5月28日のニュース:クダ州新首相はクダ州FAの支援を約束、カッシオはケランタン州FAとの再交渉に応じる用意あり、国内フットサルリーグも9月再開の予定

クダ州新首相はクダ州FAの支援を約束
 Mリーグ1部のクダFAの選手およびスタッフには2月以降は給料が支払われておらず、その原因の一つが政変によるクダ州政府内の混乱が挙げられていますが、就任したばかり尾クダ州のムハマド・サヌシ・モハマド・ノー新州首相は、クダFAを運営するクダ州サッカー協会KFAを支援を行うことを表明しています。
 マレーシアの通信社ブルナマによれば、KFAは政府機関ではないものの、クダ州民によって高く評価されているクダ州のサッカーのために、クダ州政府は未払い問題問題解消のためにKFAへの金銭的な支援を行うとしています。
 クダ州政府庁舎で記者会見したサヌシ州首相は、マレーシアサッカー協会FAMにアドバイスを求め、それに従った方法でKFAの立て直しを行いたいと話しています。また5月19日に前州政権がKFAに配分することを承認したとされている150万リンギ(およそ3720万円)についてサヌシ州首相は「前政権が政権交代直前に承認を行ったと聞いているが、その分配については前政権下で審議されたもので、150万リンギは金額も大きいため、現政権のもとで再度審議を行う必要があると考えている。前政権の承認が妥当かどうかを検討したい。またその一方で別の形での未払い給料問題解決も模索したい」と話しています。
 またサヌシ州首相は、ムクリズ・マハティール前州首相に対して、「ムクリズ氏は州首相を辞任したが、兼任していたKFA会長職の辞任はKFAの総会中に行われるべきである。KFA会長辞任によって起こっているKFA内の問題の解決を求めたい。」とも話しています。

カッシオはケランタン州FAとの再交渉に応じる用意あり
 マレー語紙ブリタハリアンによれば、ケランタン州サッカー協会KAFAとカッシオ・フランシスコ・デ・ジーザスとの間で、未払い給料問題解決に向けての再交渉がおこ縄える可能性があるようです。
 先日のこのブログでも取り上げましたが、FIFAによるカッシオ選手への未払い給料62万9620リンギ(およそ1560万円)の支払い命令に関する仲裁をKAFAがスポーツ仲裁裁判所CASへ申し立てた結果、その申し立てが受理されました。そして、その申し立て内容の精査に2週間かかることから、FIFAによる支払命令執行にも2週間の猶予が与えられています。
 その一方で、この再交渉についてカッシオ選手の弁護士であるザフリ・アミヌラシド氏は、カッシオ選手の権利が保障され、再交渉終了後に再び問題が発生しないよう、KAFAとカッシオ選手間の単なる再交渉ではなく、CASの仲介による「調停」とすべきであると主張しています。「両者が再交渉を行い、同意した結果、調停役のCASは文書で示されたその同意内容を承認するという形にすることを望んでいる。」と話すザフリ氏は、そうすることによってKAFAはCASが承認した調停内容に従う義務が発生し、選手の利益が損なわれる危険性がなくなるとしています。

国内フットサルリーグも9月再開の予定
 国内リーグMリーグは9月再開を目指して、マレーシア政府保健省と国家安全保障委員会の承認を待っているところですが、やはり中断中の国内フットサルリーグについても同様に9月1日からの再開を目指すことをマレーシアサッカー協会FAMが発表しています。
 マレー語紙ハリアンメトロによると、12チームが参加する国内のフットサルリーグ、マレーシアプレミアフットサルリーグMPFLは、試合数の変更などは行わず22試合を予定通り行う予定ということです。なお、MPFLは3月15日の第1節終了後にリーグが中断しており、各チームとも21試合が残っています。
 なおMリーグは日程を改編し、Mリーグ1部スーパーリーグ、2部プレミアリーグとも12チームの1回戦総当たり形式となることが決まっており、既に第4節まで終えている両リーグは9月中に全日程を無観客試合で行う予定が発表になっています。

5月4日のニュース:今季終了後の降格と昇格と3部リーグ再開の詳細については6月に決定、給料削減指針は給料未払い問題を抱えていないクラブにのみ適応されることをFAMが強調

今季終了後の降格と昇格と3部リーグ再開の詳細については6月に決定
 Mリーグ1部スーパーリーグ、2部プレミアリーグとも12クラブの1回戦総当たりの11試合という変則日程で今季を行う案を発表したマレーシアフットボールリーグMFLは、シーズン終了後の昇格と降格についての詳細を6月に発表するとしています。なお第4節開催後に中断となっているMリーグは9月1日及び2日再開、9月26日および27日終了とする日程案をMFLは発表しています。
 英字紙スター電子版によると、MFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは、現時点では降格と昇格については何も決定していないと話す一方で、降格と昇格はプロリーグに欠かせないものであり、この仕組みをなくすことによって各クラブ間の競争力が低下することは避けたいとも話し、6月に予定しているMFLの取締役会議で今季の降格と昇格に関する詳細を決定するとしています。
 また9月再開予定のMリーグは、マレーシア政府が求める標準進行手順SOPにより全て無観客試合として行われることになっていますが、入場を制限できる設備のある1部や2部のスタジアムと異なり、観客が集まることが避けられないフィールドも試合会場となるMリーグ3部のM3リーグについては、マレーシア政府のSOPに沿った運営ができない場合には、再開せずにこのまま今季は中止となる可能性があるとも話しています。
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 Mリーグは中断となる前の第4節終了時点で、1部スーパーリーグは、いずれも給料未払い問題により勝点3の剥奪(はくだつ)処分を受けたPDRM FCが12位(勝点-2)、マラッカ・ユナイテッドが11位(同3)、一方2部プレミアリーグは1位からトレンガヌFC II(勝点12)、ケランタン・ユナイテッドFC(同9)、ペナンFA(同8)、クアラルンプールFA(同8)となっています。なお、スーパーリーグ所属のトレンガヌFCのBチームであるトレンガヌFC IIには昇格資格はありません。

