MFL1部スーパーリーグのクラブ紹介と今季の順位予想(5):クダFA、スランゴールFC

今季2020年シーズンのマレーシアフットボールリーグMFL1部と2部は2月28日に開幕します。そこで前回に続き、今季のMFL1部スーパーリーグでプレーするクラブの紹介と、独断と偏見に基づいてた順位予想を行います。今回はその第5回です。
(人名の後に特に表記がない場合はマレーシア人です)

クダFA(ホーム:ダルル・アマンスタジアム-クダ州アロースター)
(昨季結果:MFL1部4位 / 今季予想:2位)
<監督>
アイディル・シャリン・サハック(シンガポール、クダFA監督2季目)
<外国籍選手>
FWチェチェ・キプレ(コートジボアール、トレンガヌFCより移籍)
FWクパ・シャーマン(リベリア、PKNS FCより移籍)
MFアミン・ナザリ(フィリピン、タイ1部リーグのラーチャブリーFCより移籍-アジア枠)
DFシャキル・ハムザ(シンガポール、昨季から残留-ASEAN東南アジア枠)
DFレナン・アウヴェス(ブラジル、昨季から残留)
<主力選手>
GKイフワット・アクマル
MFデイビット・ロウリー
MFバドロル・バクティアル
FWハディン・アズマン(フェルダ・ユナイテッドから移籍)
<クラブ概要>
 クダ州サッカー協会KFAが運営するクラブで、昨季のマレーシアFAカップ優勝、マレーシアカップ準優勝とカップ戦では好成績を収めました。FAカップチャンピオンということで、今季は既にアジアサッカー連盟AFCチャンピオンズリーグのプレーオフを戦っています。(結果は韓国KリーグのFCソウルに1−4と敗れ、ACL本戦出場はなりませんでした。)
 外国籍選手、マレーシア人選手とも今季開幕前に最も積極的に戦力補強を行ったクラブで、スランゴールFCとともにJDTの連覇を止める可能性があるクラブです。昨季のチーム得点王フェルナンド・ロドリゲズ(スペイン。JDT IIに移籍)とチーム2位のゴールを記録したジョナサン・バウマン(アルゼンチン、インドネシア1部リーグのアレマFCに移籍)を放出したものの、昨季のMFL1部得点王のクパ・シャーマンと、トレンガヌFCでの過去3シーズンで29ゴール(50試合)を挙げているチェチェ・キプレを加入させています。また前述のACLプレーオフでは、昨季はフル代表候補にもなったGKイルファット・アクマルに代わってPDRMから加入したGKシャアリル・サアリを先発で起用するなど、選手層も厚みを増しています。
 クダFAを率いて2年目のアイディル・シャリン監督の目指すパスサッカーも浸透しつつあるので、昨季の4位よりも上の順位を狙えるクラブになってきています。

スランゴールFC(ホーム:シャーアラムスタジアム-スランゴール州シャーアラム)
(昨季結果:MFL1部3位 / 今季予想:3位)
<監督>
サティアナタン・バスカラン(スランゴールFC監督2季目)
<外国籍選手>
MFサンドロ・ダ・シルバ(ブラジル・昨季から残留)
FWルフィノ・セゴヴィア(スペイン・昨季から残留)
FWイフェダヨ・オルセグン(ナイジェリア、昨季から残留)
DFサフアン・バハルディン(シンガポール、パハンFAより移籍-ASEAN東南アジア枠)
DFテイラー・リガン(オーストラリア、昨季から残留-アジア枠)
<主力選手>
MFブレンダン・ガン(ペラTBGより移籍)
DFニコラス・スウィラッド(PKNS FCより移籍)
GKカイルルアズハン・カリド
MFシャズワン・ザイノン
MFワン・ザック・ハイカル
MFシャミ・サファリ
<クラブ概要>
 スランゴール州サッカー協会FASが運営するクラブで、ここ数年はJDTの後塵を拝しているものの、マレーシアで最も多くのサポーターを抱えるクラブの一つです。
 JDTの対抗馬として臨む今季の補強の目玉は何といってもブレンダン・ガンでしょう。中盤の司令塔が固定されなかったスランゴールFCがまさに必要としていた人材です。昨季途中に加入しリーグ戦10試合で12ゴールを挙げたイフェダヨ・オルセグンとのホットラインは他のクラブの脅威となるでしょう。昨季途中に負ったケガからの回復が遅れているルフィアノ・セゴヴィアは開幕には間に合わないようですが、シャズワン・ザイノン、ワン・ザック・ハイカルと攻撃陣は昨季2位の得点力がさらに向上する可能性があります。
 昨季22試合で35失点を喫した守備陣も、2季目となる主将のDFテイラー・リガンに加え、守備的MFサフアン・バハルディンをパハンFAから、DFニコラス・スウィラッド、DFロドニー・セルヴィンといった選手たちを獲得したことで安定感が増しそうです。
 あえて心配な点を挙げるとすれば、プレシーズンで質の高い練習試合を組めていないことでしょうか。コロナウィルスの影響で中国遠征を中止、さらにインドネシアへの遠征も見送るなど、ドバイで合宿を張ったJDTやカンボジア遠征を行ったクダFAと比べると十分な試合が組めていないような気がします。昨季はスタートダッシュに失敗した結果、開幕5試合目には10位に低迷し、一部サポーターによるサティアナタン監督の解任運動にまで発展したこともあり、同じ轍は踏みたくないところです。

