9月14日のニュース
来季のペラ新監督にリム・ティオンキム氏の就任が決定
ディオン・クールズの来季JDT入りは既定路線?

来季のペラ新監督にリム・ティオンキム氏の就任が決定

Mリーグ2部プレミアリーグのペラFC(以下ペラ)は、クラブ公式Facebookで、ユスリ・チェ・ラー監督の今季終了後の退任と、リム・ティオンキム新監督の就任を発表しています。リム新監督との契約期間は2年間で、1年の延長オプションがついているということです。また、ユスリ現監督は、来季新たに開設されるリザーブリーグ(U23チームのリーグ)に出場するU23チームを担当するということです。

リム氏は、現役時代はクアラルンプールFA(現KLシティ)やブンデスリーガのヘルタ・ベルリンでプレーした後、2001年から12年間はバイエルンミュンヘンのU19チームのコーチを務めました。その後、2013年にはマレーシアサッカー協会FAMとマレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会MSN.が共同で運営する国家サッカー選手育成プログラムNFDPのダイレクターとして5年契約という破格の契約で、当時の青年スポーツ大臣が三顧の礼をもって迎え入れました。

さらに2016年にはNFDPの中核となるエリートアカデミーのモクタル・ダハリアカデミーAMDのダイレクターに就任したリム氏でしたが、同時に就任したU17代表監督として、マレーシア国内開催となった2018年のAFC U16選手権のグループステージで最下位と惨敗すると、青年スポーツ省は手取りで17万5000リンギ(現在のレートではおよそ560万円)とされた給与を公開し、2020年まで残っていたとされる契約も解除しました。

Mリーグクラブの指導経験は全くないリム氏については、今回のペラ以外にも同じプレミアリーグのクランタンFC(以下クランタン)もノリザム・トゥキマン オーナーが来季の監督候補の1人と公言していましたが、未払い給料問題で主力選手が次々とチームを去り、クラブ創設100年目の昨季プレミアリーグに降格したペラが、チームの再建をこのリム氏に託すことになりました。

ディオン・クールズの来季JDT入りは既定路線?

先日発表されたタイのチェンマイで開催されるキングズカップ出場の代表候補メンバー25名中、唯一の国外組がディオン・クールズです。2021/2022年シーズンは、デンマーク1部FCミッティラン所属も、期限付き移籍でベルギー1部のSVズルテ・ワレヘムでプレーしたクールズ選手ですが、期限付き移籍期間終了後は、FCミッティランの登録メンバーにその名前がないなど、その去就に注目が集まっていました。しかしマレーシアサッカー協会FAMが発表した代表候補リストでは、クールズ選手の所属がチェコ1部のFKヤブロネツとなっていたことから、一部で噂になっていたジョホール・ダルル・タジムJDT入りではなく、ヨーロッパでプレーを続けることが明らかになっています。

UEFAチャンピオンズリーグ最終予選に出場したFCミッティランを退団し、チェコのクラブへの遺跡を選んだクールズ選手は、FCミッティランがプレースタイルを変更し、これにより自身のプレー時間が減ってしまう可能性が高くなったことが、今回の退団の理由だと説明し、26歳という自身の年齢を考えた際には、自分のプレーの質を高めるためには移籍が必要だったと述べています。

すでにFKヤブロネツのデヴィッド・ホレイス監督とも話をしたと言うクールズ選手は、開幕から8試合で16チーム中13位というチームは自分にとっても厳しい環境だが、チームの成績を自身のプレーで改善したいと話しています。

しかし、この話はここで終わりではありません。というのも、Mリーグ1部スーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナー、トゥンク・イスマイル殿下が、自身のインスタグラムに意味深な投稿を行ったからです。

クールズ選手のFKヤブロネツ移籍を祝う内容に加えて、「クールズ、4ヶ月間の滞在を楽しみなさい。そして来年1月にジョホールで会おう。」と投稿したのです。なおMリーグの次のトランスファーウィンドウは、今年12月1日から来年2023年2月22日が1回目、2023年5月28日から同年6月24日までが2回目となっており、現在はJDTに加入できないことから、今回のFKヤブロネツ移籍は、JDT加入前の「腰掛け」の可能性が濃厚ということです。

9月13日のニュース
キングズカップに向けて代表候補25名が発表
AFC U20アジアカップ予選出場のU19代表23名を発表

マレーシア代表も出場する第48回キングズカップの日程が発表になっています。タイのチェンマイで今月22日から始まるこの大会は、ホストのタイ、マレーシア、タジキスタン、トリニダード・トバゴが出場しますが、1回戦のカードはトリニダード・トバゴ対タジキスタン、タイ対マレーシアとなることが発表されています。

キングズカップに向けて代表候補25名を発表

マレーシアサッカー協会FAMは、このキングズカップ2022に出場するマレーシア代表の候補合宿参加メンバー25名を発表しています。今週金曜日9月16日から始まる合宿には、6月に行われたAFCアジアカップ2023年大会最終予選に参加した代表23名から、キム・パンゴン監督は17名を再び招集しています。

今回新たな招集メンバーは、先日のFAカップ2022にも出場したGKラーディアズリ・ラハリムとDFアザム・アズミ(いずれもトレンガヌ)の21歳コンビ、また20歳でU23代表のキャプテンを務めるスランゴールのMFムカイリ・アジマル、DFシャルル・ナジーム(22歳、スランゴール)ら若手選手のほか、精巣腫瘍の治療から復帰したMFブレンダン・ガン(スランゴール)、AFCカップで好調のKL攻守の要、MFザフリ・ヤハヤとDFデクラン・ランバート(いずれもKLシティ)、そしてGKカラムラー・アル=ハフィズ(PJシティ)の8名です。また25名にケガ人などが出た際の予備招集メンバー16名も合わせて発表になっています。

