに得られていない。」と説明する関係者の話も紹介しています。

ことの発端はKLFAがスエード不動産社と所有するアカデミーの土地の貸与契約を結び、その見返りに数百万リンギがKLFAに支払われましたが、今季開幕前にKLシティで給料未払い問題が発覚すると、KLFAの理事会トップらが正式な手続きを踏まずにスエード不動産社との契約を破棄し、今度はシンマ不動産社と新たに貸与契約を結び、その見返りに300万リンギが支払われたというものです。

ブリタハリアンの取材に対して、KLFAのノクマン・ムスタファ事務局長は汚職防止委員会の捜索を受けたことを認め、捜索への全面協力を約束しています。また、KLFAのカリド・アブドル・サマド会長は、汚職防止委員会への告発は悪意を持って行われ、KLFAとKLシティの名を貶める意図を持った悪意のある告発だと述べています。

「KLFAと(KLFAが運営する)KLシティは、その予算が限られる中、昨季は32年ぶりにマレーシアカップに優勝し、今季はAFCカップの東南アジア地区予選を突破した。チームスポンサーのKL市役所からは250万リンギ、その他のスポンサーからの資金を合わせても500万リンギしか得られない中で、KLシティのチーム運営に必要な1200万リンギをどのように捻出したのかが問題にされるべきである。資金捻出に関わっていない人間がこの成功に腹を立て、嫉妬し、妬んだ結果が今回の悪意の告発につながっている。KLFAとKLシティの事務所を訪れた不正防止委員会の職員も、告発を受けたので捜索を行わねばならないこと、そして必要な書類を押収することを我々に説明するなど、メディアが報じているような「構成捜索」といった類のものではない。一部ではKLFAは4000万リンギを受け取りながら1200万リンギしか使っておらず、残りの2800万リンギの使途が不明という報道も出ているが、それ事実無根である。不正防止委員会への告発に関わった者、そしてそれに関する報道が出るように仕向けた者は、KLFAの潜在的なスポンサーを不安にさせて、資金繰りを苦しくさせようという、悪意のある行為である。」とカリド会長は説明しています。

*****

報道だけを見ると分かりにくいですが、実はサッカーと政治が密接に関係しているマレーシア特有の政治的な背景も絡んでいる問題です。KLFAのカリド会長は、前回の2018年の総選挙でマレーシア史上初となる政権交代が実現し、その際の与党連合を構成していた政党に所属している政治家でもあり、クアラルンプールを含めた連邦直轄地担当大臣を務めていました。慣例では連邦直轄地担当大臣がKLFA会長を兼任することから、カリド氏が会長に就任しました。
 しかし、2020年にはこの与党連合が下院議会で過半数以上の支持を得られらなくなったことで、選挙を経ずしての政権交代となり、野党議員となったカリド氏は連邦直轄地担当大臣を失職したものの、慣例に従わずにKLFAの会長には留まりました。そしてカリド会長在職中に、それまでは目立った成績を残していなかったKLシティが32年ぶりにマレーシアカップ優勝、そしてクラブ史上初となるAFCカップ東南アジア地区予選優勝と次々と成功を収めたことで、それを快く思わない政敵からの狙い撃ちをカリド氏が受けた可能性が大いにあります。

給料未払いとなっているサラワクの選手らにMFLが金銭的支援を表明

Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLは、公式サイト上でサラワク・ユナイテッド(以下サラワク)の選手や監督、コーチらに対して10万リンギ(およそ300万円)の一時金を支給することを発表しています。このブログでも既に取り上げていますが、サラワクでは4ヶ月に渡って、給料未払いが発生していることが明らかになっています。

MFLのアブドル・ガニ・ハサン会長は、マレーシアプロサッカー選手会PFAMによる報告に基づき、MFL理事会は直ちにMFLからサラワクへの放映権料分配金から10万リンギの支給削減と、この10万リンギをPFAMを通じて、サラワクの選手や監督、コーチらへ支給することを決定したと説明しています。またこの給料未払い問題を14日以内に解決することをサラワクに求め、これが実現されない場合には、今季のマレーシアカップへの出場権剥奪などの処分が課される可能性があるとも述べています。

サラワクでベンチ外が続くボリス・コックがその理由をFBに投稿

前述のようにサラワク・ユナイテッド(以下サラワク)では給料未払い問題が起こっていますが、サラワクに所属する外国籍選手ボリス・コックが自身のFacebookに窮状を吐露しています。コック選手は7月に入ってからベンチ入りがありませんでした。.

カンボジアリーグ1部のプノンペン・クラウンFCから期限付き移籍中のコック選手によると、チームは過去4ヶ月の間、未払い給料の支払いを選手や監督、コーチらに約束していたものの、その約束は既に何度も破られているものの、選手や監督、コーチらはプロとしてのプライドを持って、試合に全力で望んでいると説明しています。

「チーム全員にとって厳しい状況になっており、家賃や食費はおろか、家族を養うことも難しいが、我々はチームを愛し、サポーターを愛しているため、これまでメディアに窮状を明らかにすることはせず、MFLやPFAMに報告することもしてこなかった。しかし忍耐強く待ってきたにも関わらず、未払い給料を支払うと約束されたには何も起こらなかった。」

またベンチ外が続いている自身の状況については、「自分の場合は状況が少し違っていて、フランスで妻の出産に立ち会うためにクラブから7月に2週間の休暇をもらった。(ボリス・コックは両親がカンボジア出身で、フランス生まれのカンボジア人)フランス滞在中に、3ヶ月間の給料未払いを理由にFIFAの規定に則って、期限付き移籍の契約を解除してカンボジアに戻ることも考えた。しかし、チームからは残留を要請されたため、契約解除は見送った。さらにチームからは航空券を用意するので、直ちに戻ってチームに合流するようにも依頼されたが、結局は航空券は用意されず、チームの経済状況が改善するまで今後もフランスに残って良いと言われたのが真相である。」と、7月に入ってから6試合連続でベンチ外となっている理由を説明しています。

