10月19日のニュース:タイ1部リーグ第9節-マレーシア代表トリオは出場せず、ポルトガル移籍のサファウィ・ラシドはU23の試合に出場、ケダ州FAはアイディル監督の留任交渉開始

タイ1部リーグ-マレーシア人選手は出場せず
 タイ1部リーグ第9節が10月17日に行われましたが、現在、タイ1部リーグのクラブに所属するマレーシア人選手は出場しませんでした。
 リーグ1位を快走するBGパトゥム・ユナイテッドは、日本人の石井正忠監督率いるサムットプラーカーン・シティFCとホームで対戦し、2−2と引き分け、開幕から7勝2分0敗と無敗記録を9と伸ばしています。
 BGパトゥム・ユナイテッドに所属するマレーシア代表のノーシャルル・イドラ・タラハは、前節第8節に続き出場が期待されましたが、この日はベンチ入りしたものの、出場機会がありませんでした。
 またドミニク・タンとモハマドゥ・スマレが所属するポリス・テロFCは、アウェイでPTプラチュワップFCと対戦し、こちらも2-2と引き分け、通算成績を4勝3分2はいとしています。
 ドミニク・タンはこの試合でもベンチ入りしたものの、9月12日のタイ1部リーグ再開後は初めて出場機会がありませんでした。また隔離検疫期間が明けて練習に参加したばかりのムハマドゥ・スマレはベンチ入りしませんでした。
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 スマレ選手は、別の報道ではMリーグ中断からパハンFA離脱後の7ヶ月間は十分な練習を行ってていないと話しており、チームに合流以降はチーム練習とは別にコンディショニングトレーナーと一緒にトレーニングを行なっていることを明らかにしています。

ポルトガル移籍のサファウィ・ラシドはU23の試合に出場
 タイでプレーする代表トリオも気になりますが、Mリーグ1部のジョホール・ダルル・タジムJDTからポルトガル1部リーグのポルティモネンセSCに移籍した代表のエース、サファウィ・ラシドも先週末に移籍後初の公式戦が控えており、マレーシアの衛星放送が急遽、この試合を生中継することを発表するなど期待が高まっていました。
 このブログでもブルネイ出身の「世界一リッチなサッカー選手」ことファイク・ボルキアとの対戦もあり得るか、という記事を取りあげましたが、残念ながらトップチーム合流、即デビューとはなりませんでした。
 それでもサファウィ選手は前日の10月16日(現地時間)に行われたU23リーグのポルティモネンセSCU23対スポルティングCP U23の試合に先発出場しています。試合はスポルティングCP U23が3-1で勝利しています。
 「ポルトガルのサッカーはマレーシアのサッカーとはかなり違うので、まだ学ばなければならないことがたくさんある。試合のペースやリズムが違っているので、試合中に考えている時間はなく、素早い判断が求められる。自身のパフォーマンスには満足しておらず、ベストなプレーが出来なかった。」とサファウぃ選手は試合後に話しています。
 トップチームのパウロ・セルジオ監督はサファウィ選手の練習を見て高評価をつけた一方で、トップチームデビュー前にポルトガルのサッカーに適応する必要があると話しています。

ポルティモネンセU23対スポルティングCP U23のハイライト映像(スポルティングCPの公式Youtubeチャンネルから)背番号10をつけたサファウィ選手がチラチラと映っています。

