1月9日のニュース
エアアジアがマレーシア代表サポーター向けにバンコク往復航空券を特別料金で提供
AFF選手権準決勝出場の代表はJDT所属選手ゼロもJDTが発掘した選手が活躍
マダム・ペンがマレーシア代表選手獲得に関心?

エアアジアがマレーシア代表サポーター向けにバンコク往復航空券を特別料金で提供

1月7日に行われた東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022準決勝ファーストレグでタイに先勝したマレーシア代表は、明日1月10日にバンコク郊外のタマサートスタジアムでタイ代表との準決勝セカンドレグに臨みますが、タイまで応援に駆けつけるマレーシア代表サポーターのためにマレーシアの格安航空会社エアアジアが期間限定でクアラルンプール・バンコク間の往復貢献を特別価格で販売することを発表しています。
 エアアジアの公式発表によるとクアラルンプール・バンコク間の航空券が500マレーシアリンギ(およそ1万5000円)で提供されるということです。なおこの500マレーシアリンギには空港税や燃料サーチャージなど諸々の諸経費が含まれた料金になっており、1月10日と11日の2日間で往復することが条件になっています。
 エアアジアは既にタイ代表サポーターのためにも1月7日と8日の2日間でバンコク・クアラルンプールを往復することが条件となる航空券を5000タイバーツ(およそ1万9500円)で販売していました。

AFF選手権準決勝出場の代表はJDT所属選手ゼロもJDTが発掘した選手が活躍

東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022準決勝ファーストレグでタイに先勝したマレーシア代表は、大会前の代表候補合宿でジョホール・ダルル・タジムJDTから招集された選手13名中、11名が合宿参加を辞退、残った2名もラマダン・サイフラーは最終メンバーに残れず、サファウィ・ラシドはタイ1部ラーチャブリーFCへの期限付き移籍が発表されたことから、国内リーグ9連覇を達成したJDT所属の選手が1人もいない代表チームとなっています。
 しかし2大会ぶりにグループステージを突破した今回の代表チームもJDTと全く無関係ではないという記事を英字紙ニューストレイトタイムズが掲載しています。
 1月10日に三菱電機カップ準決勝セカンドレグを控えるマレーシア代表には、国外で生まれ育った後に帰化したマレーシア人選手が招集されています。ここでいう帰化したマレーシア人選手は大きく二つに大別され、一つは父母や祖父母がマレーシア人である「ハイブリッド」マレーシア人選手、そしてもう一つはそういったマレーシア人との血縁関係を持たない帰化マレーシア人選手です。前者で言えば、ダレン・ロック、スチュアート・ウィルキン、ブレンダン・ガン、ドミニク・タン、クェンティン・チェン、デヴィッド・ローリー、後者で言えばリー・タック、エセキエル・アグエロが該当します。
 英国で生まれ育ったスチュアート・ウィルキンとダレン・ロックは、いずれもJDTの才能発掘部門担当者の目に留まり、マレーシアへやってきました。英国人の父親とマレーシア人の母親を持つスチュアート・ウィルキンは英国プレミアリーグのサウサンプトンFCのアカデミーから、アメリカのミズーリ州立大学サッカー部へ進学、卒業後の2021年1月にJDTのセカンドチームJDT IIと契約したのがマレーシアへ来るきっかけとなりました。昨季はJDT IIから同じスーパーリーグのサバへ期限付き移籍し、今季は完全移籍でサバで2シーズン目を迎えます。
 また英国で生まれ育ち、マレーシア人の父親と英国人の母親を持つダレン・ロックは、英国6部リーグに当たるセミプロリーグのナショナルリーグ・サウスに所属するイーストボーン・バラFCで2012年から2016年までプレーした後、2016年7月にやはりJDT IIと契約してマレーシアへやってきました。翌2017年にはトップチームのJDTに昇格しましたが、2020年にはトレンガヌへ移籍、そして2021年にPJシティへ移籍したことで出場機会が増え、現在は代表チームの主力選手として活躍しています。
 今回の三菱電機カップでは、スチュアート・ウィルキンはシンガポール戦の2ゴールを含めた3ゴールを挙げ、ダレン・ロックもシンガポール戦で1ゴール1アシストを記録しています。

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 今回の代表チームには参加していないものの、JDTにはハイブリッドマレーシア人選手がマシュー・デイヴィーズ、ラヴェル・コービン=オングの両サイドバックやダニエル・ティン、ナチョ・インサ、ナサニエル・シオ、ダリル・シャム、帰化マレーシア人選手もギリェルメ・デ・パウラ、モハマドゥ・スマレ、リリドン・クラスニキがおり、さらに今季Mリーグで6年目を迎えるブラジル出身のエンドリックのマレーシア国籍取得支援を前提に獲得しています。またJDTに続けとばかり、昨季スリ・パハンはリー・タックとエセキエル・アグエロのマレーシア国籍取得支援し、KLシティはブラジル出身のパウロ・ジョズエとコロンビア出身のロメル・モラレスのマレーシア国籍取得支援を明言しています。
 一昨日のニュースでは、スペイン1部のレアル・マドリードが120年を超えるクラブの歴史の中で初めて公式戦先発メンバー全員が外国籍選手となったことがニュースとなっていましたが、この帰化選手やハイブリッドマレーシア人選手増加の流れが続くと、マレーシア代表にマレーシアで生まれ育った選手が1人もいない、全員が外国生まれのマレーシア人選手というニュースが報じられる日が来るかも知れません。

マダム・ペンがマレーシア代表選手獲得に関心?

東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022準決勝でマレーシア代表と対戦するタイ代表のチームマネージャーのヌアルファン・ラムサム氏は「マダム・ペン」として知られていますが、このマダム・ペンがマレーシア代表の複数の選手に関心を示していると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 ブルナマの報道によると、タイ1部リーグのポートFCの会長でもあるマダム・ペンは興味を引いた選手としてMFスチュアート・ウィルキン、FWダレン・ロックといった名前を挙げているということです。
 この他には三菱電機カップ終了後にタイ1部ラーチャブリーFCへの期限付き移籍が決まっているFWサファウィ・ラシド、同じくタイ1部のブリーラム・ユナイテッドFC移籍が発表されたDFディオン・コールズにも関心を示しているということです。
 今回の大会を通じて自身が会長を務めるポートFCに適する選手を探していると話すマダム・ペンは、マレーシアには多くの良い選手がいると話し、「マレーシア代表対タイ代表の試合では、8番(スチュアート・ウィルキン)と9番(ダレン・ロック)に注目したと述べているということです。
 三菱電機カップ開催により現在中断しているタイ1部リーグでは、ポートFCは首位で勝点39を挙げているブリーラム・ユナイテッドFCとは勝点差17離れた7位(16チーム中)となっています。

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マレーシアのメディアに向けた社交辞令だとも思いますが、それでも今季は上記のサファウィ・ラシド、ディオン・コールズの他にもPTプラチュワップFCに加入するDFジュニオール・エルドストール(以前チョンブリーFCでプレーした際の登録名はプテラ・ナダル・アマルハン・マデルナ)、既にコーンケン・ユナイテッドFCでプレーしているMFリリドン・クラスニキと1部だけでも代表経験のある4名のマレーシア人選手がおり、今回の三菱電機カップでマレーシア代表がさらに躍進すれば、ポートFCも含め、タイのクラブがさらに獲得に動く可能性もありそうです。

1月8日のニュース
AFF選手権準決勝1stレグ-マレーシアがタイに辛勝でホーム無敗記録を守る

昨日1月7日に東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022の準決勝ファーストレグがブキ・ジャリル国立競技場で行われ、ホームのマレーシアがタイに2-0と解消しています。この勝利でマレーシアはタイ戦7戦無敗、またブキ・ジャリル国立競技場でのタイ戦は6戦無敗の記録を守っています。