8月26日のニュース
地元紙が加賀山泰毅選手を特集
タン前代表監督が来季から現場復帰か
サラワクで4ヶ月の給料未払い問題が発覚も、チームマネージャーは即時支払いを約束

ACLでは浦和が全北現代との死闘を制して東地区の王者となりました。浦和に敗れたJDTにとっては、このまま浦和が今季のACL王者となってくれれば、負けた甲斐もあろうかというところでしょう。西地区王者との決勝は来年2月とまだ先の話で、その際に浦和がどのようなメンバーになっているかはわかりませんが、日本だけでなく東南アジアの希望も背負って決勝を闘ってもらいたいです。

地元紙が加賀山泰毅選手を特集

英字紙ではマレーシアで最大発行部数を誇るザ・スターが、今季からMリーグ1部スーパーリーグのサバでプレーしている加賀山泰毅選手を特集しています。

T・アヴィネシワラン記者の署名入り記事では、右、左のどちらでもウィングとしてプレーできるだけでなく、攻撃的MFやストライカーとしてもプレーする加賀山選手の「多才さ」が、今季ここまでリーグ2位のサバの好調さに大きな影響を及ぼしているとしています。

チームの勝利に貢献するのであれば、試合ごとに異なるポジションでプレーすることを厭わないと話す加賀山選手は、「アタッキングサードではどのような役割を任せられてもやる気でいるので、オン(・キムスイ)監督がどこで使ってくれても、何かしらの貢献はできると思っている。」と記事の中で答えている加賀山選手は、「様々なポジションでプレーすることによって、より完璧な選手となることに近づけていると思う。」とも話しています。

加賀山選手は、ここまでサバの全試合(16試合)に出場し、ゴール数は2と少ないものの、数多くのアシストでチームの勝利に貢献しています。流れるようなドリブルや正確なパスの供給、そして計算されたポジショニングなどにより、加賀山選手をサバにとって欠かすことができない選手にしています。

チームの好調を維持するためにも、さらにゴールを挙げ、アシスト数も増やしたいと話す加賀山選手は、「チームが現在2位ではあるものの、まだ今季は何も成し遂げていない。順位について考えるのはあくまでもリーグ戦終了後であり、今は目の前の試合に集中しなければならない。」とも述べています。

また、最後にサバの好調の原因を問われると、チームワークと規律が保たれていることを挙げ、「我々は選手全員がハードワークし、全員がチームのために一生懸命になっている。」と説明しています。

タン前代表監督が来季から現場復帰か

英字紙ニューストレイトタイムズは、昨年12月の東南アジアサッカー連盟選手権AFFスズキカップを最後に代表監督を辞任したタン・チェンホー氏が来季2023年シーズンにはMリーグクラブの監督に就任する可能性が高いと報じています。

今季低迷し、今月8月にはミヒャエル・ファイヒテンバイナー監督を更迭したものの、現在もリーグ戦4連敗中の1部スーパーリーグのスランゴールや、クラブ創設100周年という記念すべき年に2部プレミアリーグに降格し、その2部でも10チーム中9位と苦しむペラなどがその候補となるだろうと、この記事では紹介しています。

実際にソーシャルメディア上では、かつてはMリーグを席巻したスランゴールの復権をタン氏に期待する声がある他、タン氏がペラのボビー・ファリド・シャムスディンCEOと話し合いをしている場面を写した写真がSNSに上がるなど、実際に火のないところには煙は立たない、といった状況でもあります。

タン氏は「現場復帰について急ぐつもりはない」というコメントをこれまでも繰り返しており、ニューストレイトタイムズが最近、インタビューを行った際には、Mリーグでの監督復帰については「良い話があれば」と述べるに止まっています、その一方で、来季からスーパーリーグのチーム数が現行の12チームから18チームとなることにより、現場復帰の意欲をそそるような機会が得られる可能性にも言及しています。

「サッカーを愛する気持ちは変わっておらず、現場から長期間離れるつもりもない。来季(のリーグ再編)によりMリーグは面白くなると思うので、どのように面白くなるかに注目している。(今後、監督に就任する)クラブは未だ決めておらず、現在チームを指揮する監督にも配慮し、シーズン途中に監督に就任するつもりはない。複数のチームと接触していることは事実だが、何も決まっていることはない。」と述べたタン氏のMリーグは実績は錚々たるものです

2014年から2017年まで監督を務めたクダでは、2015年に2部から1部にチームを昇格させ、同じ年にはスランゴールに決勝で敗れたものの、マレーシアカップの決勝にチームを導いています。翌2016年にはマレーシアカップを優勝を果たすとともに、1部でもチームを3位に躍進させていますが、同時にイフワット・アクマル、アリフ・ファルハン、ファルハン・ロスラン(いずれもクダ)、シャフィク・アフマドやアキヤ・ラシド(いずれも現JDT)やハリム・サアリ(同スランゴール)ら現在もトップチームでプレする選手たちを育てた実績もあります。

「若い選手の育成、そして観客を楽しませるサッカーをするチームを築くことが現在の自分の希望なので、長期間にわたって関われるチームと仕事をすることを望んでいる。そのためには、健全に経営されていることがチームを選ぶ重要な要因になる。」とも話すタン氏の現場復帰はさほど遠い未来ではなさそうです。

サラワクで4ヶ月の給料未払い問題が発覚も、チームマネージャーは即時支払いを約束

新たな給料未払い問題が発覚しています。マレーシア語紙のブリタ・ハリアンは1部スーパーリーグのサラワク・ユナイテッド(以下サラワク)では、選手の給料が4ヶ月にわたって支払われていないと報じています。またマレーシアプロサッカー選手会PFAMも、サラワクの選手からも報告を受けていると、この事実を認めています。

PFAMは6月14日と7月8日の2度にわたってチームに対して、未払い給料問題の解決を求める書簡を送っているということですが、この記事が出た8月24日の時点では、未払い給料が完済されたという報告を選手からは受け取っていないという声明を出しています。さらにPFAMは6月にはチームの家賃滞納により、サラワクの選手たちが宿舎からの退去通知を受け取っていることも明らかにしています。

