2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ<br>第1節の結果とハイライト映像<br>・待望のリーグ開幕も新規導入のVARが5試合中2試合で機能せず

 5月11日から12日にかけて、今季2024/25シーズンのマレーシアスーパーリーグ(MSL)第1節が開催されています。
 5月10日に予定されていたジョホール・ダルル・タジム(JDT)対スランゴールFCの試合は、その数日前に酸をかけられる事件にあったファイサル・ハリム所属のスランゴールFCが「安全上の理由」で試合の延期を求めたものの、MSLを主催するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)がこれを拒否。スランゴールFCは結局、試合出場を辞退したためこの試合は中止となり、JDTが3−0での勝利と勝点3を獲得する事態となっています。
 なお今季のMSLは13チームで編成されており、第1節は佐々木匠選手が所属するヌグリスンビランFCの試合はありませんでした。
(試合のハイライト映像は全てMFLの公式YouTubeチャンネルから)

MSL2024/25第1節
2024年5月11日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 0-1 クダ・ダルル・アマンFC
⚽️クダ:シャフィク・アフマド(1分)
🟨PDRM(0)、🟨クダ(1)
MOM:シャフィク・アフマド(クダ・ダルル・アマンFC)

 前日のJDT対スランゴールFCが中止となり、図らずとも今季のリーグ開幕戦となったこの試合は、開始1分で先制したクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)がその1点を守り切って今季初勝利を挙げています。
 クダFCは、昨季の給料未払い問題の解決が遅れ、今季開幕前に勝点3を剥奪される処分を科せられています。さらに今季の胸スポンサー予定だった企業がスポンサー契約を解除したことで、この試合はプレシーズンユニを着て試合に臨み、さらマレー半島北部にあるクダ州から400kmをバスで移動するなど開幕からいきなり資金不足の様相を呈しています。
 この試合はスタジアムで観戦しましたが、開始30秒(記録上は開始1分)に左サイドのMFソニー・ノルデから出たクロスをFWシャフィク・アフマドがダイレクトでオールへ蹴り込んでクダFCが先制しました。クダFCのリードで前半を折り返すと、試合開始から降り続いていた雨は後半に入ると激しくなり、ピッチ上には水が浮き、ボールが止まってしまう場面も多くなるなど試合展開は停滞し、開始1分のゴールであげた1点でクダFCが逃げ切り、第1節ではやくも勝点を0に戻しています。
 PDRM FCは新加入のイフェダヨ・オモスイと鈴木ブルーノのツートップになかなかボールが繋がらず、後半はシャーレル・フィクリを投入してFW3枚で同点を狙いましたが、劣悪なピッチの状況もあり、チャンスを作ることもほとんどできませんでした。
 PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発してフル出場しています。

MSL2024/25第1節
2024年5月11日@MPTスタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 1-0 クランタン・ダルル・ナイムFC
⚽️パハン:マヌエル・イダルゴ(64分)
🟨パハン(0)、🟨クランタン(1)
MOM:マヌエル・イダルゴ(クダ・ダルル・アマンFC)

 代表のキム・パンゴン監督が観戦に訪れたことが報じられたこの試合は、本来の本拠地であるダルル・マクモル・スタジアムのピッチ張り替えが決まったことで、本来のホームからおよそ140km離れたMPTスタジアムで開催されています。
 試合はJDTから期限移籍中のマヌエル・イダルゴがゴール正面で得たフリーキックを直接ゴールインさせたスリ・パハンが虎の子の1点を守り切って勝利しています。
 代表のキム・パンゴン監督が観戦に訪れたことが報じられたこの試合は、本来の本拠地であるダルル・マクモル・スタジアムのピッチ張り替えが決まったことで、本来のホームからおよそ140km離れたMPTスタジアムで開催されています。
 試合はJDTから期限移籍中のマヌエル・イダルゴがゴール正面で得たフリーキックを直接ゴールインさせたスリ・パハンが虎の子の1点を守り切って勝利しています。 
 またこの試合は、技術的なトラブルからVARが使用できなかったようで、VAR導入初年度の第1節に聞くには不安なニュースです。

MSL2024/25第1節
2024年5月11日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 3-1 ペラFC
⚽️トレンガヌ:ヌリーロ・トゥクタシノフ(6分)、シヴァン・ピレイ(67分OG)、チュクゥウ・ナブイケ(81分)
⚽️ペラ:ルチアーノ・グアイコチェア(61分PK)
🟨トレンガヌ(2)、🟨ペラ(1)、🟥ペラ(1):ルイス・エンリケ・モッタ
MOM:ヌリーロ・トゥクタシノフ(トレンガヌFC)

 ホームのトレンガヌFCがペラFCに一度は追い付かれたもののを、相手のOGなどもあり今季初勝利を挙げています。
 5月3日に強盗傷害事件で頭を4針縫うケガを負ったアキヤ・ラシド、さらには昨季のチーム得点王イヴァン・マムートなど主力4名を欠いたトレンガヌFCは、昨季は1ゴールのヌリーロ・トゥクタシノフがペナルティーエリアの外がゴールを決めて先制します。
 トレンガヌFCが1点のリードを保って前半を折り返すと、後半の61分にはトレンガヌFCのマヌエル・オットがペラの10番、FWイ・テミンをペナルティエリアで倒してPKを与えてしまいます。これをルチアーノ・グアイコチェアが決めてペラFCは同点に追いつきますが、その6分後にはシヴァン・ピレイのOGで失点、さらに昨季在籍したPDRMのU23チームでは、U23リーグのMFLカップでリーグ2位の16ゴールを挙げているチュクゥウ・ナブイケに3点目のゴールを許して敗れています。

MSL2024/25第1節
2024年5月12日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 0-0 ペナンFC
🟨サバ(1)、🟨ペナン(1)
MOM:ラファエル・ヴィトール(ペナンFC)

 プレシーズンマッチでケガを負い、出場が危ぶまれていたラモン・マチャドとサディル・ラムダニのFWコンビが先発XIに名を連ねたサバFCは、シュート数でもペナンFCno5本(枠内1本)に対して15本(同6本)と優位に試合を進めながら、ホームでスコアレスドローに終わっています。
 なおこの試合も前日のスリ・パハンFC対クランタン・ダルル・ナイムFC同様、「技術的な理由」でVARの使用ができなかったようです。

MSL2024/25第1節
2024年5月12日@KLフットボール・スタジアム
KLシティFC 1~1 クチンシティFC
⚽️KLシティ:パウロ・ジョズエ(12分)
⚽️クチンシティ:ペドロ・エンリケ(19分)
🟨KLシティ(0)、🟨クチンシティ(2)、🟥KLシティ(1):アドリアン・ルドヴィッチ
MOM:ブレンダン・ガン(KLシティFC)

 KLシティFCは、12分に先制ゴールを決めたパウロ・ジョズエが代表でチームメートのファイサル・ハリムの得点後のパフォーマンスを真似てみせるなど、良い雰囲気でスタートします。その直後にはクチンシティFCもゴール前の混戦から谷川由来選手のゴールで追いついたかと思われましたが、VARのチェックが入り、このゴールは認められません。それでも19分にペドロ・エンリケのゴールでクチンシティが同点に追いつきます。
 その後は両チームともゴールを挙げることができず引き分けていますが、KLシティでは新加入の高速ウィング、ジョヴァン・モティカ、クチンシティではチェチェ・キプレ、ジョーダン・ミンターのFWコンビ、そして「未完の大器」ダニエル・アミールが次戦以降に期待を持たせるプレーを見せた試合でした。
 クチンシティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第1節終了)

順位チーム勝点
1JDT13100303
2TRE13100312
3SRP13100101
4KLC110101 10
5KCH11010110
6SAB11010000
7PEN11010000
8KDA*10100101
9NSE00000000
10PDRM1000101-1
11KDN1000101-1
12PRK1000131-2
13SEL1000103-3
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは開幕前に勝点3剥奪処分を受けています。

5月12日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムは手術後の回復期で面会謝絶に<br>・開幕戦出場辞退のスランゴールFCはMFLの寛大な処分を望む<br>・スリ・パハンFCは本拠地の芝をバミューダグラスに張り替え決定<br>・今季はリーグ戦61試合が国営放送により地上波で放映

いきなりサッカーとは関係ない話題ですが、ペラ州イポーで開催されていた男子ホッケーのスルタン・アズラン・シャー・カップ(SASC)に出場していた日本代表がパキスタン代表を破って悲願の初優勝を飾っています。かつては英国の植民地だったこともあるマレーシアではホッケーは盛んなスポーツで、この国際招待大会のSASCも今回が30回目となっています。今大会が6度目の出場となった日本代表は、参加6チーム総当たりで行われるグループリーグを4勝1分としてトップ通過していました。グループリーグ首位と2位が対戦する決勝へは今大会が初進出で、決勝で対戦したパキスタンとは2−2でレギュレーションタイムを終えた後、サッカーのPK戦に当たるSO(シュートアウト)戦で4-1と勝利して初優勝を果たしています。2022年の前回大会では3位決定戦で同じ相手に敗れていただけに、リベンジを果たしたことにもなります。ホッケー日本代表の皆さん、優勝おめでとうございます。

