アセアン選手権ヒュンダイカップB組第2節が7月29日に行われ、マレーシアがラオスを破り開幕から2連勝を挙げています。
7月25日に行われた初戦ではミャンマー相手に逆転勝利を収めたマレーシア。一方のラオスは、同じく初戦でタイに0−5と大差で敗れています。そんな両チームの対戦が行われたのはKLフットボールスタジアム。代表戦といえば8万5千人収容のTM国立競技場(ネーミングライツによりブキ・ジャリル国立競技場より変更)での開催が一般的でしたが、今大会では1万8千人収容のKLフットボールスタジアムがマレーシアのホームとされています。初戦のミャンマー戦は国内中継がなかったこともあり、代表戦の扱いが雑になっている印象すらあります。
KLフットボールスタジアムで最後に代表戦が行われたのは昨年5月29日のカーボベルデ戦でした。カーボベルデといえば、北中米W杯ではグループステージで優勝したスペイン相手に引き分け、初出場ながら決勝トーナメント進出を果たすとアルゼンチンには延長で敗れるなど注目を集めたチーム。そんなチームと1−1で引き分けた相性の良いスタジアムでもあります。(但しマレーシアは国籍偽装して代表入りしたガブリエル・パル迷路が出場したため、公式の試合結果はカーボベルデが3−0で勝利と変更されています。)
そしてこの日の両チームの先発XIは以下のとおり。マレーシアはGKアズリ・ガニ(ヌグリスンビラン)が先発し、左右のサイドバックにR・ルヴェンティラン(マラッカ)とジミー・レイモンド(クチンシティ)、2枚のCBにはウバイドラ・シャムスル(トレンガヌ)とロドニー・ケルヴィンを起用。中盤はアグエロをボランチとしてその前にシャドーストライカー適性が高いシャフィク・アフマド(前DPMM)、そしてエンドリッキを配置し、前線は中央にジョズエ、左右のWGに21歳のG・パヴィトラン(ジョホールU23)とスマレという布陣は、ジミー・レイモンドがアリフ・アフマド(ジョホールU 23)に代わって入った以外は初戦と同じメンバーです。一方のラオスは、かつてFC東京、セレッソ大阪、町田ゼルビアなどでコーチの経験もあるセルヴィア出身のヴラディツァ・グルイッチ監督が今年2月に就任し、A代表とU23代表の監督を兼ねることから、初戦のタイ戦では先発8名が23歳以下でした。しかし0-5と大敗したこともあってか、この日の試合ではメンバー8名を入れ替えています。(それでも先発中6名は23歳以下の選手でした。)


この試合は現地観戦しました。通常であれば自宅から車で30分前後で到着するKLフットボールスタジアムですが、この日は6時30分に家を出たものの、帰宅ラッシュに巻き込まれてしまい、スタジアムに着いたのはほぼ8時。その途中では白バイが先導する代表のバスにすぐ横を抜かれるテンションの上がる出来事もありました。(写真左、写真右はスタジアムに横付けされた代表のバス)


試合観戦の際は紙のチケットを買って記念品にしたいと思っていますが、この日の試合はオンライン購入のみ。しかもマレーシア側のチケットはキックオフ1時間前で既に「売り切れ」となっており、やむなくラオス側の席を購入しました。スタンドに入ってみると、試合開始まで1時間を切っているにも関わらずスタンドは5分程度しか埋まっていません。売り切れとは何だったのか…。しかもラオス側の席はゴール裏の半分程度のみで遠近感も解りにくい微妙な席でした。(写真下)

この試合はハリマウ・マラヤ(マレーシア語で「マラヤの虎」の意味)の愛称を持つマレーシア代表の最大サポーターグループ「ウルトラス・マラヤ」がボイコットを表明していたことも、スタジアムが静かだった原因の一つかもしれません。
このブログで何度も取り上げた南米やヨーロッパ出身選手7名による国籍偽装により、FIFAはマレーシア代表に対して、代表選手の資格を持たない選手が出場したことを理由に、前述したカーボベルデ戦を含む国際親善試合3試合の結果を全て0−3でマレーシアの負けとする処分を下しています。またアジアサッカー連盟AFCは、2027アジア杯予選のネパール戦とベトナム戦をFIFAと同じ理由で0-3でマレーシアの負けとする処分を下しました。この結果、マレーシアはアジア杯出場を逃し、さらに試合結果が変更になったためポイントも剥奪されました。この大会前のFIFAランキングでは、マレーシアは136位と、東南アジアではタイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンに次ぐ第5位となっています。またこの責任を取る形で、FAMは会長以下理事会全員が総辞職しています。
そんな中でもFIFAによる処分が発表になったときには、FAMによるFIFAへの不服申し立てを支持するなど、ウルトラス・マラヤは最後までFAMが行ったことは全てマレーシア代表のためと信じてきました。しかしFIFAへの不服申し立てが却下され、続いてスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ求めた調停も却下されると、ウルトラス・マラヤはFAMに対して1)国籍偽装7選手のマレーシア国籍無効手続き、2)FAMから独立して設置された代表チーム運営組織から運営権を奪回すること、3)FAM役員の大幅刷新と構造改革を求め、これが聞き入れない場合はボイコットするという声明を発表していました。
2)については代表チーム運営組織のCEOだったロブ・フレンド氏との相互了承の元での契約解除などが進みました、新たな会長選を控えることから3)は保留、1)に至っては誰もその責任の所在を認めず、何も進展がないことから、この日の代表戦ボイコットにつながった次第です。
しかし試合開始当初は空席が目立ったスタンドも、試合開始から30分もすると席が埋まっていました。映画館でも映画の途中で入ってくる人が少なくないマレーシアなのですが、この試合も終わってみれば1万人越えと6割近くの席が埋まったことになります。この日は楽勝が予想されたラオスだったこともありますが、これがインドネシアやタイ、ベトナム相手であれば、もっと多くの観客が集まった可能性も大いにあります。