サラワクで給料未払い問題が明らかになったのは今回が初めてではなく、昨季も同様の問題が起こっています。その際にマレーシアサッカー協会FAMの役員であるポサ・マジャイス サラワク会長が「未払いではなく単なる遅配である」と嘯いた「前科」があるなど、そもそも運営に問題がある人材がトップを務めるチームです。

そして昨季同様、メディアで報道されると慌てて対応する状況も変わっておらず、この記事が出たその翌日には、ポサ会長は全ての未払い給料は来週中に完済される予定であるとメディアに話しています。

8月25日のニュース
AFCカップ東南アジア地区決勝-KLシティが南部健造選手所属のPSMマカッサルとの再戦を制す

昨日8月24日にAFCカップ東南アジア地区決勝が行われ、Mリーグ1部スーパーリーグのKLシティがインドネシアのPSMマカッサルを5-2で破り、地区間プレイオフ準決勝進出を決めています。

AFCカップ東南アジア地区グループステージでは同組となり、その際は双方とも様子を探りながらの対戦で0-0で終わっていた両チームですが、この試合で慎重な入りを見せます。それでも10分にはマカッサルがコーナーキックで久しぶりの実戦となるKLのGKアズリ・アブドル・ガニを試せば、KLもその数分後にはザフリ・ヤハヤが絶好の機会を作りシュートを放つなど、試合は徐々に熱を帯びてきます。

マカッサルは、先日のこのブログでも取り上げたヤコブ・サユリ、リズキ・エカ・プラタマの両ウィングが攻め上がる機会が何度かあったものの、フォワードのエヴェルトンにボールが渡らず、なかなかゴールには至りません。マカッサルが攻めあぐねている間に、KLはペースを上げ、20分にはライアン・ランバートからの縦パスを受け、右サイドをオーバーラップしたイルファン・ザカリアがゴール前のロメル・モラレスにクロス。モラレスはこれをノートラップでシュートするもマカッサルDFのダレン・ドウクがゴール前でブロックし得点には至りません。続くコーナーキックではパウロ・ジョズエがモラレスのキックに頭で合わせますが、ゴールポストのわずか上に外れてしまいます。

しかし32分にKLが先制します。ゴール前の混戦からジョズエのヘディングをザフリ・ヤハヤがやはり頭で折り返し、これをモラレスが今度はしっかりとゴールし、KLが1-0とリードします。

早く追いつきたいマカッサルは43分には、グループステージでは出場がなかった南部健造選手がペナルティエリアの外からシュートを放ちますが、枠を外れてしまいます。そしてその3分後の45+2分にはマカッサルゴール前からジョズエ、モラレスと繋ぐカウンターで、モラレスのパスをフリーのジョーダン・ミンターがシュート。これが決まって前半は2-0とKLがリードして終了します。

後半に入ると、50分にはザフリがマカッサルのペナルティエリア内でリズキ・プラタマに倒され、荒木友輔主審はKLにPKが与え、これをキャプテンのジョズエが決め、KLはリードを3点に広げてマカッサルを突き放します。リードが広がったことでスタンドのKLサポーターに楽観ムードが漂い始めますが、しかし、ここからマカッサルの怒涛の反撃が始まります。

58分にはこの試合で縦横無尽の運動量を見せたマカッサルのサユリが、KLディフェンダーをかわしてペナルティエリアの外から左足を一閃。KLのGKアズリが反応できなかったこのシュートが決まって、マカッサルは2点差とすると、その4分後にはラシド・バクリのコーナーキックに頭で合わせたDFのアクバル・タンジュンがゴールを決めて、マカッサルはKL に1点差まで迫ると共に、試合の流れもマカッサルに傾きかけたように見えました。

しかしその一気呵成となったマカッサルを止めたのがKLのキャプテンでした。84分にマカッサルDFのパスをカットしたミンターがゴール前に持ち込みシュートを放つも、マカッサルGKレザ・アルヤ・プラタマがパンチングで逃れますが、そこに詰めていたジョズエがそのこぼれ球を押し込み、この試合2点目となるゴールを決め、KLは再びリードを2点に広げます。90+2分にはジョズエからのパスに飛び出したミンターを止めようとしたGKレザ・プラタマがミンターを倒してしまいます。これで得たPKを途中出場のハディン・アズマンが決めたKLが、最後は5-2で勝利し、AFC東南アジア地区決勝を制するとともに、地区間プレイオフ準決勝進出を決めています。

2022年8月24日(水)@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
KLシティ(マレーシア)5-2 PSMマカッサル(インドネシア)
⚽️KLシティ:ロメル・モラレス(33分)、ジョーダン・ミンター(45+2分)、パウロ・ジョズエ2(52分PK、84分)、ハディン・アズマン(90+4分PK)
⚽️PSMマカッサル:ヤコブ・サユリ(58分)、アクバル・タンジュン(63分)
🟨KLシティ(1):イルファン・ザカリア
🟨PSMマカッサル(2):ヤコブ・サユリ、リズキ・エカ・プラタマ
 マカッサルの南部健造選手は先発し、80分に交代しています。

以下は両チームの先発XIと試合のハイライト映像。ハイライト映像はアストロアリーナのYouTubeチャンネルより)

地区間プレイオフでは・南アジア地区の勝者ATKモフン・バガンFC(インド)と9月7日に対戦予定ですが、国際サッカー連盟FIFAは8月16日、全インドサッカー連盟AIFFに即時の資格停止処分を科したことを発表しています。FIFAは、AIFFが第三者から不当な影響を受けており、FIFA規約の重大な違反にあたるとして、全会一致で即時の資格停止処分を科すことを決定したとしています。

インドの最高裁はAIFFに解散を命じ、インド国内サッカーは現在、最高裁が指名した3名の委員による管理者委員会が設置されていますが、この委員会によってに管理運営されてきたことが、FIFAのいう「第三者からの不当な影響」によると思われます。しかいFIFAの処分を受けて、インドの最高裁は国内サッカー管理運営権をAIFFに戻すことを8月22日に発表しており、FIFAによる停止処分解除は時間の問題と言えそうです。

