8月11日のニュース:マレーシア国内での高給が日本移籍の妨げに?、日本のクラブはスポンサーのおかげで安定している

マレーシア国内での高給が日本移籍の妨げに?
 マレーシアフットボールリーグMFLには給料未払い問題を抱えるクラブがある一方で、外国人、マレーシア人を問わず高額の給料を支給しているクラブがありますがそういったクラブでプレーするマレーシア人選手が日本へ移籍しようとする場合、その高給が障害になっている、という記事をマレー語紙ハリアン・メトロ電子版が伝えています。
 この記事の中では、Jリーグでプレーするタイ出身のMFチャナティプ・ソンクラシン(北海道コンサドーレ札幌)、DFティーラトン・ブンマタン(横浜F・マリノス)、MFティティパン・プアンチャン(大分トリニータ)、そしてJ3のFC東京U23でプレーするナッタウット・スクムらを挙げ、同じ東南アジア出身の彼らが活躍する一方で、J2やJ3も含めてなぜマレーシア人選手がハディ・ファイヤッド(ファジアーオ岡山)一人であるのかの謎を解き明かしています。
 ハリアン・メトロがJリーグ関係者に話を聞いたところ、「Jリーグ提携国」枠が適用されるタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール出身の選手は、各チームに認められている5名の外国籍選手枠に該当しないため、これらの国の選手の獲得に積極的なクラブがある一方で、マレーシアに関して言えば国内リーグで選手が得ている給料が高いため、Jリーグのクラブからの契約オファーが出しにくいという回答が返ってきたと記事では述べられています。
 「高い」とは言え、それがどのくらい高いのかが気になりますが、実は昨年2018年2月にクダFAの選手の給料がソーシャルメディアに流出するという事件が起こりました。それによるとマレーシア人選手で最高級取りはキャプテンのバドロル・バクティアル(31)で月給約7万7000リンギ(およそ195万円)、外国人ではリリドン・クラシニキ(現在はマラッカ・ユナイテッド)とサンドロ・ダ・シルバ(現在はスランゴールFA)が月給約12万9000リンギ(およそ325万円) と公表されてしまいましたが、クダFAは決して裕福なクラブではないので、この金額が他のクラブと比べて突出して高いというわけではないでしょう。
 ちなみにこのバドロル選手の給料を年俸に直して、こちらに掲載されている2019年Jリーガー年俸ランキングに当てはめてみると222位となります。この順位は現在のJ1は18チームですのでレギュラー(18チームx11名=198名)には届かないものの、J1でもトップの控え選手並みの年俸ということになります。マレーシア代表として通算キャップ数55のバドロル選手ですが、このクラスの選手でもJ1ですぐにベンチ入りできるとは考えられず、その実力にあった年俸となるとマレーシア国内で得ている年俸より低い額が提示されることになるでしょう。となると給料が下がってもJリーグでプレーしたい、と言う選手が現れない限り、今後もマレーシアからJリーガーが出る可能性は低そうです。

日本のクラブはスポンサーのおかげで安定している
 同じハリアン・メトロ電子版では、ハディ・ファイヤッドが感じている日本のクラブとマレーシアのクラブの違いを取り上げています。
 今シーズンからJ2のファジアーノ岡山でプレーするハディ選手は、マレーシアで起こっている給料未払い問題が日本では起こりにくいのは、Jリーグクラブのスポンサーが州政府や政府係機関ではなく、企業スポンサーであるからではないかと述べています。
 クラブの経営が安定し、さらに成功するクラブとなるためにはスポンサーの果たす役割が大きく、日本では各クラブが複数の企業とスポンサー契約を結んでいることが、日本では給料未払い問題について聞いたことがない理由ではないかと述べるハディ選手は、マレーシアのクラブも複数企業をスポンサーとする日本を真似ても良いのではないかと、ハリアン・メトロの取材に答えています。
 自分が日本で良い扱いを受けている一方で、マレーシアでの給料未払い問題について聞くことは悲しいことだとして、ハディ選手は速やかな問題解決を望んでいると記事は締めくくっています。
 一つ目の記事と含めて考えると、一人当たりGDPが日本の約4分の1のマレーシアで、トップクラスのサッカー選手に日本の中堅レギュラー選手並みの給料を支払うこと、しかもそれを州政府や政府系機関が負担している現状にそもそも無理があるのかも知れません。

