1月7日のニュース
マレーシアサッカーファンの筋違いな非難にジェイ・チョウが対応
青年スポーツ省が国内14ヶ所に特設スクリーンを設置-本日の準決勝が視聴可能に
ブキ・ジャリルのピッチ改修期間中はJDTのスタジアムがマレーシア代表の本拠地に

本日1月7日は東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ準決勝のファーストレグがマレーシアのホーム、ブキ・ジャリル競技場で午後8時30分(マレーシア時間、日本時間午後9時30分)から開催されます。5万9000人分のチケットは24時間も経たずに完売するなど、マレーシアサッカーファンの期待も高まっています。最新のFIFAランキングでは、145位のマレーシアに対して、タイは111位と劣勢ですが、マレーシアとタイの対戦成績は直近6試合では昨年9月のキングズカップPK戦勝利の1勝を含むマレーシアの3勝3分、特にブキ・ジャリル国立競技場での対戦は全5試合でマレーシアの3勝2分とタイにとっては鬼門となる試合会場です。マレーシアはこの記録を伸ばすのでしょうか、それともタイが不名誉な記録をストップするのでしょうか。

マレーシアサッカーファンの筋違いな非難にジェイ・チョウが対応

最大収容人数8万7000人のブキ・ジャリル国立競技場ですが、今日の試合のために販売されたチケットは5万9000人分でした。これは1月15日に同じブキ・ジャリル国立競技場で開催される台湾のスーパースター、ジェイ・チョウのコンサートのためのステージ設営の準備と仮設状態のステージからではピッチを見ることができない2万1000人分にあたる座席が販売されなかったことが理由です。マレーシアサッカー協会にはこの不手際について非難が集まっただけでなく、一部のファンはジェイ・チョウのSNSに人種差別的な内容を含んだ罵詈雑言などを投稿する辞退となっており、これに対してジェイ・チョウ自身が冷静になるよう求めていると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。
 「マレーシアのサッカーファンの皆さん。私はあなたたちがサッカーに真剣なのは理解しています。(1月15日の)コンサートを延期することには何も問題はありませんが、皆さんはそれを私にではなく、マレーシアサッカー協会やブキ・ジャリル国立競技場の管理者に依頼するべきです。コンサート延期するか否かは問題ではありません。私は自分のファンの前で歌わせて欲しいだけです。」と自身のSNSに投稿したジェイ・チョウですが、ハンナ・ヨー青年スポーツ相はコンサート開催のための会場予約は2019年に行われた一方で、三菱電機カップ開催のための予約が行われたのは昨年2022年であることを明らかにしており、マレーシア政府が介入し、代表戦を優先する形でコンサートを延期あるいは中止を求めれば、国際社会でマレーシアに対する否定的な評価につながりかねないと述べ、延期や中止の可能性を否定しています。

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昨年12月に就任したばかりのヨー青年スポーツ相では、この問題を知らされた時点はほぼ打つ手がなかったでしょう。またこの記事の中では、ブキ・ジャリル国立競技場を運営するマレーシアスタジアム社とFAMは既に座席数を減らすことで合意していたことも明らかになっています。こちらもこれまでのAFF選手権の日程を見る限りでは、年を超えて決勝が行われたのは前回2020年大会が初めてで、それも1月1日が決勝でしたので、まさか1月8日に準決勝がブキ・ジャリル国立競技場で開催することになるとは思っていなかった可能性もあります。あるいは、ここまで代表戦が観客を集められるとは思っておらず、5万9000人分を確保しておけば十分と考えていたのかも知れません。
 準決勝ファーストレグ前の記者会見では、タイ代表

青年スポーツ省が国内14ヶ所に特設スクリーンを設置-本日の準決勝が視聴可能に

青年スポーツ省は国家統一省と協力し、本日行われるAFF選手権三菱電機カップ2022準決勝ファーストレグのマレーシア対タイの試合が観戦できるように、マレーシア国内の14ヶ所に特設スクリーンを設置することを発表しています。
 「強力な応援でハリマウ・マラヤ(マレーシア語で「マレーの虎」ーマレーシア代表の愛称)を決勝へ連れて行こう!」というツイートと共にスクリーン設置を発表した青年スポーツ省のハンナ・ヨー大臣は、既に試合のチケットが売り切れている中で、試合会場に足を運べない多くのマレーシアサポーターのために、KL市内にあるムルデカ広場を初めてマレー半島各地や東マレーシアのサバ、サラワクにもスクリーンを設置するとして、観戦会場となる場所のリストも発表しています。

ブキ・ジャリルのピッチ改修期間中はJDTのスタジアムがマレーシア代表の本拠地に

本日の準決勝が行われるクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場は、今年3月に芝の張り替えを含めた大規模なピッチ改修が予定されています。その一方で3月20日から28日まではFIFAの国際マッチデー期間になっており、マレーシア代表のホームでもあるブキ・ジャリル国立競技場が使用できない状況の中、Mリーグのジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下が代表が試合を行う代替地としてJDTのホーム、スルタン・イブラヒムスタジアムの提供を申し出たと、英字紙ニュースとレイトタイムズが報じています。
 またこれを受けたハンナ・ヨー青年スポーツ相は、「TMJ(Tunku Mahkota Johor「ジョホール州皇太子」の意)は青年スポーツ省を何度も手助けしてくれているが、今回もこの申し出に感謝するとともに、喜んでこの申し出を受けたい。」と述べて、イスマイル殿下のマレーシアサッカーへの貢献は計り知れないものだと賛辞を送ったということです。
 上で取り上げたジェイ・チョウのコンサートのように、ブキ・ジャリル国立競技場はサッカー以外のイベントでも使用されるため、今年3月は施設を完全に閉鎖して、カウグラスと呼ばれているマレーシアのサッカー場で一般的な草から、いわゆる高麗芝の一種で、マレーシアの環境にも適したゼオン・ゾイシアと呼ばれる芝への張り替えが計画されています。

