2月5日のニュース:AFFU22選手権代表候補メンバー発表

AFFU22選手権代表候補メンバー発表
アセアンサッカー連盟AFFのU22選手権は、2月17日から26日までカンボジアのプノンペンで開催されますが、その代表候補選手26名が発表になりました。1月中旬に行ったバンコク遠征のメンバー23名の内、15名が残り、新たに加わった11名ともにブキット・ジャリルのナショナルトレーニングセンターで2月10日から5日間の予定で行われる合宿に参加し、そこで代表となる23名が決定されます。U22代表のオン・キムスイ監督は、このAFFU22選手権を3月にマレーシアの首都クアラルンプールで開催されるアジアサッカー連盟AFCU23選手権予選兼2020年東京オリンピック予選に出場するU23代表選手選考の場とするとしています。なお、この年代の選手の内、2018年末のAFF選手権スズキカップで準優勝したフル代表でもプレーしたアクヤ・ラシド、サファウィ・ラシド、シャマー・クティ・アッバ(以上JDT)らは、このAFFU22選手権では招集せず、AFCU23選手権予選から参加させる予定であることを既に発表しています。

AFFU22選手権代表候補メンバー(年齢)
ムハマド・ダニアル・アミール・ノーヒシャムMF(22)
ムハマド・ザーリル・アズリ・ザブリMF(20)
*アーマド・タスニム・フィトリ・モハド・ナシルDF(20)
ムハマド・アズリ・アブ・ガニGK(20)以上フェルダ・ユナイテッド
ニック・アキフ・シャヒラン・ニック・マットMF(20)
ムハマド・ダニアル・ハキム・ドラマンMF(21)
ムハマド・シャールル・ニザム・ロス・ハスニDF(21)
ニック・アズリ・ニック・アリアスMF(22)以上ケランタンFA
ダミエン・リム・チェンカイGK(22)
ムハマド・ジャフリ・ムハマド・フィルダウス・チュウFW(22)
*アリフ・アル=ラシド・アリフィンDF(21)以上PKNS FC
コジレスワラン・ラジMF(21)
*モハド・ファイサル・アブドル・ハリムMF(21)
*R・ディネシュDF(21)以上パハンFA
エヴァン・ウェンスレイ・ウェンセスラウスDF(21)
*アリウスディウス・ジャイスMF(21)以上サバFA
*ムハマド・ハジック・ナズリGK(21)
*ドミニク・タン・ジュンジンDF(22)以上JDT
モハマド・ハリズ・カマルディンDF(22)JDT II
*ムハマド・シャミ・サファリDF(21)スランゴールFA
ムハマド・アミルル・アシュラフ・アリフィンDF(21)UITM FC
モハド・ファズルル・ダネル・モハド・ニザムMF(21)クダFA
ムハマド・ナジルル・アフィフ・イブラヒムDF(22)ペラTBG
*ナビル・ハキム・ボカリDF(20)クアラルンプールFA
*ムハマド・イザン・シャミ・ムスタパFW(22)トレンガヌFC
*ムハマド・ハディ・フェイヤッド・アブドル・ラザクFW(19)ファジアーノ岡山
*は1月のバンコク遠征後に新たに招集された選手

今回新たに招集された11名の内、ムハマド・ハジック・ナズリ、
ドミニク・タン・ジュンジン(以上JDT)、モハド・ファイサル・アブドル・ハリム(パハンFA)、ムハマド・シャミ・サファリ(スランゴールFA)、ムハマド・ハディ・フェイヤッド・アブドル・ラザク(ファジアーノ岡山)の5選手は、グループステージで韓国代表を破りベスト16で日本代表に敗れた2018年アジア競技大会(インドネシア)の出場メンバーで、アリフ・アル=ラシド・アリフィン(PKNS FC)、アリウスディウス・ジャイス(サバFA)、ムハマド・イザン・シャミ・ムスタパ(トレンガヌFC)の3選手は前回1月の代表候補合宿に招集されましたが、ケガのためバンコク遠征には参加しませんでした。

U22代表は2月15日にプノンペンへ出発します。予選グループBのマレーシアは、カンボジア(2月18日)、インドネシア(2月20日)、ミャンマー(2月22日)とそれぞれ対戦し、ここから上位2チームが2月24日に予定されている準決勝に進出します。決勝は2月26日、会場はすべてプノンペンの国立競技場となっています。

今回が2度目の開催となるAFFU22選手権は、2005年にタイのバンコクで第1回大会が開催され、開催国タイがシンガポールを3-0で破って優勝しています。その後2011年に予定されていたインドネシアでの第2回大会は中止となっており、今回14年ぶりに第2回大会が開催されます。今大会はAFF加盟国では、ブルネイ、シンガポール、ラオスが出場しないため、予選A組がベトナムタイフィリピン、東ティモール、予選B組がカンボジア、マレーシア、インドネシア、ミャンマーとなっています。

