12月1日のニュース
どこでこんなに差がついた?上田綺世とサファウィ・ラシド(アジア大会のハイライト映像あり)

いよいよ今日はグループステージ突破がかかるスペイン戦ですが、このFIFAワールドカップ2022カタール大会に出場中の日本代表の中には、マレーシアでも名前が知られている選手が少なくありません。他の東南アジア諸国同様、マレーシアでも最も人気があるのは英国プレミアリーグEPLということもあり、そこでプレーする冨安健洋選手や三笘薫選手、またかつて在籍した南野拓実選手や吉田麻也選手、浅野拓磨選手らもEPLファンには知られています。

そんな中、今回のワールドカップのコスタリカ戦で先発した上田綺世選手はEPLではプレーしておらず、今季からベルギー1部のサークル・ブルッヘと地味なチームに所属していますが、マレーシアのコアなサッカーファンからは「マレーシアの前に立ちはだかった侍」として記憶されています。

上田選手がU23日本代表のメンバーとしてU23マレーシア代表と対戦したのは、2018年にインドネシアで開催されたアジア競技大会でした。この大会でU23マレーシア代表はグループステージで韓国やバーレーンと同組になりながら、戦前の予想を覆してグループを1位で通過しました。圧巻だったのは、A代表でもプレーするファン・ヒチャンや、当時既にトットナムに在籍していたソン・フンミンを擁する前回2014年の覇者、韓国を2-1で撃破した試合でした。この試合ではサファウィ・ラシド(ジョホール・ダルル・タジムJDT)が2ゴールを決めて活躍しました。そしてベスト16に進出したマレーシアは、グループステージではベトナムに敗れてグループ2位で勝ち上がってきた日本と対戦。ベトナムに敗れていたことで、マレーシアは韓国に続き日本も撃破できるのでは、と期待が高まりました。

今回のW杯カタール大会参加メンバーでは森保一監督を筆頭に、板倉滉、前田大然、そして当時はまだ大学生だった三笘薫などの選手がプレーするU23日本代表がこの対戦では圧倒的な主導権を握る中、U23マレーシア代表は試合終盤まで善戦し、そしてこのまま延長戦かと思われた88分、自陣のペナルティエリア内でマレーシアのドミニク・タン(現サバFC)が上田綺世選手を倒してPKを与えてしまいます。上田選手が自分で蹴ったPKが決まり、このまま日本が1-0で逃げ切り、今大会、ここまで快進撃を続けてきたマレーシアのベスト8進出の夢が潰えました。また日本はこのまま決勝まで勝ち上がったものの、韓国に延長戦で1-2で敗れ、銀メダルに終わっています。

試合終盤にはエース、サファウィ・ラシド(現JDT)のシュートがゴールポストにあたり、シャフィク・アフマド(現JDT)のヘディングシュートが枠を外れるなどチャンスがなかったわけではありませんでしたが、オン・キムスイ監督(当時、現サバFC監督)率いるチームの挑戦は残り数分を持ち堪えられずに終わってしまいました。それでも日本代表相手に冷や汗をかかせるだけのパフォーマンスは示したマレーシア代表でした。ちなみにこの大会では、決勝まで進出した上田綺世選手は大会通算3ゴールだったのに対し、グループステージで敗れたサファウィ・ラシドは、韓国戦の2ゴールを含めて4ゴールを挙げています。

それから4年。上田綺世選手は、クラブレベルではベルギー1部のサークル・ブルッヘへ移籍し、今季17試合全てに先発出場して7ゴールを挙げています。 また、U23代表からA代表へ昇格し、現在開催中のカタールワールドカップに出場し、コスタリカ戦では先発出場を果たしているのはご存知の通りです。その一方で、サファウィ・ラシドは、順調に代表のエースとなることが期待されたものの、所属するJDTでは同じポジションでアリフ・アイマンが台頭してきたこともあり、この2年間は先発機会が激減しています。2018年、2019年と2年続けてリーグMVPとなり、順調にスターへの道を歩んでいたサファウィ選手ですが、2020年にポルティモネンセへ期限付き移籍したものの、トップチームでの出場機会はなく、1年でJDTに戻りましたが、既にアリフ・アイマンがその穴を埋めるどころか、あまり暑活躍をしていたところから、転落が始まりました。今季は試合出場時間が通算631分、先発出場2試合と出場機会が激減し、直近ではクラブ史上初の国内三冠達成となった今季のマレーシアカップ決勝でも先発はおろか、ベンチ外となるなど、歓喜の瞬間に立ち会うことができませんでした。

国外移籍の成功、不成功で2人の間にこんな差がついてしまったのか。

それでも、サファウィ選手の力はキム・パンゴン監督からの評価が高く、多くの選手(噂では11名とも)がケガや家庭の事情などを理由に代表招集を辞退したJDTからはラマダン・サイフラーと共に、今月末に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022出場の代表候補30名に選ばれています。2010年大会以来、優勝から遠ざかっているマレーシアにとっては、出場機会が減っているとは言え、今季4ゴール、6アシストを記録したサファウィ・ラシドの左足からの強烈なシュートは大きな武器です。

三菱電機カップでかつての輝きを見せてJDTの主力に返り咲くのか、それとも出場機会を求めて来季は他のMリーグクラブへ移籍するのか。出場機会が得られれば、実力を示すことができる選手なので、まずは東南アジアの各国代表相手に大暴れしてもらいたいです。