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ちなみのこのゼオン・ゾイシアはJDTのホーム、スルタン・イブラヒムスタジアムやJDTの練習場に貼られている芝で、しかも今回のブキ・ジャリル国立競技場の芝の張り替えは140万マレーシアリンギ(およそ4200万円)かかるということですが、トゥンク・イスマイル殿下がその費用を支援することになっています。

1月6日のニュース
帰化選手リー・タックがクダと契約もスリ・パハンサポーターの怒りを買う
ムルデカ大会の10年ぶり開催が決定

東南アジアサッカー連盟選手権三菱電機カップ2022では、シンガポールに快勝し、2大会ぶりの準決勝進出を決めたマレーシア。今週土曜日1月9日にブキ・ジャリル競技場で行われる準決勝ファーストレグのチケットが完売したことをマレーシアサッカー協会FAMが公式SNSで告知しています。東南アジアでも最大級の観客収容数を誇るブキ・ジャリル国立競技場の収容人数は8万7000名ですが、FAMのSNSでは5万9000枚の時点で札止めとなっています。
 タイ戦の6日後の1月15日には、台湾出身でいわゆるマンドポップのスーパースター、ジェイ・チョウがこのブキ・ジャリル国立競技場でコンサートを行いますが、そのためのステージ設営におよそ2万1000人分の座席があるエリアが必要であることから、今週末のタイ戦のチケットは5万9000枚飲み販売となっているとFAMは説明しています。
 これを受けてチケットが入手できなかったファンの中には、ジェイ・チュウのSNSに否定的なコメントを投稿するといった全く筋違いな行動に出る者もいるようです。

帰化選手リー・タックがクダと契約もスリ・パハンサポーターの怒りを買う

英国出身のリー・タックは、マレーシア国内で5年以上継続してプレーし、FIFAの帰化選手としての登録要件を満たしたことから、所属するMリーグ1部スーパーリーグのスリ・パハンの支援もあり、昨年マレーシア国籍を取得しています。
 タック選手は帰化申請中だった昨季のリーグ戦ではスリ・パハンの外国籍選手枠が埋まっていたこともあり、出場機会がありませんでしたが、マレーシア国籍取得と同時にマレーシア人選手としての登録が可能となったリーグ戦終了後のマレーシアカップでは一回戦のトレンガヌ戦でゴールを挙げるなど活躍しています。
 さらにマレーシア国籍取得によりマレーシア代表でのプレーが可能になると、キム・パンゴン監督は早速、東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに出場する代表に招集しています。
 国籍取得からは順風満帆に見えるタック選手ですが、現在、スリ・パハンサポーターの怒りを買っていると、英字紙スターが報じています。
 その理由はタック選手がスリ・パハンではなく、同じスーパーリーグのクダと契約をしたことにあります。スリ・パハンに在籍していた際には、クラブの支援によりマレーシア国籍を取得したにもかかわらず、クダと契約したことはスリ・パハンに対して後足で砂をかけるような行為であるというのが非難の内容です。
 この非難に対してタック選手は、スリ・パハンで今季もプレーしたかったものの、下交渉で同意できず、結局はクラブからの契約オファーがなかったことが、移籍を決断した理由だったと話しています。給料の削減を自ら申し出たにもかかわらず、正式なオファーがなく、将来が不安になったと話す話すタック選手は、今ではクダへの移籍は正しい決断だったとスターの取材に答えています。
 スリ・パハンは以前にもマレーシア国籍取得を支援したガンビア出身のムハマドゥ・スマレー(現JDT)にも「逃げられて」います。

ムルデカ大会の10年ぶり開催が決定

英字紙ニューストレイトタイムズは、今年2023年がマレーシアサッカー協会FAMの設立90周年となることから、この記念行事の一つとして、今年10月にムルデカ大会が10年ぶりに開催されるというFAMのノー・アズマン事務局長の発言を報じています。
 マレーシアの独立(マレーシア語でムルデカ)を記念し、1957年に始まったこのムルデカ大会は、これまでに41回開催されていますが、近年はマレーシア代表が弱くなったこともあり、2014年大会を最後に開催されていませんでした。
 ノー・アズマン事務局長は、このムルデカ大会を今年年末あるいは来年初頭に開催されるAFC選手権アジアカップ2023(カタール)に向けた準備の一環として開催する予定であると話しています。

