FAカップ2022決勝-トレンガヌを振り切ってJDTがまず今季一冠

2年ぶりの開催となったマレーシアFAカップの決勝が、9月10日にクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場に公式発表8万4321人を集めて開催され、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)がトレンガヌを3-1で破って、2016年以来6年ぶり2度目の優勝を果たしています。

今季途中の7月にJDTの監督に就任したエクトル・ビドリオ監督にとっては、初タイトルがかかるこの試合で、いつもの通り、ベルグソン・ダ・シルヴァ、フェルナンド・フォレスティエリの2トップを中心とした強力な攻撃陣を中心とした布陣を起用しましたが、トレンガヌのナフジ・ザイン監督は、エースのクパー・シャーマンをベンチ外とし、チェチェ・キプレのワントップという中盤以降を厚くした布陣を選択し、カウンター狙いで11年ぶりの優勝を狙いました。

JDTの最初のチャンスは10分。20歳のウィング、アリフ・アイマンに右サイドを突破されて放たれたシュートは、トレンガヌGKラーディアズリ・ラハリムが止められなかったもののゴールポストに救われます。その後も、JDTは右サイドにボールを集めますが、トレンガヌは190cm越えの長身パペ・ディアキテ、シャールル・ニザム、アザム・アズミらDF陣がJDTのエース、ベルグソン・ダ・シルヴァには仕事をする機会を与えず、守って機会を待つ戦術は少なくとも前半は功を奏しました。

逆に24分には、トレンガヌゴール前から出たボールに反応したファイズ・ナズミがカウンターから左サイドを上がり、JDTのラヴェル・コービン=オングがファウルで止めるも、主審が流しそこからチェチェ・キプレがJDTのGKファリザル・マーリアスと一対一になりながら、ゴールを止められるなど、トレンガヌは好機を作り、JDTには徐々にラフプレーが目立ち始めます。

そんな中、JDTに先制ゴールが生まれます。それまでもJDTは、相手スローインには、ボールをすぐに渡さないなど時間をかける一方で、自らのスローインは相手の選手が戻り切る前に素早く行うなどしていましたが、ここでもラインを割ったボールを素早くゴール前へ展開したJDTは、ベルグソン・ダ・シルヴァからレアンドロ・ヴェラスケスを経て出たパスをアリフ・アイマンがゴールし、JDTが1-0とリードします。

ただし、ハイライト映像を見てもわかりますが、このゴールの起点となったスローインがボールがラインを割った地点の遥か先で行われています。スローインをしようとしたラヴェル・コービン=オンがボールの出た地点にいますが、そこから数メートル離れた地点からのスローインが果たして有効なのかどうかには、正直、疑問が残るほどで、これを認めた審判のJDT贔屓(びいき)という声が上がる可能性があります。

ともかくカウンター狙いだったトレンガヌは、先に失点したことでラインを上げざるを得なくなり、その結果、JDTがリードを広げます。トレンガヌDFラインの裏に抜け出したベルグソン・ダ・シルヴァをGKラーディアズリ・ラハリムが倒してPKを与え、ベルグソン自身がこのPKを決めて、63分にJDTが2-0としました。

76分にはチェチェ・キプレのゴールでトレンガヌは1点様で迫ったものの、78分には再びトレンガヌの守備陣の間隙をついてベルグソン・ダ・シルヴァが再びゴールを決めて、再びリードを広げ、試合はこのままJDTが2点のリードを守り切って、今季一冠目となるFAカップを制しました。

2022年9月10日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
トレンガヌ 1-3 JDT
⚽️トレンガヌ:チェチェ・キプレ(76分)
⚽️JDT:アリフ・アイマン(34分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ2(63分PK、78分)
🟨トレンガヌ(1):マヌエル・オット
🟨JDT(5):マシュー・デイヴィーズ、シェーン・ローリー、ベルグソン・ダ・シルヴァ、レアンドロ・ヴェラスケス、ラヴェル・コービン=オング
MOM:ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)

以下は試合のハイライト映像(映像はアストロアリーナのYouTubeチャンネルより

6月10日のニュース(2)
JDTオーナーのジョホール皇太子が職権縮小を発表
プノンペン・クラウンは1分2敗でマレーシア遠征終了

JDTオーナーのジョホール皇太子が職権縮小を発表

Mリーグ1部スーパーリーグのJDTはクラブ公式サイト上で、クラブオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が職権を縮小し、日常業務からは手を引くことを発表しています。

その理由として、ジョホール州皇太子として担う他の職務に専念するためと明かしたイスマイル殿下は、JDTとクラブの関係者に対して幸運を祈るというメッセージを送っています。

2012年にジョホール州サッカー協会の会長に就任したイスマイル殿下は、ジョホール州に本拠地を持つ2つのMリーグクラブを統合し、2013年シーズンからはJDTの前身ダルル・タジムFCとしてMリーグに参加させました。その後2015年にジョホール州サッカー協会の会長職を辞したイスマイル殿下は、2016年1月、まさにこの年のシーズン前日にJDTのオーナーに就任するとともに、JDTがジョホール州サッカー協会から完全に独立したプロクラブとなることも発表。クラブオーナーとして辣腕を振るった結果が、昨季2021年シーズンまでのスーパーリーグ8連覇という偉業につながっています。

イスマイル殿下の職権縮小はまさに青天の霹靂で、これが発表されたJDTのクラブ公式Facebookには2万5000件を超える反応と1300件を超える書き込みがなされるなど、マレーシアサッカー界にとっては「大事件」でしたが、その反響の大きさに応えるかのように、その後、クラブのテクニカルディレクターを務めるアリスター・エドワーズ氏名義で投稿が行われ、イスマイル殿下は今後もJDTの最大の株主として残り、選手獲得や契約などに関わらなくなるものの、施設や営業、財務などには関わると説明し、これまでのようにクラブの練習や試合に常に顔を見せることはなくなるものの、時間の許す限り練習場やスタジアムに足を運ぶだろうとしています。

プノンペン・クラウンは1分2敗でマレーシア遠征終了

マレーシア遠征中の昨季のカンボジアリーグ覇者プノンペン・クラウンFCは、Mリーグ1部スーパーリーグのKLシティとの練習試合を行い、1-5で敗れています。

プノンペン・クラウンFCは、同じスーパーリーグのトレンガヌとも6月4日と6日の両日に2試合の練習試合を行なっており、初戦は1-1、第2戦は1−3の1分1敗でした。

国際親善試合
6月8日(水)
KLシティ 5-1 プノンペン・クラウンFC
⚽️KL:パウロ・ジョズエ2、ケヴィン・クベンバ2、ロメル・モラレス
⚽️プノンペン:大瀬貴己
(下はプノンペン・クラウンFCの先発XI)

6月6日(月)@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 3-1 プノンペン・クラウンFC
⚽️トレンガヌ:エンク・シャキル、リズアン・ラザリ、ニック・シャリフ
⚽️プノンペン:サス・ロザク
(下は両チームの先発XIと試合のハイライト映像。映像はトレンガヌのクラブ公式YouTubeより。)

なお6月4日の試合のハイライト映像などはこちらです。

6月6日のニュース
U23アジアカップ-2試合連続守備崩壊のマレーシアはグループステージ敗退決定
トレンガヌはマレーシア遠征中のカンボジアリーグ王者と引き分け
トレンガヌは外国籍選手9名全員の残留濃厚
スリ・パハンのアザム・アジーも残留へ

U23アジアカップ-2試合連続守備崩壊のマレーシアはグループステージ敗退決定

2試合で7失点ではさすがに無理!U23アジアカップに出場中のマレーシアは、グループステージ2試合目となるタイ戦に臨み、0-3と完敗し、グループステージ敗退が決まりました。

