10月15日のニュース:シーゲームズの組み合わせ決定、MFLはTMに対する訴訟取り下げ、PKNS FC監督はスランゴールFAのBチーム化再検討を求める

シーゲームズの組み合わせ決定
 今年2019年11月30日からフィリピンのマニラを中心に開催される東南アジア競技大会SEA Games(シーゲームズ)のサッカーの日程がアジアサッカー連盟AFCのホームページで発表されています。
 オリンピックのアジア版とも言えるシーゲームズは、東南アジア諸国連合加盟の10カ国と東ティモールの計11カ国が参加する各年開催の大会ですが、サッカーはその中でも目玉競技の一つで、2017年からは各国のU22代表(および2名のオーバーエイジ選手)がメダルを争っています。
 今大会男子ではグループAに入ったマレーシアは、開催国フィリピン、ミャンマー、カンボジア、東ティモールと同組になり、ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール、ラオス、ブルネイがグループBとなっています。
 過去3大会は男子はタイが連覇しており、前回は自国開催ながら決勝で0-1と敗れたマレーシアは2011年大会以来の4大会ぶりの金メダルを目指します。また1985年から始まった女子では、過去10回の大会で、それぞれ5回ずつ優勝のベトナムとタイがインドネシアと同組になっています。
 男子のサッカーは大会開幕前の11月25日から12月10日まで、女子は11月28日空12月9日までの日程となっています。(画像はAFCのホームページより)

MFLはTMに対する訴訟取り下げ
 マレーシアフットボールリーグMFLのホームページでは、マレーシアの国内最大通信会社テレコム・マレーシアTMに対する訴訟取り下げを発表しています。
 MFLとTMは2018年1月に、同社のインターネットサービスプロバイダーブランドUnifiがMFL1部スーパーリーグおよびカップ戦マレーシアカップの冠スポンサー、さらにはFAカップの協賛として8年間で4億8000万リンギ(およそ124億円)の大型契約を締結しましたが、今季2019年MFL開幕前に年間6000万リンギ(およそ15億5000万円)のスポンサー料が支払われなかったとして、MFLはこの契約を破棄すると同時に、契約不履行に基づく賠償請求として4億2800万リンギ(およそ110億円)の訴訟を3月に起こしていました。
 この騒動は、今年3月15日にMFL側がTMとの契約を破棄することを発表したことを発端とし、これに対して3月18日にTM側は昨年2018年11月の時点で、スポンサー契約の最終合意ができていなかった、つまり契約締結には至っていなかったことを主張する発表を行い、これを受けてMFL側が3月21日にTMを提訴していました。なおこのニュースを受け、MFLの主張が認められれば将来の収益を下押しするとの見方から同社の株が売られ、一時は株価が2%近く下落する事態にもなりました。
 訴訟取り下げについての告知記事の中でダト・ハミディン・モハマド・アミンMFL会長は、今回の訴訟取り下げはMFLとTMが共有するスポーツマン精神に基づくものであり、TMは2015年から(MFLの前身である)フットボールマレーシアLLP(Limited Liability Partnership、有限責任事業組合)のスポンサーであること、2000年からマレーシアサッカー協会FAMのスポンサーでもあることなどを挙げ、今回の訴訟取り下げによって、マレーシアサッカーファンが期待するような環境が実現できるよう両者の協力関係を強固にできるとも述べています。さらにマレーシアのサッカーの発展のため、MFLは企業と手を携えていきたいというメッセージも送りたいとしてます。
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 TMの大型契約はTMJことジョホール皇太子トゥンク・イスマイル・イドリス殿下がMFL会長在籍時の2018年に結ばれましたが、この年の5月には1957年の英国独立以来政権を担っていた与党連合国民戦線が総選挙で大敗、現在のマハティール・モハマド首相率いる希望同盟が政権につくというマレーシアでは歴史的な出来事がありました。
 マハティール首相は国民戦線でも首領を務めましたが、その頃から王族の権限縮小に積極的で、それを嫌う「物言う王族」イスマイル殿下とはメディアなどを通じて丁々発止とやりあってきました。そのマハティール首相が政権に復帰したことが、政府系企業でもあるTMの姿勢転換によってイスマイル殿下に「お灸を据えた」のでは、というのが当地のもっぱらの噂です。

PKNS FC監督はスランゴールFAのBチーム化再検討を求める
 このブログでもほぼ確定的と書いたMFL1部PKNS FCのスランゴールFAのBチーム化について、PKNS FCのラヤゴパル・クリシュナサミ監督が再検討を求めて声を挙げているとスポーツ専門チャンネルスタジアムアストロのポータルサイトが報じています。
 U23代表の監督として2009年の東南アジア大会シーゲームズで優勝、フル代表の監督として2011年の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップでも優勝と近年のマレーシア代表監督としては抜群の実績を誇るラヤゴパル監督は、Bチーム化案が浮上するまでに十分な検討がされていないこと、またここ数週間はBチーム化がまるで決定したかのような空気でそれ以外の選択肢を検討する余地がなくなっているとして、記事から苛立ちを隠さずに語っている空気が伝わってきます。
 PKNS FCはユース育成に定評があり、今季2019年もMFLのU22チームが対戦するプレジデントカップでは優勝、U19チームが対戦するユースカップでは準優勝しています。PKNS FCのBチーム化により、ラヤゴパル監督はこういったユース育成が今後も続くのかどうかも疑問視しているとし、PKNS FCのフロントにはBチームか再考を求めていくと語っています。
 また実際にPKNS FCがスランゴールFAのBチームになることがあれば、自分とスランゴールFAのバスカラン・サティアナタン監督が同一チームにいるということはあり得ないだろうとも述べています。
 本日10月15日現在、PKNS FCのフロントからも何も公式発表がないということで、ラヤゴパル監督はこれまで通り、週3回のトレーニングでチームを指導しています。
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 この記事にもある通り、代表監督としても実績のあるラヤゴパル監督と、ケランタンFAでマレーシアカップ優勝、国軍ATM FCやフェルダ・ユナイテッドをMFL2部から1部へ昇格させるなど国内での実績が高いサティアナタン監督が同じクラブのAチームとBチームを指導するということは考えられない、というよりももったいないのは事実です。PKNS FCのBチームかとなれば、どちらかがスランゴールFAのAチームの監督になるでしょうが、もう一方は他のクラブの監督に就任する可能性は高いです。



