1月3日のニュース ボラセパマレーシアJPが選ぶマレーシアサッカー2022年重大ニュース-代表チーム編とAFCクラブコンペティション編

いよいよ今日は東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップのグループステージB組最終節。首位のベトナムはホームで4位のミャンマーと、また西ヶ谷隆之監督率いる2位のシンガポールはアウェイで3位のマレーシアと対戦します。ベトナムとシンガポールはそれぞれ引き分け以上で準決勝進出が決まり、3位のマレーシアはシンガポール戦に勝利することが準決勝進出の条件となります。この記事の執筆時点では既に3万9000枚近いチケットが売れているようで、今大会ここまでのどの試合よりも多くの多くの観客が集まりそうです。ジョホール水道を挟むマレーシアとシンガポールの対戦は、両国を繋ぐ陸橋にちなんでコーズウェイダービー(Causeway derby)と呼ばれ、熱戦が繰り返されてきましたが、今年初の対戦はどちらに軍配が上がるのでしょうか。。

マレーシア代表はアジアカップ2023年大会出場権獲得-予選を突破しての出場は1980年以来43年振り

2022年の代表チーム関連の最大のニュースはこれでしょう。正確に言えば、マレーシアは16年前の2007年にベトナム、タイ、インドネシアと東南アジア4カ国共同開催の形でアジアカップを開催しており、その際に開催国枠でアジアカップに出場しています。しかし、予選を突破しての出場となると、1980年のクウェート大会以来となります。本戦出場国がわずか10カ国だったこの大会で、マレーシアはアラブ首長国連邦に勝利し、韓国、カタールと引き分け、クウェートに敗れて勝点差1で準決勝進出を逃しています。
 昔話はさており、昨年の6月に行われたアジアカップ最終予選では開催国となった地の利もあり、バーレーンに1-2で敗れたもののトルクメニスタンには3-1、そして5万3000人近い観衆を集めたバングラデシュ戦では4-1で勝利して、バーレーンに次ぐグループ2位となったものの、最終予選各組の2位のうち上位5チームに入り、43年振り4度目の本戦出場を決めています。

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ちなみにこの時の代表チームは、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)から12名、PJシティとヌグリスンビランから2名、トレンガヌ、スランゴール、サバ、スリ・パハン、チョンブリー(タイ1部)、SVズルテ・ワレヘム(ベルギー1部)から各1名という構成でした。これを知れば、現在開催中の三菱電機カップ出場中の代表チームにJDTの選手が1人もいないことが、どのくらい尋常ではないかがわかるでしょう。さらに、このアジアカップ最終予選に出場し、今回の三菱電機カップにも出場しているのはFWダレン・ロック(サバ、アジアカップ最終予選時はPJシティ)FWファイサル・ハリム(スランゴール、同トレンガヌ)MF V・ルヴェンティラン(スランゴール、同PJシティ)、DFクザイミ・ピー(スランゴール、同ヌグリスンビラン)、DFドミニク・タン(サバ)、GKシーハン・ハズミ(無所属、同ヌグリスンビラン)のわずか6名です。

タン前代表監督が5年振りに交代-東南アジアの韓流ブームの影響かキム・パンゴン新監督就任

2017年に当時の代表監督だったポルトガル出身のネロ・ヴィンガダ氏が就任7試合を1分6敗としてわずか7ヶ月で辞任したことを受け、コーチから昇格したのがタン・チェンホー前監督でした。2018年のAFF選手権スズキカップ(当時)では決勝でベトナムに敗れたものの、優勝した2014年以来となる決勝進出を果たしただけでなく、FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選でも、コロナ禍前まではベトナムに次ぐ2位につけるなど、最終予選へ期待が高まり、同時にタン監督の手腕も評価されていました
 しかしコロナ禍が下火になり、中断されていたアジア2次予選が再開されると1勝2敗とそれまでの勢いが衰え、さらに2021年末のスズキカップ2020年大会ではベトナムやインドネシアに敗れるなどして、準決勝進出を果たすことができなかった責任を取り、タン監督が辞任し、その後任となったのが韓国出身のキム・パンゴン監督です。
 香港代表監督の経験もあるキム新監督は、ベトナムのパク・ハンソ、インドネシアのシン・テヨン両監督に続く、東南アジアの代表チーム3人目の韓国出身監督となりました。就任直後に行われたシンガポールでのフィリピン、マレーシアが出場した3カ国対抗でのフィリピン戦では就任初戦で初勝利を挙げると、前述のAFCアジアカップ2023年大会最終予選では43年振りの予選突破、そして27年振りの出場となったタイのキングズカップでは、PK戦にまでもつれこんだタイとの試合に勝利すると、決勝ではタジキスタンにPK戦で敗れたものの、いずれも格上の相手に善戦し、FIFAランキングも2022年1月の154位から12月には145位まで上昇しています。

U23代表は出場した各大会で苦戦し、監督は事実上の更迭

A代表の躍進に比べると残念な結果に終わったのがU23代表でした。2月にカンボジアで開催されたAFF U23選手権ではラオスにまさかの2連敗を喫してグループステージで敗退すると、5月にベトナムで開催された「東南アジアのオリンピック」東南アジア競技大会では準決勝に進出したものの、延長でベトナムに敗れて決勝進出できず、また3位決定戦ではインドネシアにPK戦で敗れ、前回2019年フィリピン大会に続き、2大会連続でメダルを逃しています。
 東南アジアの大会でこの結果であれば、期待するのも酷ですが、翌6月にはウズベキスタンで開催されたAFC U23アジアカップでも散々な成績でした。2大会振り2度目の出場となったマレーシアは、グループステージでは図らずもベトナム、タイの東南アジア組、そして韓国と同組になっています。そしてここでは韓国に1-4、タイに0-3、そしてベトナムには0-2と惨敗し、大会終了後の7月には2019年からはU19代表、そして2021年からはU23代表の指揮を取ってきたオーストラリア出身のブラッド・マロニー監督との契約期間を残しながら、契約を解除しています。なお、その後は代表チームのコーチでもあるE・エラヴァラサン氏がU23代表監督に就任しています。

東南アジアの覇者U19代表はアジアの壁を実感

これに対し、戦前は全く期待されていなかったハサン・サザリ監督率いるU19代表が7月にインドネシアで開催されたAFF U19選手権決勝でラオスを2-0で破り優勝しています。しかし9月に行われたAFC U19アジアカップ2023年大会予選では、韓国に敗れ、モンゴルと引き分けるなど予選3位となり、出場を逃し、アジアの壁の高さを実感させられています。

女子代表は監督を初の外部招聘

また2022年は女子代表にとっては静かな1年でした。マレーシアサッカー協会はなぜか、女子代表を5月の東南アジア競技大会へ派遣せず、貴重な実践経験の機会を無駄にする一方で、同じ東南アジアのライバルと対戦する7月のAFF女子選手権に派遣し、そこでは2分3敗の成績でグループステージ敗退するなど、男子に比べると方針がなんなのかが全く見えませんでした。
 しかしそこで起こったサッカーファンからの非難に応えるように、昨年末にはヨルダンサッカー協会のアシスタントテクニカルディレクターを務めていたソリーン・アル=ズービ氏を招聘し、ジェイコブ・ジョセフ監督に変わる新しい女子代表監督に就任させています。

