5月7日のニュース:リーグを短縮日程としてでもマレーシアカップを開催する理由、帰化選手のクラスニキが代表戦出場可能に、ケランタン州協会は2部リーグの放映拡大を要望

リーグを短縮日程としてでもマレーシアカップを開催する理由
 マレーシアの国内リーグMリーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLは、現在中断中のMリーグ再開に向けて、マレーシア政府が9月再開を許可した際の日程を発表しています。それぞれ全12クラブで争うMリーグ1部スーパーリーグ、2部プレミアリーグとも今季2020年シーズンは1回戦総当たりの11試合(中断前に4試合は実施済み)とし、日本で言えば天皇杯にあたるFAカップは中止を決めています。
 その一方で、試合形式は変更になったものの、中止とはならなかったのがマレーシアカップです。このマレーシアカップはMリーグ終了後に行われ、スーパーリーグの上位11クラブとプレミアリーグの上位5クラブ(ただしスーパーリーグ所属クラブのBチームは出場権なし)の合計16クラブで争われるカップ戦です。
 マレー語紙ブリタハリアン電子版は、なぜ、FAカップが中止となりながら、マレーシアカップは実施となったかを解説する記事を掲載しています。
 MFLがマレーシアカップの開催にこだわったは、このカップ戦が持つ歴史と名声が大きな要因である、と話すのはMFLのアブ・ガニ・ハサンCEOです。「前身のマラヤカップから数えると今年がちょうど100周年となるマレーシアカップは、国内サッカーの重要なブランドであり、多くのサポーターが郷愁を感じるカップ戦であることから、(リーグが9月再開となった場合の)限られた時間の中で、FAカップや(マレーシアカップに出られないクラブが出場する)チャレンジカップを犠牲にしてでも開催するという結論に至った。」
 また、アブドル・ガニCEOは、マレーシアカップの優勝クラブが、マレーシア代表としてアジアサッカー連盟AFCカップに出場するとしたMFLの発表は間違いではないとしています。MFLはFAカップとマレーシアカップの優勝クラブのどちらか一方をマレーシア代表して選ぶことができるとした上で、FAカップが中止となった今、マレーシアカップの優勝クラブがAFCカップに出場できると話しています。
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 英国の植民地であった当時の英領マラヤで、英国海軍の戦艦HMSマラヤより寄贈されたカップ「マラヤカップ」を争奪する大会として1921年に第1回大会が開かれたマラヤカップは、1967年カラはマレーシアカップと名称を変え、現在に至ります。日本の天皇杯(天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会)も同じ1921年に第1回を開催しており、両大会はアジア最古の大会とされています。
 ところが両大会は性格が大きく異なり、マレーシアカップが16のプロクラブだけが出場する大会、日本で言えばJリーグカップのような大会なのに対して、天皇杯はアマチュアクラブも地方予選から参加する大会だということ。ちなみにマレーシアでアマチュアとプロが参加する全国大会はFAカップですが、こちらは第1回大会が1990年で、1994年から始まったJ歴史や伝統を持ち出されるとマレーシアカップには太刀打ちできません。
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 ところで、マレーシアカップ優勝クラブがAFCカップに出場するというアブ・ガニCEOの発言を読んで、少々気になる点があります。というのはAFCカップの出場権が「全国レベルの国内カップ戦優勝クラブ」に与えられるという点です。これまで、Mリーグ1部スーパーリーグの優勝クラブは国内1位のクラブとしてACLチャンピオンズリーグACLの本戦へ、FAカップ優勝クラブは国内2位のクラブとしてACL予選に出場してきました。16のプロクラブだけの大会であるマレーシアカップが果たして「全国レベルの国内カップ戦」とAFCに認められるのかどうかは定かではありません。

帰化選手のクラスニキが代表戦出場可能に
 今季からジョホール・ダルル・タジムJDTでプレーするリリドン・クラスニキは国際サッカー連盟FIFAが規定する「18歳に達した後から5年以上その国で継続居住歴を持つ」という帰化条件を満たしたことから、今年2月にマレーシアの国籍を取得し、JDTではマレーシア人選手として登録されています。
 マレーシア国内ではマレーシア人選手としてのプレーが可能となったものの、代表でのプレーについては、FIFAによる承認が必要でしたが、ブリタハリアン電子版では、マレーシアサッカー協会FAMのもとにFIFAより承認を伝える連絡が入ったということです。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長によれば、FIFAは帰化規定中の「5年」を厳密に計算したところ3月25日がちょうど5年目に当たる日だったとし、この日をもって5年経過となり、クラスニキ選手はFIFAから正式にマレーシア人選手として承認されたとしています。
 ラマリンガム事務局長は、もう1人の帰化選手であるギリェルメ・デ・パウラ(ペラTBG)については、FIFAからは何の連絡も受け取っていないと話しています。
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 このクラスニキ選手が代表でのプレーを承認された3月25日は、FIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選兼AFCアジアカップ2023年大会予選のアラブ首長国UAE戦が予定されていた3月26日の前日で、クラスニキ選手が実際にUAE戦に出場できるのかどうかは定かではありませんでした。しかし、幸か不幸かこのUAE戦が新型コロナウィルスの影響で延期となったことで、クラスニキ選手は予選再開後は問題なく出場する資格を得ることができました。

ケランタン州協会は2部リーグの放映拡大を要望
 渡邉将基選手が所属するケランタンFAを運営するケランタン州サッカー協会KAFAは、予定されているMリーグの9月再開が実現した際には、所属するMリーグ2部プレミアリーグの放映を拡大するように求めていると、ブリタハリアン電子版が報じています。
 KAFAのスポンサー委員会のアーマド・ムザッキル・ハミド委員長は、リーグ再開となっても無観客試合が予定されていることから、クラブを支援するスポンサーの功績を称える行動が必要であると述べています。
 「(MFLの規定により)KAFA自身がライブストリーム配信やソーシャルメディアで中継を配信をすることができないため、2部プレミアリーグの放映権を持つメディアに対して試合の放映を要請したい。観客を入れずにリーグが再開した場合、(KAFAが運営する)ケランタンFAの試合を放送することでスポンサーの功績を認める必要がある」とアーマド・ムザッキル委員長は話しています。

4月29日のニュース:FAMはMリーグ再開が8月中に実現しなければ今季中止の方針、2022年までにMリーグ全クラブを民営化、マラッカUは2月分の遅配給料を支払い開始

FAMはリーグ再開が8月中に実現しなければ今季中止の方針
 マレーシアサッカー協会FAMが現在中断中のMリーグが8月中に再開できない場合には、今季の残り試合を中止することを検討していると、マレー語紙ブリタハリアン電子版が報じています。
 FAMのモハマド・ユソフ・マハディ副会長は、3月18日より中断している国内リーグMリーグについて、10月あるいは11月に再開となった場合には年内に全日程を終了することは不可能だとし、8月中にマレーシア政府よりリーグ戦再開が実現しない場合には全日程を中止せざるを得ないだろうと話しています。
 リーグ再開についてはマレーシア政府による許可を待つしかないと話すユソフ副会長のコメントは、昨日4月28日の定例記者会見でのイスマイル・サブリ・ヤアコブ上級相がMリーグ再開についてのコメントに反応したものです。サブリ上級相は活動制限令が解除となった後でも直ちにMリーグの再開許可は出ないだろうとして、例えば6月中に解除となった場合は、10月からの再開になるだろうとコメントしていました。