給料削減指針は給料未払い問題を抱えていないクラブにのみ適応されることをFAMが強調
 マレーシアサッカー協会FAMは、国内リーグの各クラブの内、選手およびスタッフと給料削減について未だ合意のできていないクラブを対象とした指針を発表していますが、この指針について、未払い給料問題を抱えるクラブを救済する手段ではないことを強調していると、マレー語紙ブリタハリアンが報じています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガムは、現時点ではどのMリーグクラブからも3月分の給料未払いが発生しているという報告は受けていないとする一方で、FAMは給料未払い問題を抱えるクラブには発表した指針に沿った給料削減を認めないとしています。
 「FAMの『地位及び法務委員会』への給料未払い問題の報告は上がってきていないが、それがそのまま給料未払い問題が発生していないという意味ではない。新型コロナウィル感染による国内の経済状況悪化によって給料の遅配が起こっている可能性がある。」「その場合、二つの状況が考えられる。一つ目は3月分の未払い給料が発生してはいるが、選手及びスタッフとクラブとの間で、支払い方法や支払い時期についての合意がされている場合で、この場合はFAMの指針を適用して4月以降の給料削減を行なって良い。」「しかし3月の給料が未払いながら、その支払い方法などで選手及びスタッフとクラブが合意していないにも関わらず、4月以降の給料削減を行いたいとするクラブに対しては、FAMは指針に沿った給料削減は認めないだけでなく、そう言った行為を行うクラブに対しては、選手の権利を守るために処罰を行う。」とラマリンガム事務局長は話しています。
 またリーグ再開案として出されている9月の再開に関しては、いつからチーム練習が可能になるのか、またどこで練習や試合を行うのかについては、アジアサッカー連盟AFCからの助言や他国のリーグの状況を見ながらFAMが指針を作成するとしています。

4月27日のニュース:FAMは手当未払い問題を抱える審判に報告を求める、全てのクラブで給料削減の合意ができているわけではない、スランゴールFCは給料削減を5月から11月まで実施

FAMは手当未払い問題を抱える審判に報告を求める
 マレーシアの通信社ブルナマは、マレーシアの国内リーグでの審判への手当て未払い問題について、マレーシアサッカー協会FAMは該当する審判に状況を報告するよう求めていると報じています。
 FAMのスチュアート・ラマインガム事務局長は、正確な状況を把握するために書面にて正式な申し立てが必要であり、そういった申し立てがあれば、FAMの審判委員会が対処すると話しています。その一方で、FAMへの申し立てを行わず、メディアに対して不服を述べるだけでは解決のより時間がかかる可能性も指摘しています。
 「FAMの審判委員会に必要な情報を電子メールあるいは書面で提出してもらえれば、FAMとして問題解決のために必要な手段を講じることができるが、それがなければ何試合で手当の支払いが行われていないのか、カップ戦やリーグ戦のどの試合なのかなどが不明のため、FAMとしては何もできない」とラマリンガム事務局長は話しています。
 また一部のサポーターからこの審判手当未払い問題についてFAMの責任を問う声が出ていることについて、ラマリンガム事務局長は「FAMが責任を負うのは試合を担当する審判の指名と、審判の養成のみであり、審判手当の支払いは国内リーグを運営するマレーシアフットボールMFLの役割である」と説明しています。

全てのクラブで給料削減の合意ができているわけではない
 マレーシアサッカー協会FAMは国内リーグ1部と2部の全てのクラブに対して、選手やスタッフとの給料削減交渉の状況やクラブの経営状況の報告を4月22日を期限として求めていました。
 全てのクラブは既に状況を報告済みであることはFAMが発表していますが、給料削減交渉については合意できていないクラブがあるようだと、マレー語紙ブリタハリアン電子版が報じています。
 全てのクラブが選手との交渉を行い、合意に至っているクラブは個々の選手の給料削減額や削減が行われる期間などをFAMに提出済みであるのに対し、複数あるとされる合意に至ってないクラブは、交渉は行われているものの選手側が給料削減額や期間に同意していないということです。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、各クラブの報告内容を精査した上で、新型コロナウィルス感染拡大による悪影響がクラブおよび選手、スタッフに及ばないような策を講じたいと話しています。

スランゴールFCは給料削減を5月から11月まで実施
 マレー語紙ブリタハリアン電子版によると、スランゴールFCを運営するスランゴール州サッカー協会FASは、選手およびスタッフとの契約内容を見直し、5月から11月までの給料を削減すると発表しています。
 FASのジョハン・カマル・ハミドン事務局長は、新型コロナウィルスによるリーグ中断による入場料収入が途絶えている以上に、現在、マレーシア全土に発令中の活動制限令によって影響を受けている複数のスポンサーからの広告料の支払いが遅れていることが給料削減実施の主な理由であるとしています。
 既に選手、スタッフには詳細を説明済みということですが、総額で290万リンギ(およそ7150万円)程度の損失が発生していることからクラブの運営が難しくなっており、今回の給料削減に踏み切らざるを得なかったとジョハン事務局長は説明しています。
 給料削減は給料の額や既婚か未婚かなどの条件をもとに3%から33%で実施し、25%以上の給料削減対象となるのは選手、スタッフ全体の5%程度になるとしています。
 しかしその一方で、この条件での給料削減に同意しているのは全体の60%程度ということで、残りの40%の選手、スタッフとは給料削減について合意に達していないということです。