酸をかけたれたファイサル・ハリムは手術後の回復期で面会謝絶に

5月5日に酸をかけられ第4度の火傷を負って入院中の代表FWファイサル・ハリムは、入院後3度目の手術となる皮膚移植手術を受けたことが報じられています。そして現在は術後の回復期間で厳重な監視が必要なことから、今後2週間は面会謝絶となると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

この記事では、スランゴール州青年スポーツ委員会のナジワン・ハリミ委員長の話しとして、手術後のファイサル選手の具合は安定しているものの、皮膚移植手術後は完全隔離した上で、回復状況を注意深く見守ることが必要だと説明しています。

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また別の記事では、ファイサル選手がペナン州スブラン・プライのムンクアン・ティティ村出身であることから、ペナン州政府はファイサル選手の父親のアブドル・ハリム氏に3000リンギ(およそ10万円)を手渡したことが報じられています。

開幕戦出場辞退のスランゴールFCはMFLの寛大な処分を望む

5月5日のファイサル・ハリムの事件を受け、スランゴールFCは5月10日に予定されていた今季2024/25シーズン開幕戦兼スンバンシー・カップについて「安全上の問題」があるとして延期をリーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)に求めましたが、MFLは試合当日に警官を増員するなど安全が確保されているといて、これを却下。それを受けたスランゴールFCは最終的に出場辞退を決定しました。この結果、対戦相手のジョホール・ダルル・タジム(JDT)が規定により3-0でこの試合の勝者とされ、スンバンシー・カップの8年連続優勝と、開幕戦の勝点3が与えられたことを、MFは公式サイトで発表しています。

さらにこの発表が行われた際には、同時に出場を辞退したスランゴールFCへの処分は理事会での協議を経て、近日中に発表されることをMFLは発表しています。処分内容は、勝点の剥奪や罰金などが課せられるのではと考えられていますが、スランゴールFCのシャーリル・モクタル技術委員長は、寛大な処分を期待していると話しています。

これを報じたブルナマの記事ではシャーリル氏は、「我々は安全に関する不安から出場を辞退したが、同じサッカー界にいるものとして、MFLには我々に対して厳しい処分を与えないことを望んでいる。」と話しているということです。

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先日の記事でも取り上げた通り、後見人でもあるスランゴール州スルタンの指示を受けて出場辞退を決定したスランゴールFCは、開幕戦延期を求めた時点では「安全上の理由」を挙げていました。これに対し、MFLや試合が行われる予定だったジョホール州の警察、さらには警察庁長官までが警官の増員などで安全を確保することを約束しましたが、スランゴールFCはそれでも出場辞退を選んでいます。その決定を行なった以上、MFLがどんな処分を科そうと、スランゴールFCはそれを甘んじて受け入れるべきだと思います。その覚悟がないまま出場辞退を選択していたのだとしたら、考えが甘いと指摘されてもしょうがないようにも思えます。噂では今季出場が決まっているACL2への出場権剥奪なども聞こえてきますが、もし、そうなることを恐れているのであれば、正直、情けないとすら感じます。

スリ・パハンFCは本拠地の芝をバミューダグラスに張り替え決定

スリ・パハンFCの本拠地、パハン州クアンタンにあるダルル・マクモル・スタジアムのピッチは、マレーシアでは一般的なカウグラス(アカツメクサ)でしたが、この度、バミューダ芝への張替が行われることが決定したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

マレーシア政府青年スポーツ省(KBS)は、マレーシア各州に対して、50万リンギ(およそ1600万円)の補助金を提供する条件で州の代表的なスタジアムのピッチをバミューダ芝などに張り替えることを求めています。しかし、従来のカウグラスはその管理にほとんど手間がかからない一方で、バミューダ芝などに張り替えると、芝そのものの管理に加え、ピッチ下の排水設備の改善などで、現在以上に費用がかかることが補助金を受け取ることを躊躇している州が少なくなく、マレーシアスーパーリーグ(MSL)が開催されるスタジアムの中で芝のピッチとなっているのはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のスルタン・イブラヒム・スタジアムと、トレンガヌFCのスルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアムだけです。なおKBSの補助金については、ペラ州とクダ州が受け取ることを表明しています

ピッチ張り替え決定を発表したパハン州青年スポーツ委員会のファジル・カマル委員長は、政府による補助金と張り替え及び管理費用との差額120万リンギ(およそ4000万円)を州予算に計上したことを発表しています。今回の決定についてファジル委員長は、今季2024/25シーズンのMSLがパハン州が面するマレー半島東海岸のモンスーンの季節に当たる12月から1月かけて開催されることを理由に挙げています。「もしモンスーンの季節中にカウグラスのピッチで試合をすれば、大雨が降った際にはピッチは水田のようになってしまい、日程の再編などが必要となる恐れがある。しかしバミューダ芝は水はけも良く、悪天候での使用にも耐えうる。」と説明したファジル委員長は、1973年開場のダルル・モクタル・スタジアムでピッチ張り替え工事が行われる間は、ホームゲームはクアンタンからおよそ140km離れた収容人数1万人のMPTスタジアム(通称テメルロー・スタジアム)で開催することも発表しています。

今季はリーグ戦61試合が国営放送により地上波で放映

マレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)はマレーシア国営放送局のラジオ・テレビ・マレーシア(RTM)が今季2024/25シーズンのMFL主催試合61試合を生中継することを発表しています。、

MFLの発表によれば、61試合の内訳はMSLが52試合、FAカップ8試合、そしてマレーシアカップ決勝となっています。これらの試合はRTMのチャンネル、TV OkeyとSukan RTMで見ることができる他、RTMのインターネット配信サイトRTM Klikでもストリーム配信されるということです。

昨今のサッカー放送の御多分に洩れず、マレーシア国内でもケーブルや衛星の有料チャンネルあるいは有料のストリーム配信が主流になっており、そういった契約を結ばない限りは国内リーグをスタジアム以外で観戦することは難しくなっています。

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無料でサッカーの生中継が見られない場合、マレーシアでは屋外にテレビやスクリーンを設置している屋台で見るファンも少なくありません。国内サッカーファンの大半はマレー系のイスラム教徒なので、紅茶やコーヒーを飲みながら屋外の屋台で友人らとサッカー観戦というはマレーシアのどこででも見られれる風景です。

5月11日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムの皮膚移植手術後の経過は良好<br>・クダFCは胸スポンサーが決まらずプレシーズンユニ着用で開幕戦へ-6時間かけてのバス移動も含め早くも資金不足の兆候?<br>・国家サッカー選手育成プログラムの新たなTDにオーストラリア出身のオスカー・ゴンザレス氏就任

いよいよ今日5月11日からマレーシアスーパーリーグ(MSL)の今季2024/25シーズンの公式戦が始まります。日本人選手では鈴木ブルーノ選手が所属するPDRM FCは、本日5月11日に今季から本拠地として使用するスラヤン・スタジアム(MPSスタジアム)にクダ・ダルル・アマンFCを迎え、谷川由来選手が所属するクチンシティFCは明日5月12日にアウェイのKLシティFC戦に臨みます。今季からヌグリスンビランFCに加入した佐々木匠選手は、今季のMSLが13チーム編成となっているため、今節は試合がありません。

昨日予定されていたリーグ開幕戦を兼ねたスンバンシー・カップ(前年のリーグチャンピオンとマレーシアカップチャンピオンが対戦するいわば「スーパーカップ」)は、酸を浴びせられたファイサル・ハリムが所属するスランゴールFCがMFLに対して安全上の理由から延期を求めたものの、試合当日の警官増員で安全が確保されたとして、リーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)はこれを拒否。それを受けてスランゴールFCは出場を辞退しました。この結果、MFLは公式サイト上でスンバンシー・カップの中止を発表していました。またこの試合は今季2024/25シーズンの開幕戦も兼ねており、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は3−0での勝利と勝点3が与えられることも発表していました。

MFLの公式サイトでは、スンバンシー・カップは「中止」とされていたので、今季は記録に残らないのかと思っていましたが、「中止」の意味を間違えていたようで、リーグ戦の勝利だけでなく、スンバンシー・カップもJDTの勝利という扱いになっているようです。JDTは試合が予定されていた自身のホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムに選手が集まり、JDTとしては27個目の国内タイトルとなるスンバンシー・カップ「優勝」を祝ったという報道が出ています。

酸をかけられたファイサル・ハリムの皮膚移植手術後の経過は良好

5月5日に酸をかけられて以来、入院中の代表FWファイサル・ハリム(スランゴールFC)は、昨日(5月9日)の午後に3度目の手術となる皮膚同種移植手術を受けたことをマレーシアの通信社ブルナマが報じています。この記事によると、ファイサル選手の手術後の経過は順調で、既に病室内では歩き始めており、できるだけ早く帰宅したいとも話しているようです。

ファイサル選手を見舞ったスランゴールFC理事会のシャリル・モクター理事は、ファイサル選手はベルギーから輸入された皮膚を使用した皮膚同種移植手術を受け、3時間に及ぶ手術後は移植された皮膚に対して良好な反応を示しいると話しています。なお、今回の皮膚移植手術は腕と肋骨に行われ、新たな皮膚が生着するために十分な時間を取ったのち、更なる手術も予定されているということです。

また今後、医師の許可が得られれば現在、滞在している集中治療室(ICU)から、より重篤度が低い患者のための高度治療室(HDU)へ1週間ほどで移される可能性が高いとも話しています。

クダFCはユニフォームの胸スポンサーが未だ決まらず、プレシーズンユニ着用で今季初戦に臨む-開幕戦へ6時間かけてのバス移動は早くも資金不足の兆候?