Mリーグクラブの民営化
 マレーシアの国内リーグMリーグの大半のクラブは、マレーシア各州サッカー協会(州FA)によって運営されています。このブログでもクラブ名が○○FAとなっているクラブは、その○○州FAがそのクラブを運営していることを表しています。
 国内リーグは元は各州対抗の試合だったという歴史的背景もありますが、州FAがMリーグクラブを運営する最大の利点は、州政府から運営資金が提供されることです。ただし政治家が金だけ出して、口を出さないわけはないので、州FAの会長はサッカーについては全く素人で、他にやるべき仕事を大量に抱える各州の州知事が務めています。
 そういったクラブが大口スポンサーとして州政府を抱えながら給料未払い問題を起こす構造は定かではないですが、1989年のセミプロリーグ化、そして1994年の完全プロリーグ化以降も長年、この運営形態が維持されてきました。
 しかし、新型コロナウィルスの影響によってこれまでの「日常」が大きく変わっている現在、州FAが運営するクラブを民営化する時期に来ているのではないか、という記事をマレー語紙ハリアンメトロ電子版が掲載しています。
 新型コロナウィルス感染拡大の影響で、マレーシア各州政府はその対策に新たな州予算を設けて対応していますが、新たな支出を強いられた州政府が当初予定していた多くの予算をこの新型コロナウィルス対策へと回していることから、スポンサー料として州FAへ回る予定だった予算もそちらへ振り分けられ、その結果とし、Mリーグの多くのクラブが運営資金不足から選手、スタッフの給料削減をせざるを得ない状況になっています。
 マレーシアサッカー協会FAMのクラブライセンスプロジェクトチームのモハマド・フィルダウス・モハメド委員長によると、現在のMリーグ1部スーパーリーグと2部プレミアリーグに所属する24クラブ中、ジョホール・ダルル・タジムJDT、PJシティFC(以上スーパーリーグ)、サラワク・ユナイテッド(プレミアリーグ)の3クラブが完全に民営化されたクラブということです。言い換えれば、これらのクラブは選手、スタッフへの給料支払いが州政府の財政状況に左右されずに運営されるクラブであるということです。(筆者注:州FAが運営するクラブ以外でも、フェルダ・ユナイテッドはマレーシア政府の機関である連邦土地開発庁が、UKM FCとUITM FCはそれぞれ国立大学が、PDRM FCはマレーシア警察が運営するクラブで、州政府同様、公的機関が運営するクラブです。)
 フィルダウス委員長は「新型コロナウィルス感染拡大後に表面化したクダFAの給料未払い問題から明らかなように、州政府が優先するのは州民の福利であり、州FAのクラブへの対応はその後になる」、「もしクラブのオーナーがサッカーを愛し、十分な資金を持つ企業や個人であれば、対応方法は異なるだろう」と話し、Mリーグのクラブを運営する各州FAはクラブのオーナーとなる企業や個人を見つけて民営化を進めるべきであると述べています。また「クラブのオーナーは1人や2人である必要はなく、最大8人で構成する運営委員会によるクラブ所有も可能である」とも話しています。
 FAMのクラブライセンスプロジェクトチームは、2021年シーズン開幕までにMリーグの全てのクラブが州FAから独立した民営化クラブとなることを支援する目的で昨年2019年5月に設立され、各州FAのクラブは今年9月を期限としてクラブ名からFAを外しFCして登録することになっていました。なお、フィルダウス委員長は新型コロナウィルスの影響から、この期限を延長する予定であることを明言し、各クラブの完全民営化は2022年までに完了したいとしています。
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 このブログでもスランゴールFC、トレンガヌFC、マラッカ・ユナイテッド、ペラTBGなどFAがつかないクラブ名を使ってきましたが、実情はこれらのクラブも州政府からの予算で運営されているクラブであり、名称にFAがついたクラブと何ら変わりはないということです。

マラッカUは2月分の遅配給料を支払い開始
 マレー語紙ブリタハリアン電子版によると、Mリーグ1部のマラッカ・ユナイテッドは遅配となっていた2月分の給料を昨日4月28日より支払い始めたようです。
 マラッカ州サッカー協会MUSAのモハマド・ユソフ・マハディ副会長(筆者注:最初の記事に出てくるFAM副会長と同一人物です。念のため)は、60万リンギ(およそ1470万円)を超える未払い給料をマレーシア人選手と外国籍選手に支払ったということです。
 3月末に起こったマレーシア国会での政変でマラッカ州知事も、それまでの国会与党出身者から政変後に与党となった政党出身者へと交代した結果(筆者注:マレーシアでは州知事を選ぶ地方選挙はなく、州議員による選挙で選ばれます)、2月分の給料遅配問題が解決したと話すMUSAのユソフ副会長は、こちらも遅配となっている3月分の給料についても近いうちに支払いが始まると話しています。

4月17日のニュース:ケランタンは一律で給料削減を行わないことを約束、クダは未払い給料問題の存在を認める、 TMJは自分を批判したクダ州FA事務局長を非難、マラッカU主将は給料削減に関する州協会の説明に理解を示す

ケランタンFAは一律で給料削減を行わないことを約束
 今季から渡邉将基選手がプレーするケランタンFAを運営するケランタン州サッカー協会KAFAは、全ての選手から一律で減額するような給料削減を行わないことを約束しているとマレー語紙ブリタハリアン電子版が報じています。。
 KAFAのフシン・デラマン事務局長は、若い選手の中には給料が2000リンギから3000リンギ(およそ5万から7万4000リンギ)という選手もおり、そういった選手の給料削減は行わないこと、また公正を期するために各選手の給料額を元に削減額を検討するとしています。
 デラマン事務局長は「選手の中には給料が1万リンギ(およそ24万6000円)以下の者もいれば、数万リンギの者もおり、KAFAとしては20%から30%の給料削減を行う希望があるが、個々の選手と削減額について近いうちに話し合う予定がある」と話し、選手の同意なしに給料削減を行わないことも併せて表明しています。

クダFAは未払い給料問題の存在を認める
 クダFAを運営するクダ州サッカー協会KFAのアスミルル・アヌアル・アリス名誉事務局長は、3月18日の活動制限令発令以来、クラブのスポンサーによる支援が滞っていることを明らかにしています。
 ジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーであるジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿下が「暴露」したクダFAの未払い給料問題について、クダ州議会議員でもあるアスミルル名誉事務局長は、活動制限令MCOによる経済停滞の影響からスポンサーによる支援を得られておらず、またKFAのスポンサーであるクダ州政府も州予算をMCOで影響を受けているビジネスの補助や州民の生活支援を優先しているとする一方で、クダ州政府には十分な資金があり、MCO解除後直ちに未払い給料問題解決に取り組む予定であると話しています。
 また国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLとマレーシアサッカー協会FAMが何度も会合を開いておきながらリーグ再開予定の発表が遅れている点を非難し、日程が決まらない状況ではKFAを含めた各州FAは選手との給料削減についての話し合いを行うことが難しいとし、選手との交渉はリーグ再開日程が発表になってからになることを示唆しています。
 さらにアスミルル名誉事務局長は、2018年5月以降は給料が未払いだったことはなく、今回の未払い給料問題とされているのは新型コロナウィルスの影響による給料の遅配であり、クダ州サッカー協会KFAの外部の人間が、KFA内の問題に介入することの合法性や、その問題をメディアに公開するその目的は疑わしいものであるとしています。
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 隣国タイやインドネシアでは暫定的とはいえ、リーグ再開日程が発表になっている一方で、マレーシアではMFL、FAMいずれからも日程については何の発表もないまま、給料削減だけを推奨するという不可解な状況になっているのは事実です。また最期の部分で触れられている、「州協会内の問題に介入し、その問題をメディアに公開する」という表現はJDTのイスマイル殿下に向けられている批判だと思われますが、どう表現しようと給料未払いは事実なので、こちらについては少々お門違いな批判に思えます。

