10月28日のニュース:AFCカップの決勝はKLで開催、FAMはU21とU19大会廃止の噂を否定、M3リーグはケランタン・ユナイテッドが優勝

AFCカップの決勝はKLで開催
 アジアサッカー連盟AFCが主催するAFCカップは、AFCチャンピオンズリーグACLの出場枠が与えられているAFCクラブチームランキングの上位14カ国以外の国および地域のリーグ戦やカップ戦の優勝チームに出場権が与えられる大会で、2015年には、マレーシアフットボールリーグMFLの優勝チーム、ジョホール・ダルル・タクジムJDTも優勝を経験しています。
 今季2019年の決勝戦は4.25 SC(北朝鮮)対アル・アヘドSC(レバノン)が対戦しますが、その会場が二転三転し、結局、マレーシアの首都クアラルンプールになったことが英字紙マレーメイル電子版で報じられています。
 当初は北朝鮮の平壌で11月2日に予定されていた決勝戦ですが、10月15日にやはり北朝鮮の金日成競技場で行われたFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選の北朝鮮対韓国の試合が中継なしの無観客試合として行われたことを受け、AFCは試合の中継権やスポンサーへの配慮から、決勝の舞台を平壌から中国の上海へ変更することを10月22日に発表していました。
 しかしAFCは10月25日に新たな告知として、AFCカップ決勝は上海からマレーシアの首都クアラルンプールで、予定よりも2日遅い11月4日に行われることを発表しています。AFCは再度の変更理由を明らかにしていません。
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 AFCの本部があるマレーシアのクアラルンプールでは、これまでも中立地域での試合会場を提供することが度々ありました。またマレーシアの国教であるイスラム教の教徒が人口の半数以上を占めるレバノンのクラブと、マレーシアとも国交のある北朝鮮のクラブの対戦場所として、クアラルンプールは無難な選択かもしれません。

FAMはU21とU19大会廃止の噂を否定
 マレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、マレーシアフットボールリーグMFL所属クラブのU21チームの大会であるプレジデントカップと、U19チームの大会であるユースカップ廃止の噂を否定していると、スポーツ専門サイトのスタジアムアストロが伝えています。
 ラマリンガム事務局長は、両大会の廃止を否定する一方で、フォーマットの変更については、選手、コーチ、審判など関係者全員にメリットがあるような方式を現在検討中だとも述べています。
 FAMは年齢制限のない育成目的のリーグの発足を検討しているという話もあり、そこからU21チームとU19チームに限定されている両大会の廃止という話が出回った可能性がありますが、ラマリンガム事務局長はプレシデントカップとユースカップの有用性を強調した上で、廃止については現在は検討されていないとしています。

M3リーグはケランタン・ユナイテッドが優勝
 マレーシアフットボールリーグMFLの3部にあたるM3リーグでは、マレー半島北東部のケランタン州に本拠地を持つケランタン・ユナイテッドが2節を残して優勝を果たしています。
 14のクラブで構成されているセミプロリーグのM3は、ケランタン・ユナイテッドと鈴木啓太選手が所属する、東マレーシアのサラワク州に本拠地を持つクチンFAに優勝争いが絞られていましたが、10月27日にランカウィ島で開催されたアウェイのグローリー・ユナイテッド戦に5-0で快勝し勝点が65となり、2位のクチンFAに勝点差12をつけて優勝を決めています。
 なおケランタン・ユナイテッドのガンビア出身のFWアルフサイニ・ガッサマはこの日の4得点で27得点となり、やはりこの日、ゴールを決めたチームメイトのマレーシア人FWファクラル・ザマンと共にリーグの得点王レースのトップとなっています。
 ケランタン・ユナイテッドはM3リーグ優勝により来季2020年のMFL2部ブレミアリーグへの自動昇格権を獲得しています。また3位のマレーシア国軍FCに勝点5の差をつけている2位クチンFAはMFL2部11位のサラワクFAと入れ替え戦を行う可能性が高くなってきました。
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 本来ならば、MFL2部の11位、12位がMFL3部の1位、2位とそれぞれ入れ替え戦を行うことになっていますが、今季のMFL2部は開幕直後にプルリスFAが給料未払い問題により助名処分を受けており、M3優勝のケランタン・ユナイテッドには自動昇格権が与えられています。またケランタン・ユナイテッドのMFL2部昇格により、MFL2部にはケランタン州サッカー協会が統括するケランタンFAとケランタン・ユナイテッドの2クラブが同時に在籍することになりました。
 また、クチンFAが対戦する可能性があるサラワクFAはサラワク周サッカー協会が統括するクラブで、いわば上部組織である東京都サッカー協会が統括するクラブチームとその下部組織である新宿区サッカー協会のクラブチームが入れ替え戦を戦うような状況になる可能性があります。
(写真は優勝を決めたケランタン・ユナイテッドのFacebookより。”Kita Juara”は「俺たちはチャンピオンだ」の意味のマレーシア語です。)

10月27日のニュース:ワン・クザインのU22代表招集に暗雲、マラッカUのザイナル監督が留任

ワン・クザインのシーゲームズ参加に暗雲
 アメリカのプロサッカーリーグMLSのスポーティング・カンザスシティに所属する21歳のMFワン・クザイン・ワン・カマルはアメリカ生まれながらマレーシア人の両親を持ち、来月11月25日からフィリピンで開催される東南アジア競技大会、通称シーゲームズに参加するマレーシアU22代表へ招集される可能性が取り沙汰されています。
 しかしそのワン・クザイン選手はマレーシアのパスポートを持っているものの、既に有効期限切れになっているようで、新たなパスポート取得のためには直ちにマレーシアに戻る必要があるとマレー語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。
 マレーシアU22代表としてプレーするための手続きには2週間ほどかかるようで、シーゲームズ参加登録に間に合わせるためにも、11月初旬のMLS終了後、速やかな帰国を望んでいることをマレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は表明していますが、パスポート取得から代表参加までの期間が短ければ、チーム自体が混乱する懸念もあり、このままではワン・クザイン選手の招集自体が見送られる可能性があります。