本日、PDRM FCと対戦するクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)は、開幕まで1ヶ月となるまで昨季の給料未払いが解決できず、あわや今季のスーパーリーグ出場停止か、という状況でしたが、なんとかそれも解決し、プレーシーズンマッチを行い、チームを仕上げてきました。しかし、いよいよ開幕という時点で今季ユニフォームの胸スポンサーから約束されていた資金提供を受けられなくなっているようです。

クダFCはクラブ公式SNSで声明を発表し、既に某企業から口頭で(!)ユニフォームの胸スポンサー契約のオファーを受けていたが、その企業が契約締結の最終段階で経営状況悪化に直面した結果、この企業とは胸スポンサー契約を結ばないことを選択したと説明ています。またクダFCは現在も新たな胸スポンサーを探しているということです。

この状況により、クダFCは今季のユニフォーサプライヤー、ALスポーツ社と協議し、胸スポンサーが確定するまでは今季のスーパーリーグで使用する公式ユニフォームを発表せず、少なくとも本日の第1節から数試合はプレシーズンで使用した特別ユニフォームをリーグ戦で着用することを発表しています。

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このニュースとは別ですが、クダFCはホームがあるマレー半島北部のクダ州から今日の試合があるスランゴール州までの450km近い距離を6時間かけてバスで移動してきたことも報じられています。クダFCは懸念したファンからの問いかけに対してクラブ公式SNSでこのバス移動について「フライトスケジュールの変更を避けるため」という意味不明な理由を挙げて説明しています。この長距離をバスで移動するのは国内トップリーグのクラブとしてはあまりにも選手の疲労を考えていないと思いますが、クラブSNSが本当のことを言っているのか、胸スポンサーが見つからないことでチームの財政に再び問題が発生しているのかは、もう少し見守る必要がありそうです。

国家サッカー選手育成プログラムの新たなTDにオーストラリア出身のオスカー・ゴンザレス氏就任

国家サッカー選手育成プログラム(NFPD)はマレーシアサッカー協会(MFL)と青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会(NSC)が共同で運営するプロサッカー選手育成のための国家プログラムですが、このNFPDの新たなテクニカル・ディレクター(TD)にオーストラリア出身のオスカー・フランシスコ・ゴンザレス氏が就任したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

この記事によるとNSCはゴンザレス氏を国内トップのエリートアカデミー、モクタル・ダハリ・フットボール・アカデミー(AMD)のTDを務めるという決定を、ハンナ・ヨー青年スポーツ相が議長を務めた委員会で決定したと伝えています。

NSCによると、マレーシアサッカー協会(FAM)は昨年12月にNFDPのTDの候補者4名と面接を行った結果、オーストラリアサッカー協会のコーチ教育リーダーを務めてたゴンザレス氏の採用をFAMが提案し、NSCがこれに同意したと説明しています。

FAMはハミディン・アミン会長、S・シヴァスンダラム副会長、ノール・アズマン事務局長、スコット・オドネルTDらによる選定委員会が面談を行ったとしています。

AFCのプロコーチング・ディプロマを持つゴンザレス氏は、ニューサウスウェールズ州でエリート育成プログラムを20年以上にわたって手掛けた経験がある他、

彼はまた、中国1部の南通支雲足球倶楽部(ナントン・ジーユンFC)、ニューサウスウェールズ州サッカー協会、オーストラリア1部Aリーグのセントラル・コースト・マリナーズなどでも指導経験があるということです。

5月10日のニュース<br>・スランゴールFCの出場辞退によりMFLはスンバンシー・カップの中止を決定<br>・スランゴール州スルタンがスランゴールFCのスンバンシー・カップ出場辞退を支持<br>・東南アジアクラブ選手権の組み合わせ決定ーKLシティはACL経験を持つ3チームと同じ「死の組」に

昨夜の大陸間プレーオフでギニア(アフリカ4位)に惜敗したインドネシアの長かった冒険が終わりました。まさかこの大陸間プレーオフまで試合が続くとは思っていなかったのか、この試合はU23アジアカップのメンバーから主力が抜ける苦しい布陣で臨むことになりました。しかし、この経験は協会にとっては重要な経験となったはず。これでまたマレーシアはインドネシアに話されてしまったなぁ。

マレーシア国内に目を転じると、本日予定されていた2024/25シーズン開幕戦を兼ねていたスンバンシー・カップがスランゴールFCの出場辞退により中止になりました。今日のニュースはこの話からです。

スランゴールFCの出場辞退によりMFLはスンバンシー・カップの中止を決定

国内リーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)は公式サイトで、本日5月10日に予定されていたスンバンシー・カップ2024についてスランゴールFCが出場を辞退したために中止とし、またこの試合が今季2024/25シーズン開幕戦も兼ねていたことから、ジョホール・ダルル・タジムFC (JDT)を開幕戦の3−0の勝者として勝点3を与えることを発表しています。

5月5日に起こったファイサル・ハリムが酸をかけられた事件を受け、スランゴールFCは「安全上の理由」からこのスンバンシー・カップの延期をMFLに求めていましたが、ジョホール州警察が警官を増員して警備を行うなど対策は十分にとられているとして、MFLはスランゴールFCの試合延期申請を却下していました。

MFLによる発表では、スランゴールFCCの出場辞退にに関連する問題は、さらなる検討のためにMFLの取締役会で議論されることも明らかにしています。

スンバンシー・カップ(スンバンシーはマレーシア語で「貢献」の意味)は、英国のチャリティー・シールド(現FAコミュニティー・シールド)を模して1995年から始まったカップ戦で、前年のリーグチャンピオンとマレーシアカップチャンピオンが対戦する「スーパーカップ」です。昨シーズンはJDTがリーグ、マレーシアカップ、FAカップ全てに優勝する国内三冠を達成していることから、今回は昨季リーグ2位のスランゴールFCがJDTと対戦することになりました。

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今回の一件で明らかになったのは、スンバンシー・カップはリーグ戦とは切り離して行うべき、ということです。JDTのホームで行われる今回のスンバンシー・カップは、ファイサル選手の事件の前から不穏な空気になっていました。手始めには、スランゴールFCから申請がなかったという理由でJDTがアウェイサポーター向けチケットを発売しないと発表したことでした。JDT主催のリーグ戦ならまだしも、このカップ戦はMFL主催試合であるべきで、チケットの販売についてもJDTではなくMFLが決定すべきことでした。(しかしMFLはこれについては公式コメントを出しませんでした。)結果として、スランゴールサポーターがいない試合を、自分たちの士気が上がらない中、メンタルを傷つけてまでやる必要がないとスランゴールFCが判断したのだとしたら、JDTの自業自得と言ったら言い過ぎでしょうか。

スランゴール州スルタンがスランゴールFCのスンバンシー・カップ出場辞退を支持

スランゴールFCは公式SNSに、クラブの後見人(パトロン)でもあるスランゴール州スルタンのスルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下による声明を掲載し、殿下が本日5月10日に行われる予定だったスンバンシー・カップ2024の出場を辞退するというセランゴール FCの決定を承認し、全面的に支持しました。

また殿下は、マレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)がセランゴールFCから公式に文書で出されていた試合延期の要求を拒否したことに対して失望も表明しています。セランゴール FCの後見人として、殿下は、最近、選手やスタッフに関わる生命の危機に関するいくつかの事件が発生した後、セランゴールFCが、2024年スーパーリーグの開幕戦も兼ねるこのスンバンシー・カップに出場しないのは、時宜に適っていると考えているとも述べて、現時点でのクラブの最優先事項は、カップを勝ち取ることではなく、選手たちの命と安全だと述べています。

さらに殿下は、安全上の問題だけでなく、ファイサル・ハリムへの酸攻撃事件の影響を受けて精神的に動揺しているチームの士気も考慮すべきだとし、さらにスポーツにおけるあらゆる形態の暴力と戦う連帯を支持しているとも述べています。

スルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下は、今回のように選手の命に関わる事件の重大さは、これまでの事件とは異なることを理解して欲しいと強調し、さらに、この事件が試合の日程に非常に近い時期に発生したことも考慮に入れるべきだとのべています。またセランゴール FCは、出場辞退という決定に伴ういかなる措置にも対応する準備ができていると強調しています。

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スルタンとはイスラム教国の特定の地域の政治を司る支配者のことを指します。マレーシアのスルタンは王家の血を引くマレー人の男性に限定され、現在はプルリス、クダ、クランタン、トレンガヌ、パハン、ペラ、スランゴール、ヌグリスンビラン、ジョホールの9州にスルタンがいます。(ただし、、ペルリス州ではスルタンと呼ばずにラジャ、ヌグリスンビラン州ではヤン・ディ・プルトゥアン・ブサルと呼ばれています。)現在のマレーシアの政治の仕組みでは。政治的な権力はないものの、スルタンは自州内のイスラム教徒の長であり,イスラム教徒であるマレー人の保護者でもあります。このためスルタンの発言は非常に重く、その発言に批判的な内容を述べれば不敬罪などに問われることもあります。

今回、スルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下が発言したのは、相手のJDTのオーナーがジョホール州スルタンの長子、皇太子のトゥンク・イスマイル殿下であることとも関係しているでしょう。皇族に物申せるのは皇族だけということです。

個人的には今回のスルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下の声明で触れられていた「精神的に動揺しているチームの士気も考慮すべき」という部分に触れているが素晴らしいと思いました。「安全上の理由」での出場辞退なら、警備を増員したので心配無用と却下されることもありますが、精神面が理由の辞退では受け入れられないとしても、反論されることはありません。スランゴールFCもMFLに延期の申請をする際に安全上の理由に加えてこの精神面での理由も明言していれば、別の結果になっていたのではないかという気もします。

スランゴールFCを過度に敵視している印象が強いJDTは、辞退を決めたスランゴールFCに対し、しつこいほどの対戦要求を繰り返しています。今回のスンバンシー・カップでスランゴールFCを破り、現在は8回で並んでいる優勝回数でスランゴールFCを抜き、さらに煽りたかったのだろうなと思います。JDTが強いことは国内サッカーファンなら誰もが分かっているのだから、もう少し大人の振る舞いをしても良かったとも思います。今回のスンバンシー・カップもスランゴールFCに対して思いやりを見せ、敢えてJDTから試合の延期を持ちかけていれば、JDTの株も上がり、アンチの多くもJDTを見直していたでしょう。

東南アジアクラブ選手権の組み合わせ決定ーKLシティはACL経験を持つ3チームと同じ「死の組」に

2024/25シーズンのアセアン(東南アジア)クラブ選手権、通称ショッピー・カップの組み合わせ抽選が昨日5月9日にベトナムのホーチミンで行われ、マレーシアから出場するトレンガヌFCはA組、KLシティFCはB組に振り分けられています。今回の大会にはベトナム、タイ、インドネシア、マレーシアからはそれぞれ2チームが、フィリピンとシンガポールからはそれぞれ1チーム出場するほか、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーのチームによるプレーオフを経て出場する2チームの合計12チームが出場します。

KLシティFCが入ったB組は、昨季のタイ1部チャンピオンでマレーシア代表DFディオン・コールズも所属するブリーラム・ユナイテッドFC、シンガポールの昨季王者、ライオン・シティ・セイラーズFC、そしてフィリピン1部でリーグとカップの二冠を達成しているカヤ・イロイロFCと、昨季のACL出場クラブが3チームも入った「死の組」になっています。しかもこの他には、先月終わったばかりのインドネシア1部リーグを首位で突破した元JDTの廣瀬慧選手を擁するボルネオ・サマリンドFC、そして昨季のベトナム王者のハノイ公安FCと各国の強豪、計6チームで構成されています。

マレーシアのスポーツメディア、フラッシュ・スカンの取材に対してKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOは「A組と比較すると、自分たちは明らかに死の組に入ったが、この大会でプレーできることを誇りに思い。相手が誰であっても気にしない。また自分たちが2022年のAFCカップで、ASEANゾーンで勝利し、決勝に進出して2位になった事実は、選手たちの経験において重要な役割を果たしている。」と述べ、ミロスラフ・クルヤナック監督はグループの上位2位以内に入ってノックアウトステージに進むことができると自信を持っていると話しています。

シンガポールのECサイト「ショッピー」が冠スポンサーとなっているショッピー・カップは7月から2025年5月にかけて開催され、グループステージは3試合はホームで、さらに3試合はアウェーで行われる予定です。

5月9日のニュース<br>・酸をかけられたファイサル・ハリムは今週皮膚移植手術を受ける見込み<br>・スランゴールFC会長のスランゴール州皇太子はファイサル選手の治療費を負担<br>・ジョホールは不戦勝?スランゴールはスンバンシー・カップ出場辞退を表明<br>・ジョホールはセランゴールの辞退に失望し、警察の保証を信じるべきと主張<br>・今季のマレーシアスーパーリーグは予定通り実施する- MFL

酸をかけられたファイサル・ハリムは今週皮膚移植手術を受ける見込み

酸をかけられ、第4度の火傷の診断を受けた代表FWファイサル・ハリムは、皮膚の移植手術を受けることになり、その移植手術に使用される皮膚が今週にも海外から届くと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

スランゴールFCスポーツ医学部長のハズワン・カイール医師は「皮膚は同種移植のために海外から持ち込む必要がある。移植手術は回復プロセスを助け、加速させるための手順の一部である。」と説明し、筋肉の回復などはその後になると説明しています。

スランゴールFC会長のスランゴール州皇太子はファイサル選手の治療費を負担

スランゴールFCの会長であるスランゴール州皇太子のトゥンク・アミール・シャー殿下は、酸をかけられたファイサル・ハリム選手は医療保険に加入しているにもかかわらず、回復するまでの治療費と医薬品費用を負担する準備があると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。。

スランゴールFCのシャリル・モクタール理事は「ファイサル選手の医療費は保険でカバーされているが、我々は彼に最善を尽くしたいと思っている。最善の治療というものは通常、高額な費用がかかるが、(スランゴールFC会長の)トゥンク・アミール・シャー殿下は、そういった心配する必要はないと保証し、必要な場合には、医療費を負担する準備があると述べていると明かしています。

この日、シャリル理事はトゥンク・アミール・シャー殿下に同行し、2回目の手術を完了した後、集中治療室 (ICU) にいるファイサル選手を訪問しています。訪問後にメディアに対応したシャリル理事は、「ファイサル選手はすでに食事ができるようになてはいるが、まだ軟いものを摂取している。また、起きて軽い運動をしたがっているようで、サッカーに関連した運動をしたがっている」と説明しています。

ジョホールは不戦勝?スランゴールはスンバンシー・カップ出場辞退を表明

今週金曜日5月10日に開幕する今季のマレーシアスーパーリーグ(MSL)はスランゴールFC対ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が開幕戦で対戦する予定になっています。JDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで予定されているこの試合は前年のリーグ優勝チームとマレーシアカップ優勝チームが対戦するスンバンシー・カップを兼ねて行われます。

英国のFAコミュニティー・シールドを模して1995年から始まったいわばスーパーカップですが、スランゴールFCはこの試合を辞退することを発表しています。スランゴールFCは、「安全上の理由」をもとにリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)に対して試合の延期を要請したものの、MFLは警察と協力して十分な安全が確保できるとしてこの申請を拒否すると発表していました。

スランゴールFCは本日声明で、様々な関係者との詳細な調査と議論の後、この試合の出場を辞退するという難しい決断をしたと発表しています。「クラブ(スランゴールFC)は、長い間楽しみにしていた2024年スンバンシー・カップに参加しないという非常に難しい決定をしなければならなかった。」

さらに「現在の不安定な状況を考慮して、スランゴールFCは、チームの安全が最も重要であると考えており、あらゆる形態の暴力と脅威を真剣に受け止め、チームの安全に関する問題については一切妥協しないことを強く主張する」という声明を発表しています。

ジョホールはセランゴールの辞退に失望し、警察の保証を信じるべきと主張

スランゴールFCが開幕戦となるスンバンシー・カップ出場を辞退したことを受け、ジョホール・ダルル・タジムFCはクラブ公式SNSで声明を発表し、セランゴールFCの出場辞退という決定に失望していると表明しています。

JDTのアリスター・エドワーズCEO名で出された声明では、ラザルディン・フセイン警察庁長官とジョホール警察長官のM・クマール警視監は、チーム、選手、そしてサポーターの安全を最優先とすることを強調しています。

「スンバンシー・カップで選手を含むすべての人々の安全を確保するために、警察は1,500人の警官を配置して、安全面で妥協しないことを確認している。我々は、ファイサル・ハリムに関わる事件や、セランゴールFCの一部の個人に届いた脅迫を強く非難しますが、チームが試合に参加しないという決定を再考してくれることを期待しています。」