TMJは自分を批判したKFA事務局長を非難
 上で取り上げたクダ州サッカー協会KFAのアスミルル・アヌアル・アリス名誉事務局長による自分への批判に対して、TMJことジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下は、KFA内の問題に介入するつもりはないとする一方で、クダFAの選手がJDTの選手に伝えた内容を明かしただけであるとしています。
 イスマイル殿下は自らのインスタグラム上で、給料未払い問題についてKFA自身ではなく他人を批判すルべきではなく、また給料未払い問題を隠すことはサポーターを欺く行為である、と述べています。
 自分自身の利益のためにクラブを運営する政治家の口先だけの約束に長い間苦しんでいるマレーシアのサッカー選手全員の声を代弁しているだけである、とするイスマイル殿下は、未払い給料は新型コロナウィルス発生前のものであること、また未払い給料についてはクダFAの外国籍ストライカーがJDTの選手に告げたものであることを明かし、インスタグラムの投稿には、自分を批判したKFAのアスミルル名誉事務局長の写真も添えています。

マラッカU主将は給料削減に関する州協会の説明に理解を示す
 マラッカ・ユナイテッドの主将で、元代表主将のサフィク・ラヒムは、クラブを運営するマラッカ州サッカー協会MUSAの給料削減についての説明に理解を示していると、マレー語紙ブリタハリアンが報じています。
 マラッカ・ユナイテッドの選手は、先月3月末のマレーシア国会を中心に起こった政変により全面的に交代したMUSAの会長およびフロントと2ヶ月分の未払い給料問題の解決についての話し合いを行い、サフィク主将は全員が納得のいく説明を受けたとしています。
 サフィク主将は、選手が給料の一部削減を受け入れたことを認める一方で、未払いとなっている2月と3月の給料については、削減対象でないことを明かし、さらに4月分から削減される給料についても、どの程度の削減になるかはまだ確定していないと話しています。
 サフィク主将ら11人の選手やザイナル・アビディン監督と話し合いをおこなったMUSAのウィラ・モハマド・ユソフ・マハディ副会長は、話し合いは建設的で友好的だったと述べ、外国籍選手を含めた残りの選手との話し合いは今後行われるとする一方で、全ての選手が未払い給料問題と給料削減については説明に納得していると話し、未払い給料については、1ヶ月程度で完済する予定であることも明かしています。

4月16日のニュース:選手会がJDTオーナーの支持表明に感謝、クダFAサポーターはクラブに未払い問題があることに驚く 、タイ協会は9月に国内リーグ再開を予定、AFCは6月末までの公式戦を全て延期

選手会がJDTオーナーの支持を感謝
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMは公式Facebook上で、「未払い給料問題を抱えるクラブは給料削減の交渉を始める前に未払い給料を支払うべき」というPFAMの主張への支持を表明したジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下に感謝の意を表明しています。
 イスマイル殿下がJDT公式Facebook上で支持を表明すると、直ちにPRAMはサフィ・サリーPFAM会長(PJシティFC)以下、シャーロム・アブドル・カラム(ヌグリスンビランFA)、ラズマン・ロスラン、カイルル・ファミ・チェ・マット(いずれもマラッカ・ユナイテッド)、ファリザル・マーリアス(JDT)、ザクアン・アドハ・アブドゥル・ラザク(クダFA)、スブラマニアム・スーリャパラド(クアラルンプールFA)、シャルル・サアド(ペラTBG)の連名で、「イスマイル殿下がPFAMの主張への指示表明は、殿下がプロサッカー選手に対して心遣い持つことの証であり、また給料削減交渉を行う前にプロサッカー選手の権利と福利が尊重されるべきであることをはっきりと示したものである」、さらに「未払い給料問題を抱えるクラブは速やかに未払い給料を支払い、その上で公平で透明性が高い方法で各選手と個別に給料削減方法の交渉を行うべきである」という内容をFacebook上に投稿しています。
(下はイスマイル殿下に感謝の意を表すPFAMの投稿-TMJはTunku Mahkota Johor「ジョホール皇太子」の意味)

クダFAサポーターはクラブに未払い問題があることに驚く
 マレー語紙ブリタハリアン電子版では、JDTのオーナーでジョホール皇太子のトゥンク・イスマイル殿下がクダFAに給料未払い問題が存在することを公表したことで、クダFAのサポーターの間で驚きが広がっていると報じています。イスマイル殿下はJDTの公式Facebook上でクダFAの他、マラッカ・ユナイテッド、ケランタンFA、ペナンFAも未払い給料問題を抱えていることを公表し、この4クラブは未払い給料問題を解消してから新型コロナウィルス感染拡大防止のためのリーグ中断い伴う給料削減交渉を行うべきであると述べています。
 ブリタハリアンの記事では、23団体あるクダFAサポーターグループの代表者であるモハマド・サファリザル・モハマド・ソブリ氏の「クダFAが未払い給料問題を抱えていることは驚きであり、(クダFAを運営する)クダ州サッカー協会KFAがこれを深刻な問題とし、クラブのイメージや評判を維持するためにも迅速に対応してほしい」というコメントを紹介しています。さらにサフィリザル氏は「クダFAのサポーターも知り得なかった内部の情報がどのようにして外部(のトゥンク・イスマイル殿下)に伝わったのか、またその内部情報が正確なのかどうかについて、KFAに公式発表を求めてたいとしています。

タイ協会は9月に国内リーグ再開を予定
 隣国タイの英字紙バンコクポスト電子版では、現在中断中の今季のタイリーグ1部と2部は今年9月にリーグを再開する予定であると報じています。
 タイサッカー協会FATのソムヨット会長は、新型コロナウィルスによる被害が収束すること条件ながら、今季2020年シーズンを9月から再開し、来年2021年5月終了とすることがFAT役員および1部と2部のクラブの代表者の満場一致で決まったと話しています。なおカップ戦は予定通り行われることも合わせて発表しています。
 また、今季のリーグ戦が9月再開となった場合、ヨーロッパ各国のリーグと同様の9月開幕5月閉幕という日程は、来年以降もタイリーグで採用される可能性があるとしています。
 さらにソムヨット会長は、1部と2部のクラブに対して最大で50%の選手給料削減を許可すると話す一方で、影響を受ける選手から訴訟を起こされることを避けるため、国際サッカー連盟FIFAおよびアジアサッカー連盟AFCと協議を行なっていくとしています。
 この他、タイリーグの放映権を持つTrueVisionsは、7月にFATへ今季2度目の放映権料を支払う予定であるとしながらも、リーグは開幕から第4節終了後に中断していることからどのくらいの放映権料が支払われるかは不明であり、これによりFATから各クラブへ助成金が支給されるかどうかは決まっていないこと、またタイ代表の西野朗監督の給料も50%削減されることも明らかにしています。
 ソムヨット会長は、さらにタイリーグ3部と4部クラブとの会談は今後行われるよていであること、そして以前このブログでも取り上げた今年年末に予定されている東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップについては、国内リーグ開催時期と重なることから、若い選手にあるいは「2軍」の代表チームが参加する可能性も示唆しています。

AFCは6月末までの公式戦を全て延期
 アジアサッカー連盟AFCは公式サイトにて、新型コロナウィルス感染拡大防止とアジア各国で実施されている移動制限を考慮して、5月と6月に予定されていたAFC主催試合を期限を設けずに延期すると発表しています。AFCは既に3月と4月に予定されていたAFCチャンピオンズリーグACLグループステージなどのAFC主催試合を全て延期しています。
 本来ならば8月から始まるACLノックアウトステージも、グループステージを7月中に終了しない限り、予定通りには始まらないことになりました。マレーシアからはジョホール・ダルル・タジムJDTが出場しているACLグループステージのグループGは全12試合中、3試合しか終了しておらず、ACLが再開となっても、おそらく同時に再開となる各国の国内リーグとの日程調整が難しい上、やはり順延となっているFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選件2023年AFC選手権アジアカップ予選もあり、今年後半のサッカーカレンダーは、アジアのサッカー選手に負担を強いるものになりそうです。
 また今回のAFCの発表により、東京オリンピックの女子サッカー出場権をかけた中国対韓国戦も当初予定されていた6月1日と9日の試合が延期となっています。

