4月14日のニュース:現在の状況が「八百長」につながる可能性を元MFLクラブ監督が警告、代表FWがタイで告訴される

現在の状況が「八百長」につながる可能性を元MFLクラブ監督が警告
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版は、新型コロナウィルス感染収束後にリーグが再開される時期には「八百長」試合が行われる可能性があると危惧する記事を掲載しています。
 マレーシア国内リーグではこれまでも、給料の遅配や給料未払いに苦しむ選手の中から金のために八百長に加担する選手が出る歴史が繰り返されてきましたことから、今回のリーグ中断による収入源から各クラブが選手の給料削減を行った場合、報酬を持ちかけるブッキー(八百長の仲介者)につけ込まれる選手が出る可能性があるとしています。
 マレーシアでは1994年に21人の選手とコーチが解雇、58人が出場停止、さらに126人が警察の捜査を受けるという大規模な八百長事件が発生しています。
 現在でもマレーシアのサッカー界には腐敗は存在している一方で、リーグ関係者の多くがこの話題に触れることを避けていると報じるニューストレイトタイムズは、ジョホールFA(現ジョホール・ダルル・タジムJDT II)、ペラTBGやケランタンFAなどで監督の経験があるスティーブ・ダービー氏とのインタビューし、ダービー氏の八百長体験を掲載ています。
 イギリス人のダービー氏がまず語ったのはジョホールFA時代に初めて経験した八百長試合の話です。ある試合でハーフタイムとなり、ピッチから引き上げようとしていたところに相手チームの外国籍選手が近づいてきて、この試合はジョホールFAが2-0で勝つ、と告げたそうです。なぜそんなことがわかるのかと尋ねたダービー氏に対して、自分はマレーシア語が理解できると答えたそうです。実際にその試合では84分と89分にジョホールFAがゴールを決め、本当に2-0で勝利しました。自分のチームが勝てばそれを喜び、当初それを八百長を疑うことはなかった、と話すダービー氏は、やはり自分のチームが勝った別の試合では、相手のGKは目立ったミスをしなかったものの、ポジショニングが悪い上に、シュートはキャッチせずパンチングで凌ぎ、しかもそのパンチングしたボールは自分のチームのチャンスになる場面も目撃したと語っています。
 またダービー氏は1人のマレーシア人選手から聞いた話として、ブッキーはクラブの外の人間では知り得ない給料の額などの個人情報を知っており、例えば給料が3000リンギ(およそ75000円)の選手がおり、その選手の給料が2ヶ月遅配となっているときに、10000リンギ(およそ25万2000円)の報酬で八百長を持ちかけてくるケースがあるとしています。そしてもし、選手が拒否すれば、母親が買い物に行く店の名前や子供の通う学校名などを具体的に出し、行動を把握していることをちらつかせ、選手が八百長加担に同意する様に仕向けるそうです。そして一旦加担すれば、「次回」があり、しかも既に加担済みという弱みを握られ報酬額も減らされてしまうと述べています。
 また数年前の話としてヌグリスンビランFAの数名の若手選手が八百長に加担していることを知り、その選手たちになぜ、クラブを運営する州サッカー協会や警察に訴えでないのかと尋ねる機会があった際には、八百長に関わっているのが誰なのかも、どの地位にいる人間かも分からないの上、自分の親に借金があったり、子供のために金が必要な場合には、そんな倫理を無視せざるを得ないときもあるときもあるという答えが返ってきたそうです。
 さらにペラTBGの監督時代には選手から八百長を持ちかけられたことを聞かされたダービー氏は、その選手がブッキーと一緒に写っている写真を添えて、ペラTBGを運営するペラ州サッカー協会PAFAに報告し、PAFAはマレーシアサッカー協会FAMと警察に報告したものの、FAMは何も行動を起こさず、警察もダービー氏に事情聴取を行ったものもそれ以上の捜査はなかったことも明かしています。
 自分が監督するチームの11試合で八百長が行われたと考えるダービー氏は、そのうちの一つとしてケランタンFAの監督時代の2014年にAFCカップで対戦したベトナムのビッサイ・ニンビンFC戦を挙げています。(筆者注:この試合で八百長を行ったビッサイ・ニンビンFCの選手はベトナムの裁判所により有罪判決を受け、クラブはこの2014年シーズンをもって解散しています)
 この他、審判の買収はも八百長の方法の一つであり、マレーシア国内リーグにはブッキーに買収されている審判もいるという根強い噂があると指摘するダービー氏は、試合中にブッキーが審判に合図を送っている映像などをみたことがあり、これもFAMに報告したものの、やはり何の行動も起きなかったとしています。
 この記事の最後で、ダービー氏は八百長を完全に防ぐことは難しいとしながらも、次の様な手段でそれを減らすことは可能であると述べています。
・選手の給料をきちんと払うこと-未払いや遅配はブッキーがつけ込む機会になる。
・特に若い選手に対して八百長を行わないよう教育する-若い選手は買収するのにかかる費用が安い上、誘惑に負けやすい。
・報酬を理由に八百長に関わった選手は永久追放し、指導者やフロントとなってもあらゆるサッカー活動に関わらせない。
・マレーシア国内でのサッカー賭博の合法化
・選手に接触する手先の小物ではなく、八百長を企てる大物の逮捕
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 上で取り上げられている1994年の八百長事件以外にも、最近で言えば2018年2月には当時MFL2部のサラワクFAの2選手とブッキーが逮捕された件の他、アマチュアリーグでもここ数年、何度か発覚しています。上の記事でインタビューに答えているダービー氏は、八百長とは単に試合の勝ち負けやゴール数だけではなく、試合の後半にレッドカードが出るかどうかなども賭けの対象となりうると話しており、多くの関係者が気づかないところで現在も八百長が行われている可能性は否定できません。
 また東南アジアでサッカーの八百長と言えば、マレーシアやシンガポールがその中心と言われることが多いのですが、この地域で八百長の黒幕として知られ、既に有罪判決を受けたシンガポール人のウィルソン・ラジ・プルマルが書いたKelong Kingsという本には、国際試合で行われた八百長や審判を買収しての買収などが詳細に書かれています。興味がある方はこのKelong Kingsの公式サイトでその一部を見ることもできます。