さらに「これは、警察の保証を受けても不安を感じるために、どのチームでも撤退する 『前例』を作ってしまう可能性があるためである」と声明は続いています。

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クラブの主力でもある代表選手が酸を浴びせられるという「前例のない」事件に対して、前例を作ることを非難するような声明は出さず、相手の出場辞退を受け入れて勝点を得る。また出場辞退についての処分はMFLに任せるという方法もあったはずですが、敢えてこの声明を出したことで、未だICUに入っているファイサル選手を思いやる国内サッカーファンの多くを敵に回してしまったことは間違いありません。

今季のマレーシアスーパーリーグは予定通り実施する- MFL

国内リーグのマレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)は、今週開幕するMSLの試合日程を維持することを決定しています。

MFLによる声明では、警察が今シーズンの全てのMSLの試合においてセキュリティを強化することを保証したと発表しています。

その一例として、通常の3倍に当たる1,500人の警察官が、5月10日にスルタン・イブラヒム・スタジアムで行われるスンバンシー・カップで選手とファンの安全を確保するために配置され、厳重な管理とチェックが行われるとしています。

MFLは「警察によってセキュリティが保証されることから、安全レベルに対する懸念に基づいて申請されたスランゴールFCの試合延期要請を拒否した。」と声明で述べています。

5月8日のニュース<br>・酸をかけられた代表FWファイサル・ハリムは2度目の手術へ<br>・青年スポーツ相-ファイサル選手の治療は傘下の国立スポーツ協会が無料で行う<br>・ファイサル・ハリムが所属するスランゴールFCが5月10日開幕戦の延期をリーグに申請<br>・JDTの元代表キャプテン、サフィク・ラヒムが1週間で3人目の被害者に-走行中の車のリアウィンドウをハンマーで粉砕される

酸をかけられた代表FWファイサル・ハリムは2度目の手術へ

5月5日に酸をかけられて入院中の代表FWファイサル・ハリム(スランゴールFC)をスランゴール州サッカー協会副会長でスランゴールFC技術委員会委員長のシャリル・モクタル副会長が5月7日に訪れたことをマレーシアの通信社ブルナマが報じています。

ファイサル選手との面会後に記者の質問に応じたシャリル氏は、ちょうど目を覚ましていたファイサル選手と簡単な会話を交わし、スランゴールFCのチームメイトによろしく伝えて欲しいと言付けられたということです。

「本日(5月7日)に2度目の手術が予定されており、この手術は1回目の手術と同様の措置が行われると聞いた。顔、首、腕、体に酸の飛沫による深刻な影響があり、処置は箇所ごとに分て行われているようだ。」と説明したシャリル氏は、ファイサルセンスの動作や話し方に事件の影響が出ているとも述べて、ファイサル選手が早期回復のために皆に祈ってもらうよう求めているとも話しています。

青年スポーツ相-ファイサル選手の治療は傘下の国立スポーツ協会が無料で行う

青年スポーツ省のハンナ・ヨー大臣は、酸をかけられて治療中の代表FWファイサル・ハリムについて、国立スポーツ協会(NSI)の施設で最善の治療を無料で受けることができると述べています。

「青年スポーツ省は傘下の国立スポーツ協会を通じて、理学療法なども含めて必要な処置は何でもファイサル・ハリムに提供する用意があると話し、ファイサル選手にはマレーシア政府だけでなく、マレーシア国民全員が速やかな回復のために祈りを捧げている。」と話したヨー大臣は、回復には数ヶ月を要する場合でも、無料で必要な支援を受けられることを保証しています。

また今回の反抗について激しく非難したヨー大臣は、警察に対して、同様の犯行を防ぐためにも、反抗の背景にある動機が判明するよう容疑者には厳しく対処することを望んでいると話しています。

ファイサル・ハリムが所属するスランゴールが5月10日開幕戦の延期をリーグに申請

酸をかけられたファイサル・ハリムが所属するスランゴールFCは、今週金曜日の5月10日に予定されている今季2024/25シーズン開幕戦を兼ねたスンバンシー・カップの開催延期を国内リーグを運営するマレーシア・フットボール・リーグ (MFL) に公式に申請したことを明らかにしています。

スンバンシー・カップは、前年のリーグ優勝チームとマレーシアカップ優勝チームが対戦するいわばスーパーカップで、今季はスランゴールFCとジョホール・ダルル・タジムFC (JDT))が、JDTのホームであるスルタン・イブラヒム・スタジアムで対戦する予定になっています。(昨シーズンはJDTがリーグとマレーシアカップでいずれも優勝しているため、今回のスンバンシー・カップは昨季リーグ2位のスランゴールFCがJDTと対戦します。)

ファイサル選手を見舞った後に記者の質問に答えたスランゴール州サッカー協会副会長でスランゴールFC技術委員会委員長のシャリル・モクタル副会長は、「安全上の理由」を挙げて延期の申請をMFLに提出したと述べています。

「セランゴールFCは、安全上の理由から、金曜日のスンバンシー・カップの日程変更をMFL と対戦相手の JDT に正式に要請した。スランゴールFCは試合の中止ではなく、日程変更を求めた。」と述べています。

さらに「延期の理由については、これ以上詳細を明かすことはできないが、我々(スランゴールFC)は MFL に正式に申請を行なったので、MFLが最終的な決定を行うだろう。」とも話しています。

ファイサル選手が襲われた事件の後、MFL のスチュアート・ラマリンガムCEOは、これまでのところスランゴールFCからは延期の申請がないとして、試合は予定通り行われると述べています。その一方で、最新の動きがあれば、改めて発表を行うとも話しており、MFLの判断に注目が集まっています。

JDTの元代表キャプテン、サフィク・ラヒムが1週間で3人目の被害者に-走行中の車のリアウィンドウをハンマーで粉砕される

偶然なのか、あるいは単なる模倣犯なのか、それとも…。

強盗傷害事件の被害者となったアキヤ・ラシド(トレンガヌFC)、酸をかけられて重傷を負ったファイサル・ハリム(スランゴールFC)に続き、今度はジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のベテランで長年、マレーシア代表のキャプテンを務めたサフィク・ラヒムが車のリアウィンドウを何者かに粉砕される事件が起こったと、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

5月7日の午後10時ごろに起こった事件では、ジョホール州ジョホール・バル野JDTの練習場近くででサフィク選手が運転していた車にバイクに乗った2人組が近づき、バイク後部に乗っていた人物がハンマーを取り出し、リアウィンドウを粉砕したということです。

衝撃を感じて直ちに車を止めたサフィク選手に対して、バイクの2人組は車の前に回って誇示するようにハンマーを振り回していたという報道もあります。

危険を感じたサフィク選手は直ちに車をUターンさせて現場を離れ、バイクの2人組は追いかけることはせず、やはり現場から立ち去ったということです。

ジョホール・バル南部警察のラウブ・スラマット署長は事件があったことを認め、容疑者の捜索が既に行われていることをメディアに明らかにしています。

5月7日のニュース<br>酸をかけられた代表FWファイサル・ハリムは4時間の手術後に集中治療室へ<br>襲撃事件被害のファイサル・ハリム、アキヤ・ラシド両選手と賭け屋との関連を警察が否定<br>今季開幕戦でジョホールはアウェイサポーターへのチケット割り当てゼロ<br>FAM-MSN プロジェクトがひっそりと解散か

酸をかけられた代表FWファイサル・ハリムは4時間の手術後に集中治療室へ

このブログでも取り上げたスランゴールFCでプレーする代表FWファイサル・ハリムへの酸がかけられた事件ですが、その後の報道ではファイサル選手の火傷は「第2度」ではなく「第4度」と、当初の報道より事態が深刻なようです。なお第4度の火傷では皮膚より下の筋肉、場合によっては骨まで火傷が到達し、傷の色は赤ではなく黒や白、あるいは茶色や黄色になること。また神経系等も傷んでしまい、痛みなどを感じなくなることもあるということです。

英字紙スターは既に4時間に及ぶ手術を受けたファイサル選手は現在、状態は安定しているものの、酸をかけられた腕の感覚がなく、また普通に会話ができる状況にもないということです。事件後に緊急搬送された病院から、スランゴールFCと契約している専門病院へと移されたということですが、そこでは通常の病室ではなくICUに入り10日ほど経過を見る予定であるとも報じてられています。また担当医師の話では、更なる手術が必要な可能性もあり、少なくとも3週間から4週間は入院が必要ということです。

襲撃事件被害のファイサル・ハリム、アキヤ・ラシド両選手と賭け屋との関連を警察が否定

1週間で2度も起こった代表選手襲撃事件によりマレーシアサッカー界に広がった衝撃は未だ収まりませんが、その一方で事件直後からSNS上で見かけたのはブッキーbookieと呼ばれる賭け屋と両選手の関連が疑われる、という投稿でした。しかしマレーシア警察は、ファイサル・ハリム(スランゴールFC)、アキヤ・ラシド(トレンガヌFC)両代表選手と賭け屋との関連を否定しています。

