2022年シーズン開幕直前!
Mリーグ1部スーパーリーグクラブ紹介第3回
スランゴールFC & KLシティFC

Mリーグ2022年シーズンは3月5日ピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介します。第3回は昨季Mリーグ5位のスランゴールFCと同6位のKLシティFCです。

スランゴールFC(2021年シーズンスーパーリーグ5位)

本拠地:MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
2021年シーズン成績:5位(10勝6分6敗)得点45(リーグ2位)失点30(同6位)
過去5シーズンの成績:2017年6位-2018年8位-2019年3位-2020年5位-2021年5位
監督:ミヒャエル・ファイヒテンバイナー(ドイツ)
外国籍選手(*は新加入選手):
 *FWユーリ・エンリケ・ジ・オリヴェイラ・コスタ(ブラジル)
 *FWカイオン(ブラジル)
 FWハインテットアウン(ミャンマー-アセアン枠)
 *MFバハー・アブドッラフマーン(ヨルダン-AFC枠)
 MFアレックス・アグヤクワ(ガーナ)
 *DFヤザン・アル=アラブ(ヨルダン-AFC枠)
 DFサフアン・バハルディン(シンガポール-アセアン枠)
 DFジョーダン・アイムビラ(ガーナ)
 DFジョージ・アトラム(ガーナ)
 
主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 #GKカイルルアズハン・カリド
 *#GKサミュエル・サマーヴィル(ペナンFCより加入)
 *#DFクエンティン・チェン(ペナンFCへ期限付き移籍終了)
 DFシャルル・ナジーム
 DFハリス・ハイカル
 DFアシュマウイ・ヤキン
 DFR・ディネシュ
 *DFファズリ・マズラン
 #MFブレンダン・ガン
 #MFムカイリ・アジマル
 MFハキム・ハサン
 MFアリフ・ハイカル
 FWダニアル・アスリ
 #FWシャーレル・フィクリ

チーム紹介:
1982年のマレーシアリーグ(ただし当時は現在とは違いアマチュアリーグ)発足以来リーグ優勝6回、1921年創設のマレーシアカップでは優勝33回、準優勝16回、そして1990年創設のFAカップでは優勝5回、準優勝3回とマレーシアサッカー界では圧倒的な歴史を誇る「赤い巨人」も、最後のリーグ優勝は2010年と、近年はマレーシアサッカー盟主の座をMリーグ8連覇中のJDTに奪われて久しいスランゴールFC(以下スランゴール)。特にここ数年は、長期的視点に欠けるチーム補強で迷走していましたが、2019年末にミヒャエル・ファイヒテンバイナーをテクニカルディレクターに迎え入れ、さらにマレーシアサッカー協会FAMと青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会NSCが共同で運営する国家サッカー選手育成プログラムNFDPの中核をなすエリートアカデミーのモクタル・ダハリアカデミーAMDの第1期卒業生34名中、U19代表選手を中心に28名を獲得すると、過去2年はリーグ優勝よりもこの若い選手たちを育成しながら勝つ方針で2年連続5位となりました。

そんなチームからは。U23代表の主将でA代表にも招集されたムカイリ・アジマルや、リーグ戦とマレーシアカップを合わせてマレーシア人選手として昨季チーム最多の6ゴールを挙げたダニアル・アスリ、最終的にはケガで辞退したものの昨年はA代表に初めて招集されたシャルル・ナジーム、期限付き移籍したペナンFCでレギュラーポジションを掴むとU23代表、そしてスズキカップ2020に出場したA代表にも招集されたクエンティン・チャンら経験を積んだ選手たちが今季は主力となってリーグに臨みます。

若い選手たちに期待がかかる一方で、昨季のチーム総ゴール数43(チーム総得点45点中2点はオウンゴール)の内、26ゴールを挙げたイフェダヨ・オルセグンの退団による穴を埋めることができるかどうかが、今季のスランゴールの最大の問題となるでしょう。在籍した過去3シーズンで50ゴール(43試合)とチームの絶対的なエースの代わりをユーリ・エンリケ、カイオンのブラジルFWコンビに託すことになりますが、この2人が期待通りの働きができなければ。若いチームだけに一気にBクラス転落の可能性もあります。

ボラセパマレーシアJP的注目選手
・ブレンダン・ガン
昨年6月のW杯予選後に精巣腫瘍があることが判明し、昨季後半は治療に専念したガン選手ですが、既に今季のプレシーズン練習にも参加しています。また先日はガンの早期検診キャンペーンのイベントにもパネリストとして参加するなど、サッカー選手だけでなくガンを克服した模範として啓発活動を行うことも表明しています。そのガン選手不在が昨年後半のA代表の不振の原因の一つ、そしてスランゴールがスーパーリーグでトップ3に絡むことができなかった原因とも言えるでしょう。いわゆる「ボックストゥボックス」タイプのMFとして攻守に貢献するだけでなく、A代表、スランゴールいずれでも精神的支柱としてチームを鼓舞し続けるリーダーの復帰はクラブ、代表の両方で楽しみです。

・シャーレル・フィクリ、ダニアル・アスリ
新加入のブラジルFWコンビへの期待が高まる一方で、A代表のストライカー不足解消のためにも期待したいのが。昨季は2人合わせてわずか4ゴールに終わった2020年スーパーリーグのマレーシア人得点王シャーレル・フィクリと、同年プレミアリーグのマレーシア人得点王ダニアル・アスリの両選手です。新型コロナにより短縮された2020年シーズンでは、シャーレル選手は11試合で10ゴール、ダニアル選手は11試合で7ゴールを挙げており、実績は十分な2人が今季は合わせて10ゴール以上を挙げることができれば、スランゴールの上位進出の可能性は高まります。

・シャルル・ナジーム
リーグ優勝のJDTは完封勝ちが11試合、2位のペナンFCも無失点勝利が6試合ある一方で、スランゴールのクリーンシートはわずか3試合しかなく、昨季リーグ6位の30失点のDF陣をどう立て直すのかもスランゴールの今季の課題です。シャーミ・サファリ(JDTに移籍)、A・ナマテヴァン(ヌグリスンビランFCに移籍)と経験のあるDF2名がチームを去った中で、シンガポール代表のサフアン・バハルディンとともに今季のDF陣の中心となるのが独特の髪型から「アフロ」の愛称で呼ばれるシャルル・ナジームです。豊富な運動量を誇るものの、張り切りすぎた結果のミスも多い印象だった昨季を経て、チームのセンターバックとして活躍できれば、本人が憧れていると話すアイディル・ザフアン(JDT)に代わって代表のセンターバックとしてプレーする機会もありそうです。

KLシティFC(2021年シーズンスーパーリーグ6位)

本拠地:KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
2021年シーズン成績:6位(8勝9分5敗)得点27(リーグ6位)失点20(同2位)
過去5シーズンの成績:2017年2部1位-2018年10位-2019年12位-2020年2部3位-2021年5位
監督:ボヤン・ホダック(クロアチア)
外国籍選手(*は新加入選手):
 *FWケヴィン・クベンバ(コンゴ/フランス)
 FWロメル・モラレス(コロンビア)
 MFパウロ・ジョズエ(ブラジル)
 DFジャンカルロ・ガリフロッコ
 GKケヴィン・メンドーザ(フィリピン-アセアン枠)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 *GKアズリ・アブドル・ガニ(ペラFCより加入)
 #DFイルファン・ザカリア
 DFニック・シャールル
 DFカマル・アジジ
 DFライアン・ランバート
 *DFデクラン・ランバート(オランダ2部FCデン・ボスより加入)
 *DFムハマド・ファウジ(トレンガヌFCより加入)
 *DFナビル・ハキム(PJシティFCより加入)
 #MFアクラム・マヒナン
 MFザフリ・ヤハヤ
 MFハディン・アズマン
 MFファクルル・アイマン
 FWサフィ・サリー(2/21追加)