代表FWがタイで告訴される
 昨日のこのブログで取り上げた、タイ1部リーグでプレーするマレーシア代表のノーシャルル・イドラン・タラハが、今度はタイの代理人に告訴されたと、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 当初はノーシャルル選手がタイ1部リーグのBGパトゥム・ユナイテッドと契約する際に代理人契約を交わしたシンガポールのOffside Sports社のアブドル・ハリム・アブドル・シュコル氏との連絡が取れなくなっているとする記事が出て、その続報としてアブドル・ハリム氏がノーシャルル選手が自分と代理人契約をする前にタイで代理人業務を行うPro 24社と契約をしていたとして、ノーシャルル選手を非難、これをノーシャルル選手が否定しているという記事が出ました。そして今度はPro 24社がノーシャルル選手を契約違反で告訴されるという事態に発展しています。
 ニューストレイトタイムズの記事では、BGパトゥム・ユナイテッドへの移籍の際、ノーシャルル選手はPro 24社とOffside Sports社の両方と代理人契約を交わしたとされており、Pro 24社はノーシャルル選手は信用するに足らないとし、今後は話し合いをする予定はないとしています。なお、記事によれば、この訴訟が解決するまでノーシャルル選手はタイを出国できないとされています。
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 選手の移籍などの情報が詳しいドイツのサッカー情報サイト、トランスファーマルクでは、ノーシャルル選手の代理人はPro 24社となっています。代理人と連絡が取れなくなり、新型コロナウィルス感染拡大と何か関係があるのでは、として取り上げたこの話題でしたが、結局は二股をかけたノーシャルル選手が不誠実だった、という単純な話だったようです…。

4月13日のニュース:選手会はクラブに誠実な話し合いを求める、タイでプレーする代表FWの代理人が音信不通に 、音信普通とされた代理人は代表FWに反論(続報)

選手会はクラブに誠実な話し合いを求める
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMは、マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグと2部プレミアリーグの選手はクラブと契約の見直しについて話し合いをする用意があるとして、選手の同意なしに契約内容を変更しないようクラブ側に警告しています。
 英字紙スター電子版によると、PFAMのイズハム・イスマイルCEOは、選手との契約をクラブが一方的に改編することはできないことを理解した上で、先日、FIFAが発表した新型コロナウィルス感染拡大に伴う契約見直しの指針を参考に、クラブは選手とともに契約内容の見直しについて真摯に話し合うべきであると述べ、PFAMはクラブが選手と自由に交渉することを認めています。
 選手はクラブと給料削減についての交渉の席につくべきではないという主張をこれまで繰り返してきたPFAMは、選手に給料削減を強制しているのではなく、クラブとの間で両者が合意できる様な解決を目指すべきと主張するマレーシアサッカー協会FAMと対立していましたが、PFAMは今は争う時期ではないとして、クラブに誠実に話し合うことを求めています。
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 4月14日までとされていた活動制限令MCOが4月28日まで延長することがマレーシア政府から発表され、既に延期が決まっていたMFL第5節と第6節に加えて第7節から第9節までの延期も確定したことから、PFAMも軟化したしたのかも知れません。
 ただしマレーシア政府はMCO期間中の給料削減や解雇は認めないとしており、プロサッカー選手だけにその権利を認めないわけにいかないことから、FAMには交渉による合意を勧めることしかできません。同様の措置をとっている英国政府が選手に給料削減の受け入れを求めたことに対して、選手会はダブルスタンダードであると反発しており、FAMが強硬な姿勢を取れば、PFAMも態度も再び態度を硬化させる可能性があります。

タイでプレーする代表FWの代理人が音信不通に
 今季から隣国タイでプレーするノーシャルル・イドラン・タラハは、新型コロナウィルス感染拡大とともに自分の代理人と音信不通になったと話していると、英字紙ニューストレイトタイムズに語っています。
 マレーシアフットボールリーグMFLで13年間プレーしたノーシャルル選手は、今季からタイ1部リーグのBGパトゥム・ユナイテッドでプレーしていますが、タイ1部リーグは5月2日まで中断となっており、これに伴いクラブが給料削減について選手と交渉を始めたことから、代理人と相談ををしようとしたところ、連絡が取れなくなっているようです。
 「マレーシアと同様にタイでもクラブと選手が給料削減について交渉をするよう促されており、その相談のために代理人に何度も電話を入れたが、返事もメッセージもなく、その理由が不明である」と話すノーシャルル選手は、数日前にその代理人がマレーシアではシンガポール出身の選手が高く評価されている、というこの代理人のコメントをメディアを読んだとして、ケガや病気で連絡が取れないのではないことはわかっていると話し、「もし彼がこの記事を読んでいたら、連絡が欲しい」と訴えています。
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 ノーシャルル選手が言及しているシンガポール選手の記事は、このブログでも取り上げたMFL公式サイトの記事を指すと思われますが、そこに登場する代理人はアブドル・ハリム・アブドル・シュコル氏なので、このアブドル・ハリム氏とノーシャルル選手との間で何らかのトラブルが起こっているのかも知れません。

音信普通とされた代理人は代表FWに反論(続報)
 上の記事が出た翌日のニューストレイトタイムズに続報が掲載されました。
 ノーシャルル選手の代理人(正確には元代理人)のアブドル・ハリム氏が自分の知らないところで、ノーシャルル選手が新たな代理人と契約したと話していることに対して、ノーシャルル選手はその内容を否定しているという内容です。
 ノーシャルル選手は、アブドル・ハリム氏が取締役を務めるOffside Sports社との契約を解除し、タイで代理人業務を行なっているPro 24社と新たに代理人契約を結んだことを認めていますが、その契約変更については、アブドル・ハリム氏自身が直接、クラブを話しをすることを了承し、何も問題はないはずであると述べています。さらにノーシャルル選手が所属するBGパトゥム・ユナイテッドがアブドル・ハリム氏に報酬を支払っていないと主張している点についても、クラブからは支払済だと聞いていると話し、この件については円満に解決することを望んでいるとしています。
 一方アブドル・ハリム氏は、自分がBGパトゥム・ユナイテッドとノーシャルル選手の契約をまとめようとしたところに、Pro 24社の代理人が現れたとしています。そしてノーシャルル選手との契約書を自分に見せた上で、クラブとの契約を完了したとし、そのためにアブドル・ハリム氏には報酬は渡らなかったと話しています。さらにノーシャルル選手は自分と契約をする前に、既にPro 24社と契約しており、契約書にサインする段階でPro 24社が現れて騒動になったとし、一連の騒動でノーシャルル選手に対して失望したと話しています。。
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 この続報を読むと、ノーシャルル選手とアブドル・ハリム氏との間で泥仕合の様相ですが、タイリーグでは開幕戦の第1節と第2節にはいずれも先発しながら、第3節ではベンチ入りも出場なし、第4節ではベンチ入りすらなかったことは、この騒動が艦型しているのかも知れません。
 マレーシア代表の主力選手としては初めてタイリーグへの移籍を実現させたノーシャルル選手が、リーグ再開後に問題なくプレーできるよう、この騒動の早期解決を望みたいでう。