メンバーの内訳は、首位を独走するジョホール・ダルル・タジムJDTから9名、スランゴール、トレンガヌ、PJシティから各3名、ヌグリスンビランとKLシティからは2名ずつ、サバ、パハンから各1名、そしてチェコ1部のFKバウミト・ヤブロネツからはDFディオン・クールズが唯一の海外組として招集されています。

9月16日からの代表候補合宿参加メンバー

氏名年齢所属
DFシャールル・サアド29JDT
DFラヴェル・コービン=オング31JDT
MF ナズミ・ファイズ28JDT
MFアリフ・アイマン20JDT
FWサファウィ・ラシド25JDT
FWアキヤ・ラシド23JDT
FWモハマドゥ・スマレー28JDT
DF マシュー・デイヴィーズ27JDT
FWシャフィク・アフマド27JDT
DF シャルル・ナジーム23SEL
MFブレンダン・ガン34SEL
MFムカイリ・アジマル21SEL
FW ファイサル・ハリム24TRE
GKラーディアズリ・ラハリム21TRE
DF アザム・アズミ21TRE
GK カラムラー・アル=ハフィズ27PJC
FWダレン・ロック32PJC
MFルヴェンティラン・ルヴェンティラン21PJC
DFクザイミ・ピー29NSE
GK シャイハン・ハズミ26NSE
MFザフリ・ヤハヤ28KLC
DFデクラン・ランバート24KLC
DFドミニク・タン25SAB
MF ノー・アザム・アジ27SRP
DFディオン・クールズ26JAB
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド、JAB-FKバウミト・ヤブロネツ(チェコ)

予備招集メンバー16名も含めたリストはこちらから。

AFC U20アジアカップ予選出場のU19代表23名が発表

マレーシアサッカー協会FAMは、今月9月14日から18日までモンゴルのウランバートルで開催されるAFC U20アジアカップ2023年大会予選E組に出場するマレーシアU19代表の最終メンバー23名を発表しています。今年7月の東南アジアサッカー連盟AFF U19選手権で、2大会ぶり2度目の優勝を果たしたマレーシアですが、ハサン・サザリ監督はそのチームから16名を再び招集しています。

チームの編成は、スランゴールのセカンドチーム、スランゴール2から10名、ジョホール・ダルル・タジムJDTのセカンドチーム、JDT IIから2名、JDTのU19チームのJDT IIIから4名、FAMとマレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会MSNが共同で運営するエリートアカデミーAMDのU17チームから3名、FAM-MSNプロジェクトから2名、トレンガヌ、PJシティからそれぞれ1名となっています。チームの詳しいメンバーはこちらから。

今回の予選でマレーシアは、明日9月14日にモンゴル、同16日にスリランカ、同18日に韓国と対戦します。

FAカップ2022決勝-トレンガヌを振り切ってJDTがまず今季一冠

2年ぶりの開催となったマレーシアFAカップの決勝が、9月10日にクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場に公式発表8万4321人を集めて開催され、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)がトレンガヌを3-1で破って、2016年以来6年ぶり2度目の優勝を果たしています。

今季途中の7月にJDTの監督に就任したエクトル・ビドリオ監督にとっては、初タイトルがかかるこの試合で、いつもの通り、ベルグソン・ダ・シルヴァ、フェルナンド・フォレスティエリの2トップを中心とした強力な攻撃陣を中心とした布陣を起用しましたが、トレンガヌのナフジ・ザイン監督は、エースのクパー・シャーマンをベンチ外とし、チェチェ・キプレのワントップという中盤以降を厚くした布陣を選択し、カウンター狙いで11年ぶりの優勝を狙いました。

JDTの最初のチャンスは10分。20歳のウィング、アリフ・アイマンに右サイドを突破されて放たれたシュートは、トレンガヌGKラーディアズリ・ラハリムが止められなかったもののゴールポストに救われます。その後も、JDTは右サイドにボールを集めますが、トレンガヌは190cm越えの長身パペ・ディアキテ、シャールル・ニザム、アザム・アズミらDF陣がJDTのエース、ベルグソン・ダ・シルヴァには仕事をする機会を与えず、守って機会を待つ戦術は少なくとも前半は功を奏しました。

逆に24分には、トレンガヌゴール前から出たボールに反応したファイズ・ナズミがカウンターから左サイドを上がり、JDTのラヴェル・コービン=オングがファウルで止めるも、主審が流しそこからチェチェ・キプレがJDTのGKファリザル・マーリアスと一対一になりながら、ゴールを止められるなど、トレンガヌは好機を作り、JDTには徐々にラフプレーが目立ち始めます。

そんな中、JDTに先制ゴールが生まれます。それまでもJDTは、相手スローインには、ボールをすぐに渡さないなど時間をかける一方で、自らのスローインは相手の選手が戻り切る前に素早く行うなどしていましたが、ここでもラインを割ったボールを素早くゴール前へ展開したJDTは、ベルグソン・ダ・シルヴァからレアンドロ・ヴェラスケスを経て出たパスをアリフ・アイマンがゴールし、JDTが1-0とリードします。

ただし、ハイライト映像を見てもわかりますが、このゴールの起点となったスローインがボールがラインを割った地点の遥か先で行われています。スローインをしようとしたラヴェル・コービン=オンがボールの出た地点にいますが、そこから数メートル離れた地点からのスローインが果たして有効なのかどうかには、正直、疑問が残るほどで、これを認めた審判のJDT贔屓(びいき)という声が上がる可能性があります。

ともかくカウンター狙いだったトレンガヌは、先に失点したことでラインを上げざるを得なくなり、その結果、JDTがリードを広げます。トレンガヌDFラインの裏に抜け出したベルグソン・ダ・シルヴァをGKラーディアズリ・ラハリムが倒してPKを与え、ベルグソン自身がこのPKを決めて、63分にJDTが2-0としました。

76分にはチェチェ・キプレのゴールでトレンガヌは1点様で迫ったものの、78分には再びトレンガヌの守備陣の間隙をついてベルグソン・ダ・シルヴァが再びゴールを決めて、再びリードを広げ、試合はこのままJDTが2点のリードを守り切って、今季一冠目となるFAカップを制しました。

