5月7日のニュース:リーグを短縮日程としてでもマレーシアカップを開催する理由、帰化選手のクラスニキが代表戦出場可能に、ケランタン州協会は2部リーグの放映拡大を要望

リーグを短縮日程としてでもマレーシアカップを開催する理由
 マレーシアの国内リーグMリーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLは、現在中断中のMリーグ再開に向けて、マレーシア政府が9月再開を許可した際の日程を発表しています。それぞれ全12クラブで争うMリーグ1部スーパーリーグ、2部プレミアリーグとも今季2020年シーズンは1回戦総当たりの11試合(中断前に4試合は実施済み)とし、日本で言えば天皇杯にあたるFAカップは中止を決めています。
 その一方で、試合形式は変更になったものの、中止とはならなかったのがマレーシアカップです。このマレーシアカップはMリーグ終了後に行われ、スーパーリーグの上位11クラブとプレミアリーグの上位5クラブ(ただしスーパーリーグ所属クラブのBチームは出場権なし)の合計16クラブで争われるカップ戦です。
 マレー語紙ブリタハリアン電子版は、なぜ、FAカップが中止となりながら、マレーシアカップは実施となったかを解説する記事を掲載しています。
 MFLがマレーシアカップの開催にこだわったは、このカップ戦が持つ歴史と名声が大きな要因である、と話すのはMFLのアブ・ガニ・ハサンCEOです。「前身のマラヤカップから数えると今年がちょうど100周年となるマレーシアカップは、国内サッカーの重要なブランドであり、多くのサポーターが郷愁を感じるカップ戦であることから、(リーグが9月再開となった場合の)限られた時間の中で、FAカップや(マレーシアカップに出られないクラブが出場する)チャレンジカップを犠牲にしてでも開催するという結論に至った。」
 また、アブドル・ガニCEOは、マレーシアカップの優勝クラブが、マレーシア代表としてアジアサッカー連盟AFCカップに出場するとしたMFLの発表は間違いではないとしています。MFLはFAカップとマレーシアカップの優勝クラブのどちらか一方をマレーシア代表して選ぶことができるとした上で、FAカップが中止となった今、マレーシアカップの優勝クラブがAFCカップに出場できると話しています。
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 英国の植民地であった当時の英領マラヤで、英国海軍の戦艦HMSマラヤより寄贈されたカップ「マラヤカップ」を争奪する大会として1921年に第1回大会が開かれたマラヤカップは、1967年カラはマレーシアカップと名称を変え、現在に至ります。日本の天皇杯(天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会)も同じ1921年に第1回を開催しており、両大会はアジア最古の大会とされています。
 ところが両大会は性格が大きく異なり、マレーシアカップが16のプロクラブだけが出場する大会、日本で言えばJリーグカップのような大会なのに対して、天皇杯はアマチュアクラブも地方予選から参加する大会だということ。ちなみにマレーシアでアマチュアとプロが参加する全国大会はFAカップですが、こちらは第1回大会が1990年で、1994年から始まったJ歴史や伝統を持ち出されるとマレーシアカップには太刀打ちできません。
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 ところで、マレーシアカップ優勝クラブがAFCカップに出場するというアブ・ガニCEOの発言を読んで、少々気になる点があります。というのはAFCカップの出場権が「全国レベルの国内カップ戦優勝クラブ」に与えられるという点です。これまで、Mリーグ1部スーパーリーグの優勝クラブは国内1位のクラブとしてACLチャンピオンズリーグACLの本戦へ、FAカップ優勝クラブは国内2位のクラブとしてACL予選に出場してきました。16のプロクラブだけの大会であるマレーシアカップが果たして「全国レベルの国内カップ戦」とAFCに認められるのかどうかは定かではありません。

帰化選手のクラスニキが代表戦出場可能に
 今季からジョホール・ダルル・タジムJDTでプレーするリリドン・クラスニキは国際サッカー連盟FIFAが規定する「18歳に達した後から5年以上その国で継続居住歴を持つ」という帰化条件を満たしたことから、今年2月にマレーシアの国籍を取得し、JDTではマレーシア人選手として登録されています。
 マレーシア国内ではマレーシア人選手としてのプレーが可能となったものの、代表でのプレーについては、FIFAによる承認が必要でしたが、ブリタハリアン電子版では、マレーシアサッカー協会FAMのもとにFIFAより承認を伝える連絡が入ったということです。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長によれば、FIFAは帰化規定中の「5年」を厳密に計算したところ3月25日がちょうど5年目に当たる日だったとし、この日をもって5年経過となり、クラスニキ選手はFIFAから正式にマレーシア人選手として承認されたとしています。
 ラマリンガム事務局長は、もう1人の帰化選手であるギリェルメ・デ・パウラ(ペラTBG)については、FIFAからは何の連絡も受け取っていないと話しています。
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 このクラスニキ選手が代表でのプレーを承認された3月25日は、FIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選兼AFCアジアカップ2023年大会予選のアラブ首長国UAE戦が予定されていた3月26日の前日で、クラスニキ選手が実際にUAE戦に出場できるのかどうかは定かではありませんでした。しかし、幸か不幸かこのUAE戦が新型コロナウィルスの影響で延期となったことで、クラスニキ選手は予選再開後は問題なく出場する資格を得ることができました。

ケランタン州協会は2部リーグの放映拡大を要望
 渡邉将基選手が所属するケランタンFAを運営するケランタン州サッカー協会KAFAは、予定されているMリーグの9月再開が実現した際には、所属するMリーグ2部プレミアリーグの放映を拡大するように求めていると、ブリタハリアン電子版が報じています。
 KAFAのスポンサー委員会のアーマド・ムザッキル・ハミド委員長は、リーグ再開となっても無観客試合が予定されていることから、クラブを支援するスポンサーの功績を称える行動が必要であると述べています。
 「(MFLの規定により)KAFA自身がライブストリーム配信やソーシャルメディアで中継を配信をすることができないため、2部プレミアリーグの放映権を持つメディアに対して試合の放映を要請したい。観客を入れずにリーグが再開した場合、(KAFAが運営する)ケランタンFAの試合を放送することでスポンサーの功績を認める必要がある」とアーマド・ムザッキル委員長は話しています。