マレーシア以外のチームについては、既にインドネシアU22代表が、フル代表でキャップ数5を獲得している20歳のサディル・ラムダニ(パハンFA)を招集しないことを発表しています。ラムダニ選手は2019年のスーパーリーグ開幕戦で今シーズン得点第1号となるゴールを決めていますが、この様に所属チームで主力選手となっている場合、AFFU22選手権は国際マッチデーではない時期の開催なので、チームが選手の招集に応じないケースもあります。各チームともチーム編成に苦労していることでしょう。

FAMのホームページより

1月23日のニュース:JDT選手にロレックスの贈り物、パハンは優勝へ向けて自信あり、リー・タックの代表入りへの道筋

JDTの選手とスタッフがロレックスの時計の贈り物を受け取りました。
現在、開幕前の最終調整のためバンコクでプレシーズンマッチを行っているJDTの選手とスタッフに対して、チームオーナーのトゥンク・イスマイル殿下よりロレックスの時計が贈られました。チームに対する貢献に対する感謝の意を表すものとして贈られたそうですが、オーナーにこんなことをされたら選手たちはこれまで以上に頑張るだろうぁ。マレーシアの選手の多くがJDTでプレーしたいと思うのも無理はありませんね。

この写真を見る限りでは、自分の好きなモデルを選ぶことができたのか!?
左からキコ・インサ、シャフィク・アーマド、ファドリ・シャス、コービン=オン、アイディル・ザフアン.の各選手とルシアーノ・フィゲロア監督。皆さん満足そうですね。

パハンはリーグ優勝へ向けて自信あり
今シーズンのJDTの連覇を止めるチームがあるすれば、それは昨シーズン4位に終わったパハンFAがその可能性が最も高いだろうと私は思っています。そのパハンFAのシンガポール人MFサフアン・バハルディンも同じ意見を現地メディアに語っています。(元記事はマレーシア語です)マレーシアが準優勝した2018年スズキカップで復活を遂げたベテランFWのノーシャルル・イドラやマレーシア人選手登録となったガンビア出身MFのモハマドゥ・スマレー、マレーシア代表でもプレーするオーストラリア生まれDFのマシュー・デイビーズといったこれまでのメンバーに加えて、ナイジェリア人FWのディクソン・ヌワカエメが2015年シーズン以来の復帰を果たしました。2014年のマレーシアカップ、FAカップを獲得した強いパハンFAを知っているヌワカエメ選手の復帰は、2018年シーズンに優勝したJDTに12点も離された総得点リーグ5位タイ(12チーム中)という攻撃力不足の解消に寄与することが期待されています。2018年シーズンはFAカップでは優勝したパハンFA、2019年リーグ戦ではどんなプレーを見せてくれるでしょうか。

リー・タックのマレーシア代表入りの条件
イギリス生まれでトレンガヌFCのFWアンドリュー・リー・タック選手のマレーシア代表入りについて、マレーシアサッカー協会FAMのスチュワート・ラマリンガム事務局長がかなり具体的な発言をしています。2018年シーズンのFAMフットボールアウォード表彰で最も人気のある選手Most Popular Playerに選ばれたリー・タック選手は母親がマレーシア出身の華人であるため、マレーシア代表入りについては本人もその気持があることを認める発言をしており、あとは時間の問題と考えられていました。これについてラマリンガム事務局長は、ザンビア出身のモハマドゥ・スマレーの国籍変更をパハンFAがサポートした例を挙げ、FAM自体がリー・タックのための国籍変更申請を行うことはなく、リー・タック本人がそのための行動を取る必要があるとしています。
 両親や祖父母にマレーシア人を持つ外国生まれの選手がマレーシア国籍を取得した後、代表チームに加わるケースはここ数年増加しており、ちょうど今日の記事でも取り上げたマシュー・デイビーズ(パハンFA)、キコとナチョのインサ兄弟やラヴェル・コービン=オン(いずれもJDT)の他、ブレンダン・ガン(ペラTBG)などがいます。

トレンガヌFCのリー・タック選手(トレンガヌFCのFacebookより)