2022年9月10日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
トレンガヌ 1-3 JDT
⚽️トレンガヌ:チェチェ・キプレ(76分)
⚽️JDT:アリフ・アイマン(34分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ2(63分PK、78分)
🟨トレンガヌ(1):マヌエル・オット
🟨JDT(5):マシュー・デイヴィーズ、シェーン・ローリー、ベルグソン・ダ・シルヴァ、レアンドロ・ヴェラスケス、ラヴェル・コービン=オング
MOM:ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)

以下は試合のハイライト映像(映像はアストロアリーナのYouTubeチャンネルより

Mリーグ1部スーパーリーグ
2022年シーズン第9節および第16節結果とハイライト(2)

2022年9月2日@ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロースター)
クダ 1-0 ペナン
⚽️クダ:ロナルド・ンガ(56分)
🟨クダ(2):シャーリル・サアリ、サンワット・デーミット
🟨ペナン(2):ラファエル・ヴィトール、エンドリック
MOM:ロナルド・ンガ(クダ)

2022年9月3日@MPBJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
スランゴール 1-1 JDT
⚽️スランゴール:カイオン(65分)
⚽️JDT:ベルグソン・ダ・シルヴァ(32分)
🟨スランゴール(4):アリフ・ハイカル、アレクサンダー・アギャルクワ、ノー・ハキム・ハサン、アシマウィ・ヤキン
🟨JDT(3):シェーン・ローリー、シャールル・サアド、ナタニエル・シオ
MOM:ムカイリ・アジマル(スランゴール)

2022年9月3日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 5-0 マラッカ
⚽️トレンガヌ:クパー・シャーマン(16分)、ニック・シャリフ・ハセフィ(62分)、チェチェ・キプレ3(67分、75分、81分)
🟨トレンガヌ(1):マヌエル・オット
🟨マラッカ(0)
MOM:チェチェ・キプレ(トレンガヌ)

2022年シーズン スーパーリーグ順位表(第17節終了時)

チーム勝点
1JDT1613204483644
2SAB17113328161236
3NSE1795324141032
4TRE179262516929
5KLC166462227-522
6SRP176382727021
7KDA156361925-621
8SEL164572727017
9MEL164572028-817
10PJC173771627-1116
11SWU1742111537-2214
12PEN1714121935-267
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

2022年シーズン スーパーリーグ 得点ランキング(第17節終了時)

ゴール数選手名所属
121ベルグソン・ダ・シルヴァJDT
213フェルナンド・フォレスティエリJDT
312カイオンSEL
410ロナルド・ンガKDA
58グスタヴォ・アルメイダNSE
8ダレン・ロックPJC
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

9月10日のニュース
MFLはマラッカに給料未払い問題の解決を指示
MFLが規則改定:一転してリー・タックら帰化選手のマレーシア人選手登録を認める

国内2大カップ戦の一つ、FAカップの決勝戦ジョホール・ダルル・タジム(JDT)対トレンガヌはいよいよ今日の午後午後9時(マレーシア時間)にキックオフ。昨季最後の試合となった2021年マレーシアカップ決勝以来、国内では無敗を誇るJDTは6年ぶり2度目の、トレンガヌは11年ぶり3度目の優勝を目指します。マレーシアサッカーではあるあるですが、ジョホール州とトレンガヌ州とも、自州を本拠地とするチームがFAカップに優勝すれば翌日を週の公休日とし、州政府としてチームに褒賞を与えることも発表しています。8万5000人分のチケットが既に売り切れており、2年ぶりの開催となったFAカップ決勝は大いに盛り上がりそうです。

MFLはマラッカに給料未払い問題の解決を指示

Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFLは、給料未払い問題が明らかになっているマラッカ・ユナイテッドFC(以下マラッカ)に対して、9月20日まで全ての未払い給料を完済するか、分割による支払い方法などで選手や監督、コーチらとの合意を得ることを求め、それが達成されない場合には今季のマレーシアカップ出場権を剥奪すると発表しています。

サラワクに対して既に文書での通告は9月6日に行われているということですが、過去2シーズンにわたり給料未払い問題を起こし、その度に勝点剥奪処分まで受けているチームに対して寛大すぎる猶予だとは思いますが、この記事では、期限までに完済、或いは分割支払いの合意を選手との間で得られない場合には、今季のマレーシアカップ出場権剥奪に加え、来季のクラブライセンス申請が認められない、つまり来季の新スーパーリーグに参加できなくなる可能性にまで言及しています。

MFLが規則改定:一転してリー・タックら帰化選手のマレーシア人選手登録を認める

Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、Mリーグ1部スリ・パハンFC(以下パハン)から出されていた、帰化選手のマレー人選手登録不許可に対する異議申し立てを受け入れるとともに、直ちに規則を改定し、マレーシア国籍を取得したリー・タック、エセキエル・アグエロの両選手をマレーシア人として登録することを認めることを、公式サイト上で発表しています。

パハンは今季2度目のトランスファーウィンドウ期間(5月28日から6月24日)に、タック、アグエロ両選手をマレーシア人選手として登録しようとしましたが、MFLはその登録を受け付けていませんでした。

MFLの競技規定では、外国籍選手がマレーシア国籍を取得した場合でも、Mリーグでマレーシア人選手として登録できるのは、さらに5年間のプレー期間を経ることが必要としていましたが、これがマレーシア国憲法が規定する「すべてのマレーシア人は同等の権利を有する」ことに抵触するとして、パハンはMFLに対して両選手のマレーシアンジ選手としての登録拒否の再考と規定の改定を求めていました。