アジアチャンピオンズリーグACL-ジョホールがマレーシアのクラブとして初のノックアウトステージ進出

リーグ9連覇を果たしジョホール・ダルル・タジムJDTは、今季もマレーシアリーグの覇者としてACLのグループステージに出場しています。新型コロナウィルス感染拡大防止措置から、昨季に続き、今季もグループステージは集中開催となりましたが、JDTが入ったI組はマレーシアが集中開催地に選ばれています。そしてこれを最大限に活かしたJDTは、このグループステージがイスラム教徒にとっては厳しい断食月中の開催であったこともあり、試合は全て午後10時キックオフ、しかも試合会場は国内でも有数の手入れが行き届いたピッチを持つスルタン・イブラヒムスタジアムで行っています。
 川崎フロンターレ、蔚山現代、広州と同じI組で、JDTは前半の3試合で広州に5~0、蔚山現代に2-1、そして川崎とは0-0と2勝1分で折り返すと、ターンオーバーで選手を入れ替えた川崎戦では0-5と敗れたものの、広州とは2-0、蔚山現代とは2-1と連勝し、通算成績を6試合で4勝1分1敗、勝点13とするとI組では川崎や蔚山現代を抑えてグループ1位としてノックアウトステージへ進出しています。
 2019年のACL初出場以来、これまでグループステージの壁を越えられなかったJDTは血糊の最大限に活かし、マレーシアのクラブとしては初めてとなるノックアウトステージに進出しています。
 ノックアウトステージでは、浦和レッズと埼玉スタジアムで対戦し、国内リーグでは見られない0-5というスコアで完膚なきまでに叩きのめされています。しかしこの厳しさを経験できたのもノックアウトステージに出場した結果であり、その苦い経験は今年もACLに出場が決まっているJDTをさらに高みへと連れて行ってくれることでしょう。

KLシティはAFCカップ決勝進出もJDT以来東南アジアクラブ史上2チーム目の優勝を逃す

ACLに出場できない国や枠が少ない国のクラブを対象としているのがAFCカップ。UEFAチャンピオンズリーグに対するUEFAヨーロッパリーグのような位置付けです。マレーシアからは2022年大会には前年の2021年にマレーシアカップで優勝を果たしたKLシティ、そして2021年シーズンに国内リーグ2位のクダ・ダルル・アマンの2チームが出場しました。
 グループステージを突破した両チームは、東南アジア地区プレーオフに進み、クダはPSMマカッサル(インドネシア)に敗れたものの、KLシティはPK戦の末、ベトテルFC(ベトナム)に勝利すると東南アジア地区代表決定戦ではクダを破ったPSMマカッサルを5-2で撃破しています。地区間プレーオフに駒を進めたKLシティは、準決勝ではATKモフン・バガンAC(インド)を3-1、決勝ではPFCソグディアナ・ジザフ(ウズベキスタン)をPK戦5-3といずれもアウェイの厳しい試合で勝利し、2015年にこのAFCカップで優勝したJDT以来となる東南アジアクラブとしては2チーム目のAFCカップの決勝に進出しました。
 10月22日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催された決勝では、オマーンのアル・シーブに0-3で敗れましたが、こちらもマレーシアのクラブがAFCカップでは十分通用することを示してくれました。今季のAFCカップには、リーグ2位のトレンガヌと3位のサバが揃って出場しますが、この両チームにアジアの舞台での活躍を期待したいです。

12月17日のニュース(2)
AFF選手権三菱電機カップ出場の代表メンバー23名を発表

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイトで、今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権、三菱電機カップに出場するマレーシア代表23名を発表しています。東南アジアの10ヵ国が出場するこの大会でマレーシアはグループステージではB組に入り、12月21日にヤンゴンのトゥウンナ・スタジアムで行われるミャンマー戦が初戦となります。その後は12月24日にホームのブキ・ジャリル国立競技場でラオス戦、12月27日にはハノイのミーディン国立競技場で行われるベトナム戦、そしてグループステジー最終戦は来年2023年1月3日のシンガポール戦が予定されています。

AFF選手権出場のマレーシア代表最終登録23名

ポジション氏名年齢所属
DF シャルル・ニザム23SEL
DFクェンティン・チャン23SEL
DFファズリ・マズラン29SEL
MFブレンダン・ガン34SEL
MF ムカイリ・アジマル21SEL
MFアリフ・ハイカル22SEL
FW ノル・ハキム・ハサン31SEL
DFドミニク・タン25SAB
MF スチュアート・ウィルキン24SAB
FWダレン・ロック32SAB
GKラーディアズリ・ラハリム21TRE
DFアザム・アズミ21TRE
FWファイサル・ハリム24TRE
MFデヴィッド・ローリー32SRP
FWリー・タック34SRP
MFエセキエル・アグエロ28SRP
GKシーハン・ハズミ26NSE
DFクザイミ・ピー29NSE
GKカラムラー・アル=ハフィズ27KDA
20.V・ルヴェンティラン21PJC
21.シャミー・イスズハン27SWU
22.ハキミ・アジム19KLC
23.サファウィ・ラシド25RAT
所属クラブ:SEL-スランゴールFC、SAB-サバFC、TRE-トレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC、NSE-ヌグリスンビランFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、SWU-サラワク・ユナイテッドFC、KLC-KLシティFC、RAT-ラーチャブリーFC(タイ)

この発表に先立って代表候補合宿に招集された28名からは、GKアズリ・ガニ(KLシティFC)、FWコギレスワラン・ラジ(PJシティ)、FWラマダン・サイフラー(JDT)、MFアリフ・イズワン(スランゴール2)が外れた他、DFディオン・コールズ(チェコ1部FKヤブロネツ)が個人的事情を理由に辞退したことも、FAMから発表されています。

当初、FAMは代表候補合宿に41名を招集したものの、AFF選手権がFIFAの国際マッチカレンダー期間外に行われ、各クラブが選手の招集に応じる義務もないため、JDTからは先日のMリーグアウォーズで今年のMVPと最優秀FWを受賞したアリフ・アイマンや最優秀DF受賞のシャルル・サアド、最優秀MF受賞のアフィク・ファザイルら合計11名が辞退、さらにKLシティのDFデクラン・ランバートとMFアクラム・マヒナンも合宿初日に辞退を表明し、最終的には28名が代表候補合宿に参加していました。

マレーシア代表は、来週月曜日12月19日にグループステージB組の初戦となるミャンマー戦が行われるヤンゴンへ向けて出発し、12月21日にトゥウンナ・スタジアムで試合を行います。その後は12月24日にホームでのラオス戦、12月27日にはハノイのミーディン国立競技場でベトナム戦、そして来年1月3日にはホームでシンガポール戦が控えています。

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SNS上では「マレーシアB代表」などと揶揄されている今回の代表チームですが、最終メンバー発表時にディオン・コールズが辞退したことで、それも冗談ではなくなるほど、主力不在のチーム編成になっています。しかも、今回はなんと国内三冠達成のJDTから誰1人も加わらない顔ぶれになっています。しかし常連のJDTの選手がいないことは、他の選手にとっては大チャンス。出場機会を得た選手たちが、今回の三菱電機カップで前回大会以上の成績(前回はグループステージ敗退)を収めてくれれば、来年2023年のアジアカップ本戦に向けて選手層が厚くなり、チームの底上げにもつながるはず。そして今年2月の代表監督就任以来、7勝2分2敗と、昨年の3勝7敗からチームを大きく立て直したキム・パンゴン監督の手腕に注目したいところです。

12月16日のニュース(1)
「新生」代表がモルジブ戦勝利

「新生」代表がモルジブ戦勝利

当初の招集メンバーからジョホール・ダルル・タジムJDTの選手10名が招集を辞退し、これまでのメンバーとは大きく顔ぶれた変わったマレーシア代表は、今週12月21日(土)のミャンマー戦(ヤンゴン)で幕を開ける東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けての最後の練習試合となった12月14日のモルジブ戦で、FW陣が期待以上(失礼!)の活躍を見せ、3-0で快勝しています。