4月26日のニュース:次代のエースは当面は国内で練習へ、TFC主将は給料削減の追加を申し出る、国内リーグ主催者は未払いの審判手当の支給を約束か

次代のエースは当面は国内で練習へ
 マレーシアU19代表で活躍したルクマン・ハキム・シャムスディンは、昨年2019年の東南アジア競技大会シーゲームズでは飛び級でU23代表でプレーし、今年2月には英国2部のカーディフシティーでの練習に参加した後、ベルギー1部リーグのKVコルトレイクに加入が予定されていました。しかし就労ビザ発給が遅れ、その後は新型コロナウィルス感染がヨーロッパ各地で拡大したことから、現在はマレーシア国内に留まり、当面はMFL2部のスランゴール2でのプレーを検討中であると英字紙スター電子版が報じています。
 ルクマン選手が今年最初の移籍期間にスランゴール2に登録されたことは既にこのブログでも取り上げていますが、ルクマン選手が移籍予定のベルギーリーグはリーグ打ち切りを決めながらも欧州サッカー連盟UEFAの「圧力」で決定を取り消すなど混乱が続いており、ルクマン選手の渡欧はすぐには実現しそうもありません。
 4月23日にさらに2週間の延期が発表された活動制限令下は自宅で練習中というルクマン選手は、今季のリーグ戦ではスランゴール2ではまだプレーしていませんが、リーグ再開に備えて準備を続けたいとしています。
 カーディフシティー、KVコルトレイクともマレーシア人ビジネスマンのヴィンセント・タン氏が所有するクラブで、ルクマン選手はKVコルトレイクと5年契約を結んでいます。
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 2018年のアジアサッカー連盟AFC U16選手権では、マレーシア代表はグループステージで敗退したものの、5ゴールを挙げたルクマン選手は、優勝した日本代表の西川潤選手(セレッソ大阪)らと大会得点王を分け合っています。
 ところで、このルクマン選手は練習以外の時間に、バイクで食べ物などのデリバーを行なっているという報道もあります。今はサッカーのことだけを考えて生活しても良いのではとも思いますが、とにかく、他のデリバリーの方々同様、新型コロナウィルス感染や運転するバイクの事故などには気をつけて欲しいです。

TFC主将は給料削減の追加を申し出る
 トレンガヌFCのリー・タックはイギリス出身の外国籍選手ながらチームの主将を務めていますが、このタック主将がクラブによる給料削減に加え、さらなる削減を自ら申し出たことをタック選手の代理人が明かしています。
 2018年からトレンガヌFCでプレーしているタック選手の代理人を務めるエフェンディ・ジャガン・アブドラ氏は、タック選手に代わってクラブと給料削減についての交渉を行い、その席で決まった削減額を伝え、タック選手もその額に同意したそうです。しかし、その翌日に、タック選手から連絡があり、自分の給料をさらに削減するようクラブに伝えるよう依頼があったそうで、タック選手は最終的には「かなりの額」を削減することになったということです。タック選手の他、シンガポール出身のファリス・ラムリら複数の外国籍選手の代理人も務めるエフェンディ氏は、他の外国籍選手も給料削減の必要性を理解していると話しています。
 これを報じたマレー語紙ハリアンメトロ電子版は、具体的な金額は明らかにしていないものの、この給料削減は4月分の給料から行われ、チーム練習が再開するまで続くというエフェンディ氏のコメントも紹介しています。

国内リーグ主催者は未払いの審判手当の支給を約束か
 マレーの通信社ブルナマは、国内リーグの運営するマレーシアフットボールリーグMFLが、未払いとなっている審判手当について今月中に支払う予定であるようだと報じています。
 昨季2019年シーズンのマレーシアカップ、国内リーグ3部のM3リーグ、そして今季2020年のFAカップでの試合の審判手当が未払いとなっている件について、審判を手配している複数の州サッカー協会審判部にSNSでメッセージが送られ、MFLは5月前にまでには支給するという連絡が届いたとしてます。
 この情報を得て、ブルナマはMFLとマレーシアサッカー協会FAMに審判の手当未払い問題が存在するかどうかを確認しようとしたそうですが、その問い合わせについてはMFL、FAMとも返事をしなかったとも報じています。
 なお審判手当の未払いについては、MFL、FAMともこれまで公式な発表は行っていません。
 この審判手当未払い問題は、4月21日に地元テレビ局が第一報を報じたことに端を発しますが、その際の報道内容は」審判手当の支給をMFLに拒否されたという話がSNS上で国内サッカーファンの関心を集めている」というものでした。
 ブルナマによれば、審判手当の未払いはMFLクラブとは無関係であること、またこの審判手当未払いは、つい最近の問題ではなく、過去にも起こっていたということです。
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 もしこの報道が事実だとすれば、未払い給料問題を抱えるクラブをMFLが罰するという図式に説得録がなくなるどころか、むしろそれが滑稽に見えてしまいます。しかし果たして実際はどうなのかは、MFLおよびFAMからの公式声明もないということですので、続報を待ちたいと思います。

4月25日のニュース2:速報-早急なリーグ再開希望に政府が「レッドカード」

早急なリーグ再開希望に政府が「レッドカード」
 本日4月25日の新型コロナウィルス関連の定例記者会見で、 イスマイル・サブリ・ヤアコブ上級相(兼国防相)は、新型コロナウィルス感染拡大による活動制限令により現在中断中の国内リーグを早期再開することについて否定的な見解を述べていることを、マレー語紙ブリタハリアン電子版が報じています。
 サブリ上級相は、集団が形成されるようなあらゆる活動は、現在発令中の活動制限令MCOが解除になっても許可されないであろうと話し、その中にはサッカーの試合も含まれると明言しています。
 「例えば現在でも禁止されている集会は、活動制限例解除後も禁止措置が続くもののうちの一つである。」「サッカーは1人でできるスポーツではなく、2チームが集まればピッチ上に22人もの人間がいることになる。試合ではバドミントンのようにそれぞれのコートで対戦するわけでなく、身体接触が起こるスポーツである。」と話し、マレーシア政府が規定する「標準作業手続き」SOPに照らし合わせ、活動制限令が解除となった後であっても、国内リーグ再開を直ちに許可することはできないと述べています。
 なお、サブリ上級相は、活動制限令解除後も新たな別の「標準作業手続き」が導入されるとし、例え今日、活動制限令が解除となっても明日から人々が以前同様、自由に行動できるようにはならないことも警告しています。
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 今朝アップしたこのブログでは、マレーシアサッカー協会FAMと国内リーグを統括するマレーシアフットボールリーグMFLがマレーシア政府の青年スポーツ省を経由して、リーグの再開を申請したという記事を取り上げましたが、その希望を断ち切るような記者会見内容です。
 現在発令中で、5月12日に解除が予定されている活動制限令ですが、個人的には断食月明けの祝日ハリラヤでの人の大移動を防ぐため、5月末まで続くのではと予想しています。この活動制限令が5月末で解除となった場合でも、本日の記者会見の内容をもとにすると6月や7月のリーグ再開はまずなさそうです。そうなると5月末から早くて3ヶ月後の9月、あるいは6ヶ月後の2021年1月辺りまで、国内リーグは行われないことになりそうです。