マラッカUのザイナル監督が留任
 マラッカ・ユナイテッドを統括するマラッカ州サッカー協会MUSAは、今季2019年に続いて来季2020年もザイナル・アビディン・ハサン監督がチームの指揮を取ることを発表しました。
 スポーツ専門サイトフォックススポーツによると、MUSAのアドリー・ザハリ会長はマレーシアフットボールリーグMFLで昨季の7位から今季は6位と順位を上げたこと、またマレーシアカップ でも準々決勝に進出したことを評価した結果の続投要請であったことを明かしています。
 今季のマラッカ・ユナイテッドは開幕の5試合で3勝1分1敗と好スタートを切ったものの、ケガ人の続出や下位チーム相手の取りこぼしなどで同じ勝点33の5位のペラTBGを勝数で上回りながら、得失差で6位となっています。
 マラッカ州知事でもあるザハリ会長は、より上位に進出すつための新たな戦力の獲得もザイナル監督に一任するとしています。
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 マラッカ・ユナイテッドは、リーグ戦中から給料未払いが何度か取り沙汰されましたが、マレーシアカップ準々決勝直前に主将のシュコル・アダンが数ヶ月の給料未払いを告発して試合出場を拒否、チームも準々決勝第1戦と第2戦通算でパハンFAに6-1で敗れています。
 また来季のMFL参加に必要なクラブライセンスも条件付きでの交付となっていることから、MUSAにどれだけの強化資金があるのかは不明で、ザイナル監督が望むような補強ができるのかどうかも定かではありません。 

10月25日のニュース:FAM会長はECPに基づいた戦力補強を求める、クラスニキがJDTの練習場で目撃される、ニック・アキフにはトレンガヌFC移籍の噂

FAM会長はECPに基づいた戦力補強を求める
 今季2019年シーズンは、残すところ今週末のマレーシアカップ 準決勝、そして11月2日の決勝だけとなりました。
 準決勝に残ったJDT、パハンFA、スランゴールFA、クダFA以外のクラブは、来季2020年シーズンに向けて、トライアウトなどを行って戦力増強に余念がないところでしょう。そういった各クラブに向けて、マレーシアサッカーリーグMFLのダト・ハミディン・モハマド・アミン会長は、来季から導入される経済コントロールプログラムECPに基づいた戦力補強を行うように求めています。
 このECPは、これまで多くのMFLクラブが抱えてきた給料未払いや所得税、雇用主負担が求められる従業員積立基金EPF(日本の年金制度に該当)、従業員社会保障制度SOCSO(日本の社会保険制度に該当)の滞納といった問題を事前に防ぐことを目的として導入されます。具体的には、各クラブはMFLが承認した金額内での経営を求められ、MFLが承認する金額は各クラブの経営状況をもとに判断されます。
 このECPはもとはスペインのラ・リーガで採用されたプログラムですが、本家のスペインでは、リーグ全体で9000万ユーロ(およそ108億700o万円)の未払い給料を含む6億ユーロ(およそ725億3000万円)の負債を抱えていた2012年に導入され、2017年には負債額が0になったそうです。
 ハミディン会長はマレーシアの通信社ベルナマのインタビューに答えて、選手との契約内容は、来季から段階的に導入されるECPにおける各クラブの経営状況判断の元になるとして、新戦力との契約は、自らの経営状況を理解した上で行うべきと各クラブに警告しています。
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 マレーシアのことわざに”Ukur Baju Di Badan Sendiri“「自らの身体に合わせた服の寸法を測れ」と言うものがあります。マレー語紙の電子版では、ECP導入に際して各チームに求められるものとして、このことわざを引用している記事もありました。文字通り、身の丈に合った経営がこの後は求められそうです。

クラスニキがJDTの練習場で目撃される
 スポーツ専門サイトフォックスフポーツでは、マットドンことリリドン・クラスニキがジョホール・ダルル・タクジムの練習場で目撃されことを報じています。
 記事の中では、ツイッター上で出回っている、JDTの練習場でしかもJDTのトレーニングジャージを着ているクラスニキ選手の写真を掲載した上で、クラスニキ選手の来季2020年シーズンのJDT入りの可能性について言及しています。
 27歳のクラスニキ選手は、2015年から2018年までクダFAでプレーし105試合で38ゴールという成績を残し、今季2019年はマラッカ・ユナイテッドと契約しましたが、MFL第5節のクアラルンプールFAとの試合でケガのため途中退場し、それ以降はカップ戦も含めて出場がありませんでした。
 コソボ出身のアルバニア人であるクラスニキ選手は、マレーシアサッカー協会FAMがリストアップした帰化選手(マレーシア人を父母、祖父母に持たない外国籍であっても、5年以上継続居住歴を持つことでFIFAの規定によりマレーシア人としでプレーが可能になる。マレーシアでは既にガンビア出身のモハマドゥ・スマレがこの要件を満たしてパハンFAとマレーシア代表でプレーしている。)候補となっており、JDTがクラスニキ選手を核とし、さらに彼が帰化選手となれば、JDTはMFL1部の各クラブに与えられている5人の外国籍選手枠を使わずに戦力補強ができることになります。
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 今季わずか5試合しか出場していないクラスニキ選手ですが、マラッカ・ユナイテッドは給料未払い問題を抱えていたこともあり、本当にケガだけが理由で長期離脱していたかどうかは正直不明です。ケガが完治していて、クダFA時代の活躍ができるのであれば、クラスニキ選手が加わることでJDT1強時代はまだまだ続くことになりそうです。

