1月7日のニュース
マレーシア代表新監督候補にキャティサック元タイ代表監督の名も
代表チームマネージャーは進退をFAMに一任
監督不在のA代表は1月のFIFA国際マッチデー期間は活動なし
次期代表監督候補のホダックは全権監督が就任条件

マレーシア代表新監督候補にキャティサック元タイ代表監督の名も

サッカー専門サイトのヴォケットFCはタイの有力メディア「タイ・ラット」の記事を引用し、元タイ代表監督のキャティサック・セーナームアン氏がマレーシア代表監督候補の1人となっていると伝えています。

東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でグループステージ敗退の責任をとってタン・チェンホー監督がマレーシア代表監督を辞任した1月3日以来、多くのメディアが次期監督候補としてマレーシアU22代表のブラッド・マロニー監督や、元マレーシアU19代表監督で現在はMリーグのKLシティFCのボヤン・ホダック監督の名前を挙げています。

現役時代は「タイのジーコ」と呼ばれたキャティサック氏はMリーグのプルリスFA(当時)でもプレー経験がありますが、現役引退後はU23代表監督を経てタイ代表監督に就任すると2014年、2016年とスズキカップ2連覇を果たし、その後は2020年11月に今季ACLにも出場するベトナム1部リーグのホアンアイン・ザライFCの監督に就任していますが、その契約期間は2年間ということです。

なおタイ・ラットの記事では、マレーシア代表監督の候補者としてキャティサック氏の他にもう1人アジア出身の候補者もいるということです。

代表チームマネージャーは進退をFAMに一任

スズキカップ2020でマレーシアカップ代表がグループステージで敗退したことを理由にタン・チェンホー監督が辞任したマレーシア代表のチームマネージャーは、その進退をマレーシアサッカー協会に一任すると話していると、マレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。

タン代表監督同様、責任をとって辞任すべきという声が上がる中、マレーシアサッカー協会FAM会長代理でもあるモハマド・ユソフ・マハディ代表チームマネージャは、ファンの失望や怒りは理解していると話す一方で、FAMの代表チーム運営員会によるグループステージ敗退原因の解明の分析後に行われる理事会での判断に自身の進退を委ねたいと話しています。

辞任の意思について問われたユソフ代表チームマネージャーは、「近い内にFAMの理事会が代表チーム運営委員会からの報告を受けて最終判断を下すことになっており、それまでは具体的な発言を控えたい」と答えています。

監督不在のA代表は1月のFIFA国際マッチデー期間は活動なし

1月24日から2月1日にかけては2022年最初のFIFA国際マッチデー期間ですが、監督不在のマレーシア代表は何も活動しないようだと、マレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。

この期間には世界各国の代表チームが国際Aマッチを開催する中、東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020で準決勝進出を逃したマレーシア代表ですが、1月5日にマレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクター(TD)に就任したばかりのスコット・オドネル氏は、この期間に代表選や代表合宿を計画していないことを明らかにし、3月21日から29日の国際マッチデー期間に今年最初の代表合宿を行う予定であると話しています。

オドネルTDは、2月のMリーグ開幕に向けて各クラブがその準備で忙しいことに加え、1月3日に辞任したばかりのタン代表監督辞に代わる暫定監督をFAMが指名しておらず、そもそも指導者不在であることなどを理由に挙げています。

次期代表監督候補のホダックは全権監督が就任条件

マレーシア代表の新たな監督候補の1人とされるKLシティFCのボヤン・ホダック監督は、代表監督に就任する場合には「全権監督」がその条件になると話しています。

現在は出身地のクロアチアに帰国中のホダック監督は、マレーシアサッカー協会FAMが自身を代表チームの監督として採用する場合には、全てを自分のやり方で進める全権監督となることを条件とすると、マレーシア語紙ハリアンメトロの取材に答えています。

現時点ではFAMからの正式なオファーは受けていないと話すホダック監督は今季2022年シーズンに向けてKLシティFCを強化することが最優先だと話す一方で、昨季のマレーシアカップ32年ぶりの優勝を果たしたKLシティFCを含め、自分のやり方を貫き通すことでどのチームでも結果を残してきた、と述べ、代表チームでも同じことをやり遂げる自信はあると話しています。

KLシティFC以外にも、これまで監督を務めたケランタンFA(現ケランタンFC)、JDT、そしてマレーシアU19代表のいずれも外部からの干渉を拒否した結果、Mリーグ1部スーパーリーグ優勝2回(2012年のケランタンFA、2014年のJDT)、FAカップ優勝2回(2012年と2013年のケランタンFA)そしてマレーシアカップ優勝2回(2012年のケランタンFAと2021年のKLシティFC)の成績に加え、東南アジアサッカー連盟AFFU19選手権優勝(2018年)も達成しています。

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Mリーグクラブの監督から次期代表監督を探すのであれば、最有力なのはこのホダック監督で間違いなし。2012年のケランタンFAでのトレブル(Mリーグ、FAカップ、マレーシアカップの年間三冠)に加えて昨季のマレーシアカップではJDTを破るなど国内では複数のクラブで文字通り結果を出し、マレーシアサッカーや選手を熟知しているという利点は大きいでしょう。しかしその一方で、歯に衣着せぬ物言いから、前述のマレーシアU19代表のAFFU19選手権2018年大会優勝に加え、12年ぶりとなるAFC U19選手権出場を果たしながら、FAMとの関係が悪化し、契約が更新されないということもありました。今回の「全権監督」発言もおそらく自身が代表監督を引き受ける覚悟の現れでしょう。またホダック監督が所属するKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOは、代表監督オファーを受けた際には、国益優先でホダック監督を引き留めないとも話しており、後任にはホダック監督と同じクロアチア出身のネナド・バチナ コーチの昇格も明言しており、自身もやる気を見せている代表監督就任のための外堀は埋まっていると言えるでしょう。マレーシア人の夫人を持ち、既にマレーシアの永住権も取得済みのホダック監督以上の候補者は国内にはいないと言って良いでしょう。

1月5日のニュース
トレンガヌはアンブロと2年5000万円のサプライヤー契約
Mリーグでコーチングライセンスの名義貸しが横行?