5月5日に起こったファイサル選手に酸がかけられた事件についてラザルディン・フサイン警視総監は、捜査が完了するまでは憶測や思い込み、さらには根拠のない作り話などを広めないように求めています。さらに捜査完了には一定の時間が必要であることへの理解を求めたラザルディン総監は、現在、ファイサル選手に酸を浴びせた犯人の目的を捜査中だと説明しています。またファイサル選手襲撃の3日前に起こったアキヤ選手への強盗傷害事件との関連性は、現時点では見当たらないとも話していルト、マレーシア語紙のシナル・ハリアンが報じています。

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日本で万が一Jリーグの選手が暴漢に襲われたとしても、その事件を賭け屋とすぐに結びつける人はいなそうですが、サッカーの八百長試合で多くの逮捕者が出た歴史があるマレーシアでは、「賭け屋の指示に従わなかったことで、腹いせに襲われたのでは」と考える人がいるのは事実です。マレーシアサッカー界最大の汚点とも言える1994年の八百長事件では、1部リーグとカップ戦での八百長に関わったとして100名を超える選手とコーチが処分を受け、中には国内サッカーからの永久追放となった選手も数名います。その後も2017年、そして2022年にも八百長が疑られる事例がありました。

これまで報じられた八百長試合は、給料が少ない若手選手に賭け屋が八百長を持ちかけるというケースが多くありました。そう考えると金銭的には何の不自由もなさそうな両選手が自身の選手生命を台無しにするような八百長への加担に同意するとは到底考えられませんが、給料未払いのクラブが複数存在するマレーシアサッカーでは、この八百長の誘惑はいまだ存在していると報じるメディアもあり、今回の事件が国内サッカー県警者やファンに過去の嫌な記憶を思い起こさせることにもなっています。

今季開幕戦でジョホールはアウェイサポーターへのチケット割り当てゼロ

スンバンシーカップをリーグ戦の一環として行うからこういうことが起こるのに、MFLはなぜ、何も手を打たないのか。

今季2024/25シーズンは5月10日にジョホール州イスカンダル・プテリにあるスルタン・イブラヒムスタジアムで行われるジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)対スランゴールFCのカードで開幕します。この試合はスンバンシーカップと呼ばれる、前年度のリーグ優勝チームとマレーシアカップ優勝チームが対戦するカードにもなっています。スンバンシーとはマレーシア語で「慈善」を意味し、この試合は英国のチャリティーシールド(現コミュニティーシールド)を模したカップ戦となっています。

しかし1985年から始まったこのスンバンシーカップが本家のコミュニティーシールドと異なるのは、リーグ戦の一環として行われること。そして試合はリーグ優勝チームのホームで開催されることです。英国のコミュニティーシールドはリーグ開幕前のーパーカップ」的な位置付けであり、1974年からいくつかの例外を除いてウェンブリースタジアムなど中立地で開催されています。

リーグ戦10連覇を果たしているJDTは過去9シーズンにわたり、リーグ覇者としてこのスンバンシーカップをリーグ戦の主催試合として行なっていますが、この仕組みが今季のすんバンシーカップでは議論を巻き起こしています。

昨季は国内三冠(リーグ戦、マレーシアカップ、FAカップ)を達成したJDTは、マレーシアカップ準優勝のスランゴールFCと、今回のスンバンシーカップで対戦しますが、何とアウェイのスランゴールFCのサポーター向けに割り当てられるチケットがないことが明らかになっています。JDTはクラブ公式SNSで、スランゴールFCからサポーター向けチケットの割り当てを依頼されていないため、ホームサポーター向けのチケットのみを販売することを公式声明として発表しています。この声明では、スランゴールFCから依頼されたのは、チームに対する警察警護、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、氷、そしてメインスタンド30席分のチケットのみだと説明しています。JDTはこれらの依頼に応じる一方で、アウェイチームはサポーターのためのチケット割り当てについても、ホームチームのチケット販売前に依頼するべきにも関わらず、そういった依頼がなかったとして、アウェイチームへの割り当ては今回は行わないと生命を結んでいます。

正式な手順を踏まず、サポーターチケットが割り当てられることを当然と思っていたのであればスランゴールFCに非があるかも知れませんが、国内で圧倒的な実力を誇り、マレーシアを代表するクラブでもあるJDTの対応も大人気ないように思えます。しかもスンバンシーカップは、リーグ戦の一環でもあると同時に、タイトルのかかるカップ戦でもあるわけで、もう少し柔軟な対応をしても良いようにも思えます。

ボラセパマレーシアJP的には、このスンバンシーカップはマレーシアスーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が主催し、本家に倣ってブキ・ジャリル国立競技場のような中立地で、リーグ戦とは別のカップ戦として行うべきだと考えています。リーグ戦の他にACLを控え、しかも国内カップ戦でも優勝候補の筆頭のJDTにとっては、リーグ戦とスンバンシーカップを1試合で行うことで、少しでも過密日程を減らすことになると考えているかも知れませんが、今回の一件でMFLがどのような対応をするのかに注目してみたいともいます。

FAM-MSN プロジェクトがひっそりと解散か

東南アジアのサッカー関連ニュースを報じるSNSの”Asean Football”は、マレーシアサッカー協会(FAM)とマレーシアスポーツ評議会(MSN)が共同で運営するクラブのFAM-MSNプロジェクトが解散すると報じています。

FAMの公式サイトやSNSでは何も報じられていませんが、Asean Footballによると、解散の理由はこのプロジェクトを通じて才能ある選手を見つけることができなかったからだとしています。

2020年にFAMとMSNが協力して創設したFAM-MSNプロジェクトは、翌2021年から当時のマレーシア2部リーグ、マレーシアプレミアリーグ(現在は休止中)に参戦し、2021年は1勝3分16敗と2022年は2勝2分14敗、そしてプレミアリーグがスーパーリーグと統合された昨季2023年は新設されたU23リーグのMFLカップで3勝1分10敗という成績を残しています。

Asean Footballは、「このチームの半数が参加した東南アジアサッカー連盟AFF U20選手権(筆者注:実際にはAFF U19選手権)で優勝しており、FAMーMSNプロジェクトは失敗ではない。」FAMのテクニカル・ディレクターのスコット・オドネル氏の談話も紹介しています。

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FAMとMSNが共同で運営する、国家サッカー選手育成プログラム(NFDP)の卒業生と、その中核となるエリートアカデミーのモクタル・ダハリ・アカデミー(AMD)の卒業生で編成されるこのFAM-MSNプロジェクトは、当初からその目的や効果に疑問の声が上がっていました。というのもNFPDやAMDの卒業生の内、特にAMDの卒業生はすぐにマレーシアリーグのプロクラブから声がかかり、そのまま入団しますが、その一方でNFPDの卒業生でもプロクラブに入団できない選手がいます。そういった18歳から20歳のNFDP卒業生に競技活動を中断させることなく、実戦での経験を積ませた上で、再度プロクラブ入りを実現させようというのがこのFAM-MSNプロジェクトというチーム設立の目的でした。

しかしこのFAM-MSNプロジェクトが参戦したのは2部とは言え、れっきとしたプロリーグであり、要するにユースチームが大人の、しかも生活のかかったプロの世界にいきなり放り込まれた格好になりました。それまでは同年代としか試合をしたことがなかった若い選手たちにとっては、体格も経験も技術も勝るプロ選手との対戦で連戦連敗、しかも大敗続きでした。1年目を終えてチームは20試合で1勝3分16敗、得点20失点56という成績に終わり、2部リーグ参戦という育成方法には1年目が終わった段階で、その効果に期待できないのではという声が上がっていました。それでもこのFAM-MSNプロジェクトは翌2022年シーズンも参戦し、18試合で2勝2分14敗、得点10失点33という成績でした。また当初考えられていたFAM-MSNプロジェクトから他のプロクラブへの移籍は、サフワン・マズラン、ウバイドラー・シャムスル(いずれもトレンガヌFC)、アズハド・アラズ(サバFC)など、数名に止まっています。

5月6日のニュース<br>代表FWアキヤ・ラシドが強盗傷害事件の被害者に<br>さらに代表FWファイサル・ハリムは酸攻撃を受ける<br>スランゴールはヨルダンU23代表キャプテンを移籍期限最終日獲得<br>ジョホールは開幕直前に期限付き移籍中のGKイズハムをスリ・パハンから呼び戻す

ゴールデンウィークの日本から来客があり、ここ数日は運転手兼観光ガイドに忙しく久しく更新できていませんでしたが、その間にマレーシアサッカー界を揺るがす事件が起こりました。今季2024/25シーズン開幕まであと5日を切ったこの時期に起こった事件はいずれも代表選手が襲われるという衝撃的なもので、シーズン前の盛り上がりに水を差すだけでなく、来月の代表戦での両選手の招集にも影響が出る可能性がありますが、なによりもまずは理不尽な攻撃を受けた両選手の早い回復を祈ります。