マレーシア代表の2018年 (5) フル代表 Part3

2018年を締めくくるスズキカップ の決勝は、大会3連覇を目指したタイを破ったマレーシアと、もう一方の準決勝でフィリピンをホーム、アウェイともに2-1で破ったベトナムの対戦となりました。マレーシアは2010年以来の、ベトナムは2008年以来のそれぞれ2回目の優勝を目指します。決勝第1戦はマレーシアのホーム、ブキ・ジャリル国立競技場で開催されました。公式発表で8万8433人の観衆が見守る中、マレーシアは22分にグエン・フイ・フンのゴールで先制を許し、25分にはファム・ドゥック・フイにゴールを決められリードを広げられます。しかしマレーシアも36分にシャマル・クティ・アバが倒されて得たフリーキックをシャルル・サアドが頭で合わせてまず1点、60分にはサファウィ・ラシドが自ら獲得したフリーキックを直接、ゴールに叩き込み同点とします。ディフェンダーのアミル・アザン・アズマンに代えて、フォワードのシャフィック・アーマドを投入し、より攻撃重視のフォーメーションに切り替えた直後のことでした。その後も一進一退を繰り返し、この試合は2-2の引き分けとなりました。

続いてハノイのミーディン国立競技場で行われた決勝第2戦は、試合開始直後の6分にグエン・クアン・ハイの左からのクロスをグエン・アイン・ドゥックがボレーでシュート、一見オフサイドに見えなくもなかったのですが、ベトナムが1点を先制しました。このままマレーシアがゴールを割ることができず試合終了。0-1でベトナムが2度めのスズキカップ制覇を果たしました。

次のスズキカップまではまた2年待たなければいけませんが、2018年はベテランのノーシャルル・イドラン・タラハ の復活があった一方で、若手ではU19、U23、フル代表と全ての代表チームげゴールを挙げたアクヤ・ラシドや、U23から昇格しスズキカップのノックアウトステージでそれぞれタイとベトナムを相手にゴールを挙げたシャミ・サファリとサファウィ・ラシド(彼はアジア競技大会の韓国戦でも2得点を挙げています)などが活躍した年となりました。スズキカップでの決勝敗退は残念でしが、2019年に向けて、フル代表には今後の期待が持てる1年の終わり方であったのは間違いありません。

マレーシア代表 2018年戦績(注記がないものは国際親善試合、@はアウェイ)
2018.03.22 2-2 モンゴル 得点者:O.G, アクヤ・ラシド
2018.03.27 1-2 @レバノン(アジアカップ3次予選) 得点者:シャフィック・アーマド
2018.04.01 7-0 ブータン 得点者:ワン・ザック・ハイカル, ザクアン・アドハ 4, イフラン・ザカリア, シャフィック・アーマド
2018.07.05 1-0 フィジー 得点者:シャフィック・アーマド
2018.09.07 2-0 @台湾 得点者:なし
2018.10.12 3-1 スリランカ 得点者:ノーシャルル・イドラン, アダム・ノー・アズリン, O.G, モハマド・スマレ
2018.10.16 1-0 キルギスタン 得点者:なし
2018.11.03 3-0 モルジブ 得点者:ザクアン・アドハ, サファウィ・ラシド, Mohamadou Sumareh

<AFF選手権 Suzuki Cup>
グループステージ
2018.11.08 @カンボジア 1-0 得点者:ノーシャルル・イドラン
2018.11.16 @ベトナム 0-2 得点者:なし
2018.11.12 ラオス 3-1 得点者:ザクアン・アドハ , ノーシャルル・イドラン 22018.11.24 ミャンマー 3-0 得点者:ノーシャルル・イドラン, ザクアン・アドハ2
ノックアウトステージ(準決勝)
2018.12.01 タイ 0-0 得点者:なし
2018.12.05 @タイ 2-2 得点者:シャミ・サファリ,ノーシャルル・イドラン
決勝
2018.12.11 ベトナム 2-2 得点者:シャミ・サファリ, サファウィ・ラシド
2018.12.15 @ベトナム 0-1 得点者:なし

決勝のベトナム戦のモハマド・スマレ(FAMホームページより)

ベトナムとの決勝でのキャプテン ザクアン・アドハ(FAMホームページより)

準決勝のタイ戦でボールを奪いに行くノーシャルル・イドラン(FAMホームページより)

マレーシア代表の2018年 (5) フル代表 Part2

スズキカップの準決勝へは、グループAからは1位のベトナム(FIFAランキング100位)と2位のマレーシア(同167位)が、グループBから1位のタイ(同118位)と2位のフィリピン(116位)が進出しました。準決勝からはホームアンドアウェイ方式となりますが、準決勝第1試合はマレーシアの首都クアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場にタイを迎えて行われました。過去47年間ホームではタイには負けたことがないマレーシアでしたが、今回もその記録を更新したものの、ホームでのスコアレスドローという結果でした。数少ない得点の機会を活かすことができず、タイの守備陣に守り切られたという印象でした。その4日後、バンコクのラジャマンガラ国立競技場で行われた第2戦は、勝つか1点以上取って引き分ければアウェイゴールルールでマレーシアの決勝進出が決まります。