4月10日のニュース:M4のクラブが財務状況を公開、FAMはクラブと選手がFIFAが発表した指針に従うことを求める

M4のクラブが財務状況を公開
 マレーシアフットボールリーグMFL4部にあたるM4リーグに所属するクルテーFCがクラブの公式Facebookで2019年の財務状況を公開しています。
 マレー半島東海岸にあるトレンガヌ州のクルテーを本拠地にするクルテーFCは、トレンガヌ州アマチュアリーグの2019年チャンピオンで、MFLのアマチュアリーグであるM4リーグに所属し、今季2020年シーズンのFAカップでは1回戦から登場し、MFL3部のM3リーグのノーザンライオンズFC-マーサに惜しくも敗れています。
 クラブの公式Facebookに掲載されたインフォグラフィックでは、収入の内訳はビジネス(収入全体の62%)、スポンサーからの支援(同35%)、投資(同3%)が三本柱で、さらにビジネス収入の内訳は石油とガス(ビジネス収入全体の53%)、サッカースクール(同18%)、広告(同11%)、リーグ(同11%)、グッズ売り上げ(同4%)、ライブストリーミング(同3%)となっています。
 クルテーは石油とガス供給を行う企業としてはマレーシア最大の国営企業ペトロナスのトレンガヌ州での事業拠点であり、クルテーFCの「石油とガス」関連の収入もペトロナス関連の人材供給と機材のレンタルから。また「ライブストリーミング」はトレンガヌ州のアマチュアリーグの試合の中継などから得られる収入としています。
 またクルテーFCの支出の内訳は給料及び手当(支出全体の24%)、石油とガス(同22%)、リーグ(同18%)、メディアおよび販促(同8%)、育成プログラム(6%)、トレーニング器具(4%)、その他(同18%)となっています。
 クルテーFCはトレンガヌ州のアマチュアリーグに初めて参加したのは昨季2019年シーズンからで、アマチュアリーグ参加によりクラブの支出は前年2018年と比較する2019年シーズンは164%増加したそうですが、同時期の収入も232.8%と大幅に増加し、利益率は24.1%だったことも公表しています。
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 公開されている情報では、収支の具体的な金額は公表されていませんが、支出の内、手当と給料が占める割合が24%(MFL1部と2部のプロクラブの平均は80%以上)となっている点や、大型スポンサー1社に頼らず、複数の収入源をもつ点などはMFL1部や2部のプロクラブも見習う必要がありそうです。
(以下のインフォグラフィックはクルテーFCのFacebookより)

FAMはクラブと選手がFIFAが発表した指針に従うことを求める
 マレーシアサッカー協会FAMは公式サイト上で、国内リーグの利害関係者全員に対し、国際サッカー連盟FIFAが発表した新型コロナウイルスの感染拡大によって生じうる選手との契約に対処するための指針に従うことを求めています。
 FIFAは4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大によって生じうる、選手との契約や移籍全般に関する問題に対処するためのガイドラインを公式HPで発表し、感染拡大が世界各国のクラブの財政にも大きな影響を与えていることから、選手の給与減額に関しても、中断期間中にクラブと選手が解決策を見つけることを強く推奨しています。
 FIFAの指針が出たことで、FAMは強気になったのか、活動制限令が発令されている期間中に以下のことを求めています。
1)契約内容の見直し:契約内容の見直しが必要な場合、適切な労働協約を締結するためにクラブは選手やコーチ、監督と直接、交渉を行わなければならない。また新たな労働協約は4月22日までに合意されなければならない。
2)国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLと、マレーシアプロサッカー選手会PFAMは、4月22日までに合意できるよう関係者全員が同意できる臨時の給与体系について直ちに協議を行うことを求める。
3)選手とクラブの間で円満に解決することができない場合には、FAMに判断を委ねることができる。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、FIFAの指針は現在の膠着状態を解決する助けになると話し、MFLのクラブに対しては透明性の高い方法で選手やコーチ、監督およびスタッフと交渉を行うことも併せて求めています。
 またラマリンガム事務局長は、FIFAの指針は、クラブと選手は活動制限令中の契約内容を見直すために交渉の席につくべきとした、FAMとMFLが共同で発表した3月26日の提言と一致していると述べています。
 しかしその翌日3月27日には、PFAMがクラブは選手との給料など契約内容を遵守することを求める声明を発表しており、これについてラマリンガム事務局長はPFAMの強硬な姿勢は誰の利益にもならず、円満解決に必要となる貴重な時間を無駄にしていると非難し、今後は関係者全員がFIFAの指針に従うべきとしています。
 また選手やコーチ、監督やスタッフが現行の契約通りの給料を受け取る一方で、クラブが経営不安定となり、その結果として経営破綻を起こし・多くの人間が仕事を失う様なことは避けなければならないと話し、FAMの決定はリーグ、クラブ、選手ら全員の複利を考えてのものであると理解を求めています。
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 FAMの宣言を受け、今後各クラブが選手と積極的に交渉を始める可能性がありますが、本日予定されているマレーシア政府からの発表次第ではあるものの、活動制限令MCOがいるまで延長されるかわからない現状で、FAMが4月22日という期限を設ける理由も不明です。
(下はFAM公式サイトより『FAMは関係者全員がFIFAの提案に従うことを求める」というタイトルがつけられた告知

4月9日のニュース:マレーシアはAFF選手権出場辞退予定なし、FAMは今季の残り全試合の中止は検討せず、元パハンFAの選手が禁固刑の可能性

マレーシアはAFF選手権の出場辞退はなし
 タイが今年11月に予定されているアセアン(東南アジア)サッカー連盟AFF選手権スズキカップの辞退を検討しているという報道を受けて、マレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、マレーシアは現時点では、スズキカップの出場辞退の予定はないことを表明しています。
 タイの国内リーグは5月2日まで中断となっており、それが再開されれば、今シーズンの試合日程が今年後半にずれ込む可能性があります。さらに7月以降に延期が決定しているFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選がスズキカップと近い時期に開催される可能性があることなどを考慮して、タイサッカー協会FATはワールドカップ予選に専念するためにスズキカップの出場辞退を検討中という報道があります。
 これに対して、FAMのラマリンガム事務局長は、現時点でスズキカップへの出場可否を検討するの時期尚早だと、マレー語紙ブリタハリアン電子版に語っています。
 FATは国内リーグの日程を決める都合などから、早めの決断を行ったのではないか、と述べるラマリンガム事務局長は、FAMはまだ様子を見る時間があると考えており、スズキカップ出場についても時間をかけて判断したいと話しています。