ニック・アキフにはトレンガヌFC移籍の噂
 今季はMFL2部で11チーム中10位と低迷したケランタンFAでプレーする20歳のMFニック・アキフ・シャヒラン・ニック・マットが、隣接するトレンガヌ州のMFL1部トレンガヌFCに移籍するのではという噂がソーシャルメディア上を賑わせていると、スポーツ専門サイトスタジアムアストロが報じています。
 トレンガヌFCのシャリザル・ヤハヤ チームマネージャーは、単なる噂であると否定していますが、戦力としてニック・アキフ選手が必要かどうかはモハマド・ナフジ・ザイン新監督次第であると述べています。
 なお、ナフジ新監督のもとで新たなチームづくりを目指すトレンガヌFCは、今季のチームからMFアーマド・シャミン・ヤハヤ、MFシャルル・アイザッド・ズルキフリ、FWカイルル・イズアン・ロスリ、MFナビル・アーマド・ラトピ、GKのワン・ムハマド・アズレイ・ワン・テーとの契約を更新しない方針であることが既に報じられています。
 前述のシャリザルチームマネージャーは、ニック・アキフ選手はケランタンFAとの契約中の選手であることは理解しており、現状ではケランタンFAを統括するケランタン州サッカー協会KAFAとの関係を悪化させることは望んでいないとしています。
 今年3月に行われたアジアサッカー連盟AFC U23選手権予選でもプレーしたニック・アキフ選手は、11月に開催される東南アジア競技大会、通称シーゲームズに参加するU22代表でも主力としての活躍が期待されている他、所属するケランタンFAは移籍金として100万リンギ(およそ2600万円)を設定しており、今後の行方が注目されます。


10月24日のニュース:2021年のU20ワールドカップはインドネシア開催が決定、最新のFIFAランキングでマレーシアは158位と変わらず、JDT II監督が退任

2021年のU20ワールドカップはインドネシア開催が決定
 スポーツ系ニュースのポータルサイトであるフォックススポーツは、10月24日に中国の上海で開かれた国際サッカー連盟FIFAの定例会議の席上で、U20ワールドカップの開催国にインドネシアが決定したと報じています。
 当初はタイ、ミャンマーも含めた8カ国が開催に立候補していましたが、今年8月にタイとミャンマーが立候補を取りやめたことにより、インドネシアは東南アジアで唯一の立候補国となっていました。その後、最終的にはブラジル、ペルーとの争いになっていたようですが、両国に勝って、開催権を獲得したようです。
 またこの定例会議では、新たに24チームが出場する新たなクラブワールドカップが2021年に中国で、またU17ワールドカップが2021年にペルーでそれぞれ開催されることも発表しています。
(下はインドネシアサッカー協会PSSIのインスタグラムに挙げられた大会ロゴ)

最新のFIFAランキングでマレーシアは158位と変わらず
 10月24日に最新のFIFAランキングが発表され、マレーシアは前回と変わらず158位と変わりませんでした。
 東南アジアでは、ベトナムが97位(前回は99位)、先日のワールドカップ予選でアラブ首長国連邦を破った西野朗監督のタイが109位(同114位)、同じく中国と0-0で引き分けたフィリピンが126位(同127位)とトップ3を構成しています。
 これに続くのがミャンマーの147位(同145位)で、これに続くマレーシアは東南アジアでは5番手につけています。
 マレーシア以下の国では吉田達磨監督のシンガポールが159位(同157位)、インドネシアが171位(同167位)、本田圭佑氏が実質的な指揮を取るカンボジアは172位(169位)、以下ラオス188位(同187位)、ブルネイ191位(同191位)、東ティモール198位(同199位)と続いています。
(以下はマレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

JDT II監督が退任
 先日のチャレンジカップ でPK戦の末、UKM FCを下して初優勝したジョホール・ダルル・タクジムJDTのBチーム、JDT IIのエルヴィン・ボバン監督が退任することがJDTのホームページで伝えられています。
 クロアチア出身のボバン監督は1989年から1995年まで、JDTの前身となったジョホールFAでプレーし、1991年にはマレーシアカップ優勝に貢献しています。当時のチームメートには、現JDTテクニカルダイレクターのアリスター・エドワーズ、アッバス・サアドなどがいました。
 その後、2015年からはJDT III(U21チーム)、そして昨年2018年からはJDT IIの監督を務め、選手、コーチとして12年間に渡ってジョホールFAそしてJDTに関わってきたボバン監督ですが、今季2019年はマレーシアフットボールリーグMFL2部プレミアリーグで優勝したサバFAに勝点で10点も離された2位になり、チャレンジカップでも、決勝第2戦ではUKM FCに敗れるなど苦しいシーズンとなっていました。(下はJDTのFacebookより)

10月23日のニュース:FAMは華人社会のサッカー界へのさらなる参加を期待、U22監督はルクマンの早急な昇格に慎重姿勢

FAMは華人社会のサッカー界へのさらなる参加を期待
 マレーシアサッカー協会のダト・ハミディン・モハマド・アミン会長は、華人社会からのより積極的な国内サッカーへの参加を期待していると述べています。
 マレーシアの通信社ベルナマの報道によれば、FAMはマレーシア華人サッカー協会MCFAと協力して、選手、コーチ、審判、フロントなど様々な分野に華人のより積極的な参加を促すためのプログラムを検討中と言うことです。
 多民族国家のマレーシアは、大雑把に人種構成を見てみるとマレー系と先住民族を含めたブミプトラと呼ばれるグループが全国民の約69%を占め、中華系マレーシア人(華人)が約23%、インド系マレーシア人が約7%、その他が1%となっていますが、例えば先日のFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選ベトナム戦に招集された23名のうち、帰化選手を除いた19名の顔ぶれを見ると、華人はドミニク・タン(タイリーグ2部、ポリス・テロFC)1名のみ、インド系に至っては0名でした。
 しかし1970年代から80年代にかけては多くの中華系やインド系マレーシア人がプレーしていたようです。ちなみにマレーシアが初めてサッカーで出場した1972年のオリンピックチーム19名は11名がマレー系、6名が中華系、2名がインド系でした。
 FAMのハミディン会長によると、中華系の選手が少ない理由としては、中華系家庭の理解不足があるとしています。子どもがサッカーを続けていくことで、たとえプロになれない場合でも、選手の代理人やスポーツ関連産業や企業への就職につながっていくと言った進路もあることなどが理解されれば、中華系の子たちの草の根レベルからの参加も増えることが期待できるともハミディン会長は述べています。
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 子どもの教育は自分の老後のための投資、と考える中華系マレーシア人の親は私の周りでも見かけますが、そう言った方々から見れば、プロサッカー選手はやはり不安定な仕事に見えるのでしょう。そう言った方々からの理解が得られない限り、中華系のサッカー選手数が増えることはなさそうです。
 その一方で、非常に興味深いのは、現在のフル代表のタン・チェンホー監督、U22代表のオン・キムスイ監督、フットサル代表のチュウ・チュンヨン監督はいずれも中華系マレーシア人だということ。さらにU18代表の監督はオーストラリア人ですが、u16代表のマニアム・パチャイアパン監督、女子フル代表のジェイコブ・ジョセフ監督はいずれもインド系マレーシア人で、ブミプトラ系のマレーシア人指導者が代表レベルにはいないと言うことも書き添えておきます。