2月24日のニュース:マレーシアのFIFAランキングは154位と変わらず、PJシティFCは内紛が勃発か、ケガ人続出でシャミ・サファリはポジション変更も

マレーシアのFIFAランキングは154位と変わらず
 国際サッカー連盟FIFAの最新ランキングが発表になり、マレーシアは154位、東南アジアでは5位と前回と変わりませんでした。ワールドカップ予選など国際試合がなかったため、ベトナム1位(世界94位)、タイ2位(同113位)、フィリピン3位(同124位)と東南アジアランキングの上位国とも順位の変動はありません。
 来月3月からはW杯予選が再開されますので、次のランキング発表では大きな変動があるかも知れません。

PJシティFCは内紛が勃発か
 今季のマレーシアフットボールリーグMFLはいよいよ今週末に開幕します。各クラブは最終調整に余念がないところだと思いますが、マレーシア語紙ハリアンメトロは、PJシティFCで監督と選手の確執が起こっているようだと報じています。
 記事によると、選手の大半がプレシーズンの練習試合でデヴァン・クップサミー監督が採用する戦術に不満を持っており、一部選手の話として戦術への不満に加えて、デヴァン監督の新加入の選手への対応にも問題があるとされています。なお、この事態はすでにフロントまで伝わっているようで、記事の中では、開幕からの5試合の結果をもとにデヴァン監督の今後の去就が決まる可能性があると伝えています。ハリアンメトロの取材に対して、デヴァン監督はチーム内は良いムードであると確執については否定していますが、ハリアンメトロの記事はMFLで今季最初に還任される監督となる可能性があると結んでいます。
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 この騒動については、ネット上の噂というだけでなく、当地の複数の新聞にも取り上げられており、根も葉もない話ではなさそうです。昨季のチームからは残留したのは8名のみとメンバーを大幅に変えたPJシティFCについて、オーナーは昨季の8位から今季はトップ5入りを厳命しており、開幕でつまずけば5試合を待たずにフロントが監督交代を決める可能性もありえそうです。

ケガ人続出でシャミ・サファリはポジション変更も
 スランゴールFCは、いわゆるウイングの選手にケガ人が続出しています。
 ペラTBGから加入したばかりのノー・ハキム・ハサンが膝前十字靭帯の損傷で今季の出場が絶望となり、シャズワン・ザイノンも足首のケガが回復していません。また、昨季、やはろ膝前十字靭帯を損傷し、今季復帰のワン・ザック・ハイカルも完調には程遠い状況です。このポジションには、ベテランのカイリル・ムヒミーンがいますが、年間を通しての出場となると不安が残ることから、サティアナタン・バスカラン監督はサイドバックのシャミ・サファリをウイングとして起用する可能性を英字紙スター電子版が報じています。
 スランゴールFCとマレーシア代表では右サイドバックとしてプレーするシャミ・サファリは、スターのインタビューに対し、自分がスランゴールFA(当時)でプレーし始めた2017年のポジションはウィングだったと述べ、現在のポジションに定借したのはこの2年ぐらいであること、またサイドバックからウイングに戻るためには修正が必要なものの、ウイングとしてプレーしてみたい気持ちはあるとも話しています。
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 サイドバックながら、積極的なオーバーラップが持ち味のシャミ選手は、前回の東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップでも素晴らしいゴールを決めており、ウイングの資質ありそうなことは下の映像からもわかるかと思います。

2月23日のニュース:M3のグループ分けが決定-移動距離を考慮した編成に、M3クラブは寄付によりFAカップの試合実施が可能に、プレジデントカップとユースカップのグループ分けも発表

M3のグループ分けが決定-移動距離を考慮した編成に
 マレーシアフットボールリーグMFL3部のM3リーグを統括するアマチュアフットボールリーグAFLは、今季M3リーグに参加する20クラブのグループ分けを発表しています。
 3月7日に開幕するM3リーグは、2021年のセミプロ化に向けて、昨季の14クラブから6クラブ増えた20クラブで行われますが、この20クラブが移動距離などを考慮してグループAとBに分けられました。セミプロ化される来季M3リーグはMFL1部や2部同様12クラブで構成されるため、今季のM3リーグはその12/20を決めるシーズンとなります。
 グループAにはマレー半島の北部のクラブと、クランヴァリーと呼ばれるクアラルンプールとスランゴール州のクラブが入り、グループBにはマレー半島南部、東海岸、そしてボルネオ島のクラブが入っています。
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 スポンサー獲得が難しいとされるM3クラブが抱える問題については、以前も取り上げましたが、運営費用の中で大きな割合を占めるものとして選手、スタッフと給料など人件費の他に、遠征費用があります。マレー半島とボルネオ島とでは、当然バス移動はできず、飛行機で2時間ほどかかる場所もあるため、運営が苦しいM3クラブにとっては大きな負担であることから、このようなグループ分けになったのでしょう。
 なお、この遠征費用については、この次の記事を読んでいただくと、どのくらい切実な問題かが理解できると思います。