FAMには自浄能力がないとしてプレッシャーをかけるウルトラス・マラヤの行動はマレーシアサッカーを何とかしたいという気持ちで行われていることは理解できるものの、ボイコットは現場の選手への影響はあれど、騒動が落ち着くまで静かにしているだけの理事や役員には痛くも痒くもないのではという気がします。だとすればむしろ積極的にスタジアムに足を運び、戦っている選手たちに声援を送ることを選ぶのもマレーシアサッカーの炎を燃やし続ける行動であると言えるでしょう。志は同じサポーターの「分断」は残念でしかありません。
試合の方はG・パヴィトラン、モハマドゥ・スマレの両WGが果敢に攻め込むも、パスの精度の低さに加えて、中央ではラオスDF陣がエースのパウロ・ジョズエを厳しくマークしたためチャンスは作るもゴールには至らない展開がキックオフから続きます。本来ならばその隙をついてゴール前で仕事をしたいシャフィク・アフマドの往年のスピードを欠く上、判断も悪く機能しません。もう一人の2列目、エンドリッキも厳しいマークに合い、ラオスゴール近くまで運んではクリアされる展開が続きます。
しかし前半終了間際の45分、果敢にチャレンジを繰り返す21歳の右WGパヴィトランからのクロスをジョズエが押し込んで、ついにマレーシアが先制します。ジョズエは2戦連発、大会3点目のゴールとなりました。
前半を1−0で折り返すと、後半の57分には再びパヴィトランからのクロスが出ると、今度はこれをエンドリッキが押し込んでリードを広げます。さらに66分には同様のクロスにラオスDFヴィエンサイ・シダヴォンが反応しますが、これをクリアミスするとオウンゴールとなり、マレーシアに3点目が転がり込みます。
そして84分にはペナルティエリア外側でフリーキックを得ると、初戦に続きこの試合も途中出場となったアメリカ育ちのワン・クザイン(アメリカ2部スポーティングクラブ・ジャクソンビル)がキッカーに。この試合が代表戦2試合目となるワン・クザインが蹴ったボールはそれまで好守を見せていたラオスGKケオ=ウドン・スワンナサングソが伸ばした指先を掠めるようにゴールイン!ワン・クザインの記念すべき代表戦初ゴールでダメ押しの4点目を挙げたマレーシアが勝利しています。
この試合のMOMは2アシスト(相手オウンゴールも含めれば実質3アシスト)の21歳、G・パヴィトランとなりました。
アセアン選手権ヒュンダイカップ2026 B組第1節
2026年7月28日@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール、マレーシア)
マレーシア 4-0 ラオス
⚽️マレーシア:パウロ・ジョズエ(45分)、エンドリッキ・ドス・サントス(57分)、ヴィエンサイ・シダヴォン(66分OG)、ワン・クザイン・ワン・カマル(84分)
MOM:G・パヴィトラン(マレーシア)
なおこの日行われたB組のもう一試合は、前節第1節でマレーシアに敗れていたミャンマーが、この試合が大会初戦となったフィリピンを4-1で破っています。この結果、開幕から2連勝のマレーシアが首位に浮上し、この日試合がなかったタイは勝点3で2位、ミャンマーも勝点3ですが得失差で3位となっています。そして黒星スタートとなってフィリピンが4位、2連敗のラオスが5位となっています。B組の第3節は今週土曜日8月1日に予定されており、この日勝利したマレーシアはアウェイで前回大会準優勝のタイと、またマレーシアに敗れたラオスはホームにフィリピンを迎えてそれぞれ対戦します。このヒュンダイカップはA・B各組とも1回戦総当たりで対戦し、各組の上位2チームが準決勝に進みます。
アセアン選手権ヒュンダイカップ2026 B組順位表(第2節終了)
| 順位 | チーム | 試 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 勝点 |
| 1 | マレーシア | 2 | 2 | 0 | 0 | 5 | 0 | 5 | 6 |
| 2 | タイ | 1 | 1 | 0 | 0 | 5 | 0 | 5 | 3 |
| 3 | ミャンマー | 2 | 1 | 0 | 1 | 5 | 3 | 2 | 3 |
| 4 | フィリピン | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 4 | -3 | 0 |
| 5 | ラオス | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 9 | -9 | 0 |