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1957年に始まったこの大会は東南アジア最古の国際親善大会(およそ10年後にはタイでキングスカップが始まっています)として、北米を除く世界各地のクラブチームや代表チームが出場しています。第1回大会(1957年)の出場チームを見ると、マラヤ連邦の他は香港リーグ選抜、カンボジア、南ベトナム、シンガポール、インドネシア、タイ、ビルマとなっています。南ベトナム(現ベトナム)、ビルマ(現ミャンマー)といった国名に歴史を感じます。
 ちなみに日本もこのムルデカ大会に何度も出場しており、初めてムルデカ大会に出場したのは 1959年の第3回大会で、この時は1回戦で香港リーグ選抜と引き分け、再戦では2-5で敗れて2回戦に進めずに終わっています。日本代表の試合結果が掲載されている日本サッカー協会JFAのホームページによれば、敗れた香港戦での2ゴールはいずれも当時早稲田大学2年生だった(!)川淵三郎初代Jリーグチェアマンが決めています。
 ムルデカ大会での日本の最高成績は1963年に開催された第7回大会と1976年に開催されたでの準優勝です。いずれも7チームの1回戦総当たり方式で開催された両大会で、第7回大会は6試合で4勝1分1敗、優勝した台湾に0-2で敗れ、第20回大会では6試合で2勝4分0敗、決勝戦では優勝したマレーシアに0-2で敗れています。
 また日本が最後にムルデカ大会に出場したのは1986年の第30回大会でした。グループステージではチェコのSKシグマ・オロモウツに敗れてグループステージB組2位にとなった日本は、準決勝でA組1位のマレーシアと対戦し1-2で敗れています。ちなみにこの試合で日本のゴールを決めたのが「アジアの核弾頭」(ちょっと古いか)原博美選手で、マレーシアの2ゴールはMリーグ1部スーパーリーグで昨季ペナンの監督を務めたザイナル・アビディン・ハサンと同じスーパーリーグのスリ・パハンで監督を務めたドラー・サレーでした。日本は1985年から名称が変わったキリンカップを使って自国開催大会での代表強化に舵を切りつつあったことから、この大会を最後にムルデカ大会には出場していません。
 前述の川淵三郎氏や原博美氏の他、奥寺康彦選手らも出場しているこの大会は、車範根(チャ・ブンクン、韓国)やフセイン・サイード(イラク)などアジアのスーパースターも多く出場した大会でもありました。

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ちなみに私が初めて観戦したムルデカ大会が1988年の第32回大会でした。この32回大会の大会プログラムの表紙の写真をお見せしますが、タバコブランドのダンヒルが大会のスポンサーという、今では考えられない、古き良き時代だったことがわかります。


この32回大会の日程と出場国は以下の通りでした。

今では考えられませんが、ムルデカ大会やキリンカップなどの当時の国際大会は、ナショナルチームとクラブチームが混在する大会でした。この第32回大会も上の出場国中、オーストリアはFCチロル・インスブルック(この記事を書くために調べたところ、2002年に破産し、解散していました。)、ドイツはハンブルガーSVが出場しています。下がハンブルガーSVの紹介ページですが、マンフレート・カルツや、後にJリーグ浦和でプレーするウーベ・バイン、当時はまだ20歳のオリバー・ビアホフなどの名前が見えるのが興味深いです。

そしてこの大会のマレーシア代表のメンバー。なお、チームマネージャは当時のパハン州皇太子、現在はパハン州のスルタン(州王)で現在のマレーシア国王でもあるアブドラ国王です。


そんなムルデカ大会ですが、1990年代に入りアジアの各国代表がFIFAワールドカップやAFCアジアカップの予選などに注力するようになると、1957年の第1回から毎年開れた大会が隔年開催となり、またホストのマレーシア代表が弱くなったこともあり、参加するチームも東南アジアの代表チーム、さらにA代表ではなくU23代表の大会になるなど大会の「格」も下がり、2013年にタイ選抜、ミャンマー、シンガポールを招いて行われた第41回大会を最後に開かれていませんでした。(この記事は昨年8月31日の記事を一部再構成して使っています。)

 

1月5日のニュース
AFF選手権-「B代表」が前回大会で「A代表」が達成できなかった準決勝進出を果たす

いやぁ久しぶりにスカッとする試合でした。
 昨日1月3日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催された東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022のグループステージ最終節で、マレーシア代表はシンガポール代表を4-1で破り、2大会ぶりとなる準決勝進出を決めています。
 12月24日に行われたラオス戦の公式発表された観客数が2万9661名だったのに対し、この試合の観客数は2倍以上の6万5147名と、マレーシア代表のホームには久しぶりに6万人越えの観客が集まりました。
 マレーシアが入ったB組は、この試合前までは、1位ベトナム(2勝1分0敗)、2位シンガポール(2勝1分0敗)、3位マレーシア(2勝0分1敗)、4位ミャンマー(0勝1分2敗)、5位ラオス(0勝1分3敗)となっており、最終節ではベトナムはミャンマーと、シンガポールはマレーシアとのカードが組まれており、ベトナムとシンガポールは引き分け以上で準決勝進出が決まるのに対し、マレーシアはこの日の試合に勝利した場合のみ、準決勝に進出できるという状況でした。
 しかもここまで、マレーシアはミャンマーを相手に1-0と辛勝し、ベトナムには0-3と敗れていたのに対し、シンガポールはミャンマーを3-2で破り、ベトナムとは0-0で引き分けるなど、試合前の下馬評はシンガポール有利となっていただけでなく、シンガポールのスターFWイクサン・ファンディが自身のSNSに「ゴールを決めてブキ・ジャリルのピッチで踊りたい」と戯言を投稿するなど、選手にもそういった気持ちがあったようです。
 しかもマレーシアは初戦のミャンマー戦でケガをしたセンダーバックのクザイミ・ピーの回復が遅れている上、ベトナム戦での「疑惑の判定」でレッドカードをもらった右サイドバックのアザム・アズミが結局はAFFから2試合の出場停止処分を受けるなど、キム監督がこの重要な試合でどんな11名を起用するのかにも注目が集まりました。この試合では初戦のミャンマー戦の先発XIから上記のアザム・アズミに代わりDFクェンティン・チェンが入り、クザイミ・ピーに代わって先発したMFムカイリ・アジマルは、ラオス戦からセンターバックに入ってプレーしている本来はMFのブレンダン・ガンのポジションに入る布陣をキム監督は選択しています。
 試合は6万人を超える大観衆を背に、開始から5分でV・ルヴェンティン、そしてファイサル・ハリムが次々にゴールを狙いますが、いずれもシンガポールGKハサン・サニの攻守に阻まれます。それでも攻撃の手を休めないマレーシアに対して、前述の試合前記者会見では引き分け狙いではなく攻撃的にプレーしたいと話した西ケ谷隆之監督の言葉とは裏腹に、シンガポールの選手は守備の時間が長くなっていきます。そして35分、ついにマレーシアが先制します。右サイドでシンガポールDFのパスをカットしたサファウィ・ラシドが得意の左足ではなく、右足で速いクロスを挙げると、ダレン・ロックがこれを頭で合わせてゴール!先制点が欲しかったマレーシアにとっては願ってもないゴールとなりました。この後もシンガポールにはほとんどチャンスを与えず、マレーシアは試合を支配しながらも結局、前半は1-0のままで終了します。
 後半に入ってもマレーシアは攻撃の手を緩めず、50分にはシンガポールのキャプテン、ハリス・ハルンが自陣ゴール近くでクリアしたボールを受け取ったシャワル・アヌアルがもたつくところを、詰めていたスチュアート・ウィルキンがボールを奪います。そのままペナルティエリアの外から放たれた低い弾道のシュートが決まり、マレーシアはリードを2点に広げます。その4分後には、マレーシアの速いプレスからシンガポールDFが苦し紛れに出したルーズボールを奪ったマレーシアはサファウィ・ラシドのマイナスからのクロスに再びスチュアート・ウィルキンがシンガポールDFをかわしてゴールを決めて3-0とします。
 しかしこの試合はこれでは終わりませんでした。シンガポールは今季、ペナン入りが噂されているファリス・ラムリのシュートで1点を返ます。再び点差が2点となり、さらにゴールを狙ってシンガポールが前掛かりになったところで、マレーシアは88分、カウンターからハキミ・アジム、リー・タックと渡ったボールをセルヒオ・アグエロがゴール右隅に突き刺し4-1としています。キム監督は準決勝の対戦に備えて、ドミニク・タン、シャルル・ナジームのDFコンビを交代させるよゆうをみせながらも、その後のシンガポールの反撃を防ぎ、2大会ぶりの準決勝進出を果たしています。