今回の規定変更により、タック、アグエロ両選手は、マレーシアカップグループステージからマレーシア人選手としての出場が可能になっています。

*****

パハンには既にレガシー帰化選手(マレーシア人の両親または祖父母を持つ帰化選手)として英国生まれのDFニコラス・スウィラッド、オーストラリア生まれのMFデヴィッド・ロウリー、マレーシア生まれながらイタリア育ちのMFショーン・ジャンネッリがおり、タック、アグエロ両選手が加わわることで帰化選手が合計5名となります。これに外国籍選手5名が加わることで、リーグ戦ではここまで6勝3分8敗の7位という成績のパハンは、マレーシアカップでは一転してダークホースとして浮上しそうです。

Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第17節結果とハイライト

Mリーグ2部プレミアリーグは今季残り2節となりました。来季から1部スーパーリーグとの統合が決まっているため、「1部昇格争い」は無くなり、3部に当たるM3リーグとの入れ替え戦に臨む2チームを除き、全てのチームが来季は1部でプレーすることなっています。

今節を終了し、本来なら1部昇格となる2チームが決定しています。1つは「金は出すが物も言う」オーナーとして知られているノリザム・トゥキマン オーナー所有のクランタンFCです。2012年には国内三冠(リーグ戦、FAカップ、マレーシアカップ)を達成、通算でもスーパーリーグ優勝2回、FAカップ優勝2回、マレーシアカップ優勝2回といった実績があるクランタンFCは、その後、放漫経営で運営危機に陥ります。選手や監督、コーチへの給料未払いが続き、それと共にチーム成績も急降下、2019年にプレミアリーグに降格していました。しかし2020年オフにノリザム氏がオーナーとなって以降、2年でスーパーリーグ復帰を果たしています。

従来の仕組みであれば昇格となっていたもう1チームは、谷川由来選手が所属するクチンシティFCです。クタンタンFCとは異なり、来季がクラブ史上初のスーパーリーグ昇格となるクチンシティFCは、2019年にはクチンFAとしてM3リーグでプレーするチームでした。この年、リーグ2位で入れ替え戦に臨むと、プレミアリーグ11位のサラワクFA(当時、現サラワク・ユナイテッドFC)を破ってプレミアリーグに昇格しました。サラワクFAはサラワク州サッカー協会が運営するチームであるのに対し、クチンFAはサラワク州サッカー協会傘下のクチン市サッカー協会運営のチームという関係で、いわば「だらしない親」を「しっかり者の子」が制した格好です。
 次々にチームの歴史を更新してきたクチンシティFCですが、昨季就任したイルファン・バクティ監督の手腕も大きく影響を与えています。71歳のイルファン監督は、トレンガヌなどで監督を務め、FAカップ優勝の経験もあります。監督就任初年度となった昨季のクチンシティFCは7勝6分7敗、得点22失点22の5位で昇格を逃したものの、今季はここまで10勝3分4敗、得点29失点19の3位と、スーパーリーグ昇格に恥ずかしくない成績を挙げています。リーグ改変の影響ではなく、従来の規定に従っても来季スーパーリーグ昇格を決めたことで、クチンシティFCは、今季終了後に引退を発表したイルファン監督の花道を飾ることにもなりました。

2022年9月3日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
FAM-MSNプロジェクト1-0 PDRM
⚽️FAM:ハズワン・ハサン(10分)
🟨FAM(0)
🟨PDRM(5):ムアズ・ザイナル・アビディン、シャフィク・アズミ、イザット・ズハイリ・ザカリア、ミロシュ・ラチャニー、アズリ・レザ・ザムリ
MOM:ハズワン・ハサン(FAM-MSNプロジェクト)

2022年9月3日@UITMスタジアム(スランゴール州シャー・アラム)
UITM 2-1 ペラ
⚽️UITM:ファリス・ハフィズ・アザル2(15分、24分)
⚽️ペラ:ワン・ザック・ハイカル(35分)
🟨UITM(2):アフザル・アクバル、ファーミ・サブリ
🟨ペラ(2):アフィフ・アシュラフ、カイルル・アシュラフ・ラムリ
🟥ペラ(1):カイルル・アシュラフ・ラムリ(🟨x2)
MOM:レンディ・リニン(UITM)

2022年9月4日@スルタン・ムハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン 1-2 スランゴール2
⚽️クランタン:ガファル・アブドル・ラーマン(76分)
⚽️スランゴール:アリフ・イズワン(29分)、シャルヴィン・セルヴァクマラン(34分)
🟨クランタン(3):フェリペ・エレダ、カイルル・ヘルミ・ジョハリ、イクワン・ヤゼク
🟨スランゴール(2):イズル・アダム・スハイミ、シャズワン・サルヒン
MOM:シャルル・ナジーム(スランゴール)
クランタンの原健太選手は、81分に交代出場し、試合終了までプレーしています。

2022年9月4日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチンシティ 2-1 クランタン・ユナイテッド
⚽️クチンシティ:アブ・カマラ(63分)、アミル・アムリ・サレー(68分)
⚽️クランタン:アスラフ・アリフディン(90+3分)
🟨クチンシティ(1):シャフィジ・イクマル
🟨クランタン(0)
MOM:アミル・アムリ・サレー(クチンシティ)
 クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。
 クランタン・ユナイテッドの深井脩平、本山雅志の両選手はいずれも先発してフル出場しています。

2022年9月4日@MBPGスタジアム(ジョホール州パシル・グダン)
JDT II 3-0 トレンガヌII
⚽️JDT:ダリル・シャム(6分)、ウマル・ハキム(82分)、ムサ・シディベ(85分)
🟨JDT(2):ムサ・シディベ、ゲイブリエル・ニステルローイ
🟨トレンガヌ(3):ルーク・ウッドワード、アルグジム・レゾヴィッチ、リズアン・ラザリ
MOM:レヴィ・マディンダ(トレンガヌ)

2022年シーズン プレミアリーグ順位表(第17節終了時)

チーム得失差勝点
1JDT17123237132439
2KEL17113326131336
3KCH17103429191033
4TRE179352718930
5KLU176652218424
6PDRM176382027-721
7UITM1752101725-817
8SEL174491424-1016
9FAM1722131031-218
10PRK1751111529-14*7
ペラ(PRK)は給料未払い問題の解決が遅れたことにより、勝点9の剥奪処分を受けています。
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