Mリーグ1部トレンガヌFCはクラブ公式サイトでイギリスのスポーツブランド「アンブロ」と総額180万リンギ(およそ5000万円)のサプライヤー契約を結んだことを発表しています。

2019年から2021年まではマレーシア国産ブランドのアル=イサン スポーツとサプライヤー契約を結んでいたトレンガヌFCは、このアル=イサン スポーツがそのマレーシア国内代理店となっているアンブロ社と2022年と2023年の2年間にわたるサプライヤー契約を結んだことを発表していますが、この契約はアンブロ社にとってはMリーグクラブと結んだ過去最大の契約となっています。またトレンガヌFCは今季2022年シーズンにアンブロ社と契約しているMリーグ唯一のクラブということです。

Mリーグでコーチライセンスの名義貸しが横行?

Mリーグの複数のクラブでプロライセンスを持つコーチを監督して登録しながら、実際にはライセンスを持たない人間が実質的な指導をしてると、サッカー専門サイトのスムアニャボラが伝えています。

これを告発した元代表選手のジャマル・ナシル氏は、プロコーチライセンスを所持していない人物に監督をさせたいMリーグクラブが、プロコーチライセンスを持つ別のコーチを名目上の監督に据え、そのライセンスを使って意図する人物に指導をさせる不正行為が行われているケースや、クラブが経費を節約する目的でこの不正行為を行なっているケースもあると説明しています。

さらにジャマル氏は、マレーシアサッカー協会FAMやMリーグを運営するMFLが気づいていないのか、気づいていないふりをしているのかはわからないが、この不正行為は既に数年前から続いているとも述べ、ライセンスを持つ指導者の能力が生かされず、ライセンスを持たない指導者が自由に指導できるこの不正行為が取り締まられない限り、代表チームの不振は今後も続いていくだろうと話しています

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これについてはマレーシア語紙ハリアンメトロも取り上げており、その記事の中でマレーシアサッカーコーチ協会PJBMのB・サティアナタン会長もこの名義貸しが行われているという話を聞いたことがあると認め、もしPJBMのメンバーがこの不正行為に加担していることが明らかになれば、厳重処分を科すと述べています。

元マレーシア代表監督でもあり、現在はサラワク・ユナイテッドFCのテクニカルディレクターを務めるサティアナタン氏は、PJBMのメンバーから具体的な報告を受けたことも明らかにしています。「(Mリーグ3部に当たる)M3リーグのコーチがあるクラブから監督就任の依頼を受けたが、その条件はそのクラブのアシスタントコーチが指揮を取り、このコーチには実権が与えられない、という内容だったようで、最終的にこのコーチからはその依頼を断ったと報告を受けている。」

また経費節約目的の名義貸しについては、プロライセンスを持つコーチの月給は最低でも10000リンギ(およそ28万円)、ディプロマ保持者なら25000から30000リンギ(およそ69万円から83万円)となる一方で、1ヶ月あたり2000から3000リンギ(およそ5万5000円から8万3000円)を支払ってその名義のみを借りることで、実際に雇用した場合との差額を節約できると説明しています。

この記事の最後でサティアナタン会長は多くの時間と費用を費やしてプロコーチライセンスを取得しても、不正行為を行う一部のコーチによって、それを活用する場が奪われてしまうとして、名義貸し行為はコーチが自分の首を絞めかねない自殺行為であると批判しています。

なおハリアンメトロの取材に対し、マレーシアサッカー協会FAMのサイフディン・アブ・バカル事務局長はコメントを控えるとし、MFLとこの不正行為疑惑について協議する予定があると回答しているということです。

1月4日のニュース:2022年シーズンのMリーグ外国籍選手枠数の変更は無し、AFCは今季も複数大会を一箇所集中開催で実施の可能性、パハンはクリストフ・ギャメル新監督の就任を発表

昨日はタン・チェンホー監督辞任のニュースで激震が走ったマレーシアサッカー界。スズキカップ2020でのグループステージ敗退を理由とした辞任ということが、それがタン監督だけの責任かどうかは別にして、この予想外の惨敗の影響はあちらこちらに現れており、今日取り上げる外国籍選手枠削減についての議論もその一つです。

その一方で2022年の国内シーズンの開幕も2月末に迫ってきています。また同じ2月には東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権があり、5月にはベトナムでの東南アジア競技大会通称シーゲームズ(U23代表が出場)、6月にはAFC U23アジアカップにAFCアジアカップ(A代表)最終予選と今年前半だけでも日程がてんこ盛りになっています。

2022年シーズンのMリーグ外国籍選手枠数の変更は無し

スズキカップ2020でマレーシア代表がグループステージで敗退したことを受け、Mリーグの外国籍選手枠が多すぎることにより、マレーシア人選手の出場機会が奪われていることもその原因ではないかという声が上がる中、マレーシアサッカー協会FAMは、今季2022年シーズンのMリーグの外国籍選手枠数の変更は行わないことを発表しています。

マレーシアの通信社ブルナマはFAMのサイフディン・アブ・バカル事務局長の話として、今季の外国籍選手枠数の変更を行うには時期が遅すぎると述べる一方で、Mリーグを運営するMFLとは今後も外国籍選手枠数の削減について話し合う用意があると話していることを報じています。さらに、Mリーグの外国籍選手枠についてはFAMの技術委員会が中心となって、維持すべきか削減すべきかを検討する予定であると述べたサイフディン事務局長は、外国籍選手枠の削減を行う場合でも、実施時期は最短で2024年からとなるという見解も伝えています。

Mリーグの外国籍選手枠は1部スーパーリーグが5名(ただしその内2名はそれぞれAFC加盟国選手枠と東南アジアサッカー連盟AFF加盟国選手枠が1名ずつ)、2部プレミアリーグが4名(内1名はAFC加盟各選手枠1名でAFF枠はなし)となっています。

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外国籍選手のせいで、マレーシア人選手が育たないという意見は代表チームの成績が下降する度に議論になる話題です。この記事では特にどのMリーグクラブでもストライカーが外国籍選手であることから、マレーシア人ストライカーが育たないという、まぁどこの国のリーグでも聞かれる意見が書かれています。またこの記事ではファンや評論家だけではなく、現役の選手からも外国籍選手枠削減についての声が上がっているとしています。

