マレーシアFAカップ準決勝-JDTとトレンガヌが決勝へ

新型コロナの影響で2年ぶりの開催となったマレーシアFAカップは、8月5日と6日に準決勝の2試合が開催され、Mリーグ1部スーパーリーグで現在首位を走るJDTと同5位のトレンガヌがそれぞれ勝利し、決勝に進出しています。JDTは優勝した2016年以来6年振り2度目、トレンガヌはやはり優勝した2011年以来11年ぶり4度目の決勝進出となっています。
 決勝の試合会場については、来週8月9日に発表されることになっていますが、FAカップを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLは、クランバリーと呼ばれるクアラルンプールやスランゴール州といった首都圏以外での開催を検討しているということで、前回2019年の決勝を含めこれまでで最多の12回の決勝戦が開催されたブキ・ジャリル国立競技場(クアラルンプール)での開催はないようです。ただしJDTのホームであるジョホール州のスルタン・イブラヒムスタジアムは検討対象に含まれていないことは、MFLのアブドル・ガニ・ハサン会長が明らかにしています。(ハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより)

マレーシアFAカップ準決勝
2022年8月5日(金)@スルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
JDT 6-1 ペナン
⚽️JDT:ベルグソン・ダ・シルヴァ(20分)、フェルナンド・フォレスティエリ(24分)、アリフ・アイマン3(48分、51分、62分)、シャーミ・サファリ(90+2分)
⚽️ペナン: ルーカス・シルヴァ(56分)
🟨JDT(0)
🟨ペナン(0)
MOM:アリフ・アイマン(JDT)
 スーパーリーグ首位で今季11勝2分と負けなしのJDTが、同最下位のペナンを試合開始から圧倒して、アリフ・アイマンのハットトリックを含む6ゴールを挙げて大勝し、6年ぶりの決勝進出を決めています。ベンヤミン・モラ前監督の退任を受け、スーパーリーグ第14節から指揮を取るエクトル・ビダリオ監督はFAカップ戦初勝利をあげています。
 リーグ戦ではJDTに2敗しているものの、いずれも0-1の最小失点、しかも試合終盤の失点だったことから、この試合では接戦が期待されたペナンですが、司令塔のエンドリックをケガで欠いた布陣は機能せず、キックオフから防戦一方となり、最終的には今季チーム最多の6失点を喫してしまいました。

マレーシアFAカップ準決勝
2022年8月6日(土)@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 1-1 スランゴール(PK4-2)
⚽️トレンガヌ:ファイサル・ハリム(48分)
⚽️スランゴール: ノル・ハキム(24分)
🟨トレンガヌ(1):ズアシュラフ・ズルキフリ
🟨スランゴール(0):シャルル・ナジーム、ブレンダン・ガン
MOM:ファイサル・ハリム(トレンガヌ)
 決勝に駒を進めたJDTは、リーグ優勝も濃厚で、リーグチャンピオンとして来季のACL II出場する可能性が高くなっています。そのためチャンピオンにはAFCカップ出場権が与えられるFAカップでは、たとえ決勝で敗れたも来季のAFCカップ出場権が与えられる可能性が高く、久しくアジアから遠ざかっている両チームにとっては、是が非でも決勝進出を果たしたいところ。
 そんな両チームの熱戦は延長戦でも決着がつきませんでしたが、今季のスルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアムでは最多となる3万5000名超の観衆の後押しを受けたトレンガヌが、スランゴールをPK戦で下して決勝進出を果たしています。
 スランゴールは地元トレンガヌ出身のノル・ハキムのゴールで先制したものの、前半終了後にU23代表の司令塔ムカイリ・アジマルが、後半に入るとノル・ハキム、そして中盤の要であるブレンダン・ガンがいずれもケガのために交代するなど、主力選手を欠いたことが後半や延長に大きく影響し、追加点を奪えなかったことが最後まで響きました。

Mリーグ1部スーパーリーグ
2022年シーズン第13節結果とハイライト映像

7月26日と27日にMリーグ1部スーパーリーグ第13節の6試合が行われました。6試合揃って行われるのは、4月15日から17日にかけて6試合が行われた第5節以来です。
 シーズンも折り返し点を過ぎ、各チームともケガ人を抱えており、選手層の厚さも含め、その中でどれだけダメージをコントロールできるかどうかが上位進出の鍵となりそうです。
(試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2022年7月26日(火)@ハン・ジェバスタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ・ユナイテッド 4-1 ペナン
⚽️マラッカ:エマヌエル・オティ(4分)、アドリアーノ(36分)、イフェダヨ・オルせグン(58分)、ジャスティン・バース(60分)
⚽️ペナン:ルーカス・シルヴァ(86分)
🟨マラッカ(1):ファディル・イドリス
🟨ペナン(2):カイルル・ロキシャム、ラファエル・ヴィトール
MOM:ソニー・ノルデ(マラッカ)
 リーグ戦は6戦連続でホームでの試合となったマラッカが、外国籍選手4名のゴールでペナンを破って今季最高位の7位に浮上しています。
 FAカップ準々決勝では怒涛の5ゴールで逆転勝ちを収め、ベスト4進出を決めたペナンでしたが、その立役者となったエンドリックは先発を外れ、後半から出場も66分には交代しています。ザイナル・アビディン・ハサン監督就任以来、最多失点となったこの試合ですが、主力にケガ人が多いペナンは今後も苦しい戦いが続きそうです。

2022年7月26日(火)@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
PJシティ 1-2 サバ
⚽️PJシティ:ダレン・ロック(34分)
⚽️サバ:加賀山泰毅(48分)、イルファン・ファザイル(75分)
🟨PJシティ(1):サラモン・ラジ
🟨サバ(1):スチュアート・ウィルキン
MOM:カイルル・チェ・ファーミ(サバ)
 ボラセパマレーシアJP推しの代表ストライカー、ダレン・ロックのゴールで先制したPJシティは、攻守の切り替えの早いサバのスピードに対応できず後半に失点を重ねて敗れ、これで5戦連続未勝利となりました。
 一方のサバは、バドロル・バクティアルや、ここまで好調だったパク・タエスーらが先発を外れるなど、苦しい布陣で臨んだ試合でしたがが、逆転勝利で2位を堅守しています。。 
 今季2ゴール目を挙げたサバの加賀山泰毅選手は、先発してフル出場しています。