FAMは今季の残り全試合の中止は検討せず
 マレーシアサッカー協会FAMは、新型コロナウィルス感染拡大が続く場合でも、今季の国内リーグ戦など残り試合全ての中止を検討する予定はないとしていると、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 マレーシアの国内リーグやカップ戦を直接運営するのはマレーシアフットボールリーグMFLですが、MFLはFAMの方針に従って運営されていることから、MFLはFAMが決めた方針を遵守することが考えられます。
 新型コロナウィルスの感染拡大がどの時点で収束へ向かうのかは不明であり、収束後のマレーシア政府の方針も発表になっておらず、現時点では政府の方針決定を待つしかないと、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は話しています。
 また、MFL各クラブのU19チームが対戦するユースカップとU21チームが対戦するプレジデントカップはFAMが直接、運営しているため、今季の残り試合を継続するか否かの決定は容易であるとする一方で、冠スポンサーがついているMFL1部やマレーシアカップ、FAカップは、スポンサーに対する義務もあることから、たとえその必要がある場合でも慎重な判断が必要になるとも話しています。

元パハンFAの選手に禁固刑の可能性
 昨季2019年シーズンにはパハンFAでプレーし、現在はインドネシア1部リーグのバヤンガラFCでプレーするインドネシア代表のサディル・ラマダニが禁固7年の刑に処せられる可能性があると、インドネシアの新聞コンパス電子版が伝えています。
 南東スラウェシ州出身のラマダニ選手は、3月27日に州都のコタ・クンダリでの自宅近くで酔っ払いに自分の母親が侮辱されたことに腹を立て、その侮辱した相手に重傷を追わせた容疑で告発されており、最悪の場合には禁固7年が求刑される可能性があるとコンパスは報じています。
 現在は警察による捜査が進行中ということで、ラマダニ選手には警察署への出頭命令が出されているのみで、逮捕されてはいないということですが、バヤンガラFCのフロントは有罪となれば解雇とすることを示唆しておりで、U23代表だけでなくフル代表でも左ウィングでプレーする21歳のラマダニ選手は、判決次第では選手生命が断たれてしまう可能性もあります。
 ラマダニ選手は自分の家族が侮辱されるのを見過ごすわけにはいかなかったと述べ、自らの行為については責任を負う覚悟があると話しているということです。

4月8日のニュース:MFL3部の選手は政府チャーター機で自国民退避をアシスト、マレーシアは27年AFC選手権開催地に立候補の予定なし、UAEが1試合も行わずに監督を解任

MFL3部の選手は政府チャーター機で自国民退避をアシスト
 マレーシアフットボールリーグMFL3部にあたるM3リーグのムラワティFCには宮崎崚平選手が所属していますが、このムラワティFCのアフィフ・ナジミ・ムハマド・イズワンがマレーシア政府が用意したチャーター機を操縦して、マレーシア国民の退避に関わった際の話を英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が取り上げています。
 29歳のアフィフ選手は元フットサルのマレーシア代表という経歴を持つサッカー選手であると同時に、マレーシアの航空会社エアアジア社のパイロットでもあり、3月21日にイランのテヘランからマレーシア人46人、シンガポール人8人、インドネシア人1人の合計55人を退避させるための政府チャーター機のパイロットを務めました。
 これまでで最も思い出深いフライトだったと話すアフィフ選手によれば、3人の機長と2人の副機長全員は感染予防のため頭から足の先まで防護服で完全に覆われ、55人の乗客は機内に入る前に一人一人検査された上、機内でも乗務員、医療チーム、乗客はそれぞれ別の区域に搭乗したそうです。
 この55人の中から新型コロナウィルスの陽性患者は出なかったということですが、アフィフ選手は14日間の自宅待機を経て、前ヌグリスンビランFA監督のマット・ザン・マット・アリス監督の元、現在は自宅でトレーニングを再開しているということです。
(写真の左手前がアフィフ選手-写真はスムアナニャボラのFacebookより拝借)

マレーシアは27年AFC選手権開催地に立候補の予定なし
 アジアサッカー連盟AFCは、2027年開催予定のAFC選手権アジアカップの開催地立候補の受付期間を6月30日まで延長したことはこのブログでも紹介しましたが、マレーシアサッカー協会FAMはこの延長を利用して開催地立候補を検討することはなさそうなことを英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、「アジアカップのような大規模な大会には政府の協力が必要だが、現在をそういったことを検討するのに適した時期ではない。」と話し、現在の新型コロナウィルス感染拡大が広がっている状況下では、マレーシアがアジアカップ開催に立候補することはないだろうとしています。
 なお現時点では、サウジアラビアが開催国として立候補としている唯一の国ですが、この記事の中では、AFCが開催地立候補の受付を延長したことを受けて、インドが立候補を検討しているとも伝えています。。
 また2034年のFIFAワールドカップ開催地としてタイ、インドネシア、シンガポール、ベトナムと合同で立候補する計画についても、先月予定されていた会合が延期になったことから、こちらについても一時保留とすることも併せて発表されています。
(筆者注:AFCの公式サイトの表記はAsian Cupですが、日本のサッカー関連メディアの多くが「アジアカップ」という表記を使っているので、日本語のこのブログでもこちらを採用します。)
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 マレーシアは2007年にタイ、ベトナム、インドネシアとともにアジアカップを共催した経験があります。このときはイラン、ウズベキスタン、中国と同組となったグループステージでは0勝3敗の最下位となり、共催した他の3カ国の中でグループステージを突破したのはベトナムだけでした。なお、マレーシア代表がアジアカップ本戦に出場したのはこの2007年が最後で、その前の出場は1980年、1976年の2回となっています。

UAEが1試合も行わずに監督を解任
 イギリスの通信社ロイターは、アラブ首長国連邦サッカー協会がイヴァン・ヨヴァノヴィッチ監督を一度も試合をすることなく解任したことを伝えています。
 アラブ首長国連邦UAEはFIFAワールドカップ2022年アジア二次予選ではマレーシアと同じグループGに属しており、これまで4試合を終了して2勝2敗のグループ4位につけています。アジア二次予選開始時に監督を務めていたオランダ人のベルト・ファン・マルワイク氏は、予選でマレーシアとインドネシアに連勝しましたが、タイとベトナム相手に連敗を喫し、さらにその後に開催されたガルフカップでもイラク戦、カタール戦と連敗したことから昨年2019年12月4日に解任されています。昨年12月22日にファン・マルワイク前監督に代わって就任したのがセルビア人のヨヴァノヴィッチ監督でした。
 キプロスの国内リーグでAPOELニコシアを4度優勝させ、2011/12年シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝進出を果たした実績を持つヨヴァノヴィッチ監督は、UAEサッカー協会と6ヶ月契約を結んでいましたが、先日のこのブログでも伝えたように6月中のFIFA主催の試合はすべて延期となったため、契約満了を待たず、UAEを率いて1度も試合に臨むことなく解任されています。