この日の先発は、GKシーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)、DFはクザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、ドミニク・タン(サバ)の3バック、MFはアザム・アズミ(トレンガヌ)とV・ルヴェンティラン(PJシティ)を左右に配置し、中央はブレンダン・ガンとムカイリ・アジマル(いずれもスランゴール)の4人、FWはサファウィ・ラシド(JDT)、ダレン・ロック(サバ)、ファイサル・ハリム(トレンガヌ)という布陣で、キム・パンゴン監督は4日前のカンボジア戦からは5名を入れ替えています。

試合が行われたKLフットボールスタジアムは最大収容観客数1万8000人と、カンボジア戦が行われたブキ・ジャリル国立競技場の三分の一以下ですが、ブキ・ジャリルでのカンボジア戦では8332人と、スタンドがガラガラに見えたので、この日はさらに少ない公式発表観客数6002人でも、サイズ的にはむしろこちらで良かったかと。またカンボジア戦でナイキ社製の新しいホームユニフォームを披露したハリマウ・マラヤ「マラヤの虎」ことマレーシア代表は、この日は上下黒のアウェイユニフォーをお披露目しています。

試合の方は24分、この日、キャプテンマークをつけたサファウィ・ラシドから出たゴール前のボールへモルジブGKとDFの対応が遅れた隙をついてダレン・ロックがボールを奪いそのままシュート。これが決まって、マレーシアは1-0と先制します。後半に入ると、63分には今度がダレン・ロックが相手DFラインの裏に出したパスを受けたファイサル・ハリムがGKをかわしてゴールを決め2-0、さらに88分には途中出場のリー・タック(スリ・パハン)がゴールをめて3-0として、マレーシアがそのまま逃げ切っています。ファイサル、タック両選手は12月9日のカンボジア戦に続く2試合連続のゴールをとなりました。

またこの試合ではDFアリフ・ハイカル(スランゴール)が代表戦初出場を果たした一方で、今回の代表合宿に招集されたメンバーでは、FWラマダン・サイフラー(JDT)、FWハキミ・アジム(KLシティ)、MF R・コギレスワラン(PJシティ)、GKラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)、GKアズリ・ガニ(KLシティ)はカンボジア戦、そしてこの日のモルジブ戦とも出場機会がありませんでした。

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JDTの主力10人が代表招集を辞退した今回の代表チームは、ネット上では「B代表」などと揶揄されています。それでも代表初招集となった選手たちを含め多くの選手を実戦で起用するできたのは、AFF選手権での結果にかかわらず、選手層を厚くするための良い機会です。
 AFF選手権前に行われた2試合を振り返ると、個人的にはマレーシアの課題である攻撃で、帰化選手のリー・タックが活躍が目を引きました。34歳という年齢もあり、タック選手の帰化、そして代表招集には疑問の声が上がっていました。タック選手同様、FIFAの同一国で5年間プレーという規定に基づいて帰化し、代表選手となったブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ選手が代表チームでは活躍できなかったことにあります。しかし、それをものともせず、しかも2試合連続ゴールで自分の力を示したタック選手は、AFF選手権でも代表チームにとっては大きな戦力となることが期待されます。
 今回の2試合では前述のアリフ・ハイカルやリー・タックに加えて、GKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、MFスチュアート・ウィルキン(サバ)、MFデヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)、アリフ・イズワン(トレンガヌ)、そしてアルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、8名を代表デビューさせたキム・パンゴン監督が、12月21日のミャンマー戦で開幕するAFF選手権でこの「B代表」をどこまで連れて行けるのかに注目したいと思います。

2022年12月14日
国際親善試合@KLフットボールスタジアム
マレーシア 3-0 モルジブ
⚽️マレーシア:ダレン・ロック(24分)、ファイサル・ハリム(63分)、リー・タック(88分)

下はこの試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

12月12日のニュース 「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利-代表初招集の帰化選手が2ゴールと躍動

今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けて、出場各チームとも練習試合を精力的に行なっています。昨日12月11日には、三菱電機カップのグループステージでマレーシアと同じB組のミャンマーがタイに0-6で敗れ、ラオスがタイU23代表に1-0で勝利、また西ヶ谷隆之監督率いるシンガポールは12月1日から日本で合宿を行なっており、昨日は流通経大と、その前にはJ3のYSCC横浜とも練習試合を行っています。そしてB組で最も強いベトナムも11月30日には東南アジア遠征中のボルシア・ドルトムントに2-1で勝利するなど、「東南アジアのワールドカップ」に向けて着々と準備を進めています。

「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利

そんな中、マレーシアは12月9日にカンボジアと練習試合で対戦しました。AFF選手権はFIFAの酷愛マッチカレンダー期間外ということもあり、今季国内リーグ9連覇を果たし、さらに2つのカップ戦でも優勝して国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムJDTからはケガや家庭の事情などを理由に代表主力選手9名が招集を辞退しており、今季ここまで9試合を戦ってきた代表とは選手の顔ぶれも大きく変わっています。

この日の先発XIはGKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、クザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、アザム・アズミ(トレンガヌ)が3バックを構成し、中盤はF V・ルヴェンティラン(PJシティ)、スチュアート・ウィルキン(サバ)、デヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)の4選手、そして前線がファイサル・ハリム(トレンガヌ)、ダレン・ロック(サバ)、リー・タック(スリ・パハン)という布陣でした。

この日は試合前からの雨でピッチの一部にも水が浮くコンディションながら、それにうまく対応したマレーシアが、キャプテンマークをつけて先発したファイサル・ハリムが11分に先制ゴールを決めて先制します。38分には英国生まれながら今年、マレーシア国籍を取得し、今回初めて代表に選出されたリー・タックがデビュー戦で代表初ゴールを決めて2-0、さらに前半終了間際にはファイサル・ハリムがこの試合2得点目となるゴールを決めて、前半を3-0で折り返します。後半には、やはり代表初招集となったMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が86分に4点目を決めて、FIFAランキング146位のマレーシア代表が廣瀬龍監督率いる同177位のカンボジアに勝利しています。

マレーシアは12月14日にモルジブ代表との練習試合を行った後、12月21日にはAFF選手権グループステージ初戦となるアウェイのミャンマー戦に臨みます。

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前述の通り、JDTの主力が招集を辞退した今回の代表チームでは、本来なら出場機会を得られない多くの選手にチャンスが巡ってきています。これまで代表に召集されながらも、ポジション的な問題もあり出場機会に恵まれなかったカラムラー・アル=ハフィズは初先発を果たした他、スチュアート・ウィルキン、デヴィッド・ローリー、シャミー・イスズアン、リー・タックが代表初招集初先発を果たし、途中出場の18歳MFアリフ・イズワン(トレンガヌ)、アルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、この試合では7名の選手が代表デビューを果たしています。

そんな中、注目を集めているのは34歳のリー・タックと26歳のエセキエル・アグエロの両選手です。いずれもMリーグで5年間プレーし、FIFAの帰化選手登録要件を満たしたことから、今年9月にマレーシア国籍を取得しています。この国籍取得までの期間は、所属するスリ・パハンが既にMリーグで規定される上限となる5名の外国籍選手を登録していたため、2月から11月まで行われたリーグ戦は出場できなかった両選手ですが、マレーシア国籍を取得したことで、マレーシアカップからは国内選手として登録されると、キム・パンゴン監督が早速、代表に招集しています。

現在、マレーシアにはタック、アグエロ選手を含めて5名の帰化選手がいます。ガンビア出身のモハマドゥ・スマレ、ブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ、コソボ出身のリリドン・クラスニキの3選手は、いずれも所属するJDTでは先発ポジションを獲得できておらず、特にマレーシアフットボール協会FAMが代表チーム強化を目的として帰化支援プログラムを経てマレーシア国籍を取得したデ・パウラ、クラスニキ両選手は代表どころか、所属するJDTのトップチームでも出場機会が得られていません。このことから、代表チームに貢献できない選手の帰化支援には非難の声が上がり、FAMは昨年8月に帰化支援プログラムを一時中断することを発表しています。