この記事を読んで思い出すのは、実際に外国籍選手の登録を禁じた2009年から2011年のシーズンです。それ以前の1999年から3年間に渡りMリーグが外国籍選手の登録を完全に禁じたことがありましたが、このときはアジア通貨危機の影響による経済上の理由でした。しかし2009年からの3年間の外国籍選手登録禁止は「マレーシアサッカーのレベルアップ」が理由でした。マレーシア人選手だけのクラブでリーグを行った結果、2009年と2011年の東南アジア競技大会通称シーゲームズでU23代表が2大会連続金メダル、またA代表は2010年にはスズキカップで初優勝を飾っていることから、それなりの効果はあったのだとは思います。しかし、国内リーグは代表チーム強化のためだけにあるのではなく、興行としての目的もあるわけで、その「質」が維持できなければファンは当然離れていくので、リーグそのものが立ち行かなくなってしまいます。

今回スズキカップのベスト4各国の国内リーグを見ても、外国籍選手枠はタイはマレーシアと同じ5名(内AFC1名、アセアン1名)、インドネシアは4名(内AFC1名)、ベトナムは3名、シンガポールは5名となっており、これだけを見ればMリーグの外国籍選手枠を減らすことで代表チームが強くなるとは正直思えず、MリーグとFAMには常識的かつ論理的な判断を求めたいですが、果たしてどうなることでしょう。

AFCは今季も複数大会を一箇所集中開催で実施の可能性

アジアサッカー連盟AFCは2022年シーズンも複数の大会を集中開催する可能性があると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。この記事によれば、AFCのウインザー・ポール事務局長は2022年の日程について詳細は明かさなかったものの、ニューストレイトタイムズの取材に対して、ACLやAFCカップなどのAFC主催大会を昨年同様に1ヶ国を会場とした集中開催方式で行う可能性を示唆しています。

新型コロナの変異種オミクロン株の感染者が世界各国で急増し、アジアの各国でも渡航者に対する検疫隔離が厳格化されていることから、従来のホームアンドアウェイ形式での試合開催が困難になると予想されると述べたウインザー事務局長は、FIFAワールドカップ2022年大会が開幕する今年11月までに全ての年間日程を終了している必要があるとも話しているということです。

また今季2022年シーズンのACLとAFCカップのグループステージ組み合わせ抽選は今月1月17日に、また6月に開催されるAFC U23アジアカップ(旧U23選手権)の組み合わせ抽選は2月17日に、そして1月30日に開催地の立候補が締め切られるAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選の組み合わせ抽選は2月24日にそれぞれ行われることも明らかにしています。

パハンはクリストフ・ギャメル新監督の就任を発表

昨季Mリーグ1部で10位だったスリ・パハンFCは、来季の監督にフランス出身のクリストフ・ギャメル氏が就任したとクラブ公式Facebookで発表しています。なお、かつてはフィジー代表の指揮を取った経験もあるギャメル監督との契約期間については明らかになっていません。

昨季2021年シーズンにスリ・パハンFCの監督に就任したトーマス・ドゥーリー監督と共にコーチとして加入したギャメル氏は、開幕から2試合でドゥーリー監督と共に「休養」をクラブから申しつけられて、その後はU21チームの指導を任されていました。

ドゥーリー、ギャメル両氏が「休養」となったことで、2020年にはスリ・パハンFC(当時はパハンFA)の監督を務めていたドラー・サレー チームマネージャーが代行監督に就任しましたが、チームは4勝6分12敗、降格した11位のクラブとは勝点差2という首の皮一枚の差で1部に踏みとどまりました。なおドラー監督代行は、今季は再びチームマネージャーに戻ることも合わせて発表されています。

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2020年シーズンに監督を務めた際にも10位、そして暫定監督として22試合中20試合の指揮を取った昨季も10位、しかもマレーシアカップはグループステージ敗退と2年間で目に見える成果は何も出せなかったドラー氏の留任の可能性はゼロであることは明らかでしたが、ギャメル監督の就任でやっと今季のMリーグの監督全員の顔ぶれが決まったことになります。

1月3日のニュース(2):スズキカップ2020-決勝第2戦のインドネシアの攻撃的布陣は苦肉の策だった?、また代表選手がサバ加入-今度は代表GKがマラッカUから移籍、2部降格のUITM FCは今季出場辞退の可能性も

スズキカップ2020-決勝第2戦のインドネシアの攻撃的布陣は苦肉の策だった?

タイの優勝で幕を閉じた東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020ですが、決勝第2戦では逆転勝利を目指して攻撃的な布陣を採用したと見られていたインドネシア代表ですが、どうもうそういうことではなかったというチームの実情をAFPが報じています。

この記事によると、インドネシア代表でいずれもDFのリズキー・リド、エルカン・バゴット、ヴィクター・イグボネフォ、リズキー・ドウィ・フェブリアントの4選手がおよそ2時間の間、宿泊先のホテルを抜け出して「シャンプーと石鹸を買いに出た」ことが判明し、東南アジアサッカー連盟AFFの懲罰委員会による調査の結果、この4選手は新型コロナ感染対策予防手順に違反したとして、大会運営本部からタイ代表との決勝第2戦の出場を禁止されていたということです。

この4選手の内、リズキー・リド選手はタイ代表との決勝第1戦に先発し、バゴット選手も後半開始から途中出場しています。またヴィクター選手とリズキー・ドウィ・フェブリアント選手もベンチ入りしていました。

インドネシア代表のシン・テヨン監督は、決勝第2戦後の記者会見でディフェンダーの4選手が出場禁止となった理由は了承できると話す一方で、この4選手の欠場が決勝第2戦に影響を与えたことを認めて失望していると話しています。

また代表選手がサバ加入-今度は代表GKがマラッカUから移籍

昨季2021年シーズンは降格権から勝点3で1部スーパーリーグ残留を決めたサバFCは、シーズン終了後から大型補強を続けていますが、そこにまた大物が移籍です。

サバFCのクラブ公式Facebookでは、先日終了したスズキカップ2020でもマレーシア代表のゴールキーパーとしてグループステージ4試合全てに先発しフル出場したカイルル・ファーミ・チェ・マットがサバFCへの移籍を告知しています。

32歳のカイルル・ファーミ選手は、昨季途中からサバFCの指揮を取るオン・キムスイ監督のもとでプレー経験があり、2011年に東南アジア競技大会通称シーゲームズでオン監督率いるU23代表が優勝した際の正ゴールキーパーでした。

オン監督就任以来、このオフシーズンは同じスーパーリーグのクダ・ダルル・アマンFCからMFバドロル・バクティアルとDFリザル・ガザリ、またタイ1部のポリス・テロFCからはDFドミニク・タンといずれもスズキカップ2020に出場した代表選手を獲得しています。