4月6日のニュース:FAMが職員及び役員の給料削減を発表、MFLも職員の給料削減を発表、マラッカUの連敗は給料未払いが原因か

FAMがやっと職員および役員の給料削減を発表
 マレーシアサッカー協会FAMは公式サイトで職員の一時的な給料削減を発表していますが、ただしその条件は現在発令中の活動制限令MCOが4月14日以降も継続となった場合に限るようです。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、「政府期間からの要望により」運営管理および現場担当の全職員について、給料に基づいて10から20パーセントの給料削減となると発表しています。
 「FAMの財政安定を確保し、現在起こっている未曾有の事態を切り抜けるために様々な費用削減の手段を実施する中で、MCOが4月14日移行も継続された場合には全職員の給料を削減する」としており、この他FAM会長など選出された役員もその具体的な内容は伝えられていませんが報酬削減が行われるとしています。

MFLも遅れて職員の給料削減を発表
 国内リーグを統括するマレーシアフットボールリーグMFLもアブドル・ガニ・ハサンCEOの名前で、職員の給料を10から20パーセント削減すると発表しています。ただし、こちらもFAM同様、活動制限令MCOが4月14日移行も延長した場合に実施され、CEO発令中に限る措置であるとしています。
 FAMのハミディン・アミン会長はMFLの会長も兼任しているため、FAMが職員の給料削減を4月3日に発表されたことから、MFLでも同様の措置が取られることは予想されていましたが、ビデオコンファレンスで行われた取締役会を経て1日遅れの4月4日に発表になっています。
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 これら2つの記事で目を引くのは、いずれの給料削減措置も現在発令中の活動制限令MCOが4月14日以降も延長になった場合を条件にしていることです。リーグの各クラブにはそれ以前から選手と給料削減について交渉することを奨励しながら、自らは4月14日に予定されているMCOが解除になった場合に給料削減を行うというのは、共に痛みを分かち合う、という発想が全く欠如しているように感じます。

マラッカUの連敗は給料未払いが原因か
 今季のMFL開幕から2連勝と好スタートを切ったマラッカ・ユナイテッドは、第3節のフェルダ・ユナイテッド戦、第4節のパハンFA戦と連敗し、2勝2敗の成績でリーグ中断期間に入りましたが、マラッカ・ユナイテッドを運営するマラッカ州サッカー協会MUSAの副会長はこの連敗の原因が給料未払いによる可能性があると語っています。
 スポーツ専門サイトのスタジアムアストロは、2月から支払われていない未払い給料が選手のパフォーマンスに影響を与えているのではないかとするユソフ・マハディMUSA副会長の発言を取り上げています。
 またユソフ・マハディMUSA副会長は、連勝ストップとなった第3節のフェルダ・ユナイテッド戦では、給料未払いにより一部選手が試合を放棄したこと、過去3ヶ月間の給料支払いが遅れていることも認めています。
 今年3月に起こった政変により各州の州議会でも多数派を占めていた与党が議席を失い、マラッカ州でも州知事が交代しています。マレーシアの多くの州と同様にマラッカ州サッカー協会MUSAの会長は州知事が兼任することから、MUSAの新会長にもたダト・スライマン・モハマド・アリ氏が就任していますが、給料未払い問題については新たな展開は無いようです。
 またマレー語紙ブリタハリアン電子版では、MUSAのファルハン・イブラヒム事務局長の話として、遅配となっている今季の給料ではなく、昨季の未払い給料の支払いを優先するとしており、リーグが再開されたとしても、給料の遅配が続けばマラッカ・ユナイテッドの選手たちのモチベーションが影響を受けることもありそうです。
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 マラッカ・ユナイテッドは、支払いが遅れている2月以降の給料の他に、昨季分の140万リンギ(およそ3490万円)の未払い給料がありますが、選手との間で同意していた期限までに支払いができなかったことから、MFLにより勝点3の剥奪処分を受けてており、こちらの未払い給料については4月30日までに支払いが完了しない場合、さらに勝点6が剥奪されることになっています。

4月3日のニュース:給料削減はリーグ再開日程確定後にすべき、UKM FCの選手は発言を捏造したMFLを批判、国家スポーツ委員会はユースコーチの手当未払い問題解決を約束

給料削減はリーグ再開の日程確定後にすべき
 現在中断中のマレーシアフットボールリーグMFLの各クラブは、試合が開催されないため入場料収入を失い、契約していた支援を取りやめるあるいは支援ができなくなるスポンサーが現れるなど苦境に立たされています。その結果、各クラブが選手と給料削減や特別手当てなどの契約内容の見直しを求めていますが、選手側はその交渉を始めるにはまだ早いという意見のようだと英字紙スター電子版が報じています。
 少なくとも国内リーグを運営するMFLが再開日程を決めてくれれば、選手は団結してマレーシアサッカー に関わる全員にとって何が最善かを話し合う用意があると話すのは、スランゴールFCのブラジル人MFサンドロです。
 「現在、世の中で起こっていることについては、我々選手がその責任を負うべきでないので、給料削減などを受け入れることは難しい。しかしその一方でクラブが置かれた厳しい状況も理解できる。だからこそ、選手はリーグがいつまで中断されるかを知る必要があり、リーグ再開の日程が決まれば選手は給料削減などについての妥協点を見つける努力ができるだろう。マレーシアサッカー協会FAMとMFLは難しい決断を迫られていることも理解している」とサンドロ選手は話しています。
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 不要不急の外出を禁じる活動制限令が発令されたのは3月18日で、現在は4月14日まで続くことが決定しています。MFLの当初の試合日程は、3月後半にはFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選が予定されていたことから試合が組まれておらず、第5節(4月3日〜4日)と第6節(4月10日〜12日)の2試合の延期が確定しています。
 マレーシア国内での新型コロナウィルス感染者数のピークは4月中旬が予想されることを保健省が発表しており、活動制限令は4月末までの延長も噂されています。その場合には第7節(4月17日〜19日)、第8節(4月25日〜26日)、第9節(4月28日〜29日)までの3試合が延期されることになります。その場合には流石に選手も交渉のテーブルに着く可能性はあるでしょうが、選手の立場で言えば、2試合の延期が確定しただけでクラブ側が給料削減を持ち出すのはいくら何でも早すぎる、ということでしょう。