U22監督はルクマンの早急な昇格に慎重姿勢
 12月にフィリピンで開催される東南アジア競技大会、通称シーゲームズに参加するU22代表のオン・キムスイ監督は、17歳のルクマン・ハキム・シャムスディンのフル代表への招集を求める多くのサッカーファンに対して、まずはU19代表チームで経験を積み、さらにはU22代表で、それからフル代表へと言う手順を踏んで昇格していくことへの理解を求めています。
 まずは召集されているU19代表で来月11月2日から10日までカンボジアのプノンペンで開催されるAFC U19選手権予選でパフォーマンスを見た上で判断するべきと、ベルナマの取材に答えています。さらにU16代表とU22代表はAFC選手権予選で敗退していることから、U19代表のAFC選手権本大会出場が重要であること、また現在のU19代表の選手たちは、2024年パリオリンピック予選に出場するU22代表の候補でもあることから、アジアのトップが揃うU19選手権本大会出場を優先するべきなど述べた上で、ルクマン選手が今、この時点でフル代表に参加するのは適切でないとしています。
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 ルクマン選手にこれだけ期待が高まるのは、ワントップのノーシャルル・イドラン・タラハ(パハンFA)を含めた攻撃陣の不調が原因として挙げられますが、その他には先日の対アラブ首長連邦国UAE戦で決勝ゴールを決めたタイ代表の20歳エカニット・パンヤ、そしてこの試合で途中出場した17歳のスファナット・ムエアンタの存在があります。隣国のフル代表でプレーする若手を見て、何故、マレーシアにもそう言った選手が現れないのか、と考えるファンもいるようですが、ルクマン選手は国家サッカー選手養成プログラムNFDPといった、いわば純粋培養で育てられた選手です。その一方でパンヤ選手やムエアンタ選手は既に国内リーグ戦でプレーしているなど、その環境も大きく異なります。
 NFDP1期生であるルクマン選手とその同期34名はここでプログラムから卒業しますが、そのうちの多くの選手がJDT、スランゴールFA、クダFAなどの有力クラブと契約済みと言われていますので、そういった選手たちがMFLでプレーするようになれば、マレーシアにもパンヤ選手やムエアンタ選手のように10代で代表入りする選手が現れるかもしれません。

10月15日のニュース:シーゲームズの組み合わせ決定、MFLはTMに対する訴訟取り下げ、PKNS FC監督はスランゴールFAのBチーム化再検討を求める

シーゲームズの組み合わせ決定
 今年2019年11月30日からフィリピンのマニラを中心に開催される東南アジア競技大会SEA Games(シーゲームズ)のサッカーの日程がアジアサッカー連盟AFCのホームページで発表されています。
 オリンピックのアジア版とも言えるシーゲームズは、東南アジア諸国連合加盟の10カ国と東ティモールの計11カ国が参加する各年開催の大会ですが、サッカーはその中でも目玉競技の一つで、2017年からは各国のU22代表(および2名のオーバーエイジ選手)がメダルを争っています。
 今大会男子ではグループAに入ったマレーシアは、開催国フィリピン、ミャンマー、カンボジア、東ティモールと同組になり、ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール、ラオス、ブルネイがグループBとなっています。
 過去3大会は男子はタイが連覇しており、前回は自国開催ながら決勝で0-1と敗れたマレーシアは2011年大会以来の4大会ぶりの金メダルを目指します。また1985年から始まった女子では、過去10回の大会で、それぞれ5回ずつ優勝のベトナムとタイがインドネシアと同組になっています。
 男子のサッカーは大会開幕前の11月25日から12月10日まで、女子は11月28日空12月9日までの日程となっています。(画像はAFCのホームページより)

MFLはTMに対する訴訟取り下げ
 マレーシアフットボールリーグMFLのホームページでは、マレーシアの国内最大通信会社テレコム・マレーシアTMに対する訴訟取り下げを発表しています。
 MFLとTMは2018年1月に、同社のインターネットサービスプロバイダーブランドUnifiがMFL1部スーパーリーグおよびカップ戦マレーシアカップの冠スポンサー、さらにはFAカップの協賛として8年間で4億8000万リンギ(およそ124億円)の大型契約を締結しましたが、今季2019年MFL開幕前に年間6000万リンギ(およそ15億5000万円)のスポンサー料が支払われなかったとして、MFLはこの契約を破棄すると同時に、契約不履行に基づく賠償請求として4億2800万リンギ(およそ110億円)の訴訟を3月に起こしていました。
 この騒動は、今年3月15日にMFL側がTMとの契約を破棄することを発表したことを発端とし、これに対して3月18日にTM側は昨年2018年11月の時点で、スポンサー契約の最終合意ができていなかった、つまり契約締結には至っていなかったことを主張する発表を行い、これを受けてMFL側が3月21日にTMを提訴していました。なおこのニュースを受け、MFLの主張が認められれば将来の収益を下押しするとの見方から同社の株が売られ、一時は株価が2%近く下落する事態にもなりました。
 訴訟取り下げについての告知記事の中でダト・ハミディン・モハマド・アミンMFL会長は、今回の訴訟取り下げはMFLとTMが共有するスポーツマン精神に基づくものであり、TMは2015年から(MFLの前身である)フットボールマレーシアLLP(Limited Liability Partnership、有限責任事業組合)のスポンサーであること、2000年からマレーシアサッカー協会FAMのスポンサーでもあることなどを挙げ、今回の訴訟取り下げによって、マレーシアサッカーファンが期待するような環境が実現できるよう両者の協力関係を強固にできるとも述べています。さらにマレーシアのサッカーの発展のため、MFLは企業と手を携えていきたいというメッセージも送りたいとしてます。
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 TMの大型契約はTMJことジョホール皇太子トゥンク・イスマイル・イドリス殿下がMFL会長在籍時の2018年に結ばれましたが、この年の5月には1957年の英国独立以来政権を担っていた与党連合国民戦線が総選挙で大敗、現在のマハティール・モハマド首相率いる希望同盟が政権につくというマレーシアでは歴史的な出来事がありました。
 マハティール首相は国民戦線でも首領を務めましたが、その頃から王族の権限縮小に積極的で、それを嫌う「物言う王族」イスマイル殿下とはメディアなどを通じて丁々発止とやりあってきました。そのマハティール首相が政権に復帰したことが、政府系企業でもあるTMの姿勢転換によってイスマイル殿下に「お灸を据えた」のでは、というのが当地のもっぱらの噂です。

PKNS FC監督はスランゴールFAのBチーム化再検討を求める
 このブログでもほぼ確定的と書いたMFL1部PKNS FCのスランゴールFAのBチーム化について、PKNS FCのラヤゴパル・クリシュナサミ監督が再検討を求めて声を挙げているとスポーツ専門チャンネルスタジアムアストロのポータルサイトが報じています。
 U23代表の監督として2009年の東南アジア大会シーゲームズで優勝、フル代表の監督として2011年の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップでも優勝と近年のマレーシア代表監督としては抜群の実績を誇るラヤゴパル監督は、Bチーム化案が浮上するまでに十分な検討がされていないこと、またここ数週間はBチーム化がまるで決定したかのような空気でそれ以外の選択肢を検討する余地がなくなっているとして、記事から苛立ちを隠さずに語っている空気が伝わってきます。
 PKNS FCはユース育成に定評があり、今季2019年もMFLのU22チームが対戦するプレジデントカップでは優勝、U19チームが対戦するユースカップでは準優勝しています。PKNS FCのBチーム化により、ラヤゴパル監督はこういったユース育成が今後も続くのかどうかも疑問視しているとし、PKNS FCのフロントにはBチームか再考を求めていくと語っています。
 また実際にPKNS FCがスランゴールFAのBチームになることがあれば、自分とスランゴールFAのバスカラン・サティアナタン監督が同一チームにいるということはあり得ないだろうとも述べています。
 本日10月15日現在、PKNS FCのフロントからも何も公式発表がないということで、ラヤゴパル監督はこれまで通り、週3回のトレーニングでチームを指導しています。
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 この記事にもある通り、代表監督としても実績のあるラヤゴパル監督と、ケランタンFAでマレーシアカップ優勝、国軍ATM FCやフェルダ・ユナイテッドをMFL2部から1部へ昇格させるなど国内での実績が高いサティアナタン監督が同じクラブのAチームとBチームを指導するということは考えられない、というよりももったいないのは事実です。PKNS FCのBチームかとなれば、どちらかがスランゴールFAのAチームの監督になるでしょうが、もう一方は他のクラブの監督に就任する可能性は高いです。



 

10月14日のニュース:予算増で第二、第三のルクマンを、ワールドカップ の前にアジアのスタンダード到達を目指せ、日本滞在中のMFLコーチが台風19号の恐怖を語る

予算増で第二第三のルクマンを
 マレーシアのリム・グアンエン財務相は10月11日、連邦議会下院で2020年度国家予算案を発表しましたが、その中で国家サッカー選手養成プログラムNFDPへ4500万リンギ(およそ11億6000万円)が投入されることが明らかになりました。これは昨年度の配分額1500万リンギ(およそ3億9000万円)から大幅な増額になっています。
 マレーシア政府の肝煎(きもい)りで2014年から始まったこのプログラムは、政府のスポーツ青年省を中心に教育省(日本の文科省に相当)、マレーシアサッカー協会FAMなどが共同で運営する東南アジア最大の養成プログラムで、毎年1月、専任のスカウトチームが国内を回って探し出した7歳から17歳の選手およそ5万5000人がセレクションを受験し、その半数以下ほどの合格者が国内123箇所にあるユースアカデミー(Akademi Tunas)に所属して、無償でコーチングを受けることができるようになっています。そのユースアカデミーからさらに選抜された選手たちは、パハン州モクタル・ダハリアカデミー(AMD)に集められ、さらにトレーニングを積みますが、先日、このブログでも紹介した2002年生まれの注目選手60人に選ばれたロクマン・ハキム・シャムスディンは、このAMDのU17チームに所属しています。
 青年スポーツ省傘下の国家スポーツ委員会NSCのダト・アーマド・シャパウイ・イスマイル事務局長はマレーシアの通信社ベルナマの取材に対し、現在はNFDPに所属しているおよそ1万5000人の選手が今回の予算増によって海外遠征などがより可能になる他、女子選手育成にも大きな助けになると述べています。

ワールドカップの前にアジアのスタンダード到達を目指せ
 FIFAワールドカップアジア2020年大会二次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選では、ベトナムに1-0と破れ、3試合で勝点3、予選グループGでは5チーム中4位という位置につけているマレーシア ですが、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版ではアジトパル・シン記者の署名入りで「ワールドカップの前にアジアのスタンダード到達を目指せ」という記事を掲載しています。
 シン記者はベトナム戦を振り返って、FIFAランキング99位のベトナムは158位のマレーシアと比べるとスピード、組織力、判断力などあらゆる面で優っていたとし、東南アジアトップレベルとマレーシアの差はこれまで以上に開いていると述べています。その一方で帰化選手を含めたマレーシア代表も明らかに進歩しているとし、教科の方向性は間違えてはないと指摘。そこでまず提案されているのが国際親善試合のマッチメイキングです。
 今年2019年のマレーシア代表の国際親善試合の相手はシンガポール(直近のFIFAランキング157位)、アフガニスタン(同146位)、ネパール(同161位)、ヨルダン(同98位)、スリランカ(同202位)とヨルダンを除けば、ほぼ似たようなランクか格下の相手ばかりとなっていますが、同じ予選グループGで来月対戦する1タイ(同114位)はインド(同104位)、中国(同68位)、ウルグアイ(同6位)、ベトナム、コンゴ共和国(同90位)と全てが格上相手の試合を組んでいます。
 国内リーグを通しての選手強化は、リーグの規模を考えると限界があるとして、より強い相手との国際親善試合の必要性をシン記者は述べ、さらにはワールドカップではなく、アジアカップの最終予選出場を目指すことが現実的な目標であると述べています。
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 ワールドカップ二次予選の残り5試合中、ホームでの試合は11月14日のタイ戦、11月19日のインドネシア戦そして来年2020年3月31日のベトナム戦が残っていますが、この3試合に勝利することができれば、マレーシアは各グループ3位、あるいはグループ4位チームの内の上位4チームに出場権が与えられる最終予選に進出できる可能性が高いです。

日本滞在中のMFLコーチが台風19号の恐怖を語る
 台風19号は日本各地で猛威を振るいましたが、ちょうど同じ時期にマレーシアフットボールリーグMFL所属クラブの監督数名が、アジアサッカー連盟AFCディプロマコースに参加するために日本に滞在しており、そのときの恐怖を英字紙ニューストレイトタイムズ電子版で語っています。
 このコースに参加していたのはドラー・サレー(MFL1部パハンFA)、メフメト・ドゥラコビッチ(同ペラTBG)、ザイナル・アビディン・ハサン(同マラッカ・ユナイテッド)、デヴァン・クプサミー(同プタリンジャヤシティFC)、スライマン・ハシン(MFL2部UKM FC)の各監督とイルファン・バクティ前トレンガヌFC監督の6名で、コース終了後に新潟のホテルに滞在中に台風19号に見舞われたようです。
 この中でUKM FCのスライマン監督は、人生で初めて台風というものを経験したそうで、生きた心地がしなかったと記事の中で述べています。ホテルの中にいるように指示を受けたので、何か被害があったわけではないものの、台風が新潟を襲った午後4次ごろから真夜中までは他の監督も皆、恐怖を感じ、もう二度と同じ経験はしたくないとも語っています。
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 マレーシアでは豪雨が降ることはあっても、台風が来ることはありませんので、この時期日本にいたマレーシア人にとっては、各地で記録的な大雨をもたらした台風19号に恐怖を感じたというのは、決して大袈裟な表現ではないのだろうと思います。

10月10日のニュース:MFL2部に3つ目のBチーム誕生は茶番だ、ベトナム戦を前に-練習場で一触即発、ベトナム戦を前に-最近の対戦成績をおさらい、FIFAによるインドネシア連盟への制裁が発表

MFL2部に3つ目のBチーム誕生は茶番だ
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版はアジトパル・シン記者の署名入り記事として、マレーシアフットボールリーグMFL2部に3つ目のBチームが誕生することに警鐘を鳴らしています。
 先日もこのブログで取り上げましたが、MFL1部所属のスランゴールFAを運営するスランゴール州サッカー協会の臨時総会席上で、同じMFL1部所属のPKNS FCをスランゴールFAのBチーム化する案を満場一致で可決しました。PKNS FCからMFLに対しては来季2020年のリーグ戦をBチームと参加することの申請はまだ出ていないようですが、MFLは内諾を与えていると言われています。
 同一クラブが同じリーグでプレーすることができないMFLの規定により、PKNS FCはBチーム化が確定した時点で、今季2019年MFL1部スーパーリーグで9位だったにもかかわらず、MFL2部プレミアリーグへ降格となります。これによりMFL2部は、JDT II、トレンガヌFC II、PKNS FCと昇格権を持たないBチームが3クラブと、予算上の問題から1部昇格を望んでいないとされる大学を母体とするUITM FCとUKM FCの2クラブ、つまりMFL2部12クラブ中の5クラブが1部を目指さない状況となります。
 さらにPKNS FCと同様に州政府関連機関であるペラ州開発公社を母体とするPKNP FCにも、同じペラ州を拠点とするペラTBGのBチーム化の噂もあり、この通りであればMFL2部は所属クラブの半数が1部昇格を目座なしクラブで占められることになります。
 スランゴール州サッカー協会が先日発表した声明では、スランゴール州を拠点とするスランゴールFA、PKNS FC、スランゴール・ユナイテッドを統合する案はこれまでも何度か浮上したものの、様々な障害があり実現しなかったとしています。3つのクラブの運営資金は合計で4400万リンギ(およそ11億3000万円)ながら、結果を出しているのは、MFL1部3位、マレーシアカップ でも準決勝に残っているスランゴールFAだけであるとし、今回の統合では1600万リンギ(およそ4億1000万円)が節約できるだけでなく、スポンサー獲得や入場料収入などでも統合による利点は多いとしています。
 またBチームはスランゴールFAのプレジデントカップチーム(u21チームを対象としたリーグ参加チーム)に所属できなくなる22歳以上の選手がAチーム入りするための育成の場としたいとしています。
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 MFL2部で今季5位だったUITM FCや9位だったスランゴール・ユナイテッド、さらにMFL3部にあたるM3所属のスランゴール州内クラブなど、プレジデントカップを卒業した選手がプレーできるようなBチームとしてスランゴールFAが活用できるクラブは他にあるにもかかわらず、スランゴールFAがPKNS FCのBチーム化にこだわるのは、PKNS FCに提供されている運営資金にあると言われています。個人的にはまずスランゴール・ユナイテッドとの統合を考える方が先だと思うのですが、育成云々よりも単純に運営資金を増やしてJDTに負けない補強したい、と言う考えがあるのだと思います。また、PKNS FCは以下のような意味深な写真をFacebookにアップしています。

ベトナム戦を前に-練習場で一触即発
 本日10月10日はFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選兼アジアサッカー連盟AFC選手権2023年大会予選のベトナム対マレーシアがハノイのミーディンスタジアムで行われますが、英字紙ニューストレイトタイムズによると、同じ練習会場を割り当てられたマレーシア代表とベトナム代表が一触即発になったと伝えています。
 ベトナムサッカー連盟VFFユーストレーニングセンターを練習会場として割り当てられたマレーシア代表は、練習開始時間とされた午後6時より前の5時45分に到着したところ、練習中だったベトナム代表のパク・ハンソ監督がこれに気づき、マレーシア代表のタン・チェンホー監督とチームに6時までバスから降りずに、フィールドが見えない離れたところでで待つように依頼したそうです。その後マレーシアの選手たちが着替えを行う間、タン監督はベトナム代表の練習を見続けたため、腹を立てたパク監督は練習を終了時間前に切り上げ、別の場所へ移動して続けたとのことです。
 また、試合前日の記者会見では、過去の対戦成績は関係なく当日の試合に集中したいと語ったパク監督は、100%勝利するとは言えないが全力を尽くすと語ったそうです。では、過去の対戦成績とはどうなっているのかを次の記事で紹介します。

ベトナム戦を前に-最近の対戦成績をおさらい
 マレーシアとベトナムは、昨年2018年の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップの決勝で対戦していますが、FIFAワールドカップ予選やAFC選手権アジアカップ予選で対戦するのは、実は今回が初めてです。
 両チームの対戦成績は下のインフォグラフィックの通り、1991年からの19試合ではベトナムの11勝3分5敗で、マレーシアがベトナムを最後に破ったのは2014年12月11日のAFF選手権スズキカップの準決勝まで遡らなければなりません。なおこの試合は今回の試合と同じミーディンスタジアムで開催され、現在の代表チームにも所属するFWノーシャルル・イドラン・タラハのゴールを含めた4-2で快勝しています。しかし、マレーシアがベトナムを敵地で破ったのはこの1度きり。残りの4勝は全てマレーシアのホームゲームでした。
 また昨年末のAFF選手権スズキカップでは、グループステージで0-2で敗れ、マレーシアのホーム、ブキ・ジャリル国立競技場で行われた決勝第1戦は2-2の引き分け、ベトナムのホームゲームとなった決勝第2戦は0-1で敗れています。
 ベトナムと対戦したスズキカップ決勝第2戦のメンバーからは、半数近い選手が入れ替わっています。参考までのスズキカップ決勝第2戦のスターティングXIと、2019年9月10日のワールドカップ予選のスターティングXIを併記しておきます。
<2018年12月15日スズキカップ決勝第2戦の先発メンバー>
*太字はUAE戦にも先発したメンバーです。
GK:ファリザル・マーリアス(JDT)
DF:シャミ・サファリ(スランゴールFA)、アイディル・ザフアン(JDT)、シャルル・サアド(ペラFA)、シャズワン・アンディック(JDT)
MF:モハマドゥ・スマレ(パハンFA)、シャマール・クティ・アッバ(JDT)、アクラム・マヒナン(PKNS FC)、サファウィ・ラシド(JDT)、ザクアン・アドハ(クダFA)
FW:ノーシャルル・イドラン・タラハ(パハンFA)
<2019年9月10日WCアジア二次予選UAE戦の先発メンバー>
GK:ファリザル・マーリアス(JDT)
DF:マシュー・デイヴィーズ(パハンFA)、シャルル・サアド(ペラFA)、アダム・ノー・アズリン(JDT)、ラヴェル・コービン=オング(JDT)
MF:モハマドゥ・スマレ(パハンFA)、ブレンダン・ガン(ペラTBG)、ノー・アザム・アジー(パハンFA)、サファウィ・ラシド(JDT)、シャフィク・アーマド(JDT)
FW:ノーシャルル・イドラン・タラハ(パハンFA)
(下のインフォグラフィックはマレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

FIFAによるインドネシア連盟への制裁が発表
 9月5日にジャカルタで行われたFIFAワールドカップアジア二次予選の対インドネシア戦では、マレーシアサポーターは投石されてケガをした方が出たり、試合後にマレーシア代表は警察の装甲車両でホテルへ戻るなど騒乱状態となり、マレーシアサッカー協会FAMはFIFAとアジアサッカー連盟AFCへ正式に抗議する事態に発展しました。
 マレーシアの通信社ベルナマのポータルサイトによると、FIFAからの裁定が発表され、インドネシアサッカー協会PSSIに対しては4万5000スイスフラン(およそ490万円)の罰金が課せられました。またこれを受けてPSSIのラトゥ・ティシャ・デストリア事務局長はこの裁定を受け入れ、課せられた罰金を支払うことを発表しています。
 また同様の事態を避けるために、10月15日に予定されている同じワールドカップ予選の対ベトナム代表戦の会場はジャカルタからバリへ変更されています。

10月6日のニュース:U18中東遠征メンバー発表、MFLは来季のコーチングライセンス資格厳格化や変更点を発表

U18中東遠征メンバー発表
 マレーシアサッカー協会FAMのホームページでは、本日10月6日から18日まで行われるU18代表の中東遠征参加メンバーを発表しています。アラブ首長国連邦UAEのドバイで行われる合宿では、UAEのU18代表との練習試合2試合も予定されています。
 今回の合宿は、11月2日から10日にかけてカンボジアのプノンペンで開催されるアジアサッカー連盟AFC U16選手権予選グループGへの準備として行われるもので、マレーシアは開催国カンボジアの他、タイ、ブルネイ、北マリアナ諸島と同組となっています。
 今回の中東遠征の参加メンバーはこちらです。