2部降格のUITM FCは今季出場辞退の可能性も

昨季2021年シーズンにMリーグ1部スーパーリーグで最下位となり、今季2022年シーズンは2部プレミアリーグ降格が決まっているUITM FCが経営上の問題から今季のリーグ出場を辞退する可能性があると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

昨季のスーパーリーグで3勝4分15敗で最下位となったUITM FCは、国立大学のマラ工科大学UITMを母体とするクラブで、2020年はに大学のクラブとして初めてスーパーリーグでプレーしています。しかもこのシーズンは新型コロナの影響で試合数が半減したとは言え昇格初年度で6位となるなど大きな話題となりました。しかし2020年シーズン終了後にこの大躍進に貢献した外国籍選手5名の内、4名が退団するなど、この時点で運営資金が潤沢ではないことは明らかでした。

2021年シーズンは開幕から連敗が続き、前年から指揮を取るフランク・ベルンハルト監督を交代、外国籍選手を入れ替えるなどしたものの、シーズン初勝利は開幕から17試合目(Mリーグの1シーズンは22試合)では、2部降格は避けられませんでした。

ニューストレイトタイムズの記事では、今季プレミアリーグ参戦のためのスポンサーの獲得に困難を極めているとされており、Mリーグを運営するMFLものスチュアート・ラマリンガムCEOもUITM FCからの状況説明を待っている状態であると話し、Mリーグも事態を憂慮しているとしています。


1月1日のニュース:フットサルリーグ開幕が延期、協会はケランタンFC監督らに罰金処分

 新年あけましておめでとうございます。マレーシアの元旦は日本とは違い、国民の祝日の一つでしかありません。どの会社も大晦日も普通に仕事、今年は1月2日がたまたま日曜日ですが、例年なら2日からも通常業務です。そんな季節感のないマレーシアからお届けするこのブログですが、本日をもって4年目に突入します。

フットサルリーグの開幕が延期

マレーシアサッカー協会FAMは公式Facebookで、FAMが主催するマレーシアプレミアフットサルリーグMPFL2022年シーズンの第1節を1週間延期して1月14日から16日に開催することを発表しています。FAMはその理由として試合会場となるパナソニックスポーツコンプレックスがあるスランゴール州シャーアラムを含めた複数の州や地域で洪水の被害が出ていることを挙げています。

先月12月中旬にマレー半島を襲った豪雨は、最近よく聞く「観測史上最大の降雨量」だったということで、各地で洪水が発生したスランゴール州を中心におよそ7万人に被害が出たと報じられていいます。これにより1月7日に開幕予定だったMPFLは、この豪雨により複数の参加各チームのプレシーズンの予定も影響を受けたことが報じられていることから、1週間の延期が決定したと説明されています。

FAMはケランタンFC監督らに罰金処分

マレーシアサッカー協会FAMは12月31日に開催した懲罰委員会での審査内容を発表し、ケランタンFCのレザル・ザムベリ監督とJDTのサフィク・ラヒムに対する処分を発表しています。

懲罰委員会のバルジット・シン・シドウ委員長はレザル監督に対して最大で2ヶ月間のあらゆるサッカー関連活動の停止と罰金1万リンギ(およそ28万円)を、サフィク選手には3試合の出場停止をそれぞれ命じています。

レザル監督の処分は、9月30日のマレーシアカップグループステージ、ケランタンFC対サバFCの試合中の審判の判定に関し、審判を管理するFAMを抽象するような発言をメディアに対して行ったことに対するもので、バルジット委員長は12月30日から1ヶ月のサッカー関連活動停止期間中に問題が無ければ処分は終了するものの、問題があれば1月20日からさらに1ヶ月の追加停止処分を課すと話しています。また罰金処分については不服申し立てを行うことを認めるとしています。

一方のサフィク選手はは11月26日のマレーシアカップ準決勝のJDT対トレンガヌFC戦で、トレンガヌFCのファイサル・ハリム選手にみごとな頭突きを行ったことに対する処分です。なおサフィク選手はマレーシアカップ決勝で既に1試合の出場停止となっていることから、練習試合を除くMリーグ公式戦でさらに2試合の出場停止となること、さらに同様の懲罰対象行為が行われた場合にはより重い処分となることも併せて発表されています。


マレーシアサッカー2021年の10大ニュース

 今日は大晦日。ということで2021年のマレーシアサッカー界をボラセパマレーシアJP的視点で振り返ります。国内では、昨年同様、新型コロナに翻弄されたMリーグは日程が二転、三転しましたが、それでも2年ぶりに全試合が行われたシーズンになりましたが、その一方で複数のチームで給料未払い問題が明らかになりました。また国外ではU22代表がAFCU23アジアカップ本戦出場を決めた一方で、A代表はW杯予選、東南アジア選手権スズキカップといずれも思うような結果が残せなかった一年でした。

○KLシティFCが32年ぶりにマレーシアカップ制覇

 今季の国内カレンダー最後の大会となったマレーシアカップは今回が100周年記念大会でしたが、KLシティFCが戦前の下馬評を覆してJDTを2-0で破り、前身のクアラルンプールFA時代から数えると32年振りとなる優勝を飾りました。昨季はMリーグ2部プレミアリーグで2位となり、今季1部スーパーリーグに昇格したKLシティFCは、今季、リーグ戦、カップ戦ともホームのKLフットボールスタジアムでは無敗を誇り、来季は更なる活躍が期待されます。

○新型コロナの影響で3部リーグ以下やFAカップや各年代大会が中止

 Mリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグは全日程が開催されたものの、新型コロナの感染拡大を受け、日本の天皇杯にあたるFAカップが2年連続で中止となった他、Mリーグ3部に当たるセミプロリーグのM3リーグ以下の各リーグ戦、U21チームのリーグ戦であるプレジデントカップ、U19チームのリーグ戦ユースカップ、さらにはマレーシアプレミアフットサルリーグなどが中止となりました。

○複数のクラブで給料未払い問題発覚

 給料未払い問題はMリーグでは長年問題視されていましたが、新型コロナ禍ともあいまって各クラブとも経営が厳しくなった今季は、未払い給料を理由に開幕戦先発XIの内、最終的には何と9名が退団したペラFCの主力大量退団の他、クダ・ダルル・アマンFC、サバFC、サラワク・ユナイテッドFCなどでも同様の給料未払い問題が明らかになっています。これまではマレーシアの各州サッカー協会が運営していたMリーグクラブはAFCの指導により民営化が義務付けられましたが、州政府の予算を頼りに放漫経営されていたクラブは資金調達に失敗し、それによって選手や監督、コーチがとばっちりを受ける形になっています。