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昨季のリーグ戦では2ゴールだったスチュアート・ウィルキンがこの試合だけで2ゴール(今大会通算3ゴール)を挙げ、MOMに選ばれた試合は、マレーシアにとっては準決勝進出を決めただけでなく、2014年のAFF選手権以来、1分2敗と苦手にしていたシンガポールからの勝利でした。スタンドには「俺たちは機械が好きだ(11名が代表辞退したJDTのオーナー、トゥンク・イスマイル殿下が『選手は機械ではなく、シーズン終了後には休息が必要であり』として、JDTの選手11名が代表招集を辞退したエピソードを指す)」「代表チームより重要なクラブなどない」といった横断幕も見られましたが、JDTの選手も参加した前回2020年大会で、マレーシアはグループステージで敗退しており、JDTの選手がいないことから「Bチーム」などと揶揄された今回の代表が準決勝を果たしたのは皮肉な結果です。

2023年1月3日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラルンプール)
マレーシア 4-1 シンガポール
⚽️マレーシア:ダレン・ロック(35分)、スチュアート・ウィルキン(50分、54分)、セルヒオ・アグエロ(88分)
⚽️シンガポール:ファリス・ラムリ(85分)
🟨マレーシア(0)
🟨シンガポール(1)

この試合のハイライト映像はアストロ・アリーナの公式YouTubeより。

1月3日のニュース ボラセパマレーシアJPが選ぶマレーシアサッカー2022年重大ニュース-代表チーム編とAFCクラブコンペティション編

いよいよ今日は東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップのグループステージB組最終節。首位のベトナムはホームで4位のミャンマーと、また西ヶ谷隆之監督率いる2位のシンガポールはアウェイで3位のマレーシアと対戦します。ベトナムとシンガポールはそれぞれ引き分け以上で準決勝進出が決まり、3位のマレーシアはシンガポール戦に勝利することが準決勝進出の条件となります。この記事の執筆時点では既に3万9000枚近いチケットが売れているようで、今大会ここまでのどの試合よりも多くの多くの観客が集まりそうです。ジョホール水道を挟むマレーシアとシンガポールの対戦は、両国を繋ぐ陸橋にちなんでコーズウェイダービー(Causeway derby)と呼ばれ、熱戦が繰り返されてきましたが、今年初の対戦はどちらに軍配が上がるのでしょうか。。

マレーシア代表はアジアカップ2023年大会出場権獲得-予選を突破しての出場は1980年以来43年振り

2022年の代表チーム関連の最大のニュースはこれでしょう。正確に言えば、マレーシアは16年前の2007年にベトナム、タイ、インドネシアと東南アジア4カ国共同開催の形でアジアカップを開催しており、その際に開催国枠でアジアカップに出場しています。しかし、予選を突破しての出場となると、1980年のクウェート大会以来となります。本戦出場国がわずか10カ国だったこの大会で、マレーシアはアラブ首長国連邦に勝利し、韓国、カタールと引き分け、クウェートに敗れて勝点差1で準決勝進出を逃しています。
 昔話はさており、昨年の6月に行われたアジアカップ最終予選では開催国となった地の利もあり、バーレーンに1-2で敗れたもののトルクメニスタンには3-1、そして5万3000人近い観衆を集めたバングラデシュ戦では4-1で勝利して、バーレーンに次ぐグループ2位となったものの、最終予選各組の2位のうち上位5チームに入り、43年振り4度目の本戦出場を決めています。