2022年シーズン プレミアリーグ 得点ランキング(第17節終了時)

ゴール数選手名所属
111アブ・カマラKCH
28フェルナンド・ロドリゲスJDT
8ンジョク・ジェイコブKLU
8マルティン・アダメックPDRM
8ダリル・シャムJDT
67ジョーダン・ミンターTRE
KEL-クランタン、PRK-ペラ、KLU-クランタン・ユナイテッド、TRE-トレンガヌII、SEL-スランゴール2、FAM-FAM・MSNプロジェクト、KCH-クチンシティ、JDT-JDTII

9月8日のニュース
AFCカップ-KLシティが地区間プレーオフ決勝進出、優勝まであと2勝

AFCカップ-KLシティが地区間プレーオフ決勝進出、優勝まであと2勝

昨日9月7日にAFCカップ地区間プレーオフ準決勝が行われ、Mリーグ1部スーパーリーグのKLシティがATKモフン・バガン(インド)を3-1で破り、地区間プレーオフ決勝進出を決めています。

相手ホームのソルトレイク・スタジアム(西ベンガル州コルカタ)での対戦となったこの試合は、試合開始前から一筋縄では行きませんでした。インドサッカー協会(AIFF)に対するFIFAの処分により、一時はこの試合を不戦勝で勝ち抜ける可能性があったKLシティは、8月26日に処分が解除され試合開催が決まると、 一旦はホームのKLフットボールスタジアムでの開催をAFCに求めるも、会場変更に伴う手続きを行うには時間がないとして却下されました。

コルカタでの試合が決まると、今度はビザ取得でも問題が起こります。直行便ならクアラ・ルンプールから5時間で到着するところが、ビザ発給の遅れにより直行便に乗れなかったチームは乗り継ぎを含む12時間の長旅を経て、コルカタに到着したのは試合前日の夜でした。

そうした状況を経て行われた試合は、フランス代表MFポール・ポグバの兄フロランタン・ポグバが主将を務めるATKモフン・バガンに対し、KLシティのボジャン・ホダック監督は、自陣に引いて守備に数をかける戦術を選択すると、相手はそれに対応できず前半0-0で終了します。しかし、先制点を挙げたのはKLシティでした。60分に主将のパウロ・ジョズエがペナルティエリアの外から自身今大会の5得点目(今大会最多)となるゴールを決めて、KLシティが1~0と先行します。

このゴールでATKモフン・バガンは積極的にゴールを狙い始めますが、KL守備陣の好守もあり時計は90分に近づき、6分のアディショナルタイムが告げられます。このままKLシティが逃げ切るかと思われましたが、90分にATKモフン・バガンは途中出場のファルディン・アリ・モラがKLシティGKアズリ・アブドル・ガニが防いだシュートのこぼれ球を押し込んで土壇場で同点に追いつきます。

スタンドを埋め尽くしたATKモフン・バガンが熱狂しますが、それも長続きはしませんでした。その2分後。途中出場のファクルル・アイマンがパウロ・ジョズエの右サイドからのフリーキックに頭で合わせてゴール!KLシティが再びリード!。さらにその3分後には、全員を挙げて攻撃に転じるATKモフン・バガンサイドに飛んだゴールキックの処理に相手DFがもたつく間に、やはり途中出場のロメル・モラレスがそのルースボールをカットするとそのままペナルティエリアに持ち込みシュート。決定的な3点目を挙げたKLシティが2点差を守ったまま試合が終了しました。

大会初出場ながらここまで勝ち上がってきたKLシティは、もう一つの地区間プレーオフ準決勝でイースタンFC(香港)を破ったPFCソグディアナ・ジザフ(ウズベキスタン)と相手ホームのソグディアナスタジアムで10月5日に決勝進出をかけて対戦します。

AFCカップ2022 地区間プレーオフ準決勝
ATKモフン・バガン 1-3 KLシティ
⚽️ATKモフン・バガン:ファルディン・アリ・モラ(90分)
⚽️KLシティ:パウロ・ジョズエ(60分)、ファクルル・アイマン(90+2分)、ロメル・モラレス(90+5分)
🟨ATKモフン・バガン(2):スバシシュ・ボーズ、フロランタン・ポグバ
🟨KLシティ(3):カマル・アジジ・ザブリ、ジャンカルロ・ガリフオッコ、ジョーダン・ミンター

以下は、この試合の両チームの先発XIとハイライト映像。(ハイライト映像はアストロアリーナのYouTubeチャンネルより)

9月4日のニュース
パハンのリー・タックがマレーシア国籍取得
エリートアカデミーの2選手が欧州クラブのトライアルに参加
ケランタンの来季の監督候補に元U16代表監督らの名前が上がる
プロ選手会がマラッカの給料未払いを公表

パハンのリー・タックがマレーシア国籍取得も一部からは疑問の声が

英国出身でスリ・パハン(以下パハン)の契約中のリー・タックがマレーシア国籍を取得したと、英字紙スターが報じています。34歳のタック選手が自身のインスタグラムで国籍取得を明らかにしたということです。

2017年にヌグリスンビランと契約してたタック選手は、2018年から2020年まではトレンガヌ、2021年からはパハンと契約しています。

パハンは、このタック選手とセルヒオ・アグエロことエセキエル・アグエロのいずれも2017年からMリーグでプレーする両選手のマレーシア国籍を取得を支援する方針を明らかにしていました。なお、スターはアグエロ選手のマレーシア国籍取得については明らかにされていないと報じています。

マレーシア人の父母や祖父母を持たない帰化選手は、いずれもMリーグ1部のジョホール・ダルル・タジム(以下JDT)に所属するモハマドゥ・スマレ(ガンビア出身)、ギリエルメ・デ・パウラ(ブラジル出身)、リリドン・クラスニキ(コソボ出身)の3選手がいます。(クラスニキ選手は、今季はタイ1部のコーンケン・ユナイテッドFCに期限付き移籍中)