Mリーグ1部スーパーリーグ
2022年シーズン第1節および第9節結果とハイライト(2)

8月21日(日)に、順延されていたスーパーリーグの2試合が行われました。当初の予定では3月5日に開催されるはずだった第1節スリ・パハン対トレンガヌは、開幕してすぐ新型コロナ感染者が出たことによって延期されていました。また、第6節のスランゴール対PJシティは、当初は5月18日に予定されていましたが、5月にベトナムで開催された東南アジア競技大会通称シーゲームズに出場するマレーシアU23代表にスランゴールから多くの選手が招集されたことから延期されていました。

2022年8月21日(日)@ダルル・マクモルスタジアム(パハン州クアンタン)
スリ・パハン 1-1 トレンガヌ
⚽️パハン:マヌエル・イダルゴ(47分)
⚽️トレンガヌ:ハビブ・ハルーン(73分)、ペトラス・シテムビ(87分)
🟨パハン(3):アシャル・アル=アフィズ、スティーヴン・ロドリゲス、アズワン・アリピン
🟨トレンガヌ(1):パペ・ディアキテ
MOM:ママドゥ・サマサ(スリ・パハン)
 マレー半島東海岸に面するパハン州とトレンガヌ州をそれぞれ本拠地とする両チームの対戦は「東海岸ダービー」と呼ばれ、この試合も1万を超える観衆を集めて行われました。
 試合開始から優勢に進めたトレンガヌは、9分にはチェチェ・キプレ、14分にはニック・シャリフがいずれも1対1になりながら、この試合のマンオブザマッチMOMにも選ばれたパハンGKママドゥ・サマサがいずれも好セーブで防ぎ、得点に至りませんでした。一方のパハンも18分にムスリム・アフマドが絶対的な好機にシュートを外すなど、両チームとも得点できないまま、前半は0-0で終了します。
 後半に入るとパハンが先制します。47分には左サイドを上がったアズワン・アリピンからのクロスをゴール前でスティーヴン・ロドリゲスがスルー、右サイドでフリーとなっていたマヌエル・イダルゴがこのボールを受け、落ち着いてゴールを決め、パハンが1-0とリードします。
 しかし73分にはパペ・ディアキテの右コーナーキックにハビブ・ハルーンが頭で合わせ、トレンガヌが同点に追いつきます。さらに87分にはアリフ・アンワルとのワンツーで抜け出したペトラス・シテムビが放ったシュートが、これをブロックしようとしたパハンDFショーン・ジャネッリに当たり、角度が変わりゴールインし、トレンガヌが逆転し、このまま逃げ切り3連勝を果たしています。
 一方、シンガポールのレジェンド、ファンディ・アフマッド氏がテクニカル・ディレクターに就任以来、無敗だったパハンですが、その無敗記録は5で止まっています。

2022年8月21日(日)@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
スランゴール 0-0 PJシティ
⚽️PJシティ:ダレン・ロック(59分)
🟨スランゴール(1):ムカイリ・アジマル
🟨PJシティ(2):ザイナル・アビディン・ジャミル、ダレン・ロック
MOM:ラフィ・ナゴールガニ(PJシティ)
 スランゴールが1994年以来使用してきたシャー・アラムスタジアム(スランゴール州シャー・アラム)は老朽化し、その安全に問題があるとしてMリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLから使用を禁じられています。そのため、改修が終わるまでという条件で、スランゴールはPJシティのホームであるMBPJスタジアムに同居しています。MBPJスタジアムを本拠地とする両チームの「スランゴールダービー」は、本来のホーム、PJシティが代表FWダレン・ロックのゴールで挙げた1点を守り切り、今季3勝目を挙げています。
 スランゴールはここまでリーグ3連敗、FAカップ準決勝ではトレンガヌに敗れるなど、サポーターの不満は頂点に達しており、この試合では一部サポーターが黒い衣服を身につけて入場するなど、クラブに抗議の意思を表しています。これに対してチームも、ミヒャエル・ファイヒテンバイナー前監督を事実上更迭し、ニザム・ジャミル コーチを監督代行に据えるなどの対応を行なっているものの、外国籍選手が1人もいないPJシティを相手に、4月6日以来11試合ぶりの勝利をもたらす一方で、ニザム監督のもとで2連敗、チームは今季初の4連敗を喫しています。
 キム・パンゴン監督も観戦に訪れたこの試合自体はスランゴールが終始、優勢に試合を進めたものの、シュートは枠に決まらず、ラストパスが通らないなどの連敗からくるプレッシャーが感じられました。この敗戦後、チームだけでなくパトロンを務めるスランゴール州皇太子のアミール・シャー殿下までがサポーターに向けて声明を発表するなど 、「赤い巨人」のニックネームを持つスランゴールの凋落は止まりそうにありません。

2022年シーズン スーパーリーグ順位表(第17節終了時)

チーム勝点
1JDT1412203973238
2SAB16112326141435
3NSE1795324141032
4TRE168262016426
5SRP176382727021
6KLC156362925-521
7KDA145361925-617
8MEL144552019117
9SEL154462626016
11PJC173771627-1116
11SWU1742111537-2214
12PEN1614111934-257
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

2022年シーズン スーパーリーグ 得点ランキング(第17節終了時)

ゴール数選手名所属
117ベルグソン・ダ・シルヴァJDT
212フェルナンド・フォレスティエリJDT
311カイオンSEL
49ロナルド・ンガKDA
57ダレン・ロックPJC
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第16節結果とハイライト

8月19日から21日にかけてプレミアリーグ第16節の5試合が行われました。
(試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2022年8月19日(金)@スルタン・モハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ユナイテッド 4-0 スランゴール2
⚽️クランタン:ジュリアス・オフォーリ(14分、18分)、ンジョク・ジェイコブ(80分)、アスラフ・アリフディン・ヤシン(89分)
🟨クランタン(1):ハジク・スブリ
🟨スランゴール(2):ダニエル・エズアン、アリフ・イズワン・ユスリン
MOM:ジュリアス・オフォーリ(クランタン・ユナイテッド)
 クランタン・ユナイテッドの深井脩平、この試合でもキャプテンを務めた本山雅志の両選手はいずれも先発し、深井選手はフル出場・本山選手は90+2分に交代しています。