2022年7月27日(水)@トゥンク・アブドル・ラーマンスタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
ヌグリスンビラン 2-1 トレンガヌ
⚽️ヌグリスンビラン:ヤーセル・ピント(17分)、グスタヴォ(52分)
⚽️トレンガヌ:チェチェ・キプレ(19分)
🟨ヌグリスンビラン(5):エラルド・グロン、ヤーセル・ピント、サイフル・リズワン、クザイミ・ピー、ザムリ・ピン・ラムリ
🟨トレンガヌ(0)
MOM:グスタヴォ(ヌグリスンビラン)
 リーグ戦は3週間以上試合のなかったヌグリスンビランでしたが、今季途中加入の新戦力のゴールでトレンガヌを破り、リーグ3位を死守しています。
 上進出を目指すトレンガヌは、前節のサバ、そしてこのヌグリスンビランとの上位対決にいずれも敗れて、目標とする来季のAFC大会出場が遠のいています。そんな中、FAカップ準々決勝に続き、不調を克服しつつあるチェチェ・キプレがゴールを決めたのは朗報です。

2022年7月27日(水)@ダルル・マクムルスタジアム(パハン州クアンタン)
スリ・パハン 2-0 スランゴール
⚽️スリ・パハン:スティーヴン・ロドリゲス(34分)、マリック・アリフ(39分)
🟨スリ・パハン(3):バキュディン・シャムスディン、ミオール・ダニ、アズワン・アリピン
🟨スランゴール(2):ユーリ、アリフ・ハイカル
MOM:スティーヴン・ロドリゲス(スリ・パハン)
 FAカップ準々決勝では2-0とリードしながらまさかの逆転負けで敗退したスリ・パハンが、今季初のクリーンシートでホーム2勝目(リーグ3勝目)を挙げています。
 今季調子に乗り切れないスランゴールを象徴するような試合でした。下位チーム相手に勝ち点を上げることができず、ミヒャエル・ファイヒテンバイナー監督の更迭論が再燃しそうです。

2022年7月27日(火)@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
KLシティ 2-1 クダ
⚽️KLシティ:ジョーダン・ミンター2(56分PK、72分)
⚽️クダ:アイマン・アフィフ(42分)
🟨KLシティ(3):カマル・アジジ、アクラム・マヒナン、ハディン・アズマン
🟨クダ(1):ロクマン・ハキム
MOM:ジョーダン・ミンター(KLシティ)
 KLシティは、トレンガヌから期限付き移籍中のジョーダン・ミンターがPKを決めて、3試合目にしてリーグ戦初ゴールを挙げて同点に追いつくと、さらに72分には逆転ゴールを決めています。
 クダは前半のリードを守ることができずに敗れ、アウェイの試合では引き分けを挟んで3連敗となっています。

2022年7月27日(水)@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
サラワク・ユナイテッド 0-4 JDT
⚽️JDT:ハズワン・バクリ(13分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(20分)、シャーミ・サファリ(79分)、フェルナンド・フォレスティエリ(90分PK)
🟨サラワク(1):スピアー・チャントゥル
🟨JDT(0)
MOM:アダム・ノー・アズリン(JDT)
 代表でもプレーするシャマー・クッティ・アッバが膝の手術で今季絶望となることが発表されても、代わりの選手がすぐに活躍するのがJDTのすごいところ。今季初先発どころか今季初出場のアダム・ノー・アズリンがキッチリとその代役を務めただけでなく、MOMまで獲得する活躍で、チームを3連勝に導いています。
 サラワクは12試合で29失点とリーグ最多失点の守備陣がこの試合でも崩壊する一方、リーグ最小得点の攻撃陣が沈黙し連敗しています。

2022年シーズン スーパーリーグ順位表(第13節終了時)

チーム勝点
1JDT1210203262632
2SAB1391322121028
3NSE13652169723
4KLC135351920-118
5KDA125251822-417
6SEL124442420416
7MEL124441715216
8TRE115151413116
9SRP123271520-511
10PJC122551420-611
11SWU133191233-2110
12PEN131481325-127
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

2022年シーズン スーパーリーグ 得点ランキング(第13節終了時)

ゴール数選手名所属
114ベルグソン・ダ・シルヴァJDT
210カイオンSEL
10フェルナンド・フォレスティエリJDT
48ロナルド・ンガKDA
57ダレン・ロックPJC
66パク・タエスーSAB
75ヒラル・エル=ヘルウェ他3名PEN
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

マレーシアFAカップ2022-JDT、スランゴール、トレンガヌ、ペナンがベスト4進出-谷川由来選手のクチンシティは下剋上ならず

7月23日にマレーシアFAカップ2022の準々決勝の4試合が行われています。リーグ戦はJDTの連覇の可能性が高まる中、優勝チームには来季のAFCカップ出場権が与えられるこのカップ戦は、アジアを目指すチームにとっては負けられない大会です。
 ベスト8に残ったはMリーグ1部スーパーリーグの7チームと2部プレミアリーグのクチンシティでしたが、その中からJDT、スランゴール、トレンガヌ、ペナンが4強進出を決めています。
(試合のハイライト映像はMFLの公式YouTubeチャンネルより)