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ちなみにこの時の代表チームは、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)から12名、PJシティとヌグリスンビランから2名、トレンガヌ、スランゴール、サバ、スリ・パハン、チョンブリー(タイ1部)、SVズルテ・ワレヘム(ベルギー1部)から各1名という構成でした。これを知れば、現在開催中の三菱電機カップ出場中の代表チームにJDTの選手が1人もいないことが、どのくらい尋常ではないかがわかるでしょう。さらに、このアジアカップ最終予選に出場し、今回の三菱電機カップにも出場しているのはFWダレン・ロック(サバ、アジアカップ最終予選時はPJシティ)FWファイサル・ハリム(スランゴール、同トレンガヌ)MF V・ルヴェンティラン(スランゴール、同PJシティ)、DFクザイミ・ピー(スランゴール、同ヌグリスンビラン)、DFドミニク・タン(サバ)、GKシーハン・ハズミ(無所属、同ヌグリスンビラン)のわずか6名です。

タン前代表監督が5年振りに交代-東南アジアの韓流ブームの影響かキム・パンゴン新監督就任

2017年に当時の代表監督だったポルトガル出身のネロ・ヴィンガダ氏が就任7試合を1分6敗としてわずか7ヶ月で辞任したことを受け、コーチから昇格したのがタン・チェンホー前監督でした。2018年のAFF選手権スズキカップ(当時)では決勝でベトナムに敗れたものの、優勝した2014年以来となる決勝進出を果たしただけでなく、FIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選でも、コロナ禍前まではベトナムに次ぐ2位につけるなど、最終予選へ期待が高まり、同時にタン監督の手腕も評価されていました
 しかしコロナ禍が下火になり、中断されていたアジア2次予選が再開されると1勝2敗とそれまでの勢いが衰え、さらに2021年末のスズキカップ2020年大会ではベトナムやインドネシアに敗れるなどして、準決勝進出を果たすことができなかった責任を取り、タン監督が辞任し、その後任となったのが韓国出身のキム・パンゴン監督です。
 香港代表監督の経験もあるキム新監督は、ベトナムのパク・ハンソ、インドネシアのシン・テヨン両監督に続く、東南アジアの代表チーム3人目の韓国出身監督となりました。就任直後に行われたシンガポールでのフィリピン、マレーシアが出場した3カ国対抗でのフィリピン戦では就任初戦で初勝利を挙げると、前述のAFCアジアカップ2023年大会最終予選では43年振りの予選突破、そして27年振りの出場となったタイのキングズカップでは、PK戦にまでもつれこんだタイとの試合に勝利すると、決勝ではタジキスタンにPK戦で敗れたものの、いずれも格上の相手に善戦し、FIFAランキングも2022年1月の154位から12月には145位まで上昇しています。

U23代表は出場した各大会で苦戦し、監督は事実上の更迭

A代表の躍進に比べると残念な結果に終わったのがU23代表でした。2月にカンボジアで開催されたAFF U23選手権ではラオスにまさかの2連敗を喫してグループステージで敗退すると、5月にベトナムで開催された「東南アジアのオリンピック」東南アジア競技大会では準決勝に進出したものの、延長でベトナムに敗れて決勝進出できず、また3位決定戦ではインドネシアにPK戦で敗れ、前回2019年フィリピン大会に続き、2大会連続でメダルを逃しています。
 東南アジアの大会でこの結果であれば、期待するのも酷ですが、翌6月にはウズベキスタンで開催されたAFC U23アジアカップでも散々な成績でした。2大会振り2度目の出場となったマレーシアは、グループステージでは図らずもベトナム、タイの東南アジア組、そして韓国と同組になっています。そしてここでは韓国に1-4、タイに0-3、そしてベトナムには0-2と惨敗し、大会終了後の7月には2019年からはU19代表、そして2021年からはU23代表の指揮を取ってきたオーストラリア出身のブラッド・マロニー監督との契約期間を残しながら、契約を解除しています。なお、その後は代表チームのコーチでもあるE・エラヴァラサン氏がU23代表監督に就任しています。

東南アジアの覇者U19代表はアジアの壁を実感

これに対し、戦前は全く期待されていなかったハサン・サザリ監督率いるU19代表が7月にインドネシアで開催されたAFF U19選手権決勝でラオスを2-0で破り優勝しています。しかし9月に行われたAFC U19アジアカップ2023年大会予選では、韓国に敗れ、モンゴルと引き分けるなど予選3位となり、出場を逃し、アジアの壁の高さを実感させられています。

女子代表は監督を初の外部招聘

また2022年は女子代表にとっては静かな1年でした。マレーシアサッカー協会はなぜか、女子代表を5月の東南アジア競技大会へ派遣せず、貴重な実践経験の機会を無駄にする一方で、同じ東南アジアのライバルと対戦する7月のAFF女子選手権に派遣し、そこでは2分3敗の成績でグループステージ敗退するなど、男子に比べると方針がなんなのかが全く見えませんでした。
 しかしそこで起こったサッカーファンからの非難に応えるように、昨年末にはヨルダンサッカー協会のアシスタントテクニカルディレクターを務めていたソリーン・アル=ズービ氏を招聘し、ジェイコブ・ジョセフ監督に変わる新しい女子代表監督に就任させています。