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マレーシアサッカー協会FAMは、2018年に代表チーム強化を目的とした「帰化支援プログラム」を設け、FIFAの規定に従い、国内で5年以上継続してプレーした外国籍選手を対象にマレーシア国籍取得申請を支援していました。上記のデ・パウラ、クラスニキの両選手はこのプログラムによって、マレーシア国籍を取得した選手です。しかし、この両選手が2020年に行われたFIFAワールドカップ2022年大会予選で活躍できなかっただけでなく、最終的には先発メンバーから外れるなど、代表チームへの貢献がほとんどなかったことから、「代表チームの役に立たない帰化選手を生み出すことは、利点がないどころか、マレーシア人選手の出場機会を奪う欠陥プログラムである。」として、国内のサッカーファンや選手OBがFAMと帰化支援プログラムを激しく非難し、その結果、FAMは帰化支援プログラムの一時凍結を打ち出す事態に追い込まれています。
 今回マレーシア国籍を取得してタック選手は当初、祖母がマレーシア人であると主張し、それを理由にFAMの支援を得て、マレーシア国籍取得の申請を行おうとしていましたが、それを証明する書類が提出できなかったことから、一部ではその主張に疑惑の声が上がっただけでなく、非難すら受けていました。
 また様々な理由から、現在でも西マレーシア(マレー半島部)では10000万人以上、東マレーシア(ボルネオ島)ではそれ以上とも言われるマレーシア国籍を持たない子供たちがお李、義務教育を受けられないなどの不利益を被っており、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からは状況の改善勧告を受け、国内のNGOが彼らの国籍申請を支援する一方で、その多くがマレー系ではないことから、マレーシア政府がその申請を却下するケースが多く発生しています。このため、パハンのオーナーであるパハン州王族の支援を受け、申請からわずか数ヶ月でタック選手が国籍を取得できたことから、NGOや複数の国会議員からはマレーシア政府の「ダブルスタンダード」についても激しい非難が集まっています。

エリートアカデミーの2選手が欧州クラブのトライアルに参加

モクタル・ダハリアカデミーAMDは、マレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会MSNとマレーシアサッカー協会FAMが共同で運営する「国家サッカー養成プログラム」NFDPの中核をなす国内トップのエリートサッカーアカデミーです。このアカデミーに所属するいずれも17歳の2選手が欧州クラブのトライアルに参加すると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

ハイカル・ダニシュとロヒシャム・ハイカルの2選手は、やはりAMD所属のアブ・カリリとともに今年6月にフランス2部のアヌシーFCとルクセンブルグ1部のラシンFCユニオン・ルクセンブルクへおよそ2週間野「留学」を行いましたが、その際にハイカル、ロヒシャム両選手に対してラシンFCが興味を示した結果、今回、契約を前提としたトライアル参加を求められたと、ティ・リアンカー青年スポーツ省副大臣が説明しています。

今月9月14日から始まるAFC U20アジアカップ予選(モンゴル)に出場するマレーシアU19代表にも選出されているハイカル、ロヒシャム両選手は、契約となれば、ベルギー1部KVコルトレイクに所属するルクマン・ハキムに続いてヨーロッパのクラブに所属するAMDの卒業生となります。

さらにティ・リアンカー青年スポーツ省副大臣は、2002年生まれ2019年卒業の1期生から2004年生まれ2021年卒業の3期生までの卒業生117名中、前述のルクマン選手を除く残り116名全員がMリーグクラブとプロ契約を結んだことを明らかにし、マレーシア政府とFAMが運営するAMDの実績を強調しています。

ケランタンの来季の監督候補に元U16代表監督らの名前が上がる

Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLは、来季2023年シーズンは現在の1部スーパーリーグと2部プレミアリーグを統合して、18チームによる1部スーパーリーグとする第改革案を発表しており、今季の順位にかかわらず、プレミアリーグの全クラブが、MFLの設ける規定を満たせば、来季はスーパーリーグでプレーすることになります。

この結果、1部スーパーリーグへの昇格争いがなくなってしまい、やや迫力に欠けるMリーグ2部プレミアリーグですが、10チームで構成される今季は今週末に開催されている第17節を含めて残り2節となりました。そんな中でJDTのセカンドチームJDT IIと激しく首位争いを繰り広げているのが、クランタンFC(以下クランタン)です。

そのクランタンが来季の候補をリストアップし、その中には元U16代表監督で、この前の記事でも取り上げた、マレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会MSNとマレーシアサッカー協会FAMが共同で運営する「国家サッカー選手養成プログラム」NFDPの責任者も務めたリム・ティオンキム氏も含まれていると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

この記事では、クランタンの「物言う」オーナー、ノリザム・トゥキマン氏の話として、このリム氏のテクニカルディレクター就任の可能性もあるとしています。

「来季の1部昇格に向けて、現在はヨーロッパや韓国、日本出身の候補者10名をリストアップしている。リム氏とは電話で話をしただけで、直接、面会はしていないことから、現時点では監督となるのか、テクニカルディレクターとなるのかは決まっていない。チームはできる限り最善の監督を見つけたいと思っており、リム氏はあくまでも候補者の1人である。」と話したノリザムオーナーは、新たな監督には実績だけでなく、クランタンの今後のビジョンを自分と共有できる人物であることも求めたいとも話しています。

リム・ティオンキム氏は、現役時代はヨーロッパでプレー経験がある数少ないマレーシア人で、引退後はドイツ1部バイエルンミュンヘンのユースチームコーチを務めていました。2013年にNFDPが立ち上げられるとそのテクニカルディルクターとして、招聘され、その後2016年にはNFDPのエリートアカデミーAMDの責任者に就任しました。しかし同時に就任したU16代表が、自国開催となった2018年のAFC U16選手権のグループステージを最下位で敗退すると、U16代表監督とAMD責任者としての月給が手取りで17万5000リンギ(現在のレートでおよそ550万円)と明らかになるなど逆風が吹く中、当時の青年スポーツ大臣の一存で、2020年までとなっていた契約が解除されています。