5月6日のニュース:ハディ選手とヤクルトが小児がん基金に寄付、そのハディ選手は今年に期待

ハディ選手とヤクルトが小児がん基金に寄付
 U23代表のストライカーで、現在はJ2のファジアーノ岡山に所属するハディ・ファイアッドはヤクルト・マレーシア社と共同で、6万リンギを(およぞ149万円)をマレーシア国立大学UKM医療センターの小児がん患者基金に寄付を行ったと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。
 UKM医療センターで治療を受けている小児がん患者を支援するグループCakneを通じて行われた今回の寄付活動についてハディ選手は、新型コロナウィルスが拡大する中、この寄付によって患者の負担が軽減されることを望んでいると話しています。
 またヤクルト・マレーシア社の濱田浩志代表取締役社長は、今回の寄付活動は同社の社会的責任CSR活動の一環として行われ、ハディ選手が入院中の子供たちを励ませるよう、交流イベントを年末に企画していると話しています。
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 濱田氏の話によれば、この寄付活動はハディ選手からの話がきっかけで始まったということですが、20歳という年齢を感じさせない社会性の高さは見習うべきものがあります。マレーシアという安全な土地を飛び出し、慣れない環境の国外でプレーしていることで得た経験によるものかも知れません。

ハディ選手は今年に期待
 そんなハディ選手を、ちょうどGoal. comマレーシア版が特集記事で取り上げていましたので、その記事を紹介します。
 Mリーグでプレーする選手の多くが国外でのプレーを夢見ている一方で、実際に国外へ出ていく選手はほとんどいません。その理由は様々ですが、国外への移籍は一か八かの挑戦となると考えられているようです。
 そんな中、ハディ・ファイヤッド選手がジョホール・ダルル・タジムJDTからJ2のファジアーノ岡山に移籍してから1年以上が経ちましたが、Aチームでの出場機会もなく、ここまでの道のりは決して楽なものではないようだ、とGoal. comが紹介しています。
 かつてマラッカ州にあった国内有数のユースチームFrenz Unitedのアカデミー出身のハディ選手がJDTと契約したのは2016年でした。JDTのBチームJDT IIでは期待通りのプレーを披露し、Aチームとの練習機会をしばしば与えられただけでなく、2017年には17歳ながらMリーグ1部の試合に出場するなど将来が嘱望されていました。
 しかし海外移籍を求めたハディ選手はJDTを退団、ヤクルト・マレーシア社の支援もあり、2度のトライアルを経てファジアーノ岡山との契約を勝ち取りました。
 契約後には「ファジアーノ岡山の期待に応えて、できるだけ早くAチームでポジションを勝ち取りたい」と話したハディ選手ですが、昨季2019年シーズンはAチームでの出場機会はなく、昨年3月に招集されたU23代表でも、チームが出場したアジアサッカー連盟AFC U23選手権予選でも精彩を欠くプレーが見られ、ホーム開催ながら予選敗退し、本戦への出場を逃しています。
 さらに昨年11月末から12月始めにかけてフィリピンで開催された東南アジア競技大会でもやはりU23代表に招集されながら、チームは予選グループで敗退し、Goal. comのはハディ選手のプレーはAFC U23選手権予選よりさらに悪化しているという評価でした。
 それでもファジアーノ岡山とさらに1年の契約延長を勝ち取ったハディ選手に対してGoal. comは、ここからの1年間は昨年のように無駄にしないようにしてほしいと記事を結んでいます。
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 昨年3月のAFC U23選手権予選は私も観戦しましたが、ワントップとして起用されたハディ選手は、186cmの長身を生かすこともできず、明らかに期待を下回るパフォーマンスが多く見られました。それでもまだ20歳ながら、居心地の良いマレーシアをあえて離れてプレーしようという志は、いわば温室育ちのマレーシア選手とは一線を画しています。特に現在は異国で新型コロナウィルスによる自粛を経験するなど、メンタルは強くなっているはずである一方で、上で取り上げた記事のような他者への思いやりも忘れないハディ選手に今後の活躍を期待しています。。

5月5日のニュース:AFCはMリーグの暫定日程を承認、国内フットサルリーグの再開を危ぶむ声、マラッカ・ユナイテッドは勝点剥奪を逃れる

AFCはMリーグの暫定日程を承認
 アジアサッカー連盟AFCは、マレーシアの国内リーグMリーグが9月から再開となった場合の暫定日程を承認したと、Mリーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLが公式サイト上で報じています。なおMリーグはすでに7月からの練習開始と8月からのリーグ再開案がマレーシア政府に却下されており、現在は9月のリーグ再開許可を待っている状態です。
 AFCの事務局長でマレーシア人のウインザー・ポール・ジョン氏は、都合わずか3ヶ月の期間で終了するMリーグについて、AFCはMリーグに課せられた時間的制約を理解した上で、リーグに参加する全てのクラブが同意することとマレーシア政府による標準進行手順SOPを遵守することを条件に、暫定日程を了承するとしています。
 またリーグ参加の全クラブが同意していることを条件にMリーグ1部スーパーリーグとマレーシアカップの優勝クラブがAFC主催大会のAFCチャンピオンズリーグとAFCカップにそれぞれ出場することも併せて承認しています。
 さらにウインザー事務局長は、Mリーグよりも早く再開する他国のリーグの標準進行手順SOPを参考にするべきと話しており、AFCは各国で中断中のリーグ再開について、当該政府によるSOPの遵守が絶対条件になると話しています。

国内フットサルリーグの再開を危ぶむ声
 新型コロナウィルス感染拡大によりMリーグだけでなく、国内フットサルリーグのマレーシアプレミアフットサルリーグMPFLも中断していますが、マレーシアサッカー協会FAMとMリーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLは、Mリーグが9月再開となった場合の暫定日程を発表していますが、MPFLに関しては何の告知も行われていません。
 マレー語紙ブリタハリアン電子版では、このままMPFLの今季2020年シーズンが終わってしまうことを心配する声を取り上げています。
 3月14日に開幕した今季のMPFLは、この第1節終了後にマレーシア全土に発令された活動制限令の影響でリーグが中断しています。MFPLに所属するトレンガヌのモハマド・ロザイリ・アーマド監督は、Mリーグの暫定日程が発表になっている一方でMPFLについては何も発表がないことから、今季はこのまま中止となってしまうのでは心配していると話しています。
 昨季のMPFLでは3位となったトレンガヌのロザイリ監督は、MPFLを運営するFAMからも、またクラブを運営するトレンガヌ州サッカー協会PBSNTからも何も情報が与えられていないと話す一方で、マレーシア政府の青年スポーツ省が6月に発表する予定のMリーグ再開の詳細が明らかになれば、MPFLの今後も明らかになるのではないかと話しています。