アジアチャンピオンズリーグACL-ジョホールがマレーシアのクラブとして初のノックアウトステージ進出

リーグ9連覇を果たしジョホール・ダルル・タジムJDTは、今季もマレーシアリーグの覇者としてACLのグループステージに出場しています。新型コロナウィルス感染拡大防止措置から、昨季に続き、今季もグループステージは集中開催となりましたが、JDTが入ったI組はマレーシアが集中開催地に選ばれています。そしてこれを最大限に活かしたJDTは、このグループステージがイスラム教徒にとっては厳しい断食月中の開催であったこともあり、試合は全て午後10時キックオフ、しかも試合会場は国内でも有数の手入れが行き届いたピッチを持つスルタン・イブラヒムスタジアムで行っています。
 川崎フロンターレ、蔚山現代、広州と同じI組で、JDTは前半の3試合で広州に5~0、蔚山現代に2-1、そして川崎とは0-0と2勝1分で折り返すと、ターンオーバーで選手を入れ替えた川崎戦では0-5と敗れたものの、広州とは2-0、蔚山現代とは2-1と連勝し、通算成績を6試合で4勝1分1敗、勝点13とするとI組では川崎や蔚山現代を抑えてグループ1位としてノックアウトステージへ進出しています。
 2019年のACL初出場以来、これまでグループステージの壁を越えられなかったJDTは血糊の最大限に活かし、マレーシアのクラブとしては初めてとなるノックアウトステージに進出しています。
 ノックアウトステージでは、浦和レッズと埼玉スタジアムで対戦し、国内リーグでは見られない0-5というスコアで完膚なきまでに叩きのめされています。しかしこの厳しさを経験できたのもノックアウトステージに出場した結果であり、その苦い経験は今年もACLに出場が決まっているJDTをさらに高みへと連れて行ってくれることでしょう。

KLシティはAFCカップ決勝進出もJDT以来東南アジアクラブ史上2チーム目の優勝を逃す

ACLに出場できない国や枠が少ない国のクラブを対象としているのがAFCカップ。UEFAチャンピオンズリーグに対するUEFAヨーロッパリーグのような位置付けです。マレーシアからは2022年大会には前年の2021年にマレーシアカップで優勝を果たしたKLシティ、そして2021年シーズンに国内リーグ2位のクダ・ダルル・アマンの2チームが出場しました。
 グループステージを突破した両チームは、東南アジア地区プレーオフに進み、クダはPSMマカッサル(インドネシア)に敗れたものの、KLシティはPK戦の末、ベトテルFC(ベトナム)に勝利すると東南アジア地区代表決定戦ではクダを破ったPSMマカッサルを5-2で撃破しています。地区間プレーオフに駒を進めたKLシティは、準決勝ではATKモフン・バガンAC(インド)を3-1、決勝ではPFCソグディアナ・ジザフ(ウズベキスタン)をPK戦5-3といずれもアウェイの厳しい試合で勝利し、2015年にこのAFCカップで優勝したJDT以来となる東南アジアクラブとしては2チーム目のAFCカップの決勝に進出しました。
 10月22日にクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催された決勝では、オマーンのアル・シーブに0-3で敗れましたが、こちらもマレーシアのクラブがAFCカップでは十分通用することを示してくれました。今季のAFCカップには、リーグ2位のトレンガヌと3位のサバが揃って出場しますが、この両チームにアジアの舞台での活躍を期待したいです。

1月2日のニュース
ボラセパマレーシアJPが選ぶマレーシアサッカー2022年重大ニュース-国内リーグとクラブ編

本来なら昨年末までにアップしておくべき記事でしたが、2023年につながる話題もあるのであえて新年早々の記事として掲載します。まずは国内リーグとクラブ編からスタートです。

ジョホールの一強時代はいつまで続くのか-ジョホールが国内リーグ9連覇と国内三冠達成に加えセカンドチームも2部で優勝

2022年シーズンも圧倒的な力を見せたジョホール・ダルル・タジム(JDT)が国内リーグ9連覇を達成、さらにFAカップではトレンガヌを、マレーシアカップではスランゴールを下して優勝し、クラブ史上初の国内三冠にも輝いています。

先月発表された2022年マレーシアリーグアウォードでも最優秀DF、最優秀MF、最優秀FW、そして年間MVPがいずれもJDTから選出されていることからもわかるように、JDTの主力選手は各ポジションで国内トップクラスの選手が集まっています。しかも、そのほぼ全員が代表チームでも主力であることから、JDTはいわばマレーシア代表に外国籍選手が加わったチーム編成。そりゃぁ強いに決まっています。しかも外国籍選手もリーグ新記録となる29ゴール、カップ戦なども合わせれば41ゴールと驚異的な数字を記録したベルグソン・ダ・シルヴァを筆頭にこれまた強力な布陣を揃えており、9連覇は順当な結果でもあります。オーナーでジョホール州の皇太子でもあるトゥンク・イスマイル殿下は、国内の有力選手を今後も獲得していくことを明言しており、2022年シーズンの最優秀GKを受賞した代表GKのシーハン・ハズミは今季所属したヌグリスンビランとの契約を更新していないことから、JDT入りが噂されています。
 また2部プレミアリーグではJDTのセカンドチーム、JDT IIが2位に勝点差5をつけて優勝しています。トップチームで出場機会のないマレーシア代表の選手がプレーし、外国籍選手も自国に戻れば代表チームでプレーする、他のクラブならトップチーム入りも可能なレベルの選手が在籍する陣容は、プレミアリーグでも頭ひとつ抜けています。ここから来季はトップチーム入りする若手もおり、JDTの時代はまだまだ続きそうです。

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代表チームのクラブ化(JDTの場合はクラブの代表チーム化ですが)は代表チーム強化の近道ですが、それが諸刃の剣でもあることが露呈したのが、現在開催中の東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップ2022です。この大会はFIFA国際マッチカレンダー期間外であることから、この大会に出場する代表チームに招集された選手のリリースは各クラブには義務付けられていませんが、これを理由にJDTから代表候補合宿に招集された13名(この数字もすごいですが)中、招集に応じたのはわずか2名で、残る11名が辞退する事態が起こっています。リーグ戦に加えて優勝したFAカップとマレーシアカップ、そして後述しますがACLと国内の他のどのクラブよりも試合をしているJDTの選手にとって、国内日程が全て終了した11月末から、来年2月に開幕する2023年シーズンに向けてトレーニングが始まるまでの期間は、休養やケガの治療などに充てる貴重なオフシーズンです。また、選手は機械ではない、というイスマイル殿下の意見は正論中の正論ですが、その結果、マレーシア代表はベストな布陣を組めずに三菱電機カップに臨まざるを得なくなっています。