前回2020年大会優勝のタイは、今回はFWチャナティップ・ソングラシン(川崎)、MFスパチョーク・サラチャート(札幌)ら主力を欠きながらも、グループステージA組ではインドネシアと1-1と引き分けた以外はフィリピンに4-0、ブルネイに5-0、カンボジアに3-1と、無敗のままmA組首位として準決勝に進出しています。一方のB組マレーシアは、初戦のミャンマー戦は1-0の僅差で勝利し、ラオス戦は5-0と快勝したものの、ベトナム戦では0-3と完封負け、そして準決勝進出には勝利が必要だったシンガポール戦を4-1で制して、B組2位で準決勝に進出しました。

相性の良いタイを相手に、マレーシアのキム・パンゴン監督は必勝で臨んだシンガポール戦からMFのムカイリ・アジマルに代えてMFリー・タックを起用した以外は変更なしというスターティングXIでした。(下はこの試合の両チームのスターティングXI)

しかし試合開始と同時に積極的な姿勢を見せたのはアウェイのタイでした。キックオフから防戦一方となったマレーシアは、クリアしたセカンドボールもことごとくタイに奪われ、自陣に釘付けになります。

そんな嫌な流れの中、先制したのはマレーシアでした。シャルル・ナジームが自陣からハーフラインを超えて左サイドからペナルティエリアに走り込んだV・ルヴェンティランへロングパス、これをV・ルヴェンティランがヘディングでゴール前に送ると、ファイサル・ハリムがダイレクトで押し込み、今大会4得点目となるゴール!今季からチームメートとなる3選手のプレーでマレーシアが先制しました。また27分にはファイサル・ハリムのパスを受けたクェンティン・チェンがタイGKと一対一になる場面がありましたが、シュートはゴールポストの上に外れるなど少ないチャンス生かすことができませんでした。一方、タイはボーディン・ファラ、ティーラシン・デーンダーらゴールを狙いますが、マレーシアは全員がペナルティエリアまで戻って守備をする必死のプレーで、前半はなんとか1-0で持ち堪えました。

後半に入ってもタイの猛攻が続く中、54分にマレーシアはフリーキックを得ました。リー・タックの蹴ったフリーキックがゴール前に上がると、タイDFと競り合いながらもドミニク・タンが頭で合わせたゴール!しかし、韓国のキム・デヨン主審はマレーシア側にファールがあったとして、ノーゴールの判定を下します。中継のスロー再生映像を見る限りではどこがファール?というプレーでしたが、VARが採用されていない今大会では判定が覆ることはありませんでした。グループステージ初戦のミャンマー戦での不可解なPK判定、ベトナム戦でフォールを見逃した佐藤隆治主審、そしてこの日のキム・デヨン主審と、今大会はなぜかマレーシアに不利な判定が相次いでいます。

最小得点差を守る展開はこの後も続きますが、この試合でもセンターバックに入ったブレンダン・ガンとシャルル・ナジームのスランゴールコンビ、そしてドミニク・タンの3バックを中心に再三のピンチを防いだマレーシアが逃げ切って、準決勝初戦で勝利するとともにタイ戦での無敗記録を7に伸ばしています。なお準決勝セカンドレグは来週火曜日1月10日にタイのタンマサート・スタジアムで行われます。

この試合は下のデータを見てもわかるようにボールの支配率、シュート数(枠内シュート数)、パスの数など数字的にはタイが圧倒しています。この他、コーナーキックもマレーシアの2に対してタイは7となっています。しかもマレーシアは枠内シュート数はわずか1ですが、その1本のシュートがこの試合の唯一のゴールだったというわけです。


AFF選手権三菱電機カップ2022 準決勝1STレグ
2022年1月7日@ブキ・ジャリル国立競技場
マレーシア 1-0 タイ
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム(11分)
🟨マレーシア(1):ファズリ・マズラン
🟨タイ(2):パンサ・ヘーミポーン、スパナン・ブリーラット
MOM:V・ルヴェンティラン(マレーシア)

ハイライト映像はアストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。


1月7日のニュース
マレーシアサッカーファンの筋違いな非難にジェイ・チョウが対応
青年スポーツ省が国内14ヶ所に特設スクリーンを設置-本日の準決勝が視聴可能に
ブキ・ジャリルのピッチ改修期間中はJDTのスタジアムがマレーシア代表の本拠地に

本日1月7日は東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ準決勝のファーストレグがマレーシアのホーム、ブキ・ジャリル競技場で午後8時30分(マレーシア時間、日本時間午後9時30分)から開催されます。5万9000人分のチケットは24時間も経たずに完売するなど、マレーシアサッカーファンの期待も高まっています。最新のFIFAランキングでは、145位のマレーシアに対して、タイは111位と劣勢ですが、マレーシアとタイの対戦成績は直近6試合では昨年9月のキングズカップPK戦勝利の1勝を含むマレーシアの3勝3分、特にブキ・ジャリル国立競技場での対戦は全5試合でマレーシアの3勝2分とタイにとっては鬼門となる試合会場です。マレーシアはこの記録を伸ばすのでしょうか、それともタイが不名誉な記録をストップするのでしょうか。

マレーシアサッカーファンの筋違いな非難にジェイ・チョウが対応

最大収容人数8万7000人のブキ・ジャリル国立競技場ですが、今日の試合のために販売されたチケットは5万9000人分でした。これは1月15日に同じブキ・ジャリル国立競技場で開催される台湾のスーパースター、ジェイ・チョウのコンサートのためのステージ設営の準備と仮設状態のステージからではピッチを見ることができない2万1000人分にあたる座席が販売されなかったことが理由です。マレーシアサッカー協会にはこの不手際について非難が集まっただけでなく、一部のファンはジェイ・チョウのSNSに人種差別的な内容を含んだ罵詈雑言などを投稿する辞退となっており、これに対してジェイ・チョウ自身が冷静になるよう求めていると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。
 「マレーシアのサッカーファンの皆さん。私はあなたたちがサッカーに真剣なのは理解しています。(1月15日の)コンサートを延期することには何も問題はありませんが、皆さんはそれを私にではなく、マレーシアサッカー協会やブキ・ジャリル国立競技場の管理者に依頼するべきです。コンサート延期するか否かは問題ではありません。私は自分のファンの前で歌わせて欲しいだけです。」と自身のSNSに投稿したジェイ・チョウですが、ハンナ・ヨー青年スポーツ相はコンサート開催のための会場予約は2019年に行われた一方で、三菱電機カップ開催のための予約が行われたのは昨年2022年であることを明らかにしており、マレーシア政府が介入し、代表戦を優先する形でコンサートを延期あるいは中止を求めれば、国際社会でマレーシアに対する否定的な評価につながりかねないと述べ、延期や中止の可能性を否定しています。

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昨年12月に就任したばかりのヨー青年スポーツ相では、この問題を知らされた時点はほぼ打つ手がなかったでしょう。またこの記事の中では、ブキ・ジャリル国立競技場を運営するマレーシアスタジアム社とFAMは既に座席数を減らすことで合意していたことも明らかになっています。こちらもこれまでのAFF選手権の日程を見る限りでは、年を超えて決勝が行われたのは前回2020年大会が初めてで、それも1月1日が決勝でしたので、まさか1月8日に準決勝がブキ・ジャリル国立競技場で開催することになるとは思っていなかった可能性もあります。あるいは、ここまで代表戦が観客を集められるとは思っておらず、5万9000人分を確保しておけば十分と考えていたのかも知れません。
 準決勝ファーストレグ前の記者会見では、タイ代表

