12月12日のニュース 「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利-代表初招集の帰化選手が2ゴールと躍動

今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けて、出場各チームとも練習試合を精力的に行なっています。昨日12月11日には、三菱電機カップのグループステージでマレーシアと同じB組のミャンマーがタイに0-6で敗れ、ラオスがタイU23代表に1-0で勝利、また西ヶ谷隆之監督率いるシンガポールは12月1日から日本で合宿を行なっており、昨日は流通経大と、その前にはJ3のYSCC横浜とも練習試合を行っています。そしてB組で最も強いベトナムも11月30日には東南アジア遠征中のボルシア・ドルトムントに2-1で勝利するなど、「東南アジアのワールドカップ」に向けて着々と準備を進めています。

「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利

そんな中、マレーシアは12月9日にカンボジアと練習試合で対戦しました。AFF選手権はFIFAの酷愛マッチカレンダー期間外ということもあり、今季国内リーグ9連覇を果たし、さらに2つのカップ戦でも優勝して国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムJDTからはケガや家庭の事情などを理由に代表主力選手9名が招集を辞退しており、今季ここまで9試合を戦ってきた代表とは選手の顔ぶれも大きく変わっています。

この日の先発XIはGKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、クザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、アザム・アズミ(トレンガヌ)が3バックを構成し、中盤はF V・ルヴェンティラン(PJシティ)、スチュアート・ウィルキン(サバ)、デヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)の4選手、そして前線がファイサル・ハリム(トレンガヌ)、ダレン・ロック(サバ)、リー・タック(スリ・パハン)という布陣でした。

この日は試合前からの雨でピッチの一部にも水が浮くコンディションながら、それにうまく対応したマレーシアが、キャプテンマークをつけて先発したファイサル・ハリムが11分に先制ゴールを決めて先制します。38分には英国生まれながら今年、マレーシア国籍を取得し、今回初めて代表に選出されたリー・タックがデビュー戦で代表初ゴールを決めて2-0、さらに前半終了間際にはファイサル・ハリムがこの試合2得点目となるゴールを決めて、前半を3-0で折り返します。後半には、やはり代表初招集となったMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が86分に4点目を決めて、FIFAランキング146位のマレーシア代表が廣瀬龍監督率いる同177位のカンボジアに勝利しています。

マレーシアは12月14日にモルジブ代表との練習試合を行った後、12月21日にはAFF選手権グループステージ初戦となるアウェイのミャンマー戦に臨みます。

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前述の通り、JDTの主力が招集を辞退した今回の代表チームでは、本来なら出場機会を得られない多くの選手にチャンスが巡ってきています。これまで代表に召集されながらも、ポジション的な問題もあり出場機会に恵まれなかったカラムラー・アル=ハフィズは初先発を果たした他、スチュアート・ウィルキン、デヴィッド・ローリー、シャミー・イスズアン、リー・タックが代表初招集初先発を果たし、途中出場の18歳MFアリフ・イズワン(トレンガヌ)、アルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、この試合では7名の選手が代表デビューを果たしています。

そんな中、注目を集めているのは34歳のリー・タックと26歳のエセキエル・アグエロの両選手です。いずれもMリーグで5年間プレーし、FIFAの帰化選手登録要件を満たしたことから、今年9月にマレーシア国籍を取得しています。この国籍取得までの期間は、所属するスリ・パハンが既にMリーグで規定される上限となる5名の外国籍選手を登録していたため、2月から11月まで行われたリーグ戦は出場できなかった両選手ですが、マレーシア国籍を取得したことで、マレーシアカップからは国内選手として登録されると、キム・パンゴン監督が早速、代表に招集しています。

現在、マレーシアにはタック、アグエロ選手を含めて5名の帰化選手がいます。ガンビア出身のモハマドゥ・スマレ、ブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ、コソボ出身のリリドン・クラスニキの3選手は、いずれも所属するJDTでは先発ポジションを獲得できておらず、特にマレーシアフットボール協会FAMが代表チーム強化を目的として帰化支援プログラムを経てマレーシア国籍を取得したデ・パウラ、クラスニキ両選手は代表どころか、所属するJDTのトップチームでも出場機会が得られていません。このことから、代表チームに貢献できない選手の帰化支援には非難の声が上がり、FAMは昨年8月に帰化支援プログラムを一時中断することを発表しています。

しかし、その一方でFAMはMリーグ各クラブが独自に帰化支援を行うことは禁止せず、その結果が今回のタック、アグエロ両代表選手の誕生につながっています。この他、KLシティはコロンビア出身のFWロメル・モラレスとブラジル出身のMFパウロ・ジョズエを、またJDTはブラジル出身で今季はペナンでプレーしたMFエンドリックの帰化支援を行うとしています。この他、マレーシア人の父母あるいは祖父母を持つことで帰化している「ハイブリッド帰化選手」も増えており、この日のカンボジア戦では、オーストラリア出身のデヴィッド・ローリー、いずれも英国出身のスチュアート・ウィルキンとダレン・ロックが先発、ベンチにもブレンダン・ガン、クェンティン・チェン(いずれもセランゴール)、ドミニク・タン(サバ)らがこのハイブリッド帰化選手です。Mリーグまで目を広げれば、このハイブリッド帰化選手はまだまだいるので、将来はマレーシア出身ではないマレーシア人選手によるマレーシア代表チームができるかも知れません。

2022年12月9日
国際親善試合@ブキ・ジャリル国立競技場
マレーシア 4-0 カンボジア
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム2(11分、45分)、リー・タック(38分)、スチュアート・ウィルキン(86分)

下はこの試合のハイライト映像。上の英語版はマレーシアサッカー協会FAM公式YouTubeチャンネルより。下のマレーシア語版はアストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより

12月8日のニュース
クダ新監督にナフジ・ザイン前トレンガヌ監督が就任
来季スーパーリーグ不参加のサラワク・ユナイテッドが3部リーグ加入を申請
体調不良のファイズ・ナシルに代わってU23代表のアリフ・イズワンがA代表合宿に合流

クダ新監督にナフジ・ザイン前トレンガヌ監督が就任

Mリーグ1部スーパーリーグで今季8位に終わったクダ・ダルル・アマンFCは、クラブ公式SNSでナフジ・ザイン前トレンガヌ監督の就任を発表しています。契約期間は2年ということです。

2020年からトレンガヌFCの指揮を取り、今季はチームをリーグ2位、FAカップ準優勝、マレーシアカップベスト4の好成績に導いたナフジ氏でしたが、クラブ運営陣への不信感からオファーされた1年の契約延長を拒否し、契約満了に伴い退団していました。

シンガポール出身のアイディル・シャリン監督の元、2020年、2021年シーズンはいずれも優勝したジョホール・ダルル・タジムJDTに次ぐ2位となったクダは、今季開幕前にMFバドロル・バクティアル、DFリザル・ガザリ(いずれもサバFCへ移籍)ら代表選手が移籍し、FWクパー・シャーマン、FWチェチェ・キプレ(いずれもトレンガヌFCへ移籍)など外国籍選手を全員入れ替えた結果、8位に低迷、リーグ戦終了と同時にアイディル監督は退団していました。

またクダは、今季終了後にはやはり外国籍選手5名全員が契約満了で退団した他、トップチームの12名の選手と契約を更新せず、さらに来季はトップチームの登録を30名から25名に縮小するなど、2季連続でチームの大幅刷新を図ろうとしています。