7月28日のニュース(2):ヌグリ・スンビランFA監督は近々解任か、MFLはリーグ拡張を画策

ヌグリ・スンビランFA監督は近々解任か
 わずか勝点1の差でマレーシアフットボールMFL1部スーパーリーグへの昇格を逃したヌグリ・スンビランFA(N9)のマット・ザン・マット・アリス監督の解任が近いのではと、英字紙ニューストレイトタイムズが伝えています。
 一般的に、企業などで不正行為が行われた際、マレーシアでは当該者に対して事情説明を求めるshow-cause letter(「理由提示文書」とでも訳せばよいでしょうか)を送って、その回答を求めますが、今シーズンの昇格を逃したマット・ザン監督にもチームを運営するヌグリ・スンビラン州サッカー協会NSFAはこのshow-cause letterをマット・ザン監督に送付し、2週間以内の回答が求めているようです。またNSFAはマット・ザン監督には回答するまではチームと接しないことも伝え、今後の処遇は回答を得てから発表するとしています。
 MFL2部プレミアリーグ最終節では、どちらのチームも勝てば1部昇格の可能性があったN9対UITM FCのカードは引き分けに終わり、両チームと昇格を逃しています。なお、この試合では、試合終了直前でUITM FCの選手がペナルティボックス内でハンドの反則(結果は反則とみなされず)をしたとして、N9の選手たちは猛烈に抗議しましたが、審判は認めず、試合後もマッチコミッショナーに抗議を続けましたが、判定は変わりませんでした。
 トレンガヌFC(当時はトレンガヌFA)監督時代の2001年にはチームをマレーシアカップ優勝に導いているマット・ザン監督に代わって、現在は、N9の練習はザキ・シーク・アーマドアシスタントコーチとN9 U21のサザリ・サイドンコーチが担当しているようです。

MFLはリーグ拡張を画策
 マレーシアフットボールリーグMFLは、今シーズンが終了しましたが、MFLのケヴィン・ラマリンガムCEOは、今シーズンから導入されたアマチュアクラブの4部M4リーグの下に、さらに地域密着型のクラブによる5部リーグの開設も検討していると述べていることが英字紙ニューストレイトタイムズで報じられています。
 他国では地域密着型のクラブが住民や複数のスポンサーに支援されて大規模なクラブに成長するケースもある一方で、マレーシア国内リーグのクラブの多くは州政府など単一スポンサーに依存していることから、そのスポンサーが撤退した場合にクラブそのものの存続が危うくなる懸念があるとしています。
 マレーシア国内サッカーリーグの現状はこれまでも何度か書いてきていますが、例えば1部スーパーリーグで今シーズン9位のPKNS FCと11位のPKNP FCはいずれも州政府機関であるスランゴール州開発公社とペラ州開発公社が母体のクラブです。マレーシアでは一般的に州政府が各州のトップチームの資金援助を行っているため、スランゴール州で言えばスランゴールFAとPKNS FC、ペラ州ではペラTBGとPKNP FCとが州政府からの予算を分け合っていることから、PKNS FCはスランゴールFAの、PKNP FCはペラTBGのBチーム化、あるいはチーム解散が噂されています。なお両チームがBチームとなると、JDT IIやトレンガヌFC IIと同様に、2部プレミアリーグの所属となるだけでなく、MFLの規定がBチームの1部スーパーリーグでのプレーを禁じていることから、1部昇格が不可能になります。
 またシーズン終盤に奇跡の逆転で1部残留を決めたフェルダ・ユナイテッド(フェルダU)も母体は連邦土地開発公社という政府機関で、マレーシア政府が進める緊縮財政策の影響を受ける可能性があり、来シーズンのクラブの存続については言明されていません。マレーシア国立大学UKMが運営するUKM FCも予算の問題からリーグ脱退の可能性が取り沙汰されています。

7月27日のニュース:PKNP FC会長が2部降格の責任を取って辞任、PKNP FC監督は外国人選手への不満が爆発 、新たにマラッカUでも給料未払い問題が発覚

PKNP FC会長が2部降格の責任を取って辞任
 マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグで今シーズン3勝7分12敗の成績で11位に終わり、来シーズンは2部プレミアリーグ降格が決まったPKNP FCのザイノン・ファッジ・パハルディン会長が辞任したと、マレー語紙ウトゥサンマレーシア電子版が伝えています。
 ザイノン会長は、今シーズン開幕前にPKNP FCが2部降格となった場合は辞任すると宣言しており、その約束を守った形になります。