1-4で敗れた初戦の韓国戦の先発XIからハディ・ファイヤッド(J3沼津)とサフアン・マズラン(トレンガヌII)をそれぞれダニアル・アスリ(スランゴール)とハイリ・ハキミ(トレンガヌ)を入れ替えたマレーシア。この試合で敗れれば上位2チームが進出するベスト16入りがなくなります。

東南アジア競技大会では1-0で勝利を収めているタイを相手に、この試合に勝つしかないマレーシアは積極的に仕掛けようとしますが、前線のルクマン・ハキム(ベルギー1部KVコルトレイク)、ダニアル・アスリまで繋ぐことができない苦しい展開が続きます。そうする内にタイのエース、スファナット・ムエアンタのシュートでタイが23分に先制します。このゴールはこの韓国戦での失点同様、DFラインの裏に抜け出され、さらにシュートがマレーシアDFハリス・ハイカル(スランゴール)の足に当たって角度が変わり、ラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)が反応できないままゴールインでした。

ハディ選手がタイGKと1対1になった59分のシュートは、GKがセーブするなどマレーシアが追いつけない中、69分にはオフサイドトラップを抜け出したチャナロン・プロムスリケウが2点目を、73分には1点目と同じような状況から再びスファナット選手に3点目を決められ万事休す。2戦連続完敗となったマレーシアは最終のベトナム戦を残して、グループステージ敗退が決まっています。

大量失点はDF陣の崩壊が原因ですが、東南アジア競技大会、そして今回のAFC U23アジアカップを見て、それ以上に問題に思えるのはチームに絶対的なエースが不在なことです。特にこの試合ではタイのエース、スファナット・ムエアンタが活躍しただけにそれを痛感しました。

調子の良い選手を使うといえば聞こえは良いですが、ブラッド・マロニー監督も試合ごとにFWの組み合わせを変える試行錯誤を行ったものの、結局、東南アジア競技大会からこの試合まで同じメンバーで戦ってきたマレーシアU23代表は、7試合で10得点14失点、その内タイ、ベトナム、韓国のFIFAランキングが上位の国との対戦に限ると4試合で3得点9失点という結果です。

最終のDFラインの裏を取られる場面が何度も見られるのは、選手間でのチームとしての戦術理解不足ではという懸念もありますが、そうすると、選手を入れ替えずに同じメンバーでチームを編成することの意義を主張するマロニー監督の手腕そのものに今後は疑問符がつく可能性もあります。

また今回のメンバーでは、シャヒール・バシャー(スランゴール)やダニアル選手が所属するスランゴールでは主力としてスーパーリーグ試合に出場する一方で、才能では勝る「海外組」のルクマン、ハディ両選手が所属チームでは十分な試合時間が得られていないのも気がかりです。

最終戦となるベトナム戦では、プライドしか賭けるものはありませんが、それまで失うことがないような好試合を期待したいです。

6月5日(日)@ブニョドコルスタジアム(タシュケント、ウズベキスタン)
マレーシア 0-3 タイ
⚽️タイ:スファナット・ムエアンタ2(23分、73分)、チャナロン・プロムスリケウ(69分)
🟨マレーシア(3):ムカイリ・アジマル、ジクリ・カリリ、アズファル・フィクリ
🟨タイ(0)

(下は両チームの先発XIと試合のハイライト映像。映像はアストロアリーナのYouTubeチャンネルよりータイU23の先発XIはタイ語なので読めません…。)

もう1試合のベトナム対韓国戦は、マレーシア戦で2ゴールを挙げたチョ・ヨンウクのゴールで韓国が先制したものの、DFイ・ジンヨンが77分に2枚のイエローカードによるレッドカードで退場し韓国が10人となった機会を逃さずベトナムが同点ゴールを決め、1-1の引き分けに終わっています。

6月5日(日)@ロコモティフスタジアム(タシュケント、ウズベキスタン)
ベトナム 1-1 韓国
⚽️ベトナム:ヴー・ティエン・ロン(分)
⚽️韓国:チョ・ヨンウク2(分)
🟨ベトナム(0)
🟨韓国(1):イ・ジンヨン
🟥韓国(1):イ・ジンヨン(イエロー2枚)

U23アジアカップ2022 グループステージC組順位表(第2節終了時)

順位チーム得点失点得失差勝点
1韓国1105234
2タイ1105234
3ベトナム0203302
4マレーシア00217-60
トレンガヌはマレーシア遠征中のカンボジアリーグ王者と引き分け

昨季2021年シーズンのカンボジアリーグ王者プノンペン・クラウンFCは、現在、マレーシア遠征を行っていますが、この遠征初戦となるトレンガヌFC戦が6月4日にトレンガヌFCの本拠地、スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアムで行われ、1-1の引き分けに終わっています。

クパー・シャーマン、チェチェ・キプレの2トップを含めた外国籍4名に、ほぼレギュラーメンバーで臨んだトレンガヌに対し、プノンペン・クラウンFCは所属する大瀬貴己、小川雄大の両日本人選手がいずれも先発しています。試合はハキミ・アブドラのゴールでトレンガヌが27分に先制しましたが、プノンペン・クラウンは58分、小川雄大選手がトレンガヌDF陣の裏へ出した絶妙のパスを受けたアンドレス・ニエトがそのままゴールを決めて同点に追いつき、試合は1-1のまま引き分けています。

東南アジア競技大会通称シーゲームズ、そして現在開催中のAFC U23アジアカップに出場しているマレーシアU23代表に多くの選手が招集されているトレンガヌは、4月22日以来、スーパーリーグの試合が全て延期されており、先月5月は一試合も公式戦がありませんでした。マレーシア語紙ハリアンメトロによると、この試合後の会見でトレンガヌのナフジ・ザイン監督は、この日が久しぶりの試合であり、相手が強豪チームであることを考えると、プノンペン・クラウンFC戦での選手のパフォーマンスについては全体的には満足していると話す一方で、今月18日に再開されるMリーグ1部スーパーリーグに向けて、いくつか修正する必要があるとも述べているということです。

国際親善試合
6月4日(土)@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 1-1 プノンペン・クラウン
⚽️トレンガヌ:ハキミ・アブドラ(27分)
⚽️プノンペン・クラウン:アンドレス・ニエト (58分)

(下は両チームの先発XIと試合のハイライト映像。映像はトレンガヌFCの公式YouTubeチャンネルより)

なおプノンペン・クラウンFCは、今日6月6日にトレンガヌともう1試合を行なった後、6月8日(水)にはKLフットボールスタジアムでスーパーリーグのKLシティとも対戦する予定が発表されています。

トレンガヌは外国籍選手9名全員の残留濃厚

5月28日より開いているMリーグの今季2度目のトランスファーウィンドウは6月24日までですが、Mリーグ1部スーパーリーグのトレンガヌは、トップチームのトレンガヌに在籍する5名とセカンドチームのトレンガヌIIに所属する4名の外国籍選手全員の残留が決定したようです。

マレーシア語紙ウトゥサン・マレーシアによると、トレンガヌを運営するTFC社のアブドル・ラシド・ジュソーCEOは、トランスファーウィンドウ中に外国籍選手を入れ替える予定がないと話しています。

今季のトレンガヌはDFパペ・ディアキテ(セネガル)、MFマヌエル・オット(フィリピン)、FWクパー・シャーマン(リベリア)、FWチェチェ・キプレ(コートジボアール)、MFハビブ・ハルーン(バーレーン)、セカンドチームでMリーグ2部プレミアリーグでプレーするトレンガヌIIにはFWジョーダン・ミンター(ガーナ)、DFルーク・ウッドランド(フィリピン)、DFアルグジム・レゾヴィッチ(モンテネグロ)、FWペトルス・シテンビ(ナミビア)の9名が在籍しています。