2022年8月20日(土)@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチンシティ 2-1 UITM
⚽️クチンシティ:アブ・カマラ2(49分、74分)
⚽️UITM:アミル・アドハ・ラティフ(78分)
🟨クチンシティ(3):ラフィザン・ラザリ、アダム・シリーン・タムビ、チェ・モハマド・アリフ・チェ・カマルディン
🟨UITM(3):ファレズ・アイマン、イザク・イズハン、アミル・アドハ・ラティフ
MOM:アブ・カマラ(クチンシティ)
 クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

2022年8月21日(日)@スルタン・モハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン 2-2 トレンガヌII
⚽️クランタン:ヌルシャミル・アブドル・ガニ(分)、ズルファーミ・アブドル・ハディ(分)
⚽️トレンガヌ:ワン・ファズリ・ワン・ガザリ2(分、分)
🟨クランタン(2):マティアス・マンソル、オスマン・ユソフ
🟨トレンガヌ(3):ルーク・ウッドランド、アキル・イルファウディン、シャフィク・イスマイル
MOM:ワン・ファズリ・ワン・ガザリ(トレンガヌII)
 前節はベンチ外だったクランタンの原健太選手は後半から出場し、試合終了までプレーしています。

2022年8月21日(日)@UITMスタジアム(スランゴール州シャー・アラム)
PDRM 0-3 JDT II
⚽️JDT:フェロズ・バハルディン(9分)、ダリル・シャム2(10分、37分)
🟨PDRM(3):サフィ・アフマド、ファディ・アワド、アミル・サイフル・バデリ
🟨JDT(3):フェロズ・バハルディン、ダリル・シャム、イルハム・タルミジ
MOM:フェロズ・バハルディン(JDT II)

2022年8月21日(日)@ペラスタジアム(ペラ州イポー)
ペラ 1-3 FAM-MSNプロジェクト
⚽️ペラ:スティッペ・プラジバット (6分)
⚽️FAM:アミルル・アクマル・サファリニザム(42分)、イザット・ジクリ・イジルディン(56分)、ファリス・イズディハム(60分)
🟨ペラ(4):カイルル・アシュラフ、カイルル・シャフィク、デニシュ・ハジク、フェリス・ダニアル
🟨FAM(1):ハフィズ・アイディル
MOM:ファリス・イズディハム(FAM-MSNプロジェクト)

2022年シーズン プレミアリーグ順位表(第16節終了時)

チーム得失差勝点
1KEL16113225111436
2JDT15103232131933
3TRE1593427151230
4KCH158342618827
5KLU166642116524
6PDRM166372026-621
7UITM1542101524-914
8SEL153481222-1013
9PRK1651101427-137
10FAM151212929-205
ペラ(PRK)は給料未払い問題の解決が遅れたことにより、勝点9の剥奪処分を受けています。
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

2022年シーズン プレミアリーグ 得点ランキング(第16節終了時)

ゴール数選手名所属
110アブ・カマラKCH
28フェルナンド・ロドリゲスJDT
8ンジョク・ジェイコブKLU
8マルティン・アダメックPDRM
57ジョーダン・ミンターTRE
7ダリル・シャムJDT
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

8月21日のニュース
ACLベスト16-ノックアウトステージ初出場のJDTは浦和に完敗

ACLベスト16-ノックアウトステージ初出場のJDTは浦和に完敗


AFCチャンピオンズリーグノックアウトステージ1回戦
2022年8月19日@埼玉スタジアム(埼玉県さいたま市)
浦和 5-0 JDT
⚽️浦和:アレクサンダー・ショルツ (8分PK)、ダビド・モーベルグ2(19分、39分)、キャスパー・ユンカー2(84分、90+1分)
🟨浦和(0)
🟨JDT(4):ファリザル・マーリアル、マシュー・デイヴィーズ、アフィク・ファザイル、ナチョ・インサ

マレーシアのクラブとしては初めてACLグループステージを突破したジョホール・ダルル・タジムJDTは、ベスト8進出をかけて、過去ACL優勝2回、2019年準優勝とACLでの実績はJクラブでも屈指の強豪、浦和と対戦。試合は浦和のホーム、埼玉スタジアムと完全アウェイの中で行われました。

JDTは主力の1人MFレアンドロ・ヴァレスケスがグループステージの警告累積により、この試合は出場停止となる中、シーズン中のベンヤミン・モラ監督の辞任を受け、就任してからわずか3週間というJJDTのエクトル・ビダリオ監督は、国内リーグでもまだデビューしていない新加入のDFジョルディ・アマト(スペイン出身、ベルギー1部KASオイペンより移籍)を先発に起用するサプライズ。しかも本来のセンターバックではなく、ボランチとしての起用でした。

アマト選手の起用以外は予想通りの布陣となったJDTは、ベルグソン・ダ・シルヴァとフェルナンド・フォレスティエリの2トップ、中盤はナズミ・ファイズが2トップ下、アリフ・アイマンが右ウィング、その後ろにナチョ・インサとジョルディ・アマトがダブルボランチ気味に位置し、4バックは左からラヴェル・コービン=オング、シェーン・ロウリー、シャールル・サアド、マシュー・デイヴィーズが先発しました。

試合が始まると、1分過ぎにはペナルティエリアの外からアリフ・アイマンが挨拶がわりに無回転のミドルシュートを放ち、浦和のGK西川周作が冷静にパンチングで逃れます。この試合では先制点を奪って浦和にプレッシャーをかけたいJDTはその後も積極的に攻めますが、先制したのは浦和でした。