マレーシアFAカップ2022 準々決勝
2022年7月23日(土)@リカススタジアム(サバ州コタ・キナバル
サバ 0-2 スランゴール
⚽️スランゴール:ユーリ(1分)、カイオン(81分)
🟨サバ(2):ラウィルソン・バトゥイル、パク・タエスー
🟨スランゴール(2):ファズリ・マズラン、ミヒャエル・ファイヒテンバイナー監督
MOM:シャルル・ナジーム(スランゴール)
 スーパーリーグ2位のサバは直近の5試合で3勝1分1敗、一方、リーグ5位のスランゴールは直近の5試合が1勝2分2敗、しかもこの試合はサバのホーム、リカススタジアムでの開催とあって、試合前の予想は圧倒的にサバ有利、そして注目は直近の3試合で4ゴールを挙げて「覚醒」したパク・タエスーでした。
 しかし先手を取ったのはスランゴール。開始1分でユーリがサバDF陣を振り切って先制ゴール!ちなみに今季のスランゴールは、今季のFAカップとリーグ戦では先制した試合は6勝4分と負けがありません。
 前半を1-0で終えると、後半は雨が激しくなるコンデションの中、両チームが攻め続け、81分にはサバDFの最終ラインの裏へ出たパスにカイオンが反応し、FAカップでは3試合連続でゴールを守るダミエン・リムをかわしてゴール!注目のパク・タエスーが不発に終わったサバを封じたスランゴールが準優勝した2018年以来のベスト4進出を決めています。
 サバの加賀山泰毅選手は先発してフル出場しています。

マレーシアFAカップ2022 準々決勝
2022年7月23日(土)@ダルル・マクモルスタジアム(パハン州クアンタン)
スリ・パハン 2-5 ペナン
⚽️パハン:スティーヴン・ロドリゲス(12分)、アズワン・アリピン(20分)
⚽️ペナン:T・サラヴァナン(45+2分)、ヒラル・エル=ヘルウェ2(86分、99分)、ルーカス・シルバ(96分)、K・ティヴァンダラン(118分)
🟨パハン(4):ケヴィン・イングレッソ 、スティーヴン・ロドリゲス、ママドゥ・サマサ、マヌエル・イダルゴ
🟨ペナン(3):ファイザット・ガズリ、ラファエル・ヴィトール、カイルル・ロキシャム
🟥パハン(2):アシャル・アル=アフィズ(🟥x1)、マヌエル・イダルゴ(🟨x2)
MOM:ヒラル・エル=ヘルウェ(ペナン)
 スーパーリーグ11位で今季2勝のスリ・パハンと同12位で今季1勝のペナンの対戦となったこのカードは、リーグ戦では上位進出の目を立たれている両チームのプライドをかけた戦いとなりました。
 12分、20分と前半立て続けにゴールを挙げたホームのスリ・パハンが優勢に進めていた試合は、前半終了にペナンのT・サラヴァナンがゴール前の混戦からのこぼれ球を押し込んで、スリ・スリパハンの1点リードで前半を終えます。
 成績不振から契約解除となったクリストフ・ギャメル監督に代わってこの試合から指揮を取るドラー・サレー監督代行、そしてトマス・トルチャ前監督に代わり6月に就任したザイナル・アビディン・ハサン監督ともハーフタイムでの選手交代は行わないまま後半に臨みます。
 両チームが一進一退の攻防を繰り返す中、86分にエンドリックのフリーキックをラファエル・ヴィトールが繋ぎ、これをヒラル・エル=ヘルウェがヘディングシュートで決めて、土壇場でペナンが追いつきます。
 さらスリ・パハンにとって痛かったのはロスタイムでアシャル・アル=アフィズが「飛び蹴り」で一発退場となったこと。スリ・パハンは延長を10人で戦わなければなってしまいました。そしてその影響が延長に入るとすぐに現れ、96分にはルーカス・シルヴァのパスを受けたエンドリックがパハンDFをしっかりと引きつけてから再びルーカス選手にパス。ルーカス選手はこれをゴールし、0-2の劣勢からペナンがついに3-2と逆転します。この後、99分にはカウンターからヒラル・エル=ヘルウェがこの試合2点目のゴールを決めてリードを広げます。この後2枚目のイエローでマヌエル・イダルゴが退場して9名となったスリ・パハンはさらに失点し、結局リーグ最下位のペナンが11位のスリ・パハンを破ってベスト4へ進出しています。

マレーシアFAカップ2022 準々決勝
2022年7月23日(土)@スルタン・ミザン・ザイナル・アビデインスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 4-1 クチンシティ
⚽️トレンガヌ:ファイズ・ナシル(21分)、チェチェ・キプレ(73分、79分)、ファイサル・ハリム(87分)
⚽️クチンシティ:アミル・アムリ・サレー(43分)
🟨トレンガヌ(2):ファイサル・ハリム、ズアシュラフ・ズルキフリ
🟨クチンシティ(1):アミル・アムリ・サレー
MOM:チェチェ・キプレ(トレンガヌ)
 Mリーグ2部プレミアリーグのチームとして唯一、ベスト8に進出したクチンシティが1部スーパーリーグで6位のトレンガヌに挑みました。今季限りの退任を発表しているクチンシティのイルファン・バクティ監督は、2019年シーズン途中にチームの成績不振を理由に監督を務めていたトレンガヌ(当時はトレンガヌFA)を去り、その後任となったのが当時コーチを務めていたナフジ・ザイン現監督という経緯機もあり、いわば「師弟対決」が実現しました。
 先制したのはトレンガヌでした。その身長(公称156cm)から「トレンガヌのメッシ」と呼ばれるファイズ・ナシルが21分にまさかのヘディングで先制ゴールを決めてトレンガヌがリードします。
 先日発表されたスーパーリーグとプレミアリーグの合併案により、来季はスーパーリーグでトレンガヌとも対戦する可能性が非常に高いクチンシティは、押し込まれながらも防戦一方とはならず、同点ゴールを目指します。
 そして43分にはトレンガヌDFアルグジム・レゾヴィッチのミスからアミル・アムリ・サレーがゴールを決めて同点とし、前半は1-1で折り返します。
 この試合のゲームチェンジャーとなったのは、6月29日以来の試合出場となったチェチェ・キプレでした。開幕からケガで調子が上がらず、リーグ戦では今季わずか1ゴール(しかもPK)のキプレ選手は、今月に入りベンチ外が続いていましたが、この試合は61分に交代出場すると、これまでの不調を忘れさせるような活躍でクチンシティDFを翻弄し、73分に逆転ゴールを決めると、さらに77分にもゴールを決めてトレンガヌを勝利に導いています。この試合に勝利したトレンガヌは準決勝でスランゴールと対戦します。
 クチンシティの谷川由来選手は先発して、フル出場しています。

