9月6日のニュース:タイリーグ開幕-代表コンビのエルドストールはフル出場も、タンはベンチ入りせず、2部降格決定のペラFCはサポーターに謝罪、スランゴールFCのイフェダヨがシーズン最多ゴール新記録

タイリーグ開幕-代表コンビのエルドストールはフル出場も、タンはベンチ入りせず
 2021/2022年シーズンのタイ1部リーグが9月3日に開幕しています。昨季は1部と2部合わせて通算でマレーシア人選手5名が在籍していましたが、今季は1部のチョンブリーFCでプレーする代表DFジュニオール・エルドストール(タイでの登録名はプテラ・マデル・アマラン・マデルネル)とポリス・テロFCでプレーするやはり代表DFドミニク・タンの2名だけとなっています。

タイ1部リーグ第1節
2021年9月5日@チョンブリースタジアム
チョンブリーFC 1-1 BGパトム・ユナイテッドFC
 昨季12位のチョンブリーFCが昨季のチャンピオンに挑んだこの試合は、2019年と2020年にはMリーグ1部のJDTでプレーしたジオゴ・ルイス・サントスのゴールでBGパトム・ユナイテッドFCが17分に先制しましたが、チョンブリーFCも68分にデニス・ムリーリョが自身が倒されて得たPKを決めて同点とし、試合はそのまま引き分けています。
 ジュニオール・エルドストールは先発してフル出場しています。
 (試合のハイライト映像はチョンブリーFCの公式Youtubeチャンネルより)

https://youtu.be/TM-pT8eZfBA

2021年9月5日@PATスタジアム
ポートFC 3-3 ポリス・テロFC
 昨季3位のポートFCが昨季11位のポリス・テロをホームに迎えた一戦は、前半だけで3点を挙げたポリス・テロFCにポートFCが追いつき、こちらも引き分けに終わっています。
 ドミニク・タンはこの試合はベンチ入りしませんでした。

ペラFCはクラブ史上初の2部降格決定をサポーターに謝罪
 先週末に開催されたMリーグ1部第21節でマラッカ・ユナイテッドFCに敗れて来季の2部降格が決まったペラFCは、クラブの公式Facebookにサポーターに向けた公式謝罪文を投稿しています。
 1921年のマラヤカップ(現マレーシアカップ)第1回大会への出場から数えてクラブ創設100年記念の年にもかかわらず、Mリーグが2部制となった1990年以来、一度も2部でプレーしたことがなかったペラFCがクラブ史上初の2部降格となった事態に対し、今季途中に就任したアズマン・ノーGM(ゼネラルマネージャー)は、現在のMリーグクラブの中で2部へ降格したことがなかった唯一のクラブであるペラFCの1部残留に向けて全力を尽くしたが、それが実らず記念の年に2部に降格することを残念に思うと述べています。
 「2部降格は今後もクラブの歴史に残る出来事であるが、我々が現状から立ち直るためには最も重要で意味があることを学んだと考えたい。2部降格はペラFCの終わりを意味するものではなく、むしろこれをより良いクラブとなるための新たな始まりとしたい。」と述べているアズマンGMは、来季の2部プレミアリーグ優勝と1シーズンでの1部スーパーリーグ復帰をサポーターに約束する一方で、クラブの完全民営化を進め、クラブの短期と長期の目標を定めることなども合わせて約束しています。

スランゴールFCのイフェダヨがシーズン最多ゴール新記録
 昨日9月5日のMリーグ1部第21節でサバFCに6-0と圧勝したスランゴールFCで一際活躍したのが今季3度目のハットトリックを達成したFWイフェダヨ・オルセングンでした。2019年途中からスランゴールFCに加入したナイジェリアとバーレーンの二重国籍を持つこのイフェダヨ選手は昨日のゴールで今季通算ゴールが25(21試合)となりましたが、これはMリーグのシーズン最多ゴールの新記録となっています。なお、1シーズン3回のハットトリックもMリーグの新記録となっています。
 これまでのシーズン最多ゴールの記録は2017年にケランタンFA(当時、現ケランタンFC)とJDTでプレーしたレバノン出身のモハマド・ガダルと今季第20節までにJDTのベルグソン・ダ・シルヴァが持っていた23ゴールでした。(ガダル選手はケランタンFAで18、JDTで5ゴールの合計23ゴール)
 昨季2020年はリーグが短縮され11試合となった中で12ゴールを挙げてリーグ得点王となったイフェダヨ選手は2季連続の得点王を目指しますが、2位のベルグソン選手が2ゴール差で迫っており、今季の得点王争いは最終節を終えるまで決着はつかなそうです。
*****
 2季連続得点王を目指すイフェダヨ選手に代表されるように、リーグ得点王は2004年のスーパーリーグ開始以降、ほとんどが外国籍選手によって獲得されています。2004年から昨季2020年までの間で、マレーシア人のリーグ得点王は2004年のインドラ・プトラ・マハユディン(パハンFA、15ゴール)、2009年のニザルディン・ユソフ(プルリスFA、18ゴール)、2010年アシャアリ・サムスディン(トレンガヌFA、18ゴール)、2011年アブドル・ハディ・やはや(トレンガヌFA、20ゴール)となっていますが、実は2009年から2011年はMリーグが外国籍選手の獲得を禁じていたため、外国籍選手と競った結果のマレーシア人得点王は2004年のインドラ・プトラ選手まで遡らなければなりません。ちなみにこのインドラ・プトラ選手は今月40歳になりましたが今季もKLシティFCでプレーしています。


9月2日のニュース:1部スーパーリーグ-主力欠場のクダは痛い引き分け、2部プレミアリーグ-サラワクUの1部昇格が決定、ペラFCは退団した外国籍選手との未払い給料問題を解決、複数企業がペラFC買収に関心、元代表監督は出場時間数に基づく代表選手選考方法には否定的

Mリーグ1部スーパーリーグ第17節(8月4日から順延)
2021年9月1日@ダルル・マクムルスタジアム(パハン州クアンタン)
スリ・パハンFC 2-2 クダ・ダルル・アマンFC
得点者:パハン-ケニー・アティウ2(29分、87分)、クダ-アミルル・ヒシャム・アワン・クチック(12分)、シャズワン・ザイノン(67分)
 クダ・ダルル・アマンFCに新型コロナ陽性者が見つかったことから順延されていたこの試合は、現在、FIFA国際マッチデー期間であることから、チーム得点王のFWクパー・シャーマン(リベリア)と司令塔MFラビ・アタヤ(レバノン)がW杯予選に出場する自国の代表チームに招集されたことから欠場しています。両選手はこの試合も含め最短でも3試合欠場となることから戦力ダウンとなった布陣で熾烈な今季2位争いをどう乗り切るかに注目が集まりました。
 試合はアミルル・ヒシャム・アワン・クチックの今季初ゴールで先制したクダに対し、パハンはケニー・アティウの同点ゴールで追いつき、前半を1-1で折り返します。後半に入るとシャズワン・ザイノンのゴールで再びクダがリードしますが、試合終了間際の87分にアティウ選手がこの試合2点目となるゴールを決め、引き分けに終わっています。
 この結果、クダは2位のままで3位のトレンガヌFC、4位のペナンFCとの勝点差は2と広がっています。一方のパハンは順位を一つ上げて9位となったものの、残り2試合を残して11位のペラFCとは勝点差5と、降格圏脱出とはなりませんでした。(下のダイジェスト映像はMFLの公式Youtubeチャンネルより)

2021年シーズンMリーグ1部スーパーリーグ順位(第20節終了時)