「外国籍選手は全員が残留するが、彼らには最善のパフォーマンスを求め、チームの目標が達成できるような活躍を求めたい。」と話すアブドル・ラシド・ジュソーCEOは、マレーシア人選手については、ウィングの選手など数名を獲得する予定であると話しています。なおトレンガヌは既にスランゴールから、ニック・シャリフ・ハセフィを期限付き移籍で獲得しています。また、27歳のウィング、アリフ・アンワルは逆に期限付き移籍でプレミアリーグのPDRMに加入することも発表されています。

*****

今季開幕時にチーム内で新型コロナ感染者が見つかったトレンガヌは、複数の試合が延期されており、スーパーリーグ自体は第9節を終えているにもかかわらず、まだ4試合しか消化していません。このため2勝2敗の勝点6で現時点では12チーム中11位となっています。一方のトレンガヌIIは9試合を終えて6勝1分2敗で10チーム中3位となっています。まぁ4試合で外国籍選手を入れ替えるにはリスクが大きすぎる、またセカンドチームは結果を出しているんで入れ替えの必要がない、といったところでしょうか。

スリ・パハンのアザム・アジーも残留へ

Mリーグ1部スーパーリーグのスリ・パハンは、代表でもプレーするMFアザム・アジーが、現在開いているトランスファーウィンドウ中に移籍することはないと明言しています。

マレーシア語紙ブリタハリアンは、スリ・パハン関係者の話として、他のクラブから獲得についての問い合わせを受けておらず、移籍の噂が出ているアザム選手が後半戦も、スリ・パハンでプレーするだろうと伝えています。

低迷するスリ・パハンの中にあり、代表キャップ数16を数える27歳のアザム選手に対して、今回のトランスファーウィンドウ中にリーグ覇者のJDTの他、スランゴール、トレンガヌなどが獲得に動くのではと言う噂が出ていました。しかし、前身のパハンFAから数えると既に110試合以上に出場している地元パハン州出身のアザム選手は、クリストファー・ガメル監督もチームに必要な選手と公言しており、少なくとも今季は最後までスリ・パハンでプレーするようです。

6月3日のニュース
U23アジアカップ-マレーシアは韓国に完敗
サッカー協会運営のエリートアカデミーが欧州へ3選手を派遣
スランゴールのニック・シャリフがトレンガヌに期限付き移籍

U23アジアカップ-マレーシアのグループステージ初戦は韓国に完敗

東南アジア競技大会シーゲームズ出場メンバーと全く同じメンバーでこのU23アジアカップに臨んでいるマレーシアは、シーゲームズで起用したシャヒール・バシャーとダニアル・アスリ(いずれもスランゴール)ではなく、海外組のハディ・ファイヤッド(アスルクラロ沼津)、ルクマン・ハキム(ベルギー1部KVコルトレイク)をFWに起用、GKも長身のラーディアズリ・ラハリムを先発させるなど高さと速さを重視する布陣で、前回2020年大会チャンピオンの韓国に挑みました。

試合直後の好機を活かせなかったマレーシアは、その後は守備に追われる時間が長く、攻撃でも中盤まではボールを持って上がれても、そこから先へ進めず、結局はGKまでボールを戻す場面が目立ちました。そうする間に徐々に韓国に押し込まれていきましたが、韓国FW陣のフィニッシュの精度の低さのおかげで前半は、韓国主将のイ・サンミンのヘディングゴールによる1失点に抑えて終了します。

後半に入るとマレーシアはさらに攻め込まれる場面が多くなり、後半開始直後のコーナーキックからのこぼれ球をペナルティーエリアの外からキム・テファンが蹴り込んで韓国が2-0とリードを広げます。それでもマレーシアDF陣は韓国の攻撃に耐える一方で、83分にはカウンターからムカイリ・アジマル(スランゴール)が抜け出し、1対1となったGKをかわしてシュートを決め、一時は1-2と1点差に迫りました。

しかしその5分後には同点を意識したのか前掛かり気味になったDFラインの裏に抜け出したチョ・ヨンウクがゴールを決めて韓国はリードを広げ、さらに試合終了間際にも同じようなパターンでマレーシアは失点し、終わってみれば1-4の完敗でした。予想はできていたこととはいえ、東南アジアなら許されるミスが韓国相手ではピンチを招くなど、ベトナム、タイと明らかにレベルが違う、アジアの現実を実感させられた試合でした。なお、マレーシアの次戦は6月5日(日)のタイ戦です。

6月2日(木)@ロコモティフスタジアム(タシュケント、ウズベキスタン)
韓国 4-1 マレーシア
⚽️韓国:イ・サンミン(31分)、キム・テファン(48分)、チョ・ヨンウク2(88分、90+2分)
⚽️マレーシア:ムカイリ・アジマル(83分)
🟨韓国(0)
🟨マレーシア(0)

(下は両チームの先発XIと試合のハイライト映像。映像はアストロアリーナの公式YouTubeチャンネルより)

なおグループステージC組のもう一試合は、ベトナムとタイが2-2で引き分けています。
6月2日(木)@ミリースタジアム(タシュケント、ウズベキスタン)
タイ 2-2 ベトナム
⚽️タイ:ベン・デイヴィス(34分)、スファナット・ムエアンタ(90+1分)
⚽️ベトナム:ファン・トゥアン・タイ (1分)、グエン・ヴァン・トゥン (73分)
🟨タイ(0)
🟨ベトナム(1):マン・ドゥン・ニャム 

U23アジアカップ2022 グループステージC組順位表(第1節終了時)

順位チーム得点失点得失差勝点
1韓国1004133
2タイ0102201
3ベトナム0102201
4マレーシア00114-30
サッカー協会運営のエリートアカデミーが欧州へ3選手を派遣

マレーシアサッカー協会FAMと青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会が共同で運営するエリートアカデミーのモクタル・ダハリ・サッカーアカデミーAMDは公式Facebookで、アカデミーのトップ3選手がアカデミー卒業後の契約を目指すために欧州のクラブでトライアウトを兼ねた練習に出発しました。

今回の練習に参加するのはハイカル・ダニシュ、ロヒシャム・ハイカル、ムハマド・アブ・カリリの3選手で昨日6月2日にマレーシアを経ち今月19日まで、フランス2部リーグのアヌシーFCとルクセンブルグのラシンFCユニオン・ルクセンブルクの練習に参加するということです。

新型コロナの影響で2年間延期されてきた欧州クラブでの練習参加プログラムは、今後は毎年行われる予定だということです。

スランゴールのニック・シャリフがトレンガヌに期限付き移籍

Mリーグ1部スーパーリーグのトレンガヌは、同じスーパーリーグのスランゴールからニック・シャリフ・ハセフィを今季末までの期限付き移籍で獲得したことを、クラブ公式Facebookで発表しています。

25歳のニック・シャリフは、2020年シーズンにスリ・パハンでブレークすると、その2020年シーズン終了後に複数のクラブによる争奪戦を経て、スランゴールに移籍しました。しかし、移籍直後に左足首を痛め、2021年はトップチームでは出場機会がなく、今季もセカンドチームのスランゴール2で2部プレミアリーグの試合に出場していました。


4月27日のニュース
シーゲームズ出場のU23代表候補合宿に11名が合流し計16名に。で、残る15名は?
体調不良で休養中の「トレンガヌのメッシ」は練習復帰へ
U17代表はユベントスの施設で合宿も
ジャアミ・クレシはマレーシア人オーナーのカーディフシティの入団テスト受験か

シーゲームズ出場のU23代表候補合宿に11名が合流し計16名に。で、残る15名は?