マレーシアFAカップ2022 準々決勝
2022年7月23日(土)@ハン・ジェバスタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ・ユナイテッド 1-2 JDT
⚽️マラッカ:ソニー・ノルデ(85分PK)
⚽️JDT:ハズワン・バクリ(4分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(90+4分)
🟨マラッカ(2):アドリアーノ、ワン・アミルル・アフィク
🟨JDT(5):マシュー・デイヴィーズ、レアンドロ・ヴァレスケス、シェーン・ロウリー、アリフ・アイマン、ベルグソン・ダ・シルヴァ
MOM:ブライアン・シー(マラッカ・ユナイテッド)
 スーパーリーグ1位のJDTがアリフ・アイマンのショートコーナーからズワン・バクリの今季初ゴールをヘディングシュートで決めて開始わずか4分で先制すると、嫌な雰囲気が漂いますが、今季のリーグ戦ではマラッカはJDTと引き分けており、苦手意識はありません。また試合には敗れながらこの試合のMOMにマラッカのGKブライアン・シーが選ばれているように、マラッカは守勢にまわりながらもGKを中心にDF陣がJDTの追加点を阻んで試合が進みます。
 後半に入ると、マラッカはソニー・ノルデを中心にJDTゴールに近づき、85分にはそのソニー・ノルでがレアンドロ・ヴェラスケスにペナルティエリア内で(映像では外にも見えますが)倒されてPKを獲得。これをソニー選手自身が決めて、土壇場でマラッカが同点に追いつきます。
 試合は同点のままロスタイムに入り、延長戦かと思われた90+4分にナズミ・ファイズのコーナーキックをベルグソン・ダ・シルヴァがフリーヘッダーで決めて劇的な逆転勝利を収めています。
 ロスタイムに入ったところでJDTが決勝点を挙げるという既視感のある試合は、マラッカの大健闘の賜物でしたが、そこは王者JDTが貫禄を見せた試合でもありました。この日の2点はいずれもコーナーキックによるものでしたが、コーナーキックやフリーキックでのJDTはほんとに怖い!
 絶対的王者として国内3冠を目指すJDTは、準決勝ではペナンと対戦します。

Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第10節結果とハイライト(2)

2022年7月22日(金)@スルタン・イスマイル・ナシルディン・シャースタジアム(トレンガヌ州クアラ・トレンガヌ)
クランタン 1-1 JDT II
⚽️クランタン:ヌルシャミル・アブドル・ガニ(19分)
⚽️JDT:ダリル・シャム(50分)
🟨クランタン(3):ジャスミル・メハトー、フェリペ・エレダ、サイド・ソブリ
🟨JDT(4):ダニエル・ティン、ジュニオール・エルドストール、アイサル・ハディ、フェロズ・バハルディン
🟥クランタン(1):ジャスミル・メハト(🟨x2)
MOM:サイド・ソブリ(クランタン)
クランタンの原健太選手は先発してフル出場しています。

2022年7月22日(金)@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
FAM MSNプロジェクト 1-2 スランゴール2
⚽️FAM:ロクマン・バー(60分)
⚽️スランゴール:リッチモンド・テッテー(16分)、イズリン・イブラヒム(85分)
🟨FAM(1):ハズワン・ハサン
🟨スランゴール(1):イクワン・ハフィゾ
MOM:アシマウイ・ヤキン(スランゴール)

Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第12節結果とハイライト(1)

2022年7月16日(土)@スルタン・イスマイル・ナシルディン・シャースタジアム(トレンガヌ州クアラ・トレンガヌ)
クランタン・ユナイテッド 1-1 PDRM
⚽️クランタン:アミルル・シャフィク・チェ・ソー(60分)
⚽️PDRM:ナビル・ラトピ(87分)
🟨クランタン(1):ファイサル・ロスリ
🟨PDRM(1):アミル・サイフル・バデリ
MOM:アレクサンダー・アムポンサ(ペラ)
 クランタン・ユナイテッドの本山雅志、深井脩平の両選手はいずれも先発し、本山選手は56分に交代しましたが、深井選手はフル出場しています。

2022年7月16日(土)@ペラスタジアム(ペラ州イポー)
ペラ 0-0 トレンガヌII
🟨ペラ(5):サンデー・アフォラビ、フィルダウス・サユディ、ワン・ザック・ハイカル、ルチアーノ・グアイコチェア、ユスリ・チェ・ラー監督
🟨トレンガヌ(3):ワン・ファズリ・ワン・ガザリ、アルグジム・レゾヴィッチ、リズアン・ラズリ
🟥ペラ(1):ヴィジェイ・バル・スブラマニアム チームドクター(!)
MOM:サンデー・アフォラビ(ペラ)

2022年7月18日(月)@スルタン・イスマイル・ナシルディン・シャースタジアム(トレンガヌ州クアラ・トレンガヌ)
クランタン 1-0 UITM
⚽️クランタン:サイド・ソブリ(77分)
🟨クランタン(1):アミルル・シャフィク・チェ・ソー
🟨UITM(1):アイズル・アシュラフ
MOM:サイド・ソブリ(ペラ)
 この試合がMリーグデビューとなったクランタンの原健太選手は先発して、フル出場しています。

Mリーグ2部プレミアリーグ
2022年シーズン第11節結果とハイライト(1)

2022年7月1日(金)@スルタン・イスマイル・ナシルディン・シャースタジアム(トレンガヌ州クアラ・トレンガヌ)
トレンガヌII 1-0 クチンシティ
⚽️トレンガヌ:アイルトン・アレモン(79分OG)
🟨トレンガヌ(2):フィルダウス・ルスディ、エンク・ヌル・シャキル
🟨クチンシティ(3):ズラズラン・イブラヒム、ヒディル・イドリス、ディエゴ・バッジョ・テスト
🟥クチンシティ(1):チェ・アリフ・カマルディン
MOM:シャイフル・ハキム(トレンガヌII)
 クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