Mリーグ1部と2部を統合する大改編発表-しかし当初の18チーム編成が結局15チームに

昨年7月に発表されたリーグ改編ではFIFAの指導のもと、国内リーグ戦の試合数増を目的として、現行の1部スーパーリーグ12チームと2部プレミアリーグの6チームを合わせた「新スーパーリーグ」を2023年に18チームで開催し、その一方でプレミアリーグは一時休止となることが発表されました。
 今年2月24日に開幕が予定されている新スーパーリーグでは、各クラブの登録選手は従来の30名から32名に拡大し、外国籍選手枠もトップチーム5名、セカンドチーム4名だったものが、アジア(AFC)枠1名、東南アジア(AFF)枠1名を含めた9名に改定され、試合当日はアジア枠1名、東南アジア枠1名を含めた6名がのベンチ入りが可能になっています。(ただしピッチ上ではこれまで通りアジア枠、東南アジア枠を含めた最大5名)
 また新たにU23リーグに当たる「リザーブリーグ」を新設し、現行のプレミアリーグでプレーしていたJDT、トレンガヌ、JDTのセカンドチームに加え、各クラブはこのリザーブリーグにもチームを出場させることを義務付けることが決まっています。また今季プレミアリーグでプレーしたFAM-MSNプロジェクトはこのリザーブリーグ参加が決まっています。こちらは登録選手の上限は30名ですが、その内、23歳以上の選手は外国籍選手を含めた最大で5名が登録可能、また23歳以上の選手はピッチ上では外国籍選手2名を含めた最大で3名がプレー可能となっています。

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スーパーリーグが拡大することで、2023年シーズンは年間34試合と昨季の22試合から試合数が50%以上増える予定でしたが、この拡大案が発表された後にどんでん返しが待っていました。スーパーリーグ10位のマラッカ・ユナイテッドと11位のサラワク・ユナイテッドの両クラブに対して、国内クラブライセンス交付を司る第一審機関FIBがクラブ経営資金に関する情報が不十分だとして申請を却下、さらに両クラブによる再審査の要請も同様の理由で却下されたことから、両クラブは今季のスーパーリーグ参加資格を失っています。これにより今季のスーパーリーグは当初、予定されていた18チームから16チームへと減少しました。サラワク、マラッカの両チームは昨季中も給料未払いが起こるなど、運営に問題があるクラブだったことから、この両チームへの国内クラブライセンス不交付は、時として身内に甘いマレーシアサッカー界を考えると大英断であり、評価されるべき決定です。
 しかしこれだけではありませんでした。今度は昨季9位のPJシティがリーグ撤退を表明しました。PJシティは成績は9位であったものの、外国籍選手が1人もおらず、他のクラブに比べるとマレーシア人選手が出場機会を多く得られることから、チームからはFWダレン・ロック、MF V・ルヴェンティラン、GKアラムラー・アル=ハフィズといった代表選手が育つなど、マレーシアサッカーへの貢献度は高いクラブでした。しかし、外国籍枠9名となる今季は、マレーシア人選手のみというクラブの運営方針とリーグ改編の内容が合致しないとして、リーグ撤退を発表しています。これによりさらにチーム数が減ったスーパーリーグは全15チーム、試合数は28試合となり、試合数は3割にも満たないわずか6試合増と、当初の目的が十分果たせない改編となっています。

東マレーシアに本拠地を持つクラブに明暗-サバとクチンシティは大躍進もサラワク・ユナイテッドは3部から出直しへ

2021年シーズンの終盤にマレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクターからサバの監督へと転身したオン・キムスイ監督の実質1年目となった昨季、1部スーパーリーグのサバは2021年の9位から3位へと大躍進し、今季のAFCカップ出場権を獲得しています。残念だったのはリーグ終盤に失速し、最終節の第22節でも敗れて最後の最後にリーグ2位から3位となってしまったこと。それでも今季加入の加賀山泰毅の貢献もあり、来季はアジアの舞台に挑みます。
 また2部プレミアリーグでは、谷川由来選手が所属するクチンシティがクラブ史上最高位となる3位となりました。前述したように今季からスーパーリーグとプレミアリーグが統合されるため、昨季は1部と2部の入れ替えがありませんでしたが、もし実施されていても、クチンシティは堂々の1部昇格を果たしていたところでした。昨季開幕前には2022年シーズンを最後に退任するとしていた名将イルファン・バクティ監督の今季続投も決定、またMリーグ4年目を迎える谷川由来選手の残留も濃厚のようなので、2019年の入れ替え戦で3部から昇格して以来、わずか3年で1部昇格を果たしたクラブがスーパーリーグで果たしてどのようなプレーを見せてくれるのかに注目です。
 サバ州のコタキナバルを本拠地とするサバ、そしてサラワク州のクチンを本拠地とするクチンシティが東マレーシア(サバ州とサラワク州はクアラルンプールがあるマレー半島とは離れたボルネオ島にあるため、こう呼ばれています。)の明の部分だとすれば、暗に当たるのが、国内クラブライセンスが交付されずスーパーリーグへの参観資格を失ったサラワク・ユナイテッドです。昨季中もE・エラヴァラサン前監督が代表チームのコーチに就任したことで、後任となったB・サティアナタン氏への給料未払いが明らかになっていますが、国内クラブライセンス不交付の直接的な原因は2021年シーズンに在籍した際の給料が未払いとなっていた外国籍選手がFIFAの紛争解決室へこの問題を持ち込み、FIFAによる支払い裁定が下されたにもかかわらず、これを支払わなかったことにあります。
 なおこのサラワク・ユナイテッドは来季は2部プレミアリーグが開催されないため、3部のセミプロリーグ、M3リーグに出場することが決まっています。ちなみにこのサラワク・ユナイテッドはサラワク州サッカー協会も運営に関わる州のトップチームである一方で、同じサラワク州のクチン市を本拠地とするクチンシティは位置的にはその下位となるチームです。言い換えれば東京都サッカー協会が運営するクラブが3部に降格し、世田谷区サッカー協会が運営するクラブが1部に昇格するといった状況です。実はこのサラワク・ユナイテッドは、前身のサラワクFAが2019年の2部と3部の入れ替え戦でこのクチンシティに敗れて3部降格となったところを、当時資金難に苦しんでいた2部でスランゴール州に本拠地があったスランゴール・ユナイテッドを買収して、本拠地をサラワク州に移してサラワク・ユナイテッドと改変するという「寝技」を使って2部に生き残った前歴もありクラブなので、今季の3部スタートは順当と言えば、順当かもしれません。