青年スポーツ省が国内14ヶ所に特設スクリーンを設置-本日の準決勝が視聴可能に

青年スポーツ省は国家統一省と協力し、本日行われるAFF選手権三菱電機カップ2022準決勝ファーストレグのマレーシア対タイの試合が観戦できるように、マレーシア国内の14ヶ所に特設スクリーンを設置することを発表しています。
 「強力な応援でハリマウ・マラヤ(マレーシア語で「マレーの虎」ーマレーシア代表の愛称)を決勝へ連れて行こう!」というツイートと共にスクリーン設置を発表した青年スポーツ省のハンナ・ヨー大臣は、既に試合のチケットが売り切れている中で、試合会場に足を運べない多くのマレーシアサポーターのために、KL市内にあるムルデカ広場を初めてマレー半島各地や東マレーシアのサバ、サラワクにもスクリーンを設置するとして、観戦会場となる場所のリストも発表しています。

ブキ・ジャリルのピッチ改修期間中はJDTのスタジアムがマレーシア代表の本拠地に

本日の準決勝が行われるクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場は、今年3月に芝の張り替えを含めた大規模なピッチ改修が予定されています。その一方で3月20日から28日まではFIFAの国際マッチデー期間になっており、マレーシア代表のホームでもあるブキ・ジャリル国立競技場が使用できない状況の中、Mリーグのジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が代表が試合を行う代替地としてJDTのホーム、スルタン・イブラヒムスタジアムの提供を申し出たと、英字紙ニュースとレイトタイムズが報じています。
 またこれを受けたハンナ・ヨー青年スポーツ相は、「TMJ(Tunku Mahkota Johor「ジョホール州皇太子」の意)は青年スポーツ省を何度も手助けしてくれているが、今回もこの申し出に感謝するとともに、喜んでこの申し出を受けたい。」と述べて、イスマイル殿下のマレーシアサッカーへの貢献は計り知れないものだと賛辞を送ったということです。
 上で取り上げたジェイ・チョウのコンサートのように、ブキ・ジャリル国立競技場はサッカー以外のイベントでも使用されるため、今年3月は施設を完全に閉鎖して、カウグラスと呼ばれているマレーシアのサッカー場で一般的な草から、いわゆる高麗芝の一種で、マレーシアの環境にも適したゼオン・ゾイシアと呼ばれる芝への張り替えが計画されています。

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ちなみのこのゼオン・ゾイシアはJDTのホーム、スルタン・イブラヒムスタジアムやJDTの練習場に貼られている芝で、しかも今回のブキ・ジャリル国立競技場の芝の張り替えは140万マレーシアリンギ(およそ4200万円)かかるということですが、トゥンク・イスマイル殿下がその費用を支援することになっています。

1月6日のニュース
帰化選手リー・タックがクダと契約もスリ・パハンサポーターの怒りを買う
ムルデカ大会の10年ぶり開催が決定

東南アジアサッカー連盟選手権三菱電機カップ2022では、シンガポールに快勝し、2大会ぶりの準決勝進出を決めたマレーシア。今週土曜日1月9日にブキ・ジャリル競技場で行われる準決勝ファーストレグのチケットが完売したことをマレーシアサッカー協会FAMが公式SNSで告知しています。東南アジアでも最大級の観客収容数を誇るブキ・ジャリル国立競技場の収容人数は8万7000名ですが、FAMのSNSでは5万9000枚の時点で札止めとなっています。
 タイ戦の6日後の1月15日には、台湾出身でいわゆるマンドポップのスーパースター、ジェイ・チョウがこのブキ・ジャリル国立競技場でコンサートを行いますが、そのためのステージ設営におよそ2万1000人分の座席があるエリアが必要であることから、今週末のタイ戦のチケットは5万9000枚飲み販売となっているとFAMは説明しています。
 これを受けてチケットが入手できなかったファンの中には、ジェイ・チュウのSNSに否定的なコメントを投稿するといった全く筋違いな行動に出る者もいるようです。

帰化選手リー・タックがクダと契約もスリ・パハンサポーターの怒りを買う

英国出身のリー・タックは、マレーシア国内で5年以上継続してプレーし、FIFAの帰化選手としての登録要件を満たしたことから、所属するMリーグ1部スーパーリーグのスリ・パハンの支援もあり、昨年マレーシア国籍を取得しています。
 タック選手は帰化申請中だった昨季のリーグ戦ではスリ・パハンの外国籍選手枠が埋まっていたこともあり、出場機会がありませんでしたが、マレーシア国籍取得と同時にマレーシア人選手としての登録が可能となったリーグ戦終了後のマレーシアカップでは一回戦のトレンガヌ戦でゴールを挙げるなど活躍しています。
 さらにマレーシア国籍取得によりマレーシア代表でのプレーが可能になると、キム・パンゴン監督は早速、東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに出場する代表に招集しています。
 国籍取得からは順風満帆に見えるタック選手ですが、現在、スリ・パハンサポーターの怒りを買っていると、英字紙スターが報じています。
 その理由はタック選手がスリ・パハンではなく、同じスーパーリーグのクダと契約をしたことにあります。スリ・パハンに在籍していた際には、クラブの支援によりマレーシア国籍を取得したにもかかわらず、クダと契約したことはスリ・パハンに対して後足で砂をかけるような行為であるというのが非難の内容です。
 この非難に対してタック選手は、スリ・パハンで今季もプレーしたかったものの、下交渉で同意できず、結局はクラブからの契約オファーがなかったことが、移籍を決断した理由だったと話しています。給料の削減を自ら申し出たにもかかわらず、正式なオファーがなく、将来が不安になったと話す話すタック選手は、今ではクダへの移籍は正しい決断だったとスターの取材に答えています。
 スリ・パハンは以前にもマレーシア国籍取得を支援したガンビア出身のムハマドゥ・スマレー(現JDT)にも「逃げられて」います。

ムルデカ大会の10年ぶり開催が決定

英字紙ニューストレイトタイムズは、今年2023年がマレーシアサッカー協会FAMの設立90周年となることから、この記念行事の一つとして、今年10月にムルデカ大会が10年ぶりに開催されるというFAMのノー・アズマン事務局長の発言を報じています。
 マレーシアの独立(マレーシア語でムルデカ)を記念し、1957年に始まったこのムルデカ大会は、これまでに41回開催されていますが、近年はマレーシア代表が弱くなったこともあり、2014年大会を最後に開催されていませんでした。
 ノー・アズマン事務局長は、このムルデカ大会を今年年末あるいは来年初頭に開催されるAFC選手権アジアカップ2023(カタール)に向けた準備の一環として開催する予定であると話しています。

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1957年に始まったこの大会は東南アジア最古の国際親善大会(およそ10年後にはタイでキングスカップが始まっています)として、北米を除く世界各地のクラブチームや代表チームが出場しています。第1回大会(1957年)の出場チームを見ると、マラヤ連邦の他は香港リーグ選抜、カンボジア、南ベトナム、シンガポール、インドネシア、タイ、ビルマとなっています。南ベトナム(現ベトナム)、ビルマ(現ミャンマー)といった国名に歴史を感じます。
 ちなみに日本もこのムルデカ大会に何度も出場しており、初めてムルデカ大会に出場したのは 1959年の第3回大会で、この時は1回戦で香港リーグ選抜と引き分け、再戦では2-5で敗れて2回戦に進めずに終わっています。日本代表の試合結果が掲載されている日本サッカー協会JFAのホームページによれば、敗れた香港戦での2ゴールはいずれも当時早稲田大学2年生だった(!)川淵三郎初代Jリーグチェアマンが決めています。
 ムルデカ大会での日本の最高成績は1963年に開催された第7回大会と1976年に開催されたでの準優勝です。いずれも7チームの1回戦総当たり方式で開催された両大会で、第7回大会は6試合で4勝1分1敗、優勝した台湾に0-2で敗れ、第20回大会では6試合で2勝4分0敗、決勝戦では優勝したマレーシアに0-2で敗れています。
 また日本が最後にムルデカ大会に出場したのは1986年の第30回大会でした。グループステージではチェコのSKシグマ・オロモウツに敗れてグループステージB組2位にとなった日本は、準決勝でA組1位のマレーシアと対戦し1-2で敗れています。ちなみにこの試合で日本のゴールを決めたのが「アジアの核弾頭」(ちょっと古いか)原博美選手で、マレーシアの2ゴールはMリーグ1部スーパーリーグで昨季ペナンの監督を務めたザイナル・アビディン・ハサンと同じスーパーリーグのスリ・パハンで監督を務めたドラー・サレーでした。日本は1985年から名称が変わったキリンカップを使って自国開催大会での代表強化に舵を切りつつあったことから、この大会を最後にムルデカ大会には出場していません。
 前述の川淵三郎氏や原博美氏の他、奥寺康彦選手らも出場しているこの大会は、車範根(チャ・ブンクン、韓国)やフセイン・サイード(イラク)などアジアのスーパースターも多く出場した大会でもありました。