2007年から2009年までは選手としてクダでプレーし、2007年の国内三冠(スーパーリーグ優勝、FAカップ優勝、マレーシアカップ優勝)も経験しているナフジ新監督は、かつての栄光を取り戻すことは容易ではないとしながらも、地元のクダ州出身の若い選手を成長させて、より強いチームを作りたいと入団会見で話しています。

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大幅にメンバーが変わるクダには、PJシティの正GKで、現在開催中の代表候補合宿にも招集されているカラムラー・アル=ハフィズの加入が発表された他、今季トレンガヌでナフジ監督の元でプレーしたMFマヌエル・オット(フィリピン)も加わるのではと言う噂も出ています。その一方でクダと契約を更新した選手たちはトップチームの経験が少ない若手が中心で、育成に定評があるナフジ監督の手腕が問われる2年となりそうです。

来季スーパーリーグ不参加のサラワク・ユナイテッドが3部リーグ加入を申請

今季、Mリーグ1部スーパーリーグで11位に終わったサラワク・ユナイテッドFCは、選手に対する給料未払いが理由で、来季のMリーグ1部スーパーリーグ参加のための国内クラブライセンスが交付さなませんでした。このサラワク・ユナイテッドが来季はMリーグ3部でセミプロリーグのM3リーグ参加の申請を行ったと、東マレーシア(サバ・サラワク)のサッカーの話題を中心に取り上げているサッカー専門サイトのサラワク・クロックスが報じています。

サラワク・ユナイテッドは、かつて在籍した外国籍選手への15万マレーシアリンギ(およそ4700万円)の給料未払いが滞り、選手がFIFAの紛争解決室に持ち込んだ結果、今後3回のトランスファーウィンドウ期間中の新規選手獲得禁止処分を受けるなど、運営に多くの問題を抱えてい多クラブでした。

M3リーグを運営するアマチュアフットボールリーグAFLのライミ・フィクリCEOは、サラワク・ユナイテッドからの来季のM3リーグ参加申請を受け取ったことを明らかにする一方で、この申請がM3リーグ参加を確約するものではなく、運営資金などに関する資料の提出を受け、その内容を審査した上で参加の可否を決定するとしています。

またライミCEOはこのサラワク・ユナイテッドの他に、今季スーパーリーグでプレーしながら、やはり給料未払いが理由で国内クラブライセンスが不交付となったマラッカ・ユナイテッドFC、そしてマラッカ州サッカー協会が新たに設立したマラッカFCの3クラブからM3リーグ参加申請が提出されていることを明らかにしています。

サラワク・ユナイテッドを加えると計15チームから出されているM3リーグ参加申請内容の審査は既に80%ほどは終了していると述べたライミCEOは、数週間以内には、来季のM3リーグ参加クラブが決定し、これを発表できるだろうと述べています。

体調不良のファイズ・ナシルに代わってU23代表のアリフ・イズワンがA代表合宿に合流

マレーシアサッカー協会FAMは公式SNSで、A代表候補合宿に参加中のMFファイズ・ナシル(トレンガヌFC)が体調不良のため合宿を離脱し、代わりに12月6日に終了したU23代表合宿に参加していた18歳のFWアリフ・イズワン(スランゴール2)がA代表合宿に参加することを発表しています。

FAMの発表によりと、11月30日と12月1日に行われたA代表とU23代表の合同練習、そして12月2日に行われたA代表対U23代表の練習試合でのアリフ選手のプレーぶりがキム・パンゴンA代表監督の目に止まったと言うことです。またこのアリフ選手については、現在U23代表の監督を務める一方で、A代表でもコーチを務めるE・エラヴァラサン監督からもA代表候補合宿への参加が提案されていたと言うことです。

このアリフ選手は、やはりU23代表合宿にも参加していたGKラーデイアズリ・ラハリム(トレンガヌ)とともにA代表合宿にし、さらにチェコ1部のFKヤブロネツでプレーするDFディオン・コールズが12月16日に合流することで、28名全員が揃うことになります。A代表はAFF選手権前にカンボジア代表戦(12月9日)、モルディブ代表(12月14日)と2試合の練習試合を行い、そこから最終メンバー23名が決定します。

12月5日のニュース
JDTのサファウィ・ラシドがタイ1部ラーチャブリーFCへ移籍
トレンガヌは過去3季マラッカでプレーしたFWソニー・ノルデを獲得
苦しい時の神頼みならぬTMJ頼み-5ヶ月分給料未払いのマラッカ・ユナイテッドの選手がジョホールオーナーに助けを求める

サファウィ・ラシドのタイリーグ移籍は驚くようなニュースですが、マレーシアリーグは今季が終了したばかり。選手の移籍はむしろこれからが本格化しますので、まだまだ驚くようなニュースが出てくる可能性もあります。

JDTのサファウィ・ラシドがタイ1部ラーチャブリーFCへ移籍

Mリーグ1部スーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムJDTは、クラブ公式SNSでFWサファウィ・ラシドがタイ1部のラーチャブリーFCへ期限付き移籍することを発表しています。

マレーシアカップ優勝監督から転身したエクトル・ビドリオ テクニカル・ディレクター名で発表されたこの移籍は、サファウィ選手が現在、東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ出場の代表候補となっていることから、新チームへの合流はこのAFF選手権終了後となるということです。また同じ発表の中でJDTはマリ出身のFWムサ・シディベも同時にラーチャブリーFCへ期限付き移籍することも発表しています。

このJDTによる発表の前には、ラーチャブリーFCの会長がサファウィ選手の獲得がクラブ間で合意に至ったことをフライング気味に表明しており、JDTがこれを後追いする形で発表されています。

現在25歳のサファウィ選手は、2017年に当時のT-Team FC、現在のトレンガヌFC IIからJDTに移籍し、2018年には21歳で当時最年少のリーグMVPに選ばれると、翌年も連続してこの賞を受賞、また先日、このブログでも取り上げた2018年アジア競技大会でも、5得点を挙げるなど、クラブだけでなくマレーシアサッカーを牽引する存在となることが期待されていました。

2018年にはリーグ戦21試合出場で6ゴール、2019年も21試合出場で8ゴール、また新型コロナの影響でシーズンが11試合に短縮された2020年は7試合で7ゴールと活躍したサファウィ選手は、2021年にはポルトガル1部のポルティモネンセへ期限付き移籍しました。しかしトップチームでは出場機会を得られなかっただけでなく、U23チームでもわずか2試合に出場したのみで、1年も経たずにJDTに復帰しています。しかし2021年には同じポジションに彗星のように現れた当時19歳のFWアリフ・アイマンにポジションを奪われ、2021年は16試合、今季2022年は13試合と出場機会が減り、先発では途中出場が多くなり、完全にチームの主力ではなくなっています。

現在、AFF選手権に向けて合宿中のA代表でも、JDTの主力がケガや家庭の事情などの理由から今回の招集を辞退して休養に努める一方で、サファウィ選手が合宿に参加しているのは、疲れがたまるほど試合に出場していないことも意味しています。