試合は21分にティティパン・プアンチャンのヘディングがイフラン・ザカリアに当たりオウンゴールでタイが先制しスタンドが盛り上がりましたが、28分には右サイドを上がったシャミ・サファリがペナルティーエリアの外から放ったスーパーシュートで同点に追いつきます。後半に入ると、63分にフリーキックのこぼれ球をパンサ・ヘーミボーンが頭で叩き込み、タイが再びリードを奪います。これに対してマレーシアは今回のスズキカップで既に3得点を挙げているノーシャルル・イドラン・タラハがゴールを背にしてボールを受けたものの、そこから反転してシュートを放ち71分に同点に追いつきます。そしてこのまま逃げ切ればアウェイゴールルールでマレーシアの決勝進出が決まるという中、90分を過ぎアディショナルタイムに入ったところで同点ゴールを決めたシャミ・サファリが自陣ペナルティーエリアでハンドの反則を犯してしまいます。(しかもシャミ・サファリは2枚目のイエローで退場。)PKを蹴るのは今大会8得点を挙げ得点王争いを独走するアディサク・クライソーン。マレーシアの決勝進出の望みも万事休すか、という場面でしたが、ここでなんとゴールバーの上を超えるミスキック!その後は10人のマレーシアが守りきって2-2の引き分けで試合終了。マレーシアの2014年以来の決勝進出が決まりました。

PKを失敗したアディサク・クライソーン選手(タイ)(タイの新聞The Nationより)

マレーシア代表の2018年 (4) フル代表 Part1

2013年と2014年は154位、2015年は170位、2016年161位、2017年は174位、そして昨年2018年は167位。これは過去5年間のマレーシア代表のFIFAランキングの推移です。この低迷状態を打破するため、満を持してポルトガル人のネロ・ヴィンガダが2017年5月に監督に就任しましたが、就任直後7試合で6敗1引き分けの成績で辞任し、彼のもとでアシスタントコーチを務めていたタン・チェンホーが同年12月7日付で監督に昇格したのは自然な流れでした。タン新監督の元、フル代表が2018年を迎えました。

タン監督就任後の初戦は2018年3月22日のモンゴル戦でした。スペイン生まれながらマレーシア人の祖母を持つナチョ・インサ、イギリス生まれカナダ育ちながらマレーシア人の母親を持つラヴェル・コービン=オンなどが初代表に選出されましたが、結果は2−2の引き分けでした。そしてこの試合後、代表チームに選出された29名の内、14名が1部リーグのJDTからの選手であったこと、さらにその内の9名が出場したことで「特定チームに偏重した選手選考」という批判をメディアやファンから浴びることになりました。まぁ一つのチームからレギュラーだけでなく控えの選手まで招集してしまえば、こんな批判が出るのはやむを得ませんが、言い換えれば、それだけJDTの選手層が厚く、充実しているということでもあります。

そのモンゴル戦後、タン監督は、今度はJDTから招集した14選手全員を代表チームから外し、他のチームの選手達と入れ替えるというこれまで驚く行動に出ました。記者会見で理由を問われたタン監督は「ファンの求めることをしたまで。」と答えました。モンゴル戦から5日後に行われたAFC Asian Cupの最終予選レバノン戦は、すでに予選敗退が決まっていたこともあり、モチベーションが上がらなかったのか敵地で1−2の敗戦でした。

て迎えたエイプリルフールならぬ4月1日のブータン戦はレバノン戦とほぼ同じメンバーで臨み、それまでのうっぷんを晴らすかのような7−0のスコアとともに、フル代表は2016年11月のカンボジア戦以来の勝利を挙げ、2016年11月から続いていたインターナショナルマッチ白星なしという状況を脱することができました。ブータン代表の当時のFIFAランキングはFIFAに加盟する211の国と地域中184位であっても良いんです。とにかく勝って良かった!

その後はフィジー、台湾、カンボジア、スリランカ、キルギスタン、モルジブとの試合で勝ち負けを繰り返しながら、今年最大の目標であったAFF スズキカップへの調整を進めました。グループAでカンボジアベトナムラオスミャンマーと同組となったグループステージ初戦は、本田圭佑GM率いるカンボジアが相手です。試合は31分にキャプテンザクアン・アドハのクロスにベテランのノーシャルル・イドラン・タラハが頭で合わせて先制し、そのまま1-0で逃げ切りました。攻撃陣の精度が高ければもっと余裕のある試合展開となったでしょうが、とにかくアウェイの試合で貴重な1勝を挙げました。