ClubGWDLGFGAGDP
1#JDT2016314783951
2KDA20123435211439
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5SEL2096538281033
6KL207942417730
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8MU204972125-4*18
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11PRK2034131742-2513
12UITM1923141237-259
#JDTが2021年シーズンの優勝を果たしAFCチャンピオンズリーグ出場権を獲得しています。
*マラッカ・ユナイテッドは給料未払いのため、勝点3剥奪処分を受けています。
項目:G-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、P-勝点
ラブ名:KDA-クダ・ダルル・アマン、TFC-トレンガヌ、PRK-ペラ、SEL-スランゴール、PHG-スリ・パハン、PJ-PJシティ、MU-マラッカ・ユナイテッド、SBH-サバ、PEN-ペナン、KL-KLシティ

Mリーグ2部プレミアリーグ第17節(8月8日から順延)
2021年9月1日@MBPGスタジアム(ジョホール州パシルグダン)
クチンシティFC 1-2 ヌグリスンビランFC
得点者:クチン-マイケル・イジェジー(47分)、ヌグリスンビラン-フランシス・コネ(5分)、アルトゥール・クーニャ (70分)
 クチンシティFCに新型コロナ陽性者が見つかったことから順延されていたこの試合は、クチンシティFCが一時は追いつくも、2部優勝を目指すヌグリスンビランFCがDFアルトゥール・クーニャの今季初ゴールで勝利を収めています。
 またこの試合の結果、1部昇格資格を持つ5クラブの内、残り試合数が6と最も多いクチンシティFCがこれに全勝しても勝点35となり、勝点37のサラワク・ユナイテッドFCが残り3試合を前半しても追いつけないことから、サラワク・ユナイテッドFCの1部昇格が確定しています。

2021年シーズンMリーグ2部プレミアリーグ順位(第20節終了時)

TeamGWDLGFGAGDP
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#サラワク・ユナイテッドFCとヌグリスンビランFCは来季のMリーグ1部昇格を決めています…
項目:G-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、P-勝点
クラブ名:NS-ヌグリスンビランFC、SU-サラワク・ユナイテッドFC、TFC-トレンガヌFC II、PRK-ペラFC II、SEL-スランゴールFC 2、KEL-ケランタンFC、KU-ケランタン・ユナイテッドFC、KCH-クチンシティFC、FAM-FAM MSNプロジェクト

ペラFCは退団した外国籍選手との未払い給料問題を解決
 Mリーグ1部のペラFCはブラジル出身のレアンドロ・ドス・サントス、カレッカ両選手に関する給料未払い問題が解決したことをクラブの公式Facebookで発表しています。
 ペラFCのアズミン・ノーGM(ゼネラルマネージャー)は未払いとなっていた今年5月と6月分の給料に関して、期限となっていた8月31日前に支払い方法などで合意したことを明らかにしています。
 「レアンドロ、カレッカ、そしてJDTに移籍したギリェルメ・デ・パウラの代理人から出されているに支払い請求については来月から分割で支払うことで合意した。」と話したアズミンGMはこのブラジルトリオの他に、2019年に入団テストを受け契約を結びながらその後のケガが判明し、契約を破棄されたと訴え、50万リンギ(およそ1330万円)未払い給料の支払いを求めてFIFAに提訴していた韓国出身のチョン・ヒョソクに対しても分割での支払いで同意したことも明らかにしています。
 アズミンGMはこれらの未払い給料問題が解決したことで、MFLによる来季のクラブライセンス発給に支障をきたすものは無くなったとして、未払い給料問題解決のスポンサー探しを支援したペラ州のサアラニ・モハマド州首相に感謝しています。

複数企業がペラFC買収に関心
 サッカー専門サイトのフットボールトライブは、今季給料未払い問題で主力が大量退団したMリーグ1部のペラFC買収に複数の企業が名乗りを上げていると報じています。
 これについてペラ州政府の青年スポーツコミュニケーションおよびマルチメディア委員会のカイルル・シャーリル・モハマド議長は、今年7月から複数の企業との間でペラFCの経営権譲渡についての話し合いが行われていることを明かす一方で、まだ何も決定していないと話しています。
 ペラFC運営会社の理事の一人でもあるカイルル・シャーリル議長は今年4月には、ペラFCの経営を希望する企業には自身の株式を譲渡する用意があると話したこともありますが、現在はペラFCのアズマン・ノーGM(ゼネラルマネージャー)にスポンサーや買収などの件は全て任せていると話しています。なおこの記事では、具体的な企業名などは明らかになっていません。
*****
 ペラFC買収の話は何度かこのブログでも取り上げていますが、ペラ州サッカー協会主導で行われてきたこれまでの交渉は決裂に終わっています。上の記事にもありますが、州政府の直接あるいは間接支援なしでは運営できていないのが多くのMリーグクラブの現状で、ペラFCの給料未払い問題についても州政府以外の有力スポンサー、あるいは有力オーナーがいないことに起因します。そういった状況を改善するためにクラブの民営化がMリーグでは勧められているわけですが、未だ多くのクラブが従来の州サッカー協会による運営から、運営会社を設立しての運営と形式は変わっているものの、運営会社の主要財源が州政府や州政府関連企業であるなど、公的支援に依存する体質が変わっておらず、完全な民営化にはまだ時間がかかりそうです。

元代表監督は出場時間数に基づく代表選手選考方法には否定的
 マレーシアサッカー協会FAMのハミディン・アミン会長は代表選手の選考についてMリーグでの出場時間数を重視して行うべきと発言していますが、その適用については簡単ではないと元代表監督が述べていルト、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。
 マレーシアは今年6月に開催されたFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選を突破できませんでしたが、この代表チームには所属クラブで主力選手として活躍できていない選手が多く含まれていたことがハミディン会長の発言へと繋がっていますが、マレーシアサッカー指導者協会会長で元代表監督でもあるB・サティアナタン氏はハミディンFAM会長の意見には原則同意するものの、選手選考の条件に出場時間数を適用するとポジションによっては、選手を選ぶことが難しくなるだろうと述べています。
「例えばMリーグでは各クラブのフォワードは外国籍選手が大半を占めており、マレーシア人選手の出場時間数は限られている。また得点ランキングを見てもマレーシア人選手の名前は上位にはない。ヨーロッパではクラブでの出場機会が少ない選手でも代表に招集されることがあるので、代表選手選考に条件をつけると代表監督が望む選手を招集することが困難になるだろう。」と述べたサティアナタン氏はJDTの選手を例に挙げて、リーグ戦の試合出場時間が短い選手であっても、チーム内での競争が激しいこと、また練習のレベルが高いことから代表では期待通りのプレーができているとして、各選手の練習環境、さらには所属するクラブの監督からのフィードバックなども考慮すべきであると提言しています。
 先月のFAM理事会でハミディン会長はW杯最終予選進出を逃した代表チームに対して目に見える形の変更を求めたいとして、今後の選手選考について新たな方針を打ち出すと述べており、JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が提案している選手の出場時間数を元に選手を評価する仕組みを導入する可能性にも言及していました。

8月25日のニュース:出場機会不足に不満を述べた選手へのJDTオーナーの反応に多くのサポーターが同意、そのJDTオーナーが退任をほのめかす?、代表は10月に国内合宿と海外遠征を開催か、 ペラFCが未払いとなっていた7月分の給料を支給