かつての輝くを失ったとは言え、25歳のサファウィ選手はここで終わってしまう選手ではありません。移籍先のラーチャブリーFCは、現在リーグ3位とは言え、上位5チームの中では得点数が最低の21点と得点力の補強が必要なチーム。左足からの振り幅の短い強烈なシュートもあれば、ACLでも見せた右サイドからの美しいカーブをかけたシュートも打てるサファウィ選手は、出場機会があれば、必ず結果を残せるはず。この移籍が転期となること期待したいです。

トレンガヌは過去3季マラッカでプレーしたFWソニー・ノルデを獲得

今季スーパーリーグ2位に終わったトレンガヌFCは、数日前にトミスラフ・スタインブリュックナー新新監督の就任を発表しましたが、今度は新たな外国籍選手としてハイチ出身のストライカー、ソニー・ノルデの獲得を発表しています。

33歳のノルデ選手とは1年契約を結び、背番号が11となることも併せて発表されています。19歳でボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)と契約してプロ選手生活をスタートしたノルデ選手は、アトレティコ・サンルイス、アルタミラFC(いずれもメキシコ)でプレーした後、シェイク・ラッセルKC、シェイク・ジャマル・ダンモンディSJDクラブ(いずれもバングラディシュ)、ATKモフン・バガンFC、ムンバイ・シティFC(いずれもインド)、ジラFK(アゼルバイジャン)を経て、2020年から今季までスーパーリーグのマラッカ・ユナイテッドFCでプレーしています。

マラッカでは今季17試合に出場し、4ゴール、5アシストを記録している33歳のノルデ選手とトレンガヌの契約期間は1年、また背番号が11となることも併せて発表されています。

苦しい時の神頼みならぬTMJ頼み-5ヶ月分給料未払いのマラッカ・ユナイテッドの選手がジョホールオーナーに助けを求める

今季スーパーリーグで10位に終わったマラッカ・ユナイテッドFCは、選手への給料未払いが理由で来季のクラブライセンスが発給されず、スーパーリーグからの撤退を余儀なくされています。その後、来季はセミプロリーグの3部、M3リーグに参戦することが発表されていますが、給料未払い問題が未だ解決していないことが明らかになっています。

サッカー専門サイトのスムアニャボラによると、給料の未払いは既に終了した2022年シーズンの5ヶ月分あり、その支払いに進展がないことから、一部の選手がソーシャルメディア上で同じスーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムのトゥンク・イスマイル殿下に助けを求める投稿をしているということです。

ジョホール州皇太子でもあるイスマイル殿下は、これまでも同様の問題を起こすクラブに対して厳しい批判を行なった結果、クラブが重い腰を上げる、といったケースがあり、マラッカの選手もこれを期待して、部外者のイスマイル殿下に異例の懇願を行なったとみられています。

自身のインスタグラムに投稿したのはワン・ザハルニザム、シュクリ・バハルン、ハスブラ・バカル他数名の選手で、マラッカ前オーナーのジャスティン・リム氏、そして前マラッカ州サッカー協会のスライマン・モハマド・アリ氏の両氏とも選手からの問い合わせに無視を決め込んでいることから、イスマイル殿下に仲裁を求めています。プロ意識に欠けるクラブには容赦ないイスマイル殿下が仲裁に入ることで、これまで沈黙を守っている旧経営陣も何らかの行動をせざるを得なくなる、とSNSに投稿した選手たちは考えているようです。

来季のクラブライセンスが発給されなかったマラッカ・ユナイテッドFCは、オーナーだったリム氏が所有する株式を売却して辞任し、それに合わせるようにマラッカ州首相でもあるスライマン会長も辞任しており、クラブ名も新たにマラッカFCとするなど組織一新を図ることが発表されています。州サッカー協会の新会長に就任したヌル・アズミ・アフマド氏は、就任の際にはこの給料未払い問題解決に取り組むことを約束しましたが、実際には何も解決していないことが今回の一件で明らかになりました。


12月3日のニュース
AFF選手権出場の代表候補から11名辞退のジョホールオーナーがAFF選手権不要論

Mリーグ1部スーパーリーグ、ジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下は「物言うオーナー」としても知られていますが、このイスマイル殿下が東南アジアサッカー連盟AFF選手権は「気を散らすもの」だとして、その必要性に疑問を投げかけています。

キム代表監督の選手招集拒否批判に反論

ことの発端は先月11月29日から始まっている代表候補合宿で当初、招集予定だった41名中、JDTから11名の辞退者が出たことでした。今月末に開幕するAFF選手権三菱電機カップは、FIFAの国際マッチカレンダー期間外ということもあり、各クラブは選手招集を拒否できることから、これ自体には何も問題はありませんが、これを受けてキム・パンゴン監督は「自身の監督経験の中で、これほど多くの主力選手が代表招集を拒否したのは初めてだ。」と暗に選手招集を拒否したクラブを批判する発言を行い、これに反応したのがイスマイル殿下でした。

イスマイル殿下は自身のインスタグラムに「選手は動き続ける機械ではなく、シーズン終了後には休養も必要だ。」と投稿し、代表招集辞退の正当性を説明しています。「Mリーグの選手たちは1月から練習と試合を続けてきている。しかもリーグ中断期間には代表合宿が繰り返し行われ、代表選手は全く休養を取ることができない。近隣諸国は試合があれば、その前の1週間に代表合宿を行なっているが、マレーシアは3週間選手を拘束する政界でも類がない長期の代表候補合宿を行う国である。」と代表合宿の方式を批判したイスマイル殿下は、かえす刀でAFF選手権にも言及しています。

AFF選手権重視は大局的見地の欠如

「AFF選手権はMリーグの選手と年間スケジュールをめちゃくちゃにするものものである。今回の大会は決勝が来年の1月15日に予定されているが、(春秋制を採用するMリーグの)各クラブは例年1月から練習を開始する。これで選手にいつ休養を取れと言うのか。」

イスマイル殿下の舌鋒はさらにキム監督にも向けられます。「代表チームの監督は何の考慮もせず、他人の持ち物を借りているだけの存在である。選手に投資し、給料を支払っているのは全てクラブである。その点を無視してクラブを批判するという姿勢はいかがなものか。」

「代表選手たちは(最終予選を突破し)アジアカップ2023年大会の出場権を獲得するなど、既にその義務を果たしている。世界の誰も注目しないAFF選手権にそれほど注力する必要は果たしてあるのか。マレーシアサッカーが成功するためにはもっと大局的に考える必要がある。」と述べています。

代表合宿初日の参加者は30名中17名

最終メンバー30名が発表された今回の代表候補合宿初日は、17名が参加したのみでした。なお11月26日に行われたマレーシアカップ決勝に出場したJDTの2選手とスランゴールの7選手は12月5日から参加することが発表されています。またU23代表候補にもなっているラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)は12月6日に終わるU23代表候補合宿終了後に、またチェコ1部のFKヤブロネツでプレーするディオン・クールズ12月16日日にそれぞれ合流する予定です。

しかし、その後の報道で初日に参加した17名のうち、KLシティのDFデクラン・ランバートとMFアクラム・マヒナンも「個人的な事情」を理由に今回の合宿参加辞退を表明し、最終メンバーは結局、28名になっています。なおKLシティは今季AFCカップに出場し、9試合をアジア各地で戦っています。