 

10月10日のニュース:速報 FIFAワールドカップアジア二次予選 マレーシア0-1ベトナム

FIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選兼2023年AFC選手権アジアカップ予選のベトナム対マレーシアが10月10日にハノイのミーディンスタジアムで行われ、ベトナムが40分にグエン・クアン・ハイのゴールで挙げた1点を守り切り、1ー0でマレーシアに勝利しています。

 この日のスターティングXIは、前回のUAE戦の先発メンバーからは、ケガからの回復が思わしくないMFノー・アザム・アジー(パハンFA)と守備にやや不安のあるDFアダム・ノー・アズリン(JDT)に代わってそれぞれMFハリム・サアリ(スランゴールFA)とDFザフアン・アイディルが入った以外は変更なし。好調のシャフィク・アーマド(JDT)がワントップのノーシャルル・イドラン・タラハの後ろに控える4-4-1-1とこれまで通りの布陣で試合に臨みました。
 仕事の都合で後半しか見られなかったのですが、後半は自陣でプレーする時間が長く、パスも横や後ろへのものが多く、ボールポゼッションでベトナムを上回っていたようですが、チャンスらしいチャンスはなし。予選が始まってから好調が続くMFシャフィク・アーマド(JDT)も、下がってボールをもらう機会が目立ちました。MFムハマドゥ・スマレ(パハンFA)、MFサファウィ・ラシド(JDT)もチャンスを作れず、後半だけで見れば、強いチームが単純に勝ったように見えました。
 前半はダイジェスト映像で見ましたが、ゴールのシーンはDFシャルル・サアドがまたもや相手FWを追いかけるような位置どりで、これまでと同じように相手の実力というよりはミスでの失点だったように素人目には見えました。
 またMF陣もベトナムの速いプレスに思うようなパスが出せず、焦って出したパスは相手に渡るなど精度が低いボールが多く、FW陣チャンスを作ることができませんでした。
 ここまでの予選2試合は期待が持てるような試合をしたマレーシア代表だっただけに、今回の敗戦はFIFAランキングを順当に反映した結果のように思えました。
 この敗戦でマレーシアは1勝2敗の勝点3、ベトナムは1勝1分の勝点4、タイも1勝1分の勝点4となっています。この他、UAEが1勝で勝点3、インドネシアは2敗で勝点0となっていますが、この両チームは本日この後、UAEのホームで対戦します。
(下はこの日のマレーシアのスターティングXI。マレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

10月10日のニュース:MFL2部に3つ目のBチーム誕生は茶番だ、ベトナム戦を前に-練習場で一触即発、ベトナム戦を前に-最近の対戦成績をおさらい、FIFAによるインドネシア連盟への制裁が発表

MFL2部に3つ目のBチーム誕生は茶番だ
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版はアジトパル・シン記者の署名入り記事として、マレーシアフットボールリーグMFL2部に3つ目のBチームが誕生することに警鐘を鳴らしています。
 先日もこのブログで取り上げましたが、MFL1部所属のスランゴールFAを運営するスランゴール州サッカー協会の臨時総会席上で、同じMFL1部所属のPKNS FCをスランゴールFAのBチーム化する案を満場一致で可決しました。PKNS FCからMFLに対しては来季2020年のリーグ戦をBチームと参加することの申請はまだ出ていないようですが、MFLは内諾を与えていると言われています。
 同一クラブが同じリーグでプレーすることができないMFLの規定により、PKNS FCはBチーム化が確定した時点で、今季2019年MFL1部スーパーリーグで9位だったにもかかわらず、MFL2部プレミアリーグへ降格となります。これによりMFL2部は、JDT II、トレンガヌFC II、PKNS FCと昇格権を持たないBチームが3クラブと、予算上の問題から1部昇格を望んでいないとされる大学を母体とするUITM FCとUKM FCの2クラブ、つまりMFL2部12クラブ中の5クラブが1部を目指さない状況となります。
 さらにPKNS FCと同様に州政府関連機関であるペラ州開発公社を母体とするPKNP FCにも、同じペラ州を拠点とするペラTBGのBチーム化の噂もあり、この通りであればMFL2部は所属クラブの半数が1部昇格を目座なしクラブで占められることになります。
 スランゴール州サッカー協会が先日発表した声明では、スランゴール州を拠点とするスランゴールFA、PKNS FC、スランゴール・ユナイテッドを統合する案はこれまでも何度か浮上したものの、様々な障害があり実現しなかったとしています。3つのクラブの運営資金は合計で4400万リンギ(およそ11億3000万円)ながら、結果を出しているのは、MFL1部3位、マレーシアカップ でも準決勝に残っているスランゴールFAだけであるとし、今回の統合では1600万リンギ(およそ4億1000万円)が節約できるだけでなく、スポンサー獲得や入場料収入などでも統合による利点は多いとしています。
 またBチームはスランゴールFAのプレジデントカップチーム(u21チームを対象としたリーグ参加チーム)に所属できなくなる22歳以上の選手がAチーム入りするための育成の場としたいとしています。
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 MFL2部で今季5位だったUITM FCや9位だったスランゴール・ユナイテッド、さらにMFL3部にあたるM3所属のスランゴール州内クラブなど、プレジデントカップを卒業した選手がプレーできるようなBチームとしてスランゴールFAが活用できるクラブは他にあるにもかかわらず、スランゴールFAがPKNS FCのBチーム化にこだわるのは、PKNS FCに提供されている運営資金にあると言われています。個人的にはまずスランゴール・ユナイテッドとの統合を考える方が先だと思うのですが、育成云々よりも単純に運営資金を増やしてJDTに負けない補強したい、と言う考えがあるのだと思います。また、PKNS FCは以下のような意味深な写真をFacebookにアップしています。