来月5月7日に開幕する東南アジア競技大会通称シーゲームズに出場するU23代表候補合宿に、新たに12名が合流したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

4月19日から始まっていた合宿はこれまで5名の選手しか参加していませんでしたが、25日には9名が、そして昨日26日には、ハディ・ファイヤッド(J3沼津)が日本から到着するなど、さらに2名が加わり、マレーシアサッカー協会が発表した31名中、15名が合宿参加となっています。

合宿7日目となる4月25日に合流したのは、GKフィルダウス・イムラン、MFアイサル・ハディ、DFダリル・シャム、DFウマル・ハキーム(JDT II)、FW V・ルヴェンティラン、DFシヴァン・ピレイ(PJシティ)、FWアイマン・アフィフ(クダ)、DFウバイドラー・シャムスル(FAM-MSNプロジェクト)、MFニック・アキフ・シャヒラン(トレンガヌ)、そして昨日4月26日に合流したのはFWハディ・ファイヤッド(J3沼津)とDFザイナル・アビディン・ジャミル(PJシティ)の2名です。

また今回U23代表には召集されているわけではないですが、記事の中ではマレーシア人の父親を持つフィンランド生まれのMFノーア・ライネ(フィンランド1部セイナヨエン・ヤルカパッロケルホ)も合宿に合流したと報じられています。

なお残る選手は所属クラブが選手の合流許可を出しし次第、合宿に参加するということです。

体調不良で休養中の「トレンガヌのメッシ」は練習復帰へ

公称156cmの身長から「トレンガヌのメッシ」の愛称を持つファイズ・ナシルは、嘔吐と頭痛に苦しみリーグ戦を欠場していましたが、マレーシア語紙ブリタ・ハリアンは、ファイズ選手の健康状態は回復しつつあり、練習への復帰は近いと報じています。

トレンガヌのナフジ・ザイン監督は、ファイズ選手の容態は安定していると話し、すでに退院して自宅で療養していることを明らかにしています。「幸いなことにファイズ選手の健康状態は回復しているが、練習に参加する前には再度、検査を受ける必要がある。そこで問題がなければ、練習には復帰できるが、実戦に参加する前にはしばらく様子を見たい。」と話すナフジ監督は、主力選手でもあるファイズ選手の復帰はチームにとって不可欠でもあり、速やかな復帰を期待しているとも話しています。

ファイズ選手は4月16日に呼吸困難を訴えて、緊急入院しており、当初は心臓病が疑われていました。しかし、精密検査の結果、心臓に問題はなく、疲労が原因と頭痛と呼吸困難と診断されていました。

ファイズ選手が所属するトレンガヌは、9名が来月行われる東南アジア競技大会通称シーゲームズ出場のU23代表候補に選ばれており、MFLは「チームの負担を減らすために」5月の予定されていたトレンガヌの試合をすべて6月以降に延期しています。これにより5月はスーパーリーグの試合が1試合も組まれておらず、ファイズ選手が元気になっても、試合出場は6月以降になるということです。

U17代表はユベントスの施設で合宿も

マレーシアサッカー協会FAMは公式Facebookで、イタリアセリエAのユベントスのマネージングダイレクターであるフェデリコ・パロンバ氏の表見訪問を受けたことを明らかにしています。

この訪問の席上では、U17代表がトリノにあるユベントスの施設で合宿を行う可能性などについても話し合われたとしています。ユースレベルの育成に関心があるユベントスの経験や知識を活かして、マレーシアのユース選手にも利益をもたらすような協力関係を築くことについても話し合ったとするFAMのハミディン・アミン会長は、今年2022年12月から来年7月の間に、マレーシア国内でユベントスの試合が開催される計画があることも明らかにしています。

今回の表敬訪問後には、FAM関係者がトリノのチーム施設に招待されたことも明かしたハミディン会長は、ユベントスはマレーシアでのアカデミー開設を検討していることについても触れ、これが実現すれば、草の根レベルの選手がユベントスのアカデミーで技術を高める機会になるとも話しています。

香港にオフィスを構え、中国国内に6ヶ所、日本、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドにアカデミーを持つなど、アジア戦略に積極的なユベントスは、香港オフィスの責任者でもあるパロンバ氏が積極的に活動しているようです。

ジャアミ・クレシはマレーシア人オーナーのカーディフシティの入団テスト受験か

国外でプレーするマレーシア人選手を追いかける「ハリマウ・アブロード」によると、マレーシア人の母親を持つジャアミ・クレシ選手が、英国2部カーディフシティの入団テストを受ける可能性があるようです。

カーディフシティはマレーシア人起業家のヴィンセント・タン氏がオーナーのチームです。なおタン氏はベルギー1部のKVコルトレイク、ボスニアヘルツェゴビナ1部のFKサラエヴォなどのオーナーでもあります。

英国1部プレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCのU18でプレーする18歳のクレシ選手は、カーディフシティU23の選手としてコヴェントリーシティU23との試合に出場したことが確認されているということです

昨季はブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCのU17でプレーしたクレシ選手は、決勝でミドルスブラU17を破り、U17プレミアリーグカップに優勝し、自身も準々決勝のサウサンプトンU17戦ではゴールを決めて、勝利に貢献しています。

クアシ選手はこれまでも、マレーシアU17代表やU19代表に召集の可能性が取りざたされていますが、イラク出身の父親がA代表ではマレーシア代表ではなくイラク代表でプレーする可能性を示唆しており、マレーシアサッカー協会FAMからは2000年6月以降は何も連絡をもらっていないと話しています。

4月25日のニュース
ACLグループステージI組第4節-JDTは川崎に大敗でグループ2位に転落(ハイライト映像あり)
トレンガヌはMFLにリーグ日程の再考を求める

ACLグループステージI組第4節-JDTは川崎に大敗でグループ2位に転落

MFレアンドロ・ヴェラスケスに代えてDFカルリ・デ・ムルガを起用するのでは、というボラセパマレーシアJPの予想は外れてしまいましたが、レアンドロ・ヴェラスケスではなくDFマウリシオ、そしてここまで4ゴールを決めているFWベルグソン・ダ・シルヴァに代えてフィリピン代表のFWビエンベニード・マラニョンを起用するなど、JDTのベンヤミン・モラ監督は3日前の引き分けた試合から先発を5名入れ替え、しかもこの5名全員が今大会初先発という布陣で、Jリーグ王者に臨みました。

キックオフから両チームとも激しくせめぎ合った試合は、13分にマウリシオがペナルティエリアの外で小林悠を倒してFKを与えてしまいます。このFKを脇坂泰斗がゴール左上に決めて、川崎が先制しました。このゴールが合図かのようにここから川崎が一気に攻勢を強め、試合はJDTサイドでの時間が長くなります。

JDTにとって不運だったのは、20分にはマウリシオが負傷で交代となったことでしょう。今季ここまでリーグ戦でもベンチ入りすらなかったマウリシオの先発起用は予想しませんでしたが、今季初出場がこのインテンシティの高い試合ということに問題があったのかもしれません。

攻め続ける川崎は31分に家長昭博から山根視来、そして脇坂と繋いだボールを小林が決めて2-0、さらに42分には再び家長からのパスを受けた山根のクロスを再び小林が決めて3-0と、いずれも右サイドを崩す形でゴールを重ね、前半はこのまま川崎の3点リードで折り返します。JDT視点で見ると、2点目と3点目はここまで全試合フル出場の左SBラヴェル・コービン=オンとCBシェーン・ローリーが振り切られ、カバーが遅れる形での失点でした。