M3クラブは寄付によりFAカップの試合実施が可能に
 今週末の2月22日と23日には、上記のM3とMFL4部のM4のクラブが出場するマレーシアFAカップの1回戦が行われています。
 マレー半島東海岸にあるトレンガヌ州クママンを拠点とするM3リーグ所属のリアル・チュカイFCは、ボルネオ島のサラワク州クチンでやはりM3リーグのサラワク・ユナイテッドIIと本日2月23日に対戦予定ですが、その試合を前にFacebook上で遠征費用の寄付を募るということが行われました。
 2月20日にクラブの公式Facebook上で、遠征費用の内、1万9500リンギ(およそ52万円)が不足しており、この金額が集まらない場合には試合出場を取り止めなければならないことを告知し、広く寄付を募集しました。その後は複数のメディアでもこの窮状が取り上げられたおかげか、その日のうちに個人だけでなく企業スポンサーが名乗り出るなどして寄付が集まったようです。
 Facebook上でも寄付を感謝する記事が上がっており、無事、本日の試合ができるようになったようです。
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 最初の記事と合わせて読むと、下位リーグの苦しい状況がわかります。こういった状況はマレーシアだけではないのだと思いますが、そういった環境でプレーを続けていく選手のみなさんには敬意を払いたいと思います。
(左は寄付を募るポスト。下の方に銀行名と口座番号が書かれています。右は十分な寄附が集まり、マレーシア語、中国語(北京語)、タミル語、英語で感謝を表すポスト。

プレジデントカップとユースカップのグループ分けも発表
 下位リーグとは別に、MFL各クラブのU21の選手が出場するプレジデントカップとU19の選手が出場するユースカップのグループ分けがFAMの公式Facebookで発表になっています。
 プレジデントカップでは、北部ゾーンとなるグループAにMFLの10クラブのU21チームと国家サッカー選手養成プログラムNFDPのエリートアカデミーであるモクタル・ダハリアカデミーのU17が、グループBにはMFLの12クラブのU21チームが入り、ホームアンドアウェイ形式のリーグ戦を行います。その後、各グループの上位4チームがノックアウトステージに進み、7月末の決勝戦まで熱い戦いを繰り広げます。(以下はFAMのFacebookより。クラブのロゴの横に書かれているのは監督の名前です。)

一方のユースカップは、北部ゾーンとなるグループAにMFLの9クラブのU19チームとAMDのU16が、グループBにはMFLの11クラブのU19チームが入り、やはりホームアンドアウェイ形式のリーグ戦を行います。その後、各グループの上位4チームがノックアウトステージに進み、こちらは6月半ばの決勝戦まで熱い戦いを繰り広げます。(以下はFAMのFacebookより。クラブのロゴの横に書かれているのは監督の名前です。)

MFL1部スーパーリーグのクラブ紹介と今季の順位予想(4):マラッカ・ユナイテッド、ペラTBG

今季2020年シーズンのマレーシアフットボールリーグMFL1部と2部は2月28日に開幕します。そこで前回に続き、今季のMFL1部スーパーリーグでプレーするクラブの紹介と、独断と偏見に基づいてた順位予想を行います。今回はその第4回です。
(人名の後に特に表記がない場合はマレーシア人です)

マラッカ・ユナイテッドFC(ホーム:ハントゥアスタジアム-マラッカ州マラッカ)
(昨季結果:MFL1部6位 / 今季予想:7位)
<監督>
ザイナル・アビディン・ハサン(マラッカ・ユナイテッド監督2季目)
<外国籍選手>
MFロメル・モラレズ(コロンビア、PKNS FCより移籍)
FWウチェ・アグバ(ナイジェリア、PDRM FCより移籍)
MFソニー・ノルデ(ハイチ、アゼルバイジャン1部リーグのジラFKより移籍)
DFチャン・ソグゥオン(韓国、昨季から残留-アジア枠)
DFナルポン・ワイルド・プッソーン(タイ、タイ1部リーグのナコーンラーチャシーマーFCより移籍-ASEAN東南アジア枠)
<主力選手>
GKカイルル・ファミ・チェ・マット
MFサフィク・ラヒム
MFサイフル・リズアン
DFラズマン・ロスラン
<クラブ概要>
 マラッカ州サッカー協会MUSAが運営するクラブで、2017年にMFL1部に昇格後は8位、7位、6位と確実に順位を上げてきています。
 JDTとフル代表で主将を務めたMFサフィク・ラヒムや2012年スズキカップ優勝時のGKカイルル・ファミなどベテランの活躍もあり、リーグでは6位となりましたが、このクラブもやはり給料未払い問題が昨季途中で発覚し、マレーシアカップ準々決勝直前には主将のシュコール・アダン(現クアラルンプールFA)が試合出場を拒否するなどして敗戦、そのままシーズン終了を迎えました。
 気になるのは昨季のチーム1位と2位のゴールを挙げたMFパトリック・ライヒェルト(フィリピン、タイ1部のスパンブリーFCへ移籍)とMFルカ・ミルノヴィッチ(セルビア、ハンガリーのデブレツェニVSCに移籍)との契約を延長せず、新たな外国籍選手と契約した点です。特にミルノヴィッチ選手は、期限付き移籍していたサバFAから2度目のトランスファーウィンドウの際に呼び戻され、シーズン後半の10試合で7ゴールを挙げる活躍を見せていただけに、代わって加入したモラレズ選手とウチェ選手がMFL経験を生かして退団した2人並の成績を残せるのかどうかが、マラッカ・ユナイテッドの今季の成績に直結しそうです。