4月17日のニュース:ケランタンは一律で給料削減を行わないことを約束、クダは未払い給料問題の存在を認める、 TMJは自分を批判したクダ州FA事務局長を非難、マラッカU主将は給料削減に関する州協会の説明に理解を示す

ケランタンFAは一律で給料削減を行わないことを約束
 今季から渡邉将基選手がプレーするケランタンFAを運営するケランタン州サッカー協会KAFAは、全ての選手から一律で減額するような給料削減を行わないことを約束しているとマレー語紙ブリタハリアン電子版が報じています。。
 KAFAのフシン・デラマン事務局長は、若い選手の中には給料が2000リンギから3000リンギ(およそ5万から7万4000リンギ)という選手もおり、そういった選手の給料削減は行わないこと、また公正を期するために各選手の給料額を元に削減額を検討するとしています。
 デラマン事務局長は「選手の中には給料が1万リンギ(およそ24万6000円)以下の者もいれば、数万リンギの者もおり、KAFAとしては20%から30%の給料削減を行う希望があるが、個々の選手と削減額について近いうちに話し合う予定がある」と話し、選手の同意なしに給料削減を行わないことも併せて表明しています。

クダFAは未払い給料問題の存在を認める
 クダFAを運営するクダ州サッカー協会KFAのアスミルル・アヌアル・アリス名誉事務局長は、3月18日の活動制限令発令以来、クラブのスポンサーによる支援が滞っていることを明らかにしています。
 ジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーであるジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿下が「暴露」したクダFAの未払い給料問題について、クダ州議会議員でもあるアスミルル名誉事務局長は、活動制限令MCOによる経済停滞の影響からスポンサーによる支援を得られておらず、またKFAのスポンサーであるクダ州政府も州予算をMCOで影響を受けているビジネスの補助や州民の生活支援を優先しているとする一方で、クダ州政府には十分な資金があり、MCO解除後直ちに未払い給料問題解決に取り組む予定であると話しています。
 また国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLとマレーシアサッカー協会FAMが何度も会合を開いておきながらリーグ再開予定の発表が遅れている点を非難し、日程が決まらない状況ではKFAを含めた各州FAは選手との給料削減についての話し合いを行うことが難しいとし、選手との交渉はリーグ再開日程が発表になってからになることを示唆しています。
 さらにアスミルル名誉事務局長は、2018年5月以降は給料が未払いだったことはなく、今回の未払い給料問題とされているのは新型コロナウィルスの影響による給料の遅配であり、クダ州サッカー協会KFAの外部の人間が、KFA内の問題に介入することの合法性や、その問題をメディアに公開するその目的は疑わしいものであるとしています。
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 隣国タイやインドネシアでは暫定的とはいえ、リーグ再開日程が発表になっている一方で、マレーシアではMFL、FAMいずれからも日程については何の発表もないまま、給料削減だけを推奨するという不可解な状況になっているのは事実です。また最期の部分で触れられている、「州協会内の問題に介入し、その問題をメディアに公開する」という表現はJDTのイスマイル殿下に向けられている批判だと思われますが、どう表現しようと給料未払いは事実なので、こちらについては少々お門違いな批判に思えます。

TMJは自分を批判したKFA事務局長を非難
 上で取り上げたクダ州サッカー協会KFAのアスミルル・アヌアル・アリス名誉事務局長による自分への批判に対して、TMJことジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下は、KFA内の問題に介入するつもりはないとする一方で、クダFAの選手がJDTの選手に伝えた内容を明かしただけであるとしています。
 イスマイル殿下は自らのインスタグラム上で、給料未払い問題についてKFA自身ではなく他人を批判すルべきではなく、また給料未払い問題を隠すことはサポーターを欺く行為である、と述べています。
 自分自身の利益のためにクラブを運営する政治家の口先だけの約束に長い間苦しんでいるマレーシアのサッカー選手全員の声を代弁しているだけである、とするイスマイル殿下は、未払い給料は新型コロナウィルス発生前のものであること、また未払い給料についてはクダFAの外国籍ストライカーがJDTの選手に告げたものであることを明かし、インスタグラムの投稿には、自分を批判したKFAのアスミルル名誉事務局長の写真も添えています。

マラッカU主将は給料削減に関する州協会の説明に理解を示す
 マラッカ・ユナイテッドの主将で、元代表主将のサフィク・ラヒムは、クラブを運営するマラッカ州サッカー協会MUSAの給料削減についての説明に理解を示していると、マレー語紙ブリタハリアンが報じています。
 マラッカ・ユナイテッドの選手は、先月3月末のマレーシア国会を中心に起こった政変により全面的に交代したMUSAの会長およびフロントと2ヶ月分の未払い給料問題の解決についての話し合いを行い、サフィク主将は全員が納得のいく説明を受けたとしています。
 サフィク主将は、選手が給料の一部削減を受け入れたことを認める一方で、未払いとなっている2月と3月の給料については、削減対象でないことを明かし、さらに4月分から削減される給料についても、どの程度の削減になるかはまだ確定していないと話しています。
 サフィク主将ら11人の選手やザイナル・アビディン監督と話し合いをおこなったMUSAのウィラ・モハマド・ユソフ・マハディ副会長は、話し合いは建設的で友好的だったと述べ、外国籍選手を含めた残りの選手との話し合いは今後行われるとする一方で、全ての選手が未払い給料問題と給料削減については説明に納得していると話し、未払い給料については、1ヶ月程度で完済する予定であることも明かしています。