2022年7月3日(日)@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
PDRM 2-0 ペラ
⚽️PDRM:アズミ・ムスリム(63分)、ミロシュ・ラチャニー(80分)
🟨PDRM(2):ファディ・アワド、アリフ・ナキュイディン
🟨ペラ(3):ファリド・ネザル、ルチアーノ・グアイコチェア、カイルル・アシラフ・ラムリ
MOM:ファディ・アワド(PDRM)

Mリーグ1部スーパーリーグ
2022年シーズン第12節結果とハイライト映像

AFCアジアカップ予選やAFC主催大会、さらにはU23代表が出場した東南アジア大会やU23アジアカップなどによる日程変更に次ぐ変更で、2月に発表されたものとは全く変わってしまっているMリーグ1部スーパーリーグ。中にはまだ10試合しか終えていないチームもありますが、12チーム編成のスーパーリーグはこの第12節からが実際の後半戦開幕です。
 JDTの首位は予想されていたものの、加賀山泰毅選手が所属するサバが2位、そして1部昇格初年喉のヌグリスンビランが3位といずれも開幕前の予想を覆す活躍を見せています。
(各試合のハイライト映像は、MFLの公式YouTubeチャンネルより)

2022年7月3日(日)@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 2-1 スリ・パハン
⚽️トレンガヌ:クパー・シャーマン(1分)、ファイサル・ハリム(80分PK)
⚽️スリ・パハン:アブドル・マリク(10分)
🟨トレンガヌ(2):アザム・アズミ、ファイサル・ハリム
🟨スリ・パハン(3):アズワン・アリピン、シーン・ジャンネリ、デヴィッド・ロウリー、シャールル・アイザッド、シェルゾド・ファイジエフ
MOM:クパー・シャーマン(トレンガヌ)

2022年7月3日(日)@トゥンク・アブドル・ラーマンスタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
ヌグリスンビラン 0-1 サバ
⚽️サバ:パク・タエスー(62分)
🟨ヌグリスンビラン(2):マテウス・アウヴェス、A・セルヴァン
🟨サバ(1):ジャクソン
MOM:パク・タエスー(サバ)
 サバの加賀山泰毅選手は先発してフル出場しています。

2022年7月19日(火)@ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロースター)
クダ 3-1 サラワク・ユナイテッド
⚽️クダ:マフムード・アル=マルディ2(9分、80分)、ロナルド・ンガ(75分)
⚽️サラワク:ウチェ・アグバ(54分)
🟨クダ(1):カイルル・アズリン
🟨サラワク(2):ノル・アジジ・ラムリー、アブドル・ラーマン・イスマウイ
MOM:マフムード・アル=マルディ(クダ)

2022年7月20日(火)@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
スランゴール 3-1 KLシティ
⚽️スランゴール:ブレンダン・ガン(37分)
⚽️KLシティ:ロメル・モラエス(68分)
🟨スランゴール(5):ファズリ・マズラン、ジクリ・カリリ、シャルル・ナジーム、リッチモンド・テッテー、ムカイリ・アジマル
🟨KLシティ(2):ザフリ・ヤハヤ、モハマド・ファウジ
🟥スランゴール(1):ジクリ・カリリ(🟨x2)
MOM:サミュエル・サマーヴィル(スランゴール)

2022年7月20日(火)@シティスタジアム(ペナン州ジョージタウン)
ペナン 0-1 JDT
⚽️JDT:フェルナンド・ロドリゲス(69分)
🟨ペナン(2):T・サラヴァナン、クリスティアン・ロンティニ
🟨JDT(2):アリフ・アイマン、S・クナラン
MOM:ハフィズル・ハキム(ペナン)

2022年7月20日(火)@ハン・ジェバスタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ・ユナイテッド 2-2 PJシティ
⚽️マラッカ:エマヌエル・オティ(36分)、ソニー・ノルデ(76分)
⚽️PJシティ:ダレン・ロック(43分)、K・グルサミー(63分)
🟨マラッカ(2):ファドリ・シャス、ソニー・ノルデ
🟨PJシティ(1):コギレスワン・ラジ
MOM:ダレン・ロック(PJシティ)

2022年シーズン スーパーリーグ順位表(第12節終了時)

チーム勝点
1JDT119202862229
2SAB128132011925
3NSE12552148620
4KDA115241720-317
5SEL114432418616
6TRE105141311216
7KLC124351719-215
8MEL113441314-113
9PJC112541420-611
10SWU123181229-1710
11SRP112271320-78
12PEN121471221-97
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

2022年シーズン スーパーリーグ 得点ランキング(第12節終了時)

ゴール数選手名所属
113ベルグソン・ダ・シルヴァJDT
210カイオンSEL
39フェルナンド・フォレスティエリJDT
48ロナルド・ンガKDA
56パク・タエスーSAB
6ダレン・ロックPJC
75エラルド・グロンNSE
5マヌエル・イダルゴSRP
5ヒラル・エル=ヘルウェPEN
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

7月22日のニュース
シンガポールのレジェンド、ファンディ・アフマドがスリ・パハンのテクニカルディレクターに就任
協会が各代表の下半期の予定を発表-A代表は9月に中東や南米の代表チームと対戦も

シンガポールのレジェンド、ファンディ・アフマドがスリ・パハンのテクニカルディレクターに就任

今季ここまで2勝2分7敗と低迷するMリーグ1部スーパーリーグのスリ・パハンはクラブ公式Facebookで、クリストファー・ギャメル監督の退団とドラー・サレー チームマネージャー(TM)の監督代行就任、そして元シンガポール代表監督のファンディ・アフマド氏のテクニカルディレクター(TD)就任を発表しています。ドラーTDは昨季のトマス・ドゥーリー監督解任後の監督代行に続き、2年連続での監督代行就任となりました。

昨季は4勝6分12敗、降格権とは勝点2差の10位という際どいところでスーパーリーグ残留を果たしたスリ・パハンは、昨季、U21チームの監督を務めたギャメル氏を監督に据え、若手の起用とチーム立て直しを期待しました。しかし直近の5試合でも引き分けを挟んで4連敗中と復調の兆しも見えないことから、ギャメル監督更迭の噂はここ数ヶ月間、ソーシャルメディア上で囁かれていました。