しかし、その一方でFAMはMリーグ各クラブが独自に帰化支援を行うことは禁止せず、その結果が今回のタック、アグエロ両代表選手の誕生につながっています。この他、KLシティはコロンビア出身のFWロメル・モラレスとブラジル出身のMFパウロ・ジョズエを、またJDTはブラジル出身で今季はペナンでプレーしたMFエンドリックの帰化支援を行うとしています。この他、マレーシア人の父母あるいは祖父母を持つことで帰化している「ハイブリッド帰化選手」も増えており、この日のカンボジア戦では、オーストラリア出身のデヴィッド・ローリー、いずれも英国出身のスチュアート・ウィルキンとダレン・ロックが先発、ベンチにもブレンダン・ガン、クェンティン・チェン(いずれもセランゴール)、ドミニク・タン(サバ)らがこのハイブリッド帰化選手です。Mリーグまで目を広げれば、このハイブリッド帰化選手はまだまだいるので、将来はマレーシア出身ではないマレーシア人選手によるマレーシア代表チームができるかも知れません。

2022年12月9日
国際親善試合@ブキ・ジャリル国立競技場
マレーシア 4-0 カンボジア
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム2(11分、45分)、リー・タック(38分)、スチュアート・ウィルキン(86分)

下はこの試合のハイライト映像。上の英語版はマレーシアサッカー協会FAM公式YouTubeチャンネルより。下のマレーシア語版はアストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより

12月8日のニュース
クダ新監督にナフジ・ザイン前トレンガヌ監督が就任
来季スーパーリーグ不参加のサラワク・ユナイテッドが3部リーグ加入を申請
体調不良のファイズ・ナシルに代わってU23代表のアリフ・イズワンがA代表合宿に合流

クダ新監督にナフジ・ザイン前トレンガヌ監督が就任

Mリーグ1部スーパーリーグで今季8位に終わったクダ・ダルル・アマンFCは、クラブ公式SNSでナフジ・ザイン前トレンガヌ監督の就任を発表しています。契約期間は2年ということです。

2020年からトレンガヌFCの指揮を取り、今季はチームをリーグ2位、FAカップ準優勝、マレーシアカップベスト4の好成績に導いたナフジ氏でしたが、クラブ運営陣への不信感からオファーされた1年の契約延長を拒否し、契約満了に伴い退団していました。

シンガポール出身のアイディル・シャリン監督の元、2020年、2021年シーズンはいずれも優勝したジョホール・ダルル・タジムJDTに次ぐ2位となったクダは、今季開幕前にMFバドロル・バクティアル、DFリザル・ガザリ(いずれもサバFCへ移籍)ら代表選手が移籍し、FWクパー・シャーマン、FWチェチェ・キプレ(いずれもトレンガヌFCへ移籍)など外国籍選手を全員入れ替えた結果、8位に低迷、リーグ戦終了と同時にアイディル監督は退団していました。

またクダは、今季終了後にはやはり外国籍選手5名全員が契約満了で退団した他、トップチームの12名の選手と契約を更新せず、さらに来季はトップチームの登録を30名から25名に縮小するなど、2季連続でチームの大幅刷新を図ろうとしています。

2007年から2009年までは選手としてクダでプレーし、2007年の国内三冠(スーパーリーグ優勝、FAカップ優勝、マレーシアカップ優勝)も経験しているナフジ新監督は、かつての栄光を取り戻すことは容易ではないとしながらも、地元のクダ州出身の若い選手を成長させて、より強いチームを作りたいと入団会見で話しています。

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大幅にメンバーが変わるクダには、PJシティの正GKで、現在開催中の代表候補合宿にも招集されているカラムラー・アル=ハフィズの加入が発表された他、今季トレンガヌでナフジ監督の元でプレーしたMFマヌエル・オット(フィリピン)も加わるのではと言う噂も出ています。その一方でクダと契約を更新した選手たちはトップチームの経験が少ない若手が中心で、育成に定評があるナフジ監督の手腕が問われる2年となりそうです。

来季スーパーリーグ不参加のサラワク・ユナイテッドが3部リーグ加入を申請

今季、Mリーグ1部スーパーリーグで11位に終わったサラワク・ユナイテッドFCは、選手に対する給料未払いが理由で、来季のMリーグ1部スーパーリーグ参加のための国内クラブライセンスが交付さなませんでした。このサラワク・ユナイテッドが来季はMリーグ3部でセミプロリーグのM3リーグ参加の申請を行ったと、東マレーシア(サバ・サラワク)のサッカーの話題を中心に取り上げているサッカー専門サイトのサラワク・クロックスが報じています。

サラワク・ユナイテッドは、かつて在籍した外国籍選手への15万マレーシアリンギ(およそ4700万円)の給料未払いが滞り、選手がFIFAの紛争解決室に持ち込んだ結果、今後3回のトランスファーウィンドウ期間中の新規選手獲得禁止処分を受けるなど、運営に多くの問題を抱えてい多クラブでした。

M3リーグを運営するアマチュアフットボールリーグAFLのライミ・フィクリCEOは、サラワク・ユナイテッドからの来季のM3リーグ参加申請を受け取ったことを明らかにする一方で、この申請がM3リーグ参加を確約するものではなく、運営資金などに関する資料の提出を受け、その内容を審査した上で参加の可否を決定するとしています。

またライミCEOはこのサラワク・ユナイテッドの他に、今季スーパーリーグでプレーしながら、やはり給料未払いが理由で国内クラブライセンスが不交付となったマラッカ・ユナイテッドFC、そしてマラッカ州サッカー協会が新たに設立したマラッカFCの3クラブからM3リーグ参加申請が提出されていることを明らかにしています。

サラワク・ユナイテッドを加えると計15チームから出されているM3リーグ参加申請内容の審査は既に80%ほどは終了していると述べたライミCEOは、数週間以内には、来季のM3リーグ参加クラブが決定し、これを発表できるだろうと述べています。

体調不良のファイズ・ナシルに代わってU23代表のアリフ・イズワンがA代表合宿に合流

マレーシアサッカー協会FAMは公式SNSで、A代表候補合宿に参加中のMFファイズ・ナシル(トレンガヌFC)が体調不良のため合宿を離脱し、代わりに12月6日に終了したU23代表合宿に参加していた18歳のFWアリフ・イズワン(スランゴール2)がA代表合宿に参加することを発表しています。

FAMの発表によりと、11月30日と12月1日に行われたA代表とU23代表の合同練習、そして12月2日に行われたA代表対U23代表の練習試合でのアリフ選手のプレーぶりがキム・パンゴンA代表監督の目に止まったと言うことです。またこのアリフ選手については、現在U23代表の監督を務める一方で、A代表でもコーチを務めるE・エラヴァラサン監督からもA代表候補合宿への参加が提案されていたと言うことです。

このアリフ選手は、やはりU23代表合宿にも参加していたGKラーデイアズリ・ラハリム(トレンガヌ)とともにA代表合宿にし、さらにチェコ1部のFKヤブロネツでプレーするDFディオン・コールズが12月16日に合流することで、28名全員が揃うことになります。A代表はAFF選手権前にカンボジア代表戦(12月9日)、モルディブ代表(12月14日)と2試合の練習試合を行い、そこから最終メンバー23名が決定します。

12月3日のニュース
AFF選手権出場の代表候補から11名辞退のジョホールオーナーがAFF選手権不要論

Mリーグ1部スーパーリーグ、ジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下は「物言うオーナー」としても知られていますが、このイスマイル殿下が東南アジアサッカー連盟AFF選手権は「気を散らすもの」だとして、その必要性に疑問を投げかけています。