4月16日のニュース:選手会がJDTオーナーの支持表明に感謝、クダFAサポーターはクラブに未払い問題があることに驚く 、タイ協会は9月に国内リーグ再開を予定、AFCは6月末までの公式戦を全て延期

選手会がJDTオーナーの支持を感謝
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMは公式Facebook上で、「未払い給料問題を抱えるクラブは給料削減の交渉を始める前に未払い給料を支払うべき」というPFAMの主張への支持を表明したジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下に感謝の意を表明しています。
 イスマイル殿下がJDT公式Facebook上で支持を表明すると、直ちにPRAMはサフィ・サリーPFAM会長(PJシティFC)以下、シャーロム・アブドル・カラム(ヌグリスンビランFA)、ラズマン・ロスラン、カイルル・ファミ・チェ・マット(いずれもマラッカ・ユナイテッド)、ファリザル・マーリアス(JDT)、ザクアン・アドハ・アブドゥル・ラザク(クダFA)、スブラマニアム・スーリャパラド(クアラルンプールFA)、シャルル・サアド(ペラTBG)の連名で、「イスマイル殿下がPFAMの主張への指示表明は、殿下がプロサッカー選手に対して心遣い持つことの証であり、また給料削減交渉を行う前にプロサッカー選手の権利と福利が尊重されるべきであることをはっきりと示したものである」、さらに「未払い給料問題を抱えるクラブは速やかに未払い給料を支払い、その上で公平で透明性が高い方法で各選手と個別に給料削減方法の交渉を行うべきである」という内容をFacebook上に投稿しています。
(下はイスマイル殿下に感謝の意を表すPFAMの投稿-TMJはTunku Mahkota Johor「ジョホール皇太子」の意味)

クダFAサポーターはクラブに未払い問題があることに驚く
 マレー語紙ブリタハリアン電子版では、JDTのオーナーでジョホール皇太子のトゥンク・イスマイル殿下がクダFAに給料未払い問題が存在することを公表したことで、クダFAのサポーターの間で驚きが広がっていると報じています。イスマイル殿下はJDTの公式Facebook上でクダFAの他、マラッカ・ユナイテッド、ケランタンFA、ペナンFAも未払い給料問題を抱えていることを公表し、この4クラブは未払い給料問題を解消してから新型コロナウィルス感染拡大防止のためのリーグ中断い伴う給料削減交渉を行うべきであると述べています。
 ブリタハリアンの記事では、23団体あるクダFAサポーターグループの代表者であるモハマド・サファリザル・モハマド・ソブリ氏の「クダFAが未払い給料問題を抱えていることは驚きであり、(クダFAを運営する)クダ州サッカー協会KFAがこれを深刻な問題とし、クラブのイメージや評判を維持するためにも迅速に対応してほしい」というコメントを紹介しています。さらにサフィリザル氏は「クダFAのサポーターも知り得なかった内部の情報がどのようにして外部(のトゥンク・イスマイル殿下)に伝わったのか、またその内部情報が正確なのかどうかについて、KFAに公式発表を求めてたいとしています。

タイ協会は9月に国内リーグ再開を予定
 隣国タイの英字紙バンコクポスト電子版では、現在中断中の今季のタイリーグ1部と2部は今年9月にリーグを再開する予定であると報じています。
 タイサッカー協会FATのソムヨット会長は、新型コロナウィルスによる被害が収束すること条件ながら、今季2020年シーズンを9月から再開し、来年2021年5月終了とすることがFAT役員および1部と2部のクラブの代表者の満場一致で決まったと話しています。なおカップ戦は予定通り行われることも合わせて発表しています。
 また、今季のリーグ戦が9月再開となった場合、ヨーロッパ各国のリーグと同様の9月開幕5月閉幕という日程は、来年以降もタイリーグで採用される可能性があるとしています。
 さらにソムヨット会長は、1部と2部のクラブに対して最大で50%の選手給料削減を許可すると話す一方で、影響を受ける選手から訴訟を起こされることを避けるため、国際サッカー連盟FIFAおよびアジアサッカー連盟AFCと協議を行なっていくとしています。
 この他、タイリーグの放映権を持つTrueVisionsは、7月にFATへ今季2度目の放映権料を支払う予定であるとしながらも、リーグは開幕から第4節終了後に中断していることからどのくらいの放映権料が支払われるかは不明であり、これによりFATから各クラブへ助成金が支給されるかどうかは決まっていないこと、またタイ代表の西野朗監督の給料も50%削減されることも明らかにしています。
 ソムヨット会長は、さらにタイリーグ3部と4部クラブとの会談は今後行われるよていであること、そして以前このブログでも取り上げた今年年末に予定されている東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップについては、国内リーグ開催時期と重なることから、若い選手にあるいは「2軍」の代表チームが参加する可能性も示唆しています。

AFCは6月末までの公式戦を全て延期
 アジアサッカー連盟AFCは公式サイトにて、新型コロナウィルス感染拡大防止とアジア各国で実施されている移動制限を考慮して、5月と6月に予定されていたAFC主催試合を期限を設けずに延期すると発表しています。AFCは既に3月と4月に予定されていたAFCチャンピオンズリーグACLグループステージなどのAFC主催試合を全て延期しています。
 本来ならば8月から始まるACLノックアウトステージも、グループステージを7月中に終了しない限り、予定通りには始まらないことになりました。マレーシアからはジョホール・ダルル・タジムJDTが出場しているACLグループステージのグループGは全12試合中、3試合しか終了しておらず、ACLが再開となっても、おそらく同時に再開となる各国の国内リーグとの日程調整が難しい上、やはり順延となっているFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選件2023年AFC選手権アジアカップ予選もあり、今年後半のサッカーカレンダーは、アジアのサッカー選手に負担を強いるものになりそうです。
 また今回のAFCの発表により、東京オリンピックの女子サッカー出場権をかけた中国対韓国戦も当初予定されていた6月1日と9日の試合が延期となっています。