強者ゆえに試合数が多くなるJDT

辞退した11名を含め、合計13名が今回の合宿に招集されたJDTは、リーグ戦22試合、いずれも優勝したFAカップとマレーシアカップではそれぞれ5試合と7試合、さらにACLではグループステージ4試合、ノックアウトステージ1試合とクラブとして今季39試合の公式戦を戦っています。さらに先日行われたインドネシア1部プルシス・ソロや、ドイツ1部ボルシア・ドルトムントとの親善試合や、開幕前に行なったMŠKジリナ(スロバキア1部)、スパルタ・モスクワ(ロシア1部)などとの合計6試合のプレシーズンマッチなども合わせれば2022年はクラブとして45試合こなしたことになります。

しかもJDTの選手の多くが代表でも主力選手として、3月にシンガポールで開かれたフィリピンとの3カ国対抗、アジアカップ2023年大会予選など今年の代表戦7試合にも出場しています。もちろん全員が全ての試合に出場しているわけではないですが、1年間にこれだけの試合をプレーした選手を、優勝しても東南アジアでの評価以上のものは得られないAFF選手権に出すよりは、来季のリーグ10連覇やACLのベスト8入などの目標のために十分に休養させたい、とイスマイル殿下が考えるのは理解できなくもありません。しかも来季はアジアカップがあり、年間日程は今季よりもさらに密になることも予想され上、アジアカップではまた選手がほぼクラブごと代表に招集されてしまうJDTにとっては、12月しか選手を休ませられる期間がないということです。.

なお、マレーシア代表は12月9日のカンボジア、そして12月14日のモルジブとの親善試合後に23名の最終メンバーが決定し、FIFAワールドカップカタール大会決勝の3日後、12月21日に開幕するAFF選手権三菱電機カップでは、初戦となるミャンマー戦(ヤンゴン)に臨みます。



12月2日のニュース
Mリーグクラブが来季に向けて次々と新監督就任や選手獲得を発表

スペイン戦勝利おめでとうございます。W杯とは縁がないマレーシアサッカーは、月が変わった昨日12月1日には、多くのクラブが来季へ向けての補強を公表しています。

JDTはエステバン・ソラリ新監督の就任を発表

今季、スーパーリーグ、FAカップ、マレーシアカップの国内三冠を達成したMリーグ1部のジョホール・ダルル・タジムJDTは、クラブ公式ソーシャルメディアで、エクトル・ビドリオ監督のテクニカルディレクター就任とエステバン・ソラリ新監督の就任を発表しています。

ベネズエラ出身で54歳のビドリオ監督に代わって、来季から指揮を取るソラリ監督はアルゼンチン出身の42歳で、2019年1月からアルゼンチンU23代表のコーチを務めており、今月末まで契約が残っており、この任期を終えての就任となるようです。

ソラリ新監督就任を発表したJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下は、以前からこのソラリ氏を高く評価しており、アルゼンチン代表のユースやCAリーベル・プレート(アルゼンチン)などからもオファーを受けていた中、なんとか説得してJDTが獲得できたと、クラブの公式Facebookに投稿されたインタビューで説明しています。

ソラリ新監督就任に伴い、今季、クラブをマレーシアカップ優勝に導いたエクトル・ビドリオ監督はクラブのテクニカルディレクターに、そして今季までテクニカルディレクターを務めていたオーストラリア出身のアリスター・エドワーズはクラブCEOにそれぞれ就任することも発表されています。

2013年のクラブ創設以来、史上初の国内三冠に輝いたJDTですが、このソラリ新監督の就任以外にも、シーズン途中にケガで離脱したシェーン・ローリーに代わりに、セカンドチームから急遽起用された22歳のセンターバック、フェロズ・バハルディン、今季2部プレミアリーグでリーグ2位の9ゴールを挙げた20歳のFWダリル・シャムらのトップチーム昇格を発表したイスマイル殿下は、来季からスーパーリーグの外国籍選手枠が9名(ただしベンチ入り6名、ピッチ上5名)となることから、そして新たなブラジル人ストライカーや東南アジア枠での攻撃的MFとDFの獲得など、既に来季に向けての準備が着々と進んでいることも明らかにしています。

ナフジ・ザイン監督退任のトレンガヌはテクニカルディレクターのトミスラフ・スタインブリュックナー新監督就任を発表

トレンガヌFCは、今季、テクニカル・ディレクターを務めたトミスラフ・スタインブリュックナー氏が来季の新監督に就任することを、クラブ公式Facebookで発表しています。スタインブリュックナー氏はクロアチア出身の56歳で、2015年にもトレンガヌ州のサッカークラブで監督を務めており、いわばトレンガヌのサッカーを熟知した人物でもあります。

今季までの過去4シーズンを指揮し、7位、3位、4位、2位と順調にチームを作り上げてきたナフジ・ザイン監督が、クラブ経営陣の対応に不満を表明し、提示されていた来季の契約延長オファーを拒否して監督不在となったトレンガヌですが、その対応は早かった。(というか既定路線だった?)

ナフジ監督に次ぐ、来季の監督候補だったとされるスタインブリュックナー氏は、2015年に当時のT-TeamFC(現トレンガヌII)の監督に就任すると、2014年のMリーグ1部スーパーリーグで11位となり、2部プレミアリーグに降格したチームを率いてプレミアリーグで3位となっており、この時にはサファウィ・ラシド(現JDT)、ノルハキム・ハサン(原スランゴール)らを指導し、その後は自身もプレーしたクロアチア1部リーグのNKオシエクのU17やU19など、クロアチアのクラブで監督を務めたのち、今季からトレンガヌFCのテクニカルディレクターを務めていました。

すタインブリュックナー監督の契約は、昨日12月1日から来年11月30日までに1年であることも発表されています。

サバは代表FWダレン・ロックらの加入を発表

今季のMリーグ1部スーパーリーグでJDTに次ぐ2位に付けながら、最終節に敗れて3位に終わったサバFC。JDTには得点数で25点差をつけられ、リーグ全体でも4位と、優勝を狙うには攻撃力が課題となったシーズンでした。スーパーリーグでのチーム最多ゴールはDF登録のパク・タエスーの8点とストライカー不在に苦しんだサバでしたが、これまで噂に上がっていた通り、代表FWダレン・ロックを獲得したことをクラブ公式ソーシャルメディアで発表しています。

今季はスーパーリーグのPJシティFCのフォワードとして、マレーシア人最多の9ゴールを挙げてたロック選手は、PJシティが来季のスーパーリーグ撤退を発表したことから、その去就が注目されていましたが、来季のAFCカップ出場が決まっているサバが獲得に動いていることはネット上でも噂になっていました。

前述したようにDFのパク選手が8得点、それに続くのがMFバドロル・バクティアルの6点と、今季は獲得した外国籍FWがほとんど機能しなかったサバにとっては大きな戦力アップとなりそうです。

またサバは今季、スーパーリーグのKLシティでプレーしたセンターバックのイルファン・ザカリアの獲得も発表しています。今季は4位のヌグリスンビランと並び、リーグ3位の26失点に終わったサバですが、来季はAFCカップもあることから試合数も増え、代表DFドミニク・タンを中心としたDF陣の選手層を厚くすることもチームの課題でした。なお、27歳のザカリア選手はU23代表、A代表でのプレー経験もあり、今季もKLシティでは21試合に出場しています。