PKNP FC監督は外国人選手への不満が爆発
 2部降格となったPKNP FCのアブ・バカル・ファジム監督は、今シーズンを振り返って、自チームの外国人選手への不満を爆発させていると、英字紙スター電子版が伝えています。
 PKNP FCはシーズン当初、FWヤーセル・ピント(パレスチナ)、DFシヨブシュ・アスロロフ(タジキスタン)、MFトーマス・アビィ(ガーナ)、FWカリドゥ・クリバリ(セネガル)、FWジャンカルロ(ブラジル)、DFアマニ・アギナルド(フィリピン)という外国人でスタートしました。
 アブ・バカル監督が常に全力でプレーすると評価したトーマス・アビーが、シーズン中のケガにより退団となる一方、残った外国人選手に対してはチームの役に立っておらず、トランスファーウィンドウ期間に獲得した二人のブラジル人、DFペドロ・ヴィクター(ブラジル)とFWラモン・シルヴァも同様だったと述べています。
 またアブ・バカル監督は、選手と監督を含めたコーチングスタッフ全員が、今年12月までの1年契約であることも明かしています。2部降格によってチーム解散の噂もあるPKNP FC、前談の会長辞任とともにその噂が現実味を帯びてきました。
 

新たにマラッカUでも給料未払い問題が発覚
 MFLが先週発表した「経営が健全に行われている1部スーパーリーグの6クラブ」の一つ、マラッカ・ユナイテッド(マラッカU)で給料未払い問題が発覚しました。
  ジョホール・ダルル・タクジムJDT、パハンFA、スランゴールFA、クダFA、ペラTBGとともにMFLから評価されたマラッカ・ユナイテッドでは、スター選手にはきちんと給料が払われていたものの、そうでない選手たちは3ヶ月分の給料が支払われていないと、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 未払い給料の総額は約300万リンギ(約7900万円)ということですが、マラッカ・ユナイテッドサッカー協会のアドリ・ザハリ会長によれば、給料未払いは複数のスポンサーが責任義務を果たしていないことによるとしていますが、選手にとってはそんなことは問題でなく、経営陣が契約を履行していない事実のみが問題でしょう。
 シーズン直後に除名処分になったプルリスFAを始め、リーグ戦での勝点を剥奪されたケランタンFAやペナンFAに続くマラッカUの給料未払い問題は、MFLが把握しきれていない問題がまだまだあることを暗示しているように思います。

7月23日から24日のニュース:FAカップ決勝は日本人審判団が担当、マレーシアの富豪がMLSチームの株を売却、ペナン州サッカー協会がCASに仲裁を求める、U15代表がAFF U15選手権へ向けて調子を上げる

FAカップ決勝は日本人審判団が担当
 当地の英字紙スター電子版は、7月27日(土)に開催されるマレーシアFAカップの決勝戦ペラTBG対クダFAの試合は日本人審判団が担当すると伝えています。
 マレーシア人審判に対しての国内の評価は低く、また昨年のもう一つのカップ戦マレーシアカップでは、プレーした選手ではなく審判の判定で注目を浴びたこともあり、外国人審判の採用が噂されてきました。
 FAカップを主催するマレーシアフットボールリーグMFLのケヴィン・ラマリンガムCEOによると、マレーシアサッカー協会FAMとパートナーシップ協定を締結している日本サッカー協会JFAが選抜する審判団は主審1名、副審2名の計3名で構成され、マレーシア人の第4審判がこのチームに加わることを記者会見で明らかにしています。

マレーシアの富豪がMLSチームの株を売却
 マレーシアで不動産から旅行業やホテル経営、セブンイレブンやスターバックスなどの国内フランチャイズ権を持つ企業体ブルジャヤグループの創業者のタン・スリ・ヴィンセント・タン氏がメジャーサッカーリーグMSLのロスアンゼルスFC(LAFC)の株式20%の売却を検討していると、英字紙スター電子版が報じています。
 記事によれば、この株式売却は、タン氏がいずれもオーナーを務めるイングランドフットボールリーグEFLチャンピオンシップ(イングランドプレミアリーグEPLの一つ下のリーグ)のカーディフ・シティFCとベルギー1部リーグのKVコルトレイクの経営に注力するためだとしています。特にタン氏が愛するカーディフ・シティFCはわずか1年でEPLからEFLチャンピオンシップへ降格となったため、LAFCの株式売却で得られる1億米ドルとも1億5000万米ドルとも言われる資金が、カーディフ・シティFCのEPL復帰に向けて使われるだろうとしています。

ペナン州サッカー協会がCASに仲裁を求める
 英字紙スター電子版は、国際サッカー連盟FIFAの裁定によりMFL2部プレミアリーグでの勝点6を剥奪(はくだつ)され、その結果、1部スーパーリーグへの昇格の機会を失ったペナンFAパンサーズを運営するペナン州サッカー協会FAPは、スポーツ仲裁裁判所CASに対してFIFAの裁定に対する不服申し立てを行なったと報じています。
 記者会見の席でFAPのアマル・プリトパル・アブドラ会長は、過去の経営陣による失態によって、今シーズンのリーグ戦での勝点剥奪というFIFAの処分には失望しているとし、アマル会長以下新経営陣は、勝点6剥奪処分が撤回されれば、その代償として罰金を支払う用意があるとしています。
 この記者会見には、ペナン州政府青年スポーツ委員会のスン・リップチー会長も同席し、ペナン州政府が毎年、500万リンギ(約1億3000万円)以上をペナンFAパンサーズに提供してチームを強化してきているとし、選手とコーチ陣の努力の結果である1部昇格が実現することを強く希望していると述べています。

U15代表がAFF U15選手権へ向けて調子を上げる
 タイのチョンブリで開催される東南アジアサッカー連盟AFF U15選手権に出場するマレーシアU15代表が、中国で開催された国際大会で優勝し、好調を維持してタイに出発できそうだと、英字紙スター電子版が伝えています。
 中国のの海口(ハイコウ)で開催され、イラン、中国、北朝鮮が参加して総当たり方式で行われた大会で、マレーシアはイランに2-0で勝利中国とは1-1で引き分け、最終戦の北朝鮮には2-1で勝利し、優勝を果たしています。
 7月27日から8月9日までの期間で開催されるAFF U15選手権で、マニアム・パチャイアパン監督が率いるマレーシアU15代表は、開催国タイ、ラオス、カンボジア、ブルネイ、オーストラリアとともにグループBに入っています。
 なおこのU15代表のメンバーはこちらです。

5月31日のニュース:残念!苅部選手はKLFAを退団、代表の新キャプテンはGKファリザルが就任、チャンタ・ビンはトレンガヌFCに残留

残念!苅部選手はKLFAを退団
マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグに所属するクアラルンプール(KL)FAの公式FacebookページであるKuala Lumpur Hawksは、苅部隆太郎選手が退団し、代わって韓国人DFのノー・ヘンソックが入団すると発表しています。
 Kuala Lumpur HawksのFacebookでは、個人的な事情で退団とされていますが、KLFAについての記事がよく掲載されるオンラインメディアのスポータイムズでは、ご家族の健康不良が理由で帰国を希望し、自ら退団を申し出たと報道しています。リーグ戦とFAカップの予選を合わせると今シーズンは15試合に出場していた苅部選手は、ここ数試合はチームの戦術もあり守備的MFと言うよりもDFとして出場していました。苅部選手、お疲れ様でした。
 前節第15節では、降格を争うPKNP FCを4-1で一蹴して勢いづいているKLFAは、プタリン・ジャヤ(PJ)レンジャーズからDFラフィ・アジザン・マリアペンを、またPKNS FCからシャフィク・シャハルディンも獲得しています。
(左はTerima kasih. Selamat maju jaya.(マレーシア語で「ありがとう。グッドラック」の意)とともに苅部選手退団を伝えるFacebookポスト。右は新入団のノー・ヘンセク選手を紹介するFacebookポスト)

代表の新キャプテンはGKファリザルが就任
マレー語紙ハリアン・メトロのオンライン版によると、マレーシア代表チームの新キャプテンにMFL1部ジョホール・ダルル・タクジムのGKファリザル・マリアスが就任したと、代表チームの練習を訪問したマレーシアサッカー協会FAMのダト・ハミディン・モハマド・アミン会長が発表しています。ファリザル選手は6月2日に行われるネパール代表との親善試合からキャプテンを務めます。
 これまでフル代表のキャプテンを務めてきたMFL1部クダFAのモハマド・ザフアン・アドハ・アブドゥル・ラザクが今回は代表候補合宿のメンバーに選出されていないため、ファリザル選手は6月2日の親善試合だけでなく、6月7日と11日に行われる東ティモール代表とのFIFAワールドカップアジア一次予選でもキャプテンを務めます。(写真は代表候補合宿の様子を伝えるFAMのFacebookポストより。右から二人目が新キャプテンのファリザル・マリアス選手)

チャンタ・ビンはトレンガヌFCに残留
MFL1部トレンガヌFCのカンボジア出身チエリー・チャンタ・ビンは、結局、残留となったことをハリアン・メトロのオンライン版が伝えています。
 先日、イゴール・ゾンジックが退団した際に、チャンタ・ビン選手も続くのではと、このブログでも書きましたが、ハリアン・メトロの記事によると、トレンガヌFCは*アセアン枠を使ってタイU23代表でタイ1部リーグで現在、首位を走るポートFCのMFサンサーン・リムワッタナーの獲得を目指していたようですが実現しなかったようです。それに続いて触手を伸ばしたのが同じMFL1部所属のPKNP FCの同じカンボジア人MFチャン・ワタナカでしたがこちらも実現せず、結果的にチャンタ・ビン選手の残留となったようです。
 チャンタ・ビン選手残留で、トレンガヌFC移籍の噂が出ていたケランタンFAを退団したばかりのブラジル人MFカッシオ・デ・ジーサスは、結局、他のクラブを探すことになりそうです。
 *アセアン枠:MFL1部の各クラブは5名の外国人枠を持っていますが、そのうち三つは無条件ですが、残る二枠のうち、一つはアジア出身の選手対象、もう一つはアセアン(東南アジア諸国連合)出身選手枠となっています。例えばトレンガヌFCであれば、チェチェ・キプレ(コートジボワール)、リー・タック(イングランド)、ルイス・グスタボ・フランシスコ・カミロ(ブラジル)は無条件枠の外国人選手ですが、サンジャル・シャアフメドフ(ウズベキスタン)はアジア選手枠、チエリー・チャンタ・ビンはアセアン枠での契約となっています。

5月14日のニュース:ケランタンFAの混乱は続く、今回はブラジル人FWとの契約を解除

ケランタンFAはブラジル人FWとの契約を解除
当地のマレー語紙ハリアン・メトロのオンライン版によると、ケランタンFAのブラジル人FWフラヴィオ・ベック・ジュニオールが退団しました。なおフラヴィオ選手はインドネシア1部リーグのバヤンカラFCへ移籍します。
 ケランタンFAは2017年に就任したものの2ヶ月間で退任したウルグアイ人のテクニカルダイレクター、アルフレド・カルロス・ゴンザレズ氏へのおよそ23万リンギ(約600万円)とされる給料未払い問題により、FIFAからリーグ戦の勝点3剥奪の処分を今年の4月に受けています。
 またマレーシアフットボールリーグMFLが2部プレミアリーグに参加する各チームに年間助成金として100万リンギ(約2700万円)を提供しますが、ケランタンFAはシーズン前の選手登録書類提出の遅れから罰則として50%の減額処分を受けていました。しかしこれが今月初旬に10%の減額となったことで、その一部を使ってゴンザレズ氏への給与支払いが可能になったとしています。
 しかし、給与未払い問題を過去にも起こしていたため、ケランタンFAは今月2日から29日までの期間で開いているトランスファーウインドー期間中の新たな選手の獲得をマレーシアサッカー協会より禁止されています。
 このため、今シーズンはこれまでにチームトップの4得点を決めているフラヴィオ選手が退団後、その代わりの選手はマレーシア人、外国人を問わず獲得することはできないため、戦力ダウンは必至です。
 また現在所属する選手の社会保険料や年金などの支払い済みを証明する書類が今月22日までにMFLに提出されない場合、ケランタンFAは、さらに勝点3が剥奪されることになっています。
 ケランタンFAの会長の座を巡っては、現在のビビ・ラムジャニ会長に現在の混乱の責任を取って辞任を求める勢力と現会長との間の権力闘争とも取れる内紛が続いており、山積している問題が収集しなければ、ケランタンFAは1部スーパーリーグへの昇格どころか、2部プレミアリーグからの降格の恐れすらあります。

MFL第8節の結果まとめ

1部スーパーリーグ
JDT(6勝2分0敗)3−1フェルダ・ユナイテッド(1勝3分4敗)
得点者:JDT-ゴンザロ・カブレラ(88分)、アクヤ・ラシド(90分)、ジオゴ(90分)、フェルダ・ユナイテッド-ジョシネル・スカッド(90分)
 イエローカード8枚、レッドカード3枚(そのうちJDTはイエロー1枚のみ)という荒れた試合は、土壇場で同点に追いついたフェルダ・ユナイテッドをJDTが突き放して首位を堅守しました。ゴンザロ・カブレラはリーグトップの6ゴール目を挙げています。
 なお、この試合ではアディショナルタイムが8分と長かったことやフェルダ・ユナイテッドに3枚のレッドカードが出されたことについて、ソーシャルメディアではこの試合の主審を務めたフィトリ・マスコン氏がJDTの本拠地であるジョホール州出身であることから、JDTよりの判定だったのではという批判が出ているだけでなく、フィトリ氏をこの試合に配置したマレーシアサッカー協会FAMに批判が集まっています。
 これに対してFAM審判委員会のモハマド・ダリ・ワヒド委員長は、フィトリ氏はジョホール州ではなく、マラッカ州で審判登録をしていることから、ジョホール州よりの判定という主張は当たらないとしている他、今シーズン既にいくつかの試合では、対戦チームの本拠地がある州出身の主審が笛を吹いたケースは数試合あるとし、そういった試合が何の問題にもなっていないことを指摘しています。
 フェルダ・ユナイテッドの池田圭選手はスタメンで出場し90分に交代、渡邉将基選手はベンチ外でした。

トレンガヌFC(2勝3分3敗)1−2PKNP FC(2勝1分5敗)
得点者:トレンガヌFC-シャミン・ヤハヤ(73分)、PKNP FC-ジャンカルロ(45分PK、46分)
 第7節で最下位のクアラルンプールFA相手に4点を挙げて、今シーズン初勝利を飾ったPKNP FCは連勝で順位を11位から10位に上げています。一方のトレンガヌFCはホームで勝ち点3を取りたかった試合でしたが、波に乗れない今シーズンを象徴するような試合で、7位となっています。

クアラルンプール(KL)FA(1勝0分6敗)2−1クダFA(3勝3分2敗)
得点者:KLFA-ルーク・ウッドランド(10分)、ギリェルメ・デ・パウラ(51分)、クダFA-フェルナンド・ロドリゲス(32分)
 KLFAが7試合目にして、待望の今シーズン初勝利を挙げました。優勝戦線に残りたいクダFAにとっては痛い敗戦で、4位は維持したものの、首位JDTとの勝ち点差は8点と広がりました。
 KLFAの苅部隆太郎は90分から途中出場しています。ユスリ・チェ・ラー監督が采配を振るった第6節までは全試合フル出場していた苅部選手ですが、前節の第7節は出場なしで、今節は最後の数分のみ出場となっており、怪我など体調不良によるものなのか、監督交代によるもののなのか、その理由が気になります。

マラッカ・ユナイテッド(4勝1分3敗)3-4スランゴールFA(3勝3分2敗)
得点者:マラッカ・ユナイテッド-パトリック・ライヒェルト(20分、54分)、ダルコ・マルコヴィチ(71分)、スランゴールFA-アムリ・ヤハヤ(8分、25分)、シーン・シルヴァラジ(88分、90分)
 昨シーズンの得点王ルフィノ・セゴビアを第6節のKLFA戦の怪我で欠くスランゴールFAは、その代役として2試合連続先発のベテランFWアムリ・ヤハヤの活躍で3連勝と調子を上げてきました。一方のマラッカ・ユナイテッドは、スタートダッシュの勢いが衰え、ここ3試合で1分2敗と勝ち星がなく、ザイナル・アビディン・ハサン監督更迭の噂も出ています。

ペラTBG(1勝5分1敗)2-2PKNS FC(3勝3分2敗)
得点者:ペラTBG-シャレル・フィクリ(39分)、ギルマール・ダ・シルヴァ(53分)、PKNS FC-ガブリエル・グエラ(23分)、ロメロ・モラレス(56分)
 ペラTBGは7試合で5引き分けと勝ち切れません。直近の3試合で2得点と苦しんだPKNS FCは出場停止の解けたFWクパー・シャーマンの復帰によって攻撃陣が息を吹き返しました。

パハンFA(5勝2分1敗)1−1プタリンジャヤ(PJ)シティFC(2勝2分4敗)
得点者:パハンFA-ゼ・ラヴ(34分)、PJシティFC-サフィー・サリ(49分)
 パハンFAにとっては痛いホームでの引き分けでした。首位JDTとは勝ち点差が3と開きました。PJシティFCは、給料未払い問題でマレーシアフットボールリーグMFL2部のプレミアリーグを追放となったプルリスFAから移籍したサフィー・サリが移籍後初ゴールを決めています。

2部プレミアリーグ
PDRM FC(0勝2分5敗)1−1JDT II(4勝3分0敗)
得点者:PDRM FC-ファウザン・ファウジ(89分)、JDT II-モハマド・ガダル(57分、PK)

サラワクFA(1勝2分4敗)1-1ケランタンFA(1勝4分2敗)
得点者:サラワクFA-ボビー・ゴンザレス(7分)、ケランタンFA-ザザイ・ムスタファ(45分)

スランゴール・ユナイテッド(4勝1分3敗)2−1サバFA(4勝2分2敗)
得点者:スランゴール・ユナイテッド-セルヒオ・エセキエル(38分)、ファウザン・ズルキフリ(71分)、サバFA-アルト・リナス(89分)

ペナンFA(2勝2分4敗)1-1UKM FC(2勝2分3敗)
得点者:ペナンFA-ジュリアン・ボタロ(63分)、UKM FC-マテオ・ロスカム(17分)

UITM FC(4勝1分2敗)0-1トレンガヌFC II(3勝3分1敗)
得点者:トレンガヌFC-鈴木ブルーノ(82分)
 この試合唯一のゴールで、今シーズン2つ目のゴールを決めたトレンガヌFC IIの鈴木ブルーノ選手はスタメンでフル出場しています。


