8月28日のニュース
汚職防止委員会がクアラルンプールFAを強制捜索
給料未払いとなっているサラワクの選手らにMFLが金銭的支援を表明
サラワクでベンチ外が続くボリス・コックがその理由をFBに投稿

汚職防止委員会がクアラルンプールFAを強制捜索

マレーシア語紙のブリタハリアンは、マレーシア政府機関の汚職防止委員会がクアラルンプールサッカー協会KLFAと、KLFAが運営するMリーグ1部スーパーリーグのKLシティの事務所に対して強制捜索を行ったと報じています。

この記事の中では、KLFAの理事らに対する職権濫用と背任の容疑による捜索だということで、KLFAの収支が合致しないことに加えて、アカデミーの建つ土地を企業に貸し出す際に正式な手続きを踏んでいないなど手続きに不透明な点があることを指摘されています。

さらに「今回の件には数百万リンギ(1リンギはおよそ30円)が関わっており、汚職防止委員会による強制捜索の結果、KLFAの不正行為が明らかになれば、マレーシアサッカー界における最大のスキャンダルとも言えるだろう。KLFAの一部理事がこの件について理事会での説明を求めたものの、理事会トップからは納得のいく説明が未だに得られていない。」と説明する関係者の話も紹介しています。

ことの発端はKLFAがスエード不動産社と所有するアカデミーの土地の貸与契約を結び、その見返りに数百万リンギがKLFAに支払われましたが、今季開幕前にKLシティで給料未払い問題が発覚すると、KLFAの理事会トップらが正式な手続きを踏まずにスエード不動産社との契約を破棄し、今度はシンマ不動産社と新たに貸与契約を結び、その見返りに300万リンギが支払われたというものです。

ブリタハリアンの取材に対して、KLFAのノクマン・ムスタファ事務局長は汚職防止委員会の捜索を受けたことを認め、捜索への全面協力を約束しています。また、KLFAのカリド・アブドル・サマド会長は、汚職防止委員会への告発は悪意を持って行われ、KLFAとKLシティの名を貶める意図を持った悪意のある告発だと述べています。

「KLFAと(KLFAが運営する)KLシティは、その予算が限られる中、昨季は32年ぶりにマレーシアカップに優勝し、今季はAFCカップの東南アジア地区予選を突破した。チームスポンサーのKL市役所からは250万リンギ、その他のスポンサーからの資金を合わせても500万リンギしか得られない中で、KLシティのチーム運営に必要な1200万リンギをどのように捻出したのかが問題にされるべきである。資金捻出に関わっていない人間がこの成功に腹を立て、嫉妬し、妬んだ結果が今回の悪意の告発につながっている。KLFAとKLシティの事務所を訪れた不正防止委員会の職員も、告発を受けたので捜索を行わねばならないこと、そして必要な書類を押収することを我々に説明するなど、メディアが報じているような「構成捜索」といった類のものではない。一部ではKLFAは4000万リンギを受け取りながら1200万リンギしか使っておらず、残りの2800万リンギの使途が不明という報道も出ているが、それ事実無根である。不正防止委員会への告発に関わった者、そしてそれに関する報道が出るように仕向けた者は、KLFAの潜在的なスポンサーを不安にさせて、資金繰りを苦しくさせようという、悪意のある行為である。」とカリド会長は説明しています。

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報道だけを見ると分かりにくいですが、実はサッカーと政治が密接に関係しているマレーシア特有の政治的な背景も絡んでいる問題です。KLFAのカリド会長は、前回の2018年の総選挙でマレーシア史上初となる政権交代が実現し、その際の与党連合を構成していた政党に所属している政治家でもあり、クアラルンプールを含めた連邦直轄地担当大臣を務めていました。慣例では連邦直轄地担当大臣がKLFA会長を兼任することから、カリド氏が会長に就任しました。
 しかし、2020年にはこの与党連合が下院議会で過半数以上の支持を得られらなくなったことで、選挙を経ずしての政権交代となり、野党議員となったカリド氏は連邦直轄地担当大臣を失職したものの、慣例に従わずにKLFAの会長には留まりました。そしてカリド会長在職中に、それまでは目立った成績を残していなかったKLシティが32年ぶりにマレーシアカップ優勝、そしてクラブ史上初となるAFCカップ東南アジア地区予選優勝と次々と成功を収めたことで、それを快く思わない政敵からの狙い撃ちをカリド氏が受けた可能性が大いにあります。

給料未払いとなっているサラワクの選手らにMFLが金銭的支援を表明

Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLは、公式サイト上でサラワク・ユナイテッド(以下サラワク)の選手や監督、コーチらに対して10万リンギ(およそ300万円)の一時金を支給することを発表しています。このブログでも既に取り上げていますが、サラワクでは4ヶ月に渡って、給料未払いが発生していることが明らかになっています。

MFLのアブドル・ガニ・ハサン会長は、マレーシアプロサッカー選手会PFAMによる報告に基づき、MFL理事会は直ちにMFLからサラワクへの放映権料分配金から10万リンギの支給削減と、この10万リンギをPFAMを通じて、サラワクの選手や監督、コーチらへ支給することを決定したと説明しています。またこの給料未払い問題を14日以内に解決することをサラワクに求め、これが実現されない場合には、今季のマレーシアカップへの出場権剥奪などの処分が課される可能性があるとも述べています。

サラワクでベンチ外が続くボリス・コックがその理由をFBに投稿

前述のようにサラワク・ユナイテッド(以下サラワク)では給料未払い問題が起こっていますが、サラワクに所属する外国籍選手ボリス・コックが自身のFacebookに窮状を吐露しています。コック選手は7月に入ってからベンチ入りがありませんでした。.

カンボジアリーグ1部のプノンペン・クラウンFCから期限付き移籍中のコック選手によると、チームは過去4ヶ月の間、未払い給料の支払いを選手や監督、コーチらに約束していたものの、その約束は既に何度も破られているものの、選手や監督、コーチらはプロとしてのプライドを持って、試合に全力で望んでいると説明しています。

「チーム全員にとって厳しい状況になっており、家賃や食費はおろか、家族を養うことも難しいが、我々はチームを愛し、サポーターを愛しているため、これまでメディアに窮状を明らかにすることはせず、MFLやPFAMに報告することもしてこなかった。しかし忍耐強く待ってきたにも関わらず、未払い給料を支払うと約束されたには何も起こらなかった。」

またベンチ外が続いている自身の状況については、「自分の場合は状況が少し違っていて、フランスで妻の出産に立ち会うためにクラブから7月に2週間の休暇をもらった。(ボリス・コックは両親がカンボジア出身で、フランス生まれのカンボジア人)フランス滞在中に、3ヶ月間の給料未払いを理由にFIFAの規定に則って、期限付き移籍の契約を解除してカンボジアに戻ることも考えた。しかし、チームからは残留を要請されたため、契約解除は見送った。さらにチームからは航空券を用意するので、直ちに戻ってチームに合流するようにも依頼されたが、結局は航空券は用意されず、チームの経済状況が改善するまで今後もフランスに残って良いと言われたのが真相である。」と、7月に入ってから6試合連続でベンチ外となっている理由を説明しています。