チーム紹介:
2020年シーズンに2部プレミアリーグで3位となり、昨季は2季振りとなる1部昇格を果たしたKLシティはスーパーリーグを6位で終えると、その後のマレーシアカップでは決勝でJDTを破るなど、ペナンFCとともにスーパーリーグの台風の目となりました。プレミアリーグで監督を務めたニザム・アズハ氏がスーパーリーグで監督を務めるためのAFCプロライセンスを保持していなかったことから、クランタンFA(現クランタンFC)ではリーグ、マレーシアカップ、FAカップの国内三冠を達成した他、現在リーグ8連覇中のJDTの初優勝時の監督だったボヤン・ホダック監督を招聘するとこれがピタリとはまり、今季のAFCカップ出場権まで獲得しています。

5位のスランゴールとは逆に、少ない得点を守り切るスタイルでシーズンを乗り切ったKLシティですが、ホームでは今季のリーグ戦11試合、マレーシアカップ5試合の計16試合で負けなし、さらにリーグ戦7試合、マレーシアカップ5試合の合計12試合がクリーンシートを達成していますが、32年ぶりの優勝を飾ったマレーシアカップの決勝は、守護神GKケヴィン・メンドーサが好セーブを連発し、まさに今季を代表するような試合でした。

そもそも守って勝つ試合運びをせざるを得なくなったのは、エースとして期待されていたFWドミニク・ダ・シルヴァが開幕直後のケガで離脱、2度目のトランスファーウィンドウ期間に獲得したFWキリアン・ヌワブエズもチーム合流後の初戦でケガを負った結果、出場はわずか1試合と、シーズンを通して攻撃力不足に苦しんだことが原因でした。窮余の策としてミッドフィルダーだったロメル・モラレスをシーズン途中でフォワードにコンバートし、結果的にはこの起用が実を結んだものの、年間を通しての得点力不足に悩んだボヤン・ホダック監督にとって今季加入のケヴィン・クベンバがはたして救世主となるのかどうかに注目です。

他のクラブが多くの外国籍選手を入れ替えたのに対し、KLシティは上記のクベンバ選手以外の4名が残留、マレーシア人選手も大半が残るなど、今季も上位を脅かすチームとなっていますが、気になるのはDFダニエル・ティンの退団です。昨季のチームの全試合33試合に出場し、そのうち32試合は先発するなどKLシティ躍進の鍵となったDF陣の中心選手の退団による穴が埋まらなければ、一気に下位転落もあり得ます。

ボラセパマレーシアJP的注目選手:
・ロメル・モラレス
今季は開幕からFWとして起用されるロメル・モラレスは、Mリーグでプレーするのは今季が5シーズン目となり、FIFAが規定する帰化選手の条件を満たすことから、KLシティはモラレス選手の帰化を進めることを明言しています。今年8月に25歳となるモラレス選手は、代表に貢献できていないという批判を受けている帰化選手のギリェルメ・デ・パウラ(JDT、今年36歳)、リリドン・クラスニキ(JDTからインド1部オディサFCに期限付き移籍中、今年30歳)と比べてもその若さが魅力ですが、マレーシア選手を凌駕する圧倒的な実力が帰化選手には求められることから、昨季の5ゴールからどれだけ上積みできるかが、クラブにとっても自身の帰化にとっても重要になりそうです。

・ライアン・ランバート
昨季開幕時はベンチ入りもできなかったライアン・ランバートですが、シーズン終盤には出場幾何も増え、リーグ戦終了後のマレーシアカップでは先発9試合を含めて11試合すべてに出場し、32年ぶりの優勝に貢献するなど、完全にレギュラーポジションを掴んでいます。メルボルン・ヴィクトリーのユースチームやオランダ2部のFCデン・ボスなど経て昨季からKLシティでプレーする23歳のランバート選手は母親がマレーシア人のため、マレーシア人選手として登録されており、今季も主力として活躍できれば、将来の代表入りも見えてきます。今季は双子の兄弟でDFデクラン・ランバートがチームメートとなり、チーム内の競争も激しくなりますが、兄弟揃っての代表入りとなれば話題にもなりそうです。
 

2月4日のニュース
アセアンU23選手権-アメリカ在住のワン・クズリの参加は見送りか
KLシティは長身FWが5人目の外国籍選手
クチンシティにはリベリア代表FWが加入

アセアンU23選手権-アメリカ在住のワン・クズリの参加は見送りか

今月2月14日から26日までカンボジアのプノンペンで開催される東南アジアサッカー連盟AFFU 23選手権に向けてマレーシアU23代表は合宿を行っています。先日は5名が追加招集される一方で、アメリカの大学でプレーするワン・クズリ・ワン・カマルは未だ合流できていません。この状況について、ブラッド・マロニーU23代表監督は、カンボジア出発前に大会に参加する全選手が揃うことを望んでいると話し、合流が遅れているワン・クズリ選手についてはマレーシア入国後の検疫隔離期間が必要なことから、2月6日までに合流が確定しない場合には候補選手名簿から外す方針を明らかにしています。

スポーツ専門サイトのスタジアムアストロによれば、ワン・クズリ選手と直接、電話で話をし、本人がU23代表参加を望んでいることを確認したと話すブラッド・マロニーU23代表監督は、ワン・クズリ選手のU23代表への合流を望んでいるものの、2月12日と迫ったカンボジア出発前にチームに合流できなければ、戦力として考慮しないと話しています。U23代表は本日2月4日にサバへ出発し、2月5日にMリーグ1部スーパーリーグのサバと練習試合を行い、その後クアラルンプールに戻って2月10日にKLシティと最後の練習試合を行った後、カンボジアへ向けて出発する予定になっています。

マレーシアU23代表は昨年10月にモンゴルで行われたAFC U23アジアカップ予選を1位通過していますが、この時の主力選手は今回のU23代表には招集されておらず、マロニー監督は今回のAFF U23選手権を主力以外のメンバーの底上げと位置付けており、ワン・クズリ選手についても合流しても自動的にボジションが与えられるわけではないと話しています。また今回のU23代表合宿には、MFアシャル・ハディ(JDT II)、FWカイリ・スフィアン、DFファイズ・アメル(スランゴール2)、アズハド・ハラズ(サバ)、GKアイザット・アイマン、DFウバイドラー・シャムスル(FAM-MSNプロジェクト)の6名のU19代表も招集されています。

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タイはU19代表が参加、開催国カンボジアは本田圭佑氏が指揮を取る、またリーグ戦中にも関わらず主力5名の選手をU23代表に招集されたバンバン・パムンガス監督(ブルシジャ・ジャカルタ)が怒っている、などと大会が近づくにつれ、さまざまなニュースが入ってきていますが、U23代表はこのAFF U23選手権後には5月に東南アジア競技大会通称シーゲームズ(ベトナム)、6月にはAFC U23アジアカップ(ウズベキスタン)、そして9月にはアジア競技大会(中国)と大会が目白押し。しかもA代表と掛け持ちの選手はAFCアジアカップ2023大会予選が6月に、AFF選手権スズキカップ2022が12月にも控えており、FAMがしっかりと優先順位をつけて選手を招集して欲しいです。

KLシティは長身FWが5人目の外国籍選手

5つ目の外国籍選手枠が埋まっていなかったKLシティは、元コンゴ代表でフランス生まれのFWケヴィン・クベンバの加入をクラブ公式Facebookで発表しています。192cmと長身のクベンバ選手は28歳で、フランス1部のLOSCリール、ブルガリア1部CSKAソフィアなどでもプレーし、昨季はいずれもアゼルバイジャン1部のサバフFKとKSテウタ・ドゥラスに所属していました。

昨季のKLシティはFWドミニク・ダ・シルヴァが開幕直後のケガで離脱、2度目のトランスファーウィンドウ期間に獲得したFWキリアン・ヌワブエズはチーム合流後の初戦でケガを負うなど、シーズンを通して攻撃力不足に苦しみました。窮余の策としてMFロメル・モラレス(コロンビア)をシーズン途中でフォワードにコンバートしたところ、シーズン後半にはこの起用が実を結んだものの、年間を通しての得点力不足に悩んだボヤン・ホダック監督にとってクベンバ選手は喉から手が出るほど欲しかったストライカーの獲得となりました。シーズン終盤のマレーシアカップでは8試合で10ゴールを挙げた188cmと長身のモラレス選手とクベンバ選手の「ツインタワー」はスーパーリーグのライバルにとって脅威となりそうです。