○JDTが前人未到のリーグ8連覇

 Mリーグ1部スーパーリーグではジョホール州皇太子がオーナーのJDT(ジョホール・ダルル・タジム)がリーグ8連覇を達成しています。22試合で16勝3分1敗、得点50失点9はいずれもリーグ1位で、2位のクダ・ダルル・アマンFCに勝点差14をつける圧勝でした。帰化選手を集め、他のクラブからも有力選手が集まる布陣はマレーシアA代表の選手でも控えに回ることがある選手層の厚さで国内では敵なしですが、アジアの壁は越えられず、AFCチャンピオンズリーグでは今季もグループステージ突破には至りませんでした。

○元日本代表本山雅志選手がMリーグでプレー

 隣国タイではかつては岩政大樹選手や茂庭照幸選手、ここ数年ではハーフナー・マイク選手や細貝萌選手など「元日本代表」の選手たちがプレーしていた時期がありましたが、ついにマレーシアにもその時が来ました。しかもこの国にやってきたのはあの本山雅志選手です。所属するケランタン・ユナイテッドFCはMリーグ2部プレミアリーグのチームですが、それでもその注目度は非常に高いものでした。
 ケランタン・ユナイテッドFCでは、深井脩平選手、Mリーグでは先輩に当たる谷川由来選手、さらに東山晃監督(現テクニカルディレクター)らとともに今季を戦った本山選手は、自身はケガなどもあり満足なシーズンとはならなかったかも知れませんが、それでもマレーシア人選手たちに対しては圧倒的な存在感は見せたMリーグ1年目でした。

○Mリーグのチケット販売が完全デジタル化

 無観客試合で開幕したMリーグがスタジアムでの観戦を許可したのは4月初旬でしたが、その翌月には再び無観客となり、それが10月下旬まで続きました。スタジアム観戦再開後は新型コロナ対策もありMリーグのチケットはスタジアムでの当日売りがなくなり、オンラインで購入し自身でプリントアウトする完全デジタル化に移行しました。チケット購入時には身分証明書番号、外国人であればパスポート番号の入力が必要になり、スタジアムでの入場の際もチケットとパスポートの提示を求められる徹底振りでした。まぁそこはマレーシアなんで、コロナが落ち着けば元に戻ってしまうかも知れません。

○外国籍選手ゼロのPJシティFCがスーパーリーグ7位

 今季のMリーグ1部スーパーリーグで唯一、登録選手全員がマレーシア人選手のみ、つまり外国籍選手ゼロだったPJシティFCは開幕前の大方の予想に反し、12チーム中7位と大健闘しました。チームからは10月の中東遠征でGKカラムラー・アル=ハフィズが初の代表招集となった他、スズキカップ2020に出場した代表にはこのカラムラー選手とMFコギレスワラン・ラジ、FWダレン・ロック(ただしケガで辞退)の3選手が招集されるなど、マレーシア人選手だけのクラブが外国籍選手を補強した他のMリーグクラブと対等に戦えることを証明しました。

○スーパーリーグ昇格初年度でペナンFCが3位に

昨季のMリーグ2部プレミアリーグで優勝し、KLシティFCとともに今季1部に昇格したペナンFC。昨季の優勝監督でもあるマンズール・アズウィラ監督が1部スーパーリーグで監督を務めるのに必要なAFCプロ指導者ライセンスを保持していなかったことから、マンズール関東はコーチとなり、チェコ出身のトマス・トゥルカ監督が監督に就任しました。するとチームはMリーグの台風の目となり、一時はAFCカップ出場権が与えられるリーグ2位も見えましたが、最後は力尽きて3位に終わりました。それでも昇格初年度の3位は立派ですが、リーグ戦後のマレーシアカップに入るとチームは勝ち星から見放され、グループステージで敗退するとトゥルカ監督退陣を求める一部サポーターも現れるなど、少なくともリーグ戦終了時は順風満帆に見えたペナンFCですが、来季に不安を残してシーズンを終えています。

○スズキカップ2020で代表はベスト4進出を逃す

 隔年で行われる東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップの2020年大会がシンガポールで集中開催され、マレーシア代表はグループステージで敗退しています。2020年に予定されていた大会が順延となったことからスズキカップ2020と銘打たれたこの大会に前回2018年大会の準優勝チームとして出場したマレーシア代表でしたが、ラオス、カンボジアに勝利したものの、前回大会の覇者ベトナム、そしてFIFAランキングではマレーシアより順位が低いインドネシアに完敗しています。
 本来は選手30名を登録できるところを24名しかしないなど不可解なことも多く、代表選手選考には「見えない手」の影響があったのではなどとも言われていますが、真相は藪の中です。いずれにしても準決勝に進んだタイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアには明らかに見劣りするプレーにタン・チェンホー監督更迭論なども出ましたが、マレーシアサッカー協会FAMはこれを否定しました。

U23代表はAFC U23アジアカップ予選を突破

 愚兄賢弟と言えば言い過ぎ。A代表が思うような結果を出せなかった2021年ですが、U23代表は10月にモンゴルで開催されたAFC U23アジアカップ予選を突破し、来年2022年6月にウズベキスタンで開催される本戦出場を決めています。前回2020年大会予選では中国と同組になるも勝点で並びながら得失差で涙を飲んだU22代表でしたが、今回はタイとの引き分けを含む3試合全てを完封して予選J組を首位で突破しています。このU22代表は2月には東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権、5月には東南アジア競技大会通称シーゲームズも控えており、サポーターの信頼を失い気味の兄の分まで頑張って欲しいです。

12月30日のニュース(2):FAM-MSNプロジェクトはハサン・サザリ新監督を発表、アセアンの選手はMリーグに興味なし?