この他、サバは現在行われているマレーシア代表候補合宿に初招集されたMFスチュアート・ウィルキンと新たに2年契約を結んだことも発表しています。

12月1日のニュース
どこでこんなに差がついた?上田綺世とサファウィ・ラシド(アジア大会のハイライト映像あり)

いよいよ今日はグループステージ突破がかかるスペイン戦ですが、このFIFAワールドカップ2022カタール大会に出場中の日本代表の中には、マレーシアでも名前が知られている選手が少なくありません。他の東南アジア諸国同様、マレーシアでも最も人気があるのは英国プレミアリーグEPLということもあり、そこでプレーする冨安健洋選手や三笘薫選手、またかつて在籍した南野拓実選手や吉田麻也選手、浅野拓磨選手らもEPLファンには知られています。

そんな中、今回のワールドカップのコスタリカ戦で先発した上田綺世選手はEPLではプレーしておらず、今季からベルギー1部のサークル・ブルッヘと地味なチームに所属していますが、マレーシアのコアなサッカーファンからは「マレーシアの前に立ちはだかった侍」として記憶されています。

上田選手がU23日本代表のメンバーとしてU23マレーシア代表と対戦したのは、2018年にインドネシアで開催されたアジア競技大会でした。この大会でU23マレーシア代表はグループステージで韓国やバーレーンと同組になりながら、戦前の予想を覆してグループを1位で通過しました。圧巻だったのは、A代表でもプレーするファン・ヒチャンや、当時既にトットナムに在籍していたソン・フンミンを擁する前回2014年の覇者、韓国を2-1で撃破した試合でした。この試合ではサファウィ・ラシド(ジョホール・ダルル・タジムJDT)が2ゴールを決めて活躍しました。そしてベスト16に進出したマレーシアは、グループステージではベトナムに敗れてグループ2位で勝ち上がってきた日本と対戦。ベトナムに敗れていたことで、マレーシアは韓国に続き日本も撃破できるのでは、と期待が高まりました。

今回のW杯カタール大会参加メンバーでは森保一監督を筆頭に、板倉滉、前田大然、そして当時はまだ大学生だった三笘薫などの選手がプレーするU23日本代表がこの対戦では圧倒的な主導権を握る中、U23マレーシア代表は試合終盤まで善戦し、そしてこのまま延長戦かと思われた88分、自陣のペナルティエリア内でマレーシアのドミニク・タン(現サバFC)が上田綺世選手を倒してPKを与えてしまいます。上田選手が自分で蹴ったPKが決まり、このまま日本が1-0で逃げ切り、今大会、ここまで快進撃を続けてきたマレーシアのベスト8進出の夢が潰えました。また日本はこのまま決勝まで勝ち上がったものの、韓国に延長戦で1-2で敗れ、銀メダルに終わっています。

試合終盤にはエース、サファウィ・ラシド(現JDT)のシュートがゴールポストにあたり、シャフィク・アフマド(現JDT)のヘディングシュートが枠を外れるなどチャンスがなかったわけではありませんでしたが、オン・キムスイ監督(当時、現サバFC監督)率いるチームの挑戦は残り数分を持ち堪えられずに終わってしまいました。それでも日本代表相手に冷や汗をかかせるだけのパフォーマンスは示したマレーシア代表でした。ちなみにこの大会では、決勝まで進出した上田綺世選手は大会通算3ゴールだったのに対し、グループステージで敗れたサファウィ・ラシドは、韓国戦の2ゴールを含めて4ゴールを挙げています。

それから4年。上田綺世選手は、クラブレベルではベルギー1部のサークル・ブルッヘへ移籍し、今季17試合全てに先発出場して7ゴールを挙げています。 また、U23代表からA代表へ昇格し、現在開催中のカタールワールドカップに出場し、コスタリカ戦では先発出場を果たしているのはご存知の通りです。その一方で、サファウィ・ラシドは、順調に代表のエースとなることが期待されたものの、所属するJDTでは同じポジションでアリフ・アイマンが台頭してきたこともあり、この2年間は先発機会が激減しています。2018年、2019年と2年続けてリーグMVPとなり、順調にスターへの道を歩んでいたサファウィ選手ですが、2020年にポルティモネンセへ期限付き移籍したものの、トップチームでの出場機会はなく、1年でJDTに戻りましたが、既にアリフ・アイマンがその穴を埋めるどころか、あまり暑活躍をしていたところから、転落が始まりました。今季は試合出場時間が通算631分、先発出場2試合と出場機会が激減し、直近ではクラブ史上初の国内三冠達成となった今季のマレーシアカップ決勝でも先発はおろか、ベンチ外となるなど、歓喜の瞬間に立ち会うことができませんでした。

国外移籍の成功、不成功で2人の間にこんな差がついてしまったのか。

それでも、サファウィ選手の力はキム・パンゴン監督からの評価が高く、多くの選手(噂では11名とも)がケガや家庭の事情などを理由に代表招集を辞退したJDTからはラマダン・サイフラーと共に、今月末に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022出場の代表候補30名に選ばれています。2010年大会以来、優勝から遠ざかっているマレーシアにとっては、出場機会が減っているとは言え、今季4ゴール、6アシストを記録したサファウィ・ラシドの左足からの強烈なシュートは大きな武器です。

三菱電機カップでかつての輝きを見せてJDTの主力に返り咲くのか、それとも出場機会を求めて来季は他のMリーグクラブへ移籍するのか。出場機会が得られれば、実力を示すことができる選手なので、まずは東南アジアの各国代表相手に大暴れしてもらいたいです。

マレーシアカップ2022決勝
ジョホールが逆転勝利でクラブ史上初の国内三冠達成

世間はワールドカップで盛り上がる中、マレーシアでは今季最後の公式戦マレーシアカップの決勝が行われています。マレーシアがまだ英領マラヤだった1921年にマラヤカップとして第1回大会が開催されたこの大会は、太平洋戦争中の中断を経て、マレーシアの成立によりマレーシアカップと名を変えて現在に至り、今回は第96回大会。Mリーグ1部スーパーリーグ9連覇中のジョホール・ダルル・タジムJDTに今季5位のスランゴールが挑む図式となりました

戦前の予想では、コロナ禍の影響で中止された2020年大会を挟み、3大会連続で決勝進出となったJDTが有利の声も多かった一方で、2016年以来6年ぶりの決勝に臨むスランゴールは大会最多の33回優勝を誇り、今年9月に前マレーシア代表監督を務めたタン・チェンホー監督が就任以来、9勝1敗と調子を上げてきていることから、接戦が予想されました。