3月21日のニュース:エアマリンカップ開幕−マレーシアはシンガポールに敗れる、オマーンはアフガニスタンに大勝

エアマリンカップ開幕−マレーシアはシンガポールに敗れる
開幕前から何かと話題の多かったエアマリンカップが開幕し、マレーシア代表は0−1でシンガポール代表に破れました。
 試合の唯一の得点が入ったのは81分でした。シンガポールリーグのタンピネス・ローバーズでプレーするカイルル・アムリがマレーシア守備陣の間隙を突くパス。これに反応したファリス・ラムリが追いすがるディフェンダーをかわしてゴールを決めました。シンガポールリーグのホウガン・ユナイテッドに所属するファリス選手は、昨シーズンはマレーシアフットボールMFLのPKNS FCでプレーしていたので、マレーシアの選手の特徴が頭に入っていたかも知れません。
 ウルトラス・マラヤのボイコットの影響があったかどうかはわかりませんが、当地の英字紙ニューストレートタイムズのオンライン版によると、90000人収容可能なブキ・ジャリルスタジアムでの試合の有料入場者数はわずか3741名だったとのこと。3月18日に招集されたシンガポール代表に対して、3月12日から合宿を行っていたマレーシア代表にとっては、当初の目的であったFIFAランキングのアップどころか、約2年半ぶりの対戦となった永遠のライバル、シンガポールに苦杯を喫する結果となりました。
 シュート数でみると、マレーシア8本、シンガポール7本と互角でしたが、これがオンターゲットになるとマレーシア1本、シンガポール6本と大きく差がついています。これでは0封されるのも当然かと…。
 この試合の結果、マレーシアは前の試合でオマーンに0−5で破れたアフガニスタンとの3位4位決定戦に回り、シンガポールはオマーンとの決勝に進出します。FIFAランキング167位のマレーシアにとっては、165位のシンガポールに負けても、同じアジアサッカー連盟AFCに所属する147位のアフガニスタンに勝てば、FIFAランキング改善の余地はあるので、3月23日の試合では、是非、ホームのファンの前で意地を見せて欲しいです。
 なお、この試合のGoal.comによる選手採点はこちらです。

オマーンはアフガニスタンに大勝
マレーシア対シンガポール戦の前に行われたもう1試合では、オマーンとアフガニスタンが対戦し、オマーンが5−0でアフガニスタンに大勝しています。
 マレーシアの英字紙ザ・スターのオンライン版によると、今年のAFC選手権アジアカップでオマーンを同国初のベスト16へと導いたピム・ファーベーク前監督に代わって就任したエルウィン・クーマン監督はチームに合流してもまだ6日、指導したのもまだ4回とのことですが、今後はアジアカップのメンバーを中心に若手を融合したチームを作りたいとしています。
 決勝戦では一部メンバーの入れ替えを示唆したものの、エアマリンカップを勝ち取るために試合をする気持ちは変わらないとしています。

2月20日のニュース:サフィ・サリーはPJシティFCへ移籍か、サティアナタン監督は続投へ、ペラTBGはACLプレイオフで敗退

サフィ・サリーはPJシティFCへ移籍か
給料未払い問題の解決が進まないプルリスFAの元代表FWサフィ・サリーが移籍を決めたようです。現在の練習場となっているクアラルンプールのマラヤ大学グラウンドで、プルリスFAとの契約が解除されていないため移籍先のクラブ名はまだ明かせないものの、クランバリー(クアラルンプールとスランゴール州一体の総称)に本拠地を持つクラブへの移籍を決意したと述べています。
 この日がプルリスFAとの最後の練習となるだろうと述べたサフィ選手は、これまで既に5つのクラブからオファーを受けていることを認め、それらはかつて所属したスランゴールFAの他、プタリン・ジャヤ(PJ)シティFC、ケランタンFA、UITM FCなどであると述べています。複数のメディアがPJシティFC入りの可能性が高いとしていますが、果たしてどのチームが2010年のアセアンサッカー連盟AFF選手権スズキカップの得点王を獲得するのでしょうか。

サフィ選手の移籍先と噂されるPJシティFCのFacebookにはこんなティザー告知が…。

サティアナタン監督は続投へ
開幕からの3試合で0勝2分1敗と苦戦が続くスランゴールFA。第3節は同じシャー・アラムスタジアムをホームにするPKNS FCとの対戦でしたが0−4と大敗しました。この試合の後、サティアナタン監督は今後の進退については、スランゴール州サッカー協会に一任するとしていました。これについて州サッカー協会のジョハン・カマル・ハミドン事務局長は、サティアナタン監督と州サッカー協会会長でスランゴール州皇太子のテンク・アミル・シャー・スルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下が話し合いを持ったことを認め、その席では進退についての議論はなく、協会としてはサティアナタン監督を支え、クラブが抱えている問題をどう解決するかに時間を割いたことも述べています。
 また3試合で1得点と期待通りの働きができていないという非難が集まっているアントニオ・ジャーマンについては、トランスファーウインドウが閉じるまでに代わりを務める選手が見つからない限りは、契約解除の予定はないとしています。