FAM-MSNプロジェクトはハサン・サザリ新監督を発表

今季Mリーグ2部プレミアリーグに参戦し、11チーム中11位の再開となったFAM-MSNプロジェクトは、来季もプレミアリーグ参戦が決まっていますが、今季を指揮を取ったユスリ・チェ・ラー監督は任期1年を残して既に退任していますが、その後任にハサン・サザリ氏が就任したことがマレーシアサッカー協会FAMの公式サイトで発表されています。

FAM-MSNプロジェクトは、マレーシアサッカー協会FAMと青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会MSNが共同で運営する国家サッカー選手養成プログラムNFDPとその中核をなすエリートアカデミーのモクタル・ダハリアカデミーAMDに所属するする18歳から19歳の選手で構成されているチームで、今季初参戦となったプレミアリーグでは20試合で1勝3分16敗、得点12失点56という成績で10位とは勝点差11をつけられて最下位でした。

就任が発表されたハサン・サザリ新監督は、2010年代前半にハリマウ・ムダC(ヤングタイガーズC)と呼ばれていたU19代表監督の経験に加え、A代表やU23代表のアシスタントコーチやFAM内でコーチングコースの指導教官なども歴任しています。11名の候補者の中から選ばれたハサン新監督は今季から残留するコーチ陣とともに2022年1月1日より指導を開始するということです。

アセアンの選手はMリーグに興味なし?

東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でマレーシア代表はグループステージで敗退しましたが、マレーシアの英字紙ニューストレイトタイムズはこの結果によって、マレーシアの国内リーグMリーグでプレーするアセアン出身選手が激減する可能性を指摘しています。

サッカー選手の代理人に話を聞いているこの記事では、今回のスズキカップ2020での代表チームの早期敗退により、Mリーグの「質」に疑問が持たれ、その結果としてMリーグクラブがアセアン出身の選手を獲得することが難しくなるという声が紹介されています。さらにその結果としてアセアンのトップレベルの選手はタイリーグに活躍の場を求めるようになると指摘しています。

Mリーグクラブに所属しているアセアン出身選手にはKLシティFCのケヴィン・メンドーザ(フィリピン)、スランゴールFCのサフアン・バハルディン(シンガポール)、サバFCのサディル・ラムダニ(インドネシア)らがいますが、今後はMリーグが各クラブに認めているアセアン出身選手枠を使って有力選手を獲得することは難しくなるだろうと話す代理人もいます。またMリーグでプレーするくらいならむしろタイの2部リーグでのプレーを選ぶ選手や、レベルの高さからベトナムリーグを検討する選手も増えていると話すこの代理人は、今後はMリーグはスズキカップで露呈したマレーシア代表のレベルの低さから、Mリーグがアセアン出身の選手にとって「最後の選択肢」となるだろうと述べています。

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東南アジアのEPL(英国プレミアリーグ)となるべく進化し続けるタイリーグに比べれば、現在のMリーグが見劣りするのは紛れもない事実です。古くはキャティサック・セーナームアン(タイ)、バンバン・パムンカス(インドネシア)などアセアン各国の主力が集まっていたMリーグも今は昔。噂レベルですが、スズキカップ2020にも出場してたイエスペル・ニホルム(フィリピン)をMリーグクラブも獲得に動いていたようですが、結局タイリーグ入りしたようですし、タイリーグでプレーする選手たちもそこから日本や韓国、さらには欧州を目指す選手もいる中、Mリーグで満足する選手で溢れるマレーシア国内リーグはキャリアップの役には立たなそうです。

12月28日のニュース:FAMはスズキカップ早期敗退によるタン代表監督解任説を否定、代表FWシャフィクが古巣のクダ🔰へ期限付き移籍、FIFAによる資格停止処分を受けたプルリス州サッカー協会が活動再開

FAMはスズキカップ早期敗退によるタン代表監督解任説を否定

 マレーシアサッカー協会FAMは東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でグループステージ敗退となったマレーシア代表のタン・チェンホー監督を解任する予定はないようです。
 前回2018年大会では準優勝したマレーシア代表ですが、現在シンガポールで開催中の2020年大会ではグループステージで2勝2敗でインドネシア、ベトナムに次ぐグループ3位となり準決勝進出を逃しており、前回大会に引き続きマレーシア代表の指揮を取ったタン監督の責任を指摘する声も出ており、FAMは大会敗退後、公式サイトで早期敗退の責任はタン監督ではなくFAMにあると表明するほどでした。それでもタン監督解任論は収まらず、このブログでも取り上げたようにKLシティFCのボジャン・ホダック監督の名前などもその後任として上がっています。
 そんな中、FAMのサイフディン・アブ・バカル事務局長は英字紙ニューストレイトタイムズの取材に対してタン監督の解任についてはFAM内で議論すらされていないと述べています。
 「あらゆる対外試合の後で代表チームのパフォーマンスに対する評価を行うことは、代表チーム運営委員会の標準作業手順であり、代表監督と代表チームマネージャからの報告を参考にしながら、代表チーム運営委員会の委員長でFAMのハミディン・アミン会長のもと話し合いを行い、その結果をFAM理事会で発表する手順は従来通りである。スズキカップで起こった問題点などを洗い出し、その反省点を6月のAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選に生かしたい。」と述べたサイフディン事務局長は、2022年末までの契約となっているタン監督を契約途中で解任することは考えていない話しています。
 サイフディン事務局長はこの時期に新監督を採用しても来年6月に迫ったアジアカップ予選までにチームをゼロから作る十分な時間がないこと、さらに新監督が必ずしも望むような結果をもたらすとは限らないことなどを挙げて、今は監督交代について議論する時期ではないとも述べ、タン監督の元でアジアカップ予選を戦うための環境を整えることが優先であるとしています。

🔰代表FWシャフィクが古巣のクダへ期限付き移籍

 Mリーグ1部スーパーリーグで2季連続で2位となったクダ・ダルル・アマンFCは、スズキカップ2020にも出場したマレーシア代表FWのシャフィク・アフマドがJDTから1年間の期限付きで移籍することをクラブ公式Facebookで発表しています。
 ペナン州出身で26歳のシャフィク選手ですが、2013年の高校卒業後に18歳でクダFA(現クダ・ダルル・アマンFC)のU21チームに入るとそこで頭角を表し、20歳のときにトップチームデビューを果たしています。2018年にJDTへ移籍するとチームのタイトル獲得にも貢献した他、U23代表、そしてA代表でもプレーするようになり、タン・チェンホー監督の元では主力選手となり、新型コロナ禍前に行われた2019年のW杯予選ではアラブ首長国連邦戦など2試合でゴールを決めるなど活躍していました。
 5季ぶりのクダ復帰となるシャフィク選手ですが、今季は選手層が厚いJDTではほとんど出場機会がなく、試合出場時間の不足から代表戦でもかつてほどの輝きを見せておらず、出場機会を求めて今回の移籍になりました。
 クダ・ダルル・アマンFCにとっても今季のチーム得点王FWクパー・シャーマンと同2位のチェチェ・キプレが揃って同じスーパーリーグへ移籍したことでストライカーのポジションが空席なため、この移籍は文字通り両者がウィンウィンとなる移籍となりました。
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 ちなみにこの記事の見出しに使われているのはご存知の初心者マーク(若葉マーク)です。マレーシアではこのようなマークは使わないのですが、クダ・ダルル・アマンFCのチームカラーが緑色と黄色(チームの相性もマレーシア語で緑色と黄色を表すHijau Kuningです)なことから、なぜかこのアイコンがクラブ公式サイトで使われています。