マレーシアカップ2022決勝
2022年11月26日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
スランゴール 2-0 JDT
⚽️スランゴール:カイオン(45分PK)、ムカイリ・アジマル(分)
⚽️JDT:ベルグソン・ダ・シルヴァ(45+2分)、フェルナンド・フォレスティエリ(59分)
🟨スランゴール(2):ムカイリ・アジマル、アリフ・ハイカル
🟨JDT(3):ラヴェル・コービン=オング、フェルナンド・ヴェラスケス、マシュー・デイヴィーズ
MOM:フェルナンド・フォレスティエリ(JDT)
 準決勝セカンドレグで出場停止となっていたアフィク・ファザイルとフェロズ・バハルディンが先発XIに戻ったJDTのエクトル・ビダリオ監督は、準決勝ファーストレグと同じ4-3-3の布陣を選択、一方のスランゴールは、準決勝セカンドレグで守備の要、センターバックのヤザン・アル=アラブがレッドカードをもらってこの試合出場停止となっており、タン監督は同じヨルダン代表の守備的MFバハ・アブドル・ラーマンを代わりに起用した他、ファーストレグで先発したFWノル・ハキム・ハサンに代えてDFリッチモンド・アンクラを先発させ、やはり4-3-3の布陣を採用しています。
 公式発表では7万9988名の大観衆を集めた決勝の勝者には来季のAFCカップ出場権がかかっており、アジアの舞台を目指すスランゴールが試合開始から怒涛の攻撃を見せ、さらに守備では各選手がJDTのパスコースをしっかりと封じ、両サイドのラヴェル・コービン=オング、アリフ・アイマンを機能させず、リーグ得点王のベルグソン・ダ・シルヴァまでなかなかボールが渡らない展開でした。
 スランゴール攻勢で試合が進む一方で、後期期を活かせない展開が続く中、45分にペナルティエリア内でJDTのマシュー・デイヴィーズがカイオンを倒し、スランゴールがPKを獲得。これをカイオン自身が決めて、スランゴールが1-0とリードします。
 しかしJDTも前半終了間際のロスタイムに、スランゴールのペナルティーエリアのすぐ外でレアンドロ・ヴェレスケスが倒され、PKを得ます。このPKは決まらなかったものの、その流れで得たコーナーキックをエース、ベルグソン・ダ・シルヴァが頭で合わせてゴール!JDTが前半終了間際に追いつき、試合は1-1で折り返します。
 しかし後半に入ると、前半飛ばしすぎたのか、スランゴール各選手の運動量が目に見えて落ち始め、JDTの選手の動きに遅れだし、スランゴールはJDTの攻撃をクリアするの精一杯という場面が目立ち始めた59分、ハーフラインからドリブルで持ち込んだアリフ・アイマンが、ゴール前のベルグソン・ダ・シルヴァへ素晴らしいパスが通り、GKと1対1となったシュートはスランゴールGKカイルルアズハン・カリドが反応良く止めたものの、そのセカンドボールに詰めていたフェルナンド・フォレスティエリがこれをゴールし、JDTが2-1とリードします。
 この試合で興味深かったのはスランゴールのタン監督の采配です。1-2とリードを許した直後の63分には守備的MFバハ・アブドル・ラーマンに代えてFWノル・ハキムを投入した際には、同時にA代表初招集が発表されたばかりの22歳のDFアリフ・ハイカルも合わせて投入、さらに75分にはエースのカイオンとキャプテンのブレンダン・ガンに代えてU23代表FWコンビのダニアル・アスリとシャヒル・バシャーをピッチに送りこみます。そしてこの若い選手たちはその期待に応えて最後までJDTゴールを脅かすなど、試合には敗れたもの、今季は不安定な戦いを見せたスランゴールに来季への期待を抱かせるプレーを見せてくれました。
 またこの試合の結果、マレーシアカップ優勝チームに与えられる来季のAFCカップ出場権は、JDTが既に来季のACL出場権を持つため、スーパーリーグ3位のサバに与えられることになりました。
 このマレーシアカップ決勝でMリーグは今季の国内日程を全て終了し、その結果はJDTが国内三冠を達成して幕を閉じました。
 以下はマレーシアカップ決勝のハイライト映像、試合後の選手インタビュー、そして試合後の監督の記者会見の様子です。(映像はいずれもMFLのYouTubeチャンネルより)

マレーシアカップ2022
準決勝 2NDレグ結果とハイライト映像(2)

一昨日行われたマレーシア下院選挙では、97歳のマハティール元首相が1969年以来となる落選し「時代の終わり」といった報道も出る一方で、野党連合「希望同盟」、与党連合「国民連盟」そして前回選挙では国民連盟を支えた「国民戦線」の三つ巴の争いの中、いずれの政党連合も単独で過半数の112議席を確保することができず、野党連合と与党連合がそれぞれ連立政権に向けた交渉を進めていると報じられています。

この総選挙の影響を受け、一部日程が変更になったマレーシアカップは準決勝のセカンドレグ、JDT対サバが11月20日に行われています。
*試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより

と書きましたが、マレーシア下院選挙が行われたのは11月19日、つまり1週間前のことです。この準決勝第2試合の記事は11月21日の試合後にアップロードするのを完全に忘れていました。今日はマレーシアカップ決勝当日と的外れなタイミングですが、せっかくなのでとりあえずアップロードします。

マレーシアカップ2022準決勝 2NDレグ
2022年11月21日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 1-0 スランゴール(通算スコア:スランゴール 3-2)
⚽️トレンガヌ:チェチェ・キプレ(35分)
🟨スランゴール(1):ハイン・テット・アウン、ヤザン・アル=アラブ
🟨トレンガヌ(0)
🟥スランゴール(1):ヤザン・アル=アラブ(🟨x2)
MOM:リッチモンド・アンクラ(スランゴール)
 公式発表では今季最多となる3万3352人が詰め掛けたスルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアムでの準決勝セカンドレグは、ホームのトレンガヌが1-0で勝利したものの、ファストレグの3失点が響き、通算スコア2-3で敗れ、スランゴールが6年ぶりの決勝進出を果たしています。
 ファーストレグでついて2点差を縮めたいトレンガヌは試合開始から積極的にスランゴールを目指し、12分にはチェチェ・キプレが最初のシュートを放つなど、押し気味に試合を進めます。一方のスランゴールは、ワントップのエース、カイオン以外はほぼ全員が自陣内に残る超守備的な布陣を引きますが、守備陣がボールを奪うとそこから速いカウンターを仕掛け、トレンガヌゴールを脅かします。しかし徐々にこのカウンターに対応し始めたトレンガヌは、35分にチェチェ・キプレのマレーシアカップ4得点目となるゴールが決まり、準決勝の通算スコアを2-3とします。その後もファイサル・ハリム、マヌエル・オットがそれぞれ仕掛けますが、タン監督就任後にサミュエル・サマーヴィルからレギュラーを取り返したGKカイルルアズハン・カリドが好セーブで失点を防ぎます。
 後半に入るといわゆるゴール前のバス駐車状態でトレンガヌにチャンスを与えなかったスランゴールは、試合終盤の87分には2枚目のイエローでヤザン・アル=アラブが退場となったものの、トレンガヌの猛攻を凌ぎ、1失点にとどめました。この日の敗戦でタン・チェンホー監督が就任した9月以来続いた無敗記録は9で途切れたものの、2016年以来6年ぶりのマレーシアカップ決勝進出を果たしたスランゴールは2015年以来7年ぶりとなる34回目の優勝を目指して、決勝進出を決めています。
 一方のトレンガヌは、この日の敗戦で今季終了となりましたが、このブログでも取り上げている通り、ナフジ・ザイン監督は今季を持ってトレンガヌを去ることを表明しています。また、エースのファイサル・ハリムも来季のスランゴール移籍が噂されており、この日ゴールを決めたチェチェ・キプレ、またマレーシアカップで6ゴールを挙げたクパー・シャーマンらも退団が濃厚です。ナフジ監督が就任して以来、過去3シーズンで3位、4位、2位という成績を収めてきたトレンガヌですが、来季は外国籍選手を中心に大きくメンバーが入れ替わりそうです。過去2シーズンはいずれもJDTに次ぐリーグ2位につけながら、チーム刷新を図った結果、今季8位に終わったクダの二の舞にならないと良いのですが。
 またこの試合後には、トレンガヌサポーターがスランゴールの選手が乗ったバスに投石し、一部の窓が割れるなど、久しぶりにタチの悪いサポーターも登場しています。