JDTのモラ監督はハーフタイムでFWフェルナンド・フォレスティエリとMFアフィク・ファザイルに代えてFWハズワン・バクリとMFナズミ・ファイズを投入します。51分にはそのナズミからのクロスにサファウィ・ラシドが、その直後のCKではシェーン・ローリーがいずれもヘディングでゴールを狙いますが、得点には至りません。

グループステージ突破のためには得失差を考えると、少しでも差を詰めておきたいJDTでしたが、81分にはマルシーニョ、88分にはチャナティップ・ソングラシンがそれぞれゴールを決めて、終わってみればJDTが5失点と大敗に終わった試合でした。

Jリーグ王者の壁の厚さを思い知らされると共に、この試合ではベンチ外となったナチョ・インサやベルグソン・ダ・シルヴァ、80分に投入されたものの焼け石に水だったアリフ・アイマンといったレギュラーとそうでない選手との差が歴然でした。今後も集中開催方式が続く限り、JDTが日本や韓国のクラブと対等に勝負するには選手層に厚みを増す必要がありそうです。

またグループステージI組は残り2節となりましたが、この日の勝利で川崎が勝点8となり首位浮上し、この前の試合で広州を5-0で破った蔚山とJDTが勝点7で並びましたが、グループステージは勝点で並んだ場合には、得失差ではなく直接対決の結果を優先することから、第2節で蔚山に勝利しているJDTが2位、蔚山が3位、そしてここまで全敗の広州が4位となっています。

次節第5節の広州戦は、川崎戦大敗で1となった得失差を再び広げるための大勝が必要な一方で、ここまで4試合フル出場のレヴェル・コービン=オンとシェーン・ローリー、そしてほぼフル出場のマシュー・デイヴィーズを最終第6節の蔚山戦に向けてどれだけ休ませることができるかが焦点となりそうです。

ACLグループステージI組 第4節
4月24日(日)
スルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
JDT 0-5 川崎フロンターレ
⚽️川崎:脇坂泰斗(14分)、小林悠2(31分、43分)、マルシーニョ(81分)、チャナティップ・ソングラシン(88分)
🟨JDT(1):マウリシオ、アフィク・ファザイル
🟨川崎(0)
(下は両チームの先発XIとハイライト映像。映像はアストロアリーナの公式YouTubeより)

4月24日(日)
タン・スリ・ダト・ハジ・ハッサン・ユノススタジアム(ジョホール州ジョホールバル)
広州FC 0-0 蔚山現代
⚽️蔚山:ユン・イルロク(4分)、マールク・コスタ(54分)、ヴァレリ・カザイシュヴィリ(64分)、天野純(73分)、ソル・ヨンウ(85分)
🟨広州(0)
🟨蔚山(0):キム・ヒョヌ
(下は両チームの先発XI)

ACLグループステージI組 順位表

チーム得失差勝点
1川崎4229141138
2JDT42117617
3蔚山421110374
4広州4004021-210

ACLグループステージI組日程(時間はマレーシア時間、日本時間は-1時間)
試合会場はJDTの試合は全てスルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)、それ以外の試合はタンスリ・ダト・ハジ・ハサン・ユノススタジアム(ジョホール州ジョホールバル)となっています。

4月15日(金)
川崎フロンターレ 1-1 蔚山現代JDT 5-0 広州FC
4月18日(月)
広州FC 0-1 川崎フロンターレ蔚山現代 1-2 JDT
4月21日(木)
蔚山現代3-0 広州川崎フロンターレ 0-0 JDT
4月24日(日)
広州FC 0-5 蔚山現代JDT 0-5 川崎フロンターレ
4月27日(火)
蔚山現代-川崎(17時キックオフ)、広州-JDT(22時キックオフ)
4月30日(土)
川崎-広州(17時キックオフ)、JDT-蔚山現代(17時キックオフ)

トレンガヌはMFLにリーグ日程の再考を求める

昨日のこのブログでも取り上げたMリーグ1部スーパーリーグの日程変更。これによりスランゴールとトレンガヌ両クラブの第7節から第9節までの試合が5月以降に変更になっています。この日程変更についてトレンガヌがMリーグを運営するMFLに対して再考を求めていると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

5月にベトナムで行われる東南アジア競技大会通称シーゲームズに出場するU23代表に招集された選手が、スーパーリーグの試合を欠場せずに、大会前の合宿参加やシーゲームズ出場が可能になるようにとの理由からMFLは日程変更を行なっていますが、事前にクラブに打診などなしにMFLが一方的に日程変更を行なったことに失望していると、トレンガヌのアブドル・ラシド・ジュソCEOは述べています。

第7節から第10節の試合が延期されたことで、トレンガヌは5月には全くリーグ戦がなく、その後は延期された試合が組み込まれることで日程が過密になることは明らかであるとし、リーグ終盤の大事な時期に選手のパフォーマンスに影響が出ることを懸念していると述べたアブドル・ラシドCEOは、今季開幕直後に新型コロナの感染者がチーム内に出たことによる試合延期によるその後の連戦で同様の問題がすでに起こったと説明しています。

「スーパーリーグの延期の理由は理解できるが、開幕直後の試合延期のせいで2連敗でスタートしたが、現在はチームは立ち直って2連勝でチームに勢いがついたところである。ここでまた1ヶ月に渡って試合がない状況が続けば、チームの勢いが途切れてしまう心配がある。」と日程変更の再考を求める理由を説明したアブドル・ラシドCEOは、この日程変更により、すでに予約済みの宿舎や移動手段などをキャンセルすることで余分な費用が発生する点も理由として挙げています。

さらにアブドル・ラシドCEOは、今回の日程変更の影響を直接、受けているのはスランゴールとトレンガヌだけであることから、公平さを記すためにもMFLには日程変更の再興を求めたいとしています。

今回のスーパーリーグの日程変更はU23代表候補合宿の招集メンバー31名中、スランゴールから11名、トレンガヌから9名が選ばれていますが、合宿期間もシーゲームズ期間もいずれもFIFA国際マッチデー期間外であることから、トレンガヌのナフジ・ザイン監督は招集拒否を明言し、他のクラブもリーグ戦を優先し、合宿初日には参加者がわずか5名しかいませんでした。


4月4日のニュース
MFL-新型コロナ陽性者発覚を理由とした試合延期は今後容認せず
MFL-スタジアムの入場者数制限は撤廃
アウェイ戦が続くトレンガヌは日程変更を求めるもMFLは即応せず
代表は5月にブキジャリルで練習試合を予定か

MFL-新型コロナ陽性者発覚を理由とした試合延期は今後容認せず

Mリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLは公式サイト上で声明を発表し、今後は新型コロナ陽性者がチーム内に出た場合でも、それを理由とした試合日程延期の申請は受け付けないことを表明しています。

新たな標準作業手順SOPの一環として導入されるこの方針は、今季のMリーグ運営を滞りなく進めるために必要であると、MFLのスチュアート・ラマリンガムCEOは説明しています。

スチュアートCEOは、3月4日の今季開幕から3月16日までの時点で、Mリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグは第2節、FAカップは1回戦が終わっているが、予定されていた計29試合中、16試合が該当チーム内で新型コロナ陽性者が見つかったことから延期されていると話し、度重なる試合日程の変更が各チームの移動や休息、さらには代表チームの年間計画にも影響を及ぼしていると述べています。