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ちなみに私が初めて観戦したムルデカ大会が1988年の第32回大会でした。この32回大会の大会プログラムの表紙の写真をお見せしますが、タバコブランドのダンヒルが大会のスポンサーという、今では考えられない、古き良き時代だったことがわかります。


この32回大会の日程と出場国は以下の通りでした。

今では考えられませんが、ムルデカ大会やキリンカップなどの当時の国際大会は、ナショナルチームとクラブチームが混在する大会でした。この第32回大会も上の出場国中、オーストリアはFCチロル・インスブルック(この記事を書くために調べたところ、2002年に破産し、解散していました。)、ドイツはハンブルガーSVが出場しています。下がハンブルガーSVの紹介ページですが、マンフレート・カルツや、後にJリーグ浦和でプレーするウーベ・バイン、当時はまだ20歳のオリバー・ビアホフなどの名前が見えるのが興味深いです。

そしてこの大会のマレーシア代表のメンバー。なお、チームマネージャは当時のパハン州皇太子、現在はパハン州のスルタン(州王)で現在のマレーシア国王でもあるアブドラ国王です。


そんなムルデカ大会ですが、1990年代に入りアジアの各国代表がFIFAワールドカップやAFCアジアカップの予選などに注力するようになると、1957年の第1回から毎年開れた大会が隔年開催となり、またホストのマレーシア代表が弱くなったこともあり、参加するチームも東南アジアの代表チーム、さらにA代表ではなくU23代表の大会になるなど大会の「格」も下がり、2013年にタイ選抜、ミャンマー、シンガポールを招いて行われた第41回大会を最後に開かれていませんでした。(この記事は昨年8月31日の記事を一部再構成して使っています。)

 

1月5日のニュース
AFF選手権-「B代表」が前回大会で「A代表」が達成できなかった準決勝進出を果たす

いやぁ久しぶりにスカッとする試合でした。
 昨日1月3日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催された東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022のグループステージ最終節で、マレーシア代表はシンガポール代表を4-1で破り、2大会ぶりとなる準決勝進出を決めています。
 12月24日に行われたラオス戦の公式発表された観客数が2万9661名だったのに対し、この試合の観客数は2倍以上の6万5147名と、マレーシア代表のホームには久しぶりに6万人越えの観客が集まりました。
 マレーシアが入ったB組は、この試合前までは、1位ベトナム(2勝1分0敗)、2位シンガポール(2勝1分0敗)、3位マレーシア(2勝0分1敗)、4位ミャンマー(0勝1分2敗)、5位ラオス(0勝1分3敗)となっており、最終節ではベトナムはミャンマーと、シンガポールはマレーシアとのカードが組まれており、ベトナムとシンガポールは引き分け以上で準決勝進出が決まるのに対し、マレーシアはこの日の試合に勝利した場合のみ、準決勝に進出できるという状況でした。
 しかもここまで、マレーシアはミャンマーを相手に1-0と辛勝し、ベトナムには0-3と敗れていたのに対し、シンガポールはミャンマーを3-2で破り、ベトナムとは0-0で引き分けるなど、試合前の下馬評はシンガポール有利となっていただけでなく、シンガポールのスターFWイクサン・ファンディが自身のSNSに「ゴールを決めてブキ・ジャリルのピッチで踊りたい」と戯言を投稿するなど、選手にもそういった気持ちがあったようです。
 しかもマレーシアは初戦のミャンマー戦でケガをしたセンダーバックのクザイミ・ピーの回復が遅れている上、ベトナム戦での「疑惑の判定」でレッドカードをもらった右サイドバックのアザム・アズミが結局はAFFから2試合の出場停止処分を受けるなど、キム監督がこの重要な試合でどんな11名を起用するのかにも注目が集まりました。この試合では初戦のミャンマー戦の先発XIから上記のアザム・アズミに代わりDFクェンティン・チェンが入り、クザイミ・ピーに代わって先発したMFムカイリ・アジマルは、ラオス戦からセンターバックに入ってプレーしている本来はMFのブレンダン・ガンのポジションに入る布陣をキム監督は選択しています。
 試合は6万人を超える大観衆を背に、開始から5分でV・ルヴェンティン、そしてファイサル・ハリムが次々にゴールを狙いますが、いずれもシンガポールGKハサン・サニの攻守に阻まれます。それでも攻撃の手を休めないマレーシアに対して、前述の試合前記者会見では引き分け狙いではなく攻撃的にプレーしたいと話した西ケ谷隆之監督の言葉とは裏腹に、シンガポールの選手は守備の時間が長くなっていきます。そして35分、ついにマレーシアが先制します。右サイドでシンガポールDFのパスをカットしたサファウィ・ラシドが得意の左足ではなく、右足で速いクロスを挙げると、ダレン・ロックがこれを頭で合わせてゴール!先制点が欲しかったマレーシアにとっては願ってもないゴールとなりました。この後もシンガポールにはほとんどチャンスを与えず、マレーシアは試合を支配しながらも結局、前半は1-0のままで終了します。
 後半に入ってもマレーシアは攻撃の手を緩めず、50分にはシンガポールのキャプテン、ハリス・ハルンが自陣ゴール近くでクリアしたボールを受け取ったシャワル・アヌアルがもたつくところを、詰めていたスチュアート・ウィルキンがボールを奪います。そのままペナルティエリアの外から放たれた低い弾道のシュートが決まり、マレーシアはリードを2点に広げます。その4分後には、マレーシアの速いプレスからシンガポールDFが苦し紛れに出したルーズボールを奪ったマレーシアはサファウィ・ラシドのマイナスからのクロスに再びスチュアート・ウィルキンがシンガポールDFをかわしてゴールを決めて3-0とします。
 しかしこの試合はこれでは終わりませんでした。シンガポールは今季、ペナン入りが噂されているファリス・ラムリのシュートで1点を返ます。再び点差が2点となり、さらにゴールを狙ってシンガポールが前掛かりになったところで、マレーシアは88分、カウンターからハキミ・アジム、リー・タックと渡ったボールをセルヒオ・アグエロがゴール右隅に突き刺し4-1としています。キム監督は準決勝の対戦に備えて、ドミニク・タン、シャルル・ナジームのDFコンビを交代させるよゆうをみせながらも、その後のシンガポールの反撃を防ぎ、2大会ぶりの準決勝進出を果たしています。

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昨季のリーグ戦では2ゴールだったスチュアート・ウィルキンがこの試合だけで2ゴール(今大会通算3ゴール)を挙げ、MOMに選ばれた試合は、マレーシアにとっては準決勝進出を決めただけでなく、2014年のAFF選手権以来、1分2敗と苦手にしていたシンガポールからの勝利でした。スタンドには「俺たちは機械が好きだ(11名が代表辞退したJDTのオーナー、トゥンク・イスマイル殿下が『選手は機械ではなく、シーズン終了後には休息が必要であり』として、JDTの選手11名が代表招集を辞退したエピソードを指す)」「代表チームより重要なクラブなどない」といった横断幕も見られましたが、JDTの選手も参加した前回2020年大会で、マレーシアはグループステージで敗退しており、JDTの選手がいないことから「Bチーム」などと揶揄された今回の代表が準決勝を果たしたのは皮肉な結果です。