キム代表監督の選手招集拒否批判に反論

ことの発端は先月11月29日から始まっている代表候補合宿で当初、招集予定だった41名中、JDTから11名の辞退者が出たことでした。今月末に開幕するAFF選手権三菱電機カップは、FIFAの国際マッチカレンダー期間外ということもあり、各クラブは選手招集を拒否できることから、これ自体には何も問題はありませんが、これを受けてキム・パンゴン監督は「自身の監督経験の中で、これほど多くの主力選手が代表招集を拒否したのは初めてだ。」と暗に選手招集を拒否したクラブを批判する発言を行い、これに反応したのがイスマイル殿下でした。

イスマイル殿下は自身のインスタグラムに「選手は動き続ける機械ではなく、シーズン終了後には休養も必要だ。」と投稿し、代表招集辞退の正当性を説明しています。「Mリーグの選手たちは1月から練習と試合を続けてきている。しかもリーグ中断期間には代表合宿が繰り返し行われ、代表選手は全く休養を取ることができない。近隣諸国は試合があれば、その前の1週間に代表合宿を行なっているが、マレーシアは3週間選手を拘束する政界でも類がない長期の代表候補合宿を行う国である。」と代表合宿の方式を批判したイスマイル殿下は、かえす刀でAFF選手権にも言及しています。

AFF選手権重視は大局的見地の欠如

「AFF選手権はMリーグの選手と年間スケジュールをめちゃくちゃにするものものである。今回の大会は決勝が来年の1月15日に予定されているが、(春秋制を採用するMリーグの)各クラブは例年1月から練習を開始する。これで選手にいつ休養を取れと言うのか。」

イスマイル殿下の舌鋒はさらにキム監督にも向けられます。「代表チームの監督は何の考慮もせず、他人の持ち物を借りているだけの存在である。選手に投資し、給料を支払っているのは全てクラブである。その点を無視してクラブを批判するという姿勢はいかがなものか。」

「代表選手たちは(最終予選を突破し)アジアカップ2023年大会の出場権を獲得するなど、既にその義務を果たしている。世界の誰も注目しないAFF選手権にそれほど注力する必要は果たしてあるのか。マレーシアサッカーが成功するためにはもっと大局的に考える必要がある。」と述べています。

代表合宿初日の参加者は30名中17名

最終メンバー30名が発表された今回の代表候補合宿初日は、17名が参加したのみでした。なお11月26日に行われたマレーシアカップ決勝に出場したJDTの2選手とスランゴールの7選手は12月5日から参加することが発表されています。またU23代表候補にもなっているラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)は12月6日に終わるU23代表候補合宿終了後に、またチェコ1部のFKヤブロネツでプレーするディオン・クールズ12月16日日にそれぞれ合流する予定です。

しかし、その後の報道で初日に参加した17名のうち、KLシティのDFデクラン・ランバートとMFアクラム・マヒナンも「個人的な事情」を理由に今回の合宿参加辞退を表明し、最終メンバーは結局、28名になっています。なおKLシティは今季AFCカップに出場し、9試合をアジア各地で戦っています。

強者ゆえに試合数が多くなるJDT

辞退した11名を含め、合計13名が今回の合宿に招集されたJDTは、リーグ戦22試合、いずれも優勝したFAカップとマレーシアカップではそれぞれ5試合と7試合、さらにACLではグループステージ4試合、ノックアウトステージ1試合とクラブとして今季39試合の公式戦を戦っています。さらに先日行われたインドネシア1部プルシス・ソロや、ドイツ1部ボルシア・ドルトムントとの親善試合や、開幕前に行なったMŠKジリナ(スロバキア1部)、スパルタ・モスクワ(ロシア1部)などとの合計6試合のプレシーズンマッチなども合わせれば2022年はクラブとして45試合こなしたことになります。

しかもJDTの選手の多くが代表でも主力選手として、3月にシンガポールで開かれたフィリピンとの3カ国対抗、アジアカップ2023年大会予選など今年の代表戦7試合にも出場しています。もちろん全員が全ての試合に出場しているわけではないですが、1年間にこれだけの試合をプレーした選手を、優勝しても東南アジアでの評価以上のものは得られないAFF選手権に出すよりは、来季のリーグ10連覇やACLのベスト8入などの目標のために十分に休養させたい、とイスマイル殿下が考えるのは理解できなくもありません。しかも来季はアジアカップがあり、年間日程は今季よりもさらに密になることも予想され上、アジアカップではまた選手がほぼクラブごと代表に招集されてしまうJDTにとっては、12月しか選手を休ませられる期間がないということです。.

なお、マレーシア代表は12月9日のカンボジア、そして12月14日のモルジブとの親善試合後に23名の最終メンバーが決定し、FIFAワールドカップカタール大会決勝の3日後、12月21日に開幕するAFF選手権三菱電機カップでは、初戦となるミャンマー戦(ヤンゴン)に臨みます。



11月25日のニュース
AFF選手権出場の代表候補発表-お疲れのジョホールからは2名のみ選出
U23代表候補発表-J3沼津のハディ・ファイヤッドが6月のシーゲームズ以来の招集

いよいよ今日11月26日は今季のマレーシアサッカーのフィナーレを飾るマレーシアカップの決勝です。決勝に駒を進めたリーグ9連覇中のジョホール・ダルル・タジムJDTが現在のマレーシアサッカーをリードするクラブだとすれば、その相手となるスランゴールはマレーシアカップ優勝回数22回と最多を誇るものの、近年は低迷するかつてのリーグ盟主です。タン・チェンホー前マレーシア代表監督就任以来、リーグ戦からマレーシアカップ決勝まで8試合無敗のスランゴールがその連勝記録を伸ばすのか、昨季の決勝ではKLシティに敗れたJDTが3年ぶりの優勝を果たし、リーグ戦、FAカップに続く今季国内三冠を達成するのか。本日午後9時(マレーシア時間、日本時間午後10時)キックオフのマレーシアカップ決勝はこちらから視聴可能です。

AFF選手権出場の代表候補30名が発表-お疲れのジョホールからは2名のみ選出

12月21日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに出場するマレーシア代表の候補合宿参加メンバーをマレーシアサッカー協会FAMが発表しています。今月11月29日から始まる代表候補合宿に招集されたのは30名(29名発表後、スランゴールのファズリ・マズランが追加で招集)です。

比較的若い選手中心の構成となった今回、初のA代表招集となったのはリーグ3位のサバでプレーするMFスチュアート・ウィルキンの他、DFアリフ・ハイカル(スランゴール)、GKアズリ・ガニ、FWハキミ・アジム・ロスリ(いずれもKLシティ)、そしてMFデヴィッド・ローリー、MFリー・タック、MFエセキエル・アグエロ(いずれもスリ・パハン)の7名です。

この中で注目なのは英国出身で34歳のリー・タックとアルゼンチン出身で28歳のエセキエル・ アグエロの両選手。いずれもMリーグで5年間プレーしたことで、FIFAの規定により帰化選手となる条件を満たした両選手は、所属するスリ・パハンとパハン王室の支援もあり、今年マレーシア国籍を取得しており、今回、晴れて代表入りを果たしています。ちなみに今回初招集されたスチュアート・ウィルキンとデヴィッド・ローリーも、それぞれイギリスとオーストラリアの出身です、いずれもマレーシア人の親を持つ「ハイブリッド」帰化選手です。

なお初招集となった、DFアリフ・ハイカル、GKアズリ・ガニ、そしてMFムカイリ・アジマルとDFクエンティン・チェン(以上スランゴール)の各選手は、今年6月にウズベキスタンで開催されたAFC U23アジアカップに出場したマレーシアU23代表でもプレーしています。

また、これまで代表招集経験があるものの、キム監督就任以来初の招集となったのは、FWラマダン・サイフラー(JDT)、MFファイズ・ナシル(トレンガヌ)、FWノル・ハキム・ハサン、DFファズリ・マズラン(いずれもスランゴール)、MFアクラム・マヒナン(KLシティ)、コギレスワラン・ラジ(PJシティ)の6名です。

今回、30名中、13名の新顔が揃ったのには訳があります。三菱電機カップはFIFAの国際マッチデー期間外で開催されるため、Mリーグのクラブは選手の代表招集に応じる義務がありません。春秋制を採用するMリーグでプレーする選手にとって12月と言えば、今季の全日程を終えて、疲労も溜まり、体調も落ちている時期です。そのためか、ACLでノックアウトステージに進出するなど、今季はMリーグのどのチームよりも多く試合をしているJDTからは、ラヴェル・コービン=オングとマシュー・デイヴィーズの両サイドバックや、おそらく今季もリーグMVPを獲得するであろうアリフ・アイマンら代表主力選手(JDTからは10名程度が召集を辞退したと噂もあります)がケガや家庭の事情を理由に召集を辞退しており、これが今回の代表候補メンバーが従来のメンバーから様変わりしている理由です。

なお三菱電機カップの前には12月9日に対カンボジア、12月14日には対モルジブの国際新全試合も予定されていますが、キム監督はこの2試合後に三菱電機カップ出場の最終メンバー23名を決定するということです。

三菱電機カップではB組に入っているマレーシアは、12月21日にアウェイのミャンマー戦、12月24日にはクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場でラオス戦、27日には再びアウェイのベトナム戦、そしてグループステージ最終戦はブキ・ジャリル国立競技場に戻って1月3日のシンガポール戦が組まれています。そしてB組の上位2位に入れば、ホームアンドアウェイ形式で行われる準決勝(1月6日または7日と、9日または10日)、そして決勝(1月13日と16日)が控えています。

以下が今回、代表候補合宿に参加する30名です。

POS選手氏名年齢クラブ
FWサファウィ・ラシド25JDT
FWラマダン・サイフラー22JDT
DF シャルル・ナジーム23SEL
MF ブレンダン・ガン34SEL
MFムカイリ・アジマル21SEL
DFアリフ・ハイカル22SEL
FWノル・ハキム・ハサンSEL
DFクェンティン・チャン23SEL
DFファズリ・マズラン28SEL
GK ラーディアズリ・ラハリム21TRE
FWファイサル・ハリム24TRE
DFアザム・アズミ21TRE
MFファイズ・ナシル30TRE
GK アズリ・ガニ23KLC
DF. デクラン・ランバート24KLC
MF. アクラム・マヒナン29KLC
FWハキミ・アジム・ロスリ19KLC
GKカラムラー・アル=ハフィズ27*PJC
FW ダレン・ロック31*PJC
MF V・ルヴェンティラン21*PJC
FW コギレスワラン・ラジ24*PJC
MF. リー・タック34SRP
MFデヴィッド・ローリー32SRP
MF. エセキエル アグエロ28SRP
DFクザイミ・ピー29NSE
GKシーハン・ハズミ26NSE
DFドミニク・タン25SAB
MF スチュアート・ウィルキン24SAB
DFディオン・コールズ26FKJ
FWヌル・シャミ・イスズアン27SWU
JDT-ジョホール・ダルル・タジム、TRE-トレンガヌ、SAB-サバ、NSE-ヌグリスンビラン、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、SRP-スリ・パハン、PJC-PJシティ、SWU-サラワク・ユナイテッド、FKJ-FKヤブロネツ(チェコ1部)
U23代表候補発表-ハディ・ファイヤッドが6月のシーゲームズ以来の招集

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイト上で、U23代表候補合宿参加メンバー25名を発表しています。今回の合宿は直近の試合はないものの、A代表のコーチでもあるE・エラヴァラサン監督が指揮を取る最初の合宿となります。なおU23代表合宿は11月27日から12月6日まで予定されています。

来年2023年のU23代表の最初の公式戦はアセアン東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権です。今年2月に開催された2022年大会では、マレーシアU23代表はラオスと2チームのみとなったグループステージで1-2、0-2とラオスを相手に2戦2敗し、まさかのグループステージ敗退を喫しています。

来年の2つ目の公式戦は東南アジア競技大会、通称シーゲームズです。今年の2023年大会はカンボジアが開催国で、5月に開催が予定されています。シーゲームズは従来は隔年開催の大会ですが、新型コロナの影響で延期された2021年ベトナム大会が今年開催され、マレーシアU23代表は準決勝ではベトナムに敗れ、さらに3位決定戦ではPK戦でインドネシアに敗れるなど、2019年フィリピン大会に続くメダルなしで終わっています。

また今年は、AFC U23アジアカップ2024年大会の予選も控えています。現在、ワールドカップが開催されているカタールが開催地となるこの大会の予選は来年9月に開催が予定されています。なおマレーシアU23代表は、今年開催されたAFC U23アジアカップ2022年大会に出場しましたが、ベトナム、タイ、韓国と同組となったグループステージでは0勝3敗得点1失点9でグループ最下位に終わっています。

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POS選手氏名クラブ年齢
FWシャヒル・バシャーSEL21
DFジクリ・カリリSEL20
FWダニアル・アスリSEL22
GKシャーミ・アディブ・ハイカルSEL219
MFアリフ・イズワン・ユスランSEL218
DFファイズ・アメルSEL219
7.ファクルル・ファリーズ・アイディSEL U2119
8.ハイカル・ハキーミ・ハイリSEL U1919
DFハイリー・ハキムTRE22
FWシャフィク・イスマイルTRE22
GKラーディアズリ・ラハリムTRE21
DFサフワン・マズランTRE220
MFアリフ・シャキリン・スハイミKLC22
DFニック・ウマル・ニック・アジジKLC21
MFナズウィン・サレーKLC U2121
MFシャキミ・ロジKEL U2120
MFイズディン・アスリKEL U2120
DFハスヌル・ザイムSRP U2120
DFイブラヒム・マヌシSRP U2121
FWハディ・ファイヤッドアスルクラロ沼津22
DFアリフ・ナジミKLU22
FWアイマン・アフィフKDA21
MFT・サラヴァナンPEN U2121
MFA・セルヴァンNSE22
GKフィルダウス・イルマン・ファディルPDRM U2121
SEL-スランゴール、SEL2-スランゴール2、TRE-トレンガヌ、TRE2-トレンガヌII、SAB-サバ、NSE-ヌグリスンビラン、KLC-KLシティ、SRP-スリ・パハン、PJC-PJシティ、SWU-サラワク・ユナイテッド、KDA-クダ、PEN-ペナン、KEL-クランタン、KLU-クランタン・ユナイテッド

10月2日のニュース AFC U17アジアカップ予選-マレーシアは初戦でパレスチナに快勝
AFFビーチサッカー選手権-マレーシアはタイに敗れて2位に
噂関連2題-PJシティはリーグ撤退、JDTはトレンガヌ選手獲得オファーの噂を否定

AFC U17アジアカップ予選-マレーシアは初戦でパレスチナに快勝

インドネシアのボゴールで開催中のAFC U17アジアカップ予選B組に出場中のマレーシアU 17代表は、10月1日(土)に行われた初戦でパレスチナと対戦し、前半は0-0だったものの、後半に4ゴールを決めて快勝しています。

AFC U17アジアカップ予選B組第1節
2022年10月1日@パカンサリスタジアム(インドネシア、ボゴール)
パレスチナ 0-4 マレーシア
⚽️マレーシア:アンジャスミルザ・サハルディン(51分)、ファリス・ダニシュ(69分)、アラミ・ワフィ(75分)、ザイヌルハキミ・ザイン(87分)
🟨パレスチナ(1):レダ・サバー
🟨マレーシア(1):アフィク・ダニシュ