「この措置を続けていけば日程再編が難しくなることに加えて、特に試合前日にホームチーム内で感染者が発覚して延期が決定した場合、既に敵地入りしているアウェイチームにとっては移動費や宿泊費などが全て無駄になってしまうだけでなく、延期後の試合開催にも再び同様の経費が発生してしまい、金銭的な負担が大きくなりすぎる。」と説明したスチュアートCEOは、新型コロナ陽性者に代わり、特例としてセカンドチームやU21、U19などのユースチームから選手を昇格させて出場登録することを認めると話しています。

その一方で、MFLの方針に従わず、勝手に試合延期を決めたチームに対しては、MFL理事会がその延期理由を調査し、延期が正当でないと判断した場合には、不戦敗扱いとする他、相手チームの移動や宿泊などを含めた全ての経費を負担する処分を科すとしています。

なお、対戦する両チームが合意の上で試合延期を希望する場合には、FIFA国際マッチデー期間中に、代表候補合宿に招集されている選手を除いたメンバーで対戦することは可能であるともしています。

また、今季リーグ最終日までにすべての日程を消化できないチームについては、MFLと年間スポンサーとの契約に影響が出るだけでなく、Mリーグ各チームへの分配金や放映権料などにも影響が出ることから、その処分はMFL理事会が最終的に決定するとスチュアートCEOは述べています。

MFL-スタジアムの入場者数制限は撤廃

MFLのスチュアートCEOは、マレーシア政府が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)段階からエンデミック(一定の周期で繰り返される流行)段階への移行を宣言したことを受け、4月1日付けでスタジアムへの入場者数制限を撤廃することを発表しています

マレーシアでは、4月1日からはこれまでと同様に公共の場でのマスク着用は義務付けられているものの、飲食店の営業時間制限や施設の収容人数上限を撤廃するなど、大幅な規制緩和が始まっており、MFLは既にスタジアム内での飲食禁止措置の撤廃と12歳以下の子供のスタジアムでの観戦許可を発表していました。

ソーシャルディスタンスの遵守などは求められるものの、今回のスタジアムへの入場者数制限の撤廃で、また少しかつての日常に近づくことになります。また「密」を避けるためにハーフタイムでの使用が禁されていたトイレも試合中を通して開放されることも併せて発表されています。

アウェイ戦が続くトレンガヌは日程変更を求めるもMFLは即応せず

上でも述べたように、Mリーグの試合はチーム内で試合当日のベンチ入りの半数以上が新型コロナ検査で陽性となった場合は延期が認められてきましたが、その結果として、今季まだ公式戦を1試合も戦っていないのがMリーグ1部スーパーリーグのトレンガヌです。(同じスーパーリーグのスリ・パハンもリーグ戦はまだ1試合もしていませんが、既にFAカップ1回戦を戦っています。)

そのトレンガヌですが、今季開幕前に発表された今季の日程では、開幕戦の第1節から第5節まででホームゲーム1試合、アウェイゲーム4試合となることが発表されました。開幕からの5試合でホームゲームが1試合だけなのはトレンガヌだけだったことから、この日程は自チームにとって不利なものになっているとクラブはMFLに日程変更を求めていますが、その回答が未だに得られていないとマレーシア語紙ハリアンメトロが報じています。

トレンガヌのモハマド・ファドヒル チームマネージャーは、日程が発表になった直後の2月8日にMFLに対して再考を依頼し、その後もその依頼に対しての回答をもとめているものの、MFLからは何の返答もないということです。

なお、当初の予定が変更となり、現在発表になっている日程では、本日4月4日(月)には当初第1節の3月5日に予定されていたスリ・パハン戦、4月6日(水)には第3節のPJシティ戦、4月10日(日)には第4節のJDT戦、そして4月17日の第5節のサラワク・ユナイテッド戦までと4試合連続でアウェイゲームが続き、4月22日の第6節にやっとホーム初戦となります。

昨日4月3日からはイスラム教の断食月が始まったこともあり、毎日の断食明けを家族と祝いたい選手にとっては、断食に入ってからのアウェイ3連戦は特に厳しい日程と言えるかもしれません。なおMリーグ1部スーパーリーグの日程では、トレンガヌ以外にこの時期にアウェイゲームが3連戦となる日程を組まれているチームはありません。.

代表は5月にブキジャリルで練習試合を予定か

サッカー専門サイトのブォケットFCは、マレーシア代表が5月に本拠地のブキジャリル国立競技場で練習試合2試合を予定していると伝えています。対戦国は明らかにはなっていませんが、ヴォケットFCは南アジアと西アジアのチームと交渉中であるという噂があるとしています。

キム・パンゴン監督就任後初の対外試合となったシンガポールでの3カ国対抗では、フィリピンにはアキヤ・ラシド(JDT)の2ゴールで2-0と勝利したものの、シンガポールには1-2で敗れています。また3カ国対抗後にはシンガポール1部リーグのアルビレックス新潟シンガポールとも対戦し、3-0で勝利を収めています。

2022年シーズン開幕直前!
Mリーグ1部スーパーリーグクラブ紹介第2回
ペナンFC & トレンガヌFC

Mリーグ2022年シーズンは2月26日のピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、今季開幕を前に今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介する第2回は、昨季Mリーグ3位のペナンFCと同4位のトレンガヌFCです。

ペナンFC(2021年シーズンスーパーリーグ3位)

本拠地:シティスタジアム(ペナン州ジョージタウン)
2021年シーズン成績:3位(12勝5分5敗)得点37(リーグ4位)失点30(同6位)
過去5シーズンの成績:2017年12位-2018年2部10位-2019年2部7位-2020年2部1位-2021年1位
監督:トマーシュ・トルーハ (チェコ)
外国籍選手(*は新加入選手):
 *FWヒラル・エル=ヘルウェ(レバノン/ドイツ-AFC枠)
 FWカサグランデ(ブラジル)
 *FWクリスティアン・ロンティーニ(フィリピン/イタリア-アセアン枠)
 MFエンドリック(ブラジル)
 DFラファエル・ヴィトール

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 *GKムハマド・ハフィズル・ハキム(ペラFCより加入)
 DFアブドル・ラティフ・スハイミ
 DFアズミ・ムスリム
 DFアディブ・ラオプ
 DFシャミン・バハルディン
 *DFファイルズ・ザカリア(クダ・ダルル・アマンFCより加入)
 MFダニアル・アシュラフ
 MFファディル・イドリス
 MFタム・シャンツン
 MFファイズ・マズラン
 MFK・ティヴァンダラン
 FWジェフリ・フィルダウス・チュウ

チーム紹介:
2020年シーズンに2部プレミアリーグで優勝し、昨季は4季振りとなる1部昇格を果たすと、昇格初年度ながら快進撃を続け、終わってみれば2位のクダとは勝点差がわずか2と惜しくも3位となったペナン。2部プレミアリーグでも活躍したカサグランデ、エンドリック、ラファエル・ヴィトールのブラジルトリオが1部スーパーリーグでもチームを支え、リュウジ・ウトモ(インドネシア)やシェリダン・ボボエフ(タジキスタン)の外国籍選手とマレーシア人選手がそろって機能した結果でした。しかしリーグ終了後のマレーシアカップに入ると、グループステージ連敗が続きました。すると昇格初年度の3位という成績を忘れたのか、一部サポーターはトマーシュ・トルーハの選手起用がマレーシアカップ不調の原因としてその退陣を求め、チームもグループステージで敗退してしましました。

シーズンオフに入るとさらに混迷を深め、いずれも今年初めて代表に招集されたGKサミュエル・サマーヴィルやFWアル=ハフィズ・ハルンが退団を表明、さらにMFカイルル・アズリン、MFアメル・アズハル、MFデイヴィッド・ロウリーといった主力が退団し、さらに期限付き移籍だったウトモ選手は所属先のインドネシア1部プルシジャ・ジャカルタへ復帰、ボボエフ選手もチームをさり、その結果、2021年シーズンの開幕XIからはブラジルトリオ以外の8選手が移籍してしまう事態となっています。さらに今季がMリーグ5季目となるエンドリックが来季2023年はJDTで帰化選手としてプレーするとタンパリングまがいの発表も行われるなど、昇格1年目で3位という偉業がが忘れ去られてしまっています。