ベトナム戦を前に-練習場で一触即発
 本日10月10日はFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選兼アジアサッカー連盟AFC選手権2023年大会予選のベトナム対マレーシアがハノイのミーディンスタジアムで行われますが、英字紙ニューストレイトタイムズによると、同じ練習会場を割り当てられたマレーシア代表とベトナム代表が一触即発になったと伝えています。
 ベトナムサッカー連盟VFFユーストレーニングセンターを練習会場として割り当てられたマレーシア代表は、練習開始時間とされた午後6時より前の5時45分に到着したところ、練習中だったベトナム代表のパク・ハンソ監督がこれに気づき、マレーシア代表のタン・チェンホー監督とチームに6時までバスから降りずに、フィールドが見えない離れたところでで待つように依頼したそうです。その後マレーシアの選手たちが着替えを行う間、タン監督はベトナム代表の練習を見続けたため、腹を立てたパク監督は練習を終了時間前に切り上げ、別の場所へ移動して続けたとのことです。
 また、試合前日の記者会見では、過去の対戦成績は関係なく当日の試合に集中したいと語ったパク監督は、100%勝利するとは言えないが全力を尽くすと語ったそうです。では、過去の対戦成績とはどうなっているのかを次の記事で紹介します。

ベトナム戦を前に-最近の対戦成績をおさらい
 マレーシアとベトナムは、昨年2018年の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップの決勝で対戦していますが、FIFAワールドカップ予選やAFC選手権アジアカップ予選で対戦するのは、実は今回が初めてです。
 両チームの対戦成績は下のインフォグラフィックの通り、1991年からの19試合ではベトナムの11勝3分5敗で、マレーシアがベトナムを最後に破ったのは2014年12月11日のAFF選手権スズキカップの準決勝まで遡らなければなりません。なおこの試合は今回の試合と同じミーディンスタジアムで開催され、現在の代表チームにも所属するFWノーシャルル・イドラン・タラハのゴールを含めた4-2で快勝しています。しかし、マレーシアがベトナムを敵地で破ったのはこの1度きり。残りの4勝は全てマレーシアのホームゲームでした。
 また昨年末のAFF選手権スズキカップでは、グループステージで0-2で敗れ、マレーシアのホーム、ブキ・ジャリル国立競技場で行われた決勝第1戦は2-2の引き分け、ベトナムのホームゲームとなった決勝第2戦は0-1で敗れています。
 ベトナムと対戦したスズキカップ決勝第2戦のメンバーからは、半数近い選手が入れ替わっています。参考までのスズキカップ決勝第2戦のスターティングXIと、2019年9月10日のワールドカップ予選のスターティングXIを併記しておきます。
<2018年12月15日スズキカップ決勝第2戦の先発メンバー>
*太字はUAE戦にも先発したメンバーです。
GK:ファリザル・マーリアス(JDT)
DF:シャミ・サファリ(スランゴールFA)、アイディル・ザフアン(JDT)、シャルル・サアド(ペラFA)、シャズワン・アンディック(JDT)
MF:モハマドゥ・スマレ(パハンFA)、シャマール・クティ・アッバ(JDT)、アクラム・マヒナン(PKNS FC)、サファウィ・ラシド(JDT)、ザクアン・アドハ(クダFA)
FW:ノーシャルル・イドラン・タラハ(パハンFA)
<2019年9月10日WCアジア二次予選UAE戦の先発メンバー>
GK:ファリザル・マーリアス(JDT)
DF:マシュー・デイヴィーズ(パハンFA)、シャルル・サアド(ペラFA)、アダム・ノー・アズリン(JDT)、ラヴェル・コービン=オング(JDT)
MF:モハマドゥ・スマレ(パハンFA)、ブレンダン・ガン(ペラTBG)、ノー・アザム・アジー(パハンFA)、サファウィ・ラシド(JDT)、シャフィク・アーマド(JDT)
FW:ノーシャルル・イドラン・タラハ(パハンFA)
(下のインフォグラフィックはマレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

FIFAによるインドネシア連盟への制裁が発表
 9月5日にジャカルタで行われたFIFAワールドカップアジア二次予選の対インドネシア戦では、マレーシアサポーターは投石されてケガをした方が出たり、試合後にマレーシア代表は警察の装甲車両でホテルへ戻るなど騒乱状態となり、マレーシアサッカー協会FAMはFIFAとアジアサッカー連盟AFCへ正式に抗議する事態に発展しました。
 マレーシアの通信社ベルナマのポータルサイトによると、FIFAからの裁定が発表され、インドネシアサッカー協会PSSIに対しては4万5000スイスフラン(およそ490万円)の罰金が課せられました。またこれを受けてPSSIのラトゥ・ティシャ・デストリア事務局長はこの裁定を受け入れ、課せられた罰金を支払うことを発表しています。
 また同様の事態を避けるために、10月15日に予定されている同じワールドカップ予選の対ベトナム代表戦の会場はジャカルタからバリへ変更されています。

10月7日のニュース:マラッカU監督の去就は未定、インドネシアはWC予選をバリで開催、チャナティップはケガのためUAE戦回避か

マラッカU監督の去就は未定
 今季2019年のマレーシアフットボールリーグMFLでは6位に終わったマラッカ・ユナイテッドを運営するマラッカ州サッカー協会MUSAが今月10月末に開催する会合の席でザイナル・アビディン監督の去就を決めるようです。
 マレー語紙ブリタハリアン電子版によると、MUSAのファルハン・イブラヒム事務局長の談話として、来月11月末に契約切れとなるザイナル監督の今後については、マラッカ州知事でもあるアドリ・ザハリMUSA会長が決定するとしています。
 ファルハン事務局長は、ザハリ会長が今季6位という結果に満足しているものの、最終的な決定は今月末の会合で下されるとしています。
 またザイナル監督もここまでMUSAとの契約更新に関する話し合いなどは行われていないと話しており、来季については全くの白紙のようです。
 今季は給料未払い問題が何度か浮上し、先日のマレーシアカップ準々決勝では、試合直前にシュコール・アダン主将が、過去数カ月の給料未払いを理由に試合への出場を拒否、またマレーシアサッカー協会も来季2019年のクラブライセンスについて条件付きで交付するなど、チームを取り巻く環境は決して良くはありません。