2023年1月3日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラルンプール)
マレーシア 4-1 シンガポール
⚽️マレーシア:ダレン・ロック(35分)、スチュアート・ウィルキン(50分、54分)、セルヒオ・アグエロ(88分)
⚽️シンガポール:ファリス・ラムリ(85分)
🟨マレーシア(0)
🟨シンガポール(1)

この試合のハイライト映像はアストロ・アリーナの公式YouTubeより。

1月3日のニュース ボラセパマレーシアJPが選ぶマレーシアサッカー2022年重大ニュース-代表チーム編とAFCクラブコンペティション編

いよいよ今日は東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップのグループステージB組最終節。首位のベトナムはホームで4位のミャンマーと、また西ヶ谷隆之監督率いる2位のシンガポールはアウェイで3位のマレーシアと対戦します。ベトナムとシンガポールはそれぞれ引き分け以上で準決勝進出が決まり、3位のマレーシアはシンガポール戦に勝利することが準決勝進出の条件となります。この記事の執筆時点では既に3万9000枚近いチケットが売れているようで、今大会ここまでのどの試合よりも多くの多くの観客が集まりそうです。ジョホール水道を挟むマレーシアとシンガポールの対戦は、両国を繋ぐ陸橋にちなんでコーズウェイダービー(Causeway derby)と呼ばれ、熱戦が繰り返されてきましたが、今年初の対戦はどちらに軍配が上がるのでしょうか。。

マレーシア代表はアジアカップ2023年大会出場権獲得-予選を突破しての出場は1980年以来43年振り

2022年の代表チーム関連の最大のニュースはこれでしょう。正確に言えば、マレーシアは16年前の2007年にベトナム、タイ、インドネシアと東南アジア4カ国共同開催の形でアジアカップを開催しており、その際に開催国枠でアジアカップに出場しています。しかし、予選を突破しての出場となると、1980年のクウェート大会以来となります。本戦出場国がわずか10カ国だったこの大会で、マレーシアはアラブ首長国連邦に勝利し、韓国、カタールと引き分け、クウェートに敗れて勝点差1で準決勝進出を逃しています。
 昔話はさており、昨年の6月に行われたアジアカップ最終予選では開催国となった地の利もあり、バーレーンに1-2で敗れたもののトルクメニスタンには3-1、そして5万3000人近い観衆を集めたバングラデシュ戦では4-1で勝利して、バーレーンに次ぐグループ2位となったものの、最終予選各組の2位のうち上位5チームに入り、43年振り4度目の本戦出場を決めています。

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ちなみにこの時の代表チームは、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)から12名、PJシティとヌグリスンビランから2名、トレンガヌ、スランゴール、サバ、スリ・パハン、チョンブリー(タイ1部)、SVズルテ・ワレヘム(ベルギー1部)から各1名という構成でした。これを知れば、現在開催中の三菱電機カップ出場中の代表チームにJDTの選手が1人もいないことが、どのくらい尋常ではないかがわかるでしょう。さらに、このアジアカップ最終予選に出場し、今回の三菱電機カップにも出場しているのはFWダレン・ロック(サバ、アジアカップ最終予選時はPJシティ)FWファイサル・ハリム(スランゴール、同トレンガヌ)MF V・ルヴェンティラン(スランゴール、同PJシティ)、DFクザイミ・ピー(スランゴール、同ヌグリスンビラン)、DFドミニク・タン(サバ)、GKシーハン・ハズミ(無所属、同ヌグリスンビラン)のわずか6名です。

タン前代表監督が5年振りに交代-東南アジアの韓流ブームの影響かキム・パンゴン新監督就任

2017年に当時の代表監督だったポルトガル出身のネロ・ヴィンガダ氏が就任7試合を1分6敗としてわずか7ヶ月で辞任したことを受け、コーチから昇格したのがタン・チェンホー前監督でした。2018年のAFF選手権スズキカップ(当時)では決勝でベトナムに敗れたものの、優勝した2014年以来となる決勝進出を果たしただけでなく、FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選でも、コロナ禍前まではベトナムに次ぐ2位につけるなど、最終予選へ期待が高まり、同時にタン監督の手腕も評価されていました
 しかしコロナ禍が下火になり、中断されていたアジア2次予選が再開されると1勝2敗とそれまでの勢いが衰え、さらに2021年末のスズキカップ2020年大会ではベトナムやインドネシアに敗れるなどして、準決勝進出を果たすことができなかった責任を取り、タン監督が辞任し、その後任となったのが韓国出身のキム・パンゴン監督です。
 香港代表監督の経験もあるキム新監督は、ベトナムのパク・ハンソ、インドネシアのシン・テヨン両監督に続く、東南アジアの代表チーム3人目の韓国出身監督となりました。就任直後に行われたシンガポールでのフィリピン、マレーシアが出場した3カ国対抗でのフィリピン戦では就任初戦で初勝利を挙げると、前述のAFCアジアカップ2023年大会最終予選では43年振りの予選突破、そして27年振りの出場となったタイのキングズカップでは、PK戦にまでもつれこんだタイとの試合に勝利すると、決勝ではタジキスタンにPK戦で敗れたものの、いずれも格上の相手に善戦し、FIFAランキングも2022年1月の154位から12月には145位まで上昇しています。

U23代表は出場した各大会で苦戦し、監督は事実上の更迭

A代表の躍進に比べると残念な結果に終わったのがU23代表でした。2月にカンボジアで開催されたAFF U23選手権ではラオスにまさかの2連敗を喫してグループステージで敗退すると、5月にベトナムで開催された「東南アジアのオリンピック」東南アジア競技大会では準決勝に進出したものの、延長でベトナムに敗れて決勝進出できず、また3位決定戦ではインドネシアにPK戦で敗れ、前回2019年フィリピン大会に続き、2大会連続でメダルを逃しています。
 東南アジアの大会でこの結果であれば、期待するのも酷ですが、翌6月にはウズベキスタンで開催されたAFC U23アジアカップでも散々な成績でした。2大会振り2度目の出場となったマレーシアは、グループステージでは図らずもベトナム、タイの東南アジア組、そして韓国と同組になっています。そしてここでは韓国に1-4、タイに0-3、そしてベトナムには0-2と惨敗し、大会終了後の7月には2019年からはU19代表、そして2021年からはU23代表の指揮を取ってきたオーストラリア出身のブラッド・マロニー監督との契約期間を残しながら、契約を解除しています。なお、その後は代表チームのコーチでもあるE・エラヴァラサン氏がU23代表監督に就任しています。

東南アジアの覇者U19代表はアジアの壁を実感

これに対し、戦前は全く期待されていなかったハサン・サザリ監督率いるU19代表が7月にインドネシアで開催されたAFF U19選手権決勝でラオスを2-0で破り優勝しています。しかし9月に行われたAFC U19アジアカップ2023年大会予選では、韓国に敗れ、モンゴルと引き分けるなど予選3位となり、出場を逃し、アジアの壁の高さを実感させられています。

女子代表は監督を初の外部招聘

また2022年は女子代表にとっては静かな1年でした。マレーシアサッカー協会はなぜか、女子代表を5月の東南アジア競技大会へ派遣せず、貴重な実践経験の機会を無駄にする一方で、同じ東南アジアのライバルと対戦する7月のAFF女子選手権に派遣し、そこでは2分3敗の成績でグループステージ敗退するなど、男子に比べると方針がなんなのかが全く見えませんでした。
 しかしそこで起こったサッカーファンからの非難に応えるように、昨年末にはヨルダンサッカー協会のアシスタントテクニカルディレクターを務めていたソリーン・アル=ズービ氏を招聘し、ジェイコブ・ジョセフ監督に変わる新しい女子代表監督に就任させています。