今季の布陣はサマーヴィル選手に加えて、控えGKのブライアン・シーも退団したところに、元代表GKのムハマド・ハフィズール・ハキムがペラから加入し、W杯アジア最終予選のメンバーにも選ばれているレバノン代表のFWヒラル・エル=ヘルウェ、フィリピンU23代表のFWクリスティアン・ロンティーニが加わりました。これら新戦力と残留したブラジルトリオを加えても、主力選手の大量退団による穴は大きく、若い選手がこれを機会と捉えて成長できるかどうかが、そのまま今季のペナンの成績に反映されそうです。

ボラセパマレーシアJP的注目選手:
ムハマド・ハフィズル・ハキム
昨季は給料未払いが数ヶ月間続き、シーズン途中に大量の主力選手が退団したペラで最後までチームに残ったハフィズル選手ですが、ペラは今季2部に降格したことで移籍を決意しています。ペラでは100試合近くに出場しており、28歳と老け込む歳でもないので、スランゴールに移籍したサマーヴィルの穴を埋める以上の活躍をして、代表復帰を目指して欲しいです。

タム・シャンツン
東京生まれながら両親がマレーシア人のタム選手は、昨季はクダに在籍したものの出場機会はほとんどないままペナンに移籍しています。ペナンでもいきなり先発とはならないでしょうが、プレシーズンマッチでは先発の機会も与えられているようなので、そこからスーパーサブ的な役割でも得られれば、そのユニークな背景から注目されるのではないでしょうか。

トレンガヌFC(2021年シーズンスーパーリーグ4位)

本拠地:スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴンバダ)
2021年シーズン成績:4位(11勝5分6敗)得点33(リーグ5位)失点20(同2位)
過去5シーズンの成績:2017年2部2位-2018年5位-2019年7位-2020年3位-2021年4位
監督:ナフジ・ザイン(マレーシア)
外国籍選手(*は新加入選手):
 *FWクパー・シャーマン(リベリア-クダ・ダルル・アマンFCから加入)
 *FWチェチェ・キプレ(コートジボアール-クダ・ダルル・アマンFCから加入)
 FWジョーダン・ミンター(ガーナ)
 MFハビブ・ハルーン(バーレーン-AFC枠)
 *MFマヌエル・オット(フィリピン/ドイツ-アセアン枠)
 *MFルーク・ウッドランド (フィリピン/英国-アセアン枠)
 *DFパペ・ディアキテ(セネガル)
 DF渡邉将基(日本-AFC枠)
 DFアルグジム・レゾヴィッチ(モンテネグロ)

主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
 GKスハイミ・フシン
 GKラハディアズリ・ラハリム
 #DFアリフ・ファジラー
 #DFシャールル・ニザム
 DFアザム・アズミ
 DFアザルル・ナズリス
 DFアディブ・ザイヌディン(JDT IIから加入)
 MFファイズ・ナシル
 MFニック・アキフ
 #FWハキミ・アブドラー
 #FWファイサル・ハリム

チーム紹介:
打倒JDTの一番手と目された臨んだ昨季のトレンガヌは、第10節でJDTにとっては2季ぶりとなる黒星をつけるなど開幕前の予想に違わず、W杯予選によりMリーグが中断された第13節までの成績が8勝3分2敗とJDTを勝点差3で追走しました。しかし、およそ2ヶ月半後にMリーグが再開されると、JDTが残り9試合を全勝したのに対し、トレンガヌは3勝2分4敗と失速、特に最後のシーズン最後の5試合は1勝1分3敗で最終的には2019年シーズンよりも順位を下げて4位となりました。シーズン終了後には終盤の失速劇を重く見た経営陣が2019年途中から指揮を取るナフジ・ザイン監督との契約をなかなか更改せず、一時は交代も報じられましたが、結局、4季目も監督と務めることが発表されました。

終盤失速の原因の一つは、Jリーグのツエーゲン金沢やKリーグの浦項スティーラーズでもプレー経験があり、インドネシア1部のプルスバヤ・スラバヤでは42試合で35得点の実績を背負って加入したダビ・ダ・シルヴァが、シーズン通算7ゴールとMリーグでは前評判通りの結果が出なかったこと、そしてにそれでもナフジ監督がダ・シルヴァ選手の起用にこだわったことが挙げられます。セカンドチームのトレンガヌIIでは12試合で16得点、トレンガヌでも6試合で4得点とゴールを連発したジョーダン・ミンターを年間を通して起用せず、ダ・シルヴァ選手を最後まで使い続けた結果、シーズン最後の5試合を5得点5失点(ダ・シルヴァ選手は2得点)と逆転優勝どころかAFCカップ出場権のかかった2位も逃しています。そんなトレンガヌがシーズンオフに補強したのは、いずれもMリーグで過去3シーズンで33ゴールを挙げているクパー・シャーマン、そして過去5シーズンで46ゴールを挙げているチェチェ・キプレです。昨季はともにクダ・ダルル・アマンFCでプレーした両選手は合わせて23ゴールを挙げており、昨季のチーム総得点が33だったトレンガヌにとっては、得点力不足解消が期待できる補強となっています。

またマレーシア人選手が昨季からほぼ全員が残留したのも今季はプラスに作用しそうです。若い選手を多く起用した昨季は、リーグとマレーシアカップを合わせるとチーム最多の10ゴールを挙げ、覚醒した感のある24歳のファイサル・ハリム、リーグ戦21試合出場中12試合が途中出場とスーパーサブ的な使われ方をしながら5ゴールを挙げて、A代表に今年初めて招集された22歳のハキミ・アブドラ、そして今季はトップチームでの起用が増えるであろう、AFCU23アジアカップ予選で2ゴールを挙げたMFアズファル・フィクリに加えて、リーグ2位の20失点を支えたアリフ・ファジラー、シャールル・ニザム、アザム・アズミのDF陣も全員が20代前半で、昨季の経験を生かすことができれば、今季もJDTを脅かす一番手となりそうです。

ボラセパマレーシアJP的注目選手:
ファイサル・ハリム
それまで5シーズンを過ごしたパハンから移籍した昨季、ファイサル選手は、チームで唯一となるリーグ戦とマレーシアカップ全試合となる31試合先発を果たしています。一時はスペインのクラブが獲得に興味を示したという報道もありましたが、結局、それ以降は何もなかったようで今季もトレンガヌでプレーするようです。本来は左ウィングですが、タン・チェンホー前代表監督は、スズキカップ2020ではセンターフォワードとして起用するなど持ち味が活かされない場面がありましたが、キム・パンゴン新監督の元では自慢のスピードを駆使して本来のポジションでレギュラー獲得を目指して欲しい選手です。

タラハディアズリ・ラハリム
次世代の代表GK候補として19歳ながら昨年3月末のA代表合宿に招集されたものの、その合宿中に膝前十字靭帯ACL断裂の重傷を負ったタラハディアズリ選手は、このケガにより昨季を棒に振っています。今季はまずはセカンドチームのトレンガヌIIでの復活を目指すことになりそうですが、180cmに満たないマレーシア人GKが多い中で190cm超えの長身はそれだけで魅力的なので、是非、トップチームでのプレーを見てみたいです。

1月5日のニュース
トレンガヌはアンブロと2年5000万円のサプライヤー契約
Mリーグでコーチングライセンスの名義貸しが横行?