このB組第1節のもう1試合、アラブ首長国連邦UAE対グアムは9-0で、UAEが圧勝しています。

明日10月3日(月)に開催されるB組第2節ではマレーシアは試合がなく、UAE対パレスチナ、グアム対インドネシアの2試合が組まれています。

AFFビーチサッカー選手権-マレーシアはタイに敗れて2位に

東南アジアサッカー連盟AFFビーチサッカー選手権2022年大会がタイのチョンブリで開催されていましたが、マレーシアは最終戦となったタイとの試合に1-3で敗れ、2位に終わっています。

2019年以来3年ぶりの開催となった今大会には、前々回2018年大会の覇者ベトナムは出場せず、開催国タイ、マレーシア、インドネシアと3カ国のみが出場しました。マレーシアは初戦のインドネシアに9−2と勝利しており、同じインドネシアを相手に5−2で勝利したタイと最終戦で対戦しました。

得失差もあり、この試合で引き分け以上なら、自国開催だった2014年大会以来2度目の優勝となるマレーシアでしたが、結局、タイに敗れて2位となっています。一方のタイは前回2019年大会に続く2連覇となりました。

PJシティのCEOはクラブのスーパーリーグ撤退の噂を否定

今季のMリーグ1部スーパーリーグで10位と低迷するPJシティが今季をもってMリーグを撤退するのでは、といった噂がSNS上などで出ていることを受け、PJシティのCEOがこの噂を否定する事態になっていると、英字紙スターが報じています。

リ現在のチームオーナーであるQI社がクラブを売却する用意があるとも噂されていることに対して、PJシティのS・ガネシュCEOは、クラブは売りには出されてないと噂を否定する一方で、来季に向けてさまざまな構造改革がクラブ内で行われていることを明らかにしています。

その改革の具体的な内容に関しては、まだそれを明らかにする時期ではない、と話したガネシュCEOは、来季2023年シーズンに向けてMリーグのクラブライセンス、そしてAFCのガイドラインに従ったクラブライセンスの申請を既に行なったことも説明した上で、オーナーのQI社の負担を減らすよう、商業的に自立したクラブになるための改革であるとしています。

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前身のインド系マレーシア人サッカー協会MISC-MIFAから転じたPJシティは、スーパーリーグデビューとなた2019年には8位、さらに2020年と2021年には7位の成績を収め、今季は外国籍選手を1人も獲得せず、”Yakini Lokal”(「マレーシア人選手を信じろ」とでも訳せるでしょうか)をスローガンに今季はここまで18試合で3勝8分7敗、得点18失点29の勝ち点17の10位という成績ですが。その一方で、外国籍選手がいないことによってマレーシア人選手が出場機会をより多く得られることで、今季チームからはダレン・ロック、V・ルヴェンティラン、カラムラー・アル=ハフィズ、R・コギレスワランが代表に召集されています。

国体で活躍のトレンガヌ若手選手への獲得オファーの噂をJDTが否定

Mリーグ1部スーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムJDTは、クラブ公式Facebookなどで、同じスーパーリーグのトレンガヌのセカンドチームに所属するムスリフディン・アティクに対して獲得オファーを出したという噂を否定しています。

先月9月に開催されたマレーシアの国体、マレーシアゲームズのサッカーで12年ぶりの優勝を果たしたトレンガヌの主力選手として3ゴールを挙げるなど、時の人となったムスリフディン選手ですが、トレンガヌ州政府の青年スポーツ委員会のワン・スカイリ・ワン・アブドラ委員長のもとに、このムスリフディン選手獲得について所属するトレンガヌとJDTの間で獲得交渉が行われていると発言していました。

しかしJDTはアリスター・エドワーズ テクニカル・ディレクターTD名でFacebookに投稿し、元U19代表ストライカーでもあったムスリフディン選手について、JDTのクラブ関係者は誰1人としては獲得交渉を行っておらず、むしろ交渉中という話自体に驚いたとしています。

9月29日のニュース
MFLがMリーグ2部と3部の入れ替え戦中止を発表
代表好調の裏で帰化選手不要論が再燃か

MFLがMリーグ2部と3部の入れ替え戦中止を発表

先日行われたMリーグ3部に当たるM3リーグの決勝は、PIB FCがPK戦の末にKLローヴァーズFCを破ってM3リーグチャンピオンとなりました。決勝に進出した両リームは、Mリーグ2部プレミアリーグの下位チーム、ペラFCとUITM FCとの入れ替え戦を行うことになっていましたが、Mリーグを運営するMFLはこの入れ替え戦の実施を中止すると発表しています。これにより、今季のプレミアリーグと1部スーパーリーグを合併して再編成する新スーパーリーグに参加する18チームの顔ぶれが確定しました。

MFLはマレーシアサッカー協会FAMよりマレーシアにおけるクラブライセンス制度の制定及び運用の委任を受けており、マレーシアにおけるクラブライセンス交付機関として、クラブライセンス制度を運営し、国内クラブに対してクラブライセンスを交付します。このクラブライセンス交付判定については第三者機関であるクラブライセンス交付第一審機関FIBが行いますが、今回、このFIBが2023年シーズンに向けたM3リーグ上位2チームとプレミアリーグ回2チームとの入れ替え戦を行わないことを決定したということです。

この件についてFIBのシーク・モハマド・ナシル議長が状況を説明し、MFLではなくアマチュアフットボールリーグAFLが運営するアマチュアリーグのM3リーグに今季参加した20クラブ中、優勝したPIB FCを含む7クラブのみがアマチュアクラブライセンスの申請を行なっており、その申請内容に関してはPIB FCとハリニ FTの2チームが条件を満たしている、と述べています。しかし両クラブともMFL傘下のプロリーグに参加するためのプロクラブライセンス取得のための条件は満たしておらず、既にプロクラブライセンス申請期限は過ぎているとしています。

シーク・モハマド・ナシルFIB議長は、今回の事例をもとに、2024年以降に行われる予定の入れ替え戦に向けて、現在のM3リーグクラブには入れ替え戦出場、そしてプロリーグ参加のための必要条件などについて、理解を進めていきたいと話しています。

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リーグ戦の試合数が少なすぎる、というFIFAの指導を受け、来季からのMFLは大規模なリーグ改編を発表しています。具体的には現在の1部スーパーリーグと2部プレミアリーグを合併して18チームによる新たなスーパーリーグを発足させ、プレミアリーグは一時的に中止となります。またアマチュアリーグのM3リーグは、来季からセミプロリーグ化を目指して開催され、MFLが一定のレベルに達したと判断した時点で、M3リーグのクラブが新たなプレミアリーグを構成します。

リーグ再編は既に決まってしまったものですが、東南アジアの中では人口が3200万人と比較的少ないマレーシアがトップリーグを18チームで構成する一方で、、7000万人近い人口を抱えるタイのトップリーグは16チーム、1億人を超えるベトナムは14チーム、さらには2億7000万人のインドネシアは18チームで構成されていることを考える、今回のリーグ再編の内容には、正直、疑問を感じます。人口600万人に満たない隣国シンガポールは、トップリーグが8クラブで構成され、各チームがホーム、アウェイそれぞれ2試合ずつ行い、1チームあたり28試合を行なっており、試合数自体が問題であれば、シンガポールを参考にしながら各チームの対戦カードを例えば3試合制にするなどの方法も考えられました。

このブログでも頻繁に取り上げているように、給料未払い問題が頻発するMリーグでは、勝点剥奪や下位リーグ降格という罰則があることで、その問題発生数が抑えられているとも言えます。しかしリーグ拡大により、従来のリーグ11位、12位であっても来季は下部リーグ降格の心配がないクラブは、再び給料の遅配や未払いを起こす可能性もあります。また18クラブでトップリーグを構成しても、その実態は上位クラブと下位クラブの差が大きい、分断されたリーグとなり、サポーターが望むような白熱した試合が行われないことも考えられます。まぁ、そんあ心配が取り越し苦労だった、となってくれれば良いのですが。