出場機会不足に不満を述べた選手へのJDTオーナーの反応に多くのサポーターが同意
 「チームメートがサッカーをしているのを見るのは楽しいな。」と間接的に自身の出場機会がないことをツイートしたJDTのFWシャフィク・アフマドが、オーナーからクラブは仲良しグループではなく、不満があるなら他のクラブへ移籍することを止めない、と反応されたニュースは先日このブログでも取り上げましたが、このトゥンク・イスマイル ジョホール州皇太子の反応については様々な意見が出ていることを、マレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。
 このイスマイル殿下によるクラブ公式Facebookへの投稿にはこの執筆時点で1万7000件の「いいね」と2900件近いコメントがついていますが、その多くがイスマイル殿下に同意すると同時に、JDTでは出場機会が得られないシャフィク選手に移籍を勧める内容です。「JDTヘ移籍する前にプレーしていたクダ・ダルル・アマンFC(当時はクダFA)に戻るべき」といったものから「シャフィク選手自身は努力はしているのだろうが、これまでにリーグ2位の20ゴール(17試合)を挙げているブラジル出身のFWベルグソン・ダ・シルヴァにポジション争いで勝つのは難しい。」、「スランゴールFCに来い。JDTを除けばスランゴールFCは給料もいいぞ。」まであり、さらには「(高給とされるJDTでプレーすることで)銀行口座に金がたくさんあるなら、それで十分ではないか。出場機会が少ないことなど気にするな。」といった皮肉混じりのものもあります。
 そんな中で「我々マレーシアサポーターはシャフィク選手が代表でプレーするところを見たいが、JDTに残り控えのままでは次の代表に招集されることも難しくなる。6月のW杯予選では役立たずだったギリェルメ・デ・パウラが代表に招集されたのも彼がペラFCの主力選手だったからだ。」といった意見に代表されるように、FWに人材不足の現在の代表には、新型コロナ禍による中断前に行われた一昨年のW杯予選でアラブ首長国連邦やインドネシア相手にゴールを挙げたシャフィク選手は必要な選手なのは明らかです。
 なおイスマイル殿下は既にシャフィク選手と直接話し、JDTでは試合出場の用意ができているとチームが判断すれば試合に出ることができ、シャフィク選手も同様であると伝えたことを明かすとともにこの件に関してはこれで解決したとも述べています。
*****
 ボラセパマレーシアJPでは、今季開幕前にJDTの注目選手としてこのシャフィク選手を取り上げました。U23代表から順調に成長し26歳となる今年は同じJDTのサファウィ・ラシドとともに代表を引っ張る存在として期待したからでした。しかし、今季はトップチームでの先発出場どころかベンチ入りしたのがわずか3試合、試合出場は1試合でそれも90分からの出場でした。また、7月24日から始まった後半戦ではこれまで1試合もベンチ入りしていません。昨年2020年12月には自らが運転していた自動車の事故で生後1年未満の息子を失うなど悲惨な出来事も経験したシャフィク選手が、イスマイル殿下が指摘しているようにその事故を境に別人になってしまったのかどうかは外部からはわかりませんが、自身の選手としてのキャリア、特に代表選手としてのキャリアを考えるのであれば、国外も含めて他のクラブへ移籍を考えてみるのも悪くないのでは、とファンの一人として思ってしまいます。

JDTオーナーが退任をほのめかす?
 JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が退任をほのめかすような投稿を自身のインスタグラムに行ったと、マレーシア語紙のブリタハリアンが報じています。
 イスマイル殿下がオーナーを務めるJDTは昨季までMリーグ7連覇を達成し、今季も次節に勝利すれば8連覇が決まる状況ですが、そんな中で以下のような投稿を行なっています。
 「これまでJDTがピッチ内外で成功を収めるよう尽力してきた結果、JDTは立派なブランドになった。最高の設備のもと、過去8年間でトップチームはリーグ戦やカップ戦などで18回の優勝を、ユースレベルでは10回の優勝を達成した。」という投稿はさておき、多くのサポーターに衝撃を与えたのは、その投稿の最後に書かれた「これが私からクラブへの最後の贈り物だ。」という部分でした。10月から建設が始まる本拠地スルタン・イブラヒムスタジアムに隣接する巨大なトレーニング施設の写真が添えられたこの投稿に対し、多くのサポーターやメディアはイスマイル殿下がJDTオーナーを退任するのではと色めき立っています。
 イスマイル殿下の真意は現時点では不明ですが、今週末の第20節にもJDTのリーグ8連覇が決まる可能性があり、その後には何か重大な発表があるかも知れません。

代表は10月に国内合宿と海外遠征を開催か
 マレーシアサッカー協会FAMが10月に代表合宿と練習試合を企画しているとマレーシア語紙ハリアンメトロが報じています。
 代表チームは今年12月には昨年から延期された東南アジア(アセアン)サッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020年大会が、そして来年2月にはアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ2023年大会3次予選が控えていますが、FIFAの国際マッチカレンダー期間の今月8月30日から9月7日までは、新型コロナ禍により終了が遅れたリーグ戦中期間である上、マレーシア政府が全ての渡航者に求めている14日間の検疫隔離期間によって、代表チームは他国の代表チームを招いて練習試合を行うことも、他国へ遠征に行くこともできず予定されていた代表合宿が中止に追い込まれています。
 Mリーグを運営するMFLの新たなCEO就任が決まったマレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、代表チームの予定として10月には国内での代表合宿と国外での練習試合開催を検討中であることをハリアンメトロによる取材で明らかにしています。

ペラFCが未払いとなっていた7月分の給料を支給
 給料未払いが明らかになり主力選手が大量退団した結果、Mリーグ1部で11位と低迷するペラFCの選手らに対し、今週末に予定されているMリーグ第20節の前に未払いとなっている7月分の給料が支払われることをウトゥサンマレーシアが報じています。
 今季は残り3試合となり、現在11位と2部降格危機にある中で、未払い給料を支払うことで選手の士気を高めたいとペラFCのアズマン・ノーGM(ゼネラルマネージャー)は話しています。
 8月1日付で就任したアズマンGMは、2部降格を食い止めるため最終戦までできる限りの泥苦を続けたいとも話し、ペラFCのサポーターにも12番目の選手として最後までチームへの応援を続けて欲しいと訴えています。
*****
 このように未払い給料支払いをメディアに公表しながら、その裏では全額ではなく一部のみを支払っていた、といった他のクラブの事例もあるので、ここは選手らには支払いを事前に伝えても、メディアには支払ってからそれを公表すれば良いのではないか、とも思ったりもします。今回のメディアへの公表はアズマンGMによる自チームのサポーターを含めた対外的なアピールなのかもしれませんが、アズマンGM就任以降のペラFCは3試合で最下位のUITM FCでの敗戦も含め0勝3敗、3得点10失点と、いまさら未払い給料を支払っても焼け石に水といった印象です。

8月18日のニュース:クダが後半戦初勝利で4位浮上、女子代表がAFC女子アジアカップ予選にフットサル選手を招集、サッカー協会が帰化選手プロジェクトの見直しに着手、サッカー協会会長-代表チームの運営は協会が行う

 7月24日に予定されながら、クダ・ダルル・アマンFCの複数の選手が試合前の新型コロナウィルス検査で陽性となったことから延期されていたクダ・ダルル・アマンFC対ペナンFCが行われ、この試合に勝利したクダ・ダルル・アマンFCが3位のペナンFCと勝点差2の4位に浮上しています。

2021年8月17日@ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロースター)
クダ・ダルル・アマンFC 4-1 ペナンFC
得点者:クダ-チェチェ・キプレ2(17分、38分)、バドロル・バクティアル(23分)、クパー・シャーマン(55分)、ペナン-デヴィッド・ロウリー(44分)
 クダ・ダルル・アマンFCは8月13日のスランゴールFC戦でハンドにより一発レッドとなったレナン・アルヴェスが、またペナンFCは累積警告にリュウジ・ウトモがそれぞれこの試合は出場停止となっており、両チームとも守備陣の中心選手を欠く試合となりましたが、ペナンFCのシュート数6本(オンターゲット3本)に対してクダ・ダルル・アマンFCは19本(オンターゲット8本)、コーナーキックもペナンFCの1本に対してクダ・ダルル・アマンFC7本と圧倒したクダ・ダルル・アマンFCが後半戦初勝利を挙げています。( 8月7日と8日の両日、Mリーグ1部スーパーリーグ第18節が開催されました。なお後半戦開幕から2週間で5試合と詰まった日程だったMリーグですが、次節第19節は1週間空いて8月13日と14日に予定されています。
 試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルよりお借りしています。

2021年シーズンMリーグ1部スーパーリーグ順位(第18節終了時)

ClubGWDLGFGAGDP
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*マラッカ・ユナイテッドは給料未払いのため、勝点3剥奪処分を受けています。
項目:G-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、P-勝点
ラブ名:KDA-クダ・ダルル・アマン、TFC-トレンガヌ、PRK-ペラ、SEL-スランゴール、PHG-スリ・パハン、PJ-PJシティ、MU-マラッカ・ユナイテッド、SBH-サバ、PEN-ペナン、KL-KLシティ

2021年シーズンMリーグ1部スーパーリーグ得点ランキング(第18節終了時)

選手(クラブ)ゴール数
1イフェダヨ・オルセグン(SEL)20
2ベルクソン・ダ・シルバ(JDT)19
3クパー・シャーマン(KDH)11
4パウロ・ジョズエ(KL)9
5カサグランデ(PEN)8
クラブ名:KDA-クダ・ダルル・アマン、TFC-トレンガヌ、PRK-ペラ、SEL-スランゴール、PHG-スリ・パハン、PJC-PJシティ、MU-マラッカ・ユナイテッド、SBH-サバ、PEN-ペナン、KL-KLシティ

AFC女子アジアカップ予選にフットサル選手を招集
 アジアサッカー連盟AFC女子アジアカップ予選に出場するマレーシア女子代表にフットサルの選手が招集されたことをスポーツ専門サイトのスタジアムアストロが報じています。
 女子代表チームのジェイコブ・ジョセフ監督が代表合宿に招集したフットサル選手はステフィ・シドゥで、2011年から2012年まではジェイコブ監督の元でサッカー選手だった経験もあるということです。
 ステフィ選手の招集についてジェイコブ監督は、当初招集していた選手の1人がチームに帯同できなくなったことを理由に挙げています。「代表合宿には17名の若手選手を追加招集したが、サバ州出身の選手1名がパスポートの問題でチームに帯同できなくなったことから、招集最終日の先週末にステフィ選手に連絡を取った。」とジェイコブ監督は説明しています。
 8月21日からの女子代表合宿には今回招集された17名と既に招集されていた11名が参加し、25日間の合宿を行い、9月19日から始まるAFC女子アジアカップ予選初戦ではパレスチナと、そして9月22日にはタイと対戦します。

サッカー協会が帰化選手プロジェクトの見直しに着手
 マレーシアサッカー協会FAMは代表チーム強化に向けた新たな帰化選手獲得ためのプロジェクトの一時中止と帰化選手プロジェクト自体の見直しを行うことを発表してことをマレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 FAMのハミディン・アミン会長は既に帰化した選手については、来年2月に予定されているアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ2023年大会3次予選については招集する可能性があるとも述べています。
 「代表チーム強化目的の帰化選手ブログラムは、技術委員会、帰化選手プログラム委員会、代表チーム委員会、そしてオン・キムスイ テクニカルディレクターからの報告が上がってくるまでは一時中止とする。なおMリーグの各クラブについては、帰化資格を満たす選手のマレーシア国籍取得支援を行うことは今後も可能とする。*ヘリテージ帰化選手については、その必要に応じて起用していく方針は変わらないが、良いヘリテージ帰化選手の獲得は容易ではなく、その多くは代表に招集されてもあまり良い結果を残せていない。」とFAM理事会後のメディアとのオンライン会見で話したハミディン会長は、帰化選手の起用については様々な意見があることを認めた上で、今後も代表チームに帰化選手が必要となった場合には、FIFAワールドカップ2026年大会予選での起用を目的としたものになるだろうとも話しています。
 FAMはこれまでブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ(34歳、JDT所属)とコソボ出身のリリドン・クラスニキ(29歳、JDT所属)の両選手をMリーグで継続して5年以上プレーした資格を利用して代表選手として起用するべくマレーシア国籍取得の支援を行っています。この他、ガンビア出身のモハマドゥ・スマレ(26歳、JDT)も帰化選手ですが、こちらは昨季まで在籍したパハンFA(現スリ・パハンFC)を運営していたパハン州サッカー協会の支援でマレーシア国籍を取得しています。
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 マレーシアの「帰化選手」は上記の従来はマレーシアとは縁もゆかりもない3選手と、両親あるいは父母のどちらかがマレーシア人の*ヘリテージ帰化選手とに分かれます。後者はマレーシア人の血を引いていることからFIFAが規定する「国内リーグで5年のプレー経験」という条件に縛られずにマレーシア国籍を取得することが可能です。なお、今年6月に行われたFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選に出場したマレーシア代表のメンバーで見ると、FWデ・パウラ、MFクラスニキ、FWスマレの3選手に加え、GKサミュエル・サマーヴィル(ペナンFC)、DFマシュー・デイヴィーズ、DFラヴェル・コービン=オング(以上JDT)、DFジュニオール・エルドストール(タイ1部チョンブリーFC)、DFドミニク・タン(タイ1部ポリステロFC)、DFディオン・コールズ(デンマーク1部FCミッティラン)、MFブレンダン・ガン(スランゴールFC)と総勢28名中10名が帰化選手とヘリテージ帰化選手となっています。さらにW杯予選突破の切り札として初めて代表入りしたデ・パウラ、クラスニキの両選手が予選前の練習試合から予選本番までチーム力強化に目立った効果は果たせず、スマレ選手も含めた3名の帰化選手にサポーターや元代表選手などから批判が集中しただけでなく、マレーシア人選手の出場機会を奪うという理由で帰化選手プロジェクトの有効性に疑問の声が上がっていました。

サッカー協会会長-代表チームの運営は協会が行う
 また同じブルナマの記事では、FAMのハミディン会長がマレーシア代表チームの運営は今後もFAMが行うことを明言したことも報じています。
 国のサッカー協会が代表チーム運営を明言、と聞くとそれがなぜニュースになるのか、それは当たり前ではないか、と思われるかもしれませんが、これは6月のW杯アジア2次予選中、既に予選突破が難しくなったタイミングで。Mリーグ1部のJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が、より良い練習環境とより良い指導者を用意してチーム強化を行う意思があるので代表チームを自分に運営させて欲しいと、公開書面の形でFAMのハミディン会長に申し出た、という経緯があります。
 この申し出には、前FAM会長でもあり、現在国内リーグで7連覇中のクラブのオーナーでもあるイスマイル殿下とオーナーを務めるJDTが国内では他のクラブを圧倒する設備を持つことから、これを支持する意見が出る一方で、帰化申請時にはいずれもJDTの選手ではなかったデ・パウラ、クラスニキ、スマレの3選手が現在は全員JDTの選手となっていることへ不透明さや、国を代表するチームを国のサッカー協会外部の人間が運営する「不自然さ」などから反対意見も同じくらい出ていました。
 これについてFAMのハミディン会長は「W杯予選後にイスマイル殿下と会談し、今後も代表チームの運営はFAMが行うことで両者が同意した。またその際には代表強化のために選手選考などいくつかの内容についてイスマイル殿下から提案を受けた。」


8月13日のニュース:最新のFIFAランキングでマレーシアは154位、ケランタンFCがケランタン州サッカー協会の未払い給料問題解決を支援、クラスニキはインドスーパーリーグへ期限付き移籍か

最新のFIFAランキングでマレーシアは154位
 マレーシアサッカー協会FAMは公式Facebook上で、最新の8月12日付けFIFAランキングでマレーシアは154位となったことを発表しています。これは前回の153位から順位を1つ下げています。
 前回5月27日付けのFIFAランキング発表以降、マレーシアは国際Aマッチで1勝3敗の成績でした。この結果、ランキング算出の元となるポイントは前回の1040からわずか1ポイント追加の1041しか獲得できず、ランキングが1つ下がっています。
 前回のランキング発表以降、マレーシアは5月29日にバーレーンと国際親善試合を行い0-2で敗れ、その後はFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選に出場し、アラブ首長国連邦には0-4、ベトナムには1-2と敗れ、タイには1-0で勝利しています。
 マレーシアの154位は153位のアフガニスタンと155位のニューカレドニアの間になります。
 なお東南アジア他国のランキングは、東南アジアから唯一、W杯3次予選に進んだベトナムが前回と同じ92位となった一方で、W杯アジア2次予選でマレーシアに敗れたタイは120位(前回より14ランクダウン、29ポイント減)、フィリピンは128位(同3ランクダウン、4ポイント減)、ミャンマーは145位(同6ランクダウン、24ポイント減)、シンガポールは160位(同1ランクダウン、20ポイント減)、インドネシアは174位(同1ランクダウン、7ポイント減)、カンボジアは179位(同5ランクダウン、14ポイント減)、またラオスは186位(同1ランクダウン)、ブルネイは190位(同1ランクダウン)、東ティモールは195位(同1ランクアップ)でいずれもポイント増減なしとなっています。
 またマレーシア女子代表のFIFAランキングは92位で、東南アジア内ではベトナム(32位)、タイ(39位)、ミャンマー(46位)、フィリピン(68位)に続く5位となっています。
 

ケランタンFCがケランタン州サッカー協会の未払い給料問題解決を支援
 Mリーグ2部プレミアリーグのケランタンFCがケランタン州サッカー協会が抱える未払い給料の解決を支援したことをマレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。
 ケランタンFCを運営するTRW社のシャイルズ・セフィ法務担当部長は「ケランタン州サッカー協会は経営破綻していることから、ケランタンFCが協会の負担を軽減するため支援を申し出た。今年5月21日にマレーシアサッカー協会FAM、ケランタンFC(TRW社)、そしてケランタン州サッカー協会の三者で会談し、マレーシア人選手11名と外国籍選手1名に対する給料未払い問題の解決について話し合った。この合計12名の選手への給料未払いがあることについてはケランタンFCの経営権をケランタン州サッカー協会から680万リンギ(およそ1億7700万円)で購入した際には明らかにされていなかったため、FAMはこの未払い給料問題はケランタン州サッカー協会の責任で解決すべきと採決を下した。」と話す一方で、ケランタンFCは当初は分割による支払いを予定していた経営権購入代金680万リンギを一括で支払うことで、ケランタン州サッカー協会がこの未払い給料問題を速やかに解決できるよう支援したと話しています。

クラスニキはインドスーパーリーグへ期限付き移籍か
 帰化選手でコソボ出身のリリドン・クラスニキは、今季開幕前にMリーグ2部JDT IIに加入したものの、出場機会を求めてオーストラリア1部Aリーグのニューカッスルジェッツに期限付き移籍しています。
 モハマドゥ・スマレ(ガンビア)、ギリェルメ・デ・パウラ(ブラジル)に続く、マレーシア人とは血縁関係がない帰化選手第3号となったクラスニキ選手は今年6月のFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選に出場した代表チームにも招集されましたが、代表戦では目立った活躍はできませんでした。またニューカッスルジェッツでも先発出場機会はなく、最長でも出場時間45分と十分な出場機会が得られないまま、6月30日までとなっていた期限付き移籍の期限を終えました。
 JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下はこのクラスニキ選手の今後についてタイリーグのクラブへの期限付き移籍について述べたこともありましたが、タイリーグのトランスファーウィンドウ期間が8月17日までとなっている一方で、タイリーグのクラブからは正式なオファーが出されていないことをスポーツ専門サイトのスタジアムアストロが報じていることから、今度はインドスーパーリーグへ期限付き移籍の噂が出ています。
 サッカー専門サイトのヴォケットFCによれば、インドの英字紙タイムズオブインディアのマーカス・マーグルハオ記者がマレーシアから来る選手がアセアン東南アジア外国籍選手枠で獲得されると述べたことがその出どころとなっているようですが、マーカス記者はクラブ名を明かしていないということです。
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 このクラスニキ選手とともにニューカッスルジェッツへ期限付き移籍していたインドネシア出身のシャーリアン・アビマニュは、Aリーグではクラスニキ選手よりも出場機会は少なかったにもかかわらず、先月末に開幕したMリーグ後半戦ではトップチームのJDTの試合に出場しており、クラスニキ選手がMリーグでプレーする可能性は低そうです。

8月11日のニュース:ペラFCがブラジルコンビの退団を公式に発表、今月の代表合宿開催却下でタン監督は10月の合宿と練習試合を熱望

ペラFCがブラジルコンビの退団を公式に発表
 ペラFCはブラジル出身の2選手の退団を公式に発表しています。
 ペラFCのアズマン・ノー ゼネラルマネージャー(GM)は、退団の意思を示したレアンドロ・ドス・サントスとカレッカと今季残り試合の出場についての交渉を行ってきたが、交渉は決裂し、両選手はチームには戻らないことを明らかにしています。
 「当初、クラブは両選手の退団希望の理由が家族のビザが延長されていなかったことだと考えていたので、クラブがこの問題を解決した際には、両選手がチームに戻ると考えていた。しかし、レアンドロ、カレッカ両選手はすでに退団の意思を固めていたようである。現在、両選手は未払いとなっている給料に関する支払い訴訟を継続するかどうかを弁護士と相談中と聞いている。」とマレーシアの通信社ブルナマの取材に答えています。
 ペラFCは両選手に対して3ヶ月分の給料が未払いとなっていることを認めています。
 今月初めに「休養」となったペラFCのチョン・イーファット前監督は、7月26日に両選手が契約解除を申し出て、すでにチームを離れたことを明らかにしたことは、このブログでも取り上げました。
 さらにアズマンGMはトランスファーウィンドウ期間に獲得した新たな外国籍選手がチームに何の貢献していないだけでなく、その振る舞いにも不満を述べています。
 「新外国籍選手の態度には問題があり、中でも特にレバノン出身のDFジャド・ヌールディンとMFサミル・アヤスの両選手は振る舞いには問題がある。当初、この両選手はその力量を評価するために(2部プレミアリーグでプレーするセカンドチームの)ペラFC IIでプレーすることを求めたが、ケガを理由に練習参加を貫いている。またDFズバイロウ・ガルバ(カメルーン)とFWジスラン・ゲッセン(コートジボアール)はパフォーマンスのレベルが低く、ペラFC IIのマレーシア人選手よりも低い。」と自身が獲得に関わらなかった4選手を批判したアズマンGMは、新たに獲得したDFアズハル・アパンディ、DFシャミン・バハルディン、DFアイザット・マイディン・コティの3名のマレーシア人選手も移籍証明書の提出がMFLの登録期間に間に合わなかったことで、今季は出場できなくなったことも明らかにしています。
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 経営陣がクラブをダメにする良い例が、今季のペラFCで起こっている未払い給料に伴う主力選手の大量退団です。クラブ史上初となる2部プレミアリーグ降格は残念ですが、クラブ民営化に伴う痛みを乗り越えて、現場だけでなくフロントにも求められるプロ化に向けて膿を出す良い機会かもしれません。

今月の代表合宿却下でタン監督は10月の合宿と練習試合を熱望
 マレーシア代表のタン・チェンホー監督は来月に希望していた練習試合の開催を諦めたと、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。タン監督はFIFAの国際マッチデー期間の8月30日から9月7日に代表合宿や練習試合の開催を希望していました。
 このブログでも取り上げましたが、マレーシアサッカー協会FAMは新型コロナウィルス対策を行うマレーシア政府の国家安全保障委員会に対して、スポーツバブル形式での練習試合の許可を申請していましたが、その申請が却下されていました。またこれを受けてMリーグを運営するMFLは8月30日から9月7日までの期間にMリーグの試合日程を組み込んだことで、代表合宿や練習試合の開催が不可能になっています。
 これについてタン代表監督は次のFIFAマッチデー期間である10月4日から10月12日までの期間には代表合宿開催と練習試合実施の許可が出ることを望んでいると話しています。
 「マレーシア国内の感染状況は改善していないので、10月のFIFAマッチデー期間には代表合宿と練習試合が国外、国内を問わず許可されることを期待しながら忍耐強く待たなければならない。10月に代表合宿や練習試合が行われる際に選手のパフォーマンスに影響が出ないよう、今後もMリーグが遅延なく開催されることも望んでいる。」とブリタハリアンの取材に答えたタン監督は、今年12月に開催予定されている東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ、そして来年2月に開催が予定されているアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ2023年大会3次予選の準備となる10月のFIFAマッチデー期間に行う代表合宿と練習試合の重要性を強調しています。
 なお2021年のFIFA国際マッチデーは10月4日から12日と、11月8日から16日が残っています。


7月27日のニュース:スランゴールFCの代表MFがガンと診断される、FAMはスポーツバブル形式での練習試合開催を検討

スランゴールFCの代表MFがガンと診断される
 Mリーグ1部のスランゴールFCは公式Twitter上で主将のブレンダン・ガンに精巣腫瘍が見つかり、既に癌性増殖を取り除く手術を受けたことを発表しています。
 33歳のガン選手は今年6月に行われたFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選では警告累積となっていた初戦のアラブ首長国連邦戦を除き全試合に出場しましたが、Mリーグ後半の開幕戦となった7月24日のKLシティFC戦にはベンチ入りしていませんでした。
 なお、ガン選手は現在、医療関係者によるチェック体制のもとにあるということです。
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 7月24日の試合にガン選手が先発どころかベンチ入りもしなかったことから、ネット上でその原因となりそうな記事を探しましたが見つからず、不思議に思っていましたが、こんなことだったとは…。
 これを報じたマレーシアの通信社ブルナマの記事によると、ガン選手自身は楽観的かつ気丈に振る舞っているということです。またガン選手も自身のTwitter上で、できるだけ早くピッチに戻りたいというメッセージを投稿しており、ボラセパマレーシアJPもそれを期待して、ガン選手の速やかな回復を祈りたいと思います。

FAMはスポーツバブル形式での練習試合開催を検討
 マレーシアサッカー協会FAMは9月にマレーシア代表の練習試合として国際Aマッチをスポーツバブル形式で開催することを検討中であると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は国家安全保障委員会NSCとマレーシア保健省、そして国内スポーツを監督する青年スポーツ省に対して、練習試合開催の許可を求める申請を提出したことを明らかにしています。
 スチュアート事務局長は、FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選やAFCチャンピオンズリーグACLを主催したアジアサッカー連盟AFCが、それらの大会で採用された標準作業手順SOPの詳細や各大会実施の際の経験について、FAMと共有する形で練習試合開催を支援するという言質を得たと話し、国内での練習試合開催に漕ぎ着けたいと話しています。
 AFCはW杯予選、ACLとも参加チームは宿泊施設、練習会場、試合会場で構成される「バブル」の中から出ない形で外界との接触を断ち、新型コロナウィルスをそのバブルの中に持ち込まない仕組みを作った上で大会を開催しました。FAMはこれと同じ形式での練習試合開催を目指しており、W杯予選やACLでその効果は実証済みだと話すスチュアート事務局長はNSCとマレーシア政府保健省からの認可を得られることを期待しているとブルナマに述べています。。
 さらにスチュアート事務局長は8月30日から9月7日までの国際マッチデー期間に行いたいとしている練習試合の相手として、パレスチナ(FIFAランキング104位)、インド(105位)、台湾(141位)が候補に上がっているとも述べています。なおマレーシア代表は現在、FIFAランキングが153位です。


7月16日のニュース:今季Mリーグ1部前半戦は2000万人以上がオンラインでライブ観戦、FAMのテクニカルディレクターがU20代表のAFCU23アジアカップ予選派遣について説明、JDT IIからマラッカUへ期限付き移籍のロバットが抱負を語る

今季Mリーグ1部前半戦は2000万人以上がオンラインでライブ観戦
 7月24日より再開まで10日を切り、Mリーグ各クラブは練習試合をこなすなど準備に余念がありませんが、Mリーグを運営するMFLは今季ここまでのMリーグ1部スーパーリーグの試合のライブ視聴者数が2100万人を越えていると公式サイトで発表しています。
 今年3月5日に開幕したスーパーリーグは5月9日に行われた第13節まで78試合が行われていますが、これらの試合を放映した国営放送RTM、MFLのスポンサーUnifi社の有料スポーツチャンネル、そして同社が運営する無料YouTubeチャンネルを合わせるとそのライブ視聴査数が2181万4979人となっていることをMFLの公式サイトが発表しています。
 さらにYouTubeでの録画視聴者数は、5月30日までの時点で4983万8140人とということです。なおUnifiの無料YouTubeチャンネルでは、今季のスーパーリーグ全試合の観戦が可能になっています。
 この他、中継された78試合中、ライブ視聴者が最も多かった節は第11節で6試合合計230万7698人、また最も視聴者が多かった試合は4月24日の第10節JDT対トレンガヌFC戦(スルタン・イブラヒムスタジアム、ジョホール州イスカンダルプテリ)で69万8341人が視聴したということも発表されています。
 このように様々なプラットフォームで視聴可能な1部スーパーリーグに対し、2部プレミアリーグについてMFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは、プレミアリーグの各クラブには7月24日から再開される後半戦ではソーシャルメディアやストリーミングによる配信が許可されたことを明らかにしています。
 またMリーグ前半戦は4月2日の第6節から感染者拡大による無観客措置が取られた5月9日の第12節までは、首都圏など一部地域を除いて定員の10%から25%の条件付きながらスタジアムでの観戦も可能でしたが、この期間中はスーパーリーグとプレミアリーグ合わせて観戦可能だった41試合では6万2318人の有料入場者数を集め、その内。4月9日の第8節クダ・ダルル・アマンFC対トレンガヌFC戦(ダルル・アマンスタジアム、クダ州アロースター)が最大の5941人の有料入場者を記録したということです。

FAMのテクニカルディレクターがU20代表のAFCU23アジアカップ予選派遣について説明
 マレーシアサッカー協会FAMのオン・キムスイ テクニカルディレクター(TD)は、現在のU20代表の2024年パリオリンピックの予選突破に向けた計画の中心人物の1人ですが、このたび、英字紙ニューストレイトタイムズの取材に応じ、自身の考えを明らかにしています。
 FAMは今年10月に開催されるAFC U23アジアカップ2022年大会(旧U23選手権)予選にU23代表ではなく、U20代表を派遣することを発表しましたが、これに対しては現在のU23代表の育成が等閑(なおざり)になるなど否定的な反応が出ています。
 こういった声に対し、前回2020大会予選にU23代表監督として臨みながら本戦出場を果たせなかったオンTDは、その成功が100%保証されるわけではないとはしながらも、自身の経験に基づき「選手が共に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、より好ましい結果を生み出す可能性は高い」と考えていると話しています。
 「今年2021年から選手たちが一緒にプレーすれば、彼らは様々なレベルの大会に出場することができる、オリンピック予選突破について最優先されるのは現在のU20代表である。U20代表がAFCU23アジアカップの予選を突破することは容易ではないが、上の年代の選手たちと対戦する貴重な機会をチームとして活用したい。」と話すオンTDは、現在のU23代表の選手についていも(チーム参加の)扉は完全に閉じられたわけではない、とも述べ、将来的にはU23代表選手の参加に含みを持たせる発言をしています。
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 2020年大会予選では、中国と引き分け勝点で並びながら得失差で本戦出場を逃したU23代表からはサファウイ・ラシド、アキヤ・ラシど、シャマー・クティ・アッバ(以上JDT)、シャミ・サファリ(スランゴールFC)、ドミニク・タン(タイ1部ポリス・テロFC)の5選手がFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選に出場した代表に選ばれています。U23代表はフル代表への選手を供給する場でもあると思うのですが、このU23代表年代を冷遇すると、それは代表教科にも悪影響が出る可能性があります。またフル代表ではルクマン・ハキム・シャムスディン(ベルギー1部KVコルトレイク)、アリフ・アイマン(JDT)らU20代表候補選手がいますが、フル代表レベルの彼らをパリオリンピック予選までU20代表に縛り付けてしまうのも、むしろ彼らの成長の芽を摘んでしまいかねないような気がします。U23代表にU20代表の有望選手を加えたチーム編成で、U23アジアカップ本戦出場を目指し、本戦でアジアの強豪との試合を経験する方が遥かに代表強化につながるような気がします。

JDT IIからマラッカUへ期限付き移籍のロバットが抱負を語る
 各年代代表だけでなくフル代表の経験もあるJDT IIの守備的MFゲイリー・スティーヴン・ロバットがマラッカ・ユナイテッドFCへ期限付き移籍しましたが、MFLの公式サイトではこのロバット選手を特集しています。
 今季は開幕からMリーグ1部スーパーリーグの覇者JDTのセカンドチームで、Mリーグ2部プレミアリーグのJDT IIでプレーしてきたロバット選手は、代表キャップ数11の28歳です。豊富な運動量が売り物のロバット選手が期限付き移籍したマラッカ・ユナイテッドFCは3勝5分5敗でリーグ11位と降格圏にいるチームです。
 そんなチームに今季2度目のトランスファーウィンドウ期間に期限付き移籍したラバット選手は後半戦開幕初戦となる7月25日の第14節スリ・パハンFC戦を重要な試合と考えているとブル生に語っています。
 「まず自分がやらなければならないことは、ザイナル・アビディン・ハサン監督に対して自分がチームの戦力になることを証明することだ。より多くの試合出場時間を求めての移籍してきたことは事実だが、チームメートからも信用を得なければならないことも分かっている。スリ・パハンFC戦で出場機会が与えられれば、自分がどのくらいチームのために献身的にプレーできるかを見せたい。」と述べるラバット選手は、マラッカ・ユナイテッドFCを降格圏から脱出させることが自分に課せられた使命であるとも話しています。

6月30日のニュース:U21、U19、フットサル各リーグの開幕が9月に延期、タン代表監督交代についてFAMは検討せず、マレーシア代表が日本代表に3連勝(e国際親善試合で!)

U21、U19、フットサル各リーグの開幕が9月に延期
 マレーシアサッカー協会FAMは主催するU21リーグのプレジデントカップ、U19リーグのユースカップ、そしてフットサルリーグのマレーシアプレミアフットサルリーグの今季2021年シーズン開幕をいずれも9月まで延期することを公式サイトで発表しています。
 スチュアート・ラマリンガムFAM事務局長名で掲載された発表によると、この延期は6月28日までとされていた完全ロックダウンが期限を決めないまま延長となったことが理由とされていますが、同時に9月とする開幕もマレーシア政府が発表した「回復」政策次第によるとし、各リーグ開幕から30日前に参加チームの練習が許可されることを条件としており、正確には「早くとも」9月開幕ということになりそうです。
 また今回の発表では、リーグの開幕時期だけでなく、リーグフォーマットの変更や試合日程、またリーグで適用されるルールの変更などの可能性にも言及されており、そういった変更点には逐次、リーグ参加チームと共用していくとも述べられています。
 当初はプレジデントカップとユースカップはそれぞれ6月2日と6月3日に、マレーシアプレミアフットサルリーグは男子が6月12日に、女子が8月12日に開幕の予定となっていましたが、6月1日より完全ロックダウンが実施されたため延期となっていましたが、今回の発表でさらに延期となりました。

タン代表監督交代についてFAMは検討せず
 先月終了したFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選では同じ予選G組だった隣国タイではサッカー協会が西野朗代表監督との契約を解除といった報道も出ているようですが、そのタイを破って3位となったマレーシア代表のタン・チェンホー監督は来年2022年12月までとなっている契約の見直しなどについての予定はないとマレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 マレーシアサッカー協会FAMのユソフ・マハディ会長代理は、契約期間が残っていることに加えて、アジアカップ出場というミッションが達成されていないことから、今後予定されている代表チーム運営委員会では、来年3月に予定されているAFC選手権アジアカップ2023年大会3次予選に向けての準備以外の議題は現時点では挙がっていないと話し、W杯3次予選出場を逃したタン監督の去就について話し合われる予定はないとブルナマの取材に答えています。
 その一方で、代表チームのチームマネージャーでもあるマハディ・ユソフ会長代理は、代表チームがアジアカップ3次予選を突破して本大会出場を達成するために最適な環境を用意できるよう、運営委員会では今後新たに代表監督の人選も含めてあらゆる点が議題に上がる可能性については否定しなかったということです。

マレーシア代表が日本代表に3連勝(e国際親善試合で!)
 eスポーツのサッカーマレーシア代表が日本代表に3連勝!6月24日に行われたe国際親善試合キリンイミューズカップで2020年3月に新たに発足したeスポーツ・サッカーの日本代表「サッカーe日本代表」はサッカーeマレーシア代表と対戦し、マレーシアが3試合で3-5、3-4、0-3と3連勝で日本を一蹴しています。
 日本代表は今年2021年4月末から5月にかけて行われたFIFAeネーションズカップのアジア・オセアニア予選で優勝し、8月にデンマークで行われる本大会に出場する8月の世界大会に出場を決めたものの、アジア・オセアニア予選のグループリーグでは、やはりFIFAeネーションズカップ世界大会に出場するマレーシアに連敗、しかも予選グループでは首位マレーシアに次ぐ2位となっており、8月の本大会と同様の2on2の団体戦形式で行なう強化マッチとして企画されたこの国際親善試合をアジア・オセアニア予選のリベンジマッチとして臨んだものの、マレーシアが逆にこれを返り討ちにする形になりました。
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 私は知らなかったのですが、マレーシアはFIFAeランキングでは1位英国、2位ブラジルに次ぐ3位、一方で日本代表は18位とアジアではダントツの強さです。
 以下は日本サッカー協会JFAの公式YouTubeチャンネルにアップロードされたe日本代表対eマレーシア代表の試合の映像で、試合は2分30秒辺りからです。

6月22日のニュース:JDTオーナーのイスマイル殿下が代表チームマネージャーとなるべきでない5つの理由

JDTオーナーが代表チームマネージャーをすべきでない5つの理由
 先日終了したFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選では、マレーシアは予選G組で1位アラブ首長国連邦、2位ベトナムに敗れて3次予選進出を逃した一方で、アジアカップ3次予選への出場権を獲得しています。
 この予選最終戦となったタイ戦前日にMリーグ1部JDTのオーナーでジョホール州皇太子でもあるトゥンク・イスマイル殿下がマレーシアサッカー協会会長FAMに向けて、代表チームに最高の練習環境と最高の指導者を提供する用意があるとして、その条件に自身を代表チームのチームマネージャーにすることを突然、提案しました。
 この提案に対して、国内のメディア、さらにはソーシャルメディア上で様々な意見が交わされる一方、FAMのハミディン・アミン会長は、この提案を検討するために協会にでの手続きに則った話し合いを進めることを明らかにし、慎重に対応する方針をとっています。
 このイスマイル殿下の提案に対し、サッカー専門サイトのスムアニャボラが「イスマイル殿下が代表チームマネージャーとなるべきでない5つの理由」というタイトルで非常に興味深い記事を掲載していますので、拙訳ですがここに書き留めておきたいと思います。
 イスマイル殿下が2013年にオーナーとなって以降、JDTはMリーグ1部で昨季まで7連覇を達成し、東南アジアのクラブとしては初となる2015年のAFCカップ制覇を果たすなど、その手腕は申し分ありませんが、この記事を書いたゲイリー・ルガード氏はイスマイル殿下は代表のチームマネージャーとなるべきではないとしています。

<理由1:FIFAの規定に抵触する可能性がある>
 一般に代表チームはその国のサッカー協会が運営上の責任を負い、マレーシアではマレーシアサッカー協会FAMがこれにあたる。この条件下でイスマイル殿下が代表チームのチームマネージャーになるための方法は二つありその一つは、かつて会長を務めたFAMに復帰することだが、イスマイル殿下は代表チームの運営権を求めているだけで、FAM全体の運営は意図していない。そしてもう一つは代表の民営化という方法だ。民営化された代表チームはFAMから離れて自由に活動ができるが、マレーシアサッカーのトップに位置するFAMが代表チームに何ら責任を追わないという事態はFIFAの規定に抵触しないのだろうか。

<理由2:マレーシアサッカーのロードマップ、F:30との整合性>
 マレーシアサッカー協会FAMは2030年までにアジアのトップ5入りを目指すためのロードマップ(行程表)「F:30」を発表している。このロードマップはFAM、そしてマレーシア国内のサッカーに関係者及びサポーターに対する行動計画でもある。このF:30で掲げられている目標を実現するためには、関係者全員が目的を共有する必要がある。その場合、FAMが代表チームを一個人に任せることはこのF:30と整合性があると言えるのか。ハミディン・アミンFAM会長がこのF:30を発表した際には、このロードマップはFAMの「本気度」を示すものだと述べたが、FAMがうかつに他人に代表チームを任せることによって、このF:30に関わる人々にはFAMの言う「本気度」が薄れたとは映らないだろうか。誰かに任せたからといってFAMは代表チームが短期間で強くなるという幻想を持つべきではない。

<理由3:マレーシアサッカーDNAと整合性>
 イスマイル殿下は自身がチームマナージャーになった暁には、最高のコーチングスタッフを用意すると述べている。ここで疑問が湧くのは、FAMが草の根からトップレベルまで国内サッカー全体に浸透させたいとしているマレーシアサッカーのDNAに沿った指導を果たしてその「最高のコーチングスタッフ」が行うのかどうか、ということである。代表チームのことだけを考えれば、現在の代表が採用しているシステムとJDTが採用しているシステムは似ており、イスマイル殿下もおそらく熟知していると考えられることから、特に問題にはならないだろう。しかし、FAMはジュニア、ユースから代表まで一貫したシステムでプレーすることで、将来の代表選手となるべき選手を養成するためのマレーシアサッカーDNAを導入しており、FAMがこの方針を変更しない限り、代表独自のシステムはマレーシアサッカーDNAと齟齬(そご)をきたす可能性がある。

<理由4:利益相反>
 イスマイル殿下が代表チームを強化する際に最も懸念されるのがこの利害対立である。イスマイル殿下がJDTのオーナーのまま代表チームのチームマネージャーに就任すれば、サッカー関係者やサポーターから否定的なコメントが出る可能性が非常に高い。具体的な例を挙げるとすれば誰をを代表に招集するか、といった問題もその一つである。現在の代表には、マレーシア人の親を持つもののマレーシア国外で生まれ育ったディオン・コールズ、マシュー・デイヴィーズ、ブレンダン・ガン、ドミニク・タン、ラヴェル・コービン=オング、ジュニオール・エルドストール、サミュエル・サマーヴィルらの帰化選手、そしてマレーシア人とは血縁関係持たないギリェルメ・デ・パウラ、リリドン・クラスニキ・モハマドゥ・スマレといった帰化選手がいる。そしてこれらの10名の帰化選手の内、JDTに在籍した経験が全くないのはブレンダン・ガン(スランゴールFC)と今回の予選から代表に加わったディオン・コールズだけである。この状況を理解した上で、もしイスマイル殿下が代表チームのチームマネージャーとして誰を帰化させるかにも関与することになれば、それが果たして代表の利益なのか、JDTの利益なのか、という議論が間違いなく発生する。例えイスマイル殿下が純粋に代表チームのことを考えて行うことだとしても、必ずその目的に対して疑心暗鬼になる者は出る。そしてイスマイル殿下が代表チームのチームマネージャーを続ける限り、これは取りざたされ続け、結果的に代表チームそのものにも影響が出る可能性がある。

<理由5:JDTは今後もイスマイル殿下を必要とする>
 JDTを東南アジアでトップレベルのチームに育て上げたことで、イスマイル殿下は代表チーム自体の強化にも間接的ながら大きく貢献している。
 JDTのサファウィ・ラシド、シャフィク・アフマド、アキヤ・ラシド、アリフ・アイマン、ラマダン・サイフラーといった選手たちは今後10年は代表の中心選手としてプレーできる選手たちである。また今回のW杯予選で代表に加わったディオン・コールズ(デンマーク1部FCミッティラン)に代表でプレーするよう拙宅したのもイスマイル殿下である。また代表でも屈指の帰化選手ラヴェル・コービン= オングがマレーシア代表でプレーするようになったのもイスマイル殿下の説得のおかげである。国内リーグでは敵なしのJDTだが、AFCチャンピオンズリーグというアジア最大の舞台でJDTが成功するためにはイスマイル殿下のリーダーシップが必要である。

<最後に>
 イスマイル殿下は代表が今回のW杯予選で思うような結果を出せなかったのはFAMの指導力不足ではないかと指摘しており、自身の代表チームのチームマネージャー就任を提案したことをFAMの理事会は自分たちへの警鐘だと考えるべきだ。自分たちの努力は十分なのか、現状に甘んじてはいないのか、と。
 イスマイル殿下の提案は考慮に値する者だが、上の5つの理由から、少なくとも現在は代表チームのチームマネージャーに就任するべきときではない。
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 この記事は最後に「この記事はあくまでも筆者の個人的な意見であり、スムアニャボラ全体の意見を反映したものではない」との注意書きも掲載されています。王族へのオープンな意見はなかなか表明しにくこの国で、このような記事を見たのは初めてでした。非常に興味深くまた建設的な意見で説得力もありますが、一部の極端な考えを持つマレー人の中には王室に対する意見を全く認めないものもいるので、この国で王族についての内容を掲載するには、こういった注意書きも必要だということも改めて認識しました。