4月15日のニュース:選手会は給料削減の前に未払い給料問題を解決することを求める、JDTオーナーも選手会の主張を支持、「八百長」の心配はない-FAM

選手会は給料削減の前に未払い給料問題を解決することを求める
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版によると、マレーシアプロサッカー選手会PFAMは未払い給料問題を抱えるクラブに対して、所属選手の給料削減を検討する前に未払い給料を完済するべきであると主張しています。
 活動制限令MCOが4月28日まで延長されたことを受け、国内リーグ各クラブが給料削減交渉を活発化させることが予想されますが、PFAMは契約内容の遵守を原則とした上で、MFLのクラブに対して以下の2つの条件を提示しています。
1. 未払い給料問題を抱えるクラブは、リーグ中断を理由として選手と給料削減交渉を行う前に未払い給料を完済すること。
2. 各クラブが給料削減交渉を行う際は、各選手の給料が異なることを考慮し、全選手に同一の削減案を提示するのではなく、各選手と個別に削減額について話し合うこと。
 MFL1部のPJシティーFCでプレーするPFAMのサフィ・サリー会長は、選手と事前に交渉を行わずに給料削減を行なったクラブが複数あるという情報を得ているとして、マレーシアサッカー協会FAMや国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLに対して、クラブと選手の間の交渉が誠実に行われるよう監視するよう求めています。
 「(新型コロナウィルス発生以前の)給料未払い問題を抱えているクラブは、未払いの給料が完済できない口実として新型コロナウィルスを利用し、その上、さらに給料削減を行おうとしている。しかもそういった給料未払い問題を抱えているクラブが、リーグ中断期間中の給料削減に関して最も声高に主張しているのは皮肉なことである。」と述べるサフィPFAM会長は、さらに「給料が決して高額ではない選手が数ヶ月に渡って給料が支払われていない場合、その選手に対してさらにクラブが給料削減を行ったらどうなるかを想像して欲しい。そういった選手は家や車など生活に必要な多くのものを失うことになるだろう。」と話しています。

JDTオーナーも選手会の主張を支持
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMの主張を支持するように、国内リーグ1部で7連覇中のジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーであるジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下も、JDTの公式Facebook上で給料未払い問題を抱えるクラブはまず、その問題を解決してから給料削減を行うべきであると述べています。
 イスマイル殿下は、国内リーグでプレーする大半の選手は新型コロナウィルス感染拡大によって運営が苦しくなったクラブと給料削減について協力する用意があるとする一方で、クダFA、ケランタンFA、マラッカ・ユナイテッド、ペナンFAなど具体的なクラブ名を挙げた上で、未払い給料問題を抱えるクラブは給料削減を行う前に未払い給料を完済するべきであるというコメントをFacebook上で行っています。
 「大半のクラブはその運営資金全額を州政府から配分されているはずで、そういったクラブが給料未払い問題を抱えている理由が理解できない」として、クラブが州政府の重荷になってはいけないと話しています。
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 国内リーグ1部や2部でプレーするクラブの大半が州サッカー協会によって運営され、州サッカー協会(州FA)のトップは州知事、クラブの最大のスポンサーが州政府、という現在の状況が続く限り、今年3月末に起きたような政変で州議会内での与党、野党が変われば州FAのトップも変わり、長期的な視野でのクラブ運営を行うことは今後も難しいでしょう。また今回のようにイスマイル殿下が正論を吐けるのは、自らがオーナーを務めるJDTがその財源を州政府に依存せず、ジョホール王室からの資金で運営されているからです。(写真はイスマイル殿下の投稿-JDTの公式Facebookより)

「八百長」の心配はない-FAM
 先日のこのブログでは、給料未払いに加えて国内リーグ中断による給料削減が行われようとしているマレーシアサッカー界には、「八百長」が起きやすい環境が整いつつある、という記事を取り上げました。
 しかしマレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長によれば、昨年以来、「八百長」と疑われる試合は起きていないと、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 2018年に就任したラマリンガム事務局長は、自分が就任以来、八百長の疑いがもたれた件が2件あったものの、いずれも八百長ではないと裁定されているそうです。
 かつてマレーシアやシンガポールは八百長試合など不正工作の温床とされていましたが、近年は状況が変わっており、アジアサッカー連盟AFCも過去6年間でアジアでの八百長試合が減少していることを公表しています。
 なおFAMは各州FAの不正防止員会を通じてマレーシア警察やマレーシア政府汚職防止委員会と協力して八百長試合が起こらないよう監視している他、異常な賭け率変動がないかを監視するために国際サッカー連盟FIFAの早期警戒システムEWS社と契約しています。
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 マレーシア国内でのサッカー賭博は非合法ですが、国際的にはオンライン賭博の対象となっており、八百長が起こる可能性は常に存在します。FAMが契約しているEWS社は世界中の賭博事業者と提携し、各国の試合の掛け率などを24時間監視しています。そしてマレーシア国内での試合の掛け率の急激な変動など、不正操作の可能性がある場合には、即座にFAMに警告が通知される仕組みになっています。