代表好調の裏で帰化選手不要論が再燃か

キム・パンゴン監督就任以降、好調なマレーシア代表。43年ぶりとなるAFCアジアカップ出場権獲得に続き、先日のキングズカップでもFIFAランキングで上位のタイ、そしてタジキスタンと90分間で引き分け、サポーターの期待も近年にないほど高まっています。

44年ぶりの優勝がかかったキングズカップの決勝、タジキスタン戦で、キム監督は初戦のタイ戦からメンバーを入れ替えて臨みましたが、その中の1人、モハマド・スマレー(JDT)は気合が空回りしており、さらに危険なタックルであわやレッドカードといったハラハラする場面を演出し、試合後はSNSだけでなく、スポーツメディアなどでも、そのプレーに批判が集まり、かつてクダの監督を務め、2007年、2008年と2季続けてリーグ・マレーシアカップ・FAカップの三缶、トレブルを達成しているアズライ・コー氏などは、スマレ選手は試合では全くチームに貢献しておらず、マレーシアは10人で試合をしているようなものだったと酷評しています。

今回のキングズカップでは、代表のパフォーマンスについては概ね良い評価が与えられていた中で、このスマレ選手についてだけは、久しぶりの出場で興奮したのか、他の選手に負けまいと焦っていたのかわかりませんが、平常心で試合には望めていないことが分かるほどで、頻繁にボールを奪われたり、危険なタックルを繰り返すなど、実際にそのプレーには問題があったのは事実でした。

前述のコー氏は、そこから行動に問題があり、精神的に不安定な住まれ選手は代表チームに不要と話し、さらに代表チームにはそもそも帰化選手は不要と、マレーシア語紙のハリアンメトロの取材に答えています。

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また、このような「帰化選手批判」の声があちこちで上がったことを受け、コソボ出身でやはり帰化選手のリリドン・クラスニキ(タイ1部コーンケン・ユナイテッドFC)が自身のインスタグラムで「(帰化選手は、チームが試合に)勝てばマレーシア人扱い、負ければ外国人扱いされる。」と投稿するなど、批判を受けている帰化選手にも不満が溜まっていることが見て取れます。

スマレ選手はコロナ禍前の2019年のFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選では活躍して多くのサポーターから賞賛されましあ。またクラスニキ選手も、かつて在籍したクダでは多くの地元サポーターから愛された選手です。しかし、この2人とブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ(JDT)の3選手はコロナ禍による中断のW杯予選や昨年末の東南アジアサッカー連盟AFF選手権などではチームに貢献できなかったことから、サポーターだけでなく、元代表選手などが代表チームへの帰化選手不要論を公言し、これを受けたかどうかはわかりませんが、マレーシアサッカー協会FAMは協会主導で進めていた「代表チーム強化を目的とした外国籍選手のマレーシア帰化支援プログラム」の一時中止を決めルことを発表しています。

Mリーグの帰化選手には、いわゆるハイブリッド帰化選手と呼ばれる、マレーシア国外で生まれ育ったものの父母あるいは祖父母がマレーシア人であることからマレーシア国籍を取得した選手と、そういったマレーシア人の血縁を持たない帰化選手がいます。代表チームを見ると、ハイブリッド帰化選手は今回のキングズカップ出場メンバーでは、ラヴェル・コービン=オング、ディオン・クールズ、ドミニク・タン、マシュー・ディヴィーズ、デクラン・ランバート、ブレンダン・ガン、ダレン・ロックと7名、帰化選手がスマレ1名と25名のメンバー中、およそ3分の1が帰化選手ですが、ハイブリッド帰化選手が批判を受けることはほとんどありません。

9月26日のニュース
マレーシアは44年ぶりのキングズカップ優勝を逃す

マレーシアは44年ぶりのキングズカップ優勝を逃す

タイのチェンマイで開催されていた第48回キングズカップの決勝が行われ、タジキスタンがPK戦を制して優勝、マレーシアは準優勝となっています。

直近のFIFAランキング111位のタイを破り、決勝へ進んだ同148位のマレーシアは、トリニダード・トバゴ(同101位)を破ったタジキスタン(同109位)との対戦となりました。

マレーシアのキム・パンゴン監督はタイ戦からは4選手を入れ替え、てこの試合に臨んでいます。DF陣はマシュー・デイヴィーズ(JDT)、ディオン・クールズ(チェコ1部FKヤブロネツ)、クザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)の3バックから、ラヴェル・コービン=オング(JDT)が下がり気味の4バックへ、中盤はブレンダン・ガン(スランゴール)、前の試合でレッドカードをもらい出場停止となったアザム・アジー(スリ・パハン)に代えてナズミ・ファイズ(JDT)を起用、この2人の前にはセカンドストライカー的にサファウィ・ラシド(JDT)を配置、FWはアリフ・アイマンに代えてモハマドゥ・スマレ(いずれもJDT)が右サイドに入り、この試合ではキャプテンを務めたシャフィク・アフマドとアキヤ・ラシド(いずれもJDT)が先発し、タイ戦の3-4-3から4-3-3へとシステムも変更しています。

この決勝の前に雨の中で行われた3位決定戦により既にピッチは荒れていた上、この試合開始時にも激しい雨が降る中で行われたこの試合で、ピッチが滑りやすくなっている上、蹴ったボールが止まってしまう最悪のコンディションでした。前半は両チームともこのコンディションに苦しみ、互いに後期を作ることができ前戦でしたが、こう後半に入るとマレーシア、タジキスタンともピッチの状態に慣れ、激しくせめぎあいます。しかしマレーシアGKシーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)、タジキスタンGKルスタム・ヤチモフ(タジキスタン1部FCイスティクロル)が好セーブを度々見せ、試合は0-0のまま進みます。

マレーシアの最大のピンチは84分、集中力が切れたかのように、DF陣のミスからルスタム・ソイロフ(エストニア1部レバディア・タリン)にシュートを決められますが、これがオフサイドの判定となり九死に一生を得ました。

その後も両チームともゴールを破ることができず、90分間では決着がつかなかった試合は、マレーシアにとっては2試合連続となるPK戦へと突入しました。

PK戦先攻のタジキスタンはキャプテンのアフタム・ナザロフがゴール正面にチップキックを放ちますが、コースを読み間違えたシーハン・ハズミが素晴らしい反応を見せてこのシュートを弾き、マレーシアが有利な状況になりました。しかしマレーシアの1人目のディオン・クールズのシュートはゴールポストに当たり失敗、タジキスタンは続く2人がPKを決めたのに対し、マレーシアは2人目ナズミ・ファイズのシュートはGKルスタム・ヤチモフに止められ、3人目サファウィ・ラシドのゴールはゴールポストを直撃してしまいます。タジキスタンの4人名は前述のゴールがオフサイド判定されていたルスタム・ソイロフでしたが、このPKは決まって、タジキスタンがPK戦を3-0で制して、第48回キングズカップの優勝を果たしています。

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タイ、タジキスタンといずれもFIFAランキング上位のチームとの引き分けは、来年のAFCアジアカップ出場権獲得に続き、昨年末の東南アジアサッカー連盟AFF選手権のグループステージ敗退で失った自信を取り戻すのには十分な結果です。しかし、タイ、タジキスタン相手に90分で勝利できなかったのも事実です。就任から1年も経たない内に代表チームのプライドを取り戻し、サポーターの期待を高めたキム・パンゴン監督の手腕は見事というしかありませんが、こうなると今年年末の東南アジア選手権へ向けての期待も当然高まります。年末のこの大会ではベトナム、ミャンマー、シンガポール、ラオスとの同組となることが決まっていますが、グループステージを突破し、準決勝進出はサポーターが期待する最低ラインでしょう。

下はこの試合の両チームの先発XIと試合のハイライト映像。ハイライト映像はアストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。