ペラTBG(ホーム:ペラスタジアム-ペラ州イポー)
(昨季結果:MFL1部7位 / 今季予想:6位)
<監督>
メフメト・ドゥラコビッチ(オーストラリア、ペラTBG監督4季目)
<外国籍選手>
FWギリェルメ・デ・パウラ(ブラジル、クアラルンプールFAより移籍)
DFチエリー・チャンタ・ビン(カンボジア、トレンガヌFCより移籍-アセアン東南アジア枠)
MFレアンドロ・ドス・サントス(ブラジル、ペラTBG3季目)
FWカレッカ(ブラジル、昨季から残留)
DFアントニー・ゴレック(オーストラリア、インドネシア1部リーグのバダック・ランプンFC より移籍)
<主力選手>
GKハフィズル・ハキム
DFシャルル・サアド
DFナジルル・ナイム
<クラブ概要>
 ペラ州サッカー協会PFAが運営するクラブで、2018年にはMFL1部で2位、マレーシアカップ優勝という成績を残しましたが、昨季はマレーシアFAカップは準優勝に終わったものの、MFLでは7位と順位を大きく下げました。
 代表でも主力として活躍する、いわゆる「ボックストゥボックス」タイプのMFブレンダン・ガンとFWノー・ハキム・ハッサンが共にスランゴールへ移籍した一方で、外国籍選手以外には目立った補強がないペラTBGですが、BチームとなったPKNP FCに在籍していた選手たちや、プレジデントカップ(U21)、ユースカップ(U19)の選手たちを昇格させて今季に臨むようです。
 新加入のデ・パウラ選手を含めたブラジルトリオの活躍次第ではリーグ中位から上位を狙えそうです。また、デ・パウラ選手が行っている帰化申請が承認されてマレーシア人選手としての登録が可能になれば、さらに外国籍選手の加入も可能になるので、そうなれば確実に上位を狙えるチームへと変貌する可能性もあります。

2月22日のニュース:MFLが女性審判を採用、今季の助成金は来週にも分配へ、来季のAFCカップ本戦出場権2枠がマレーシアに与えられる

MFLが女性審判を採用
 マレーシアサッカー協会FAMの公式サイトでは、今季のMFLの試合を担当する3名の女性審判を紹介しています。
 リタ・ガニ、ヌル・アクマル・アヌアル、ヌルル・アイン・イザティ・ザイナルの3名のうち、婦人警官のリタ氏は2014年のアジア最優秀女性審判にも選ばれており、2015年の女子ワールドカップや2016年のリオデジャネイロ五輪でも審判の経験があり、ヌル・アクマル氏とともに今季はMFL2部プレミアリーグの審判からスタートすることになっています。またヌルル・アイン氏は14歳(!)だった2012年から審判を務めており、今季のプレジデントカップ(MFL各クラブのU21チームによる大会)やユースカップ(同U19による大会)の審判を担当します。
 FAM審判委員会のモハマド・ダリ・ワヒド委員長は、審判知識とフィットネスの両審査に合格した30名を今季MFL1部と2部の試合を担当する審判員に選出していますが、この3名の女性審判も男性審判と同じ審査を受けて合格しているとし、この3名の起用によって、より多くの女性が審判に関心を持つことを期待したいとしています。
 ダリ・ワヒド委員長は、昨季は審判の質について多くの不満が出ていたとして、審判委員会として問題点の解消と審判技術の向上などに取り組んできたとも述べています。さらにマレーシア人審判に対するサポーターからの低い評価については、マレーシア人審判はAFC主催の試合で審判を務めていることから、その技術は決して低くないと強調しています。

今季の助成金は来週にも分配へ
 昨季は大型スポンサーとされていたテレコム・マレーシア社(TM社)の撤退により、予定されていた助成金の半分しか分配できなかったMFLですが、今季の助成金が来週にもMFL1部と2部の24クラブに分配されるようです。
 英字紙スター電子版によると、MFL1部のクラブには100万リンギ(およそ2660万円)、MFL2部のクラブには50万リンギが分配されることを、MFLの新たなCEOに就任したアブドル・ガニ・ハサン氏が発表しました。
 助成金の金額は、MFLがスポンサーより得た金額に基づいているとし、MFL各クラブにはその点を了解して欲しいとも述べています。
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 今季はスポンサーに「復帰」したTM社やスーパーリーグの冠スポンサーとなったマレーシア第2の金融グループCIMB社などのおかげでそれなりに収入はあるとは思うのですが、昨季の助成金はMFL1部が300万リンギ、MFL2部が100万リンギが当初は支給される予定でしたが、最終的にはそれぞれ半額の150万リンギと50万リンギが支給されました。しかも、MFLはこの金額を助成金ではなく「放映権料」としており、今回TMが独占的にMFLの試合を放映するのであれば、各クラブが受け取る放映権料は増額されても良さそうなのですが、こういった疑問については触れられていません。