8分に右コーナーキックの流れからゴール前に上がったクロスに松尾佑介が飛び込みますが、その際にGKファリザル・マーリアスと接触します。オーストラリアのクリストファー・ビース主審はこれをファウルと判定し、ファリザル選手にはイエローカードが出され、浦和がPKを獲得します。このPKをアレクサンダ ー・ショルツが決めて浦和が早々と1-0とリードしました。試合後の会見でJDTのビダリオ監督が話したように、最初に失点してしまったことが、ボールを保持して試合を進めたかったJDTのゲームプランに大きく影響し、逆に浦和を落ち着かせてしまいました。

先制した浦和は、それまで以上に前線から速いプレスをかけていきます。スーパーリーグでは経験したことがない速さのレベルのプレスに対し、JDTの選手は焦ってボールを蹴り出し、これを浦和が回収する展開の繰り返しとなり、試合は徐々に浦和のペースで進んでいきます。そして18分、浦和が追加点を挙げます。小泉佳穂からのパスを受けてJDT守備陣の間を抜けだそうとした大久保智明をマシュー・デイヴィーズが倒して直接FKを与えてしまいます。このFKをダビド・モーベルグが右トップコーナーに決めて、浦和はリードを2点に広げます。

さらに39分には1点目に絡んだ松尾選手からのクロスをファーサイドの小泉選手が折り返し、これを再びモーベルグ選手が落ち着いて決めて、浦和が3-0とJDTを突き放します。JDTは数的に有利だったにもかかわらず、止めることができないゴールでした。

前線の速いプレスでカウンターが封じられたJDTは、自陣でプレーする時間が長くなっただけでなく、スーパーリーグでは前線に張り付いているベルグソン選手やフォレスティエリ選手がこの試合では頻繁にプレスバックを強いられるほどラインが下がり、攻撃も精度の低いミドルシュートに頼るなど好機が全く作れないまま。前半が終了しました。

後半に入るとJDTはアフィク・ファザイル、ラマダン・サイフラー、サファウィ・ラシド、シャーミ・サファリを次々と投入しますが、ゴールを狙って最終ラインを上げた代償がキャスパー・ユンカーの84分と90+1分の2ゴールでした。

0-5と浦和に一蹴されたJDTの冒険は残念な形で幕を閉じました。国内に目を向ければスーパーリーグで首位を走るJDTは、おそらく今季も優勝して9連覇を果たし、来季のACLにも出場するでしょう。来季2023/2024年シーズンからは秋春制に移行するACLは、グループステージが2023年9月中旬から始まることが既に発表されています。貴重な経験を積んだJDTが、およそ1年後に始まる新たな挑戦に向けて、どのように変わっていくのかを今後も注目していきたいと思います。

 

Mリーグ1部スーパーリーグ
2022年シーズン第17節結果とハイライト

8月17日と18日の両日にスーパーリーグ第17節の5試合が行われました。リーグ首位を快走するJDTは、8月19日にACLのベスト8進出をかけて埼玉スタジアムで浦和レッズと対戦するため、JDT対マラッカ・ユナイテッドの試合は、9月7日に延期されています。
(試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2022年8月17日(水)@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
サラワク・ユナイテッド 0-0 PJシティ
🟨サラワク(1):アブドル・ラーマン・イスマウィ
🟨PJシティ(1):K・グルサミー
MOM:ウチェ・アグバ(サラワク・ユナイテッド)
 1部スーパーリーグと2部プレミアリーグを統合する来季のMリーグ大改編により、降格の心配から開放された10位サラワクと11位PJシティの対戦はスコアレスドローに終わっています。
 今季はここまで16試合でリーグ最多37失点のサラワクと、15試合でリーグ3位の27失点のPJシティは対戦は、まさかのスコアレスドローに終わっています。ともに好機を作りながら、精度の低いフィニッシュにより両チームとも得点できず、ともにリーグ最少の15得点なのも納得の凡戦でした。
 この結果、サラワクは3試合連続、PJシティは4試合連続無得点となりました。

2022年8月17日(水)@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 0-2 トレンガヌ
⚽️トレンガヌ:ハビブ・ハルーン(13分)、マヌエル・オット(39分)
🟨スランゴール(4):バハー・アブドッラフマーン、シャルル・ナジーム、ムカイリ・アジマル、ヤザン・アル=アラビ
🟨トレンガヌ(3):アザリヌラー・アリアス、アザム・アズミ、アリフ・アンワルf
MOM:ファイサル・ハリム(トレンガヌ)
 ミヒャエル・ファイヒテンバイナー監督が本来のスポーツディレクターに復帰し(まぁ事実上の更迭ですが)、ニザム・ジャミル コーチが監督代行に就任したスランゴール。ニザム監督代行にとっては、渡邉将基選手や池田圭選手が所属していたフェルダ・ユナイテッド(2020年に解散)で監督を務めて以来のMリーグでの指揮となったこの試合は、トレンガヌのナフジ・ザイン監督とのいわば「次世代指導者」対決となりました。
 またこのカードは8月6日にトレンガヌのホームで行われたFAカップ準決勝と同じカード。このときは、延長戦を終えて1-1と決着がつかず、PK戦の末、トレンガヌが決勝を決めており、スランゴールとしては自身のホームで借りを返したいところです。
 しかし先手を取ったのはトレンガヌ。ハビブ・ハルーンがゴール前に張り付くスランゴールDF陣を見越すように、ペナルティエリアの外からシュートを決めて先制します。2点目は今季好調のファイサル・ハリムがスランゴールDFを引きつけてからゴール前へクロス。これをマヌエル・オットが決めて2点目。今のスランゴールを破るには、トレンガヌにとってはこの2点で十分でした。
 監督交代の効果が出なかったスランゴールはU23代表キャプテンのムカイリ・アジマルが2度の決定的な機会を逃すなど、好機を生かせず、無得点に終わるとともに、今季初の3連敗で9位まで順位を下げています。