FIFAによる資格停止処分を受けたプルリス州サッカー協会が活動再開

 今季2021年シーズンのMリーグは1部スーパーリーグに12チーム、2部プレミアリーグには11チームが所属していましたが、この中にはマレー半島北端にあるプルリス州を本拠地とするクラブが一つもありません。マレーシアには13の州がありますが、Mリーグ1部と2部にクラブがないのはプルリス州だけです。
 プルリス州のサッカー活動の中心となるプルリス州サッカー協会は、かつてプルリスFA(名前がややこしいですがこちらはクラブの名称です)というクラブを運営していました。プルリスFAは2005年にはスーパーリーグで優勝し、2004年と2006年にはマレーシアカップも制覇したクラブでしたが、2010年に入ると2部プレミアリーグと当時の3部リーグに当たるFAMリーグの間で昇格と降格を繰り返すクラブになっていました。
 そんな中、2018年にプルリス州FAの会長に就任したアフマド・アミザル・シャイフィット氏は、高額の給料で元代表選手ら国内の有力選手、さらにはシンガポールや日本出身の選手を文字通りかき集めてプルリスFAの強化を図りましたが、2019年シーズン開幕前には未払い給料問題が発覚し、その後は給料を支払う財源がなく、未払い給料返済の目処が全く立たなかったことから、プルリスFAを運営していたプルリス州サッカー協会はFIFAにより2年間の活動停止処分を受けました。FAMもプルリスFAをMリーグから除名し、プルリス州サッカー協会のアフマド・アミザルプルリス会長には国内のあらゆるサッカー活動に関わる資格を生涯停止する処分を言い渡しました。
 そんな「黒歴史」を持つプルリス州サッカー協会ですが、現在の会長を務めるザムリ・イブラヒム会長は、プルリス・ユナイテッドFCが来季2年ぶりに開催されるMリーグ3部に当たるM3リーグへの参加を認められたと、マレーシアの通信社ブルナマの取材に応えています。
 M3リーグ以下を運営するアマチュアフットボールリーグAFLから2022年シーズンのリーグ参加を認められたと話すアフマド会長は、マレーシアサッカー協会FAMが運営するU21リーグのプレジデントカップ、U19のユースカップへの参加も同時に認められたことも明らかにしています。
 アフマド会長はプルリス・ユナイテッドFCがM3リーグへの参加がプルリス州のサッカー復興に役立つと信じていると話し、プルリス州スポーツ評議会と協力して州内リーグを来年2021年から再開し、プレジデントカップとユースカップチームでプレーする選手を21歳以下の選手を選抜したいとも述べています。


12月21日のニュース:FAMはスズキカップ早期敗退の責任を認める、トレンガヌFCのナフジ監督は続投が決定

 マレーシアは先週末の記録的な大雨によりクアラルンプールやスランゴール州の首都圏やその周辺地域では2万人とも3万人とも言われる被災者を出しています。1ヶ月分に当たる降水量がわずか3日で降る豪雨による被害の影響は大きく、サッカーどころではないですが、被災者の皆さんが速やかに自宅へ戻れることを祈りつつ今日のニュースです。

FAMはスズキカップ早期敗退の責任を認める

 東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でマレーシア代表がグループステージ敗退となったことを受け、マレーシアサッカー協会FAMはこの敗退の全責任を負うと公式サイトで発表しています。
 当初の目標であった準決勝進出を逃したマレーシア代表について、FAMのハミディン・アミン会長は現場からの報告を受け取り次第、FAM内の代表チーム運営委員会でスズキカップでのチームのパフォーマンス内容や敗因についての詳細な分析を行うとしています。
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 今年6月のワールドカップ予選敗退の際にはこのような発表はなかったので、今回の敗戦のショックはファンだけでなく、協会にとっても大きかったようです。敗因分析の結果が公表されるかどうかは分かりませんが、選手選考の段階から問題があったとされる今回の代表チームですので、運営面や選手選考などについて見直しが行われるでしょうが、選手のパフォーマンス自体も今回のスズキカップ2020で準決勝に進出した4チームには遠く及ばず、運営と現場の双方が改善されなければ、東南アジア上4強との差は縮まりそうにありません。
 なお多くのメディアでは既にスズキカップ2020のグループステージ敗退の原因解明が始まっています。このブログでも何度か取り上げた、30名登録可能にも関わらず24名しか登録しなかった「24名登録問題」に加え、国内カップ戦の決勝が11月30日に開催されたわずか3日後の12月3日に代表がシンガポール入りとなった「準備期間の不足」、マレーシアサッカー協会FAM主導で行われた帰化選手プログラムの3選手中、今回の代表招集は1名でしかも大会ではスタメンは1回だけの「帰化選手プログラムの失敗」などがその主な原因に上がる一方で、タン代表監督の選手招集を妨げる外部圧力の「見えない手」(これについてはまた機会を作って取り上げる予定です)まで取り沙汰されています。
 マレーシアのタン監督以外は全員が外国籍監督だった今回のスズキカップ2020で、グループステージでは同じB組から準決勝へ進んだベトナム、インドネシアが韓国人監督であることや、やはり準決勝へ進んだ開催国シンガポールが吉田達磨監督であることから、アジア人監督待望論なども出ているようで、来年6月に予定されているAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選はタン監督以外が監督をしている可能性もありそうです。