そんな中、ファンディ氏が先月6月にシンガポールサッカー協会FASのエリートユースプログラムのトップを辞任したことから、すわギャメル監督の後任にファンディ氏か、と色めき立ちましたが、蓋を開けてみれば、まさかのテクニカルディレクター就任となりました。

シンガポールのレジェンドのファンディ氏は、1992年シーズンには当時のパハンFA、現在のスリ・パハンでリーグ優勝とマレーシアカップの2冠を達成した他、指導者として2012年から2013年にはJDTで、そして2018年にシンガポール代表で、そして今年5月の東南アジア競技大会通称シーゲームズではシンガポールU23代表の監督なども務めています。

*****

ボラセパマレーシア的には、ファンディ選手はやはりクアラルンプール(当時はKLシティホール)でプレーしていた印象が強いです。同じシンガポール出身のK・カナン、マレク・アワブとともに1987年からマレーシアカップ3連覇を果たしたKLの黄金時代を築いた立役者でした。

協会が各代表の下半期の予定を発表-A代表は9月に中東や南米の代表チームと対戦も

マレーシアサッカー協会FAMは今年5度目となる理事会を開催し、各代表チームの今後の活動について話し合われた内容を公開しています。

U16/17代表は、今月7月31日から8月12日までインドネシアで開催される東南アジアサッカー連盟AFF U16選手権に向けて、今月7月18日から29日まで代表候補合宿を開催、さらに10月の1日から9日まで同じインドネシアでAFF U16選手権予選が開催されることから、9月にも2度の合宿を予定していることが発表されています。

AFF U19選手権優勝が記憶に新しいU19/20代表は、9月14日から18日の日程で開催されるAFC U19選手権予選(モンゴル)に参加するため、今月末から8月にかけてと、9月の2回の合宿を予定しているということです。

U23代表は東南アジア競技大会通称シーゲームズは準決勝敗退、、AFC U23選手権はグループステージで敗退し、その責任をとる形でブラッド・マロニー監督が契約解除となり、現在は監督が不在です。また当初出場予定だった今年9月のアジア競技大会(中国)が来年に延期となり、当面は試合がないことから、新監督決定が最優先課題となりそうです。

AFCアジアカップ出場を決めた代表の次の目標は12月21日開幕のAFF選手権三菱電機カップ2022となりますが、その前には9月22日から25日の日程でタイ南部で開催されるという4ヶ国対抗に出場することが発表されています。中東と南米の代表チームも参加するということの大会は、格上チームとの対戦が少ないマレーシアにとってAFF選手権の前哨戦となりそうです。

7月21日のニュース
Mリーグが大改革を断行-来季は1部に日本人選手5名の可能性も

先日のこのブログでも取り上げた国内リーグMリーグ改革の具体的な内容が、リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLより正式に発表されています。MFLの公式サイトによると、「国内リーグを各チームがよりダイナミックに競い合うものにする」目的のもと、MFLの臨時総会でスーパーリーグとプレミアリーグ全チームの同意を得て、来季2023年リーグから実施される変更は、大きく分けて6つあります。

1)現行のスーパーリーグとプレミアリーグを再編成して一本化-18チーム編成のスーパーリーグを2023年より開始し、2024年以降は16チーム編成に

来季2023年シーズンは、現行の1部スーパーリーグ12チームと2部プレミアリーグ10チームを再編して新たなスーパーリーグとして暫定的に18チーム編成で開催し、2024年シーズン以降はこれを16チームに絞って開催していきます。
 また今季のプレミアリーグ9位と10位のチームは、3部リーグのM3リーグの1位、2位と入れ替え戦を行い、この入れ替え戦に勝利した2チームは来季のスーパーリーグでプレーしますが、M3リーグのチームが勝利した場合には、スーパーリーグのクラブライセンス資格を満たすことが条件の上でスーパーリーグ参加となります。

<解説>
 現行のチーム数ならば、本来は12+10=22チームとなる2023年シーズンのスーパーリーグですが、プレミアリーグ10チーム中,3チームはスーパーリーグのクラブ(JDT、トレンガヌ、スランゴール)のセカンドチームであり、1チームはマレーシアサッカー協会FAMが運営する育成目的のチームとなっていることから、残る6チーム(クランタン、クチンシティ、クランタン・ユナイテッド、PDRM、UITM、ペラ)全てが2023年シーズンのスーパーリーグに参入することになります。
 上の説明では今季のプレミアリーグ9位と10位のチームが入れ替え戦出場と書きましたが、スーパーリーグ昇格権があるのはこの6チームなので、正確にはこの中の下位2チームが入れ替え戦に出場します。
 また現在、スーパーリーグでプレーしている日本人選手は加賀山泰毅選手(サバ)だけですが、これに今季はプレミアリーグでプレーしている本山雅志選手、深井脩平選手(いずれもクランタン・ユナイテッド)、谷川由来選手(クチンシティ)、原健太選手(クランタン)の4選手が来季残留となれば、国内トップリーグに日本人選手5名が在籍する可能性もあります。

2)スーパーリーグ18チームのU23チームを対象としたリザーブリーグの開設

新たなスーパーリーグを構成する18チームには、U23チームの保持が義務付けられるとともに、このU23チームが出場するリザーブリーグが新たに発足します。
 現行のスーパーリーグとプレミアリーグの各チームには既にU21とU19のチームを持つことが義務付けられていますが、この年代の選手たちとトップチームの選手との実力差、経験差は大きいことから、その差を埋めるものとして設置されるのがリザーブリーグです。このリザーブリーグ設置は、トップチームでは出場機会が少ない若い選手により多くの試合出場機会と試合出場時間を作り出すことを目的としています。
 リザーブリーグでプレーするU23チームには、23歳以上の「オーバーエイジ選手」5名(外国籍選手を含む)の登録が可能です。ただしリザーブリーグの主旨であるマレーシア人選手の出場機会確保の目的から、ピッチ上では同時に起用できるのは外国籍選手2名を含む3名のオーバーエイジ選手のみとなります。