来季のAFCカップ本戦出場権2枠がマレーシアに与えられる
 同じスター電子版では、MFLのアブドル・ガニCEOの話として、マレーシアのクラブにAFCカップの本選出場権2枠が与えられたことが公表されています。
 AFCチャンピオンズリーグACLの下位大会にあたるAFCカップは、昨季までは、ACLに出場資格のない国のクラブを対象とした大会でした。このため昨季に限って言えば、JDTがACL本戦に出場したため、マレーシアのクラブにはAFCカップへの出場資格がありませんでした。しかし来季からはこの規定が変更になり、マレーシアにAFCカップ本戦出場枠2枠が与えられることになったことから、MFL1部2位のクラブとマレーシアFAカップ優勝クラブにこの出場枠が与えられることになりました。
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 ACLに加えてAFCカップでMFLクラブが好成績を上げることができれば、過去4年間のAFC主催大会(ACLとAFCカップ)でのクラブの成績とフル代表の成績をもとに算出されるAFCクラブコンペティションランキングも上昇し、現在1枠のACLへの出場枠が増加する可能性もあります。

MFL1部スーパーリーグのクラブ紹介と今季の順位予想(3):PJシティFC、トレンガヌFC

今季2020年シーズンのマレーシアフットボールリーグMFL1部と2部は2月28日に開幕します。そこで今回も、今季のMFL1部スーパーリーグでプレーするクラブの紹介と、独断と偏見に基づいた順位予想を行います。今回はその第3回です。
(人名の後に特に表記がない場合はマレーシア人です)

PJシティFC(ホーム:MBPJスタジアム-スランゴール州プタリンジャヤ)
(昨季結果:MFL1部8位 / 今季予想:8位)
<監督>
デヴァン・クップサミー(PJシティFC監督3季目)
<外国籍選手>
FWデンバ・カマラ(ギニア共和国、イスラエル1部リーグのハポエル・テルアビブFCより移籍)
MFキム・ボングジン(韓国、ベトナム1部リーグのホアンアイン・ザライFCより移籍)
FWワシントン・ブランドン(ブラジル、昨季から残留)
DFエリゼウ・アラウージョ・デ・メロ・バティスタ(ブラジル、昨季から残留)
<主力選手>
GKムハイミン・モハマド
MFラジェシュ・プルマル
FWサフィ・サリー
<クラブ概要>
 MFL1部では唯一の私企業が運営するクラブですが、運営企業のQNet社は連鎖販売取引(日本ではいわゆる「マルチ商法」と呼ばれる販売形態)で成長した企業です。2018年シーズンはMFL2部では3位でしたが、上位のクラブが給料未払い問題により解散したため、棚ぼた式に昨季初めてMFL1部に昇格したクラブです。その前身はMalaysia Indian Football Association, MIFA(インド系マレーシア人サッカー協会)だったことから、インド系マレーシア人の選手の割合が他のクラブに比べると高いのも特徴です。
 昨季の8位という成績は、初昇格のクラブとしては上出来だと思いますが、昨季終了後、主力のマレーシア人選手が大量に流出しており、メンバーが大きくかわていることから、選手間の連携に不安があります。シーズン開幕後も連携に問題があるようだと、昨日のブログで9位と予想したフェルダ・ユナイテッドと入れ替わって9位になる可能性もあります。ヌグリスンビランFAやスランゴールFAを率いてMFL1部優勝経験もあるデヴァン・クップサミー監督の手腕が問われるシーズンとも言えます。

トレンガヌFC(ホーム:スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム-トレンガヌ州クアラトレンガヌ)
(昨季結果:MFL1部7位 / 今季予想:5位)
<監督>
モハマド・ナフジ・ザイン(トレンガヌFC監督2年目)
<外国籍選手>
MFファリス・ラムリ(シンガポール、シンガポールリーグのホウガン・ユナイテッドより移籍-ASEAN東南アジア枠)
FWドミニク・ダ・シルヴァ(アルゼンチン、ベトナム1部リーグのサイゴンFCより移籍)
DFババカル・ディアロ(セネガル、フィンランド1部リーグのクオピオン・パロセウラより移籍)
MFリー・タック(イングランド、在籍3年目)
MFサンジャル・シャアフメドフ(ウズベキスタン、昨季より残留)
<主力選手>
DFナスルラー・ハニフ
DFカマル・アジザ
MFファイズ・ナシル(スランゴールFCより移籍)
<クラブ概要>
 トレンガヌ州サッカー協会PBSNTFが運営するクラブ。昨季途中にイルファン・バクティ前監督が辞任し、コーチから昇格したナフジ・ザイン監督は、今季は「暫定」がとれて正式に監督になりました。
 今季はJDTの連覇に待ったをかけるクラブの一つと目されていますが、ここに来て昨季の給料未払い問題が浮上し、場合によってはMFLより勝点剥奪(はくだつ)処分を受ける可能性もでてきています。在籍する選手の中にも給料の受け取りが数ヶ月遅れている選手もいるという報道もあり、開幕前にこの問題が解決しないと、果たしてそういった選手たちがチームのためにプレーできるのかというモラル面に不安があります。