アジアチャンピオンズリーグACL-ジョホールがマレーシアのクラブとして初のノックアウトステージ進出

リーグ9連覇を果たしジョホール・ダルル・タジムJDTは、今季もマレーシアリーグの覇者としてACLのグループステージに出場しています。新型コロナウィルス感染拡大防止措置から、昨季に続き、今季もグループステージは集中開催となりましたが、JDTが入ったI組はマレーシアが集中開催地に選ばれています。そしてこれを最大限に活かしたJDTは、このグループステージがイスラム教徒にとっては厳しい断食月中の開催であったこともあり、試合は全て午後10時キックオフ、しかも試合会場は国内でも有数の手入れが行き届いたピッチを持つスルタン・イブラヒムスタジアムで行っています。
 川崎フロンターレ、蔚山現代、広州と同じI組で、JDTは前半の3試合で広州に5~0、蔚山現代に2-1、そして川崎とは0-0と2勝1分で折り返すと、ターンオーバーで選手を入れ替えた川崎戦では0-5と敗れたものの、広州とは2-0、蔚山現代とは2-1と連勝し、通算成績を6試合で4勝1分1敗、勝点13とするとI組では川崎や蔚山現代を抑えてグループ1位としてノックアウトステージへ進出しています。
 2019年のACL初出場以来、これまでグループステージの壁を越えられなかったJDTは血糊の最大限に活かし、マレーシアのクラブとしては初めてとなるノックアウトステージに進出しています。
 ノックアウトステージでは、浦和レッズと埼玉スタジアムで対戦し、国内リーグでは見られない0-5というスコアで完膚なきまでに叩きのめされています。しかしこの厳しさを経験できたのもノックアウトステージに出場した結果であり、その苦い経験は今年もACLに出場が決まっているJDTをさらに高みへと連れて行ってくれることでしょう。

KLシティはAFCカップ決勝進出もJDT以来東南アジアクラブ史上2チーム目の優勝を逃す

ACLに出場できない国や枠が少ない国のクラブを対象としているのがAFCカップ。UEFAチャンピオンズリーグに対するUEFAヨーロッパリーグのような位置付けです。マレーシアからは2022年大会には前年の2021年にマレーシアカップで優勝を果たしたKLシティ、そして2021年シーズンに国内リーグ2位のクダ・ダルル・アマンの2チームが出場しました。
 グループステージを突破した両チームは、東南アジア地区プレーオフに進み、クダはPSMマカッサル(インドネシア)に敗れたものの、KLシティはPK戦の末、ベトテルFC(ベトナム)に勝利すると東南アジア地区代表決定戦ではクダを破ったPSMマカッサルを5-2で撃破しています。地区間プレーオフに駒を進めたKLシティは、準決勝ではATKモフン・バガンAC(インド)を3-1、決勝ではPFCソグディアナ・ジザフ(ウズベキスタン)をPK戦5-3といずれもアウェイの厳しい試合で勝利し、2015年にこのAFCカップで優勝したJDT以来となる東南アジアクラブとしては2チーム目のAFCカップの決勝に進出しました。
 10月22日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催された決勝では、オマーンのアル・シーブに0-3で敗れましたが、こちらもマレーシアのクラブがAFCカップでは十分通用することを示してくれました。今季のAFCカップには、リーグ2位のトレンガヌと3位のサバが揃って出場しますが、この両チームにアジアの舞台での活躍を期待したいです。

12月17日のニュース(2)
AFF選手権三菱電機カップ出場の代表メンバー23名を発表

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイトで、今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権、三菱電機カップに出場するマレーシア代表23名を発表しています。東南アジアの10ヵ国が出場するこの大会でマレーシアはグループステージではB組に入り、12月21日にヤンゴンのトゥウンナ・スタジアムで行われるミャンマー戦が初戦となります。その後は12月24日にホームのブキ・ジャリル国立競技場でラオス戦、12月27日にはハノイのミーディン国立競技場で行われるベトナム戦、そしてグループステジー最終戦は来年2023年1月3日のシンガポール戦が予定されています。

AFF選手権出場のマレーシア代表最終登録23名

ポジション氏名年齢所属
DF シャルル・ニザム23SEL
DFクェンティン・チャン23SEL
DFファズリ・マズラン29SEL
MFブレンダン・ガン34SEL
MF ムカイリ・アジマル21SEL
MFアリフ・ハイカル22SEL
FW ノル・ハキム・ハサン31SEL
DFドミニク・タン25SAB
MF スチュアート・ウィルキン24SAB
FWダレン・ロック32SAB
GKラーディアズリ・ラハリム21TRE
DFアザム・アズミ21TRE
FWファイサル・ハリム24TRE
MFデヴィッド・ローリー32SRP
FWリー・タック34SRP
MFエセキエル・アグエロ28SRP
GKシーハン・ハズミ26NSE
DFクザイミ・ピー29NSE
GKカラムラー・アル=ハフィズ27KDA
20.V・ルヴェンティラン21PJC
21.シャミー・イスズハン27SWU
22.ハキミ・アジム19KLC
23.サファウィ・ラシド25RAT
所属クラブ:SEL-スランゴールFC、SAB-サバFC、TRE-トレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC、NSE-ヌグリスンビランFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、SWU-サラワク・ユナイテッドFC、KLC-KLシティFC、RAT-ラーチャブリーFC(タイ)

この発表に先立って代表候補合宿に招集された28名からは、GKアズリ・ガニ(KLシティFC)、FWコギレスワラン・ラジ(PJシティ)、FWラマダン・サイフラー(JDT)、MFアリフ・イズワン(スランゴール2)が外れた他、DFディオン・コールズ(チェコ1部FKヤブロネツ)が個人的事情を理由に辞退したことも、FAMから発表されています。

当初、FAMは代表候補合宿に41名を招集したものの、AFF選手権がFIFAの国際マッチカレンダー期間外に行われ、各クラブが選手の招集に応じる義務もないため、JDTからは先日のMリーグアウォーズで今年のMVPと最優秀FWを受賞したアリフ・アイマンや最優秀DF受賞のシャルル・サアド、最優秀MF受賞のアフィク・ファザイルら合計11名が辞退、さらにKLシティのDFデクラン・ランバートとMFアクラム・マヒナンも合宿初日に辞退を表明し、最終的には28名が代表候補合宿に参加していました。

マレーシア代表は、来週月曜日12月19日にグループステージB組の初戦となるミャンマー戦が行われるヤンゴンへ向けて出発し、12月21日にトゥウンナ・スタジアムで試合を行います。その後は12月24日にホームでのラオス戦、12月27日にはハノイのミーディン国立競技場でベトナム戦、そして来年1月3日にはホームでシンガポール戦が控えています。

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SNS上では「マレーシアB代表」などと揶揄されている今回の代表チームですが、最終メンバー発表時にディオン・コールズが辞退したことで、それも冗談ではなくなるほど、主力不在のチーム編成になっています。しかも、今回はなんと国内三冠達成のJDTから誰1人も加わらない顔ぶれになっています。しかし常連のJDTの選手がいないことは、他の選手にとっては大チャンス。出場機会を得た選手たちが、今回の三菱電機カップで前回大会以上の成績(前回はグループステージ敗退)を収めてくれれば、来年2023年のアジアカップ本戦に向けて選手層が厚くなり、チームの底上げにもつながるはず。そして今年2月の代表監督就任以来、7勝2分2敗と、昨年の3勝7敗からチームを大きく立て直したキム・パンゴン監督の手腕に注目したいところです。