2022年8月17日(水)@ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロースター)
クダ 1-1 サバ
⚽️クダ:ロナルド・ンガ(6分)
⚽️サバ:ファルハン・ロスラン(84分)
🟨クダ(1):アクマル・ザヒル
🟨サバ(1):リザル・ガザリ
MOM:アル・ハーフィズ・ハルン(クダ)
 2020年、2021年シーズンともリーグ2位だったクダは、ここまでリーグ最多4位タイの25失点(13試合)と既に昨季1年間の28失点(22試合)に迫る勢いですが、この原因の一つが、アンゴラ代表でもプレーするセンターバック、マーク・ヴァレスの不在です。膝のケガのために手術を受けたヴァレス選手は、リーグ戦は5月17日の試合を最後にそれ以降は出場がありませんでした。それまでは4勝2分3敗の成績だったチームは、ヴァレス選手の離脱以降は1勝0分3敗と苦しみ、順位も急落しています。
 そのヴァレス選手がおよそ3ヶ月ぶりに復帰したクダは、ここまで4連勝中のリーグ2位サバを1失点に抑えて引き分けています。試合後の会見でアイディル・シャリン監督は、バドロル・バクティアル、リザル・ガザリ(いずれもサバ)、クパー・シャーマン(トレンガヌ)、レノン・アウヴェス(バリト・プテラ-インドネシア1部)ら、リーダーシップを持つ多くの選手が退団した今季、は、ヴァレス選手不在はチームリーダーの不在でもあったと話し、今回のヴァレス選手の復帰を歓迎しています。
 首位を快走するJDTを脅かす唯一の存在となりえたサバは、この日の敗戦で、試合数が2試合少ないJDTと勝点差が3となりました。最終節第22節ではJDTとの直接対決が残っていますが、そこまで負けられない試合が続きます。
 サバの加賀山泰毅選手は先発して、84分に交代しています。

2022年8月18日(木)@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
KLシティ 1-0 ヌグリスンビラン
⚽️KLシティ:パウロ・ジョズエ(45+1分)
🟨KLシティ(1):ジョーダン・ミンター
🟨ヌグリスンビラン(3):ザムリ・ピン・ラムリ、グルタヴォ、クザイミ・ピー
MOM:パウロ・ジョズエ(KLシティ)
 8月24日にAFCカップ東南アジア地区決勝が控えるKLシティは、PSMマカッサル(インドネシア)との対戦前の最後のリーグ戦でもあり、好調のヌグリスンビランが相手ながら、この試合に勝ってAFCカップに臨みたいところです。
 一方この試合まで4連勝中のヌグリスンビランは、2位のサバとの差を詰めて、あわよくば来季のAFC主催大会への出場権獲得を目指しています。
 そんな両チームの対戦は、前半終了間際にキャプテンのパウロ・ジョズエがザフリ・ヤハヤのコーナーキックに頭で合わせてゴールを決め、この1点をGKケヴィン・メンドーザを中心にDF陣が守り切って勝利しています。

2022年8月18日(木)@シティスタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナン 1-3 スリ・パハン
⚽️ペナン:スティーヴン・ロドリゲス2(44分、74分)、デヴィッド・ロウリー(80分)
⚽️パハン:ラファエル・ヴィトール(65分PK)、ル=カス・シルヴァ(85分)
🟨ペナン(0):ルーカス・シルヴァ、K・ティヴァンダラン
🟨パハン(0):シェルゾド・ファイジエフ、アザム・アジー、
MOM:スティーヴン・ロドリゲス(スリ・パハン) 
 1980年代から90年代前半にかけてマレーシア代表で活躍したドラー・サレー(パハン)とザイナル・アビディン(ペナン)が監督として対決したこの試合は、直近の4試合で4ゴールを挙げているパハンのスティーヴン・ロドリゲスがこの試合でも2ゴールを挙げ、チームの引き分けを挟んだ4連勝に貢献しています。
 最下位のペナンは一度は同点に追いついたものの、結局、泥沼の6連敗となりました。リーグ第改編のおかげで今季は2部降格がなくなったものの、来季に向けてのチーム再建は必至です。

2022年シーズン スーパーリーグ順位表(第17節終了時)

チーム勝点
1JDT1412203973238
2SAB16112326141435
3NSE1795324141032
4TRE157261815323
5SRP166372625121
6KLC156362925-521
7KDA145361925-617
8MEL144552019117
9SEL144462625116
10SWU1742111537-2214
11PJC162771527-1213
12PEN1614111934-257
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

2022年シーズン スーパーリーグ 得点ランキング(第17節終了時)

ゴール数選手名所属
117ベルグソン・ダ・シルヴァJDT
212フェルナンド・フォレスティエリJDT
311カイオンSEL
49ロナルド・ンガKDA
57ダレン・ロックPJC
7イフェダヨ・オルセグンMEL
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

8月17日のニュース
FAカップ決勝は結局ブキ・ジャリル国立競技場開催に落ち着く
U23代表監督候補にエラヴァラサンA代表コーチが浮上

FAカップ決勝は結局ブキ・ジャリル国立競技場開催に落ち着く

FAカップを主催するマレーシアンフットボールリーグMFLは公式サイト上で、9月10日に予定されているマレーシアFAカップの決勝、JDT対トレンガヌの試合を、クアラルンプールにあるブキ・ジャリル国立競技場で開催することを発表しています。

当初はクアラルンプールを含む首都圏であるクランバリー地区以外での開催を検討していると、MFLのスチュアート・ラマリンガムCEOは話していましたが、結局、ブキ・ジャリル国立競技場に落ち着いたようです。

新型コロナの影響で3年ぶりの開催となったFAカップは、当初は決勝戦が8月27日に予定されていましたが、決勝に進出しているJDTが、8月19日に埼玉スタジアムで開催されるAFCチャンピオンズリーグACLのベスト16で浦和レッズと対戦することから、9月10日に変更されています。

*****

これまで改修を繰り返しながら、雨が降ると「その辺りの空き地よりひどい」と酷評されてきたピッチが難点のブキ・ジャリル国立競技場。その一方で8万人を収容できる巨大スタジアムは国内にはなく、首都圏以外での決勝開催予定が発表されても、その後が続かなかったことから、結局、ブキ・ジャリル国立競技場に落ち着いた、といった感じです。