UKM FCの選手は発言を捏造したMFLを批判
 マレーシアフットボールリーグMFL2部のUKM FCは、MFL1部JDTに続き選手が給料削減に同意したクラブと報道されていましたが、その後、選手はクラブに同意していないという記事が出るなど情報が錯綜しています。それでもマレーシアサッカー協会FAMと国内リーグを運営するMFLは、他のクラブもUKM FCに倣って、選手と給料削減の話し合いをすべきとコメントしています。
 しかし英字紙ニューストレイトタイムズは、UKM FCの選手たちは給料削減には全く同意していないというアスナン・アーマド主将の発言を報じています。記事によれば、アスナン主将とUKM FCの選手が15から20パーセントの給料削減に同意したという発言はMFLによって捏造されたものであるとしています。
 記事の中でアスナン主将は、この捏造された発言を元にFAMとMFLが新型コロナウィルス感染拡大によるリーグ中断による給料削減を他のクラブに奨励していることが許せないとしています。
 さらに、UKM FCの選手の大半は給料が5000リンギ(およそ12万4000円)以下で、しかも国内リーグが公式に終了する11月よりも2ヶ月も短い9月までの契約となっていることなどを挙げ、選手たちは給料削減について不当行為であると感じていると語り、選手はあくまでも給料削減に関してクラブとの話し合いの席に着くことに同意しただけで、内容については全く同視していないとしています。
 またリーグ中断による入場料収入減やユニフォームなどグッズの売上減についても、そもそもUKM FCはその分野の収入はほとんどなかったので、それを選手の給料削減の根拠として持ち出されても筋が通らないとも話しています。
 この他、「今季開幕前には9月まで運営する十分な予算があるとしていたクラブが、なぜ今、給料削減を持ち出すのかが理解できない。クラブは単に新型コロナウィルスを利用して経費を節約しようとしているだけである。」「(33パーセントの給料削減に同意した)ジョホール・ダルル・タジムJDTとUKM FCでは状況が全く違う。JDTの選手の給料は高額なので、給料削減は大した問題ではいだろう。しかもJDTが行なったように、削減した給料を新型コロナウィルスで苦しむ人々へ寄付するといった計画もUKM FCにはない。」とアスナン主将は話しています。
 また同じ記事の中では、DFルーベン・カティリピライは、選手が給料削減に同意したと報道されたことから、他のクラブの選手から同意したことを非難され、この選手が所属するクラブはUKM FCが先例を作ったことで、選手に給料削減に同意するように迫っていると聞かされていると述べています。
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 今回のUKM FCが行おうとしている給料削減については、今季開幕からわずか2試合で契約解除となった外国籍選手の補償金を生み出すためという噂もあります。MFLが公表している登録選手名簿では、UKM FCは今季、DFイグナシウス・アドゥコール(ガーナ)、FWイ・スンウ(韓国)、FWジュリアン・ボッターロ(アルゼンチン)、FWアカニ=サンデイ・ワシィウの4名を登録していますが、リーグ中断前の第4節までで試合に出場しているのは韓国出身のイ選手だけなので、噂は強ち的外れではないのかも知れません。

国家スポーツ委員会はユースコーチの手当未払い問題解決を約束
 マレーシア政府の青年スポーツ省とマレーシアサッカー協会FAMが統括する国家サッカー選手育成プログラムNFDPは、マレーシアの時代を担うユース育成プログラムですが、このプログラムに関わるパートタイムコーチの手当が支払われていないというニュースをサッカー専門サイトのスムアニャボラが伝えたのが4月1日のことでした。
 記事の中では、1月分と2月分のコーチ手当は3月分と共に3月末に支給されることになっていましたが、これが4月分と合わせて4月末に支給と発表になった一方で、NFDPの中核となるエリートアカデミーAMDのコーチは全員が予定通り給料を受け取っている点などを指摘されていました。
 そしてその続報が翌4月2日の同サイトで報じられました。FAMの副会長でもあるスバハン・カマルNFPD技術委員長がMSNと会見を行い、手当未払いの問題についてはNFDPとMSNが責任を負うものであることを認め、その理由としてMSN内でのNFDPを管轄部署が変更となったことなどを挙げ、NFDPは1週間以内に未払い手当を支給するとしています。
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 ユースプログラムからトップリーグまで、マレーシアのサッカー界に蔓延するこの給料未払い問題。見栄っ張りの傾向があるマレー人気質によるものなのか、あるいは計画性のなさなのか、あるいはその両方か。「マレー人は…。」と一般化するのは間違いなことは理解していますが、あらゆるレベルで起こるのを見るとついついそう考えてしまいます。

4月2日のニュース:FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討、元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮、AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長

FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討
 隣国インドネシアでは新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、5月29日まで国内リーグ中断が確定していますが、これに伴い、インドネシアサッカー協会PSSIは、3月から6月までの期間に限り、国内リーグの各クラブに対して給料の25パーセントを上限として支払うことを認める特別措置を取っています。そしてPSSIがこの措置の根拠として挙げているが、国内リーグの中断は”Force majeure「不可抗力」”によるものであるという考え方です。
 手元にあるスーパー大辞林によれば「不可抗力」とは「 通常,必要と認められる注意や予防方法を尽くしても,なお損害を防ぎきれないこと。債務不履行・不法行為の責任を免れる」となっており、今回のPSSIの場合で言えば、「契約書通りの給料を払う義務を免除される」という解釈でしょう。
 これに倣ってかどうかはわかりませんが、マレーシアサッカー協会FAMが「不可抗力」条項を契約書に盛り込むことを検討中であることを、マレー語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。この記事では、この条項を契約書に盛り込むことにより、現在、マレーシアの国内リーグを揺るがせているリーグ中断に伴う給料削減問題のような事態に対処することが容易になるとしています。
 この「不可抗力」条項導入について、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、今回の新型コロナウィルスによるリーグ中断はFAMにとっても全く未知の経験であるとし、今後このような状況に直面した際には選手との契約を見直す必要があるとして、各クラブやマレーシアプロサッカー選手会PFAMを含めた関係者と一緒に検討していきたいと話しています。
 その一方で、この「不可抗力」は様々な解釈が可能であり、ヘイズ(煙霧-マレーシアやインドネシアで行われている焼畑が原因とされ、健康被害なども引き起こす大気汚染公害:筆者注)や豪雨なども含めるのかなどマレーシアでの適用条件やその目的などを包括的に検討する必要性があることや、マレーシアフットボールリーグMFLで使われている契約書は国際サッカー連盟FIFAが作成した定型書式を採用していることから内容の変更にはFIFAの承認が必要であることなどを指摘した上で、ラマリンガム事務局長は選手、クラブの双方はもちろん、サッカーファンにとっても公平となるようなものとしたいと話しています。