11月25日のニュース
AFF選手権出場の代表候補発表-お疲れのジョホールからは2名のみ選出
U23代表候補発表-J3沼津のハディ・ファイヤッドが6月のシーゲームズ以来の招集

いよいよ今日11月26日は今季のマレーシアサッカーのフィナーレを飾るマレーシアカップの決勝です。決勝に駒を進めたリーグ9連覇中のジョホール・ダルル・タジムJDTが現在のマレーシアサッカーをリードするクラブだとすれば、その相手となるスランゴールはマレーシアカップ優勝回数22回と最多を誇るものの、近年は低迷するかつてのリーグ盟主です。タン・チェンホー前マレーシア代表監督就任以来、リーグ戦からマレーシアカップ決勝まで8試合無敗のスランゴールがその連勝記録を伸ばすのか、昨季の決勝ではKLシティに敗れたJDTが3年ぶりの優勝を果たし、リーグ戦、FAカップに続く今季国内三冠を達成するのか。本日午後9時(マレーシア時間、日本時間午後10時)キックオフのマレーシアカップ決勝はこちらから視聴可能です。

AFF選手権出場の代表候補30名が発表-お疲れのジョホールからは2名のみ選出

12月21日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに出場するマレーシア代表の候補合宿参加メンバーをマレーシアサッカー協会FAMが発表しています。今月11月29日から始まる代表候補合宿に招集されたのは30名(29名発表後、スランゴールのファズリ・マズランが追加で招集)です。

比較的若い選手中心の構成となった今回、初のA代表招集となったのはリーグ3位のサバでプレーするMFスチュアート・ウィルキンの他、DFアリフ・ハイカル(スランゴール)、GKアズリ・ガニ、FWハキミ・アジム・ロスリ(いずれもKLシティ)、そしてMFデヴィッド・ローリー、MFリー・タック、MFエセキエル・アグエロ(いずれもスリ・パハン)の7名です。

この中で注目なのは英国出身で34歳のリー・タックとアルゼンチン出身で28歳のエセキエル・ アグエロの両選手。いずれもMリーグで5年間プレーしたことで、FIFAの規定により帰化選手となる条件を満たした両選手は、所属するスリ・パハンとパハン王室の支援もあり、今年マレーシア国籍を取得しており、今回、晴れて代表入りを果たしています。ちなみに今回初招集されたスチュアート・ウィルキンとデヴィッド・ローリーも、それぞれイギリスとオーストラリアの出身です、いずれもマレーシア人の親を持つ「ハイブリッド」帰化選手です。

なお初招集となった、DFアリフ・ハイカル、GKアズリ・ガニ、そしてMFムカイリ・アジマルとDFクエンティン・チェン(以上スランゴール)の各選手は、今年6月にウズベキスタンで開催されたAFC U23アジアカップに出場したマレーシアU23代表でもプレーしています。

また、これまで代表招集経験があるものの、キム監督就任以来初の招集となったのは、FWラマダン・サイフラー(JDT)、MFファイズ・ナシル(トレンガヌ)、FWノル・ハキム・ハサン、DFファズリ・マズラン(いずれもスランゴール)、MFアクラム・マヒナン(KLシティ)、コギレスワラン・ラジ(PJシティ)の6名です。

今回、30名中、13名の新顔が揃ったのには訳があります。三菱電機カップはFIFAの国際マッチデー期間外で開催されるため、Mリーグのクラブは選手の代表招集に応じる義務がありません。春秋制を採用するMリーグでプレーする選手にとって12月と言えば、今季の全日程を終えて、疲労も溜まり、体調も落ちている時期です。そのためか、ACLでノックアウトステージに進出するなど、今季はMリーグのどのチームよりも多く試合をしているJDTからは、ラヴェル・コービン=オングとマシュー・デイヴィーズの両サイドバックや、おそらく今季もリーグMVPを獲得するであろうアリフ・アイマンら代表主力選手(JDTからは10名程度が召集を辞退したと噂もあります)がケガや家庭の事情を理由に召集を辞退しており、これが今回の代表候補メンバーが従来のメンバーから様変わりしている理由です。

なお三菱電機カップの前には12月9日に対カンボジア、12月14日には対モルジブの国際新全試合も予定されていますが、キム監督はこの2試合後に三菱電機カップ出場の最終メンバー23名を決定するということです。

三菱電機カップではB組に入っているマレーシアは、12月21日にアウェイのミャンマー戦、12月24日にはクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場でラオス戦、27日には再びアウェイのベトナム戦、そしてグループステージ最終戦はブキ・ジャリル国立競技場に戻って1月3日のシンガポール戦が組まれています。そしてB組の上位2位に入れば、ホームアンドアウェイ形式で行われる準決勝(1月6日または7日と、9日または10日)、そして決勝(1月13日と16日)が控えています。

以下が今回、代表候補合宿に参加する30名です。

POS選手氏名年齢クラブ
FWサファウィ・ラシド25JDT
FWラマダン・サイフラー22JDT
DF シャルル・ナジーム23SEL
MF ブレンダン・ガン34SEL
MFムカイリ・アジマル21SEL
DFアリフ・ハイカル22SEL
FWノル・ハキム・ハサンSEL
DFクェンティン・チャン23SEL
DFファズリ・マズラン28SEL
GK ラーディアズリ・ラハリム21TRE
FWファイサル・ハリム24TRE
DFアザム・アズミ21TRE
MFファイズ・ナシル30TRE
GK アズリ・ガニ23KLC
DF. デクラン・ランバート24KLC
MF. アクラム・マヒナン29KLC
FWハキミ・アジム・ロスリ19KLC
GKカラムラー・アル=ハフィズ27*PJC
FW ダレン・ロック31*PJC
MF V・ルヴェンティラン21*PJC
FW コギレスワラン・ラジ24*PJC
MF. リー・タック34SRP
MFデヴィッド・ローリー32SRP
MF. エセキエル アグエロ28SRP
DFクザイミ・ピー29NSE
GKシーハン・ハズミ26NSE
DFドミニク・タン25SAB
MF スチュアート・ウィルキン24SAB
DFディオン・コールズ26FKJ
FWヌル・シャミ・イスズアン27SWU
JDT-ジョホール・ダルル・タジム、TRE-トレンガヌ、SAB-サバ、NSE-ヌグリスンビラン、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、SRP-スリ・パハン、PJC-PJシティ、SWU-サラワク・ユナイテッド、FKJ-FKヤブロネツ(チェコ1部)
U23代表候補発表-ハディ・ファイヤッドが6月のシーゲームズ以来の招集

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイト上で、U23代表候補合宿参加メンバー25名を発表しています。今回の合宿は直近の試合はないものの、A代表のコーチでもあるE・エラヴァラサン監督が指揮を取る最初の合宿となります。なおU23代表合宿は11月27日から12月6日まで予定されています。