MFL1部スーパーリーグのクラブ紹介と今季の順位予想(2):サバFA、フェルダ・ユナイテッド

今季2020年シーズンのマレーシアフットボールリーグMFL1部と2部は2月28日に開幕します。そこで前回に続き、今季のMFL1部スーパーリーグでプレーするクラブの紹介と、独断と偏見に基づいた順位予想を行います。今回はその第2回です。
(人名の後に特に表記がない場合はマレーシア人です)

サバFA(ホーム:リカススタジアム-サバ州コタキナバル)
(昨季結果:MFL2部1位 / 今季予想:10位)
<監督>
クルニアワン・ドゥイ・ユリアント(インドネシア、前インドネシアU22代表コーチ)
<外国籍選手>
MFペトルス・シテンビ(ナミビア、ザンビアリーグのルサカ・ダイナモFC移籍)
FWエクトル・オマー・ラモス(プエルトリコ、エルサルバドールリーグのアリアンザFCより移籍)
FWデニス・ブシェニング(タイ、タイ1部リーグのチャイナート・ホーンビルFCより移籍-ASEAN東南アジア枠)
FWロドルリュブ・パウノビッチ(セルビア、昨季から残留)
DFパク・タエスー(韓国、昨季から残留)
<主力選手>
GKロザイミ・ロヒム
DFラウィルソン・バトゥイル
DFモハマド・ズビル・モハマド・アズミ(パハンFAから移籍)
MFアジザン・ノーディン
FWアルト・リナス
FWマクシアス・ムサ
<クラブ概要>
 サバ州サッカー協会SAFAが運営するクラブで、1996年には1部リーグでの優勝経験もありますが、その後は低迷が続き、MFL1部は2012年以来8年振りの復帰となります。
 昨季のMFL2部では、2位のJDT IIに勝点10の差をつけて優勝していますが、昨季、指揮を取ったジュリアス・アティン監督は、MFL1部の監督となるのに必要なAFCプロライセンスを保持していないことから、今季はコーチとしてベンチ入りし、インドネシアのレジェンドでもあり、サバFAでもプレー経験のあるユリアント監督を招聘(しょうへい)しました。ただしユリアント監督はこれまでコーチ経験しかないため、その経験不足が不安要素となる可能性があります。
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 1990年代にはイングランド代表との試合で2ゴールを決めたマトラン・マンジャン(この試合は当時のムルデカ・スタジアムで観戦しましたが、スタジアム全体が興奮状態で鳥肌が立ちました)などを輩出したサバFAですが、近年はMFL2部が定位置でした。久しぶりのMFL1部では、UITM FCとPDRM FCがいるので1シーズンで2部に逆戻りという心配はないものの、戦力的にも得点力不足の心配があり上位のクラブにどこまで(いつまで)付いていけるかは不明です。開幕戦のPDRM FC、第2節のフェルダ・ユナイテッドと比較的楽な相手が続くので、この2試合でどれだけ勝点を積み重ねられるかどうかが鍵になりそうです。

フェルダ・ユナイテッドFC(ホーム:トゥン・アブドル・ラザクスタジアム-パハン州ジェンカ)
(昨季結果:MFL1部10位 / 今季予想:9位)
<監督>
モハマド・ニザム・ジャミル(フェルダ・ユナイテッド監督3年目)
<外国籍選手>
MF恵龍太郎(日本、シンガポールリーグのタンピネスローバーズより移籍-アジア枠)
FWカイルル・アムリ(シンガポール、昨季から残留-ASEAN東南アジア枠)
FWニコラス・ヴェレズ(アルゼンチン、ポルトガルリーグのベレネンセスより移籍)
DFニコラ・ラスポポヴィッチ(セルビア、チェコ2部リーグのドゥキア・プラハより移籍)
MFフレデリック・ビュロ(ガボン、J2のFC岐阜より移籍)
<主力選手>
MFダニエル・アミール
MFジャサズリン・ジャマルディン
<クラブ概要>
 マレーシアの政府機関Federal Land Development Authority(連邦土地開発庁)が運営するクラブで、ホームのトゥン・アブドル・ラザクスタジアムはMFL1部と2部で使用されるスタジアムでは唯一、人工芝のピッチを持つスタジアムです。
 昨季は何度も降格圏ギリギリまで行きながら、最終戦でクダFAにまさかの勝利を収めて1部に踏みとどまったフェルダ・ユナイテッドですが、クラブ運営予算の削減によって、代表にも選ばれたエースFWハディン・アワンや渡邉将基、池田圭といった主力を失っています。
 当初はフェルダが運営する農村出身の若い選手を鍛えて、、、という話も出ましたが、むしろ昨季以上に積極的な補強を行い、最終的に外国籍選手5人は埋まっています。
 ただし期待されていた将来のエース、ダニエル・アミールが開幕前に中足骨骨折で手術を受け開幕には間に合わなくなっています。フェルダ・ユナイテッドからフル代表へ選出された唯一の選手の回復状況が気になります。
 また新加入の恵選手は、かつてタンピネスローバーズでカイルル・アムリと一緒にプレーしており、2017年から2019年には2人合わせて57ゴールを決めたということなので、このコンビが機能すれば、ゴール量産が期待できるかも知れません。
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 スランゴールFCのサティアナタン・バスカラン監督がフェルダ・ユナイテッドの監督を務めていた2017年にアシスタントコーチに就任し、サティアナタン監督退任後の2018年にフェルダ・ユナイテッドを率いてから3年目となるニザム・ジャミル監督は、MFLでは個人的に好きな監督の1人です。昨季在籍した渡邉将基、池田圭選手を試合のたびごとに高く評価していたのが印象的ですが、そのニザム監督が獲得した恵選手には是非、活躍してもらいたいです。