インドネシアはWC予選をバリで開催
 アジアサッカー連盟AFCのホームページでは、インドネシアサッカー協会PSSIによるFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選の試合会場変更要請を受けたAFCは、インドネシア代表のホーム次戦をバリ島で開催することを了承したことを告知しています。インドネシアは今回のワールドカップアジア二次予選ではマレーシアと同組になっています。
 この結果、10月15日に予定されているベトナム代表との対戦は、当初予定されていたジャカルタのゲロラ・ブン・カルノGBKスタジアムからバリ島に本拠地を持つバリ・ユナイテッドのホーム、キャプテン・I・ワヤン・ディプタスタジアムへ移されます。
 9月5日にGBKスタジアムで行われたマレーシア代表との対戦では、観客の乱入しで試合が一時中断したほか、訪れたマレーシアサポーターがインドネシアサポーターから投石などでケガをしたほか、試合後にはマレーシア代表が警察の装甲車両に乗車して宿舎へ戻るなどなどの混乱が発生し、マレーシアサッカー協会FAMは国際サッカー連盟FIFAとAFCに公式に文書による告発を行う事態に発展しています。

チャナティップはケガのためUAE戦回避
 タイ代表のチャナティップ・ソングラシンが、10月15日に予定されているFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選のアラブ首長国UAE戦の招集をケガの辞退したことが所属先のJ1コンサドーレ札幌のホームページで伝えられています。タイは今回のワールドカップアジア二次予選ではマレーシアと同組になっています。
 現在、予選グループGの首位をいくタイは、ここまでベトナムと引き分け、インドネシアに勝利しています。
 タイの英字紙バンコクポスト電子版によると、チームドクターは完治まで2、3週間が必要と述べているとのことで、所属クラブの札幌もタイへの移動による悪化を懸念して、札幌での静養を求めたということです。
 タイ代表は同じく日本でプレーするMFティティパン・プアンチャン(大分トリニータ)、MFピーラドン・チャムラツァミー(サムットプラーカーン・シティFC)の両選手がベトナム代表戦によるケガで招集されず、DFトリスタン・ドゥ(バンコク・ユナイテッドFC)もケガのため招集を辞退しています。
 チームの調子もさることながらが、やはり怖いのは主力選手のケガ。現マレーシア代表で言えば、絶好調のシャフィク・アーマド、サファウィ・ラシド、ブレンダン・ガン、マシュー・デイヴィーズ辺りがケガを負うと代わりがいないので、とにかくケガには気をつけていただきたいです。

10月4日のニュース:UKM FCは初タイトルを目指してチャレンジャーカップ決勝に臨む、スリランカ戦はスタメンに新戦力起用か、WCのアセアン開催立候補に向けタイが作業部会を設立

UKM FCは初タイトルを目指してチャレンジャーカップ決勝に臨む
 マレーシアフットボールリーグMFL2部で今季2019年は8位に終わったUKM FCは、マレーシア国立大学Universiti Kebangsaan Malaysiaの学生が主体のクラブチームで、2部プレミアリーグ昇格1年目の昨季は12チーム中7位と健闘しただけでなく、昨年第1回開催となったチャレンジャーカップ(マレーシアカップに出場しないMFL1部と2部のクラブを対象としたカップ戦)で決勝まで進出しています。その決勝ではトレンガヌFCのBチームであるトレンガヌFC IIに第1戦と第2戦の通算で4-2で敗れましたが、そのUKM FCは今季2019年も再びチャレンジャーカップ決勝戦に進出しています。
 7クラブが出場する今季のチャレンジャーカップのグループステージでUKM FCは、MFL1部12位のクアラルンプールKLFA、同2部4位のトレンガヌFC II、同2部9位のスランゴール・ユナイテッドと同組になり、3勝3分0敗と堂々のグループ首位で準決勝に進出しました。準決勝ではグループA2位のサラワクFAを第1戦と第2戦の通算成績7−1で撃破し、決勝の相手はMFL1部のジョホール・ダルル・タクジムJDTのBチームでMFL2部2位のJDT IIとなっています。
 UKM FCは、この大会ここまでの8試合で5ゴールを挙げているクロアチア出身のFWマテオ・ロスカムと同じく6ゴールのイラン出身のMFミラド・ザニドプール対今大会6試合で4失点のJDT II守備陣との戦いになりそうです。
 なおチャレンジャーカップ決勝第1戦はJDT IIのホーム、ジョホール州ジョホールバルのパシル・グダンスタジアムで10月4日に、第2戦はUKM FCのホーム、KLフットボールスタジアムで10月12日に開催されます。ちなみにUKM FCのスライマン・フサイン監督は、アジアサッカー連盟AFCのプロライセンスコース参加のため日本滞在中とのことで、10月4日の試合はジュザイリ・サミオン アシスタントコーチが指揮を取るようです。