その後はホームでラオスに3-1で勝利したものの、アウェイのベトナムには0-2で敗れてしまいました。グループステージ突破の懸かった最終戦は収容人数87000人を超えるブキ・ジャリル国立競技場を満員にしたホームサポーターの前で行われ、3-0でミャンマーに快勝し、ノックアウトステージ(ベスト4)へ進みました。グループステージの殊勲者は、完封されたベトナム戦以外の全ての試合で得点を挙げたフォワードのノーシャルル・イドラン・タラハでしょう。マット・ヨー(Mat Yo)の愛称で呼ばれる32歳のベテランは2010年、2012年、2014年に続いてのスズキカップ出場でした。2014年のスズキカップ準決勝ベトナム戦でゴールを決めたものの、その後は低調で、2017年は一度も代表に招集されませんでしたが、このスズキカップで復活を遂げました。

スズキカップに参加するマレーシア代表メンバー(FAMホームページより)

マレーシア代表の2018年 (3) U16代表

2014年に立ち上げられたNational Football Development Plan(通称NFDP)は、マレーシアの省庁の一つである青年スポーツ省所轄のサッカー選手育成のための国家プログラム。日本の文科省に当たる教育省とFAMマレーシアサッカー協会も協力する大プロジェクトです。そしてその第一期生となる選手たちが2018年のU16代表です。このU16代表は、7月の終わりから8月にかけてインドネシアのスラバヤで開催されるAFF(アセアンサッカー連盟)U16選手権で弾みをつけ、、9月から10月にかけては自国開催となるAFC(アジアサッカー連盟)U16選手権で好成績を収めて、FIFA U17ワールドカップの出場権を獲得することを目標としていました。2018年の年始には当時のカイリー・ジャマルディン青年スポーツ相が、このU16代表のKPI(目標達成度の評価指標)がFIFA U17ワールドカップの出場資格獲得であるとも発言するなど、マレーシアサッカー界の期待が高まりました。

しかし、U16代表はいきなりAFF U16選手権でつまづきます。ホスト国のインドネシア相手にに準決勝敗退を喫してしまったのです。しかも、勝った方が準決勝進出の懸かったラオス戦すら、相手のオウンゴールのおかげで勝利した試合でした。アセアンのチーム相手に苦しい戦いを繰り広げたU16代表は、続く9月のAFC U16選手権に臨みました。

バイエルン・ミュンヘンのジュニアチームで12年間アシスタントマネージャーを務めたマレーシア人のリム・ティオンキムを監督とするU19代表は、開幕戦ではタジキスタンに6-2と大勝しましたが、アセアン域内のライバルであるタイに2−4と敗れ、勝てば自力でノックアウトステージ進出のチャンスが残っていた最終戦でも日本に0−2と敗れ、結局、グループステージ最下位で敗退しました。また皮肉なことに、この大会ではマレーシアとグループステージで同組だったタジキスタンと日本が決勝で対戦し、1−0で日本が優勝しています。大会後、リム・ティオンキム監督はマレーシアサッカー協会によってU19監督の職を解任されました

しかし、話はここで終わりません。ご存知のかたもいらっしゃるかと思いますが、2018年はマレーシアにとって激動の年でした。1957年のイギリスからの独立以来、政権を守ってきた与党が5月9日の下院議員選挙で大敗を喫し、新しい政権が樹立されたのです。これは多くのメディアの予想も外れる歴史的な出来事でした。政権交代の結果、当然のことながら、首相を始め各省庁の大臣も変わったのですが、新たに就任したサイド・サディック青年スポーツ相は、U16代表が日本に敗れた試合の後に記者会見を開き、リム・ティオンキム元監督の月給が免税の17万5000マレーシアリンギ(現在の為替レートでは450万円強)であることを公表したのです。リム・ティオンキム元監督は、政府が毎年5億円を投じることになっている国家プロジェクトであるNFDPの中心となるサッカーアカデミーの責任者も兼ねていますので、この給料が果たして高いのか安いのかはわかりませんが、青年スポーツ省が雇用主とは言え、担当大臣としてはやや感情的な行動であった印象は否めません。この時期は前政権の行った事業全てを否定するような風潮が感じられる時期でもありましたので、前政権の大臣が任命したリム・ティオンキム元監督を非難するは大臣のスタンドプレーだったようにも思われます。しかもサイド・サディック青年スポーツ相は、2020年まで残っているリム・ティオンキム元監督のNFDPアカデミー責任者としての契約の見直しについても言及しているので、この話題はこれで終了しそうもありません。