プロ選手会がマラッカの給料未払いを公表

マレーシアプロサッカー選手会PFAMは、Mリーグ1部スーパーリーグのマラッカ・ユナイテッド(以下マラッカ)で2ヶ月分の給料未払い問題について、報告を受けたことを明らかにしています。

PFAMのイズハム・イスマイルCEOは、6月と7月の給料が未払い、さらに1月分の給料でも一部で未払いが起こっているとして、マラッカの運営に勧告を発するとともに、マレーシアサッカー協会FAMの紛争解決室NDRCへ申立を行なったことも発表しています。

「FAMのNDRCには問題解決のため、直ちに、選手から事情聴取するための日程を作成することを求めたい。」と述べたイズハムCEOは、他のクラブの選手でも給料未払いが起こっている場合には直ちにPFAMに報告するするよう、呼びかけています。

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またか、と言ったマラッカの給料未払い問題です。一昨季、昨季といずれも同様の問題から3点の勝点剥奪などの厳しい処分を受けていますが、来季のリーグ再編に向けて2部への降格が行われないため、現在8位のマラッカですが、これまで以上に問題意識が低いのかもしれません。FAMはマレーシアカップの出場権剥奪などの処分を検討しているようですが、どれほどの効果があるのかは不明です。


9月2日のニュース
U23代表の首脳陣の顔ぶれが発表-注目の新監督はエラヴァラサンA代表コーチが就任
東南アジアサッカー連盟AFF選手権の組み合わせが決定-マレーシアはベトナムと同組に

U23代表の首脳陣の顔ぶれが発表-注目の新監督はエラヴァラサンA代表コーチが就任

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイト上で、U23代表の新たな首脳陣を発表しています。FAMは今年7月にU23代表監督のブラッド・マロニー氏との契約を解除しており、U23代表監督が不在になっていました。

現在は母国オーストラリアのU17代表監督に就任しているマロニー氏は、2014年にマレーシアU23代表のコーチに就任し、当時のU23代表監督だったオン・キムスイ現サバ監督を支え、2018年にはマレーシアをAFC u23アジアカップ初出場に導いています。その後はU19代表監督などを経て、昨年2021年からはU21代表監督に就任し、今年の東南アジア競技大会通称シーゲームズ、AFC U23アジアカップで指揮を取りました。しかし期待が高かったU23代表が、シーゲームズでは4位、U23アジアカップではグループステージで最下位という成績を収めると、FAMとマロニー氏は双方合意の上で、契約を解除していました。

その後、FAMは「A代表のキム・パンゴン監督のサッカーを理解している人物で、マレーシア人と」いう条件で人選を進めていることを明らかにしており、エラヴァラサン代表コーチがその条件に合っているということで、噂レベルではこれまでも名前が上がっていましたが、結局、その通りになりました。60歳のエラヴァラサン氏は、今季開幕前にMリーグ1部スーパーリーグのサラワク・ユナイテッドの監督を辞して、A代表コーチに就任しています。2020年からサラワクの監督を務めたエラヴァラサン氏は、サラワクの他、2019年にはPDRM、2018年にはマラッカ・ユナイテッドの監督を務め、それ以前も他のMリーグクラブで指揮を取ってきた実績もあります。

なお、来年のU23代表カレンダーは、5月にシーゲームズ(カンボジア)、9月にアジア競技大会(中国)がある他、U23アジアカップ2024年大会予選や、パリオリンピック予選などが控えています。

またFAMはエラヴァラサンU23代表監督を支えるコーチ人事も発表しています。ヘッドコーチにはスペイン出身のフアン・トーレス・ガリド氏、フィットネスコーチは韓国出身のパク・ジヒョン氏、パフォーマンス・アナリストには韓国出身のイ・ジェユン氏がそれぞれ新たに就任する一方で、ゴールキーパーコーチはマレーシア人のクリス・ヨン氏が残留しています。

なお、エラヴァラサンU23代表監督は、今後もA代表のコーチを兼任することも併せて発表されています。

東南アジアサッカー連盟AFF選手権の組み合わせが決定-マレーシアはベトナムと同組に

東南アジアサッカー連盟AFFは公式サイトで、今年12月から来年1月にかけて開催されるAFF選手権三菱電機カップ2022のグループステージの組み合わせを発表しています。

直近のFIFAランキングで148位のマレーシアはB組に入り、東南アジア最強のベトナム(同97位)の他、ミャンマー(同158位)、シンガポール(同159位)、ラオス(183位)と同組になっています。ちなみにベトナムとは2016年大会から4大会連続で、グループステージでは同じ組になっており、過去3大会のグループステージでの対戦成績は0勝3敗得点0失点6と完敗です。また2018年大会では決勝でも対戦して1分1敗得点2失点3とやはり勝利できていません。

東南アジア代表チームの韓流ブームに乗ったマレーシアは、今年に入ってキム・パンゴン監督が就任すると、予選を経ての出場は43年ぶりとなるAFCアジアカップ2023年大会出場を決めるなど、チームは上昇傾向にあり、今年のAFF選手権ではベトナム代表を率いるパク・ハンソ監督との韓国指導者対決で、この連敗記録ストップを目指すとともに2018年大会決勝で敗れたリベンジを果たし、2010年大会以来の優勝も狙っています。