4月14日のニュース:現在の状況が「八百長」につながる可能性を元MFLクラブ監督が警告、代表FWがタイで告訴される

現在の状況が「八百長」につながる可能性を元MFLクラブ監督が警告
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版は、新型コロナウィルス感染収束後にリーグが再開される時期には「八百長」試合が行われる可能性があると危惧する記事を掲載しています。
 マレーシア国内リーグではこれまでも、給料の遅配や給料未払いに苦しむ選手の中から金のために八百長に加担する選手が出る歴史が繰り返されてきましたことから、今回のリーグ中断による収入源から各クラブが選手の給料削減を行った場合、報酬を持ちかけるブッキー(八百長の仲介者)につけ込まれる選手が出る可能性があるとしています。
 マレーシアでは1994年に21人の選手とコーチが解雇、58人が出場停止、さらに126人が警察の捜査を受けるという大規模な八百長事件が発生しています。
 現在でもマレーシアのサッカー界には腐敗は存在している一方で、リーグ関係者の多くがこの話題に触れることを避けていると報じるニューストレイトタイムズは、ジョホールFA(現ジョホール・ダルル・タジムJDT II)、ペラTBGやケランタンFAなどで監督の経験があるスティーブ・ダービー氏とのインタビューし、ダービー氏の八百長体験を掲載ています。
 イギリス人のダービー氏がまず語ったのはジョホールFA時代に初めて経験した八百長試合の話です。ある試合でハーフタイムとなり、ピッチから引き上げようとしていたところに相手チームの外国籍選手が近づいてきて、この試合はジョホールFAが2-0で勝つ、と告げたそうです。なぜそんなことがわかるのかと尋ねたダービー氏に対して、自分はマレーシア語が理解できると答えたそうです。実際にその試合では84分と89分にジョホールFAがゴールを決め、本当に2-0で勝利しました。自分のチームが勝てばそれを喜び、当初それを八百長を疑うことはなかった、と話すダービー氏は、やはり自分のチームが勝った別の試合では、相手のGKは目立ったミスをしなかったものの、ポジショニングが悪い上に、シュートはキャッチせずパンチングで凌ぎ、しかもそのパンチングしたボールは自分のチームのチャンスになる場面も目撃したと語っています。
 またダービー氏は1人のマレーシア人選手から聞いた話として、ブッキーはクラブの外の人間では知り得ない給料の額などの個人情報を知っており、例えば給料が3000リンギ(およそ75000円)の選手がおり、その選手の給料が2ヶ月遅配となっているときに、10000リンギ(およそ25万2000円)の報酬で八百長を持ちかけてくるケースがあるとしています。そしてもし、選手が拒否すれば、母親が買い物に行く店の名前や子供の通う学校名などを具体的に出し、行動を把握していることをちらつかせ、選手が八百長加担に同意する様に仕向けるそうです。そして一旦加担すれば、「次回」があり、しかも既に加担済みという弱みを握られ報酬額も減らされてしまうと述べています。
 また数年前の話としてヌグリスンビランFAの数名の若手選手が八百長に加担していることを知り、その選手たちになぜ、クラブを運営する州サッカー協会や警察に訴えでないのかと尋ねる機会があった際には、八百長に関わっているのが誰なのかも、どの地位にいる人間かも分からないの上、自分の親に借金があったり、子供のために金が必要な場合には、そんな倫理を無視せざるを得ないときもあるときもあるという答えが返ってきたそうです。
 さらにペラTBGの監督時代には選手から八百長を持ちかけられたことを聞かされたダービー氏は、その選手がブッキーと一緒に写っている写真を添えて、ペラTBGを運営するペラ州サッカー協会PAFAに報告し、PAFAはマレーシアサッカー協会FAMと警察に報告したものの、FAMは何も行動を起こさず、警察もダービー氏に事情聴取を行ったものもそれ以上の捜査はなかったことも明かしています。
 自分が監督するチームの11試合で八百長が行われたと考えるダービー氏は、そのうちの一つとしてケランタンFAの監督時代の2014年にAFCカップで対戦したベトナムのビッサイ・ニンビンFC戦を挙げています。(筆者注:この試合で八百長を行ったビッサイ・ニンビンFCの選手はベトナムの裁判所により有罪判決を受け、クラブはこの2014年シーズンをもって解散しています)
 この他、審判の買収はも八百長の方法の一つであり、マレーシア国内リーグにはブッキーに買収されている審判もいるという根強い噂があると指摘するダービー氏は、試合中にブッキーが審判に合図を送っている映像などをみたことがあり、これもFAMに報告したものの、やはり何の行動も起きなかったとしています。
 この記事の最後で、ダービー氏は八百長を完全に防ぐことは難しいとしながらも、次の様な手段でそれを減らすことは可能であると述べています。
・選手の給料をきちんと払うこと-未払いや遅配はブッキーがつけ込む機会になる。
・特に若い選手に対して八百長を行わないよう教育する-若い選手は買収するのにかかる費用が安い上、誘惑に負けやすい。
・報酬を理由に八百長に関わった選手は永久追放し、指導者やフロントとなってもあらゆるサッカー活動に関わらせない。
・マレーシア国内でのサッカー賭博の合法化
・選手に接触する手先の小物ではなく、八百長を企てる大物の逮捕
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 上で取り上げられている1994年の八百長事件以外にも、最近で言えば2018年2月には当時MFL2部のサラワクFAの2選手とブッキーが逮捕された件の他、アマチュアリーグでもここ数年、何度か発覚しています。上の記事でインタビューに答えているダービー氏は、八百長とは単に試合の勝ち負けやゴール数だけではなく、試合の後半にレッドカードが出るかどうかなども賭けの対象となりうると話しており、多くの関係者が気づかないところで現在も八百長が行われている可能性は否定できません。
 また東南アジアでサッカーの八百長と言えば、マレーシアやシンガポールがその中心と言われることが多いのですが、この地域で八百長の黒幕として知られ、既に有罪判決を受けたシンガポール人のウィルソン・ラジ・プルマルが書いたKelong Kingsという本には、国際試合で行われた八百長や審判を買収しての買収などが詳細に書かれています。興味がある方はこのKelong Kingsの公式サイトでその一部を見ることもできます。

代表FWがタイで告訴される
 昨日のこのブログで取り上げた、タイ1部リーグでプレーするマレーシア代表のノーシャルル・イドラン・タラハが、今度はタイの代理人に告訴されたと、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 当初はノーシャルル選手がタイ1部リーグのBGパトゥム・ユナイテッドと契約する際に代理人契約を交わしたシンガポールのOffside Sports社のアブドル・ハリム・アブドル・シュコル氏との連絡が取れなくなっているとする記事が出て、その続報としてアブドル・ハリム氏がノーシャルル選手が自分と代理人契約をする前にタイで代理人業務を行うPro 24社と契約をしていたとして、ノーシャルル選手を非難、これをノーシャルル選手が否定しているという記事が出ました。そして今度はPro 24社がノーシャルル選手を契約違反で告訴されるという事態に発展しています。
 ニューストレイトタイムズの記事では、BGパトゥム・ユナイテッドへの移籍の際、ノーシャルル選手はPro 24社とOffside Sports社の両方と代理人契約を交わしたとされており、Pro 24社はノーシャルル選手は信用するに足らないとし、今後は話し合いをする予定はないとしています。なお、記事によれば、この訴訟が解決するまでノーシャルル選手はタイを出国できないとされています。
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 選手の移籍などの情報が詳しいドイツのサッカー情報サイト、トランスファーマルクでは、ノーシャルル選手の代理人はPro 24社となっています。代理人と連絡が取れなくなり、新型コロナウィルス感染拡大と何か関係があるのでは、として取り上げたこの話題でしたが、結局は二股をかけたノーシャルル選手が不誠実だった、という単純な話だったようです…。