U23代表監督候補にエラヴァラサンA代表コーチが浮上

現在、空席となっているU23代表の監督にE・エラヴァラサンA代表コーチが就任する可能性があると、マレーシアのスポーツメディア、アストロアリーナが報じています。

今年5月の東南アジア競技大会では準決勝敗退、翌6月のAFC U23アジアカップではベトナムやタイと同組となったグループステージで敗退と、東南アジアの壁が破れていないU23代表。マレーシアサッカー協会FAMはこの結果を受けて、U23代表監督を務めていたブラッド・マロニー監督との契約を延長せず、現在、U23代表は監督不在となっています。

今年からA代表の監督に就任したキム・パンゴン監督が、2007年のアセアン4カ国共催以来16年ぶり、予選突破での出場は1980年以来43年振りにAFCアジアカップ出場へとA代表を導いたことを受け、U23代表監督もキム監督同様、韓国人指導者となるなどの噂もあり、具体的には香港1部リーグのキッチーFC(傑志体育会)のキム・ドンジン(金東進)コーチ、前韓国U23代表監督のキム・ハクブン(金鶴範)氏らの名前が上がっていました。

しかしアストロアリーナは、関係者の話を総合すると、マレーシア人となる可能性が高いと報じており、マレーシアU19代表監督として、東南アジアサッカー連盟AFFU19選手権で下馬評を覆して優勝を果たしたハサン・サザリ・ワラス監督などの名前もこれまでに上がっています。

さらにアストロ・アリーナは関係者の話として、U23代表監督はマレーシア人であることに加えて、キムA代表監督の目指すサッカーを理解する人物という条件が付けられているとしており、その条件に当てはまるのが、キム監督の元でコーチを務めているE・エラヴァラサンA代表コーチとなるということのようです。

この報道が出る前には、マレーシアサッカー協会FAMのハミディン・アミン会長がU23代表監督候補について、人選は8割方終わっていると発言するなど、協会内部では話が進んでいるようですので、その正体が明らかになるのは時間の問題といったところでしょう。

Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第15節結果とハイライト

2022年8月13日(土)@スルタン・モハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン 2-1 PDRM
⚽️クランタン:ヌルシャミル・アブドル・ガニ(68分PK)、イクワン・ヤゼク(77分)
⚽️PDRM:ドゥルケスワラン・ガナサン(30分)
🟨クランタン(1):ヌルシャミル・アブドル・ガニ
🟨PDRM(3):ファディ・マームード・アワド、ミロシュ・ラチャニー、アレクサンダー・アンポンサ
MOM:ユスリ・ユハスマディ(クランタン)
 クランタンの原健太選手は、この試合はベンチ外でした。今季2度目のトランスファーウィンドウでクランタンに加入した直後は先発してフル出場が続いていた原選手ですが、ここ数試合では途中出場や途中交代と出場時間が短くなっており、この試合はベンチ外となっています。

2022年8月13日(土)@MBPGスタジアム(ジョホール州パシル・グダン)
JDT II 1-0 ペラ
⚽️JDT:フェロズ・バハルディン(45+2分)
🟨JDT(5):アイサル・ハディ、チア・ルオハン、ダリル・シャム、ムサ・シディベ、ダニエル・ティン
🟨ペラ(3):サンデー・アフォラビ、ワン・ザック・ハイカル、ランディ・バルー
🟥ペラ(1):ランディ・バルー(🟨x2)
MOM:フェロズ・バハルディン(JDT II)

2022年8月14日(日)@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
FAM-MSNプロジェクト 0-3 クチンシティ
⚽️クチンシティ:ガブリエル・モンテイロ(20分)、アミル・アムリ・サレー(49分)、谷川由来(55分)
🟨FAM(1):シャキラン・ザムリ
🟨クチンシティ(2):ラフィーザン・ラザリ、ラフィク・シャー
MOM:谷川由来(クチンシティ)
 この試合で今季3ゴール目を挙げてマンオブザマッチに選ばれたクチンシティの谷川由来選手は、先発してフル出場しています。

2022年8月15日(月)@スルタン・モハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ユナイテッド 3-1 UITM
⚽️クランタン:ンジョク・ジェイコブ(16分)、ハジック・スブリ(50分)、アスラフ・アリフディン・ヤシン(90+4分)
⚽️UITM:イズマン・ソレヒン・ロハディ(71分)
🟨クランタン(0)
🟨UITM(1):イズマン・ソレヒン・ロハディ
MOM:ニック・アキフ(クランタン・ユナイテッド)
 クランタン・ユナイテッドの深井脩平、本山雅志両選手は先発し、深井選手は67分に、2試合連続キャプテンマークを巻いた本山選手は82分にそれぞれ交代しています。ここまでチームの全試合に先発フル出場を続けていた深井選手が、今季初の途中交代となったことが気になります。

2022年8月15日(土)@UITMスタジアム(スランゴール州シャー・アラム)
スランゴール2 0-1 トレンガヌ
⚽️トレンガヌ:イザン・シャーミ・ムスタパ(7分)、ラーマット・マカスフ(50分)
🟨スランゴール(2):リッチモンド・テテー、サイフル・イスカンダル
🟨トレンガヌ(1):リズアン・ラザリ
MOM:サフアン・マズラン(トレンガヌII)

2022年シーズン プレミアリーグ順位表(第15節終了時)

チーム得失差勝点
1KEL1511222391435
2JDT1493229131630
3TRE1592425131229
4KCH147342417724
5KLU155641716121
6PDRM156362023-321
7UITM154291422-814
8SEL143471218-613
9PRK155191324-117
10FAM140212628-222
ペラ(PRK)は給料未払い問題の解決が遅れたことにより、勝点9の剥奪処分を受けています。
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

2022年シーズン プレミアリーグ 得点ランキング(第15節終了時)

ゴール数選手名所属
18フェルナンド・ロドリゲスJDT
8アブ・カマラKCH
8マルティン・アダメックPDRM
47ジョーダン・ミンターTRE
7ンジョク・ジェイコブKLU
65ヌルシャミル・アブドル・ガニKEL
5ダリル・シャムJDT
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII