PJシティがMリーグ撤退を正式に発表、来季の1部リーグは15チーム編成に
Mリーグ1部スーパーリーグで今季9位のPJシティFCが、来季のスーパーリーグからの撤退を正式に発表しています。このブログでも、SNSだけでなく現地メディアまでもがその撤退の噂を報じていることについて取り上げましたが、いよいよ実現してしまったようです。
マレーシアの通信社ブルナマは、「Mリーグ撤退は、クラブの財政上の問題によるものではなく、来季から改編されるMリーグが目指す方向性が「PJシティが目指す方向性と合致しない」ことが理由である、というPJシティFCのスバハン・カマル会長の発言を伝えています。具体的には(リーグ撤退は)来季からスーパーリーグでは各チームの外国籍選手枠の上限が現在の5名から9名に増えること(ただしフィールド上はこれまで通り5名)が主な理由であると説明し、昨季から外国籍選手を起用せず、マレーシア人選手だけでチームを編成してリーグに参加してきたPJシティFCにとっては、来季のスーパーリーグでは他のチームとの競合が困難になると説明しています。
その一方でスバハン会長は、現在のオーナーであるQI(キューアイ)グループが、来季のスーパーリーグに参加する国内クラブライセンスが交付されているチームを売却する用意があると説明しています。「PJシティFCのリーグ撤退は財政上の問題によるものでなく、新たなオーナーは負債を負うこともなく、新たなチームを手に入れることができる。」と述べて、クラブの売却先候補企業にアピールしています。
さらにスバハン会長は、マレーシアでサッカークラブを運営することは収益性の高いビジネスではないと述べ、この国では州政府からの資金援助を得られるクラブが、サポーターだけでなく、(クラブに関わる州の)政治家の利益を満たすことによって生き残れるとも発言しています。
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最後は恨み節にも近い発言で、リーグ撤退発表の記者会見を締めくくったスバハン会長ですが、そこには真理も含まれています。かつてはインド系マレーシア人サッカー協会MIFAが運営し、2014年に当時の3部リーグにあたるFAMカップからスタートしたこのクラブは2017年に2部プレミアリーグに昇格、そして2019年にはスーパーリーグに昇格するとPJシティFCとクラブ名を変更して現在に至ります。伝統的に州政府傘下の州サッカー協会や警察、国軍、公立大学などがプロクラブを運営してきたマレーシアサッカー界で、PJシティは州政府や公的機関の後ろ盾を持たない現存する唯一のプロクラブチーム。言い換えればPJシティFCを「おらがチーム」と呼ぶサポーターが生まれにくいクラブでした。昨季からは”Yakin Lokal”「ローカル(=マレーシア人選手)を信じろ」というチームスローガンの元、マレーシア人選手100%のチーム編成でトップリーグを戦い、GKカラムラー・アル=ハフィズ、MFのV・ルヴェンティラン、FWダレン・ロック、コギレスワラン・ラジらを代表に送り込むなど、マレーシア人選手のみで構成されたチームとして、代表チーム強化に貢献してきましたが、その一方で、ホームの試合を観戦に行けば、いつもアウェイサポーターの方が多く、リーグ戦でも観客が1000名を切ることが珍しくないクラブがトップリーグで4シーズンも生き残ることができたことの方が奇跡なのかもしれません。クラブの愛称であるフェニックス「不死鳥」のように、新たなオーナーを得て復活するのか、それともこのまま消滅してしまうのか。年内にはクラブの運命が明らかになりそうです。
またリーグ撤退表明の記者会見でスバハン会長は、クラブ買収企業に対して、PJシティFCの名前を残すことを売却の条件としています。実はこれより前にいずれも今季1部スーパーリーグでプレーしたサラワク・ユナイテッドFCとマラッカ・ユナイテッドFCが選手へのキュ量未払いなどを理由に国内クラブライセンスが交付されず。来季のスーパーリーグ参加が不可能になっています。マラッカ・ユナイテッドはチームの名称をハリマウ・マラッカFCと変更し、来季はアマチュアリーグの3部でプレーする可能性が出ていますが、サラワク・ユナイテッドについては、来季の方針が発表されておらず、一部ではサラワク・ユナイテッドを運営に関わるサラワク州サッカー協会がPJシティを買収して、サラワク・ユナイテッドに代わるチームとしてスーパーリーグ参加を目論むのでは、という噂が広まっています。
実際、2019年には、サラワク州サッカー協会が運営していた2部プレミアリーグ所属のサラワクFAは、3部M3リーグ所属のクチンFA(現クチンシティFC)に入れ替え戦で敗れて3部降格となったものの、2部プレミアリーグで資金繰りに苦しんでいたスランゴール・ユナイテッドFCを買収し、本拠地をスランゴール州からサラワク週に移してサラワク・ユナイテッドFCと名称を変えて2部に残留するという「力技」を使った過去もあり、今回も1部スーパーリーグ残留のためにPJシティFCを買収するのではという話がまことしやかに流布しています。しかし、PJシティFCがクラブ名称の維持を条件とすれば、サラワク州サッカー協会が買収する利点がなくなってしまいます。