スリランカ戦はスタメンに新戦力起用か
 9月30日から始まっているFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選ベトナム戦へ向けた代表候補合宿には、DFシャルル・サアド、MFブレンダン・ガン、MFパルティバン・ジャナセカラン(以上ペラTBG)、MFノー・アザム・アジー(パハンFA)、ダニエル・アミル・ノーヒシャム(フェルダU)、アブドル・ハリム・サアリ(スランゴールFA)ら候補選手が初日からケガを抱えたまま合流していますが、このうちアザム選手は9月10日のWC予選対UAE戦で蹴られた足首の腫れが引かないとして、10月10日のベトナム戦ではなく、いずれもホームでの試合となる11月14日のタイ戦、同19日のインドネシア戦に間に合うように治療を進めていくと述べていると英字紙スター電子版が伝えています。
 また数日前にはペラのFWシャレル・フィクリが練習中に鼠蹊(けいそ)部を痛めるなど、主力選手にケガ人が多く出ていることから、タン・チェンホー監督は通常は試合に出る機会のない選手にチャンスを与えることを明言しています。なかでも今回久しぶりの招集となったJDTのDFアイディル・ザフアン・ラザクへの期待が高いようで、明日10月5日に予定されているスリランカとの国際親善試合前の記者会見には、キャプテンのGKファイザル・マーリアス(JDT)ではなく、アイディル選手が列席しています。(写真は左からスリランカ代表のカヴィンドゥ・イシャン首相、ニザム・パッキール・アリ監督、マレーシダ代表のタン監督、アイディル選手。FAMのFacebookより)
*10月5日修正:英字紙ニューストレイトタイムズ電子版の報道によると、スリランカとの国際親善試合では、今回の代表候補合宿参加選手中最多のキャップ数82のアイディル選手がキャプテンを務めるようです。)

WCのアセアン開催立候補に向けタイが作業部会を設立
 マレーシアの通信社ベルナマのポータルサイトによると、2034年のFIFAワールドカップの東南アジア諸国連合ASEAN共催を目指して、国内に作業部会を設立したことをタイの観光・スポーツ省のピパット・ラチャキットプラカン大臣が発表しています。
 そもそもは今年6月にタイのバンコクで開かれたアセアンサミットの席上でタイのプラユット・チャンオチャ首相がぶちあげたこの計画は、タイ国内では観光・スポーツ省主導で進められるようです。
 また同じ記事の中で、タイ国スポーツ局SATのコンサック・ヨドマニー局長の談話として、現在タイ国内にはFIFAの規格に合うピッチを持つスタジアムがないものの、バンコクのラジャマンガラ国立競技場やチェンマイの700周年記念スタジアム、ナコーンラーチャシーマー県のタイ国王80歳記念スタジアムなど既存のスタジアムの改修する他、2026年のユースオリンピック開催への立候補に合わせて建設されるチョンブリの新スタジアムなども試合会場候補になっているようです。

9月6日のニュース:WC予選でマレーシアサポーターにアウェイの洗礼、FAMはKリーグのトレーニングにも若手選手を派遣

WC予選でマレーシアサポーターにアウェイの洗礼
 マレーシアが敵地でインドネシアを3−2で破った国際サッカー連盟FIFAワールカップ2022年大会アジア二次予選では、マレーシアサポーターに強烈なアウェイの洗礼があったようです。
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版によると、安全確保のため試合開始に先立つこと4時間前に地元警察の警護とともにマレーシアサポーターを乗せたバス6台が試合会場となったジャカルタのゲロラ・ブン・カルノスタジアムに到着すると、すでにそこにいたインドネシアサポーターの一部が投石で出迎えたとのこと。幸い怪我人は出なかったようです。
 また試合中はこちらの映像でわかるように、インドネシアサポーターがピッチに乱入して試合が10分に渡って中断し(映像はニューストレイトタイムズ電子版より)、インドネシア代表のサイモン・マクメネミー監督は試合後の記者会見で「ピッチ乱入については自分としては何もできないが、影響がなかったとは言い難く、両チームにとって不都合であった。」と述べ、「インドネシアサポーターは世界一ではあるが、その反面、最悪なサポーターとなるときもある。」とも述べています。
 英字紙スター電子版によれば、試合終了後には、観戦に訪れていたマレーシア政府のサイド・サディック・サイド・アブドル・ラーマン青年スポーツ相を含むマレーシアサポーターに対して、インドネシアサポーターから金属片やビン、発煙筒が投げつけられ、マレーシアサポーターはほとぼりが冷めるまでスタジアム内の安全な場所で待機させられたようです。この後、インドネシア政府のカウンターパートであるイマム・ナーラウィ青年スポーツ相が混乱に対して謝罪し、サイド・サディック大臣もこれを受け入れたようです。
 しかしマレーシアサッカー協会FAMは、インドネシアサッカー協会PSSIの対応が不十分であったとして、国際サッカー連盟FIFAとアジアサッカー連盟AFCに対して報告書を提出することを決めたことが、FAMのホームページで告知されています。

FAMはKリーグのトレーニングにも若手選手を派遣
 U18代表選手6名が今月9月から10月にかけてセレッゾ大阪やFC東京の練習に参加するために日本へ派遣されるという記事を以前とりあげましたが、FAMはKリーグの協力を得て、韓国へも選手を派遣するようです。
 マレーシアの通信社ブルナマによると、大韓サッカー協会KFAのチョン・モンギュ会長と会談したFAMのダト・ハミディン・モハマド・アミン会長は、Jリーグクラブへの派遣と同様に、Kリーグクラブへも1、2名の選手を派遣したいと話しています。
 また2週間という短い期間で日本へ派遣しても、選手にとっては何も良い影響が出ないという批判の声が一部から出ていることについては、FAMとJFAの間で調印された了解覚書(りょうかいおぼえがきMOU)の重要性を理解することが重要だとし、この2週間という期間は若手選手が日本のプロクラブ環境を体験することにあるとし、MOUで規定された内容を実行することが、日本のプロクラブとの関係高地につながるものであると反論しています。


 

8月9日から10日のニュース:AFFU15選手権でマレーシアが優勝、クラブライセンス制度導入により問題のあるクラブは排除される(?)、不況と質の低下が観客減の原因、第二のハディ探しをヤクルトがサポート