4月15日のニュース:選手会は給料削減の前に未払い給料問題を解決することを求める、JDTオーナーも選手会の主張を支持、「八百長」の心配はない-FAM

選手会は給料削減の前に未払い給料問題を解決することを求める
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版によると、マレーシアプロサッカー選手会PFAMは未払い給料問題を抱えるクラブに対して、所属選手の給料削減を検討する前に未払い給料を完済するべきであると主張しています。
 活動制限令MCOが4月28日まで延長されたことを受け、国内リーグ各クラブが給料削減交渉を活発化させることが予想されますが、PFAMは契約内容の遵守を原則とした上で、MFLのクラブに対して以下の2つの条件を提示しています。
1. 未払い給料問題を抱えるクラブは、リーグ中断を理由として選手と給料削減交渉を行う前に未払い給料を完済すること。
2. 各クラブが給料削減交渉を行う際は、各選手の給料が異なることを考慮し、全選手に同一の削減案を提示するのではなく、各選手と個別に削減額について話し合うこと。
 MFL1部のPJシティーFCでプレーするPFAMのサフィ・サリー会長は、選手と事前に交渉を行わずに給料削減を行なったクラブが複数あるという情報を得ているとして、マレーシアサッカー協会FAMや国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLに対して、クラブと選手の間の交渉が誠実に行われるよう監視するよう求めています。
 「(新型コロナウィルス発生以前の)給料未払い問題を抱えているクラブは、未払いの給料が完済できない口実として新型コロナウィルスを利用し、その上、さらに給料削減を行おうとしている。しかもそういった給料未払い問題を抱えているクラブが、リーグ中断期間中の給料削減に関して最も声高に主張しているのは皮肉なことである。」と述べるサフィPFAM会長は、さらに「給料が決して高額ではない選手が数ヶ月に渡って給料が支払われていない場合、その選手に対してさらにクラブが給料削減を行ったらどうなるかを想像して欲しい。そういった選手は家や車など生活に必要な多くのものを失うことになるだろう。」と話しています。

JDTオーナーも選手会の主張を支持
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMの主張を支持するように、国内リーグ1部で7連覇中のジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーであるジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下も、JDTの公式Facebook上で給料未払い問題を抱えるクラブはまず、その問題を解決してから給料削減を行うべきであると述べています。
 イスマイル殿下は、国内リーグでプレーする大半の選手は新型コロナウィルス感染拡大によって運営が苦しくなったクラブと給料削減について協力する用意があるとする一方で、クダFA、ケランタンFA、マラッカ・ユナイテッド、ペナンFAなど具体的なクラブ名を挙げた上で、未払い給料問題を抱えるクラブは給料削減を行う前に未払い給料を完済するべきであるというコメントをFacebook上で行っています。
 「大半のクラブはその運営資金全額を州政府から配分されているはずで、そういったクラブが給料未払い問題を抱えている理由が理解できない」として、クラブが州政府の重荷になってはいけないと話しています。
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 国内リーグ1部や2部でプレーするクラブの大半が州サッカー協会によって運営され、州サッカー協会(州FA)のトップは州知事、クラブの最大のスポンサーが州政府、という現在の状況が続く限り、今年3月末に起きたような政変で州議会内での与党、野党が変われば州FAのトップも変わり、長期的な視野でのクラブ運営を行うことは今後も難しいでしょう。また今回のようにイスマイル殿下が正論を吐けるのは、自らがオーナーを務めるJDTがその財源を州政府に依存せず、ジョホール王室からの資金で運営されているからです。(写真はイスマイル殿下の投稿-JDTの公式Facebookより)

「八百長」の心配はない-FAM
 先日のこのブログでは、給料未払いに加えて国内リーグ中断による給料削減が行われようとしているマレーシアサッカー界には、「八百長」が起きやすい環境が整いつつある、という記事を取り上げました。
 しかしマレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長によれば、昨年以来、「八百長」と疑われる試合は起きていないと、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 2018年に就任したラマリンガム事務局長は、自分が就任以来、八百長の疑いがもたれた件が2件あったものの、いずれも八百長ではないと裁定されているそうです。
 かつてマレーシアやシンガポールは八百長試合など不正工作の温床とされていましたが、近年は状況が変わっており、アジアサッカー連盟AFCも過去6年間でアジアでの八百長試合が減少していることを公表しています。
 なおFAMは各州FAの不正防止員会を通じてマレーシア警察やマレーシア政府汚職防止委員会と協力して八百長試合が起こらないよう監視している他、異常な賭け率変動がないかを監視するために国際サッカー連盟FIFAの早期警戒システムEWS社と契約しています。
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 マレーシア国内でのサッカー賭博は非合法ですが、国際的にはオンライン賭博の対象となっており、八百長が起こる可能性は常に存在します。FAMが契約しているEWS社は世界中の賭博事業者と提携し、各国の試合の掛け率などを24時間監視しています。そしてマレーシア国内での試合の掛け率の急激な変動など、不正操作の可能性がある場合には、即座にFAMに警告が通知される仕組みになっています。

4月5日のニュース:スーパーリーグの高額外国籍選手トップ12と高額マレーシア人選手トップ12

 このブログでも何度も記事を引用しているサッカー専門サイトのヴォケットFCが、サッカー情報を提供するドイツのTransfemarketを参考にマレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグの高額外国籍選手と高額マレーシア人選手という特集記事を掲載しています。元の記事は選手の市場価値を紹介しているだけなので、それをそのまま紹介するだけでは味気ないので、独断と偏見で内容を加筆してみました。
 (カッコ)内は、外国籍選手は年齢/ポジション/所属クラブ/国籍、マレーシア人選手は年齢/ポジション/所属クラブです。

高額外国籍選手トップ10

1位 ジオゴ(センターFW / ジョホール・ダルル・タジムJDT / 33歳 / ブラジル)
380万リンギ(およそ9500万円、1リンギはおよそ25円)
昨季2019年にタイ1部リーグのブリーラム・ユナイテッドからタイリーグ2度の得点王の実績を持って加入したジオゴ選手。ブリーラム・ユナイテッドとの契約がまだ1年残っていましたが、当時の報道では、JDTがブリーラム・ユナイテッドに500万タイバーツ(およそ646万リンギ)を支払って獲得してました。今季は4試合で2ゴールを決めています。

2位 ゴンザロ・カブレラ(左ウィング / JDT / 32歳 / イラク)
360万リンギ(およそ8960万円)
2017年にサウジアラビアのアル・ファイサリーから期限付き移籍でJDTに加入した際にはアルゼンチン出身の外国籍選手としてプレーしました。シーズン終了後に一旦、退団が発表されたものの、翌2018年シーズンには完全移籍でJDTに再加入、しかもイラク出身としてアジア枠で登録されました。

3位 レアンドロ・ヴェラスケス(攻撃的MF / JDT / 31歳 / アルゼンチン)
330万リンギ(およそ8820万円)
2015年にJDTに加入し、JDTのアジア初タイトルとなる同年AFCカップの決勝でゴールを決めるなど活躍しました。翌2016年にコロンビアのデポルティーボ・パストへ移籍、ティブローネス・ロホス・デ・ベラクルス (メキシコ)、リオネグロ・アギラス(コロンビア)を経て、今季2019年から再びJDTでプレーしています。

3位 サンジャル・シャアフメドフ(攻撃的MF / トレンガヌFC / 30歳 / ウズベキスタン)
330万リンギ(およそ8820万円)
昨季2019年シーズンにウズベキスタン1部リーグのロコモティフ・タシュケントからトレンガヌFCに加入し、主力選手として迎える2シーズン目の今季は4試合で2ゴールを決めています。