代表FWアキヤ・ラシドが強盗傷害事件の被害者に

複数のメディアがトレンガヌFCに所属する代表FWアキヤ・ラシドが強盗被害に遭い、病院で治療を受けたと報じています。

ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)から期限付きでトレンガヌFCに移籍しているアキヤ・ラシドは5月2日の午後8時30分ごろ、練習を終えた後、トレンガヌ州クアラ・トレンガヌの自宅コンドミニアム戻り、車から降りたところを強盗に襲われたということです。またその際には、現金5,000リンギ(およそ160,000円)が入った財布と携帯電話を奪われた上、暴行を受け、その際には頭を4針、左足を2針縫うケガも負ったということです。なお、アキヤ選手は前日に25歳の誕生日を祝ったばかりでした。

昨日5月5日に会見したクアラ・トレンガヌ地区警察署のアズリ・モハマド・ノール所長は、被害にあったアキヤ選手の証言から、今回の犯行はマスクとフード付きパーカーで顔を隠した複数人が金属の棒状のものを使って犯行に及んだとしており、付近のCCTVの映像を調べる他、特別捜査チームを作って容疑者を捜索していると説明しています。

さらに代表FWファイサル・ハリムは酸攻撃を受ける

アキヤ選手の強盗事件からわずか3日後の5月5日に、今度は代表FWファイサル・ハリムが酸をかけられるアシッドアタック(酸攻撃)を受け、首から肩、さらに腕にかけての数カ所に火傷を追ったことを複数メディアで報じられています。

スランゴールFCでプレーするファイサル選手は5月5日の午後、家族とスランゴール州コタ・ダマンサラ近郊のショッピングモールを訪れてゴーカートを楽しんだ後で、このアシッドアタックにあったということです。事件後に近隣の病院で診断と治療を受けた結果、「皮膚の水膨れと真皮の表面的な破壊を引き起こす」火傷2度(Second degree burn)と診断されたということですが、命に別状はないそうです。

スランゴール州警察本部のフセイン・オマル本部長も会見を開き、事件の経緯を説明した上で、犯人の捜索が続いているとしていますが、別の報道では犯人は2人組でファイサル選手にバイクで近づき、酸をかけた後そのまま逃走したということですが、CCTVに残った記録映像から割り出されたバイクのナンバーは偽造で、バイク自体も盗まれたものだと考えられているようです。

スランゴールはヨルダンU23代表キャプテンを移籍期限最終日獲得

今季2024/25シーズン1回目のトランスファーウィンドウは5月4日に閉じましたが、昨季2位のスランゴールFCはその直前にヨルダンU23代表FWレジク・バニ・ハニがヨルダン1部のアル・ファイサリーSCから加入したことを公式サイトで発表しています。

先月のAFC U23アジアカップではヨルダンU23代表キャプテンも務めたレジク選手は22歳で、ヨルダンU16、U17、U19の年代別代表でもプレー経験がある他、昨季のACLでも6試合に出場し、2ゴール2アシストの記録を残しています。ACL経験のあるレジク選手の加入は、リーグ戦へ向けてのチーム強化になるだけでなく、今季ACL2に出場するスランゴールにとって重要な補強となりそうです。

ジョホールは開幕直前に期限付き移籍中のGKイズハムをスリ・パハンから呼び戻す

契約とはいえ、道義的に問題ないのだろうか。

昨季5位のスリ・パハンFCは、リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)から期限付き移籍中だったGKイズハム・タルミジがJDTの要望により移籍期限を終了して退団することを公式SNSで発表しています。

昨季は26試合中19試合に出場し、今季もプレシーズンマッチにも出場していた33歳と経験豊富なイズハム選手の突然の離脱はスリ・パハンFCには大きな痛手となりそうです。JDTにも控えGKで元代表正GKのファリザル・マーリアスの負傷という事情があるにせよ、開幕まで10日を切ってから正GKの離脱はスリ・パハンFCにとっては、チーム編成に関わる問題です。代わりのGKとして、かつてスリ・パハンFCでプレーしてた24歳のGKシャズミン・ロザイミを期限付き移籍で獲得していますが、昨季はトップチームでの出場がなく、イズハム選手の穴を埋めるには不十分な成績です。

スリ・パハンFCはファンディ・アフマド監督の母国シンガポールからイズワン・マフブト(ライオン・シティー・セイラーズFC)の獲得を目指したようでしたが、実現せず、さらにウズベキスタン出身のGK獲得に動いたと報じられていますが、こちらも実現しませんでした。

4月30日のニュース<br>今季のスーパーリーグはブラジルブーム?<br>MFLは今季からファイナンシャルフェアプレーを採用<br>MFLは今季前半戦日程の改定案を発表−21時キックオフの試合が減少

最後の東南アジア勢としてU23アジアカップべすと4に残っていたインドネシア。昨夜の準決勝ウズベキスタン戦では0-2で敗れて、オリンピック出場権獲得は3位決定戦のイラク戦へと持ち越しとなりました。その3位決定戦に臨むインドネシアにとって痛いのはこのウズベキスタン戦でDFリズキー・リドが1発レッドで退場となったこと。今大会はここまでの全試合で先発フル出場しているセンターバックの欠場はシン・テヨン監督にとっては頭痛の種です。その一方で、このウズベキスタン戦を警告累積で出場停止となっていたエースのラファエル・ストライクはイラク戦に出場可能となります。準々決勝の韓国戦で2ゴールを挙げたストライクの復帰で、インドネシアには1972年のマレーシアとビルマ(現ミャンマー)以来となる東南アジアからのオリンピックサッカー出場を次戦で決めてほしいところです。

今季のスーパーリーグはブラジルブーム?

今季20214/25シーズン開幕まで2週間を切ったマレーシアスーパーリーグ(MSL)ですが、英字紙スターは今季のMSLは前例のないブラジルブームが到来していると報じています。

MSL10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)にはフィンランド1部セイナヨエン・ヤルカパッロケルホから主に左SBでプレーするムリロ・エンリケが加入しています。JDTには、昨季のリーグ得点王ベルグソン・ダ・シルヴァや、ヘベルチ・フェルナンデス、そして5年間のMSLでのプレーを経てマレーシア国籍を取得したエンドリック・ドス・サントスも在籍しており、JDTは今季のMSLでは最多となる4名のブラジル出身選手が所属するクラブとなっています。

昨季3位のサバFCにはいずれも昨季からプレーし、23試合に出場した197cmの大型CBガブリエル・ペレスと、シーズン途中の加入ながら11試合で9ゴール3アシストを記録したストライカーのラモン・マシャドが在籍しています。また、同4位だったクダ・ダルル・アマンFCには、31歳のセンターバック、クレイトンことホセ・クレイトン・デ・モライス・ドス・サントスが今季から加入しています。

同7位のKLシティFCは、JDTのエンドリック・ドス・サントスと同様にブラジル出身ながらマレーシア国籍を獲得した帰化選手のパウロ・ジョズエがキャプテンを務めています。また昨季9位のPDRM FCにはブラジル生まれの鈴木ブルーノ選手がいますが、2009年に日本国籍を取得しています。

また10位だったペナンFCは、身長164cmと小柄ながらフラメンゴやサントスでもプレーした26歳のAMFネトことジョアン・フェレイラ・デ・オリヴェリア・ネト、東南アジアではベトナムリーグでもプレー経験がある30歳のストライカー、ロドリゴ・ディアズの両選手を獲得し、今季在籍4シーズン目となるペナンFCのキャプテンで長身センターバックのラファエル・ヴィトールとともにブラジルトリオを編成します。

11位に終わったペラFCは、ヴァスコ・ダ・ガマ、コリンチャンス、アトレチコ・ミネイロ、バイーアなどブラジルの有名クラブやディナモ・キーフ(ウクライナ1部)でもプレー経験がある元ブラジルU21代表の28歳のウイング、クレイトンことクレイトン・ダ・シルベイラ・ダ・シルバと26歳のCBルイス・エンリケ・モッタを獲得しています。また13位のクチンシティFCにはセンターバックのセリオ・サントス、サンパウロ生まれながら東ティモール国籍を持つストライカーのペドロ・エンリケが在籍しています。

ブラジル出身選手は今季加入が6名となり、MSL全体では15名(マレーシア帰化選手2名を含む)と外国籍選手最大のグループとなっています。

MFLは今季からファイナンシャルフェアプレーを採用

マレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は今季2024/25シーズンよりファイナンシャルフェアプレー(FFP)を採用することを発表しています。FFPは国内クラブライセンスを交付する第一審機関(FIB)がアジアサッカー連盟(AFC)の設けたガイドラインに基づくものになっているということです。

MFLの公式サイトで発表された声明では「MリーグのFFP初年度は、リーグが直面する主要な問題である選手やスタッフの給与支払いを監視し、クラブの財政的安定性を確保するための責任を強化するための導入期間とされる」と記されています。