AFFU15選手権でマレーシアが優勝
 タイのチョンブリで開催されていたアセアンサッカー連盟AFF U15選手権で、マレーシアは決勝でタイを2-1で破り、2013年以来2度目の優勝を飾っています。
 AFFのホームページによると、準決勝でベトナムを3−1で破ったマレーシアは、地元タイに1-0とリードを許して前半を折り返しました。後半に入るとタイ2名、マレーシア1名が退場となる荒れた試合になりましたが、69分にはMFムハマド・イズリン・イブラヒムが同点ゴールを、そして79分にはこの大会で5得点目となる決勝ゴールをMFムハマド・ナビル・カイユームが決めています。
 なお3位決定戦はインドネシアがベトナムをPK戦の末破っています。
決勝
マレーシア2-1タイ
3位決定戦
インドネシア0-0(PK3-2)ベトナム
(写真はマレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

クラブライセンス制度導入により問題のあるクラブは排除される(?)
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版によると、マレーシアサッカー協会FAMのダト・ハミディン・アミン会長は、2021年から完全施行されるクラブライセンス制度によって、橋梁未払いなどの問題を抱えるクラブが一掃されるだろうと語っています。
 マレーシアフットボールリーグMFLに加盟するすべてのクラブチームは2020年末までにクラブライセンスを獲得することが、2021年シーズン参加のための義務となるため、このライセンス申請の過程でFAMが経営状況を精査し、問題のあるクラブに対して厳しく対処できるとしています。
 この発言はプロ選手協会PFAMが12クラブが給料未払い問題を抱え、その総額が640万リンギ(約1億6300万円)であるという発表に対して行われたものですが、これに対してハミディン会長は、PFAMの発表はFAMが国内サッカーを運営する組織として期待外れであるという印象を与えるものであるとし、給料未払い問題を抱えているのはほんのわずかのクラブとしています。その上で、ライセンス制度導入後は健全系のクラブだけが存在することになるだろうとと述べています。
 ここからは私見ですが、MFLの1部と2部を合わせた12クラブのうち、11クラブ(PFAMが指摘したクラブの1つは3部に所属するマレーシア国軍クラブ)が未払い給料を抱えている現状を「ほんのわずかのクラブ」としてしまっている時点で問題の深刻さを果たして理解しているのだろうかという気がしてしまいます。ライセンス発給についてもマレーシア特有の「寛容さ」が発揮されて、厳格な適用がされるかどうかも正直疑問です。

不況と質の低下が観客減の原因
 現在開催中のマレーシアカップ で、リーグチャンピオンのJDTの試合にわずか6000名弱の観客しか集まらなかったことは先日、このブログでも取り上げましたが、この状況についてマレー語紙ウトゥサン・マレーシア電子版が、かつてマレーシアサッカー界で活躍したレジェンドのコメントを掲載しています。
 1980年のモスクワオリンピック出場権を獲得したマレーシア代表(但しマレーシアは、前年1979年12月に起こったソビエト連邦のアフガニスタン侵攻に対し、同じイスラム教国として抗議のためボイコット)でプレーしたDFダト・ジャマル・ナシル・イスマイル氏は、マレーシア国内経済の不況のため、ファンは自分が応援するチームのすべての試合のチケットを購入する金銭的な余裕がなくなっているのではないかと述べています。特に家族そろって観戦するような場合、観戦の際の飲食なども含めると必然的に観戦する試合を選ぶことになっているのではないかと分析しています。代表通算キャップ数165のジャマル氏は、現在はグループステージのマレーシアカップ がベスト16や準々決勝に進む辺りからは観戦者数も増えていくのではないかと述べています。
 その一方でケランタンFA、そしてオーストラリアでもプレーしたオマル・ダリ氏はマレーシアサッカーの質の低下を指摘しています。例えて言えば日本プロ野球界のご意見番張本勲氏のような存在であるオマル氏は、観戦したいと思わない人々に観戦を強制することは無理なので、そういった人々がスタジアムに足を運ぶようになるためには、まずマレーシアサッカーの質を上げる必要があると述べています。

第二のハディ探しをヤクルトがサポート
 マレー語紙コスモ!電子版によると、ヤクルトの現地法人ヤクルトマレーシアの濱田浩志代表取締役社長は、Jリーグのセレッゾ大阪によるアセアンドリームプロジェクトに参加するマレーシアU15代表選手5名の日本行きをサポートし、この中からハディ・ファイヤッドに続くJリーガー誕生を願っていると語っています。
 ハディ・ファイヤッドとは、昨年末にジョホール・ダルル・タクジムJDTからJ2のファジアーノ岡山に移籍したマレーシアU23代表でもプレーする19歳のFWです。
 濱田社長とドリームプロジェクトに参加するラジャ・ハイカル・ラジャ・ザハリ、ダニアル・ハイカル・シャイポル(FAMが国家サッカー選手養成プロジェクトを運営するモクター・ダハリアカデミー出身)、アフィク・ノリザン(マラッカ州スポーツ専門学校)、ファリズディン・アドハム・バッチャ(スランゴール州スポーツ専門学校)、アナス・ナダウィ・シャハルディン(スランゴール州バンダル・バル・バンギ中等学校)の5名は日本到着後、岡山にハディ選手を訪ねたと報じています。

8月7日のニュース:U15代表はAFF選手権準決勝進出、FAMやチームは選手会の発表に反論、デ・パウラは帰化選手として代表でプレーすることを希望

U15代表はAFF選手権準決勝進出
 タイのチョンブリで開催中のアセアンサッカー連盟AFFU15選手権で、マレーシアU15代表は、グループステージ最終戦でタイと1-1で引き分け、グループBの首位で準決勝へ進出を決めました。開幕から3試合連続の完封勝ちと好調だったマレーシアは、4試合目のラオス戦にも快勝して準決勝進出を決めるかと思いきや、80分を過ぎたアディショナルタイムに相手のオウンゴールで辛くも1-1の引き分け。しかも最終戦のタイ戦も同様にアディショナルタイムに相手のオウンゴールで2試合続けて1-1の引き分けでした。
 選手の資格問題なども含め、今大会台風の目となった東ティモールとの最終戦1-0で辛勝したベトナム(グループA2位)との準決勝に勝利すれば、もう1試合の準決勝インドネシア(グループA1位)対タイ(グループB2位)の勝者と決勝戦で対戦します。(以下はグループステージの結果-マレーシアサッカー協会FAMのFacebookより)