追記:ちなみにネット上で探したところ、参考までにJリーグ1部の監督の平均給与は5322万円でした。

U16マレーシア代表 2018年戦績
<AFF U16選手権>
グループステージ
2018.07.30 1-2 タイ   得点者:ムハマド・ヌル・アズラン・モハマド・ユソフ
2018.08.03 6-1 ブルネイ   得点者:ムハマド・アスマン・アスルル・スルカナ2, ムハマド・ファミ・ダニエル・ムハマド・ザイム, モハマド・イクワン・モハマド・ファイゾ, ハリス・ナイム・ジャイネ
2018.08.05 4-0 シンガポール 得点者:アリフ・ダニエル・アブドゥル・アジズ, ハリス・ナイム・ジャイネ, ムハマド・ファミ・ダニエル・ムハマド・ザイム, O.G
2018.08.07 1-0 ラオス    得点者:O.G
ノックアウトステージ(準決勝)
2018.08.09 0-1 インドネシア 得点者:なし

<AFC U16選手権>
グループステージ
2018.09.20 2-6 タジキスタン 得点者:ルクマン・ハキム 4, ナジムディン・アクマル, アリフ・ムタリブ
2018.09.23 2-4 タイ     得点者:ルクマン・ハキム, フィルダウス・カイロニザム
2018.09.27 0-2 日本     得点者:なし

AFC U16選手権に参加したマレーシアU16代表(FAMホームページより)

マレーシア代表の2018年 (2) U19代表

U19代表の2018年のハイライトは、7月にインドネシアで開催されたAFF(Asean Football FederationU19選手権で初優勝を果たしたことでしょう。AFFに加盟する全12カ国の内、オーストラリアを除く11カ国が参加したこの大会では、マレーシアはミャンマー、カンボジア、東ティモール、ブルネイと同組になりました。グループステージでは、東ティモールに1-1と引き分けたものの、残る試合はカンボジア2-0ブルネイ2-0ミャンマー1-0と全て勝利を収めたマレーシアはグループBの1位でノックアウトステージ(ベスト4)へ進みました。開催国インドネシアとの対戦になった準決勝はフルタイム1-1の後、PK戦に勝利し、グループA1位のタイを破って決勝に進出したミャンマーを退け、4−3で初優勝を遂げました。

また、10月には、前年の予選で12年ぶりに出場資格を得たAFC U19選手権へも出場しましたが、同組のタジキスタンと引き分けサウジアラビア中国に敗れました。クロアチア人監督ボジャン・ホダック率いるU19代表は、わずか勝ち点1を挙げただけでグループステージ敗退となり、アセアンとは違うアジアの壁に跳ね返されてしまいました。それでもAFF U19選手権初優勝と12年ぶりのAFC U19選手権出場は、マレーシアサッカーにとっては希望の光となりました。

また、AFC U19選手権でマレーシアの全得点を挙げる活躍をしたハディ・ファイヤッド選手は、12月21日にJ2のファジアーノ岡山と1年契約を結びました。このハディ選手は8月には同じJ2のロアッソ熊本の練習にも参加し、ちょうど来日中だったマレーシアのマハティール首相からも激励を受けたのですが、流石に1週間程度の練習参加では契約には至りませんでした。Jリーグでプレーするという夢を実現させたハディ選手の今後の活躍を期待したいと思います。

U19マレーシア代表 2018年戦績
<AFF U19選手権>
グループステージ
2018.07.04 2-0 カンボジア  得点者:シバン・ピライ, アクヤ・ラシド
2018.07.06 2-0 ブルネイ   得点者:ニザルディン・ジャズィ, ムハマド・シャミ
2018.07.08 1-1 東ティモール 得点者:アクヤ・ラシド
2018.07.08 1-0 ミャンマー  得点者:シバン・ピライ
ノックアウトステージ(準決勝)
2018.07.12 1-1 インドネシア(PK3-2)得点者:シャイフル・アリアス
決勝
2018.07.14 4-3 ミャンマー  得点者:アワン・ファイズ・ハジック, ニック・アキフ2, シバン・ピライ

<AFC U19選手権>
グループステージ
2018.10.20 1-2 サウジアラビア 得点者:ハディ・ファイヤッド
2018.10.23 2-2 タジキスタン  得点者:ハディ・ファイヤッド, O.G
2018.10.26 2-0 中国      得点者:なし

AFF(アセアンサッカー連盟)U19選手権で優勝したマレーシアU19代表(FAMホームページより)

AFC U19選手権に参加したマレーシアU19代表(FAMホームページより)


1月9日のニュース(1):U22代表の候補選手が発表

マレーシアフットボール協会(FAM, Football Association of Malaysia)は、本日1月9日から始まる強化合宿に招集するU22代表候補選手を発表しています。(リンク先の記事はマレー語です)。今回の合宿は、2月17日から3月2日まで開催されるAFF(アセアンサッカー連盟)のU22選手権、さらには3月22日から26日にクアラルンプールで開催される2020年のAFC U23選手権の予選へ向けての強化合宿です。AFF U22選手権ではマレーシアは開催国カンボジア、インドネシア、シンガポール、ミャンマーのいるB組に、AFC U23選手権予選では予選J組に入り、中国、フィリピン、ラオスと同組になっています。初めて開催されるAFF U22選手権で好成績を収め、続くAFC U23選手権予選へ弾みをつけたいところです。