12月16日のニュース(1)
「新生」代表がモルジブ戦勝利

「新生」代表がモルジブ戦勝利

当初の招集メンバーからジョホール・ダルル・タジムJDTの選手10名が招集を辞退し、これまでのメンバーとは大きく顔ぶれた変わったマレーシア代表は、今週12月21日(土)のミャンマー戦(ヤンゴン)で幕を開ける東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けての最後の練習試合となった12月14日のモルジブ戦で、FW陣が期待以上(失礼!)の活躍を見せ、3-0で快勝しています。

この日の先発は、GKシーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)、DFはクザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、ドミニク・タン(サバ)の3バック、MFはアザム・アズミ(トレンガヌ)とV・ルヴェンティラン(PJシティ)を左右に配置し、中央はブレンダン・ガンとムカイリ・アジマル(いずれもスランゴール)の4人、FWはサファウィ・ラシド(JDT)、ダレン・ロック(サバ)、ファイサル・ハリム(トレンガヌ)という布陣で、キム・パンゴン監督は4日前のカンボジア戦からは5名を入れ替えています。

試合が行われたKLフットボールスタジアムは最大収容観客数1万8000人と、カンボジア戦が行われたブキ・ジャリル国立競技場の三分の一以下ですが、ブキ・ジャリルでのカンボジア戦では8332人と、スタンドがガラガラに見えたので、この日はさらに少ない公式発表観客数6002人でも、サイズ的にはむしろこちらで良かったかと。またカンボジア戦でナイキ社製の新しいホームユニフォームを披露したハリマウ・マラヤ「マラヤの虎」ことマレーシア代表は、この日は上下黒のアウェイユニフォーをお披露目しています。

試合の方は24分、この日、キャプテンマークをつけたサファウィ・ラシドから出たゴール前のボールへモルジブGKとDFの対応が遅れた隙をついてダレン・ロックがボールを奪いそのままシュート。これが決まって、マレーシアは1-0と先制します。後半に入ると、63分には今度がダレン・ロックが相手DFラインの裏に出したパスを受けたファイサル・ハリムがGKをかわしてゴールを決め2-0、さらに88分には途中出場のリー・タック(スリ・パハン)がゴールをめて3-0として、マレーシアがそのまま逃げ切っています。ファイサル、タック両選手は12月9日のカンボジア戦に続く2試合連続のゴールをとなりました。

またこの試合ではDFアリフ・ハイカル(スランゴール)が代表戦初出場を果たした一方で、今回の代表合宿に招集されたメンバーでは、FWラマダン・サイフラー(JDT)、FWハキミ・アジム(KLシティ)、MF R・コギレスワラン(PJシティ)、GKラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)、GKアズリ・ガニ(KLシティ)はカンボジア戦、そしてこの日のモルジブ戦とも出場機会がありませんでした。

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JDTの主力10人が代表招集を辞退した今回の代表チームは、ネット上では「B代表」などと揶揄されています。それでも代表初招集となった選手たちを含め多くの選手を実戦で起用するできたのは、AFF選手権での結果にかかわらず、選手層を厚くするための良い機会です。
 AFF選手権前に行われた2試合を振り返ると、個人的にはマレーシアの課題である攻撃で、帰化選手のリー・タックが活躍が目を引きました。34歳という年齢もあり、タック選手の帰化、そして代表招集には疑問の声が上がっていました。タック選手同様、FIFAの同一国で5年間プレーという規定に基づいて帰化し、代表選手となったブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ選手が代表チームでは活躍できなかったことにあります。しかし、それをものともせず、しかも2試合連続ゴールで自分の力を示したタック選手は、AFF選手権でも代表チームにとっては大きな戦力となることが期待されます。
 今回の2試合では前述のアリフ・ハイカルやリー・タックに加えて、GKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、MFスチュアート・ウィルキン(サバ)、MFデヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)、アリフ・イズワン(トレンガヌ)、そしてアルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、8名を代表デビューさせたキム・パンゴン監督が、12月21日のミャンマー戦で開幕するAFF選手権でこの「B代表」をどこまで連れて行けるのかに注目したいと思います。

2022年12月14日
国際親善試合@KLフットボールスタジアム
マレーシア 3-0 モルジブ
⚽️マレーシア:ダレン・ロック(24分)、ファイサル・ハリム(63分)、リー・タック(88分)

下はこの試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

12月12日のニュース 「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利-代表初招集の帰化選手が2ゴールと躍動

今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けて、出場各チームとも練習試合を精力的に行なっています。昨日12月11日には、三菱電機カップのグループステージでマレーシアと同じB組のミャンマーがタイに0-6で敗れ、ラオスがタイU23代表に1-0で勝利、また西ヶ谷隆之監督率いるシンガポールは12月1日から日本で合宿を行なっており、昨日は流通経大と、その前にはJ3のYSCC横浜とも練習試合を行っています。そしてB組で最も強いベトナムも11月30日には東南アジア遠征中のボルシア・ドルトムントに2-1で勝利するなど、「東南アジアのワールドカップ」に向けて着々と準備を進めています。

「新生」代表がカンボジアに4-0で勝利

そんな中、マレーシアは12月9日にカンボジアと練習試合で対戦しました。AFF選手権はFIFAの酷愛マッチカレンダー期間外ということもあり、今季国内リーグ9連覇を果たし、さらに2つのカップ戦でも優勝して国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムJDTからはケガや家庭の事情などを理由に代表主力選手9名が招集を辞退しており、今季ここまで9試合を戦ってきた代表とは選手の顔ぶれも大きく変わっています。

この日の先発XIはGKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、クザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、アザム・アズミ(トレンガヌ)が3バックを構成し、中盤はF V・ルヴェンティラン(PJシティ)、スチュアート・ウィルキン(サバ)、デヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)の4選手、そして前線がファイサル・ハリム(トレンガヌ)、ダレン・ロック(サバ)、リー・タック(スリ・パハン)という布陣でした。

この日は試合前からの雨でピッチの一部にも水が浮くコンディションながら、それにうまく対応したマレーシアが、キャプテンマークをつけて先発したファイサル・ハリムが11分に先制ゴールを決めて先制します。38分には英国生まれながら今年、マレーシア国籍を取得し、今回初めて代表に選出されたリー・タックがデビュー戦で代表初ゴールを決めて2-0、さらに前半終了間際にはファイサル・ハリムがこの試合2得点目となるゴールを決めて、前半を3-0で折り返します。後半には、やはり代表初招集となったMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が86分に4点目を決めて、FIFAランキング146位のマレーシア代表が廣瀬龍監督率いる同177位のカンボジアに勝利しています。

マレーシアは12月14日にモルジブ代表との練習試合を行った後、12月21日にはAFF選手権グループステージ初戦となるアウェイのミャンマー戦に臨みます。

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前述の通り、JDTの主力が招集を辞退した今回の代表チームでは、本来なら出場機会を得られない多くの選手にチャンスが巡ってきています。これまで代表に召集されながらも、ポジション的な問題もあり出場機会に恵まれなかったカラムラー・アル=ハフィズは初先発を果たした他、スチュアート・ウィルキン、デヴィッド・ローリー、シャミー・イスズアン、リー・タックが代表初招集初先発を果たし、途中出場の18歳MFアリフ・イズワン(トレンガヌ)、アルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、この試合では7名の選手が代表デビューを果たしています。

そんな中、注目を集めているのは34歳のリー・タックと26歳のエセキエル・アグエロの両選手です。いずれもMリーグで5年間プレーし、FIFAの帰化選手登録要件を満たしたことから、今年9月にマレーシア国籍を取得しています。この国籍取得までの期間は、所属するスリ・パハンが既にMリーグで規定される上限となる5名の外国籍選手を登録していたため、2月から11月まで行われたリーグ戦は出場できなかった両選手ですが、マレーシア国籍を取得したことで、マレーシアカップからは国内選手として登録されると、キム・パンゴン監督が早速、代表に招集しています。