マラッカ・ユナイテッドは勝点剥奪を逃れる
 2019年分の給料未払い問題により、今季既に勝点3が剥奪(はくだつ)されているマラッカ・ユナイテッドは、この問題を4月末までに解決できない場合にはさらに勝点6が剥奪されることになっていましたが、マレー語紙ハリアンメトロ電子版は、新型コロナウィルスのおかげで九死に一生を得たようだと報じています。
 マレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長はハリアンメトロの取材に対し、新型コロナウィルス感染拡大によりマラッカ・ユナイテッドを運営するマラッカ州サッカー協会MUSAが直面している苦境を考慮して、クラブライセンス委員会の第一審機関(First Instance Body、FIB)が4月30日となっていた支払い期限を当面延期することを決定したと話しています。
 この決定はMUSAが選手との間で同意していた未払い給料の支払い期限を過ぎたにも関わらず、何も支払われていないことが発覚し、その結果として開催されたFIBで決まったとハリアンメトロは報じており、さらにFIBが期限延長を発表した後もMUSAからは何の発表もないということです。
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 2019年分の給料未払いは、新型コロナウィルス感染とは何の関係もなく、単なる放漫経営の結果ですが、それでもマラッカ・ユナイテッドが処分を逃れたのは、FAMのモハマド・ユソフ・マハデイ副会長がマラッカ州サッカー連盟MUSAの副会長でもあるということと無関係ではなさそうで、まぁマレーシアでは珍しくないダブルスタンダードのおかげと言えそうです。まぁこんなクラブをリーグでプレーさせないために、今季開幕前に、FAMはクラブの運営状況を把握する経済コントロールプログラムECPを導入したのですが、その審査は身内がいるクラブには大甘だったということでしょうか。
 9月に再開となった場合、リーグの残り試合は各クラブとも7試合です。万が一、マラッカ・ユナイテッドがここでさらに勝点6が剥奪されれば、勝点は-3となり、既にPDRM FCやUITM FCなど下位のクラブとの試合を終えているため2部降格が見えてきます。しかしそうなっても、今季は昇格と降格は行わない、などあらゆる手を使ってFAMがマラッカ・ユナイテッドを1部に残留させそうです。

4月30日のニュース:Mリーグ再開が遅れればAFC選手権予選突破に暗雲も、クラブによる一方的な給料削減内容やその交渉を選手が明かす

Mリーグ再開が遅れればAFC選手権予選突破に暗雲も
 新型コロナウィルス感染拡大により中断中のFIFAワールドカップ(W杯)2022年大会アジア二次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選では、マレーシアは5試合を終えてベトナムに次ぐグループ2位につけています。正直なところ、ワールドカップへの道のりは険しそうですが、より現実的な目標となるアジアカップ出場についてはまだ可能性を残しています。
 しかし、マレーシアの通信社ブルナマは、国内リーグMリーグの再開が10月あるいは11月となった場合、その可能性が低下するだろうという記事を配信しています。
 現在中断中のW杯アジア二次予選兼AFC選手権予選について、FIFAは11月の再開を予定しており、ブルナマの記事では、Mリーグ再開の遅れによって代表選手たちがW杯予選に臨むのに十分なコンディションになっているかどうかが心配であるとしています。
 元代表監督でもあるスランゴールFCのサティアナタン・バスカラン監督は「本番の試合の前には数試合は練習試合を行う必要があるが、マレーシア国内でのサッカーの試合解禁が10月以降になれば、練習試合を組むことが難しくなるだろう。」と述べ、さらに「(活動制限令が発令された3月18日から)6ヶ月以上自宅のみで練習してきた選手が、10月からチーム練習を始め、11月にはW杯予選に出場するという日程を想像してみれば、それがどのくらい難しいことなのかがわかるだろう。しかもW杯予選はMリーグよりもはるかに激しい試合になる。そういった試合にコンディションが整った選手を招集するのは至難の技だろう」と話しています。
 現在中断中のW杯予選でマレーシアが所属するグループGでは、ベトナムが3勝2分0敗で首位、マレーシアは3勝0分2敗で2位、以下タイ(2勝2分1敗)、アラブ首長国連邦UAE(2勝0分2敗)、インドネシア(0勝0分4敗)と続いています。なおマレーシア代表は先月3月には予選の残り試合となるアウェイのUAE戦、ホームのタイ戦とベトナム戦が予定されていましたが、いずれも新型コロナウィルス感染拡大のため延期となっています。
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 冒頭にも書きましたが、W杯出場は無理でも2007年以来となるアジアカップへの出場権は手が届くところまで来ているので、何とか出場権を獲得して欲しいです。なお2007年大会は、アセアン4カ国との共催で出場資格を得ましたが、予選を突破しての出場となると、マレーシアが最後に出場したのは1980年のクウェート大会まで遡らなければなりません。

一方的な給料削減交渉の現状を選手が明かす
 新型コロナウィルス感染拡大により中断中のMリーグの各クラブに対し、マレーシアサッカー協会FAMは、選手やスタッフとの給料削減交渉を今月4月22日までに終えるように求めていました。その後、FAMは期限を1週間延長し4月29日までとましたが、複数のクラブが交渉をおこったものの合意に至っていないことは、このブログでも取り上げましたが、マレー語紙ブリタハリアン電子版では、給料削減を迫られた選手が置かれた状況を取り上げて記事にしています。
 この記事で取り上げられている選手が所属するのはクランバリー(クアラルンプールとスランゴール州の総称)に本拠地があるクラブということですが、そのクラブは所属する選手に給料削減に関する同意書を渡し、渡されたその日のうちにサインすることを求めたそうです。
 給料削減内容を詳しく確認する時間すら与えられなかったと話すこの選手は「クラブの経営陣は今後の見通しについて選手との話し合いを行わない一方で、選手の受け取っている給料の額に関係なく給料削減を行なっている。給料が5000リンギ(およそ12万4000円)の選手の給料が40%削減されることを想像してみて欲しい。給料削減は段階的に行うと聞かされており、最終的にはどうなるかが不明で、給料未払いという事態も起こるのではないかという心配もある。」と話しています。
 ブリタハリアンの記事では、このような事態はこの記事の選手が所属するクラブを含めて、少なくとも4つのクラブで起こっていると報じ、Mリーグ1部のスーパーリーグに所属する別のクラブでは、クラブが意図的に選手との交渉を期限の前日に行い、選手が同意せざるを得ない状況になったと話しています。
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 FAMは選手とクラブが合意に至らない場合には、仲介する用意があるとしていましたが、そのような話は出ていないので、FAMそのものに選手からの信用がないのかも知れません。