5位 マウリシオ・ドス・サントス・ナシメント(センターバック / JDT / 32歳 / ブラジル)
280万リンギ(およそ6980万円)
昨季2019年シーズンからJDTでプレーするマウリシオ選手は、パルメイラス(ブラジル)のユース出身で、スポルティング(ポルトガル)からセリエAのラツィオへ移籍しました。ラツィオから期限付き移籍で移籍したスパルタク・モスクワ(ロシア)では国内リーグ優勝に貢献、その後、期限付き移籍したレギア・ワルシャワ(ポーランド)を経て2019年にJDTに加入しています。ディフェンダーながらセットプレーでは得点に絡むことも多く、3月3日に行われた今季のAFCチャンピオンズリーグ水原三星戦で決勝ゴールを決めたのは記憶に新しいところです。

6位 デンバ・カマラ(センターFW / PJシティFC / 26歳 / ギニア)
190万リンギ(およそ4730万円)
今季2020年シーズンからマレーシアでプレーするカマラ選手は、イスラエルリーグのハポエル・テルアビブからPJシティFCに移籍しています。今季は4試合で2ゴールを決めています。

7位 イフェダヨ・オルセグン(FW / スランゴールFC / 29歳 / ナイジェリア)
180万リンギ(およそ4490万円)
昨季2019年の2度目の移籍期間トランスファーウィンドウで、バーレーンリーグのアル・リファーから移籍し、10試合で12ゴールを挙げ、今季も4試合で3ゴールと活躍しています。

8位 クパー・シャーマン(センターFW / クダFA / 28歳 / リベリア)
160万リンギ(およそ3990万円)
2018年シーズンにPJシティFCの前身である当時MFL2部のMISC-MIFAに入団し29試合で21ゴールを決め、昨季2019年シーズンはPKNS FCに移籍し、19試合で14ゴールを挙げてリーグ得点王となったシャーマン選手は、所属するPKNS FCが2019年シーズンを持って解散となり、今季はクダFAに移籍しています。今季は4試合で3ゴールを挙げています。

8位 ディクソン・ヌワカエメ(センターFW / パハンFA / 34歳 / ナイジェリア)
160万リンギ(およそ3990万円)
フランスリーグのアンジェSCOから2019年に加入したヌワカエメ選手は、「鉄人」のニックネームを持ち、パハンFAサポーターから絶大な人気を集めています。マレーシア1年目は13試合で7ゴール、前主将のマシュー・デイヴィーズがJDTに移籍した今季は新たに主将を務めながら4試合で2ゴールを決めています。

8位 カレッカ(攻撃的MF / ペラTBG / 25歳 / ブラジル)
160万リンギ(およそ3990万円)
スランゴールFCのオルセグン選手同様、昨季の2度目のトランスファーウィンドウでアトレチコ・アクレアーノ(ブラジル)から加入したカレッカ選手は10試合で7ゴールを挙げましたが、2年目の今季はまだゴールはありません。

8位 ドミニク・ダ・シウヴァ(センターFW / トレンガヌFC / 31歳 / モーリタニア)
160万リンギ(およそ3990万円)
今季2020年にベトナムリーグのサイゴンFCから移籍したダ・シウヴァ選手は、今季2試合目のクダFA戦で4ゴールを挙げています。

8位 レナン・アウヴェス(センターバック / クダFA / 28歳 / ブラジル)
160万リンギ(およそ3990万円)
昨季2019年にインドネシアリーグのボルネオFCから移籍し、クダFAの守備陣を引っ張るアウヴェス選手。昨季のFAカップ決勝前のリーグ戦でイエロー、レッドともらい決勝戦に出場できず、今季もAFCチャンピオンズリーグのプレーオフでソウルFC相手にゴール前で無意味なハンドでPKを与えるなど、個人的にはポカが多い選手という印象です。

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 トップ10にする予定でしたが、8位タイが4名となりトップ12になってしまいました。JDTはこのトップ12に4選手が入っていますが、さすが金満クラブの面目躍如というところでしょうか。興味深いのはクダFAとトレンガヌFCの2選手が含まれていること。特に開幕前には一部選手に給料未払いの噂も出ていたトレンガヌFCですが、財源が実は豊かなのか、あるいは後先考えずに予算を注ぎ込んでいるのか、今後が気になります。またクダFAは昨季からの外国籍選手をレナン・アウヴェス以外全員を入れ替えるなど、打倒JDTへの覚悟が見える補強を行っています。

高額マレーシア人選手トップ12

1位 リリドン・クラスニキ(攻撃的MF / JDT / 28歳)
210万リンギ(およそ5230万円)
コソボ共和国出身のクラスニキ選手は、2015年から2018年まではクダFA、昨季2019年はマラッカ・ユナイテッドでプレーした結果、FIFAの規定により国籍変更が認められ、今年3月にマレーシア国籍を取得したマレーシア人と血縁関係がない二人目の帰化マレーシア人選手です。FIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選が再開されれば、クダFA時代の監督だったタン・チェンホー現代表監督派クラスニキ選手を招集することが予想されています。

2位 ナチョ・インサ(セントラルMF / JDT / 34歳)
180万リンギ(およそ4480万円)
2017年シーズン途中にJDTに加入したインサ選手は、スペイン出身ながら、祖母がマレーシアのサバ州出身であることから、弟のキコ・インサとともにマレーシア国籍を取得した帰化選手です。膝のケガで2019年シーズンを丸々棒に振ったインサ選手ですが、今季はAFCチャンピオンズリーグの水原三星に出場し、MFLでも今季4試合中3試合に出場するなど、代表復帰が見えてきています。

3位 ブレンダン・ガン(セントラルMF / スランゴールFC / 32歳)
160万リンギ(およそ3980万円)
オーストラリア生まれのガン選手は両親がマレーシアのヌグリスンビラン州出身であることから、オーストラリアとマレーシアの両国の代表でプレーする資格がありました。2012年にサバFAでプレーした際は外国籍選手登録でしたが、ケランタンFAでプレーした2014年からはマレーシア人選手としてに登録されています。U23代表でのプレーを経て招集されたフル代表では中心選手として、現在中断中のFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選でマレーシアが2位にいる原動力となっています。今季からスランゴールFCでプレーしますが、ペラTBGからの移籍は大きな話題となりました。

4位 ラヴェル・コービン=オング(左バック / JDT / 29歳)
150万リンギ(およそ3730万円)
ロンドン生まれ、カナダ育ちのコービン=オング選手は、ドイツやオランダでのプレーを経て、2018年シーズンからJDTでプレーしています。国際親善試合ではカナダ代表としてのプレー経験もありますが、母親がマレーシア人であることからマレーシア国籍を取得し、2017年にはフル代表でデビューし・現在も代表の主力選手として活躍しています。

5位 バドロル・バクティアル(右サイドハーフ / クダFA / 32歳 )
140万リンギ(およそ3480万円)
クダ州出身で、ユース時代からクダFA一筋にプレーするバドロル選手は、リーグ戦通算56ゴール、カップ戦も含めれば通算116ゴールを挙げているだけでなく、MFL1部スーパーリーグ、2部プレミアリーグ、FAカップ、マレーシアカップと全てのタイトルを獲得した言わばクダFAのレジェンドです。FIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選では久しぶりにフル代表に復帰しています。

5位 シャルル・サアド(センターバック / ペラTBG / 26歳)
140万リンギ(およそ3480万円)
ペラ州出身で、ハリマウC(U19代表)、ハリマウB(U21代表)、ハリマウA(U22代表)でプレーし、PKNS FCを経て2016年からペラTBGに所属するシャルル選手は、フル代表でも不動のセンターバックを務めています。