現在、マレーシアにはタック、アグエロ選手を含めて5名の帰化選手がいます。ガンビア出身のモハマドゥ・スマレ、ブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ、コソボ出身のリリドン・クラスニキの3選手は、いずれも所属するJDTでは先発ポジションを獲得できておらず、特にマレーシアフットボール協会FAMが代表チーム強化を目的として帰化支援プログラムを経てマレーシア国籍を取得したデ・パウラ、クラスニキ両選手は代表どころか、所属するJDTのトップチームでも出場機会が得られていません。このことから、代表チームに貢献できない選手の帰化支援には非難の声が上がり、FAMは昨年8月に帰化支援プログラムを一時中断することを発表しています。

しかし、その一方でFAMはMリーグ各クラブが独自に帰化支援を行うことは禁止せず、その結果が今回のタック、アグエロ両代表選手の誕生につながっています。この他、KLシティはコロンビア出身のFWロメル・モラレスとブラジル出身のMFパウロ・ジョズエを、またJDTはブラジル出身で今季はペナンでプレーしたMFエンドリックの帰化支援を行うとしています。この他、マレーシア人の父母あるいは祖父母を持つことで帰化している「ハイブリッド帰化選手」も増えており、この日のカンボジア戦では、オーストラリア出身のデヴィッド・ローリー、いずれも英国出身のスチュアート・ウィルキンとダレン・ロックが先発、ベンチにもブレンダン・ガン、クェンティン・チェン(いずれもセランゴール)、ドミニク・タン(サバ)らがこのハイブリッド帰化選手です。Mリーグまで目を広げれば、このハイブリッド帰化選手はまだまだいるので、将来はマレーシア出身ではないマレーシア人選手によるマレーシア代表チームができるかも知れません。

2022年12月9日
国際親善試合@ブキ・ジャリル国立競技場
マレーシア 4-0 カンボジア
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム2(11分、45分)、リー・タック(38分)、スチュアート・ウィルキン(86分)

下はこの試合のハイライト映像。上の英語版はマレーシアサッカー協会FAM公式YouTubeチャンネルより。下のマレーシア語版はアストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより

12月8日のニュース
クダ新監督にナフジ・ザイン前トレンガヌ監督が就任
来季スーパーリーグ不参加のサラワク・ユナイテッドが3部リーグ加入を申請
体調不良のファイズ・ナシルに代わってU23代表のアリフ・イズワンがA代表合宿に合流

クダ新監督にナフジ・ザイン前トレンガヌ監督が就任

Mリーグ1部スーパーリーグで今季8位に終わったクダ・ダルル・アマンFCは、クラブ公式SNSでナフジ・ザイン前トレンガヌ監督の就任を発表しています。契約期間は2年ということです。

2020年からトレンガヌFCの指揮を取り、今季はチームをリーグ2位、FAカップ準優勝、マレーシアカップベスト4の好成績に導いたナフジ氏でしたが、クラブ運営陣への不信感からオファーされた1年の契約延長を拒否し、契約満了に伴い退団していました。

シンガポール出身のアイディル・シャリン監督の元、2020年、2021年シーズンはいずれも優勝したジョホール・ダルル・タジムJDTに次ぐ2位となったクダは、今季開幕前にMFバドロル・バクティアル、DFリザル・ガザリ(いずれもサバFCへ移籍)ら代表選手が移籍し、FWクパー・シャーマン、FWチェチェ・キプレ(いずれもトレンガヌFCへ移籍)など外国籍選手を全員入れ替えた結果、8位に低迷、リーグ戦終了と同時にアイディル監督は退団していました。

またクダは、今季終了後にはやはり外国籍選手5名全員が契約満了で退団した他、トップチームの12名の選手と契約を更新せず、さらに来季はトップチームの登録を30名から25名に縮小するなど、2季連続でチームの大幅刷新を図ろうとしています。

2007年から2009年までは選手としてクダでプレーし、2007年の国内三冠(スーパーリーグ優勝、FAカップ優勝、マレーシアカップ優勝)も経験しているナフジ新監督は、かつての栄光を取り戻すことは容易ではないとしながらも、地元のクダ州出身の若い選手を成長させて、より強いチームを作りたいと入団会見で話しています。

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大幅にメンバーが変わるクダには、PJシティの正GKで、現在開催中の代表候補合宿にも招集されているカラムラー・アル=ハフィズの加入が発表された他、今季トレンガヌでナフジ監督の元でプレーしたMFマヌエル・オット(フィリピン)も加わるのではと言う噂も出ています。その一方でクダと契約を更新した選手たちはトップチームの経験が少ない若手が中心で、育成に定評があるナフジ監督の手腕が問われる2年となりそうです。

来季スーパーリーグ不参加のサラワク・ユナイテッドが3部リーグ加入を申請

今季、Mリーグ1部スーパーリーグで11位に終わったサラワク・ユナイテッドFCは、選手に対する給料未払いが理由で、来季のMリーグ1部スーパーリーグ参加のための国内クラブライセンスが交付さなませんでした。このサラワク・ユナイテッドが来季はMリーグ3部でセミプロリーグのM3リーグ参加の申請を行ったと、東マレーシア(サバ・サラワク)のサッカーの話題を中心に取り上げているサッカー専門サイトのサラワク・クロックスが報じています。

サラワク・ユナイテッドは、かつて在籍した外国籍選手への15万マレーシアリンギ(およそ4700万円)の給料未払いが滞り、選手がFIFAの紛争解決室に持ち込んだ結果、今後3回のトランスファーウィンドウ期間中の新規選手獲得禁止処分を受けるなど、運営に多くの問題を抱えてい多クラブでした。

M3リーグを運営するアマチュアフットボールリーグAFLのライミ・フィクリCEOは、サラワク・ユナイテッドからの来季のM3リーグ参加申請を受け取ったことを明らかにする一方で、この申請がM3リーグ参加を確約するものではなく、運営資金などに関する資料の提出を受け、その内容を審査した上で参加の可否を決定するとしています。

またライミCEOはこのサラワク・ユナイテッドの他に、今季スーパーリーグでプレーしながら、やはり給料未払いが理由で国内クラブライセンスが不交付となったマラッカ・ユナイテッドFC、そしてマラッカ州サッカー協会が新たに設立したマラッカFCの3クラブからM3リーグ参加申請が提出されていることを明らかにしています。

サラワク・ユナイテッドを加えると計15チームから出されているM3リーグ参加申請内容の審査は既に80%ほどは終了していると述べたライミCEOは、数週間以内には、来季のM3リーグ参加クラブが決定し、これを発表できるだろうと述べています。

体調不良のファイズ・ナシルに代わってU23代表のアリフ・イズワンがA代表合宿に合流

マレーシアサッカー協会FAMは公式SNSで、A代表候補合宿に参加中のMFファイズ・ナシル(トレンガヌFC)が体調不良のため合宿を離脱し、代わりに12月6日に終了したU23代表合宿に参加していた18歳のFWアリフ・イズワン(スランゴール2)がA代表合宿に参加することを発表しています。

FAMの発表によりと、11月30日と12月1日に行われたA代表とU23代表の合同練習、そして12月2日に行われたA代表対U23代表の練習試合でのアリフ選手のプレーぶりがキム・パンゴンA代表監督の目に止まったと言うことです。またこのアリフ選手については、現在U23代表の監督を務める一方で、A代表でもコーチを務めるE・エラヴァラサン監督からもA代表候補合宿への参加が提案されていたと言うことです。

このアリフ選手は、やはりU23代表合宿にも参加していたGKラーデイアズリ・ラハリム(トレンガヌ)とともにA代表合宿にし、さらにチェコ1部のFKヤブロネツでプレーするDFディオン・コールズが12月16日に合流することで、28名全員が揃うことになります。A代表はAFF選手権前にカンボジア代表戦(12月9日)、モルディブ代表(12月14日)と2試合の練習試合を行い、そこから最終メンバー23名が決定します。