Mリーグ1部トレンガヌFCはクラブ公式サイトでイギリスのスポーツブランド「アンブロ」と総額180万リンギ(およそ5000万円)のサプライヤー契約を結んだことを発表しています。

2019年から2021年まではマレーシア国産ブランドのアル=イサン スポーツとサプライヤー契約を結んでいたトレンガヌFCは、このアル=イサン スポーツがそのマレーシア国内代理店となっているアンブロ社と2022年と2023年の2年間にわたるサプライヤー契約を結んだことを発表していますが、この契約はアンブロ社にとってはMリーグクラブと結んだ過去最大の契約となっています。またトレンガヌFCは今季2022年シーズンにアンブロ社と契約しているMリーグ唯一のクラブということです。

Mリーグでコーチライセンスの名義貸しが横行?

Mリーグの複数のクラブでプロライセンスを持つコーチを監督して登録しながら、実際にはライセンスを持たない人間が実質的な指導をしてると、サッカー専門サイトのスムアニャボラが伝えています。

これを告発した元代表選手のジャマル・ナシル氏は、プロコーチライセンスを所持していない人物に監督をさせたいMリーグクラブが、プロコーチライセンスを持つ別のコーチを名目上の監督に据え、そのライセンスを使って意図する人物に指導をさせる不正行為が行われているケースや、クラブが経費を節約する目的でこの不正行為を行なっているケースもあると説明しています。

さらにジャマル氏は、マレーシアサッカー協会FAMやMリーグを運営するMFLが気づいていないのか、気づいていないふりをしているのかはわからないが、この不正行為は既に数年前から続いているとも述べ、ライセンスを持つ指導者の能力が生かされず、ライセンスを持たない指導者が自由に指導できるこの不正行為が取り締まられない限り、代表チームの不振は今後も続いていくだろうと話しています

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これについてはマレーシア語紙ハリアンメトロも取り上げており、その記事の中でマレーシアサッカーコーチ協会PJBMのB・サティアナタン会長もこの名義貸しが行われているという話を聞いたことがあると認め、もしPJBMのメンバーがこの不正行為に加担していることが明らかになれば、厳重処分を科すと述べています。

元マレーシア代表監督でもあり、現在はサラワク・ユナイテッドFCのテクニカルディレクターを務めるサティアナタン氏は、PJBMのメンバーから具体的な報告を受けたことも明らかにしています。「(Mリーグ3部に当たる)M3リーグのコーチがあるクラブから監督就任の依頼を受けたが、その条件はそのクラブのアシスタントコーチが指揮を取り、このコーチには実権が与えられない、という内容だったようで、最終的にこのコーチからはその依頼を断ったと報告を受けている。」

また経費節約目的の名義貸しについては、プロライセンスを持つコーチの月給は最低でも10000リンギ(およそ28万円)、ディプロマ保持者なら25000から30000リンギ(およそ69万円から83万円)となる一方で、1ヶ月あたり2000から3000リンギ(およそ5万5000円から8万3000円)を支払ってその名義のみを借りることで、実際に雇用した場合との差額を節約できると説明しています。

この記事の最後でサティアナタン会長は多くの時間と費用を費やしてプロコーチライセンスを取得しても、不正行為を行う一部のコーチによって、それを活用する場が奪われてしまうとして、名義貸し行為はコーチが自分の首を絞めかねない自殺行為であると批判しています。

なおハリアンメトロの取材に対し、マレーシアサッカー協会FAMのサイフディン・アブ・バカル事務局長はコメントを控えるとし、MFLとこの不正行為疑惑について協議する予定があると回答しているということです。

12月21日のニュース:FAMはスズキカップ早期敗退の責任を認める、トレンガヌFCのナフジ監督は続投が決定

 マレーシアは先週末の記録的な大雨によりクアラルンプールやスランゴール州の首都圏やその周辺地域では2万人とも3万人とも言われる被災者を出しています。1ヶ月分に当たる降水量がわずか3日で降る豪雨による被害の影響は大きく、サッカーどころではないですが、被災者の皆さんが速やかに自宅へ戻れることを祈りつつ今日のニュースです。

FAMはスズキカップ早期敗退の責任を認める

 東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020でマレーシア代表がグループステージ敗退となったことを受け、マレーシアサッカー協会FAMはこの敗退の全責任を負うと公式サイトで発表しています。
 当初の目標であった準決勝進出を逃したマレーシア代表について、FAMのハミディン・アミン会長は現場からの報告を受け取り次第、FAM内の代表チーム運営委員会でスズキカップでのチームのパフォーマンス内容や敗因についての詳細な分析を行うとしています。
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 今年6月のワールドカップ予選敗退の際にはこのような発表はなかったので、今回の敗戦のショックはファンだけでなく、協会にとっても大きかったようです。敗因分析の結果が公表されるかどうかは分かりませんが、選手選考の段階から問題があったとされる今回の代表チームですので、運営面や選手選考などについて見直しが行われるでしょうが、選手のパフォーマンス自体も今回のスズキカップ2020で準決勝に進出した4チームには遠く及ばず、運営と現場の双方が改善されなければ、東南アジア上4強との差は縮まりそうにありません。
 なお多くのメディアでは既にスズキカップ2020のグループステージ敗退の原因解明が始まっています。このブログでも何度か取り上げた、30名登録可能にも関わらず24名しか登録しなかった「24名登録問題」に加え、国内カップ戦の決勝が11月30日に開催されたわずか3日後の12月3日に代表がシンガポール入りとなった「準備期間の不足」、マレーシアサッカー協会FAM主導で行われた帰化選手プログラムの3選手中、今回の代表招集は1名でしかも大会ではスタメンは1回だけの「帰化選手プログラムの失敗」などがその主な原因に上がる一方で、タン代表監督の選手招集を妨げる外部圧力の「見えない手」(これについてはまた機会を作って取り上げる予定です)まで取り沙汰されています。
 マレーシアのタン監督以外は全員が外国籍監督だった今回のスズキカップ2020で、グループステージでは同じB組から準決勝へ進んだベトナム、インドネシアが韓国人監督であることや、やはり準決勝へ進んだ開催国シンガポールが吉田達磨監督であることから、アジア人監督待望論なども出ているようで、来年6月に予定されているAFC選手権アジアカップ2023年大会最終予選はタン監督以外が監督をしている可能性もありそうです。

トレンガヌFCのナフジ監督は続投が決定

 今季のMリーグ1部スーパーリーグで4位に終わったトレンガヌFCは、今季指揮を取ったナフジ・ザイン監督が来季も続投することを発表しています。
 トレンガヌFCを運営するTFC社はトレンガヌ州首相でもあるアフマド・サムスリ・モクタル トレンガヌ州サッカー協会会長を議長として12月6日に理事会を開催し、続投を求めるオファーをナフジ監督に出していましたが、マレーシア語紙ハリアンメトロはこのオファーをナフジ監督が受けたことを報じています。
 スーパーリーグでは4位、そしてリーグ戦後のマレーシアカップでは準決勝でJDTに敗れてベスト4止まりだった今季のトレンガヌFCは、TFC社が今季開幕前に設定した重要業績評価指数KPIをナフジ監督が達成できなかったこともあり、シーズン終了後、直ちに続投オファーが出されませんでした。またTFC社から続投オファーが出た後もナフジ監督が受諾した報道がなかなか出なかったことから、来季は他のクラブでの監督就任も噂されるなど、その去就に注目が集まっていましたが、TFC社のサブリ・アバスCEOはナフジ監督から監督受諾の連絡を受け取ったことを明らかにしています。