2020年のAFC U23選手権は東京オリンピックのアジア予選も兼ねており、上位3チームに入れば、東京オリンピックへの出場権も獲得できます。(開催国枠を持つ日本が上位3位に入れば、準決勝進出で出場権獲得となります。)ソ連によるアフガニスタン侵攻のため、参加をボイコットした1980年のモスクワオリンピック以来の出場を目指すには、予選を突破して本選に参加し、さらにグループステージ突破が目標となります。

2018年のAFC U23選手権でベスト8まで進んだマレーシアは、日本、韓国、ベトナム、北朝鮮とともに第1シードになり、これらの国とのグループステージでの対戦は避けられましたが、J組のメンバーを見てもグループステージ突破は簡単ではありません。グループ1位は難しいとしても、2位の上位4チームにまで(U23選手権の開催国であるタイがグループ1位を取れば、2位の上位5チームまで)に与えられる本選出場権を目指すことになりそうです。

またAFC U23選手権の後には東南アジア競技大会、通称SEA Gamesも控えています。昨年ジャカルタで開催されたアジア競技大会がアジア版オリンピックだとすると、2年毎に開催される東南アジア競技大会は東南アジア版オリンピックとも言えるこの地域最大のスポーツイベントです。前回2017年大会はマレーシアが開催国となったものの、サッカーの決勝はタイに0-1と苦杯を喫しているので、今回の開催国フィリピンではなんとしても金メダルを狙いたいところです。2019年は前半がAFC U23選手権予選、後半がSEA Gamesというのがこの年代の重要な目標です。

<U22代表候補選手(カッコ内は所属チーム)>
*#^ニック・アキフ・シャヒラン・ニック・マット MF
ムハマド・ダニアル・ハキム・ドラマン MF
モハマド・シャルール・ニザム・ロス・ハスニ DF
^ムハマド・シャイフル・アリアス DF
アフィック・サラウディン FW
ムハマド・ジャズアエルール・ジャスミ FW(以上クランタン)
*ダニエル・アミール・ノーヒシャム MF
^ムハマド・ザリル・アズリ MF
^ムハマド・アズリ・アブ・ガニ GK
アザルル・ナザリス・アズハ DF(以上フェルダ・ユナイテッド)
ダミアン・リム・チェンカイ GK
アリフ・アル・ラシド・アリフィン MF
*ムハマド・ジャフリ・チュウ FW(以上PKNS)
アリウスディウス・ジャイス FW
エバン・ウェンスリー・ウェンセスラウス DF
ジョーダン・オレンショウ MF(以上サバ)
#*コジレスワラン・ラジ FW
#モハマド・ファイサル・アブドゥル・ハリム FW(以上パハン)
モハマド・ハリズ・カマルディン DF(JDT II)
モハマド・ファズルル・ダネル・モハマド・ニザム DF (クダ)
ムハマド・ダニシュ・ハジック・サイプル・ヒシャムDF(ヌグリ・スンビラン)
ムハマド・ナジルル・アフィフ・イブラヒム DF(ペラ)
ムハマド・アミルル・ハジック・ロスミザル DF(スランゴール)
ムハマド・イザン・シャミ・ムスタパ FW(トレンガヌ)
カトゥル・アヌア・モハマド・ジャリル GK(KL)
*は2018AFC U23選手権のメンバー、#印は2018アジア競技大会のメンバー、^印は2018AFF U19選手権のメンバー

この強化合宿参加メンバーは1月13日から19日までタイのバンコクへ遠征し、練習試合を3試合(1月14日対バンコク・グラス、1月16日対アーミー・ユナイテッド、1月18日対アユタヤ・ユナイテッド)行います。U22を指揮するオン・キムスイ監督の談話では、今回のメンバーに、AFF選手権 スズキカップでも活躍し、大会後の休養を終えてクラブのプレシーズン練習に参加しているサファウィ・ラシド(JDT)やシャミ・サファリ(スランゴール)などが最終的に加わって、AFC U23選手権予選に臨む予定のようです。

FAMホームページより

タン・チェンホー監督は2020年まで監督契約を延長

昨年末のAFF(アセアンサッカー連盟)選手権 スズキカップの決勝で惜しくも敗れたマレーシア代表。そのチームを率いたタン・チェンホー監督と新たに2020年12月31日までの契約を結んだことが、マレーシアフットボール協会(FAM)から発表されました。タン監督とFAMとの契約は昨年12月31日に切れており、その後の動向が注目されていましたが、契約延長は順当なので、私も含め多くのファンが安心したでしょう。