クチンシティにはリベリア代表FWが加入

Mリーグ2部プレミアリーグのクチンシティは、リベリア代表FWアブ・リザルド・カマラの加入をクラブ公式Facebookで発表しています。北マケドニア1部リーグのFKマケドニヤ・ジョルチェ・ペトロフから加入するカマラ選手はKFドゥカジニ(コソボ)、NKルダル・ヴェレニエ(スロベニア)などでもプレー経験があります。またFIFAの公式サイトによると、昨年9月から11月にかけて行われたFIFAワールドカップ2022年大会アフリカ2次予選でリベリア代表として5試合に出場し(FIFAの記録では登録選手名がAbu KamaraではなくAbu Rizardとなっています)、1部スーパーリーグのトレンガヌでプレーする同じリベリア代表のクパー・シャーマンとチームメートでもあります。25歳のカマラ選手の加入で、クチンシティは昨季から残留するDFアレモン(ブラジル)、2季振りの復帰となるMF谷川由来と3名の外国籍選手枠が埋まっています。また残る1人については英国出身ということをイルファン・バクティ監督自身がメディアに明らかにしています。

1月18日のニュース(1)
ACL-JDTは川崎フロンターレや広州FCと同組に
AFCカップ-クダとKLシティは日本人所属クラブとの対戦も

ACL-JDTは川崎フロンターレや広州FCと同組に

アジアサッカー連盟AFCチャンピオンズリーグACLの今季2022年グループステージの組み合わせ抽選がクアラルンプールのAFCハウスで行われ、マレーシアから出場するMリーグ覇者のジョホール・ダルル・タジムJDTは、タイ代表のチャナティップ・ソンクラシンが加入した昨季のJリーグ覇者川崎フロンターレ、2013年と2015年のACL覇者広州FCと同じI組に入っています。なおI組のもう1チームは蔚山現代FC(韓国)とポートFC(タイ)が対戦するプレーオフの勝者となります。なお集中開催で行われるACLグループステージI組は4月15日から始まります。

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マレーシア国内では圧倒的な強さを誇るJDTですが、アジアの壁に跳ね返されて続けています。悲願となるグループステージ突破を目指すには、今季も厳しいグループに入ってしまいました。(まぁACLでは厳しくないグループなどそもそもないですが)4季連続グループステージ出場となるJDTは、昨季2021年は名古屋グランパス、浦項スティーラーズに敗れグループ3位、その前年2020年はヴィッセル神戸、広州恒大(当時、現広州FC)、水原三星(韓国)と同じ組になり水原三星戦では勝利を挙げたものの、新型コロナウィルス感染拡大による中断を挟んで集中開催地カタールで再開したグループステージは、マレーシア政府が不要不急の渡航を禁止したことから出場辞退しています。

AFCカップ-クダとKLシティは日本人所属クラブとの対戦も

またAFCはACLの下位大会に当たるAFCカップのグループステージ組み合わせ抽選を行い、マレーシアから出場するクダ(昨季スーパーリーグ2位)とKLシティ(昨季マレーシアカップ優勝)の両クラブの対戦相手も決まっています。

H組に入ったKLシティは、帰化選手となりシンガポール代表入りを目指すMF仲村京雅、DF山下柊哉の両選手を擁するタンピネス・ローヴァーズ(シンガポール、昨季国内リーグ4位)、PSMマカッサル(インドネシア、2019年国内カップ優勝)、そしてミャンマーのシャン・ユナイテッド(2020年国内リーグ1位)とエーヤワディー・ユナイテッド(2020年国内リーグ3位)の間で行われるプレーオフの勝者と同組になっています。

またG組のクダは、スズキカップ2020のマレーシア代表戦でゴールを決めたFWイルファン・ジャヤや、やはりマレーシア戦に出場したインドネシア代表正GKナデオ・アルガウィナタが所属するバリ・ユナイテッド(インドネシア、2019年国内リーグ1位)、DF大村真也、MF藤井亮、FW堀越大蔵の3選手が所属し、昨季2021年シーズンにはACLに出場しているカヤFC-イロイロ(フィリピン、2021年国内カップ戦優勝)、そしてMリーグのトレンガヌやペラでプレーしたDFチエリー・チャンタ・ビンが所属するビサカFC(カンボジア、2021年国内カップ戦優勝)とDF川上典洋が所属するヤングエレファンツ(カンボジア、2020年国内リーグ3位)が対戦するプレーオフの勝者と同組になっています。

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レベルの高いACLも面白いですが、東南アジアのクラブ同士の対戦が多いAFCカップも拮抗した試合が多く魅力的です。特にクダとKLシティにはこのAFCカップで好成績を上げて、クラブランキングの上昇、そしてマレーシアからのACLの出場枠を現在の1枠からプレーオフ出場を含めた1+1枠、そして将来的にはグループステージ2枠が獲得できるように頑張ってもらいたいです。

1月16日のニュース
スズキカップ惨敗の原因分析を行う独立委員会のメンバーが明らかに
U23代表GKがKLシティに加入
セリエAのストライカーがJDTに加入

スズキカップ惨敗の原因分析を行う独立委員会のメンバーが明らかに

昨年2021年末に開催された東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でのグループステージ敗退を受け、マレーシアサッカー協会FAMはこの予想外に速かった敗退の原因分析を行う外部委員会の設置を発表し、元代表選手でマレーシア王立警察クアラルンプール本部長を務めたこともあるデル・アクバル・カーン氏をその委員長に任命して、委員会のメンバーの人選を一任していましたが、そのメンバー6名が確定したことから、サッカー専門サイトのスムアニャ・ボラはそのメンバーの顔ぶれを紹介しています。

  • デル・アクバル・カーン委員長
    1960年代から70年代にかけてマレーシア代表やマレーシア王立警察が運営するPDRM FA(現PDRM FC)、スランゴールFA(現スランゴールFC)でプレーし、現役引退後はFAMの仕事につき、1990年代には代表チームマネージャーを務めた他、2000年から2005年までは事務局長も務めています。
  • アレックス・ソーセイ委員
    ヌグリスンビランFA(現ヌグリスンビランFC)でプレーした元代表選手で、20年以上に渡りアジアサッカー連盟AFCで勤務し、2008年からは事務局長を務めていましたが、2012年に会計監査の際に汚職もみ消し工作の指示を行なった疑惑が持ち上がり辞任しています。
  • アフマド・ファエザル・モハマド・ラムリ委員
    2019年から国立スポーツ機関ISNのCEOを務め、それ以前はISNとISNを運営する国家スポーツ評議会MSNを担当する首相府直属の経済計画部での勤務経験がある他、AFCフットサルコーチのライセンスも保持しています。
  • アフマド・カワリ・モハマド・イサ委員
    元マレーシアスポーツ記者協会の会長で、1990年からマレーシア語紙ブリタハリアンの記者を務め、2001年から2005年まではFAMのメディア担当責任者を務めました。その後はブリタハリアンを経て、昨年まではスポーツ専門衛星チャンネルのスタジアムアストロで編集責任者を務めていました。
  • シュコル・アダン委員
    昨年のKLシティFCでのマレーシアカップ優勝を持って24年間の現役生活を引退した元代表選手で、昨年2021年の優勝を含めて5度のマレーシアカップ優勝や、2005年にはスランゴールFA(現スランゴールFC)でリーグ戦優勝、FAカップ優勝、マレーシアカップ優勝のトレブル(三冠)も果たしています。
  • ガナセガラン・スブラマニアム委員
    元AFCコーチング指導者で、AFCではコーチ指導用の研修プログラム作成に携わった他、フットサル指導者向けの研修プログラムや、各国の状況に合わせたフィールド上の芝の保全方法などの指導も行っています。
  • スコット・オドネル委員
    今年1月1日付で就任したばかりのFAMのテクニカルディレクターで、1990年代にはクアラルンプールFA(現KLシティFC)やシンガポールのクラブでプレーした他、コーチとしてはシンガポールやカンボジアのクラブでの指導経験があります。FAMのテクニカルディレクター就任前には母国オーストラリアのキャンベラ州女子サッカー協会でもテクニカルディレクターを務めていました。