ケダ州FAはアイディル監督の留任交渉開始
 マレーシア語紙コスモ電子版は、Mリーグ1部ダルル・アマンFC(来季から。現在はクダFA)を運営するクダ州サッカー協会はアイディル・シャリン・サハク監督との留任交渉にあたり条件を聞く用意があると報じています。
 このブログでも取りあげましたが、アイディル監督にはMリーグの他のクラブ(その後の報道でスランゴールFC、クアラルンプールFA、パハンFA、マラッカ・ユナイテッドFC、ペナンFAの名前が具体的に上がっています。)や母国シンガポール、さらにはインドネシアのクラブも関心を持っていると報じられています。
 クダ州サッカー協会のアブドル・ラーマン・アブドラ副会長は、来季もアイディル監督が続けてダルル・アマンFCの指揮を取ることを望んでいると話しています。
 しかしその一方で、留任が実現するかどうかはアイディル監督が求める給料の額や来季に向けての選手獲得などでクダ州サッカー協会が対応できる範囲内であることが条件であるとしています。
 「アイディル監督のクラブへの貢献は計り知れず、今季2位という良い結果も残している。また選手やサポーターからも広く支持されているので、アイディル監督を手放す理由は全くない。来季の出場が決まっているAFCカップでもクラブの指揮を取ってもらえるよう、残留交渉を既に始めている。」とアブドル・ラーマン副会長は話しています。
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 記事の書き方もあるのでしょうが、クダ州サッカー協会はアイディル監督を全力で慰留しようという姿勢が伝わってこない報道が多い印象です。いまだ給料未払い問題を抱え、無い袖は振れない、というところなのでしょうが、昨季のFAカップ優勝、マレーシアカップ準優勝、そして今季はリーグ再開後からチームを立て直してリーグ2位としたアイディル監督を獲得したいクラブは多いはず。そんな中、有利な立場にいるはずのクダ州サッカー協会の本気度が伝わってこないのは残念です。

10月18日のニュース:来季1部昇格のクアラルンプールUはチーム大改造へ、Mリーグの営業収入規模は10年後には2500億円越えも、ケランタンFCは未払い給料完済に向け一歩前進

来季1部昇格のクアラルンプール・ユナイテッドFCはチーム大改造へ
 今季2020年シーズンはMリーグ2部プレミアリーグで上位2位に入り、来季は1部へ昇格することが決定しているクアラルンプール・ユナイテッドFC(来季から。現在の名称はクアラルンプールFA)がチームを大幅に改革するようだとマレーシア語紙ハリアン・メトロ電子版が伝えています。
 その手始めは新監督の採用となるようで、これは2019年シーズン終了後に降格したチームを1季で1部に引き上げたモハマド・ニザム・アズハ・ユソフ監督が1部スーパーリーグで監督を務める際に必要となるプロAライセンスを所持していないことがその理由です。なお新監督には外国籍監督を探しているとされ、この新監督採用に伴い、ニザム監督は来季はコーチとしてチームに残るようです。
 クアラルンプールサッカー協会KLFAのノクマン・ムスタファ事務局長は、新たな外国籍選手の獲得などによってチームを改革すると話す一方で、チーム内でのベテラン選手についてはチームを牽引する役割を果たしているとして、来季も残留の方針を示しています。
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 この記事の中では取りあげられてはいないものの、クアラルンプール・ユナイテッドFCには、この他、Mリーグ撤退を発表した1部フェルダ ・ユナイテッドFC、そしてマレーシアサッカー協会FAMが義務付けている来季までのクラブ民営化に問題があるとされている2部UKM FCに対して自チームのセカンドチーム化を提案しているという話もあります。なおクアラルンプール・ユナイテッドFCはセカンドチームを外国籍選手2名とU21の選手で構成する予定であることも発表しています。
 またネット上では新監督候補として、来季の契約が未だ更新されていないクダFAのアイディル・シャリン・サハク監督や今季途中でスランゴールFCを解雇されたサティアナタン・バースカラン氏の他、マレーシアカップ3連覇など1980年後半のクアラルンプールFA黄金期を支えたシンガポール出身のファンディ・アーマド元シンガポール代表監督の名前もささやかれています。