ペラTBGはACLプレイオフで敗退
2月19日にアジアサッカー連盟AFCチャンピオンズリーグACL出場権を賭けたプレーオフを韓国の蔚山現代と戦ったペラTBGは5−1で敗れ、ACL本戦出場はなりませんでした。
 ペラTBGは23分にアミルル・アザン・アズナンのOGで失点したものの、前半は最小失点の0−1で折り返します。しかし後半に入ると蔚山現代のMFミックス・ディスケルドが56分、58分と立て続けにゴールを決められ突き放されます。その後もMFリ・ドンキョンが70分に、FWジュニオール・ネグラオが87分にそれぞれゴールし、ペラTBGもDFナジール・ナイム・ビン・チェ・ハシムのゴールで90分に1点を返しましたが焼け石に水。ペラTBGのACL本選出場は来年以降に持ち越しとなりました。

2月15日のニュース:ペラTBGのMFL日程が変更、国際大会への選手招集に応じたクラブへの補償措置をMFLが検討、PJシティFCがマンチェスターシティFCの抗議でロゴ変更

ペラTBGのMFL日程が変更
2月12日のアジアサッカー連盟AFCチャンピオンズリーグACL予選2回戦で香港のキッチーFC(傑志)を破ってプレーオフに進出することになったペラTBG。次のマレーシアフットボールリーグMFLの試合は、本日2月15日に予定されている敵地でのKLFA戦ですが、これが8日間で3試合目となることから、ペラ州サッカー協会PAFAは15日のKLFAの日程変更をMFLに申し入れていましたが、Fダト・スリ・アーマド・ファイザル・アズミPAFA会長はこの要求がMFLによって拒絶されたとしていました。MFLはこれを了承し、とりあえず本日のKLFAとの試合は延期となりました。
 ペラTBGは、来週2月19日にACL本選出場が懸かるプレーオフを蔚山現代FCと敵地で対戦します。2012年にはACL優勝の経験もある蔚山現代FCは勝つのが難しい相手ですが、ペラTBGにとってはしっかりと準備ができるような日程変更になって良かったです。

本日2月15日の試合が延期になったことを伝えるKL Hawks(KLFA)の告知(KL HawksのFacebookより)

国際大会への選手招集に応じたクラブへの対応をMFLが検討
2月17日から26日までカンボジアで行われるアセアンサッカー連盟AFFのU22選手権は、FIFAカレンダーに含まれていないため、各クラブが選手招集に応じる義務はありませんが、所属クラブが招集を拒否したことから主力選手を含む5人が出場を辞退しています。
 この問題について、マレーシアサッカー協会FAMでかつて規律委員会の委員長を務めた経験もあるカマルディン・アブドラ氏は、国際大会がFIFAカレンダーに含まれている、いないに関わらず、各クラブがFAMによる招集に応じることを義務付ける規則を作るべきだとしています。
 しかしこの問題は世界中に散見し、どの国も関係者全員が満足するような解決策が見つけられていないわけですから、カマルディン氏の言うように規則を作ってそれを一方的にクラブに押し付けるというのは、やや前時代的な対応に思えます。
 またMFLのケヴィン・ラムリンガンCEOは、スーパーリーグとプレミアリーグを運営するMFLとしてFAMにどのような協力ができるかを考えたいとし、例えば国際大会への選手招集に応じたMFLのクラブについては、各クラブに登録が認められている30名の選手枠を35名に拡大する案などを披露し、代表チームとクラブ双方とってウィンウィンになるような環境を作りたいとしています。

PJシティFCがマンチェスター・シティFCの「アドバイス」でロゴ変更
2019年シーズンから1部スーパーリーグに昇格したプタリン・ジャヤ(PJ)シティFCが、イギリスプレミア・リーグのマンチェスター・シティFCから「アドバイス」を受け、ロゴを変更していました。自身がマンチェスター・シティのファンであるというPJシティFCのオーナー、ダト・スリ・ヴィジェイ・エスワラン氏は大きな問題ではないとしています。ちなみにPJシティFCのホーム用ユニフォームもマンチェスター・シティFCと同じスカイブルーです。(写真は左からPJシティFCの旧ロゴ、マンチェスター・シティFCのロゴ、一番右がPJシティFCの新しいロゴです。)

PJシティFCのユニフォーム(PJ CITY FCのFacebookより)