4月25日のニュース:FAMとMFLは活動制限令解除後リーグ再開希望を公式表明、パハン州協会はリーグ戦を来年まで延期することを提案、FAMがAFCのエリート育成事業計画の正式メンバー入り

FAMとMFLは活動制限令解除後のリーグ再開希望を公式表明
 マレーシアサッカー協会FAMの公式Facebookでは、FAMが国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLと共同で、政府関係筋に今季2020年シーズンの再開を希望する意思を公式に表明したことを明かしています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長名で出された声明では、昨日4月23日にFAMのラマリンガム事務局長とハミディン・アミンFAM会長、そしてMFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOが国内のスポーツを統括するマレーシア政府の青年スポーツ省のトップであるリーサル・メリカン・ビン・ナイナ・メリカン青年スポーツ相を公式訪問し、その席で活動制限令MCO解除後の国内リーグ再開許可を青年スポーツ省を通じて国家安全保障委員会と保健省に申請したとしています。
 なおラマリンガム事務局長は、リーグ再開の可否ににかかわらずFAMとMFLは国家安全保障委員会と保健省の指示に全面的に従う意向を示しています。
 また4月22日を期限にMFL1部と2部に所属するクラブに提出を求めていた選手との給料削減についての交渉状況やクラブの経営状況を、調査検討中であることも発表しています。国際サッカー連盟FIFAやアジアサッカー連盟AFCとも意見交換を行っているとするFAMは、各クラブから提出された報告内容は今後の方針を決める際の判断材料となるとしています。
(以下はFAM、MFLと政府筋との会談について知らせるFAMのFacebookページ)

パハン州協会はリーグ戦を来年まで延期することを提案 
 マレーシアの通信社ブルナマによると、マレーシアフットボールリーグMFL1部のパハンFAを運営するパハン州サッカー協会PBNPは、国内リーグ戦を含めた今季のマレーシア国内の全てのサッカー活動を来年まで延期することを提案しました。
 PBNPのトゥンク・アブドル・ラーマン・スルタン・アーマド・シャー会長は声明を発表し、その声明の中でマレーシアサッカー協会FAMとMFLに対して新型コロナウィルス感染拡大の収束が見通せない現状では、今季のサッカー活動を全て来年まで延期するという判断を直ちに下すことが、国内サッカーに関わる全ての者の不安を解消する手段であるとしています。
 自身もスタジアムで試合を観戦できないのは残念であるとしながらも、パハンFAだけでなく国内の全てのサポーターに対して現在は辛抱が必要であるとも述べています。

FAMがAFCのエリート育成事業の正式メンバー入り
 アジアサッカー連盟AFCの公式サイトは、マレーシアサッカー協会FAMがキルギスタンサッカー協会、ミャンマーサッカー協会とともにAFCのエリートユース育成事業の正式メンバーと認められたことを発表しています。
 またAFCのウインザー・ジョン事務局長は、FAMがマレーシア政府青年スポーツ省とともに運営する国家サッカー選手養成プログラムNFDP傘下のエリートユースアカデミーであるモクタル・ダハリアカデミーAMDがAFCのユース委員会によって二つ星評価を得たことも合わせて発表しています。
 FAMのハミディン・アミン会長は、マレーシアではユース育成の改善を目指しており、AFCのエリートユース育成事業計画のメンバーとなったことで、今後は育成の適切な組織が構築できることを期待していると話しています。
 FAMは3月初旬にAFCの副テクニカル・ダイレクターであるラースロー・サライ氏らAFCによる審査のための視察団を受け入れていました。
 AFCのエリートユース育成事業計画は、各国のサッカー協会が運営するユース育成プログラムのさらなる発展をAFCが助成する事業で、参加メンバーとなるためには施設、指導者、財政などの計画内容から参加者の教育や福利など20分野での資格審査を通過する必要があります。
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 AMDはこの前の記事で取り上げたルクマン選手が第1期卒業生ですが、このAMDの二つ星評価については、最高で三つ星となる中での二つ星のようです。同時にメンバーとなったキルギスタンサッカー協会のオシにあるアカデミーや、ミャンマーサッカー協会のヤンゴン、マンダレー、バセインにあるアカデミーはいずれも一つ星評価ということなので、
(FAMがAFCエリートユース育成事業計画のメンバーとなったことを伝えるFacebookページ-FAMのFacebookより)


4月19日のニュース:国内リーグ再開は6月あるいは7月の可能性、3部リーグで選手の同意なしに契約解除を行ったクラブの噂、マレーシアサッカーコーチ協会は給料削減に同意を表明、 6月の代表強化合宿は実施せず

国内リーグ再開は6月あるいは7月の可能性
 マレーシアフットボールリーグMFLは、リーグ再開について慎重な態度で臨んでいると、スポーツ専門サイトのスタジアムアストロが報じています。
 インドネシアは5月29日までのリーグ中断と7月1日のリーグ再開を、タイは9月からのリーグ再開をそれぞれ発表していますが、マレーシアの国内リーグを運営するMFLはリーグ再開の時期について何も発表していません。
 これについてMFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは、MFLは現在発令中の活動制限令解除後のリーグ再開については、マレーシア政府の保健省からの指針が出るのを待っている状況であると説明しています。さらに現在、中断中のリーグについては6月あるいは7月に再開する計画があるとしながらも、活動制限令が(現時点で予定されている)4月28日に解除されれば、リーグ再開の時期が早まる可能性があるとも話しています。
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 スタジアムアストロの別の記事では、国内リーグの再開は保健省からの指針に基づいて国家安全委員会が決定するとされており、実際のところ、MFL自体にはその時期を決定する権利はないようです。

3部リーグで選手の同意なしに契約解除を行ったクラブの噂
 今季2020年シーズンからマレーシアフットボールリーグMFL3部のM3リーグでプレーするプルリス・ユナイテッドは、マレーシア最北端にあるプルリス州カンガーに本拠地を持つクラブですが、マレー語紙ハリアンメトロ電子版では、クラブが所属選手との契約を強制的に解除し、それを拒否した選手には給料支払いを行わないと脅されているという噂があることを報じています。
 記事によると、プルリス・ユナイテッドは、選手への事前通告を行わずに契約を解除した上、選手に対しては自主的に契約解除に応じたとする書類にサインするように求めているということです。
 新型コロナウィルスの影響でM3リーグは3月15日の第2節終了後に中断していますが、プルリス・ユナイテッドの選手たちは4月分の給料が払われないことは問題にしていないとする一方で、クラブのフロントは契約解除を了承するという書類にサインしない選手には3月分の給料も支払わないとしており、選手たちはサインせざるを得ない状況に追い込まれているということです。
 またプルリス・ユナイテッドのフロントは選手たちがサインした契約解除承認の書類をマレーシアサッカー協会FAMとM3リーグを統括するマレーシアアマチュアフットボールリーグAFLに提出して、選手たちが自主的にクラブを離れたことにしようとしているということです。
 ハリアンメトロの記事は、FAMとAFLに実際の状況を調査し、この噂が事実かどうかを確認するべきとしています。
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 プルリス州サッカー協会PFAは、昨季2019年に運営していたMFL2部のプルリスFAが悪質な給料未払いがあったとして、クラブはMFLから出場停止を受け、未払い給料を完済するまで国内でのあらゆるサッカー活動に関わることが禁止されています。このため、FAMはプルリス州を拠点とする全てのクラブに対して、かつてのPFA関係者をクラブのフロントやスタッフとして雇用しないよう通達を出しています。この記事では、PFAとプルリス・ユナイテッドの関連性については何も書かれていませんが、この記事に書かれたことが事実であれば、ずさんな経営で失職した元PFA関係者の関与も考えられるかも知れません。

マレーシアサッカーコーチ協会は給料削減に同意を表明
 ブリタハリアン電子版では、マレーシアサッカーコーチ協会PJBMが各クラブに対し、給料削減に同意をする一方で、過度な削減への反対と各クラブの監督による同意の上での給料削減実施を求めていると伝えています。
 スランゴールFCの監督でもあるPJBMのサティアナタン・バスカラン会長は、各クラブの監督、コーチは給料削減に応じる用意があるとしながらも、クラブ側と監督、コーチのいずれにとっても納得できる条件のもとで行われるべきと話しています。
 「PJBMはクラブが給料削減についての交渉を行うことに同意するが、削減については給料の額に応じて行うこと、またクラブと監督、コーチとの同意に基づいて行うことを求める」と話すサティアナタンPJBM会長は、給料削減を行った後に給料の遅配が起こらないようにすることも求めています。

6月の代表強化合宿は実施せず
 英字紙ニューストレイトタイムズ電子版は、6月に予定されていた代表強化合宿が行われない見通しであるとしています。
 今年6月1日から9日までは国際サッカー連盟FIFAが設定するインターナショナルウィンドウ期間でしたが、FIFAは既に6月中の公式戦を全て延期することを発表しているだけでなく、各クラブが6月中の代表チーム招集に応じる必要はないこと、またこの期間中に代表に招集された選手は、クラブを優先して招集を拒否することも許されています。マレーシアサッカー協会FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は予定されていたマレーシア代表強化合宿は実施しないだろうと話しており、現在中断中の国内リーグが再開となれば、国内リーグ日程として使われる可能性があるとしています。
 ラマリンガム事務局長は、現在、FAMは国内リーグを主催するマレーシアフットボールリーグMFLが再開後の日程について話し合いを続けている一方で、アジアサッカー連盟AFC加盟国も国際試合を行う予定がないとして、新型コロナウィルス感染拡大が鎮静化し、リーグが再開できれば、国内リーグ開催を優先したいと話しています。

4月18日のニュース:AFCは無観客試合でも公式戦開催を予定、リーグ公式サイトはMFL3部でプレーする「フロントライナー」を紹介、M3のランカウィシティFCは「フロントライナー」を支援

AFCは無観客試合でも公式戦開催を予定
 フランスの通信社AFPは、アジアサッカー連盟AFCは新型コロナウィルス感染拡大の収束が見えない中、今年予定されている公式戦開催を諦めていないという関係者の話を伝えています。
 AFCのウィンザー・ジョン事務局長は、現在中断中のAFCチャンピオンズリーグACLとAFCカップについて、全日程を開催するのに十分な時間は残されているとして今年中に決勝戦まで行う予定であると話しています。
 ジョン事務局長はAFPの取材に対して、今季の新たなAFC公式戦の日程は4月末までには発表される予定であると話し、医療専門家の意見次第では今後の試合は無観客試合となる可能性も示唆しています。
 わずか数日前にAFCは5月と6月に予定されていた公式戦の中止と、今後の日程の無期限延期を発表したばかりですが、AFCが負っている「『商取引債務』を果たすため」に公式戦の開催意思を明らかにしています。
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 ジョン事務局長の発言は、スポンサーへの義務を果たし、放映権収入などを失わないためにAFCとしては諦めていないことをアピールしたものだと思います。
 なお例年ならば8月からノックアウトステージが始まるACLですが、今年は各グループともグループステージの数試合を消化した時点で中断中で、今後は通常ではあまり試合が組まれない7月の暑い時期にも日程消化が求められる可能性がある他、各国でも再開が予想される国内リーグとの日程調整なども難航することが考えられます。