トレンガヌFCのナフジ監督は続投が決定

 今季のMリーグ1部スーパーリーグで4位に終わったトレンガヌFCは、今季指揮を取ったナフジ・ザイン監督が来季も続投することを発表しています。
 トレンガヌFCを運営するTFC社はトレンガヌ州首相でもあるアフマド・サムスリ・モクタル トレンガヌ州サッカー協会会長を議長として12月6日に理事会を開催し、続投を求めるオファーをナフジ監督に出していましたが、マレーシア語紙ハリアンメトロはこのオファーをナフジ監督が受けたことを報じています。
 スーパーリーグでは4位、そしてリーグ戦後のマレーシアカップでは準決勝でJDTに敗れてベスト4止まりだった今季のトレンガヌFCは、TFC社が今季開幕前に設定した重要業績評価指数KPIをナフジ監督が達成できなかったこともあり、シーズン終了後、直ちに続投オファーが出されませんでした。またTFC社から続投オファーが出た後もナフジ監督が受諾した報道がなかなか出なかったことから、来季は他のクラブでの監督就任も噂されるなど、その去就に注目が集まっていましたが、TFC社のサブリ・アバスCEOはナフジ監督から監督受諾の連絡を受け取ったことを明らかにしています。
 

12月19日のニュース:スズキカップ2020-今日のインドネシア戦を前に隔離終了のアキヤ・ラシドらが出場可能に、来季ペナンでプレーのエンドリックをJDTが23年シーズンに獲得表明

スズキカップ2020-今日のインドネシア戦を前に隔離終了のアキヤ・ラシドらが出場可能に

 昨日のグループステージA組最終節ではタイが追い縋るシンガポールを振り切って2-0で勝利し、1位タイ、2位シンガポールの両チームが準決勝進出を決めています。本日行われるB組の最終節では、現在、グループ3位のマレーシアは首位インドネシアと、2位のベトナムは4位のカンボジアと対戦します。ベトナムの勝利はほぼ確実なので、マレーシアが準決勝に出場するためにはインドネシア戦の勝利あるのみで、この試合に勝利することができればB組の2位として準決勝ではA組1位のタイと対戦します。
 そのマレーシア代表ですが、所属クラブの試合日程の都合から木曜日にシンガポール入りしチームに合流したディオン・クールず(デンマーク1部FCミッティラン)に加え、新型コロナ検査で陽性となっていたアキヤ・ラシド(JDT)が10日間の隔離を終えてチームに復帰した他、初戦のカンボジア戦で腹筋を痛めていたジュニオール・エルドストル(タイ1部チョンブリーFC)も練習に参加していると、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。
 とは言えアイディル・ザフアン、シャールル・サアド(いずれもJDT)の両センターバックはともにハムストリングを痛めてインドネシア戦は出場が絶望視されており、ディフェンダー陣にはやや不安があるマレーシアに対し、この試合は引き分けでも準決勝進出となるインドネシアは先日のベトナム戦と同様に全員が身体を張る守備的な布陣が予想されます。
 インドネシア戦に先立って行われたオンラインの記者会見では、その守備をこじ開けない限り勝利がないマレーシアのタン・チェンホー代表監督は初戦のラオス戦でMOMに選ばれたアキヤ・ラシドがチームに戻ってくることで、ベトナム戦無得点に終わったフォワード陣について、ベトナム戦でセンターフォワードとして起用されたルクマン・ハキム(ベルギー1部KVコルトレイク)に代わり、帰化選手のギリェルメ・デ・パウラ(JDT)がカンボジア戦以来の先発に復帰する可能性やここまでは先発出場のないシャーレル・フィクリ(スランゴールFC)の起用などもほのめかしていたということです。
 なおインドネシアとマレーシアの対戦成績は直近の8試合では4勝4敗ですが、同組となったFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選ではホームとアウェイで2連勝しています。

来季ペナンでプレーのエンドリックをJDTが23年シーズンに獲得表明

 今季のマレーシアカップでは大方の下馬評に反しKLシティFCに敗れて連覇を逃したJDTは、クラブ経営から引退をほのめかしていたオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が俄然、やる気を見せて来季に向けて選手の大幅な入れ替えを含めた積極的な補強を行うことを表明しています。トップチームではクラブ歴代最多ゴールを記録しているゴンザロ・カブレラが退団し、代表でもプレーするシャフィク・アフマドを期限付き移籍で放出、またMリーグ2部プレミアリーグでプレーするJDT IIでも外国籍選手との契約を更新せず、複数のマレーシア人選手を他のクラブへ期限付き移籍させるなど、新たな選手を受け入れる準備を着々と進めています。
 そんな中で、既に来季の契約をペナンFCと結んでいるエンドリックを2023年に帰化選手として獲得する予定であることがJDTのクラブ公式Facebookで発表され、ペナンFCのサポーターを中心に波紋を投げかけています。
 Mリーグ1部スーパーリーグで8連覇を果たしたJDTはオーナーが皇族ということもあり、ある意味、国内リーグではやり放題、もとい非常に影響力を持つチームですが、さすがにこの発表はエンドリック選手と契約しているペナンFCに対して敬意を欠くあるいは職業倫理に反するという声が上がっています。(それ以上に選手があるクラブと契約中に他のクラブが獲得に動けば間違いなくタンパリング(tampering、イギリス英語ではtapping up)ですが、マレーシアのメディアではこれについて言及しているものはありません。)、
 ソーシャルメディアではこのJDTの行為に対して、エンドリック選手はもともとJDTの選手であり、ペナンFCには期限付き移籍しているだけなので何の問題もない、といった投稿があると、サッカー専門サイトのラ・ボラが報じていますが、それが真実であれば隠す必要は全くなく、単に期限付き移籍の期間が延長されたとJDTあるいはペナンFCが発表するはずですので、これは事実ではなさそうです。
 現在26歳のエンドリック選手は、2018年にマレーシア政府系企業である連邦土地整理統合局(通称フェルクラ)が運営するMリーグ2部プレミアリーグのフェルクラFC(現在は既に解散)に加入し、翌2019年にはMリーグ1部スーパーリーグのスランゴールFA(当時、現スランゴールFC)へ移籍しています。そのスランゴールFAではケガでたびたび試合を欠場するもその原因は医療スタッフにも解明できずこのシーズン限りで退団し、2020年はプレミアリーグのペナンFCに移籍するとここでは新型コロナの影響で11試合に短縮されたリーグ戦では10試合に出場し8ゴールを挙げなど、クラブのプレミアリーグ優勝に貢献してチームを1部に昇格させる原動力となりました。今季もリーグ戦とカップ戦を合わせた出場試合数ではチーム最多タイの23試合に出場し、昇格初年度に3位となったクラブの躍進を支えました。