スズキカップ2020についてFAMは当時のタン・チェンホー代表監督に対し、前回2018年大会に続く2大会連続の決勝進出をKPI(重要業績評価指標)としたものの、その準備段階から様々な問題があったとされており、結果としてグループステージ敗退につながった直接的な原因分析のために設置されたのがこの独立委員会です。FAM外部から委員を集めることで透明性を持った究明作業を行うことが期待されており、新型コロナ最中の大会で30名の登録が可能にも関わらずなぜFAMは24名しか登録しなかったのか、しかもその内ミッドフィルダーはわずか2名で、結果として他のポジションの選手を起用することになったのはなぜか、さらに10月の中東遠征や6月のW杯予選に招集された主力選手がスズキカップ2020では招集されなかったのはなぜか、またFAMが大会前に練習試合などを組まなかった理由など、この独立委員会が解明する必要がある疑問は残っています。

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この独立委員会設置が発表されたこと自体、スズキカップで代表が惨敗したことへの批判をFAMが受けた結果のいわば泥縄的措置であり、当初は敗因分析は内部委員会の代表チーム運営委員会で行われれるはずでした。大会敗退から既に1ヶ月近く経つにもかかわらず、まだ何も出てこないのはFAMの職務怠慢と言われてもやむを得ないでしょう。

U23代表GKがKLシティに加入

Mリーグ1部のKLシティは、U23代表GKのアズリ・ガニの加入をクラブ公式Facebookで発表しています。昨季はペラFCでプレーしたアズリ選手は昨年開催されたAFC U23アジアカップ予選の3試合全てでGKとしてフル出場し、チームの予選突破と本戦出場に貢献しています。2021年シーズン開幕前にクダからペラへ移籍したアズリ選手は、給料未払い問題で大量の主力選手が退団し、今季は11位となり来季は2部に降格するペラと11月末に契約解除で同意していました。

KLシティには昨季はチーム躍進に貢献し、優勝したマレーシアカップ決勝でもスーパーセーブを連発したフィリピン代表のケヴィン・レイ・メンドーザが正GKとして在籍していますが、KLシティと2年契約を結んだ22歳のガニ選手は第2GKとなることが予想されています。またKLシティは今季はAFCカップに出場するため、選手層を厚くすることが急務でしたが、アズリ選手の加入でGKに関しては補強完了となりそうです。

セリエAのストライカーがJDTに加入

Mリーグ1部8連覇中のJDTはクラブ公式FacebookでセリエAのウディネーゼよりFWフェルナンド・フォレスティエリが加入することを発表しています。アルゼンチン生まれながらイタリアの年代別代表でのプレー経験もあるフォレスティエリ選手は、退団したゴンザロ・カブレラに代わって、昨季はリーグ2位の23ゴールを挙げたFWベルグソン・ダ・シルヴァとリーグ最強のフォワードコンビを結成することになりそうです。

31歳のフォレスティエリ選手は、イタリアリーグのジェノアやシエナ、ヴィチェンザ、エンポリ、バリ、スペインリーグのマルガ、英国1部EPFのワトフォードや2部のシェフィールド・ウエンズデイでもプレー経験があり、同じMリーグ1部のスリ・パハンでプレーするマヌエル・イダルゴと英国2部のシェフィールド・ウエンズデイではチームメートだったこともあるということです。なおフォレスティエリ選手が加わったJDTは1月25日からアラブ首長国連邦でのプレシーズン練習が始まります。

1月15日のニュース
スンバンシーカップのJDT本拠地開催はMFLによる忖度の結果?
やっぱりそうなったかぁ。代表DFシャーミ・サファリもJDT移籍
マラッカ・ユナイテッドが未払い給料を完済

マレーシア版FAコミュニティシールドとも言えるスンバンシーカップは前年のMリーグ覇者とマレーシアFAカップチャンピオンが対戦する試合です。昨季2021年シーズンは新型コロナ観戦拡大防止を理由にFAカップが中止となったことから、今季はMリーグ8連覇を果たしたJDTと32年ぶりにマレーシアカップに優勝したKLシティが2月26日に対戦します。そしてこれまでMリーグ公式戦の一部でシーズン開幕戦として行われてきたスンバンシーカップですが、今季2022年シーズンのスンバンシーカップはリーグ戦からは独立した試合として開催することをMリーグを運営するMFLは発表しています。

今季のスンバンシーカップは過去7年間同様、JDTの本拠地で開催されますが、今季はMリーグの公式戦ではなくなったにも関わらず、中立地ではなく相変わらずJDTの本拠地で開催されることに疑問の声が上がりました。本家英国のFAコミュニティーシールドはその前身のチャリティーシールド時代の1970年代に中立地であるウェンブリースタジアムで開催されるようになっており、ホームのJDTが圧倒的に有利となる今回の開催方針に対して「なぜ中立地での開催でないのか」という国内サッカーファンの疑問は至極当然です。

Mリーグ開幕戦として開催されてきたスンバンシーカップは、JDTの連覇が始まった翌年の2015年からは7年連続でJDTの本拠地で開催されており、この間JDTは6勝1敗と圧倒的な成績を残しています。唯一の負けを記録した2017年も90分間では決着がつかずPK戦にも連れ込んだ結果、クダに敗れた1敗でした。(リーグ戦の一環なら、そもそもPK戦まで行って勝者を決める必要はないはずですが。)そこでスンバンシーカップがアウェイの試合となることを憂慮したJDTに対してMFLが忖度した結果、開催地がスルタン・イブラヒムスタジアムになったのではといった意見も出てます。

そんな中でサッカー専門サイトのラ・ボラ・マレーシアは、この疑問に対するMFLのスチュアート・ラマリンガムCEOの回答を伝えています。この記事によれば開催地をJDTの本拠地スルタン・イブラヒムスタジアムとしたことについて、その理由を「人の移動を極力少なくするため」だと説明しているということです。この記事では詳しい説明はされておらず、JDTの本拠地でスンバンシーカップを開催することが何故、「人の移動を極力少なくする」ことになる根拠は不明ですが、まぁそこはマレーシア、放っておけばそんな声も聞こえなくなる、とこれ以上の説明がされることはないでしょう。

やっぱりそうなったかぁ。代表DFシャーミ・サファリもJDT移籍

Mリーグ1部スーパーリーグのJDTは公式Facebookで代表DFシャーミ・サファリの加入を発表しています。23歳のシャーミ選手は右サイドバック(スズキカップ2020ではまさかの左サイドバック起用でしたが)で、契約期間を1年残しながら前所属のスランゴールFCとの契約を双方合意の上で昨年11月末に解除していました。契約解除後にはJDT移籍が噂されていましたが、昨年中は何の動きもなかったことからその去就に注目が集まっていました。

JDTには同じ代表右サイドバックのマシュー・デイヴィーズが在籍していますが、昨年末にスポーツヘルニアの手術を受けており、シャーミ選手がデイヴィーズ選手が完治するまでの単なる繋ぎとなるのか、デイヴィーズ選手復帰後にもポジション争いを続けられるのかは不明ですが、シャーミ選手の加入により、代表選手すら控えに回るJDTの既に分厚い選手層がさらに厚くなったことは事実です。

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スランゴール州のクアラスランゴール出身で2017年にスランゴールFCのトップチームに昇格したシャーミ選手は通算80試合出場で11ゴールの記録を残して退団しました、私自身が個人的にもシャーミ選手のファンなので退団は非常に残念でしたが、その移籍先がよりによってJDTなのは少々モヤモヤします。しかし昨季のスランゴールFCでの起用方法には同じくらいモヤモヤを感じていたので、ここは新天地での活躍に期待したいです。

シャーミ・サファリといえばこのゴール!スズキカップ2018のタイ戦で決めたゴール(スズキカップの公式YouTubeチャンネルより)

マラッカ・ユナイテッドが未払い給料を完済

先日のこのブログでも取り上げたMリーグ1部スーパーリーグのマラッカ・ユナイテッドの給料未払い問題が解決したことを、選手を支援してクラブと交渉を続けていたマレーシアプロサッカー選手会PFAMがTwitterで発表しています。