<解説>
現在の2部プレミアリーグには3つのセカンドチームが在籍していますが、どのチームにも4名の外国籍選手が存在します。これらのセカンドチームがプレミアリーグでプレーするのは、若い選手の育成目的よりも、外国籍選手を含めたトップチームの選手の調整の場、という性質が強いものです。
 今回のリザーブリーグ開設により、各チームの若いマレーシア人選手は試合出場時間を得やすくなる反面、これまでU23チームを持たなかったクラブにとっては、U23チームの設置が義務付けれたことにより、クラブの経営が圧迫され、それが理由となる給料未払い問題が発生しやすい土壌を作ることにならないか、という懸念の声もあります。

3)3部リーグ以下のセミプロ化に伴う再編成が終わるまでプレミアリーグは開催なし

1部スーパーリーグと2部プレミアリーグが一本化されることにより、プレミアリーグは当面開催されません。この休止期間を利用して、MFLは現在の3部リーグにあたるM3リーグ以下を統括するアマチュアフットボールリーグと協力して「クラブ育成プログラム」を発足させます。M3リーグと2部プレミアリーグとのクラブ間では実力差だけでなく、クラブ運営面でもその差が大きいことから、MFLはこのプログラムを通じて、M3リーグ以下のクラブのセミプロ化やプロ化を支援し、国内リーグのレベルの底上げを目指します。
 またM3リーグのクラブは来季以降もFAカップに出場します。

<解説>
今季のMリーグ3部、M3リーグ以下は、各クラブに外国籍選手や外国籍指導者との契約を禁止するなど、上部リーグとは異なる条件で開催されています。また一昨年からM3リーグをアマチュアとプロが混在するセミプロリーグ化する意向があることを明らかにしていますが、新型コロナを理由にこれが全く進んでいませんでした。
 今回の発表では、現在のM3リーグが将来の2部プレミアリーグに該当することから、プロリーグであるスーパーリーグとの間で行われる将来の入れ替え戦に耐えうるクラブの育成が急務となります。

4)外国籍選手は1チームあたり最大9名まで契約可能-ただしベンチ入り6名でピッチ上には5名まで

現行の規定では、スーパーリーグでは外国籍選手5名(国籍問わず3名+アジア1名+アセアン1名)、プレミアリーグでは同4名(国籍問わず3名+アジア1名)が可能ですが、プレミアリーグにセカンドチームを持つJDT、トレンガヌ、スランゴールはこの規定に基づき9名の外国籍選手を登録していた一方で、セカンドチームを持たない各クラブはスーパーリーグでは5名、プレミアリーグでは4名のみの登録が可能でした。この「不均衡」を解消するため、2023年シーズンからはスーパーリーグ各チームは最大で9名の外国籍選手の登録が可能になります。

<解説>
アジアサッカー連盟AFCは、2023/24シーズンからAFCチャンピオンズリーグACLでの外国籍選手枠拡大を発表しています。現行の4名(国籍問わず3名+アジア枠1名)から6名(国籍問わず5名+アジア枠1名)へとなることから、Mリーグもそれに近づけるために、現行の5名ベンチ入りから6名ベンチ入りへと変更していますが、その一方でマレーシア人選手の出場機会の確保を目的として、ピッチ上でプレーできるのは最大5名という数字は維持しています。
 また最大9名が登録可能になったことにより、外国籍選手を多く獲得するだけの 資金のあるチームとそうでないチームとの差が大きく現れそうです。

5)FAカップおよびマレーシアカップの開催方式の変更

AFCはACLの秋春制への移行を発表していますが、この変更に伴い、マレーシアカップおよびFAカップの開催方式の変更が検討されています。

<解説>
従来はリーグ戦終了後の8月以降に開催されてきたマレーシアカップの開催方式と開催時期が見直されます。マレーシアカップは、現行ではスーパーリーグ1位から11位までとプレミアリーグのセカンドチームを除いた上位5チームの合計16チームだけが出場する大会ですが、新たなスーパーリーグの上位16チームのみが出場するのか、スーパーリーグ全18チームによる大会となるのか。今後の発表を待ちたいと思います。ACLやAFCカップの日程と重なってしまうことを避けるために開催時期も変更になることは必至です。
 またスーパーリーグ各チームの試合数が現在の22試合から34試合となることで、リーグ戦と並行して行われてきたFAカップについても何らかの変更が実施されそうです。

6)U19チーム出場のユースカップとU21チーム出場のプレジデントカップの開催方式の見直し

MリーグのU19チームが出場とするユースカップと、U21チームが出場するプレジデントカップはマレーシアサッカー協会が運営するリーグ戦ですが、MFLはFAMに協力して、各年代別チームの試合数を増やすような 開催方式を提案していくということです。

*****

「国内トップリーグであるスーパーリーグが1チームあたり年間22試合では少なすぎる」というFIFAの「助言」をもとに動き出したMリーグ改革ですが、今回の改革により試合数は確かに増えるものの、その質が担保できるのかという疑問は残ります。トップリーグのチーム数が増えることで、クラブ間の格差もより明らかになり、資金力が豊富なチームはさらに有利に、そうでないチームはさらに不利になる改革に思えます。
 例えば資金力のあるJDTがリーグ10連覇、20連覇を続け、ACLでも結果を残すようになる可能性がある反面、下位のクラブは降格しない程度に勝ち星を重ねるといった国内リーグにもなりかねず、トップリーグがその中で二極化するといった事態も考えられます。
 ボラセパマレーシア的には不安しか感じられないこの改革ですが、この改革によってMリーグがより多くのファンを惹きつけ、また商業的にも成功するのかどうかはMFLと各クラブの努力、そしてそれを支える私たちファンにかかっています。

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Mリーグ1部スーパーリーグ
2022年シーズン第11節結果とハイライト映像(2)

変則日程が続くMリーグ1部スーパーリーグ第11節の残り4試合が行われています。今節最大の注目は首位攻防戦となったサバ対JDTでしたが、首位攻防戦にふさわしい熱戦は最後にドラマが待っていました。
(各試合のハイライト映像は、MFLの公式YouTubeチャンネルより)