MFLは来季のコーチングライセンス資格厳格化や変更点を発表’
 マレーシアフットボールリーグMFLとしては17年目を迎える来季2020年シーズンに向けて、MFLは1部スーパーリーグと2部プレミアリーグのコーチングライセンスの厳格化を含む複数の変更点をホームページで公表しています。
 これによるとMFLに所属するクラブのコーチとなるためにはコーチングBライセンス以上を保持していることが条件となります。またゴールキーパーコーチについてはやはりコーチングBライセンスとレベル2のゴールキーパーコーチングライセンス以上の資格が必要になります。
 また各クラブのフィジオセラピストについても、マレーシアフィジオセラピスト協会に所属する者のみがクラブ帯同を許されることになっています。
 また同一クラブのAチームとBチーム間のシーズン中の選手の移籍に関しては、今季2019年まではトランスファーウィンドウ期間外であっても年間5名まで許されていたものが、来季2020年からはトランスファーウィンドウ期間外は移籍不可となります。(2019.10.10に訂正しました。)
 この他、MFL2部プレミアリーグの各クラブは4名の外国籍選手との契約が可能となり、その内3名は制限なし、1名はアジアサッカー連盟AFCあるいは東南アジアサッカー連盟AFF加盟国の選手であることが条件となっています。


 

10月3日のニュース:PKNS FCは来季はスランゴールFAのBチーム化決定か、マレーシアカップ決勝はマレーシア人審判が担当、FAMが今季の審判に対する苦情申し立てと処分について発表

PKNS FCは来季はスランゴールFAのBチーム化決定か
 マレーシアのスポーツチャンネルアストロのポータルサイトでは、PKNS FCが来季2020年から同じスランゴール州を拠点とするスランゴールFAのBチームとなる可能性が高くなったと報じています。
 9月28日に開催されたスランゴールFAを運営するスランゴール州サッカー協会FASの臨時総会に参加した47名が、PKNS FCのスランゴールFA Bチーム化案に満場一致で賛成したことを受け、FASのジョハン・カマル・ハミドン事務局長は、今回が第一段階とし、PKNS FC側からも同意を得た上で、マレーシアフットボールリーグMFLへこの件を正式に報告することになるだろうと語っています。なお、PKNS FCがスランゴールFAのBチームとなることが決定すれば、同一クラブのAチームとBチームは同一リーグではプレーできないというMFLの規定により、今季はMFL1部9位のPKNS FCは、来季はMFL2部に降格してプレーすることになります。 
 このブログでも何度か紹介しましたが、PKNS FCはスランゴール州政府の機関であるスランゴール州開発公社PKNSを母体とするクラブで、その運営資金はスランゴール州政府から出ています。またスランゴール州サッカー協会FASにもやはりスランゴール州政府から運営資金が出されており、資金力に余裕のあるジョホール・ダルル・タクジムJDTのようなクラブと対等に戦うためにはこれら複数クラブに分散している運営資金を一本化することが必要だという考えに基づいたのが、PKNS FCのBチーム化案です。
 その一方で、やはりこのブログでも数日前に取り上げたU19チームを対象としたユースカップでは今季準優勝、そしてU21チームを対象としたプレジデントカップでは今季優勝するなど、伝統的に選手の育成に定評のあるPKNS FCはこの件についてはコメントを出しておらず、すんなりとBチーム化を受け入れるのかどうかに注目が集まります。

マレーシアカップ決勝はマレーシア人審判が担当
 マレーシアのカップ戦の一つFAカップの今季2019年決勝戦は、日本人の岡部拓人主審と八木あかね、野村修両副審が担当しましたが、11月2日に予定されているマレーシアカップの決勝戦はマレーシア人審判が担当することを、マレーシアサッカー協会FAMの審判委員会のモハマド・ダリ・ワヒド委員長が明言したとマレー語紙ブリタハリアン電子版が伝えています。
 今年7月27日に行われたクダFA対ペラTBGのFAカップ決勝戦は、マレーシアサッカー史上初となる外国人審判が担当したカップ戦決勝でした。試合を担当した日本人審判団への高評価がメディアなどに散見した一方で、なぜ国内の試合をマレーシア人審判が担当しないのかという批判もありました。なお、この外国人審判採用については、昨季2018年のマレーシアカップ決勝でマレーシア人のスレシュ・ジャヤラマン主審が試合を十分にコントロールできず、退場者を両チームから出すなどの状況についてFAMへの非難が集中したことも一因です。
 ワヒド委員長は、今回の決定は今季FAカップでの日本人審判団とリーグ戦やカップ戦でのマレーシア人審判と比較検討した上での結論だとした上で、現在開催中のFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選件2023年アジアサッカー連盟AFC選手権予選の試合でマレーシア人審判が担当している事実を挙げ、一部で言われているほどマレーシア人審判の技量は低くないとも述べています。また既に候補者はリストアップされているようで、ワヒド委員長は、マレーシアカップ 準決勝での出来を見て、決勝戦担当の審判を発表するとしています。

FAMが今季の審判に対する苦情申し立てと処分について発表
 審判関連の話題が続きますが、FAMのワヒド審判委員会委員長は、今季2019年のマレーシアフットボールリーグMFL、FAカップ、そして現在進行中のマレーシアカップの試合での審判について、これまでにマッチコミッショナーから34件、審判アセッサーから21件、当該チームから13件の不満や苦情申し立てが出されていることを明らかにしています。
 FAMは全ての申し立てを精査した上で、警告や試合割り当て停止の他、審判の再教育を含めた処分などを課していると話す一方で、審判に対する全ての苦情申し立ては正規の方法でFAMに行うべきだとし、マスメディアやソーシャルメディア上で「審判のせいで負けた」と言った審判批判は行うべきでないと各クラブのスタッフやフロントに警告しています。
 ちなみに直近では、9月29日に行われたマレーシアカップ 準々決勝スランゴールFA対ペラTBG戦でも、スランゴールFAの2点目となったカイリル・ムヒミンの45分のゴールがオフサイドではないかと議論になりましたが、これについては、FAMの審判委員会で映像を参考に確認したところ、明確にオフサイドとの判断にはならなかったものの、アズマン・イスマイル副審の位置取りが悪かったとして、アズマン副審には試合割り当て停止処分となるだろうとワヒド委員長は述べています。