リーグ公式サイトはMFL3部でプレーする「フロントライナー」を紹介
 マレーシア国内に現在発令中の活動制限令Movement Control Order、通称MCOにによりシーズンが中断中のマレーシアフットボールリーグMFL。各クラブは試合はもちろん、合同練習すらできない状況が続いています。このような状況でMFL1部に所属するマレーシア王立警察の選手が、新型コロナウィルス感染拡大を防ぐ最前線で勤務する、いわゆる「フロントライナー」としてMCO中も勤務していることを取り上げましたが、MFL3部のM3リーグに所属するマレーシア国軍クラブArmed Forces FC(AF FC)の選手の中にも、やはり「フロントライナー」として活躍している選手がいると、MFLの公式サイトが伝えています。
 現在マレーシア各地では前述の活動制限令MCO徹底のため、警察と国軍による検問が行われていますが、AF FCでDFとしてプレーするシャルジジ・アズミ選手は、この警察による検問の補佐役として勤務しているということです。マレーシア国軍の中でも海軍に所属するシャルジジ選手です。
 35歳のシャルジジ選手は奥さんも看護婦としてスランゴール州の病院に勤務する「フロントライナー」ということでほとんど家にいることがなく、家族で過ごす時間が取れないと話す一方で、お互いが果たすべき仕事については理解していると話しています。
 MFL1部と2部から遅れて開幕したM3リーグは、第2節を終了したところでリーグが中断期間に入り、AF FCは2試合を終えて1勝1敗で、高山龍選手が所属するランカウィシティFCとともに勝点4ながら、得失差で上回りグループAの2位につけています。
(”We stand on duty, so you can stay home.”「仕事は自分たちに任せて、そうでない人は家にいて下さい」というメッサージを持つシャルジジ選手(写真左)-MFL公式サイトより)

M3のランカウィシティFCは「フロントライナー」を支援
 上の記事で触れたM3リーグのランカウィシティFCはマレーシア有数の観光地の一つであるクダ州のランカウィ島を拠点とするクラブですが、このランカウィシティFCが民間防衛軍APMに対して2000リンギ(およそ5万円)の寄付を行ったと、マレー語紙ブリタハリアンが報じています。
 日本で言えば「地元の消防団」といった役割を果たす民間防衛軍APMは、現在、マレーシア国内に発令中の活動制限令MCOに関わる警察、軍隊などを支援する活動を各地で行なっていますが、ランカウィシティFCはランカウィ島で「フロントライナー」として活動しているAPMが必要な用具を購入できるようにという目的でこの寄付を行ったことをクラブマネージャーのモハマド・ノー・モハマド・アミン氏が明らかにしています。
 昨季2019年からM3リーグに所属するランカウィシティFCは、M3リーグでは1勝1分0敗でリーグ3位となっている他、今季のFAカップでは2回戦に進出し、MFL1部のマラッカ・ユナイテッドと対戦する予定になっていますが、新型コロナウィルス感染拡大によりFAカップの試合も延期となっており、まだ試合は実現していません。

4月16日のニュース:選手会がJDTオーナーの支持表明に感謝、クダFAサポーターはクラブに未払い問題があることに驚く 、タイ協会は9月に国内リーグ再開を予定、AFCは6月末までの公式戦を全て延期

選手会がJDTオーナーの支持を感謝
 マレーシアプロサッカー選手会PFAMは公式Facebook上で、「未払い給料問題を抱えるクラブは給料削減の交渉を始める前に未払い給料を支払うべき」というPFAMの主張への支持を表明したジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下に感謝の意を表明しています。
 イスマイル殿下がJDT公式Facebook上で支持を表明すると、直ちにPRAMはサフィ・サリーPFAM会長(PJシティFC)以下、シャーロム・アブドル・カラム(ヌグリスンビランFA)、ラズマン・ロスラン、カイルル・ファミ・チェ・マット(いずれもマラッカ・ユナイテッド)、ファリザル・マーリアス(JDT)、ザクアン・アドハ・アブドゥル・ラザク(クダFA)、スブラマニアム・スーリャパラド(クアラルンプールFA)、シャルル・サアド(ペラTBG)の連名で、「イスマイル殿下がPFAMの主張への指示表明は、殿下がプロサッカー選手に対して心遣い持つことの証であり、また給料削減交渉を行う前にプロサッカー選手の権利と福利が尊重されるべきであることをはっきりと示したものである」、さらに「未払い給料問題を抱えるクラブは速やかに未払い給料を支払い、その上で公平で透明性が高い方法で各選手と個別に給料削減方法の交渉を行うべきである」という内容をFacebook上に投稿しています。
(下はイスマイル殿下に感謝の意を表すPFAMの投稿-TMJはTunku Mahkota Johor「ジョホール皇太子」の意味)

クダFAサポーターはクラブに未払い問題があることに驚く
 マレー語紙ブリタハリアン電子版では、JDTのオーナーでジョホール皇太子のトゥンク・イスマイル殿下がクダFAに給料未払い問題が存在することを公表したことで、クダFAのサポーターの間で驚きが広がっていると報じています。イスマイル殿下はJDTの公式Facebook上でクダFAの他、マラッカ・ユナイテッド、ケランタンFA、ペナンFAも未払い給料問題を抱えていることを公表し、この4クラブは未払い給料問題を解消してから新型コロナウィルス感染拡大防止のためのリーグ中断い伴う給料削減交渉を行うべきであると述べています。
 ブリタハリアンの記事では、23団体あるクダFAサポーターグループの代表者であるモハマド・サファリザル・モハマド・ソブリ氏の「クダFAが未払い給料問題を抱えていることは驚きであり、(クダFAを運営する)クダ州サッカー協会KFAがこれを深刻な問題とし、クラブのイメージや評判を維持するためにも迅速に対応してほしい」というコメントを紹介しています。さらにサフィリザル氏は「クダFAのサポーターも知り得なかった内部の情報がどのようにして外部(のトゥンク・イスマイル殿下)に伝わったのか、またその内部情報が正確なのかどうかについて、KFAに公式発表を求めてたいとしています。

タイ協会は9月に国内リーグ再開を予定
 隣国タイの英字紙バンコクポスト電子版では、現在中断中の今季のタイリーグ1部と2部は今年9月にリーグを再開する予定であると報じています。
 タイサッカー協会FATのソムヨット会長は、新型コロナウィルスによる被害が収束すること条件ながら、今季2020年シーズンを9月から再開し、来年2021年5月終了とすることがFAT役員および1部と2部のクラブの代表者の満場一致で決まったと話しています。なおカップ戦は予定通り行われることも合わせて発表しています。
 また、今季のリーグ戦が9月再開となった場合、ヨーロッパ各国のリーグと同様の9月開幕5月閉幕という日程は、来年以降もタイリーグで採用される可能性があるとしています。
 さらにソムヨット会長は、1部と2部のクラブに対して最大で50%の選手給料削減を許可すると話す一方で、影響を受ける選手から訴訟を起こされることを避けるため、国際サッカー連盟FIFAおよびアジアサッカー連盟AFCと協議を行なっていくとしています。
 この他、タイリーグの放映権を持つTrueVisionsは、7月にFATへ今季2度目の放映権料を支払う予定であるとしながらも、リーグは開幕から第4節終了後に中断していることからどのくらいの放映権料が支払われるかは不明であり、これによりFATから各クラブへ助成金が支給されるかどうかは決まっていないこと、またタイ代表の西野朗監督の給料も50%削減されることも明らかにしています。
 ソムヨット会長は、さらにタイリーグ3部と4部クラブとの会談は今後行われるよていであること、そして以前このブログでも取り上げた今年年末に予定されている東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップについては、国内リーグ開催時期と重なることから、若い選手にあるいは「2軍」の代表チームが参加する可能性も示唆しています。

AFCは6月末までの公式戦を全て延期
 アジアサッカー連盟AFCは公式サイトにて、新型コロナウィルス感染拡大防止とアジア各国で実施されている移動制限を考慮して、5月と6月に予定されていたAFC主催試合を期限を設けずに延期すると発表しています。AFCは既に3月と4月に予定されていたAFCチャンピオンズリーグACLグループステージなどのAFC主催試合を全て延期しています。
 本来ならば8月から始まるACLノックアウトステージも、グループステージを7月中に終了しない限り、予定通りには始まらないことになりました。マレーシアからはジョホール・ダルル・タジムJDTが出場しているACLグループステージのグループGは全12試合中、3試合しか終了しておらず、ACLが再開となっても、おそらく同時に再開となる各国の国内リーグとの日程調整が難しい上、やはり順延となっているFIFAワールドカップ2022年大会アジア二次予選件2023年AFC選手権アジアカップ予選もあり、今年後半のサッカーカレンダーは、アジアのサッカー選手に負担を強いるものになりそうです。
 また今回のAFCの発表により、東京オリンピックの女子サッカー出場権をかけた中国対韓国戦も当初予定されていた6月1日と9日の試合が延期となっています。

4月8日のニュース:MFL3部の選手は政府チャーター機で自国民退避をアシスト、マレーシアは27年AFC選手権開催地に立候補の予定なし、UAEが1試合も行わずに監督を解任

MFL3部の選手は政府チャーター機で自国民退避をアシスト
 マレーシアフットボールリーグMFL3部にあたるM3リーグのムラワティFCには宮崎崚平選手が所属していますが、このムラワティFCのアフィフ・ナジミ・ムハマド・イズワンがマレーシア政府が用意したチャーター機を操縦して、マレーシア国民の退避に関わった際の話を英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が取り上げています。
 29歳のアフィフ選手は元フットサルのマレーシア代表という経歴を持つサッカー選手であると同時に、マレーシアの航空会社エアアジア社のパイロットでもあり、3月21日にイランのテヘランからマレーシア人46人、シンガポール人8人、インドネシア人1人の合計55人を退避させるための政府チャーター機のパイロットを務めました。
 これまでで最も思い出深いフライトだったと話すアフィフ選手によれば、3人の機長と2人の副機長全員は感染予防のため頭から足の先まで防護服で完全に覆われ、55人の乗客は機内に入る前に一人一人検査された上、機内でも乗務員、医療チーム、乗客はそれぞれ別の区域に搭乗したそうです。
 この55人の中から新型コロナウィルスの陽性患者は出なかったということですが、アフィフ選手は14日間の自宅待機を経て、前ヌグリスンビランFA監督のマット・ザン・マット・アリス監督の元、現在は自宅でトレーニングを再開しているということです。
(写真の左手前がアフィフ選手-写真はスムアナニャボラのFacebookより拝借)

マレーシアは27年AFC選手権開催地に立候補の予定なし
 アジアサッカー連盟AFCは、2027年開催予定のAFC選手権アジアカップの開催地立候補の受付期間を6月30日まで延長したことはこのブログでも紹介しましたが、マレーシアサッカー協会FAMはこの延長を利用して開催地立候補を検討することはなさそうなことを英字紙ニューストレイトタイムズ電子版が報じています。
 FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、「アジアカップのような大規模な大会には政府の協力が必要だが、現在をそういったことを検討するのに適した時期ではない。」と話し、現在の新型コロナウィルス感染拡大が広がっている状況下では、マレーシアがアジアカップ開催に立候補することはないだろうとしています。
 なお現時点では、サウジアラビアが開催国として立候補としている唯一の国ですが、この記事の中では、AFCが開催地立候補の受付を延長したことを受けて、インドが立候補を検討しているとも伝えています。。
 また2034年のFIFAワールドカップ開催地としてタイ、インドネシア、シンガポール、ベトナムと合同で立候補する計画についても、先月予定されていた会合が延期になったことから、こちらについても一時保留とすることも併せて発表されています。
(筆者注:AFCの公式サイトの表記はAsian Cupですが、日本のサッカー関連メディアの多くが「アジアカップ」という表記を使っているので、日本語のこのブログでもこちらを採用します。)
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 マレーシアは2007年にタイ、ベトナム、インドネシアとともにアジアカップを共催した経験があります。このときはイラン、ウズベキスタン、中国と同組となったグループステージでは0勝3敗の最下位となり、共催した他の3カ国の中でグループステージを突破したのはベトナムだけでした。なお、マレーシア代表がアジアカップ本戦に出場したのはこの2007年が最後で、その前の出場は1980年、1976年の2回となっています。