MFL1部スーパーリーグのクラブ紹介と今季の順位予想(1):UITM FC、PDRM FC

今季2020年シーズンのマレーシアフットボールリーグMFL1部と2部は2月28日に開幕します。そこで今回から数回に渡って、今季のMFL1部スーパーリーグでプレーするクラブの紹介と、独断と偏見に基づいた順位予想を行います。今回はその第1回です。

UITM FC(ホーム:UITMスタジアム-スランゴール州シャーアラム)
(昨季結果:MFL2部5位 / 今季予想:11位)
<監督>
フランク・バーンハート(ドイツ、元マレーシアU22代表監督)
<外国籍選手>
FWラビ・アタヤ(レバノン、レバノンリーグのアル・アヘドFCより期限付き移籍-アジア枠)
FWグスタボ・アルメイダ・ドス・サントス(ブラジル、ベトナムリーグのナムディンFCより移籍)
MFウスマン・ファネ(フランス、イングランド3部リーグのシュルーズベリー・タウンFCより移籍)
DFヴィクター・ニレノルド(フランス、ベトナムリーグのダナンFCより移籍)
*MFL1部スーパーリーグは5人の外国籍選手(内1人はアジア枠、1人はASEAN東南アジア枠)の登録が可能ですが、UITM FCは4人のみの登録です。
<クラブ概要>
 Universiti Teknologi Mara(マラ工科大学)が運営するクラブで、大学が運営母体のクラブがMFL1部でプレーするのは初めてです。
 昨季のMFL2部では、2位のJDT IIと4位のトレンガヌFC IIがそれぞれMFL1部のクラブのBチームのためMFL1部への昇格権がなく、またMFL1部9位のPKNS FCがスランゴールFCのBチームとなりMFL2部に降格となったことから、棚ぼたでMFL1部に昇格しています。
 外国籍選手、マレーシア人プロ選手、UITMの学生による混成チームですが、当初はUITMの学生だけで今季のチーム編成を行う予定だったことから、これに納得できない昨季まで監督を務めたイスマイル・ザカリア氏が監督を辞任、後任に就任したのがバーンハート監督です。
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 UITM FCの今季はMFL1部残留が目標となると思いますが、PDRM FCとともに他のMFL1部のクラブと比べると、戦力が劣ります。キーになるのはマレーシア人プロ選手ですが、メディアなどでは具体的な名前が上がっておらず、外国籍選手と大学生とのチーム編成では、1部残留は厳しいでしょう。

PDRM FC(ホーム:KLFAスタジアム-クアラルンプール)
(昨季結果:MFL2部3位 / 今季予想:12位)
<監督>
イシャク・クンジュ・モハメド(前M3マルセラ・ユナイテッド監督)
<外国籍選手>
FWアントニオ・ジャーマン(グレナダ、昨季はスランゴールFCで3試合出場)
MFセルダール・ゲルディエフ(トルクメニスタン、トルクメニスタンリーグのFKアルティン・アシルより移籍)
DFショフラト・ソユノフ(トルクメニスタン、トルクメニスタンリーグのFKアハルより移籍)
*MFL1部スーパーリーグは5人の外国籍選手(内1人はアジア枠、1人はASEAN東南アジア枠)の登録が可能ですが、PDRM FCは3人のみの登録です。
<主力選手>
FWスレンドラン・ラシア(PKNS FCより移籍)
FWサティシュ・クリシュナン(PJシティFCより期限付き移籍)
DFモハマド・アスリ・マルズキ(クダFAより期限付き移籍)
FWディルガ・スルディ(M3マンジュンシティFCより移籍)
<クラブ概要>
 Polis Di Raja Malaysia(マレーシア王立警察)が運営するクラブです。
 昨季のMFL2部では、2位のJDT IIがMFL1部のクラブのBチームのためMFL1部への昇格権がなかったことから、MFL1部に昇格しています。
 昨季は開幕4試合で1分3敗の11位となった時点で「休養」したモハマド・ファウジ・ピルウス監督と交代で就任したエラヴァラサン・エランゴワン監督がそこからチームを立て直し、昇格まで達成しました。しかし、シーズン終了後、エラヴァラサン監督がクラブの補強姿勢に納得せず辞任し、イシャク・クンジュ・モハメド監督が就任しています。(エラヴァラサン前監督はその後、MFL2部のサラワク・ユナイテッドの監督に就任しています。)
 外国籍選手、マレーシア人プロ選手以外は全員が現職警察官によるチーム編成もさることながら、PDRM FCは昨季の未払い給料問題が解決していないことから、今季リーグ戦での勝点3の剥奪(はくだつ)が既に決定しています。なお、この問題が2月29日までに解決しない場合には、さらに勝点6が剥奪されることになっています。
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 昨季のMFL1部では勝点16が1部残留のラインでしたが、PDRM FCは当初、今季22試合で勝点22を獲得して残留を目指すとしていました。しかし上記で述べたように勝点がマイナスからのスタートとなってしまったため、勝点22とするためには実質で勝点25を獲得する必要があります。昨季はPJシティFCが勝点26で8位でしたが、他のクラブとの戦力差を考えると、PDRM FCは8位どころか降格候補の一番手です。