FAMによると、昨年12月15日のスズキカップ決勝ベトナム戦の後、タン監督は2週間の休暇を取っていたことから、新たな契約の発表まで時間が空いてしまったとのことです。今後、タン監督には、Hariamu Malaya(マレーの虎)のニックネームを持つ代表チームを、2020年のスズキカップ、2022年開催ワールドカップの予選、そして2023年開催アジアカップの予選といった大会で好成績が求められています。

一番左がタン監督、一番右はスチュアート・ラマリンガムFAM事務局長(FAMホームページより)


マレーシア代表の2018年 (1) U23代表

2019年のアジアのサッカーはアジアカップとともに幕を開けましたが、マレーシアは予選で惨敗したため、残念ながら出場しません。それでもここ10年近く暗黒の時代を過ごしていたマレーシアのサッカーにとって、昨年2018年はフル代表を含めた各年代で良い結果を残すことができた年でした。そこで今回から数回に分けて、各年代ごとにその成績を見ていきます。まずは一年間を通して好調であったU23代表から始めましょう。

U23代表チームはAFC U23選手権に初出場を果たしただけでなく、ノックアウトステージまで進む快挙を果たしました。前年にタイで行われた予選ラウンドでは、インドネシアを3−0、モンゴルを2−0で勝利し、タイには0−3で破れたものの、タイがモンゴル、インドネシアとそれぞれ引き分けてくれた恩恵もあり、予選グループを1位で突破し、今年1月に中国で行われた本戦では、イラク、ヨルダン、サウジアラビアと行った強豪と同組となったグループステージをなんと突破したのです。イラクには1−4と完敗でしたが、ヨルダンとは1−1で引き分け、そしてなんとサウジアラビアには1−0と番狂わせを演じて快勝しました。グループステージを2位で通過し準々決勝に進出したマレーシアは韓国と対戦し、戦前の予想に反して、一時は同点に追いつく接戦でしたが最後は1−2で負けてしまいました。しかし2018年のマレーシア国内ベストヤングプレーヤー、ベストミッドフィルダー、そしてMVPにも選ばれたサファウィ・ラシドを筆頭に攻撃陣が頑張った結果が、初出場ながらベスト8という輝かしい結果となりました。

U23代表チームは、8月にジャカルタで開催されたアジア競技大会でも快進撃を続けました。韓国、バーレーン、キルギスタンと同組になったグループステージでは、初戦のキルギスタン戦を3−1で快勝した勢いに乗り、続く韓国も2−1で撃破するこれまた大番狂わせを見せました。プレミアリーグのトットナムでプレーするソン・フンミンを先発から外す余裕を見せた韓国ですが、今回はマレーシアがAFC U23選手権のリベンジに成功しました。ちなみにこの試合で2点を挙げたのが、前述したSafawi Rasidでした。この勝利でグループステージ突破を確定させたマレーシアは、先発8人を入れ替えて主力を休ませたバーレーン戦は2−3と破れましたが、予選グループ2位でノックアウトステージとなるベスト16へ進みました。ベスト8を賭けた試合の相手はU21代表を送り込んできた日本でした。予選グループを1位で突破していれば相手がイランでしたので、U21の日本のほうがベスト8進出のチャンスが有るかと思いましたが、89分にPK(このPKを与えたファウルの判定は個人的には微妙と思いましたが)を与えてしまい0-1でした日本のメディアでも「辛勝」「紙一重の勝利」などの見出しがつけられるほどの惜敗だっただけに残念!なお、Fox Sports Asiaと英字サッカー雑誌Four Four Twoのエディターによるこの大会のベスト11にSafawi Rasidが選出されました。

U23マレーシア代表 2018年戦績
<AFC U23選手権>
グループステージ
2018.01.10 1-4 イラク     得点者:サファウィ・ラシド
2018.01.13 1-1 ヨルダン    得点者:サファウィ・ラシド
2018.01.16 1-0 サウジアラビア 得点者:ダニアル・アミール
ノックアウトステージ(準々決勝)
2018.01.20 1-2 韓国      得点者:タナバラン
<アジア競技大会>
グループステージ
2018.08.15 3-1キルギスタン 得点者:サファウィ・ラシド, アクヤ・ラシド, シャフィック・アーマド
2018,08.17 2-1韓国     得点者:サファウィ・ラシド 2
2018.08.20 2-3バーレーン  得点者:シャミ・サファリ, サファウィ・ラシド
ノックアウトステージ(ベスト16)
2018.08.24 0−1日本     得点者:なし

中国で行われたAFC U23のメンバー(FAMホームページより)
ジャカルタアジア競技大会、2-1で勝利した韓国戦の1コマ(FAMホームページより)