マラッカユナイテッドの選手から未払いとなっていた3ヶ月分の給料の全額が支払われた連絡を受け取ったとして、PFAMは問題が解決した選手を祝福するとともに、マラッカ・ユナイテッドのジャスティン・リム オーナーと経営陣に対して迅速な対応を感謝するというコメントも出していますが、その一方で2度と同様の問題が起こらないよう注意を払うよう釘を刺すことも忘れませんでした。。
さらPFAMは今回の件を教訓に他のMリーグクラブに対して、選手の給料支払いについてより敏感になるよう求めています。

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MFLが期限に遅れた場合の処分を発表すると直ちに片付いた今回の給料未払い問題は、交渉だけでは解決せず、実害が起こって初めて対処するというマレーシアではよくある事例でした。結局、未払いによる実害を被ったのは選手や首脳陣だけで、この問題の根本についてはその責任が問われないというのもマレーシア的。世界的には通用しないこの仕組みでクラブを運営しながら、やれアジアだ、世界だというのはやはり無理があると言わざるを得ないです。


1月7日のニュース
マレーシア代表新監督候補にキャティサック元タイ代表監督の名も
代表チームマネージャーは進退をFAMに一任
監督不在のA代表は1月のFIFA国際マッチデー期間は活動なし
次期代表監督候補のホダックは全権監督が就任条件

マレーシア代表新監督候補にキャティサック元タイ代表監督の名も

サッカー専門サイトのヴォケットFCはタイの有力メディア「タイ・ラット」の記事を引用し、元タイ代表監督のキャティサック・セーナームアン氏がマレーシア代表監督候補の1人となっていると伝えています。

東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でグループステージ敗退の責任をとってタン・チェンホー監督がマレーシア代表監督を辞任した1月3日以来、多くのメディアが次期監督候補としてマレーシアU22代表のブラッド・マロニー監督や、元マレーシアU19代表監督で現在はMリーグのKLシティFCのボヤン・ホダック監督の名前を挙げています。

現役時代は「タイのジーコ」と呼ばれたキャティサック氏はMリーグのプルリスFA(当時)でもプレー経験がありますが、現役引退後はU23代表監督を経てタイ代表監督に就任すると2014年、2016年とスズキカップ2連覇を果たし、その後は2020年11月に今季ACLにも出場するベトナム1部リーグのホアンアイン・ザライFCの監督に就任していますが、その契約期間は2年間ということです。

なおタイ・ラットの記事では、マレーシア代表監督の候補者としてキャティサック氏の他にもう1人アジア出身の候補者もいるということです。

代表チームマネージャーは進退をFAMに一任

スズキカップ2020でマレーシアカップ代表がグループステージで敗退したことを理由にタン・チェンホー監督が辞任したマレーシア代表のチームマネージャーは、その進退をマレーシアサッカー協会に一任すると話していると、マレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。

タン代表監督同様、責任をとって辞任すべきという声が上がる中、マレーシアサッカー協会FAM会長代理でもあるモハマド・ユソフ・マハディ代表チームマネージャは、ファンの失望や怒りは理解していると話す一方で、FAMの代表チーム運営員会によるグループステージ敗退原因の解明の分析後に行われる理事会での判断に自身の進退を委ねたいと話しています。

辞任の意思について問われたユソフ代表チームマネージャーは、「近い内にFAMの理事会が代表チーム運営委員会からの報告を受けて最終判断を下すことになっており、それまでは具体的な発言を控えたい」と答えています。

監督不在のA代表は1月のFIFA国際マッチデー期間は活動なし

1月24日から2月1日にかけては2022年最初のFIFA国際マッチデー期間ですが、監督不在のマレーシア代表は何も活動しないようだと、マレーシア語紙ウトゥサンマレーシアが報じています。

この期間には世界各国の代表チームが国際Aマッチを開催する中、東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020で準決勝進出を逃したマレーシア代表ですが、1月5日にマレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクター(TD)に就任したばかりのスコット・オドネル氏は、この期間に代表選や代表合宿を計画していないことを明らかにし、3月21日から29日の国際マッチデー期間に今年最初の代表合宿を行う予定であると話しています。

オドネルTDは、2月のMリーグ開幕に向けて各クラブがその準備で忙しいことに加え、1月3日に辞任したばかりのタン代表監督辞に代わる暫定監督をFAMが指名しておらず、そもそも指導者不在であることなどを理由に挙げています。

次期代表監督候補のホダックは全権監督が就任条件

マレーシア代表の新たな監督候補の1人とされるKLシティFCのボヤン・ホダック監督は、代表監督に就任する場合には「全権監督」がその条件になると話しています。

現在は出身地のクロアチアに帰国中のホダック監督は、マレーシアサッカー協会FAMが自身を代表チームの監督として採用する場合には、全てを自分のやり方で進める全権監督となることを条件とすると、マレーシア語紙ハリアンメトロの取材に答えています。

現時点ではFAMからの正式なオファーは受けていないと話すホダック監督は今季2022年シーズンに向けてKLシティFCを強化することが最優先だと話す一方で、昨季のマレーシアカップ32年ぶりの優勝を果たしたKLシティFCを含め、自分のやり方を貫き通すことでどのチームでも結果を残してきた、と述べ、代表チームでも同じことをやり遂げる自信はあると話しています。

KLシティFC以外にも、これまで監督を務めたケランタンFA(現ケランタンFC)、JDT、そしてマレーシアU19代表のいずれも外部からの干渉を拒否した結果、Mリーグ1部スーパーリーグ優勝2回(2012年のケランタンFA、2014年のJDT)、FAカップ優勝2回(2012年と2013年のケランタンFA)そしてマレーシアカップ優勝2回(2012年のケランタンFAと2021年のKLシティFC)の成績に加え、東南アジアサッカー連盟AFFU19選手権優勝(2018年)も達成しています。

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Mリーグクラブの監督から次期代表監督を探すのであれば、最有力なのはこのホダック監督で間違いなし。2012年のケランタンFAでのトレブル(Mリーグ、FAカップ、マレーシアカップの年間三冠)に加えて昨季のマレーシアカップではJDTを破るなど国内では複数のクラブで文字通り結果を出し、マレーシアサッカーや選手を熟知しているという利点は大きいでしょう。しかしその一方で、歯に衣着せぬ物言いから、前述のマレーシアU19代表のAFFU19選手権2018年大会優勝に加え、12年ぶりとなるAFC U19選手権出場を果たしながら、FAMとの関係が悪化し、契約が更新されないということもありました。今回の「全権監督」発言もおそらく自身が代表監督を引き受ける覚悟の現れでしょう。またホダック監督が所属するKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOは、代表監督オファーを受けた際には、国益優先でホダック監督を引き留めないとも話しており、後任にはホダック監督と同じクロアチア出身のネナド・バチナ コーチの昇格も明言しており、自身もやる気を見せている代表監督就任のための外堀は埋まっていると言えるでしょう。マレーシア人の夫人を持ち、既にマレーシアの永住権も取得済みのホダック監督以上の候補者は国内にはいないと言って良いでしょう。

マレーシアサッカー2021年の10大ニュース

 今日は大晦日。ということで2021年のマレーシアサッカー界をボラセパマレーシアJP的視点で振り返ります。国内では、昨年同様、新型コロナに翻弄されたMリーグは日程が二転、三転しましたが、それでも2年ぶりに全試合が行われたシーズンになりましたが、その一方で複数のチームで給料未払い問題が明らかになりました。また国外ではU22代表がAFCU23アジアカップ本戦出場を決めた一方で、A代表はW杯予選、東南アジア選手権スズキカップといずれも思うような結果が残せなかった一年でした。

○KLシティFCが32年ぶりにマレーシアカップ制覇

 今季の国内カレンダー最後の大会となったマレーシアカップは今回が100周年記念大会でしたが、KLシティFCが戦前の下馬評を覆してJDTを2-0で破り、前身のクアラルンプールFA時代から数えると32年振りとなる優勝を飾りました。昨季はMリーグ2部プレミアリーグで2位となり、今季1部スーパーリーグに昇格したKLシティFCは、今季、リーグ戦、カップ戦ともホームのKLフットボールスタジアムでは無敗を誇り、来季は更なる活躍が期待されます。