2月19日のニュース:ブキジャリル国立競技場の芝を張り替えへ、M3リーグのクラブが抱える問題

ブキジャリル国立競技場の芝を張り替えへ
 マレーシア代表のホーム、クアラルンプールのブキジャリル国立競技場SNBJは施設は東南アジアでもトップクラスながら、国内外を問わずどのチームがプレーしてもピッチの状況の悪さが批判されてきました。
 そんなSNBJのピッチの芝が張り替えられるようだと、スポーツ専門サイトのスタジアムアストロが報じています。
 記事によると、SNBJを管理するマレーシアスタジアム社とマレーシア政府の青年スポーツ省が共同して、いわゆる「カウグラス」と呼ばれる現在の芝を、ジョホール・ダルル・タジムの新しいホーム、スルタン・イブラヒムスタジアムやシンガポール国立競技場などでも使用されているゼオン・ゾイシア(zeon zoysia)という芝への張り替えを今年後半に予定しているようです。なお、張り替えからピッチが使用できるようになるまでは3ヶ月、費用は1000万リンギ(およそ2億6400万円)かかるとしています。

M3リーグのクラブが抱える問題
 マレーシアフットボールリーグMFLは1部スーパーリーグと2部プレミアリーグはプロリーグという位置づけである一方、3部のM3リーグや4部のM4リーグはアマチュアリーグという扱いです。これをMFLの主導で、M3リーグを段階的にセミプロリーグへ、そしてM4リーグ以下をアマチュアリーグとする改革が現在進行中ですが、そんな中、サッカー専門サイトのスムアナニャボラが、M3クラブの抱える問題を取り上げた記事を掲載しています。
 その問題とはスポンサー獲得の難しさです。M3クラブの平均的な年間運営費用とされる75万リンギ(およそ1980万円)を支援するスポンサーの獲得がM3リーグのクラブ、特にクアラルンプールやスランゴール州など都市部のクラブでは難しくなっているということです。
 記事の中で例として挙げられているのは、昨季はM3に所属していたトゥン・ラザクFCです。このトゥン・ラザクFCは当初予定していたスポンサーが支援を中止した結果、主力選手が次々と退団していき、最終的にはシーズン26試合中23敗で勝点7、しかも失点140という成績で今季はM4リーグへ降格しています。
 また同じ記事の中では、スランゴール州プチョンを拠点としていたプチョン・フェルザFCが、獲得した有力スポンサーの地元ペラ州マンジョンへクラブを移し、マンジュンシティFCとクラブ名称を変えることでM3に残留していることも取り上げられています。
 地方では数千人の集客が可能なM3リーグの試合も、娯楽が多い都市部では観客が数百人という試合が珍しくないことから、企業がスポンサーとして支援するメリットを提供できず、その結果、都市部のクラブにはスポンサーのなり手が見つからないと記事はまとめられています。
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 先日観戦したMFL2部クチンFA対M3クラブのタイ・スランゴールFCの試合も、プレーシーズンマッチとはいえ、日曜日の午後5時過ぎに開始だったにもかかわらず100名にも満たない観衆でしたので、この記事が言わんとすることが実感できました。特にMFL2部昇格を目指して、有力選手や外国籍選手を獲得しようとすれば運営費用はさらに膨らむわけで、有力スポンサーを獲得できるかどうかはM3クラブにとっては死活問題です。


観戦記:2020年2月16日クチンFA対タイ・スランゴールFC@カジャン刑務所ミニスタジアム

 マレー半島遠征中のクチンFAを追いかけて、マレーシアの首都クアラルンプールから南東へおよそ30キロ、スランゴール州のカジャンKajangという街で行われた試合を観戦しました。
 クチンFAのマレー半島遠征2試合目となったこの試合は、Penjara Kajangの中のフィールドで行われたのですが、Penjaraとはマレーシア語で「刑務所」のこと。この試合の会場はなんと刑務所の敷地内にでした。入り口に警官はいるものの、私も含め観客は自由に出入り可能で、緊張していた分、やや拍子抜けでした。
 この日の相手タイ・スランゴールFCはマレーシアフットボールリーグMFL3部にあたるM3のクラブです。昨季はスランゴール州内の地域リーグで優勝し、今季からM3に昇格するクラブで、外国籍選手も確認できただけで3名が在籍していました。
 ちなみにこのカジャン刑務所は、マハティール首相の後継者と言われるアンワル・イブラヒム副首相が、マレーシアの法律で禁じられている同性愛罪で収監されていた場所でもあります。

 この試合で最も興味深かった場面の映像がこれです。イスラム教の礼拝の時間が始まっているにもかかわらず試合が続行ています。この試合が午後5時開始だった理由は、午後7時頃にある礼拝時間までに試合が終わるようにということだったと思いますが、試合開始が遅れた結果、礼拝時間中まで試合が続いてしまいました。
 これが練習であれば、一旦中断して礼拝時間が終わるのを待ち、練習再開になりますが、この日の試合はそのまま続行されていました。