FAMやチームは選手会の発表に反論
 マレーシアフットボールリーグMFL所属の12クラブが総額およそ640万リンギ(約1億6300万円)の未払い給料を抱えていることをプロサッカー選手会PFAM(以下「選手会」)のイズハン・イスマイルCEOが行なった記者会見で明らかにしましたが、これに対して、マレーシアサッカー協会FAMや記者会見で具体的に名前を挙げらたクラブから反論が上がっていると、英字紙スター電子版が伝えています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長はの発表は不正確であり、かつ職業倫理に反するものであると非難しています。ラマリンガム事務局長は反論の中で、ヌグリ・スンビランFAについては、係争中の未払い給料問題はFAM、国際サッカー連盟FIFAのいずれにも報告されていないとし、パハンFAについては同様の問題がFIFAに報告されていたもののの既に解決済みであるとしています。また、マラッカ・ユナイテッドは1件の給料未払い問題がFAMに、2件がFIFAに報告されているもののの資格委員会の最終的な判断を待っており、プルリスFAやケランタンFAは新たな経営陣が経営状況を安定させるために努力をしている状況下で、選手会による発表は問題解決の役に立たないどころか、状況を悪化させかねないと選手会を非難すらする逆ギレに近いコメントを出しています。
 さらに既に解散したクラブに関してはFAMの管轄外であると責任放棄の発言し、個々の選手に訴訟を起こすように促しています。
 また選手会に名前を挙げて非難されたヌグリ・スンビランFAのサトワント・シン事務局長は、先月末には未払い給料問題は解決したとし、選手会の発表を無責任な発表であると非難しています。
 とは言え、そもそもプロ選手に対して給料未払い問題が存在すること自体が問題であり、たかだか数週間前にやっと解決したくらいで選手会に謝罪を要求する州サッカー協会の姿勢や、そういった状態をこれまで放置してきながら、選手会との関係断絶をちらつかせるFAMの危機感のなさこそが、この問題の根源のように思えます。選手会のイズハンCEOの「選手は奴隷ではない。」という言葉の重みをどれだけのFAMやMFL、そして国内クラブの経営者が理解しているかは疑問です。

デ・パウラは帰化選手として代表でプレーすることを希望
 クアラ・ルンプール(KL)FAでプレーするブラジル出身のFWギリェルメ・デ・パウラは、マラッカ・ユナイテッドのコソボ出身MFリリドン・クラシニキとともに帰化選手としてマレーシア代表でプレーできるよう、FAMがマレーシア市民権取得申請書類を内務省に提出した最終候補です。
 マレー語紙ウトゥサン・マレーシア電子版の記事で、このデ・パウラ選手は今年9月から始まるFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選までに帰化申請が完了し、代表に招集されることがあれば、最高のパフォーマンスを見せたいと語っています。母国ブラジルでは代表経験のない33歳のデ・パウラ選手は、マレーシア人となってマレーシア代表としてプレーすることができれば名誉なことだと語り、その可能性を与えてくれたFAMに感謝するとともに、代表のユニフォームを着られるように努力したいと述べています。
 今年11月31日にKLFAとの契約が切れるデ・パウロ選手について、FAMの帰化プログラム委員会のダト・モハマド・ユソフ・マハディ委員長は、デ・パウロ選手とクラシニキ選手は、まず市民権付与に値する選手であることを証明する必要があり、さらに帰化申請中のフィットネスレベルと試合でのパフォーマンスが代表招集の際の参考になるだろうと述べています。

7月23日から24日のニュース:FAカップ決勝は日本人審判団が担当、マレーシアの富豪がMLSチームの株を売却、ペナン州サッカー協会がCASに仲裁を求める、U15代表がAFF U15選手権へ向けて調子を上げる

FAカップ決勝は日本人審判団が担当
 当地の英字紙スター電子版は、7月27日(土)に開催されるマレーシアFAカップの決勝戦ペラTBG対クダFAの試合は日本人審判団が担当すると伝えています。
 マレーシア人審判に対しての国内の評価は低く、また昨年のもう一つのカップ戦マレーシアカップでは、プレーした選手ではなく審判の判定で注目を浴びたこともあり、外国人審判の採用が噂されてきました。
 FAカップを主催するマレーシアフットボールリーグMFLのケヴィン・ラマリンガムCEOによると、マレーシアサッカー協会FAMとパートナーシップ協定を締結している日本サッカー協会JFAが選抜する審判団は主審1名、副審2名の計3名で構成され、マレーシア人の第4審判がこのチームに加わることを記者会見で明らかにしています。

マレーシアの富豪がMLSチームの株を売却
 マレーシアで不動産から旅行業やホテル経営、セブンイレブンやスターバックスなどの国内フランチャイズ権を持つ企業体ブルジャヤグループの創業者のタン・スリ・ヴィンセント・タン氏がメジャーサッカーリーグMSLのロスアンゼルスFC(LAFC)の株式20%の売却を検討していると、英字紙スター電子版が報じています。
 記事によれば、この株式売却は、タン氏がいずれもオーナーを務めるイングランドフットボールリーグEFLチャンピオンシップ(イングランドプレミアリーグEPLの一つ下のリーグ)のカーディフ・シティFCとベルギー1部リーグのKVコルトレイクの経営に注力するためだとしています。特にタン氏が愛するカーディフ・シティFCはわずか1年でEPLからEFLチャンピオンシップへ降格となったため、LAFCの株式売却で得られる1億米ドルとも1億5000万米ドルとも言われる資金が、カーディフ・シティFCのEPL復帰に向けて使われるだろうとしています。