来年2023年のU23代表の最初の公式戦はアセアン東南アジアサッカー連盟AFF U23選手権です。今年2月に開催された2022年大会では、マレーシアU23代表はラオスと2チームのみとなったグループステージで1-2、0-2とラオスを相手に2戦2敗し、まさかのグループステージ敗退を喫しています。

来年の2つ目の公式戦は東南アジア競技大会、通称シーゲームズです。今年の2023年大会はカンボジアが開催国で、5月に開催が予定されています。シーゲームズは従来は隔年開催の大会ですが、新型コロナの影響で延期された2021年ベトナム大会が今年開催され、マレーシアU23代表は準決勝ではベトナムに敗れ、さらに3位決定戦ではPK戦でインドネシアに敗れるなど、2019年フィリピン大会に続くメダルなしで終わっています。

また今年は、AFC U23アジアカップ2024年大会の予選も控えています。現在、ワールドカップが開催されているカタールが開催地となるこの大会の予選は来年9月に開催が予定されています。なおマレーシアU23代表は、今年開催されたAFC U23アジアカップ2022年大会に出場しましたが、ベトナム、タイ、韓国と同組となったグループステージでは0勝3敗得点1失点9でグループ最下位に終わっています。

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POS選手氏名クラブ年齢
FWシャヒル・バシャーSEL21
DFジクリ・カリリSEL20
FWダニアル・アスリSEL22
GKシャーミ・アディブ・ハイカルSEL219
MFアリフ・イズワン・ユスランSEL218
DFファイズ・アメルSEL219
7.ファクルル・ファリーズ・アイディSEL U2119
8.ハイカル・ハキーミ・ハイリSEL U1919
DFハイリー・ハキムTRE22
FWシャフィク・イスマイルTRE22
GKラーディアズリ・ラハリムTRE21
DFサフワン・マズランTRE220
MFアリフ・シャキリン・スハイミKLC22
DFニック・ウマル・ニック・アジジKLC21
MFナズウィン・サレーKLC U2121
MFシャキミ・ロジKEL U2120
MFイズディン・アスリKEL U2120
DFハスヌル・ザイムSRP U2120
DFイブラヒム・マヌシSRP U2121
FWハディ・ファイヤッドアスルクラロ沼津22
DFアリフ・ナジミKLU22
FWアイマン・アフィフKDA21
MFT・サラヴァナンPEN U2121
MFA・セルヴァンNSE22
GKフィルダウス・イルマン・ファディルPDRM U2121
SEL-スランゴール、SEL2-スランゴール2、TRE-トレンガヌ、TRE2-トレンガヌII、SAB-サバ、NSE-ヌグリスンビラン、KLC-KLシティ、SRP-スリ・パハン、PJC-PJシティ、SWU-サラワク・ユナイテッド、KDA-クダ、PEN-ペナン、KEL-クランタン、KLU-クランタン・ユナイテッド

マレーシアカップ2022
準決勝 2NDレグ結果とハイライト映像(1)

一昨日行われたマレーシア下院選挙では、97歳のマハティール元首相が1969年以来となる落選し「時代の終わり」といった報道も出る一方で、野党連合「希望同盟」、与党連合「国民連盟」そして前回選挙では国民連盟を支えた「国民戦線」の三つ巴の争いの中、いずれの政党連合も単独で過半数の112議席を確保することができず、野党連合と与党連合がそれぞれ連立政権に向けた交渉を進めていると報じられています。

この総選挙の影響を受け、一部日程が変更になったマレーシアカップは準決勝のセカンドレグ、JDT対サバが11月20日に行われています。
*試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより

マレーシアカップ2022準決勝 2NDレグ
2022年11月20日@スルタン・イスマイルスタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
JDT 3-1 サバ(通算スコア:JDT 4-1 サバ)
⚽️JDT:ベルグソン・ダ・シルヴァ(35分)、フェルナンド・フォレスティエリ(41分)、シャフィク・アフマド
⚽️サバ:加賀山泰毅(47分)
🟨JDT(1):ナズミ・ファイズ
🟨サバ(1):ジェラルド・ガディト
🟥サバ:ジェラルド・ガディト
MOM:ダミエン・リム(サバ)
 選手層の厚さの差か。
 リーグ戦終了後に行われるマレーシアカップは,準決勝となると各チームともシーズンの疲れも出てきます。ファーストレグで敗れているサバは,この試合ではMFバドロル・バクティアルやDFリザル・ガザリをケガで欠いた上、控えの選手がGK1名をふくめて5名と満身創痍の状態で臨みました。一方のジョホール・ダルル・タジムJDTは、ケガのDFシェーン・ローリーに代わり起用されてきたDFフェロズ・バハルディンが準決勝ファーストレグのレッドカードで、またMFレアンドロ・ヴァレスケスも警告累積でいずれもこの試合出場停止と、やはりベストメンバーで臨むことができません。しかしそこは選手層が厚いJDT。主力選手欠場を全く感じさせないどころか、試合開始から攻勢をかけ、前半は大半の時間がサバのサイドでプレーされる状況でした。
 しかしファーストレグでMOMとなったサバのGKダミエン・リムを中心にサバDF陣がこの試合でもJDTの前に立ちはだかり、ダミエン・リム自身も好セーブを連発して、JDTの猛攻を防ぎます。しかしサバの集中力が一瞬切れた35分、ラベル・コービン=オングの左からのクロスに完全にフリーで飛び込んだベルグソン・ダ・シルヴァが頭で合わせてゴールを決め、JDTが先制します。このゴールでベルグソン選手は今季のマレーシアカップで6ゴール目となり、ACLも合わせると今季45ゴールとまさにエースの活躍です。
 さらに41分にはアフィク・ファザイルがDFラインの裏へ出したパスを受けたアリフ・アイマンが横にいたフェルナンド・フォレスティエリに流すと、これをフォレスティエリがゴールし、JDTはリードを2点に広げ、前半を終了します。
 後半に入るとサバも反撃し、ペナルティーエリアの外から放ったパク・タエスーのシュートをJDTのGKファリザル・マーリアスが弾くと、これに詰めていた加賀山泰毅選手がこのこぼれ球を押し込んで1点差に迫ります。
 ファーストレグとの通算スコアが2点差となったJDTは、サファウィ・ラシド、アキヤ・ラシドを投入すると、ロスタイムの90+11分には左からドリブルでペナルティエリアへ持ち込んだアキヤ・ラシドをサバのジェラルド・ガディトが倒してPKを獲得しますが、サファウィ・ラシドがこれをゴールポストの上に外してしまいます。その直後の90+4分には、ジェラルド・ガディトが再び、アキヤ・ラシドを倒して2枚目のイエローで退場となると、90+5分には甘くなったDFのマークをかわしてシャフィク・アフマドがこの試合3点目となるゴールを決めて万事休す。JDTは昨季に続き、2季連続となるマレーシアカップ決勝進出を果たしています。
 ベストの布陣が組めず敗れたサバは、DFイルファン・ザカリア(KLシティ)や来季のスーパーリーグ撤退を発表したPJシティで今季マレーシア人選手最多ゴールを挙げた代表FWダレン・ロック、そして同じくPJシティのFW、S・クマーランの獲得に動いているという報道もあり、早くも来季に向けて動き出しているようです。
 サバの加賀山泰毅選手はは先発して、フル出場しています。