4月13日のニュース:選手会はクラブに誠実な話し合いを求める、タイでプレーする代表FWの代理人が音信不通に 、音信普通とされた代理人は代表FWに反論(続報)

選手会はクラブに誠実な話し合いを求める
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMは、マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグと2部プレミアリーグの選手はクラブと契約の見直しについて話し合いをする用意があるとして、選手の同意なしに契約内容を変更しないようクラブ側に警告しています。
 英字紙スター電子版によると、PFAMのイズハム・イスマイルCEOは、選手との契約をクラブが一方的に改編することはできないことを理解した上で、先日、FIFAが発表した新型コロナウィルス感染拡大に伴う契約見直しの指針を参考に、クラブは選手とともに契約内容の見直しについて真摯に話し合うべきであると述べ、PFAMはクラブが選手と自由に交渉することを認めています。
 選手はクラブと給料削減についての交渉の席につくべきではないという主張をこれまで繰り返してきたPFAMは、選手に給料削減を強制しているのではなく、クラブとの間で両者が合意できる様な解決を目指すべきと主張するマレーシアサッカー協会FAMと対立していましたが、PFAMは今は争う時期ではないとして、クラブに誠実に話し合うことを求めています。
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 4月14日までとされていた活動制限令MCOが4月28日まで延長することがマレーシア政府から発表され、既に延期が決まっていたMFL第5節と第6節に加えて第7節から第9節までの延期も確定したことから、PFAMも軟化したしたのかも知れません。
 ただしマレーシア政府はMCO期間中の給料削減や解雇は認めないとしており、プロサッカー選手だけにその権利を認めないわけにいかないことから、FAMには交渉による合意を勧めることしかできません。同様の措置をとっている英国政府が選手に給料削減の受け入れを求めたことに対して、選手会はダブルスタンダードであると反発しており、FAMが強硬な姿勢を取れば、PFAMも態度も再び態度を硬化させる可能性があります。

タイでプレーする代表FWの代理人が音信不通に
 今季から隣国タイでプレーするノーシャルル・イドラン・タラハは、新型コロナウィルス感染拡大とともに自分の代理人と音信不通になったと話していると、英字紙ニューストレイトタイムズに語っています。
 マレーシアフットボールリーグMFLで13年間プレーしたノーシャルル選手は、今季からタイ1部リーグのBGパトゥム・ユナイテッドでプレーしていますが、タイ1部リーグは5月2日まで中断となっており、これに伴いクラブが給料削減について選手と交渉を始めたことから、代理人と相談ををしようとしたところ、連絡が取れなくなっているようです。
 「マレーシアと同様にタイでもクラブと選手が給料削減について交渉をするよう促されており、その相談のために代理人に何度も電話を入れたが、返事もメッセージもなく、その理由が不明である」と話すノーシャルル選手は、数日前にその代理人がマレーシアではシンガポール出身の選手が高く評価されている、というこの代理人のコメントをメディアを読んだとして、ケガや病気で連絡が取れないのではないことはわかっていると話し、「もし彼がこの記事を読んでいたら、連絡が欲しい」と訴えています。
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 ノーシャルル選手が言及しているシンガポール選手の記事は、このブログでも取り上げたMFL公式サイトの記事を指すと思われますが、そこに登場する代理人はアブドル・ハリム・アブドル・シュコル氏なので、このアブドル・ハリム氏とノーシャルル選手との間で何らかのトラブルが起こっているのかも知れません。

音信普通とされた代理人は代表FWに反論(続報)
 上の記事が出た翌日のニューストレイトタイムズに続報が掲載されました。
 ノーシャルル選手の代理人(正確には元代理人)のアブドル・ハリム氏が自分の知らないところで、ノーシャルル選手が新たな代理人と契約したと話していることに対して、ノーシャルル選手はその内容を否定しているという内容です。
 ノーシャルル選手は、アブドル・ハリム氏が取締役を務めるOffside Sports社との契約を解除し、タイで代理人業務を行なっているPro 24社と新たに代理人契約を結んだことを認めていますが、その契約変更については、アブドル・ハリム氏自身が直接、クラブを話しをすることを了承し、何も問題はないはずであると述べています。さらにノーシャルル選手が所属するBGパトゥム・ユナイテッドがアブドル・ハリム氏に報酬を支払っていないと主張している点についても、クラブからは支払済だと聞いていると話し、この件については円満に解決することを望んでいるとしています。
 一方アブドル・ハリム氏は、自分がBGパトゥム・ユナイテッドとノーシャルル選手の契約をまとめようとしたところに、Pro 24社の代理人が現れたとしています。そしてノーシャルル選手との契約書を自分に見せた上で、クラブとの契約を完了したとし、そのためにアブドル・ハリム氏には報酬は渡らなかったと話しています。さらにノーシャルル選手は自分と契約をする前に、既にPro 24社と契約しており、契約書にサインする段階でPro 24社が現れて騒動になったとし、一連の騒動でノーシャルル選手に対して失望したと話しています。。
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 この続報を読むと、ノーシャルル選手とアブドル・ハリム氏との間で泥仕合の様相ですが、タイリーグでは開幕戦の第1節と第2節にはいずれも先発しながら、第3節ではベンチ入りも出場なし、第4節ではベンチ入りすらなかったことは、この騒動が艦型しているのかも知れません。
 マレーシア代表の主力選手としては初めてタイリーグへの移籍を実現させたノーシャルル選手が、リーグ再開後に問題なくプレーできるよう、この騒動の早期解決を望みたいでう。