ペナン州サッカー協会がCASに仲裁を求める
 英字紙スター電子版は、国際サッカー連盟FIFAの裁定によりMFL2部プレミアリーグでの勝点6を剥奪(はくだつ)され、その結果、1部スーパーリーグへの昇格の機会を失ったペナンFAパンサーズを運営するペナン州サッカー協会FAPは、スポーツ仲裁裁判所CASに対してFIFAの裁定に対する不服申し立てを行なったと報じています。
 記者会見の席でFAPのアマル・プリトパル・アブドラ会長は、過去の経営陣による失態によって、今シーズンのリーグ戦での勝点剥奪というFIFAの処分には失望しているとし、アマル会長以下新経営陣は、勝点6剥奪処分が撤回されれば、その代償として罰金を支払う用意があるとしています。
 この記者会見には、ペナン州政府青年スポーツ委員会のスン・リップチー会長も同席し、ペナン州政府が毎年、500万リンギ(約1億3000万円)以上をペナンFAパンサーズに提供してチームを強化してきているとし、選手とコーチ陣の努力の結果である1部昇格が実現することを強く希望していると述べています。

U15代表がAFF U15選手権へ向けて調子を上げる
 タイのチョンブリで開催される東南アジアサッカー連盟AFF U15選手権に出場するマレーシアU15代表が、中国で開催された国際大会で優勝し、好調を維持してタイに出発できそうだと、英字紙スター電子版が伝えています。
 中国のの海口(ハイコウ)で開催され、イラン、中国、北朝鮮が参加して総当たり方式で行われた大会で、マレーシアはイランに2-0で勝利中国とは1-1で引き分け、最終戦の北朝鮮には2-1で勝利し、優勝を果たしています。
 7月27日から8月9日までの期間で開催されるAFF U15選手権で、マニアム・パチャイアパン監督が率いるマレーシアU15代表は、開催国タイ、ラオス、カンボジア、ブルネイ、オーストラリアとともにグループBに入っています。
 なおこのU15代表のメンバーはこちらです。

7月17日から21日のニュース:2022年WCアジア予選でマレーシアは「アセアン組」に、サラリーキャップ導入にFAMは否定的、JDTにドイツ出身のティーンエイジャーが加入

2022年WCアジア予選でマレーシアは「アセアン組」に
 アジアサッカー連盟AFC本部のあるクアラ・ルンプールで国際サッカー連盟FIFAワールドカップWC2022年カタール大会兼2023年AFC選手権のアジア二次予選の組み合わせ抽選が行われ、一次予選を勝ち上がったマレーシア(FIFAランキング159位)は予選G組となり、アラブ首長国連邦UAE(同67位)、ベトナム(同96位)、西野朗監督が就任したタイ(同116位)、インドネシア(同160位)と同じ組になりました。この組はUAEを除けば、他の相手は全てマレーシアも属する東南アジア諸国連合ASEANアセアン域内の国々です。
 マレーシアサッカー協会FAMは2018年10月に、「2030年までにアジアのトップ5入りを目指す」ことを目的とするF:30行動計画を立ち上げており、これを実現するためには今回のWC予選で対戦する域内の国々がその前に立ちはだかることは明らかで、そう行った国々との対戦がどのような結果になるのかが楽しみです。

サラリーキャップ導入にFAMは否定的
給料の高騰により、その未払い問題が散見するマレーシアフットボールリーグについて、FAMのダト・ハミディン・アミン会長は、 各チームが選手の給与として使用できる最大の金額を、規定するサラリーキャップ制度の導入に否定的であると英字紙ニューストレイトタイムズが伝えています。
 サラリーキャップ制度は 選手の年俸の高騰を抑え、全チームが平等な条件で争うことを目的としていますが、この記事の中でハミディン会長は給料未払い問題を解消する役には立たないだろうと述べています。
 サラリーキャップ制度は、MFLではなくFAMがマレーシアのプロリーグを運営していた際に導入されたことがありましたが、結果として二重契約問題を引き起こした前歴があります。二重契約とは、選手とクラブが交わしFAMが承認した契約書とは別に、サラリーキャップで規定された給料の上限を超える金額でもう一つの契約書でも契約を交わし、こちらはFAMに提出しないというものです。
 これについてFAMは、自らが承認した契約書のみが有効という立場を主張する一方で、二重契約については見て見ぬ振りをした結果、二重契約で約束された給料を支払えないクラブがある一方で、その契約内容が不履行であっても監督、コーチ、選手がFAMに訴えることができないという状況を起こしてしまいました。
 この前例を踏まえ、ハミディン会長はスペインのラ・リーガを模してMFLが導入を検討している各クラブごとの年間収入に基づく出費制限制度の方が、給料未払い問題対策としてより有効であると考えていると述べています。

JDTにドイツ出身のティーンエイジャーが加入
 MFL1部スーパーリーグで6シーズン連続優勝を果たしたジョホール・ダルル・タクジムJDTは、マレーシア人の母親とドイツ人の父親を持つ16歳のDFジュリアン・ヨハン・ベックラーと契約したことをFacebookで発表しています。ドイツリーグ6部のロット・ワイス・フランクフルトのU17チームでプレーしているジュリアン選手は、母親がマレーシア人であることからマレーシア代表としてプレーする資格があり、先月退任したU19代表のボジャン・ホダック前監督がマレーシアU19の代表候補合宿にも招集したことがありますが、その際にはマレーシア人が持っている身分証明証の発行が間に合わず、U19代表入りができませんでした。
 今回、マレーシアの市民権を取得するために必要な書類を提出したジュリアン選手は、JDTとの契約後は、JDTのU21チームに当たるJDT IIIに所属することになっているようです。(写真はJDTのFacebookより)

JDTといえば、今シーズン最終節第22節、ホームでのトレンガヌFC戦の会場を無料開放しました。さすが太っ腹なJDTですね。(写真は入場無料と優勝の表彰式が行われることを告知するJDTのFacebookポスト)