○新型コロナの影響で3部リーグ以下やFAカップや各年代大会が中止

 Mリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグは全日程が開催されたものの、新型コロナの感染拡大を受け、日本の天皇杯にあたるFAカップが2年連続で中止となった他、Mリーグ3部に当たるセミプロリーグのM3リーグ以下の各リーグ戦、U21チームのリーグ戦であるプレジデントカップ、U19チームのリーグ戦ユースカップ、さらにはマレーシアプレミアフットサルリーグなどが中止となりました。

○複数のクラブで給料未払い問題発覚

 給料未払い問題はMリーグでは長年問題視されていましたが、新型コロナ禍ともあいまって各クラブとも経営が厳しくなった今季は、未払い給料を理由に開幕戦先発XIの内、最終的には何と9名が退団したペラFCの主力大量退団の他、クダ・ダルル・アマンFC、サバFC、サラワク・ユナイテッドFCなどでも同様の給料未払い問題が明らかになっています。これまではマレーシアの各州サッカー協会が運営していたMリーグクラブはAFCの指導により民営化が義務付けられましたが、州政府の予算を頼りに放漫経営されていたクラブは資金調達に失敗し、それによって選手や監督、コーチがとばっちりを受ける形になっています。

○JDTが前人未到のリーグ8連覇

 Mリーグ1部スーパーリーグではジョホール州皇太子がオーナーのJDT(ジョホール・ダルル・タジム)がリーグ8連覇を達成しています。22試合で16勝3分1敗、得点50失点9はいずれもリーグ1位で、2位のクダ・ダルル・アマンFCに勝点差14をつける圧勝でした。帰化選手を集め、他のクラブからも有力選手が集まる布陣はマレーシアA代表の選手でも控えに回ることがある選手層の厚さで国内では敵なしですが、アジアの壁は越えられず、AFCチャンピオンズリーグでは今季もグループステージ突破には至りませんでした。

○元日本代表本山雅志選手がMリーグでプレー

 隣国タイではかつては岩政大樹選手や茂庭照幸選手、ここ数年ではハーフナー・マイク選手や細貝萌選手など「元日本代表」の選手たちがプレーしていた時期がありましたが、ついにマレーシアにもその時が来ました。しかもこの国にやってきたのはあの本山雅志選手です。所属するケランタン・ユナイテッドFCはMリーグ2部プレミアリーグのチームですが、それでもその注目度は非常に高いものでした。
 ケランタン・ユナイテッドFCでは、深井脩平選手、Mリーグでは先輩に当たる谷川由来選手、さらに東山晃監督(現テクニカルディレクター)らとともに今季を戦った本山選手は、自身はケガなどもあり満足なシーズンとはならなかったかも知れませんが、それでもマレーシア人選手たちに対しては圧倒的な存在感は見せたMリーグ1年目でした。

○Mリーグのチケット販売が完全デジタル化

 無観客試合で開幕したMリーグがスタジアムでの観戦を許可したのは4月初旬でしたが、その翌月には再び無観客となり、それが10月下旬まで続きました。スタジアム観戦再開後は新型コロナ対策もありMリーグのチケットはスタジアムでの当日売りがなくなり、オンラインで購入し自身でプリントアウトする完全デジタル化に移行しました。チケット購入時には身分証明書番号、外国人であればパスポート番号の入力が必要になり、スタジアムでの入場の際もチケットとパスポートの提示を求められる徹底振りでした。まぁそこはマレーシアなんで、コロナが落ち着けば元に戻ってしまうかも知れません。

○外国籍選手ゼロのPJシティFCがスーパーリーグ7位

 今季のMリーグ1部スーパーリーグで唯一、登録選手全員がマレーシア人選手のみ、つまり外国籍選手ゼロだったPJシティFCは開幕前の大方の予想に反し、12チーム中7位と大健闘しました。チームからは10月の中東遠征でGKカラムラー・アル=ハフィズが初の代表招集となった他、スズキカップ2020に出場した代表にはこのカラムラー選手とMFコギレスワラン・ラジ、FWダレン・ロック(ただしケガで辞退)の3選手が招集されるなど、マレーシア人選手だけのクラブが外国籍選手を補強した他のMリーグクラブと対等に戦えることを証明しました。

○スーパーリーグ昇格初年度でペナンFCが3位に

昨季のMリーグ2部プレミアリーグで優勝し、KLシティFCとともに今季1部に昇格したペナンFC。昨季の優勝監督でもあるマンズール・アズウィラ監督が1部スーパーリーグで監督を務めるのに必要なAFCプロ指導者ライセンスを保持していなかったことから、マンズール関東はコーチとなり、チェコ出身のトマス・トゥルカ監督が監督に就任しました。するとチームはMリーグの台風の目となり、一時はAFCカップ出場権が与えられるリーグ2位も見えましたが、最後は力尽きて3位に終わりました。それでも昇格初年度の3位は立派ですが、リーグ戦後のマレーシアカップに入るとチームは勝ち星から見放され、グループステージで敗退するとトゥルカ監督退陣を求める一部サポーターも現れるなど、少なくともリーグ戦終了時は順風満帆に見えたペナンFCですが、来季に不安を残してシーズンを終えています。

○スズキカップ2020で代表はベスト4進出を逃す

 隔年で行われる東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップの2020年大会がシンガポールで集中開催され、マレーシア代表はグループステージで敗退しています。2020年に予定されていた大会が順延となったことからスズキカップ2020と銘打たれたこの大会に前回2018年大会の準優勝チームとして出場したマレーシア代表でしたが、ラオス、カンボジアに勝利したものの、前回大会の覇者ベトナム、そしてFIFAランキングではマレーシアより順位が低いインドネシアに完敗しています。
 本来は選手30名を登録できるところを24名しかしないなど不可解なことも多く、代表選手選考には「見えない手」の影響があったのではなどとも言われていますが、真相は藪の中です。いずれにしても準決勝に進んだタイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアには明らかに見劣りするプレーにタン・チェンホー監督更迭論なども出ましたが、マレーシアサッカー協会FAMはこれを否定しました。

U23代表はAFC U23アジアカップ予選を突破

 愚兄賢弟と言えば言い過ぎ。A代表が思うような結果を出せなかった2021年ですが、U23代表は10月にモンゴルで開催されたAFC U23アジアカップ予選を突破し、来年2022年6月にウズベキスタンで開催される本戦出場を決めています。前回2020年大会予選では中国と同組になるも勝点で並びながら得失差で涙を飲んだU22代表でしたが、今回はタイとの引き分けを含む3試合全てを完封して予選J組を首位で突破しています。このU22代表は2月には東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権、5月には東南アジア競技大会通称シーゲームズも控えており、サポーターの信頼を失い気味の兄の分まで頑張って欲しいです。

12月2日のニュース:KLシティFCのマレーシアカップ優勝を祝って12月3日が祝日に、サバFCが来季に向けて大型補強を敢行、ペラFCの給料未払いは新オーナーが10日以内の解決を約束

 KLシティFCのマレーシアカップ優勝の興奮が冷めやらぬ中、多くのクラブが来季に向けて動き始めています。マレーシアでは一般に選手とクラブの契約は11月末までとなっており、前所属クラブとの契約満了を待って、次が変わった12月から続々と新加入選手の発表が行われそうです。