8月31日のニュース
今日は独立記念日と言うことでムルデカ大会について書いてみます

今日8月31日は独立記念日、マレーシア語でハリ・ムルデカ(ハリは「日」、ムルデカは「独立」)で、マレーシア国民の祝日になっており、各地で記念パレードなども行われています。ただわかりにくいのは、今日はマレーシアの独立記念日ではないと言うこと。英国の植民地だったマレー半島、いわゆる「英領マラヤ」が1957年8月31日に英国から「マラヤ連邦」として独立したことを記念する日です。しかし現在のマレーシアは、マレー半島に加えてボルネオ島のサバ、サラワクで構成されており、マレーシアが成立するのは1963年9月16日なので、サバ、サラワクにとってこの8月31日は特に意味がある日ではなく、祝賀ムードも半頭部とは温度差があります。(ただし、英領マラヤ同様、英国の直轄地となっていたサバは、1963年のマレーシア成立に合わせて、1963年8月31日に英国から自治権を回復しているので、8月31日はサバの独立記念日として祝われます。)

前置きが長くなってしまいましたが、独立記念日がマレーシア語で「ハリ・ムルデカ」と聞いて、「ん、ムルデカ?どこかで聞いたことがあるぞ。」と思った年配のサッカーファンがいるかも知れません。それが、かつては日本代表も出場していた「ムルデカ大会」です。1957年のマラヤ連邦独立を記念して第1回大会が開かれたこの大会は、マラヤ連邦初代首相でもあり、同時期にマラヤサッカー協会(現マレーシアサッカー協会)FAM会長でもあったトゥンク・アブドル・ラーマンの肝煎りで始まった国際親善サッカー大会です。

そしてムルデカ大会が開催されたのがクアラルンプールにあるムルデカ・スタジアムです。1957年にマラヤ連邦の独立が宣言された、マレーシアの歴史にとっても重要な場所でもあるムルデカ・スタジアムは1998年にブキ・ジャリル国立競技場(クアラルンプール)ができるまでは、代表チームの本拠地でもありました。ムルデカ大会の他、オリンピック予選などでも使わレ、さまざまなドラマの舞台となったムルデカ・スタジアムですが、残念ながら現在は使用されていません。

話をムルデカ大会に戻しましょう。1957年に始まったこの大会は東南アジア最古の国際親善大会(およそ10年後にはタイでキングスカップが始まっています)として、北米を除く世界各地のクラブチームや代表チームが出場しています。第1回大会(1957年)の出場チームを見ると、マラヤ連邦の他は香港リーグ選抜、カンボジア、南ベトナム、シンガポール、インドネシア、タイ、ビルマとなっています。南ベトナム(現ベトナム)、ビルマ(現ミャンマー)といった国名に歴史を感じます。

日本が初めてムルデカ大会に出場したのは 1959年の第3回大会で、この時は1回戦で香港リーグ選抜と引き分け、再戦では2-5で敗れて2回戦に進めずに終わっています。日本代表の試合結果が掲載されている日本サッカー協会JFAのホームページによれば、敗れた香港戦での2ゴールはいずれも当時早稲田大学2年生だった(!)川淵三郎氏が決めています。

日本の最高成績は1963年に開催された第7回大会と1976年に開催されたでの準優勝です。いずれも7チームの1回戦総当たり方式で開催された両大会で、第7回大会は6試合で4勝1分1敗、優勝した台湾に0-2で敗れ、第20回大会では6試合で2勝4分0敗、決勝戦では優勝したマレーシアに0-2で敗れています。

また日本が最後にムルデカ大会に出場したのは1986年の第30回大会で、グループステージではチェコのSKシグマ・オロモウツに敗れてグループステージB組2位にとなった日本は、準決勝でA組1位のマレーシアと対戦し1-2で敗れています。ちなみにこの試合で日本のゴールを決めたのが「アジアの核弾頭」(ちょっと古いかな)原博美、マレーシアの2ゴールはMリーグ1部スーパーリーグのペナンで監督を務めるザイナル・アビディン・ハサンと同じスーパーリーグのスリ・パハンで監督を務めるドラー・サレーでした。日本はこの後、1985年から名称が変わったキリンカップを使って自国開催大会を使っての代表強化に舵を切りつつあったことから

そして私が始めた観戦したムルデカ大会が1988年の第32回大会でした。先日、本棚を整理していたらこの32回大会の大会プログラムが出てきましたので、まずは表紙の写真をお見せします。タバコブランドのダンヒルが大会のスポンサーと言う、今では考えられない、古き良き時代でした。

この32回大会の日程と出場国は以下の通りでした。

今では考えられませんが、ムルデカ大会やキリンカップなどの当時の国際大会は、ナショナルチームとクラブチームが混在する大会でした。この大会も上の出場国中、オーストリアはFCチロル・インスブルック(この記事を書くために調べたところ、2002年に破産し、解散していました。)、ドイツはハンブルガーSVがその肩書きで出場しています。下がハンブルガーSVの紹介ページですが、マンフレート・カルツ、後にJリーグ浦和でプレーするウーベ・バイン、当時はまだ20歳のオリバー・ビアホフなどの名前が見えるのが興味深いです。


そしてマレーシア代表。なお、チームマネージャは当時のパハン州皇太子、現在はパハン州のスルタンで現在のマレーシア国王でもあります。

そんなムルデカ大会ですが、1990年代に入りアジアの各国代表がFIFAワールドカップやAFCアジアカップの予選などに注力するようになると、1957年の第1回から毎年開れた大会が隔年開催となり、さらに参加するチームも東南アジアの代表チーム、さらにA代表ではなくU23代表の大会になるなど大会の「格」も下がり、2013年にタイ選抜、ミャンマー、シンガポールを招いて行われた第41回大会を最後に開かれていません。

後発のキングスカップやキリンカップが続いている一方で、アジア最古の大会とも言えるムルデカ大会が開催されないのは、大会そのものの魅力の低下による観客減、代表チームやクラブチームの日程の過密化など、様々な要因がありますが、何と言っても代表チームの弱体化が大きな理由でしょう。つまり、直近のFIFAランキングで147位のマレーシアが主催する大会に出場したいナショナルチームがどれだけあるのか、と考えるとムルデカ大会が再び開催されることはもうないのかも知れないと、65回目のハリ・ムルデカに思いました。