5位 サフィク・ラヒム(セントラルMF / マラッカ・ユナイテッド / 33歳)
140万リンギ(およそ3480万円)
昨季2019年からはマラッカ・ユナイテッドでプレーするサフィク選手は、キャップ数75が示すようにフル代表で長年、主将を務めたこの世代で最高のマレーシア人選手として言われています。スランゴール州出身で、2007年にスランゴールFA( 当時)で選手としてのキャリアをスタートし、2013年にはJDTへ移籍しました。JDTのオーナーのジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿からは、クラブ史上最高の主将と評価されています。

5位 マシュー・デイヴィーズ(右サイドバック / JDT / 25歳)
140万リンギ(およそ3480万円)
開幕直前にパハンFAからJDTに電撃移籍したデイヴィーズ選手は、オーストラリア生まれながら母親がサバ州出身であることからマレーシア国籍を取得し、パハンFAに加入した2015年からU23代表として東南アジア競技大会通称シーゲームズでプレーし、現在はフル代表の右サイドバックを務めています。

5位 サファウィ・ラシド(右ウィング / JDT / 23歳)
140万リンギ(およそ3480万円)
トレンガヌ州出身で2014年にT-Team(現トレンガヌFC II)のユースチームでプレーしたのち、T-Teamそして2017年からはJDTに所属しています。2018年、2019年と2年連続でリーグ最優秀選手に選ばれ、フル代表でも主力として活躍するなど、今後のマレーシアを引っ張るエースとして期待されています。

10位 モハマドゥ・スマレ(右ウィング / パハンFA / 29歳)
130万リンギ(およそ3230万円)
ガンビア出身のスマレ選手は2013年からMFLでプレーし続け、FIFAの規定で国籍変更が認められたマレーシアサッカー史上初となるマレーシア人と血縁がない帰化選手第1号です。フル代表でもスピードに乗ったドリブルが魅力の主力選手です。

10位 シャミ・サファリ(右サイドバック / スランゴールFC / 22歳)
130万リンギ(およそ3230万円)
スランゴール州出身でスランゴールFA(当時)のU19を経て、スランゴールFCでは積極的なオーバーラップを得意とするサイドバックとして活躍しています。U23代表からフル代表へと順調に成長し、マシュー・デイヴィーズとフル代表の右サイドバックのレギュラーポジションを争っています。

10位 ファリザル・マーリアス(ゴールキーパー / JDT / 34歳)
130万リンギ(およそ3230万円)
パハン州出身ながらパハンFAではU19でのプレー経験しかなく、プルリスFA、ヌグリスンビランFA、ペラTBG、スランゴールFAを経て2015年からはJDTとフル代表のゴールを守り、フル代表では主将も務めています。

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 外国籍選手同様、トップ10の予定が10位タイが多く12名になってしまいました。マレーシア国外生まれの選手が6名、国内生まれの選手が6名と、ここ数年で顕著になってきたマレーシア人と血縁関係のある国外生まれの選手を帰化させて代表選手にするマレーシアサッカー協会FAMの方針が見て取れるランキングになっています。

4月2日のニュース:FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討、元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮、AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長

FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討
 隣国インドネシアでは新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、5月29日まで国内リーグ中断が確定していますが、これに伴い、インドネシアサッカー協会PSSIは、3月から6月までの期間に限り、国内リーグの各クラブに対して給料の25パーセントを上限として支払うことを認める特別措置を取っています。そしてPSSIがこの措置の根拠として挙げているが、国内リーグの中断は”Force majeure「不可抗力」”によるものであるという考え方です。
 手元にあるスーパー大辞林によれば「不可抗力」とは「 通常,必要と認められる注意や予防方法を尽くしても,なお損害を防ぎきれないこと。債務不履行・不法行為の責任を免れる」となっており、今回のPSSIの場合で言えば、「契約書通りの給料を払う義務を免除される」という解釈でしょう。
 これに倣ってかどうかはわかりませんが、マレーシアサッカー協会FAMが「不可抗力」条項を契約書に盛り込むことを検討中であることを、マレー語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。この記事では、この条項を契約書に盛り込むことにより、現在、マレーシアの国内リーグを揺るがせているリーグ中断に伴う給料削減問題のような事態に対処することが容易になるとしています。
 この「不可抗力」条項導入について、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、今回の新型コロナウィルスによるリーグ中断はFAMにとっても全く未知の経験であるとし、今後このような状況に直面した際には選手との契約を見直す必要があるとして、各クラブやマレーシアプロサッカー選手会PFAMを含めた関係者と一緒に検討していきたいと話しています。
 その一方で、この「不可抗力」は様々な解釈が可能であり、ヘイズ(煙霧-マレーシアやインドネシアで行われている焼畑が原因とされ、健康被害なども引き起こす大気汚染公害:筆者注)や豪雨なども含めるのかなどマレーシアでの適用条件やその目的などを包括的に検討する必要性があることや、マレーシアフットボールリーグMFLで使われている契約書は国際サッカー連盟FIFAが作成した定型書式を採用していることから内容の変更にはFIFAの承認が必要であることなどを指摘した上で、ラマリンガム事務局長は選手、クラブの双方はもちろん、サッカーファンにとっても公平となるようなものとしたいと話しています。

元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮
 クロアチア人のボヤン・ホダック氏は、現在マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグ7連覇中のジョホール・ダルル・タジムが連覇をスタートした2014年に監督を努めた他、2012年にはケランタンFAを率いてスーパーリーグ、FAカップ、マレーシアカップの三冠を達成した名将です。その後2017年から昨年2019年まではマレーシアU19代表の監督を務め、2018年には東南アジアサッカー連盟AFF U19選手権優勝、さらにはアジアサッカー連盟AFC U19選手権本選に14年振りにマレーシアを出場させています。しかし、マレーシアでこれだけの実績がありながら、葉に絹着せぬ発言で知られるホダック氏はU19代表監督の契約を更新されず、現在はインドネシア1部リーグのPSSマカッサルの監督を務めています。
 インドネシアの国内リーグが中断中ということで、クアラルンプールに滞在しているホダック氏は英字紙ニューストレイトタイムズ電子版のインタビューに答え、MFLの多くのクラブが州政府や政府機関を大口スポンサーとしており、現在の新型コロナウィルス感染が拡大する状況では、そう言った州政府や政府機関が充当していたクラブ運営資金が新型コロナウィルス感染対策に使われている可能性があるという持論を展開し、他のスポンサーを持たないクラブ、多くの入場料収入が期待できないクラブは生き残りが困難になり、そのツケは選手にも回ってくるだろうと話しています。
 「年間予算1000万リンギ(およそ2億4600万円)程度のクラブが試合をせずにどのくらい持ちこたえることができるだろうか」と話すホダック氏は、州政府や政府機関といったクラブのスポンサーが既に年間支援額全額を支給していれば良いが、毎月、あるいは四半期ごとに支援が行われるクラブであれば持ちこたえるのが困難になるだろうと述べ、既に負債を抱えているクラブ(=給料未払い問題を抱えているクラブ)では選手が苦しむことになるのではないかと危惧していると語っています。
 さらに中国、韓国、日本といった国のクラブは資金的に余裕があり、リーグを運営する組織から支援も期待できるが、国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFL自身が十分なスポンサーを獲得できていないマレーシアはもとより、似たような状況に置かれている東南アジア各国のクラブが心配であるとしています。
 また上の記事でも取り上げたインドネシアリーグの給料削減問題についても、報道されている内容とは異なり、選手会との交渉なしに決定されたと話すホダック氏は、アジアを含めた世界のサッカークラブの9割以上を占める小規模クラブの多くは、リーグ中断期間が3ヶ月以上に及べば破産しかねないのではと予測しています。

AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長
 4年ごとに開催されるアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ。昨年2019年にアラブ首長国連邦で開催された第17回大会では、カタールが日本を3-1で破って優勝しています。2023年開催予定の第18回大会は中国での開催が既に決まっていますが、その次の大会となる2027年の第19回大会について、AFCは開催希望国から出される申請の締め切りを3月31日から6月30日に延長したと、英国の通信社ロイターが報じています。
 AFCは、十分な準備期間を与えられるように開催地をできるだけ早く確定したかったようですが、新型コロナウィルスの感染拡大により各国のサッカー協会がその対応に追われている現状を考慮した結果の決定であるとしています。
 2027年大会については、過去3回の優勝実績を誇りながら、自国開催の経験がないサウジアラビアが開催に立候補している唯一の国となっています。

3月31日のニュース:JDTの選手らが33パーセントの給料カットに同意、FAMは他のクラブもJDTに倣うことを期待 、その一方で選手は協会とリーグの役員報酬削減を要求

マレーシアでは明日4月1日より、現在発令中の活動制限令MCOがより強化され、これまで通常営業が許されていたスーパーマーケット、食料品店、飲食店などが全て午前8時から午後8時までの営業となります。フードデリバリーなども同様の営業時間となり、この時間帯以外に妥当な理由なき外出をすれば警察に逮捕される、いわば夜間外出禁止状態となります。このような状況下では、読んでいて楽しいニュースはなかなかないのですが、数日ぶりのブログを書いてみました。

JDTの選手らが33パーセントの給料カットに同意
 ジョホール・ダルル・タジムJDTは公式Facebookページにて、選手、コーチ、スタッフが33パーセントの給料削減に同意したと発表しています。3月28日のこのブログでは、選手が給料の一部を本拠地があるジョホール州の災害基金に寄付した事を取り上げましたが、この寄付が削減された33パーセントの一部から拠出されたものなのか、残りの給料64パーセントから選手が寄付したものかは、発表された内容を読む限りでは明らかではありません。
 JDTはこれまでも、2017年にはペナン州で起こった洪水被害者への支援、昨年2019年には元フランス代表のロベール・ピレスやダヴィド・トレセゲ、ルイ・サハ、元オランダ代表のエドガー・ダーヴィッツ、元イタリア代表のマルコ・マテラッツィなど豪華メンバーをそろえて開催したチャリティーマッチで68万リンギ(およそ1700万円)を国立がん協会へ寄付するなど、社会活動に熱心なクラブです。
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 MFLのクラブとしては初めて給料削減を公表したJDTですが、この給料削減と寄付行為は、マレーシアサッカー協会FAMやマレーシアサッカーリーグMFLの公式サイトで取り上げられた他、アジアサッカー連盟AFCのウィンザー・ジョン事務局長(マレーシア人)からも称賛されています。

FAMは他のクラブもJDTに倣うことを期待
 JDTが選手、コーチ、スタッフと給料削減について同意したことで、マレーシアサッカー協会FAMは、他のMFLクラブもJDT同様に選手と交渉することを期待していると、英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 現在、マレーシアフットボールリーグMFLは暫定的に4月30日までの中断が決まっていますが、マレーシア国内に発令中の活動制限令MCOは今後も延長される可能性があり、実際には国内リーグ再開の目処は立っていません。
 試合が開催できない状況下で入場料収入が途絶えたMFLクラブが窮状を訴えていることは、何度かこのブログでも取り上げましたが、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、クラブが選手・スタッフと真摯に交渉を行い、選手・スタッフもある程度の歩み寄りを見せることで、妥協点を見つけるよう努力を求めています。

その一方で選手は協会とリーグの役員報酬削減を要求
 同じニューストレイトタイムズ電子版では、選手やスタッフに給料削減への理解を求めるのであれば、マレーシアサッカー協会FAMとマレーシアサッカーリーグMFLの役員がまずは報酬削減を表明するべきではないか、という選手の声を取り上げています。
 FAMとMFLは、クラブと選手・スタッフとの間で給料削減の交渉を行うべきと提案していることは上で取り上げましたが、MFl1部スーパーリーグのクラブに所属する匿名の選手は、FAMとMFLの役員が率先して報酬を削減すれば、選手やスタッフもそれに続くだろうと話す一方で、そもそも給料削減が議論になる根拠がないとして、給料全額が払われるべきだとしています。
 この選手はインタビューの中で、ユベントスやバルセロナの選手も給料削減に同意している事を指摘されると、リーグも違えば給料の額も違うとして比較の対象にはならないと反論しています。
 4月30日までリーグ中断が続けば、給料削減についての話し合いに応じる可能性があると話すこの選手は、ここまで2週間の中断で給料削減の話が出ること自体、多くのクラブが経営状況に問題がある証であると指摘し、この程度で経営が難しくなるクラブが多いのであれば、MFLは今季のリーグを中止すれば、簡単な話だと過激なことも発言しています。
 またインドネシアサッカー協会PSSIがリーグ中断期間中は各クラブが選手に支払う金額を実際の給料の25パーセントまでで良いとする措置をとった事をAFCが評価していますが(詳しくは下をご覧下さい)、これについては、PSSIがインドネシアのプロサッカー選手会への相談なしで行われたことから、インドネシアの選手は非常に腹を立てていると話し、マレーシアのプロサッカー選手会PFAMには、選手の福利が守られるよう頑張ってもらいたいと話しています。
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 インドネシアサッカー協会PSSIは、3月28日に国内リーグを5月29日まで中断することを発表し、さらに3月から6月までの期間は「不可抗力(force majure)」を理由に、各クラブが選手、コーチ、スタッフに支払う給料を、契約した金額の25パーセントを上限として良いとする決定をしています。PSSIの発表はこちらです。
 例えばオーストラリアサッカー協会FFAは職員の70パーセントを削減しており、「痛み」を共有するのであれば、マレーシアでも協会やリーグ運営組織でも職員の給与削減、あるいは役員報酬の削減が話題になっても良いはずですが、この記事の選手が指摘しているようにマレーシアサッカー協会FAMやマレーシアフットボールリーグMFLからはそういった話は残念ながら全く聞こえてきません。

3月28日のニュース:JDTの選手が給料を寄付、ハートマンはUITM FCの救世主となれるか

JDTの選手が給料を寄付
 ジョホール・ダルル・タジムJDTは公式Facebook上で、選手たちが給料の一部を寄付した事を公表しています。
 Facebookでは主将のハリス・ハルンのコメントの形で、新型コロナウィルスによって被害を受けた人々の負担を減らすため、JDTの本拠地があるジョホール州の災害基金に選手たちが寄付したとしています。
 ジョホール州は感染者数が250名超出ており、人口最大のスランゴール州、連邦直轄地のクアラルンプールとプトラジャヤに続いて感染者が多く、本日の時点で国内最大となる6人の方が亡くなっています。
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 各クラブが収入減による選手の給料削減を話題にする中、JDTはフィールドの内だでなく外でも模範となるクラブですが、これも一重に選手の皆さんが十分な給料をもらっているからでしょう。同じ事をしたくても今の給料ではそんな余裕がない、というやっかみが他のクラブの選手たちから聞こえてきそうです。
(下はJDTのFacebookより)