KLシティFCのマレーシアカップ優勝を祝って12月3日が祝日に

 11月30日に行われたマレーシアカップ決勝では、Mリーグ優勝との2冠達成を目指したJDTをKLシティFCが2-0で破り、前身のクアラルンプールFAから数えて32年振りとなるマレーシアカップ優勝を果たしていますが、これを祝してクアラルンプールを含む連邦直轄地では12月3日が祝日になることが発表されています。
 昨日急遽、開かれた記者会見でシャヒダン・カシム連邦直轄地担当大臣は、クアラルンプールだけでなくプトラジャヤ、ラブアンも含めた全ての連邦直轄地で12月3日が祝日となると発表しています。マレーシアにはどの州にも属さない政府の直轄地(マレーシアは連邦制をとっていることから連邦直轄地と呼ばれています。)があり、首都クアラルンプール、行政府が集まるプトラジャヤ、そして東マレーシア(ボルネオ島)の沖にあるオフショア金融センターのラブアン島がこれにあたります。
 マレーシアカップ決勝前にはJDTが勝てばジョホール州の祝日を設けるとジョホール州首相も話しており、サッカーで勝ったから祝日!というのはマレーシアでは「あるある」なのですが、前任者のアヌアル・ムサ前連邦直轄地大臣、そしてその前任者であるカリド・サマド元連邦直轄地大臣とともにスタンドでマレーシアカップ決勝を観戦しながら、前任者の2人はフィールドでの表彰式に呼ばれて参加した一方で、自分だけが呼んでもらえなかったといった愚痴を試合後に自身のFacebookに投稿したシャヒダン連邦直轄地担当大臣による発表だけに、祝日制定自体は合法とはいえ政治家特有の人気取りパフォーマンス的な面もありそうです。ちなみにアヌアル前連邦直轄地大臣はKLシティFCの会長、カリド元連邦直轄地大臣はクアラルンプールサッカー協会会長を務めています。

サバFCが来季に向けて大型補強を敢行

 今季のMリーグ1部スーパーリーグでは4勝7分け11敗で9位に終わったサバFCが次々と大物選手を獲得しています。昨季に続き今季も指揮を取ったインドネシア出身のクルニアワン・ドゥイ・ユリアント監督が後半戦10試合を0勝3分7敗としたことからリーグ閉幕後に解任され、マレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクターを務めていたオン・キムスイ監督が10月1日付で就任したサバFCは、マレーシアカップではグループステージを突破し、マラッカ・ユナイテッドFCに敗れたもののベスト8に進出しています。
 2009年から2018年までU22やU23代表監督を務めてきたオン監督は、各年代に指導した選手がいることから、サバFCはその人脈を使った大型補強を次々と発表しています。2011年にインドネシアのジャカルタで開催された東南アジア競技大会通称シーゲームズの男子サッカーでマレーシアは優勝していますが、この大会に出場したU23代表の指揮を取ったのがオン監督のもとで主将を務めたMFバドロル・バクティアルが同じ1部スーパーリーグで今季2位のクダ・ダルル・アマンFCから移籍する他、2018年のAFC U23選手権(現U23アジアカップ)予選で監督を務めたU23代表の主将DFドミニク・タンも出場機会がなかったタイ1部のポリス・テロFCからの移籍が決まっています。
 この他FAMのテクニカルディレクター時代に設立に関わったFAM-MSNプロジェクト(2部プレミアリーグ)でプレーし、今季リーグ戦でマレーシア人選手としてはリーグ2位の8ゴールを挙げた18歳のFWアズハド・ハラズの獲得のために地元サバ州サンポルナ出身のアズハド選手の実家を電撃訪問するなど、今季は得点はリーグ8位、失点はリーグ9位と降格した11位のチームとは勝点差がわずか3だったチームの立て直しを図るオン監督ですが、バドロル、タンの両代表選手やU22代表のアズハド選手に加え、今後も代表クラスの加入が噂されているサバFCは来季の台風の目になることは間違いなさそうです。
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 2部プレミアリーグから1部スーパーリーグへ昇格した際に、それまでクラブレベルでの指導経験がなく、インドネシアU23代表のアシスタントコーチの経験しかなかったクルニアワン・ドゥイ・ユリアント氏を監督に据えた時点で既にサバFCは失敗していたようにも思えます。また昨季の10位から捲土重来を期したクルニアワン氏でしたが、インドネシア代表では歴代2位の33ゴール(キャップ数59)を挙げている「レジェンド」にとっては、期待していた自国代表のFWサディル・ラムダニがケガによりシーズン途中で脱落するなどの誤算もあり、今季を最後まで全うすることができませんでした。

ペラFCの給料未払いは新オーナーが10日以内の解決を約束

 今季開幕直後から給料未払いが発覚し、大半の主力選手がシーズン途中に退団したことから今季のMリーグ1部スーパーリーグでは11位となり、来季の2部プレミアリーグ降格が決まっているペラFCですが、先日のこのブログでもニュースとして取り上げたように広告会社のインパクトメディアアンドコミュニケーション社(IMC社)がクラブの株式100%を購入して新たなオーナーとなっています。
 このIMC社に株式を譲渡したペラ州サッカー協会PAFAを統括するペラ州政府青年・スポーツ・コミュニケーション・マルチメディア委員会のカイルル・シャーリル委員長は、既に3ヶ月分を超えるとされる未払い給料について、IMC社がこの問題解決の時間を必要としているとして10日の猶予を与えたと話しています。なおペラFCの給料未払い問題に関しては、マレーシアプロサッカー選手会PFAMも選手から訴えがあったことを明らかにしています。
 また、このIMC社への株式譲渡にはペラ州サッカー協会メンバーの総意を得られないまま譲渡が決定したとして、臨時総会の開催を求めた協会傘下の地区サッカー協会の代表者12名をムハマド・ヤザン会長代行が評議員から免職処分を下すと、この12名が独自に臨時総会を告知する泥試合となっており、ペラFCを取り巻く問題はまだまだ一件落着とはならなそうな気配です。


12月1日のニュース:KLシティFCが32年ぶりにマレーシアカップ優勝、KLシティFCは来季AFCカップ出場権も獲得

KLシティFCが32年ぶりにマレーシアカップ優勝

 今季の国内サッカーの最終戦となるマレーシアカップの決勝が11月30日にクアラルンプールのブキジャリル国立競技場で開催され、KLシティFCがJDTを破り前身のクアラルンプールFAが1989年に優勝して以来32年ぶりの優勝を飾っています。
 前日の記者会見でJDTのベンヤミン・モラ監督がKLシティFCを「喰らいに行く」と宣言した通り、試合開始から猛攻を続けるJDTに対し、フィリピン代表に復帰したGKケヴィン・メンドーザの度重なるファインセーブなどでKLシティFCはこれを凌ぎます。しかし、果たしてこれがあと45分続けられるのか、と不安を残して始まった後半でしたが、後半に入るとKLシティFCは徐々にJDTサイドでのプレー時間が増え始め、アンダードックのKLシティFCが何度もあった好機に得点を奪えなかった王者JDTにプレッシャーをかけ始めます。
 そんな中、66分に左サイドのJ・パルティバンからのクロスにファーサイドのザフリ・ヤハヤが飛び込み、KLシティFCが欲しかった先制ゴールを挙げてリードします。ここ両チームの動きが活発になる中、74分にはライアン・ランバートからのパスをペナルティエリア内で受けた主将のパウロ・ジョズエが振り向きざまにシュートを決め、KLシティFCは2-0とさらにリードを広げます。
 ギアが上がったJDTはナチョ・インサらが得意の汚いプレーも見せながらゴールを狙いますが、この日一番のヒーロー、GKメンドーザが文字通りゴール前に仁王立ちして失点を許さず、最後は今季引退を発表しているシュコル・アダンを投入する余裕を見せたKLシティFCがこのまま2-0で勝利し、2部昇格からの32年ぶりマレーシアカップ優勝というシンデレラストーリーを達成して、100周年記念大会となった今季のマレーシアカップに花を添えるとともに今季のマレーシア国内サッカーシーズンのフィナーレを飾りました。
 スタッツを見れば、JDTのシュート数14(オンターゲット9)に対してKLシティFCのシュート数は5(オンターゲット2)、コーナーキックはJDTの6に対してKLシティFCは2、ボールポゼッションもJDTの60%に対してKLシティFCは40%と、数字的には明らかに優勢だったJDTでしたが、試合後のインタビューでボジャン・ホダック監督が話したように、DF陣だけでなく、FWの選手も含めた全員守備、そして全員攻撃で勝ち取った優勝でした。

2021年11月20日@ブキジャリル国立競技場(クアラルンプール)
KLシティFC 2-0 JDT
得点者:KL-アムリ・ヤハヤ(66分)、パウロ・ジョズエ(74分)
最優秀選手:アムリ・ヤハヤ
(下のダイジェスト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより)