元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮
 クロアチア人のボヤン・ホダック氏は、現在マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグ7連覇中のジョホール・ダルル・タジムが連覇をスタートした2014年に監督を努めた他、2012年にはケランタンFAを率いてスーパーリーグ、FAカップ、マレーシアカップの三冠を達成した名将です。その後2017年から昨年2019年まではマレーシアU19代表の監督を務め、2018年には東南アジアサッカー連盟AFF U19選手権優勝、さらにはアジアサッカー連盟AFC U19選手権本選に14年振りにマレーシアを出場させています。しかし、マレーシアでこれだけの実績がありながら、葉に絹着せぬ発言で知られるホダック氏はU19代表監督の契約を更新されず、現在はインドネシア1部リーグのPSSマカッサルの監督を務めています。
 インドネシアの国内リーグが中断中ということで、クアラルンプールに滞在しているホダック氏は英字紙ニューストレイトタイムズ電子版のインタビューに答え、MFLの多くのクラブが州政府や政府機関を大口スポンサーとしており、現在の新型コロナウィルス感染が拡大する状況では、そう言った州政府や政府機関が充当していたクラブ運営資金が新型コロナウィルス感染対策に使われている可能性があるという持論を展開し、他のスポンサーを持たないクラブ、多くの入場料収入が期待できないクラブは生き残りが困難になり、そのツケは選手にも回ってくるだろうと話しています。
 「年間予算1000万リンギ(およそ2億4600万円)程度のクラブが試合をせずにどのくらい持ちこたえることができるだろうか」と話すホダック氏は、州政府や政府機関といったクラブのスポンサーが既に年間支援額全額を支給していれば良いが、毎月、あるいは四半期ごとに支援が行われるクラブであれば持ちこたえるのが困難になるだろうと述べ、既に負債を抱えているクラブ(=給料未払い問題を抱えているクラブ)では選手が苦しむことになるのではないかと危惧していると語っています。
 さらに中国、韓国、日本といった国のクラブは資金的に余裕があり、リーグを運営する組織から支援も期待できるが、国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFL自身が十分なスポンサーを獲得できていないマレーシアはもとより、似たような状況に置かれている東南アジア各国のクラブが心配であるとしています。
 また上の記事でも取り上げたインドネシアリーグの給料削減問題についても、報道されている内容とは異なり、選手会との交渉なしに決定されたと話すホダック氏は、アジアを含めた世界のサッカークラブの9割以上を占める小規模クラブの多くは、リーグ中断期間が3ヶ月以上に及べば破産しかねないのではと予測しています。

AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長
 4年ごとに開催されるアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ。昨年2019年にアラブ首長国連邦で開催された第17回大会では、カタールが日本を3-1で破って優勝しています。2023年開催予定の第18回大会は中国での開催が既に決まっていますが、その次の大会となる2027年の第19回大会について、AFCは開催希望国から出される申請の締め切りを3月31日から6月30日に延長したと、英国の通信社ロイターが報じています。
 AFCは、十分な準備期間を与えられるように開催地をできるだけ早く確定したかったようですが、新型コロナウィルスの感染拡大により各国のサッカー協会がその対応に追われている現状を考慮した結果の決定であるとしています。
 2027年大会については、過去3回の優勝実績を誇りながら、自国開催の経験がないサウジアラビアが開催に立候補している唯一の国となっています。

3月31日のニュース:JDTの選手らが33パーセントの給料カットに同意、FAMは他のクラブもJDTに倣うことを期待 、その一方で選手は協会とリーグの役員報酬削減を要求

マレーシアでは明日4月1日より、現在発令中の活動制限令MCOがより強化され、これまで通常営業が許されていたスーパーマーケット、食料品店、飲食店などが全て午前8時から午後8時までの営業となります。フードデリバリーなども同様の営業時間となり、この時間帯以外に妥当な理由なき外出をすれば警察に逮捕される、いわば夜間外出禁止状態となります。このような状況下では、読んでいて楽しいニュースはなかなかないのですが、数日ぶりのブログを書いてみました。

JDTの選手らが33パーセントの給料カットに同意
 ジョホール・ダルル・タジムJDTは公式Facebookページにて、選手、コーチ、スタッフが33パーセントの給料削減に同意したと発表しています。3月28日のこのブログでは、選手が給料の一部を本拠地があるジョホール州の災害基金に寄付した事を取り上げましたが、この寄付が削減された33パーセントの一部から拠出されたものなのか、残りの給料64パーセントから選手が寄付したものかは、発表された内容を読む限りでは明らかではありません。
 JDTはこれまでも、2017年にはペナン州で起こった洪水被害者への支援、昨年2019年には元フランス代表のロベール・ピレスやダヴィド・トレセゲ、ルイ・サハ、元オランダ代表のエドガー・ダーヴィッツ、元イタリア代表のマルコ・マテラッツィなど豪華メンバーをそろえて開催したチャリティーマッチで68万リンギ(およそ1700万円)を国立がん協会へ寄付するなど、社会活動に熱心なクラブです。
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 MFLのクラブとしては初めて給料削減を公表したJDTですが、この給料削減と寄付行為は、マレーシアサッカー協会FAMやマレーシアサッカーリーグMFLの公式サイトで取り上げられた他、アジアサッカー連盟AFCのウィンザー・ジョン事務局長(マレーシア人)からも称賛されています。

FAMは他のクラブもJDTに倣うことを期待
 JDTが選手、コーチ、スタッフと給料削減について同意したことで、マレーシアサッカー協会FAMは、他のMFLクラブもJDT同様に選手と交渉することを期待していると、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 現在、マレーシアフットボールリーグMFLは暫定的に4月30日までの中断が決まっていますが、マレーシア国内に発令中の活動制限令MCOは今後も延長される可能性があり、実際には国内リーグ再開の目処は立っていません。
 試合が開催できない状況下で入場料収入が途絶えたMFLクラブが窮状を訴えていることは、何度かこのブログでも取り上げましたが、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、クラブが選手・スタッフと真摯に交渉を行い、選手・スタッフもある程度の歩み寄りを見せることで、妥協点を見つけるよう努力を求めています。

その一方で選手は協会とリーグの役員報酬削減を要求
 同じニューストレイトタイムズ電子版では、選手やスタッフに給料削減への理解を求めるのであれば、マレーシアサッカー協会FAMとマレーシアサッカーリーグMFLの役員がまずは報酬削減を表明するべきではないか、という選手の声を取り上げています。
 FAMとMFLは、クラブと選手・スタッフとの間で給料削減の交渉を行うべきと提案していることは上で取り上げましたが、MFl1部スーパーリーグのクラブに所属する匿名の選手は、FAMとMFLの役員が率先して報酬を削減すれば、選手やスタッフもそれに続くだろうと話す一方で、そもそも給料削減が議論になる根拠がないとして、給料全額が払われるべきだとしています。
 この選手はインタビューの中で、ユベントスやバルセロナの選手も給料削減に同意している事を指摘されると、リーグも違えば給料の額も違うとして比較の対象にはならないと反論しています。
 4月30日までリーグ中断が続けば、給料削減についての話し合いに応じる可能性があると話すこの選手は、ここまで2週間の中断で給料削減の話が出ること自体、多くのクラブが経営状況に問題がある証であると指摘し、この程度で経営が難しくなるクラブが多いのであれば、MFLは今季のリーグを中止すれば、簡単な話だと過激なことも発言しています。
 またインドネシアサッカー協会PSSIがリーグ中断期間中は各クラブが選手に支払う金額を実際の給料の25パーセントまでで良いとする措置をとった事をAFCが評価していますが(詳しくは下をご覧下さい)、これについては、PSSIがインドネシアのプロサッカー選手会への相談なしで行われたことから、インドネシアの選手は非常に腹を立てていると話し、マレーシアのプロサッカー選手会PFAMには、選手の福利が守られるよう頑張ってもらいたいと話しています。
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 インドネシアサッカー協会PSSIは、3月28日に国内リーグを5月29日まで中断することを発表し、さらに3月から6月までの期間は「不可抗力(force majure)」を理由に、各クラブが選手、コーチ、スタッフに支払う給料を、契約した金額の25パーセントを上限として良いとする決定をしています。PSSIの発表はこちらです。
 例えばオーストラリアサッカー協会FFAは職員の70パーセントを削減しており、「痛み」を共有するのであれば、マレーシアでも協会やリーグ運営組織でも職員の給与削減、あるいは役員報酬の削減が話題になっても良いはずですが、この記事の選手が指摘しているようにマレーシアサッカー協会FAMやマレーシアフットボールリーグMFLからはそういった話は残念ながら全く聞こえてきません。

3月27日のニュース:FAMとMFLはクラブにメディアではなく選手との対話を求める、PDRM FCの現役警官14名は最前線に立つ「フロントライナー」 、アセアンクラブ選手権は来年に延期へ

FAMとMFLはクラブにメディアではなく選手との対話を求める
 マレーシアサッカー協会FAMとマレーシアフットボールリーグMFLはそれぞれの公式サイトで、リーグ中断による収入減に苦しむ各クラブに対し、選手やスタッフと直接、話し合いの席につく機会を設けて、契約内容などについての話を行なうべきであると訴えています。
 さらにFAMとMFLは、各クラブがメディアに窮状を訴えている現在のやり方は適切でなく、まずは選手との対話をすべきとしています。この対話を通して、関係者全員が互いに協調し、現在の状況下で国内サッカー健全に維持するためにも、問題の平和的な解決を求めることを求めています。
 MFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは、ここでいう対話とは、クラブが選手側に対して一方的に給料削減に同意することを求めるものを指すのではないとしながらも、現在の状況はクラブの過失によるものではないとして、選手やスタッフに理解を求めています。
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 このブログでも過去数日にわたって、リーグ中断期間中のMFLの複数のクラブの状況を取り上げましたが、各クラブ任せだった協会とリーグが交渉を容認した形になります。ただし、協会あるいはリーグによる具体的な支援の話は出ておらず、実際には未だクラブ任せの状況なので、この訴えにどれだけ効果があるのかは疑問で、結局は各クラブの懐状況次第ということでしょう。

PDRM FCの現役警官14名は最前線に立つ「フロントライナー」
 MFLは第4節を最後に中断中で、ほとんどの選手は自宅で自主トレ、或いはチームから与えられた練習メニューをこなしていると思いますが、MFL1部のPDRM  FCの選手の中には、活動制限令MCO発令中の現在も仕事に勤しんでいるようです。
 PDRM FCはマレーシア王立警察PDRMが運営するクラブで、多くの選手が現役の警察官であることから、3月18日に発令されたMCO下では、クラブ所属の14名が通常の勤務についていると、英字紙スターが伝えています。
 FWカイルル・イズアン・アブドラはKL市内をパトロールする一方で、GKウィルフレッド・ジャブンは他のチームメイトとともに、要請に即応する部隊に配備されていると紹介しています。
 カイルル選手は現在の勤務状況では、個人的なトレーニングをする時間が十分取れないことを認める一方で、警察官として常に任務につく用意をしておかなければならないと話しています。またウィルフレッド選手は自分は普段はサッカーしているものの、警察官が自分の仕事であり、任務に就いた場合には国家の助けになれることを名誉と感じていると話しています。
 リーグ戦4試合では0勝1分3敗、しかも給料未払い問題があったことから開幕前に勝点3を剥奪(はくだつ)されたPDRM FCですが、イシャク・クンジュ・モハマド監督は、MFL1部で4試合をプレーし経験を積みつつあるチームについて、1部でプレーするために必要な事を学びつつあるとし、プロには引けを取らない事を見せたいと記事の中で語っています。

アセアンクラブ選手権は来年に延期へ
 アセアン(東南アジア諸国連合)サッカー連盟AFFの公式サイトでは、今年2020年から開催予定であったアセアンクラブ選手権ACCの2021年への延期、そして今後4ヶ月に開催が予定されているAFF主催大会の日程変更を発表しています。
 AFFのキエフ・サメト会長は、ACC延期の理由を新型コロナウィルスの感染拡大から参加する選手守るためとしながらも、10試合を5ヶ月間にわたって行なう日程のACCは、アセアン各国で中断中の国内リーグやアジアサッカー連盟AFCの大会の日程が未確定であることから、来年への延期が適切であると判断したと話しています。
 この他、AFF主催大会としては、5月にフィリピンで開催が予定されていたAFF女子選手権、いずれもインドネシアで開催予定だった6月のU18女子選手権、7月のU19選手権(男子)、8月のU16選手権(男子)もそれぞれ、後日発表される日程へと変更になりました。
 一方9月にインドネシアで開催予定のU15選手権、いずれもタイで開催予定のAFFフットサル選手権、フットサルクラブ選手権、ビーチサッカー選手権については現時点で予定通りの開催としています。
 また隔年開催で今年2020年が開催年となっているAFF選手権スズキカップも予定通り11月より開催となっています。