2022年7月15日(金)@リカススタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバ 1-2 JDT
⚽️サバ:パク・タエスー(23分)
⚽️JDT:フェルナンド・フォレスティエリ2(26分、90+5分)
🟨サバ(3):サディル・ラムダニ、パク・タエスー、ジョゼ・エンバロ
🟨JDT(3):マシュー・デイヴィーズ、レアンドロ・ヴァレスケス、シェーン・ローリー
MOM:フェルナンド・フォレスティエリ(JDT)
 リーグ1位JDTを2位サバがホームに迎えた首位攻防戦は、サバが勝てば順位が入れ替わるため、両チームとも試合開始から闘志を前面に出した試合となりました。
 今季9試合で13ゴールとリーグ得点王争いを独走するJDTのベルグソン・ダ・シルヴァは、7月2日のマラッカ戦で足首を痛めて途中退場し、試合も引き分けに終わっています。そのベルグソン選手はこの試合はベンチ外となっており、JDTはエース不在でこの試合に臨みました。
 しかし試合開始からJDTはサバゴールに襲いかかり、開始直後にはレアンドロ・ヴァレスケス、さらにはアリフ・アイマンらがシュートを放ちますが、サバGKカイルル・ファーミの好守もあり試合は0-0のまま進みました。
 一方のサバも守勢に回ることなくJDTゴールを狙い、それが功を奏して23分にパク・タエスーが相手DFのクリアミスを拾ってシュート。このゴールでサバが先制します。しかしその3分後、アリフ・アイマンからのパスを受けたフェルナンド・フォレスティエリがゴールを決め、JDTが直ちに同点に追いつきます。フォレスティエリ選手をフリーにしてしまったサバDF陣の痛恨のミスでした。
 前半を1-1で折り返すと、後半は試合が膠着状態となり、ロスタイムも5分と発表され、このまま引き分けかと思われましたが、90+5分にJDTがサバのペナルティエリアのすぐ外でフリーキックを得ます。デッドボールスペシャリストのフォレスティエリ選手がゴール右隅に放ったキックは、これに反応したGKカイルル・ファーミをすり抜けるようにゴールに吸い込まれ、JDTが今季の天王山とも言える試合を制しています。
 サバの加賀山泰毅選手は先発して87分に交代しています。

2022年7月15日(金)@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディンスタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 2-1 クダ
⚽️トレンガヌ:クパー・シャーマン(13分)、マヌエル・オット(57分)
⚽️クダ:アザムディン・アキル(90+1分)
🟨トレンガヌ(1):スハイミ・フシン
🟨クダ(3):アクマル・ザヒル、カミル・アクマル、カイルル・アズリン・カザリ
MOM:アリフ・ザカリア(トレンガヌ)
 7月6日のマレーシアFAカップ2回戦の再戦となったこのカードは、9日前と同様にトレンガヌが管を破っています。
 昨季はクダでプレーしたクパー・シャーマンのゴールで先制したトレンガヌは、後半にマヌエル・オットが追加点となるゴールを決めて、4位に浮上しています。
 一方のクダは、AFCカップのグループステージを突破し、チームの調子が上向き始めたかと思われたタイミングでアンドラ出身のセンターバックのマーク・ヴァレスがケガのため手術を受けることとなり、今季中の復帰が絶望と発表されて以来、この日の敗戦で同一カード2連敗となっています。2019年に就任して以来、2019年4位、2020年2位、2021年2位とクダを着実に成長させてきたアイディル・シャリン監督が、この苦境をどう乗り越えるかに注目です。

2022年7月16日(土)@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
KLシティ 0-0 PJシティ
🟨KLシティ(3):モハマド・ファウジ、アリフ・シャキリン、ハディン・アズマン
🟨PJシティ(2):K・カナン、ザイナル・アビディン・ジャミル
MOM:ジャンカルロ・ガリフオッコ(KLシティ)
 今季なかなか調子が上がらず、黒星が先行する両チームの対戦はスコアレスドローに終わっています。

2022年7月16日(土)@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリンジャヤ)
スランゴール 2-0 ペナン
⚽️スランゴール:シャーレル・フィクリ(73分)、シャヒール・バシャー(79分)
🟨スランゴール(2):ヤザン・アル=アラブ、ムカイリ・アジマル
🟨ペナン(1):スクリ・ハミド
🟥ペナン(1):スクリ・ハミド(🟨x2)
MOM:シャヒール・バシャー(スランゴール)
 大勝するかと思えば、大敗するなど、負け越してはいないものの、スランゴールも今季調子が上がらないクラブの一つ。そのスランゴールが代表復帰を目指すシャーレル・フィクリとU23代表でのレギュラー定着を目指すシャヒール・バシャーの「崖っぷちコンビ」の活躍で、未だ今季1勝と最下位のペナンに完封勝ちしています。

2022年シーズン スーパーリーグ順位表(第11節終了時)

チーム勝点
1JDT108202762126
2SAB117131810822
3NSE12552148720
4TRE9513129316
5SEL104332317615
6KLC114251618-214
7KDA104241419-514
8MEL103341112-112
9PJC102441218-610
10SWU113171126-1510
11SRP112271320-78
12PEN111461220-87
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド

2022年シーズン スーパーリーグ 得点ランキング(第11節終了時)

ゴール数選手名所属
111ベルグソン・ダ・シルヴァJDT
210カイオンSEL
39フェルナンド・フォレスティエリ
47ロナルド・ンガKDA
55エラルド・グロンNSE
5ダレン・ロックPJC
5マヌエル・イダルゴSRP
5ヒラル・エル=ヘルウェPEN
KDA-クダ・ダルル・アマン、NSE-ヌグリスンビラン、PJC-PJシティ、SEL-スランゴール、KLC-KLシティ、TRE-トレンガヌ、SRP-スリ・パハン、PEN-ペナン、SWU-サラワク・ユナイテッド、SAB-サバ、MEL-マラッカ・ユナイテッド