KLシティFCは来季AFCカップ出場権も獲得

 今季のマレーシアカップで優勝を果たしたKLシティFCは、来季2022年のAFCカップ出場権も獲得しています。
 今季開幕前にマレーシアカップを運営するMFLは、Mリーグ1部スーパーリーグ優勝チームにはACLの出場権を、マレーシアカップとマレーシアFAカップそれぞれの優勝チームにはAFCカップ出場権が与えられるとしていましたが、新型コロナの影響によりマレーシアFAカップは昨季に続き中止となり、これによりAFCカップ出場枠はMリーグ2位のチームに与えられることになりました。またMリーグ優勝チームがマレーシアカップでも優勝した場合には、Mリーグ3位にAFCカップ出場権が授与されることも発表になっていましたが、KLシティFCがJDTを破ったため、KLシティFCはマレーシアカップ優勝チームとして、来季のAFCカップ出場を決めています、

11月30日のニュース:今季のフィナーレを飾るマレーシアカップは今日決勝、タイ1部第15節-代表コンビは揃って出場もタンは退団へ

今季のフィナーレを飾るマレーシアカップは今日決勝

 100周年記念大会となったマレーシアカップは今日11月30日午後9時からブキジャリル国立競技場を舞台に決勝が行われ、2019年に続き連覇を狙うJDT(Mリーグ1部今季1位)と決勝進出32年ぶりのKLシティFC(同6位)が対戦します。準々決勝、準決勝はいずれもホームアンドアウェイ方式で行われましたが、決勝は文字通りの一発勝負。JDT有利の予想が大方を占める中、KLシティFCのボジャン・ホダック監督が策士としての本領を発揮すれば、好試合が期待できそうです。ということで今回は今日の決勝戦にまつわる小ネタ集です。

1. 両チームともグループステージから無敗
 JDTはグループステージから準決勝までの10試合を8勝2分(19得点2失点)、一方のKLシティFCは6勝4分(17得点6失点)と無敗で勝ち上がっています。

2. 今季のリーグ戦ではJDTの1勝1分
 今季リーグ戦からマレーシアカップまでホームでは15戦無敗のKLシティFCは4月30日にJDTと対戦して1-1で引き分けており、この時のJDTのゴールは既に退団したシンガポール代表主将のハリス・ハッルンがゴールを決めています。またJDTがKLシティFCをホームに迎えた9月12日の今季Mリーグ最終戦では、KLシティFCはニック・シャールルのオウンゴールで1-2と敗れています。

3. KLシティFCのホダック監督は今回が4度目のマレーシアカップ決勝
 KLシティFCは32年ぶりの決勝進出ですが、クラブの指揮を取るボジャン・ホダック監督自身は今回が4回目のマレーシアカップ決勝です。2012年にケランタンFA(現ケランタンFC)を率いてマレーシアカップに優勝し、国内3冠(Mリーグ、マレーシアカップ、マレーシアFAカップ)を達成した浦ダック監督は翌2013年にもケランタンFAで2年連続でマレーシアカップ決勝に進出しましたが、この年は決勝で敗れています。その翌年の2014年にJDTの監督に就任したホダック監督は、前年同様パハンFA(現スリ・パハンFC)に決勝で敗れています。ただしこの2014年の決勝は前後半を終えて2-2から延長戦に入るも決着がつかず、最後はPK戦による惜敗でした。

4. 幻となった「師弟対決」
 前述の2014年の決勝ではサフィク・ラヒムがJDTの主将を務めており、今日の決勝戦では7年前の決勝では同じチームだったホダック監督との「師弟対決」になるはずでしたが、サフィク選手は11月26日の準決勝第2戦トレンガヌFC戦で試合中にトレンガヌFCのファイサル・ハリムに頭突きを喰らわせて1発退場となり、今日の決勝戦は出場停止になっています。

5. 3度目の優勝を目指すJDTに対しKLは32年前に3連覇達成
 2017年、2019年(2020年は新型コロナにより大会中止)に続く3度目の優勝を目指すJDTに対し、32年ぶりの決勝進出となったKLシティFCですが、1987年から1989年までは前身のクアラルンプールFAがファンデイ・アフマドとマレク・アワブ、K・カナンのシンガポールトリオの活躍で3連覇を果たしています。ちなみにこの3連覇の立役者で当時のクアラルンプール市長でクアラルンプールサッカー協会会長でもあったエリアス・オマー氏、そして3連覇を果たした監督のチョウ・カイラム氏はいずれも故人となりましたが、キャラクターが濃いこの2人の印象はちょうどマレーシアのサッカーを見始めたばかりの私にはとても印象深く残っています。

タイ1部第15節-代表コンビは揃って出場もタンは退団へ

 2021/2022年シーズンのタイ1部リーグ第15節が11月27日と28日に開催され、マレーシア代表のDFジュニオール・エルドストール(タイでの登録名はプテラ・マデル・アマラン・マデルネル)が所属するチョンプリーFCはラーチャブリー・ミトポンFCに勝利し3位に浮上、一方DFドミニク・タンが所属するポリス・テロFCもチェンマイ・ユナイテッドに勝利し、順位を2つ下げて今季最高位の9位としています。

タイ1部リーグ第15節
2021年11月27日@ブンヤジンダースタジアム
ポリス・テロFC 1-0 チェンマイ・ユナイテッド
 11位のポリス・テロFCが最下位のチェンマイ・ユナイテッドに勝利し、今季最高位の9位に浮上しています。
 ドミニク・タンは88分から出場し、試合終了までプレーしています。

2021年11月28日@チョンブリースタジアム
チョンブリーFC 3-0 ラーチャブリー・ミトポンFC
 今季のACLではMリーグチャンピオンのJDTや名古屋グランパスと同組となったラーチャブリー・ミトポンFCと対戦したチョンブリーFC。4日前にはFAカップで最下位のチェンマイ・ユナイテッドに敗れる波乱がありましたが、この試合ではリーグ戦6試合無敗の好調を取り戻して解消しています。
 ジュニオール・エルドストールは先発してフル出場しています。

タイ1部リーグ順位表(第15節終了)

順位チーム試合得失差勝点
1ブリーラム・ユナイテッド1510231632
2バンコク・ユナイテッド1510231532
3チョンブリーFC158431428
9ポリス・テロFC15555-220
順位は上位3チームとマレーシア人選手が所属するチョンブリーFC、ポリス・テロFCのみ表示しています。
ドミニク・タンはポリス・テロ退団へ

 タイ1部ポリス・テロFCに所属するマレーシア代表DFドミニク・タンが自身のインスタグラムを更新し「ポリス・テロFC、素晴らしい思い出をありがとう。一生忘れません。でもこれは終わりではありません。私は戻ってきます。コップンカップ」というメッセージとともにチームメートとの写真を投稿しています。
 2019年にJDTから期限付き移籍で当時2部に在籍していたポリス・テロFCに加入していたタン選手は、翌2020年には完全移籍していました。
 昨季は21試合に出場しましたが、今季は第9節まで出場はなく、初出場となった第10節以降も終盤の起用が多く、第15節まででプレー時間の最長は29分でした。
 U23代表では主将も務めるなど将来の代表DF陣の中心選手と目されていただけに、この出場時間の少なさでは、今後は代表招集すら危うくなることからの退団のようです。
 ポリス・テロFC退団後は、U23代表時代の監督だったオン・キムスイ監督が就任したMリーグ1部のサバFCへの加入が濃厚と噂されています。今季Mリーグ2部のFAM-MSNプロジェクトでプレーし、マレーシア人選手としてはリーグ2位の8ゴールを挙げたU22代表でもプレーする18歳のFWアズハド・ハラズに4年契約をオファーする一方で、今季Mリーグ1部2位のクダ・ダルル・アマンFCからMFバドロル・バクティアル、DFリザル・ガザリ、マレーシアカップでベスト4のマラッカ・ユナイテッドFCからGKカイルル・ファミ・チェ・マットの代表トリオ獲得が噂されるなど、来季に向けた大型補強が噂される中、タン選手獲得もその一つと考えられています。