またMFLは「収入と支出に関する規制を監視および施行し、2年目以降の文書提出および監視手続きの後、Mリーグのクラブの長期的な持続可能性を確保する予定」で、4月25日に全クラブを対象にオンラインで初めてのFFPブリーフィングセッションを開催したことも明らかにしています。

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MFLはかつて、ラ・リーガの経済コントールプログラム(ECP)を参考にしたMFL独自のECPを2020年から導入するとしていましたが、実現しなかった経緯があります。当時のECPと今回のFPPの詳細な違いは不明ですが、おそらくMFLは各クラブが提出した文書をもとに、MFLが設定する規制に従って決められた予算内での経営を求めると考えられています。いずれにしても、今や年間行事のようになっている給料未払い問題がおこならないようMFLにはしっかり監督してもらいたいところです。

MFLは今季前半戦日程の改定案を発表−21時キックオフの試合が減少

マレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は今季2024/25シーズンの前半戦日程の改訂版を発表しています。今月初めてに発表された日程からは試合会場が未確定だったものが変更されるなど改訂が行われています。なおMSLの前半戦は5月10日から12日まで開催される第1節から、10月18日から20日まで開催される第13節までとなっています。

今季日程の特徴はこれまでMSLでは一律だった21時キックオフの試合が少なくなったこと。例えば第1節の日程では、21時キックオフの試合は6試合中3試合で、5月11日のPDRM FC対クダ・ダルル・アマンFC戦(スラヤン・スタジアム)は17時30分キックオフ、また同日のスリ・パハンFC対クランタン・ダルル・ナイムFC戦は20時15分キックオフ、5月12日のサバFC対ペナンFC戦は16時45分キックオフとなっています。また第2節や第3節でも21時キックオフの試合は6試合中2試合となっています。

また後半戦(第14節から第26節まで)の日程は、8月までには発表となるということです。

前半戦の改訂された日程はこちらです。

4月29日のニュース<br>スランゴールがプレシーズン大会優勝+新装MBPJスタジアムの体験レポ

いよいよ今日はU23アジアカップ準決勝、インドネシア対ウズベキスタンの試合が行われます。U23アジアカップ初出場ながら快進撃を続けるインドネシアが、今日の試合に勝って東南アジアからは19オリンピックサッカーへの出場を決めるのことができるのかどうかに注目が集まります。独立前のオランダ領東インドとして1938年大会にアジア初のW杯出場を果たしているインドネシアですが、東南アジアからは1980年のマレーシア以来となるオリンピック出場を果たすことができるのでしょうか。(注:1980年のモスクワオリンピックは、当時のソ連のアフガン侵攻に抗議する形で西側諸国の多くがボイコットし、マレーシアもこれに同調し出場辞退しています。その前の東南アジアからのオリンピック出場は1972年にマレーシアとビルマ(現在のミャンマー)が1972年のミュンヘンオリンピックに出場しています。このとき、マレーシアは西ドイツ、アメリカ、モロッコと同組になり、アメリカには3−0と勝利したものの、西ドイツには0−3、モロッコには0−6で敗れてグループステージ敗退しています。)

スランゴールがプレシーズン大会優勝

4月26日と28日に両日に行われた国際大会で、スランゴールFCが優勝を果たし、賞金1万米ドルを獲得しています。

スランゴールFCのホーム、MBPJスタジアムで行われた国際招待大会「スランゴール・アジア・チャレンジ2024」にはスランゴールFCの他、DPMM FC(ブルネイ)、バレスティア・カルサFC(シンガポール)、ヤング・エレファンツFC(ラオス)が参加し、それぞれが2試合を行いました。

4月26日の第1試合では、バレスティア・カルサFCが田中幸大選手のPKの1点を守り切り、ヤング・エレファンツFCに勝利し、またスランゴールFCは1月のアジアカップにも出場したヨルダン代表MFノー・アル=ラワブデと、今季新加入のカーボベルデ出身FWアルヴィン・フォルテス(タイ1部ラーチャブリーFCから移籍)がそれぞれ2ゴールを挙げてDPMM FCを破っています。

バレスティア・カルサFC対ヤング・エレフェンツFC戦のハイライト映像(アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)
スランゴールFC対DPMM FC戦のハイライト映像(アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)

そして昨日4月28日の第1試合ではバレスティア・カルサFCとDPMM FCが対戦しました。ブルネイのクラブながらシンガポール1部のプレミアリーグでプレーするDPMM FCは来月5月に開幕する今季リーグ戦でもこのバレスティア・カルサFCとたいせんします。この試合は連勝して今大会優勝を狙うバレスティア・カルサFCが田中雄大選手の2試合連発となるゴールや杉田将宏選手のゴールでリードしますが、DPMM FCはブルネイ代表でもプレーする21歳のFWハケメ・ヤジドの2ゴールで追いついて前半を終えます。後半に入るとDPMM FCがMFアズワン・アリのゴールで遂に逆転しますが、バレスティア・カルサFCはキャプテン、アレン・コザルのゴールで追いついて、引き分けに持ち込んでいます。

DPMM FC対バレスティア・カルサFC戦のハイライト映像(アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)

また第2試合では大会ホストのスランゴールFCが、ラオスリーグ2連覇中、しかも2シーズン無敗というヤング・エレファンツFCと対戦しました。かつてクチンシティFCでもプレー経験がある鈴木雄太選手、そして西原拓夢選手と日本人選手2名が在籍するヤング・エレファンツFCを相手に、スランゴールFCはFWアルヴィン・フォルテスの2戦連発となるゴールで先制すると、今季からキャプテンを務めるシンガポール代表のDFサフワン・バハルディンが得意のヘディングシュートを決めて、スランゴールがリードを広げて前半を終了します。後半にはマレーシア代表のエースFWファイサル・ハリム、そして先日のU23アジアカップに出場したものの、良いところがなかったMFシャヒール・バシャーがダメ押しとなる4点目を決めて、スランゴールFCが快勝し、前回大会ではPK戦でバンコク・ユナイテッドに敗れて逃した優勝を果たしています。

スランゴールFC対ヤング・カルサFC戦のハイライト映像(アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)

スランゴールFC対ヤング・エレファンツFC戦の観衆は3,700名とやや寂しかったものの、スランゴールFCにとっては、5月10日に開幕する2024/25シーズンに向けて良い勢いがついた大会となりました。

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今季のACL2にも出場するスランゴールFCは、今季開幕前に本拠地のMBPJスタジアムを改修しています。昨季まで同居していたPDRM FCは、今季の本拠地を同じスランゴール州のスラヤンにあるMBSスタジアム(通称スラヤンスタジアム)に移したため、スランゴールFCのみが使うスタジアムになっています。スタジアム内はチームカラーの赤と黄色を基調に塗り替えられ、座席も一部はコンクリートに直に座る形だったところにも座席が設置されるなど、快適さも増しています。以下の写真はそれぞれ左が改修前、右が改修後です。

スタジアム正面入口はチームカラーの赤に塗られ、表示も変更されています。(ちなみにPetaling Jaya City FCは既にリーグ脱退したクラブです。スランゴールFCは昨季もこのMBPJスタジアムを使って今いたが、Home of Petaling Jaya Cityの看板はそのまま放置されていました。)

スタンド全般は鮮やかな色に塗られ、華やかな雰囲気になっています。

クルヴァに屋根が設置されています。(ただしホームチームのみ)

コンクリート直座りだった席がなくなり、プラスチックの座席が設置されています。

その他に新たな座席も導入されています。これは肘掛けもあって快適でした。

その一方でアジアの大会に出るのであれば改善が必要と考えられる点もあります。まずはマレーシアでは「あるあるネタ」のトイレの汚さ。マレーシアではトイレットペーパーよりも水で洗う方が多く、そのせいからかトイレの床は常に水びたしで衛生感がありません。また、蛇口や便器が破損しているものが放置されたままのものもあり、マレーシア基準では問題なくとも、国際試合を行うのであれば改善して欲しい点でした。

またメインスタンド側では1つしかない売店は常に長蛇の列の上、品揃えが酷く、食べ物はすぐに売り切れ、飲み物はペットボトルを開けてコップに移し替えた炭酸飲料を売るため、炭酸が抜けた砂糖水をつかまされることもあります。同じ首都圏にあるKLフットボールスタジアムはすぐ外にフードトラックが多く出ており、また今季からPDRM FCがホームにするスラヤン・スタジアムも近くにファーストフードやコンビニがあり、持ち込みが可能なのですが、MBPJスタジアムは周りにそういったものがないため、スタジアム内の店が頼りなのでなんとかして欲しいところです。

またこの日は17時キックオフに合わせて16時30分にスタジアムに着きましたが、QRコードのチケットを購入済みでしたが、入り口ではそのチケットを読み込むチケット係がまだ来ていいないと言われて暑い中15分ほど待たされました。しかも結局、時間までに係員が来ず、チケットをスキャンされないまま入場して良いと言われるなど、アジアの大会に出る準備は本当にできてるのだろうか、という思わずにはいられませんでした。