ハートマンはUITM FCの救世主となれるか
 マレーシアフットボールリーグMFLは3月15日の第4節を最後にリーグ戦が中断していますが、この3月15日は今年2020年1回目のマレーシア国内移籍期間トランスファーウィンドウの最終日でもありました。
 この最終日に移籍が決まった選手は3名おり、クダFAに加入したFWファイザット・ガザリ(昨季は2019年シーズン後に解散したMFL1部のPKNS FCでプレー)、PJシティFCに加入したタイ出身の右サイドバック、アナウィン・ジュジーン(昨季は2019年シーズン後に解散したタイ1部リーグのPTTラヨーンFCでプレー)そして、PJシティFCからUITM FCに期限付き移籍で加入した、イギリス生まれながらフィリピン代表経験もあるFWマーク・ハートマンです。
 今年2月にフィリピン1部リーグのセレス・ネグロスFCからPJシティFCに加入したばかりのハートマン選手は、開幕からPJシティFCがプレーした3試合全てに先発出場しています(トレンガヌFCと対戦予定だった第4節は、ホームゲームながら試合会場が用意できなく延期)。しかし、既に5名の外国籍選手枠が全て埋まっていたPJシティFCがアナウィン選手を獲得したため、押し出されるような形で、4名の外国籍選手しかいなかったUITM FCへ期限付き移籍となりました。
 27歳のハートマン選手は、2017年には当時はいずれもMFL1部スーパーリーグに所属していたサラワクFA(現MFL3部)とペナンFA(同MFL2部)でのプレー経験もあり、この他タイ1部リーグでもプレー経験があります。
 UITM FCはクラブを運営するマラ工科大学の学生と数名のプロ選手で構成されており、ハートマン選手の経験は若い選手が多いチームには貴重でしょう。
 このハートマン選手の加入を取り上げたサッカー専門サイトのヴォケットFCは、UITM FCのフランク・バーンハート監督が元U23代表のFWアリフ・アンワルや21歳のMFアリフ・アルラシドらを積極的に起用する一方で、ここまでの4試合ではブラジル出身のFWグスタボ・アルメイダ一人に頼りがちとなっていた攻撃陣にこのハートマン選手が加わる事で確実に戦力アップが期待できるとしています。
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 観戦記にも書きましたが、今季UITM FCの試合を完成した際に、個人的に最も印象に残ったのが攻撃的MFのラビ・アタヤでした。マラッカ・ユナイテッドとの試合では、中盤から効果的なパスを連発していたのですが、後半はパスを出しても決められない攻撃陣を不甲斐無く感じたのか、前線までボールを持って上がることが多くなり、その結果、周りの選手との連携が悪くなってしまうプレーが見られました。そんなUITM FCへのハートマン選手の加入は、アタヤ選手が持ち味を発揮しやすくなる非常に効果的な補強のように思えます。

3月17日のニュース:協会はリーグ中断中の給与未払に監視を強化、開幕からの4試合で3勝1分のJDT監督の進退問題?、東南アジア選手権2020年大会もスズキ自動車が冠スポンサーに

協会はリーグ中断中の給与未払いに監視を強化 
 新型コロナウィルスの影響を受け、3月16日から中断期間に入ったマレーシアフットボールリーグMFLですが、この中断期間に給与未払いが発生しないよう、マレーシアサッカー協会FAMは注意の目を光らせるつもりであると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガムCEOは、選手やスタッフはいずれもクラブと正式に契約を交わしていること、また各クラブともリーグ開幕前にMFLが行った審査で11月までの予算が確保されていることになっているので、財政問題による給料未払いが発生しないと信じていると話しています。同時にFAMは、今後の状況を詳しく監視し、もし給料を支払われない選手やスタッフからFAMに対して報告がされた場合には、それに応じて該当クラブに処分を行うとしています。
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 このブログでも数え切れないほど取り上げた給料未払い問題。特に問題がない場合でも給料未払い問題が普通に発生するマレーシアサッカー界では、今回の新型コロナウィルスによるリーグ中断は、経営者側による給料未払いの良い口実となりかねません。 
 スペインのラリガを参考に、MFLが今季開幕前に新たに導入したECP(経済コントロールプログラム)によって、各クラブの財務状況はMFLが審査済みのはずなので、もしクラブが今回の中断による救済措置などを求めるようであれば、MFLの審査そのものに問題ありとなり、非難がMFLへ向かう可能性もあります。

開幕からの4試合で3勝1分のJDT監督の進退問題?
 ジョホール・ダルル・タジムJDTはマレーシアフットボールリーグMFL1部で6連覇中ですが、今季は開幕戦で昨季FAカップチャンピオンのクダFAに1-0と勝利したものの、その後はいずれも今季1部に昇格したばかりのUITM FCに2-1、PDRM FCに1-0と辛勝、そして4戦目のフェルダ・ユナイテッドとは1-1と引き分けたことから、今季も圧倒的な勝利を予想するメディアの中にはモラ監督の進退について取り上げる新聞も出てきました。
 マレー語紙ブリタハリアンでは、MFLの各クラブがモラ監督の戦術に慣れた現状では、新たな戦術導入が必要とし、このままではモラ監督交代もありうるというマラ工科大学UITMのスポーツ科学科のモハマド・サデック・ムスタファ准教授のコメントを掲載しました。
 これに対し、JDTは公式Facebook上でテクニカル・ディレクターを務めるアリスター・エドワーズ氏が、開幕からの4試合で3勝1分の勝点10でリーグトップであること、他のクラブに比べるとAFCチャンピオンズリーグACLの試合を余分に戦って疲労がたまていることなどを挙げつつ、コーチでも元選手でもないサッカーとは無関係の学識経験者からのコメントを掲載したブリタハリアンに対して、単に現状を扇情的に扱っていると非難し、公平で正確な報道を求めるとしています。
(JDT公式FBに掲載されたエドワーズTDのコメント)

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 UITM FCやPDRM FCとの1点差勝利、そして昨季は最終節まで2部降格の可能性があったフェルダ・ユナイテッドと引き分けたことで、ソーシャルメディア上でも「今季のJDTは大丈夫か」のようなコメントは散見されました。
 「引分は負けに等しく、負けを大惨事のようにみなすサポーターの気持ちは理解できる一方で、良い日もあれば悪い日もあり、それがサッカーだと理解する必要がある」とJDTのオーナーのジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿下もモラ監督率いるチームを支持するコメントを出しています。
 4試合を消化して、3勝1分で勝点10を獲得しながら進退問題が話題になる監督は世界中を見回してもそうはいないでしょうが、言い換えれば、JDTに対するマレーシアサッカーファンの期待がどれだけ高いかを示しているとも言えるでしょう。
(JDT公式FBに掲載されたオーナーのトゥンク・イスマイル殿下のコメント)

東南アジア選手権2020年大会もスズキ自動車が冠スポンサーに
 東南アジアチャンピオンを決めるアセアンサッカー連盟AFF選手権は2年ごとに開催され、前回大会の2018年大会ではベトナムが通算スコア3-2でマレーシアを破って優勝しています。
 今年開催予定の第13回大会も予定通りであれば、今年半ばに予選のグループ分けが決定し、10月から11月にかけてグループステージが始まりますが、今年の大会もスズキ自動車がAFF選手権の冠スポンサーに就任したことをGoal. comが伝えています。
 タイガービールが冠スポンサーとして1996年に始まったことから当初はタイガーカップと呼ばれていたAFF選手権は、2004年のタイガービール撤退により単にAFF選手権と呼ばれていた時期を経て、スズキ自動車が冠スポンサーとなった2008年大会からはスズキカップと呼ばれています。
 また試合の開催方法も年とともに変わってきており、2016年の前々回大会までは、それぞれ4カ国が2つのホストカントリーに分かれてグループステージを行う形式でしたが、前回2018年大会からは2つのグループに分けられた5カ国が、ホーム2試合、アウェイ2試合を戦受け意識に変わりました。グループの上位2カ国が準決勝に進出し、またホームアンドアウェイで対戦、さらに決勝もホームアンドアウェイの通算成績で優勝が決まる形式は引き継がれたものの、この2018年大会は75万人を超える観衆を集める大会になりました。
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 今年、操業100周年、そして東南アジア進出90年を迎えるスズキ自動車の冠スポンサー継続は喜ばしいことですが、気になるのはやはり新型コロナウィルスの影響です。現在、国内リーグ中断中のマレーシア、ベトナム、タイ、インドネシア、また開幕を延期したフィリピンなどが、今後、国内リーグを再開し、さらに予定されている日程全てを消化しようとすれば、その試合日程が10月あるいは11月までずれ込む可能性があり、そうなるとスズキカップのグループステージが予定されている時期と重なる可能性があります。