UAEが1試合も行わずに監督を解任
 イギリスの通信社ロイターは、アラブ首長国連邦サッカー協会がイヴァン・ヨヴァノヴィッチ監督を一度も試合をすることなく解任したことを伝えています。
 アラブ首長国連邦UAEはFIFAワールドカップ2022年アジア二次予選ではマレーシアと同じグループGに属しており、これまで4試合を終了して2勝2敗のグループ4位につけています。アジア二次予選開始時に監督を務めていたオランダ人のベルト・ファン・マルワイク氏は、予選でマレーシアとインドネシアに連勝しましたが、タイとベトナム相手に連敗を喫し、さらにその後に開催されたガルフカップでもイラク戦、カタール戦と連敗したことから昨年2019年12月4日に解任されています。昨年12月22日にファン・マルワイク前監督に代わって就任したのがセルビア人のヨヴァノヴィッチ監督でした。
 キプロスの国内リーグでAPOELニコシアを4度優勝させ、2011/12年シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝進出を果たした実績を持つヨヴァノヴィッチ監督は、UAEサッカー協会と6ヶ月契約を結んでいましたが、先日のこのブログでも伝えたように6月中のFIFA主催の試合はすべて延期となったため、契約満了を待たず、UAEを率いて1度も試合に臨むことなく解任されています。

4月2日のニュース:FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討、元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮、AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長

FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討
 隣国インドネシアでは新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、5月29日まで国内リーグ中断が確定していますが、これに伴い、インドネシアサッカー協会PSSIは、3月から6月までの期間に限り、国内リーグの各クラブに対して給料の25パーセントを上限として支払うことを認める特別措置を取っています。そしてPSSIがこの措置の根拠として挙げているが、国内リーグの中断は”Force majeure「不可抗力」”によるものであるという考え方です。
 手元にあるスーパー大辞林によれば「不可抗力」とは「 通常,必要と認められる注意や予防方法を尽くしても,なお損害を防ぎきれないこと。債務不履行・不法行為の責任を免れる」となっており、今回のPSSIの場合で言えば、「契約書通りの給料を払う義務を免除される」という解釈でしょう。
 これに倣ってかどうかはわかりませんが、マレーシアサッカー協会FAMが「不可抗力」条項を契約書に盛り込むことを検討中であることを、マレー語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。この記事では、この条項を契約書に盛り込むことにより、現在、マレーシアの国内リーグを揺るがせているリーグ中断に伴う給料削減問題のような事態に対処することが容易になるとしています。
 この「不可抗力」条項導入について、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、今回の新型コロナウィルスによるリーグ中断はFAMにとっても全く未知の経験であるとし、今後このような状況に直面した際には選手との契約を見直す必要があるとして、各クラブやマレーシアプロサッカー選手会PFAMを含めた関係者と一緒に検討していきたいと話しています。
 その一方で、この「不可抗力」は様々な解釈が可能であり、ヘイズ(煙霧-マレーシアやインドネシアで行われている焼畑が原因とされ、健康被害なども引き起こす大気汚染公害:筆者注)や豪雨なども含めるのかなどマレーシアでの適用条件やその目的などを包括的に検討する必要性があることや、マレーシアフットボールリーグMFLで使われている契約書は国際サッカー連盟FIFAが作成した定型書式を採用していることから内容の変更にはFIFAの承認が必要であることなどを指摘した上で、ラマリンガム事務局長は選手、クラブの双方はもちろん、サッカーファンにとっても公平となるようなものとしたいと話しています。

元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮
 クロアチア人のボヤン・ホダック氏は、現在マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグ7連覇中のジョホール・ダルル・タジムが連覇をスタートした2014年に監督を努めた他、2012年にはケランタンFAを率いてスーパーリーグ、FAカップ、マレーシアカップの三冠を達成した名将です。その後2017年から昨年2019年まではマレーシアU19代表の監督を務め、2018年には東南アジアサッカー連盟AFF U19選手権優勝、さらにはアジアサッカー連盟AFC U19選手権本選に14年振りにマレーシアを出場させています。しかし、マレーシアでこれだけの実績がありながら、葉に絹着せぬ発言で知られるホダック氏はU19代表監督の契約を更新されず、現在はインドネシア1部リーグのPSSマカッサルの監督を務めています。
 インドネシアの国内リーグが中断中ということで、クアラルンプールに滞在しているホダック氏は英字紙ニューストレイトタイムズ電子版のインタビューに答え、MFLの多くのクラブが州政府や政府機関を大口スポンサーとしており、現在の新型コロナウィルス感染が拡大する状況では、そう言った州政府や政府機関が充当していたクラブ運営資金が新型コロナウィルス感染対策に使われている可能性があるという持論を展開し、他のスポンサーを持たないクラブ、多くの入場料収入が期待できないクラブは生き残りが困難になり、そのツケは選手にも回ってくるだろうと話しています。
 「年間予算1000万リンギ(およそ2億4600万円)程度のクラブが試合をせずにどのくらい持ちこたえることができるだろうか」と話すホダック氏は、州政府や政府機関といったクラブのスポンサーが既に年間支援額全額を支給していれば良いが、毎月、あるいは四半期ごとに支援が行われるクラブであれば持ちこたえるのが困難になるだろうと述べ、既に負債を抱えているクラブ(=給料未払い問題を抱えているクラブ)では選手が苦しむことになるのではないかと危惧していると語っています。
 さらに中国、韓国、日本といった国のクラブは資金的に余裕があり、リーグを運営する組織から支援も期待できるが、国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFL自身が十分なスポンサーを獲得できていないマレーシアはもとより、似たような状況に置かれている東南アジア各国のクラブが心配であるとしています。
 また上の記事でも取り上げたインドネシアリーグの給料削減問題についても、報道されている内容とは異なり、選手会との交渉なしに決定されたと話すホダック氏は、アジアを含めた世界のサッカークラブの9割以上を占める小規模クラブの多くは、リーグ中断期間が3ヶ月以上に及べば破産しかねないのではと予測しています。

AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長
 4年ごとに開催されるアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ。昨年2019年にアラブ首長国連邦で開催された第17回大会では、カタールが日本を3-1で破って優勝しています。2023年開催予定の第18回大会は中国での開催が既に決まっていますが、その次の大会となる2027年の第19回大会について、AFCは開催希望国から出される申請の締め切りを3月31日から6月30日に延長したと、英国の通信社ロイターが報じています。
 AFCは、十分な準備期間を与えられるように開催地をできるだけ早く確定したかったようですが、新型コロナウィルスの感染拡大により各国のサッカー協会がその対応に追われている現状を考慮した結果の決定であるとしています。
 2027年大会については、過去3回の優勝実績を誇りながら、自国開催の経験がないサウジアラビアが開催に立候補している唯一の国となっています。