Mリーグの営業収入規模は10年後には2500億円越えも
 各クラブの民営化が進むMリーグは、全てのクラブが専門家により運営され、サッカー産業のエコシステムが機能すれば、10年後には営業収入規模が10億リンギ(およそ2540億円)規模に成長する可能性があると話す経済専門家の話をハリアン・メトロが掲載しています。
 マレーシア国立大学UKM経済経営学部のイシャク・アブドル・ラーマン准教授によると、この10億リンギの営業収入は、Mリーグの収入の4要素となる放映権料、スポンサー料、入場料収入、グッズ収入の全てが順調に成長すれば実現可能だとしていますが、言い換えればこの4要素は互いに関連していることから、4要素全てが同様に成長することがその条件にもなっているということです。
 「クラブの民営化には良い点と悪い点がある。民営化によってクラブ間の競争が激しくなることでリーグが活性化し、スポンサーの信用が上がり、広告料が増えることが期待できるのが良い点だとすれば、悪い点は民営化がこのタイミングで行われていることである。民営化自体は長い間検討されてきたことは明らかだが、新型コロナウィルスの影響により理想的とは言えないタイミングで民営化を進めざるを得なくなっている。民営化後はスポンサー料と入場料収入が重要だが、このタイミングではそれがないため、クラブの収入の成長も期待できない。民営化により州政府などからの支援がないことがさらに状況を厳しくしており、放映権料と選手の給料削減などの手段でしばらくはこの苦境を乗り越えるしかないだろう。」とイシャク准教授は話しています。
 ハリアン・メトロの試算によると営業収入の内、放映権料が全体の40%、スポンサー料が30%、入場料収入が20%、そしてグッズの売り上げ収入が残る10%を占めるということですが、今季の放映権料の各クラブへの分配は1部スーパーリーグのクラブへは100万リンギ(およそ2540万円)、2部プレミアリーグの各クラブへは50万リンギ(およそ1270万円)にとどまっており、1部のクラブで年間1000万リンギ(2億5400万円)、2部のクラブ500万リンギ(1億2700万円)ともされる運営費用には程遠い金額になっていることもこの記事では指摘されています。
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 この記事を書く際に、他国リーグの営業収入を調べてみました。いわゆる世界4大監査法人の一つKPMGがまとめた資料によれば、データは2013年と古いのですが、Jリーグで500億円越、世界最高と言われる英国1部のプレミアリーグでおよそ3000億円となっており、上の記事の10億リンギという規模はどのような試算に基づくものなのか甚だ疑問です。
 英国プレミアリーグの中国を中心としたアジアでのマーケティングを見ても明らかなように、この営業収入は自国内だけで達成できる金額ではなさそうなので、マレーシアのサッカー産業にその覚悟があるのかがどうかにかかっていますが、現在はそういった努力は全く不十分で、例えばリーグの公式サイトにしてもタイリーグはタイ語と英語が併用されていますが、Mリーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLの公式サイトはマレーシア語表記のみとなっており、サッカー産業成長にはクラブだけでなく、MFLにもプロ意識が必要そうです。

ケランタンFCは未払い給料完済に向け一歩前進
 ケランタンFCは2017年に在籍したレバノン出身のアブー・バクル・アル=ミルに対して未払い給料97万8833リンギ(およそ2490万円)の内、分割支払いによる初回分を支払ったことを発表しています。
 ケランタンFCの法律顧問による発表によると、この支払いはアブー・バクル選手が在籍していた際のケランタンFC(当時はケランタンFA)を運営していたケランタン州サッカー協会の法務担当者とケランタンFCの合意の上で行われ、55万8733リンギ(およそ1420万円)が支払われたということです。
 アブー・バクール選手の他、ケランタン州サッカー協会がFIFAに支払いを命じられている未払い給料はマルコ・クラリェビッチ元監督の90万2860リンギ(およそ2290万円)がカシオ・フランシスコ・デ・ジーザス選手の34万50リンギ(およそ864万円)となってますが、ケランタンFCはこれらについても今年中に完済するとしています。なおケランタンFCは、この未払い給料の他、ケランタン州サッカー協会に対するFIFAによる罰金6万8100リンギ(およそ173万円)も支払う予定であるとしています。
 この他、ケランタン州サッカー協会によるクラブ運営によってこれまで給料が未払いとなっていた171名の選手やコーチに対して、ケランタンFCが社会補償積立金を含めた全ての未払い分を全額支払ったことも明らかにしています。
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 ケランタン州サッカー協会は未払い給料の総額が700万リンギ(およそ1億7800万円)を超えるとされていましたが、実業家のノリザム・トゥキマン氏がこの未払い給料などの負債を含めて680万リンギでクラブ運営会社の全株式を買い取り、クラブの新オーナーとなっています。