1月1日のニュース
AFF選手権-第3節を終えてマレーシアはベトナム、シンガポールに次ぐ3位で最終節へ

あけましておめでとうございます。ここ数週間は仕事でバタバタしておりまして、12月17日以来、ほぼ半月ぶりの記事となります。その間に東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電気カップ2022は開幕し、マレーシアはここまで2勝1敗の成績です。マレーシアのいるB組では、一昨日12月30日に西ヶ谷隆之監督率いるシンガポールがベトナムと引き分け、両チームが2勝1分で並んだものの、得失差でベトナム1位、シンガポールが2位となっています。この結果、準決勝に進むことができる上位2チームに入るためには、マレーシアは3日後に控えるホームでのシンガポール戦での勝利が不可欠となりました。
 前々回の2018年大会では決勝でベトナムに敗れたものの準優勝したマレーシアでしたが、コロナ禍で2021年に順延された前回大会ではインドネシア、ベトナムに次ぐグループ3位となり準決勝進出を逃しています。またこれにより、大会後には当時のタン・チェンホー代表監督が辞任する事態となりました。
 前回大会の雪辱を晴らしたいマレーシアでしたが、タン前監督の辞任を受けて就任した韓国出身のキム・パンゴン監督の前に大きな問題が現れました。今季国内リーグ9連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムJDTの選手13名中11名が大会前の代表候補合宿参加を辞退したのです。AFF選手権はFIFAの国際マッチカレンダー期間外であるため、クラブには代表招集された選手のリリースの義務はなく、この辞退そのものは問題がありませんが、JDTの選手は代表でも中心選手であり、彼ら抜きの代表は国内でも「B代表」と揶揄されています。しかも残ったJDTの2選手のうち、サファウィ・ラシドはタイ1部のラーチャブリーFCへの期限付き移籍が発表され、もう1人のラマダン・サイフラーは最終メンバーに残れず、この結果、いつ以来かわからないJDT選手が1人もいない代表チームが誕生しています。そして、そんな代表チームが今大会初戦で対戦したのがミャンマーでした。

この試合の先発は、前述のようにJDTの選手を欠くメンバーの中、キム監督は前線にはファイサル・ハリム(スランゴール)、ダレン・ロック(サバ)、サファウィ・ラシド(タイ1部ラーチャブリーFC)、中盤はV・ルヴェンティラン、ブレンダン・ガン(いずれもスランゴール)、スチュアート・ウィルキン(サバ)、アザム・アズミ(トレンガヌ)、そしてドミニク・タン(サバ)、シャルル・ナジーム、クザイミ・ピー(いずれもスランゴール)のDF陣とGKシーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)を起用しました。
 国内の政治的混乱もあり2021年はシーズンが国内リーグが中止となったミャンマーは直近のFIFAランキングでは159位、一方のマレーシアは154位と試合前には楽観ムードが漂っていましたが、蓋を開けてみると、ホームのミャンマーが試合開始から積極的に攻める展開となります。しかしスランゴールでプレーするハイン・テット・アウンら攻撃陣のフィニッシュの精度の低さに助けられ、なんとか前半を0-0で折り返します。そして後半の52分には、U23代表時代からともにプレーするサファウィ・ラシドからのパスを受けたファイサル・ハリムがゴールを決め、マレーシアが先制します。しかしここからミャンマーの猛攻が始まり、試合終了間際の94分にはペナルティエリア内でシャルル・ナジームがファールを取られ、ミャンマーにPKが与えられます。
 しかしウイン・ナイン・トゥンのPKをシーハン・ハズミが素晴らしい反応を見せてこのシュートを弾き、同点を許しません。残る6分ほどを守り切ったマレーシアが開幕戦に勝利!ボールの保持率ではミャンマー57.3%に対して42.7%と劣勢だったマレーシアですが、貴重な勝点3を獲得しています。

2022年12月21日@トゥウンナ・スタジアム(ヤンゴン、ミャンマー)
ミャンマー 0-1 マレーシア
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム(52分)
🟨ミャンマー(6)
🟨マレーシア(2)
MOM:シーハン・ハズミ(マレーシア)

(試合の映像はアストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)

続く2戦目はホームに戻ってブキ・ジャリル国立競技場でのラオス戦。準決勝進出争いが得失差により決定となった場合も考えると、初戦のベトナム戦では0-6と敗れているラオス相手に、マレーシアも同様に大量点差での勝利が必要な試合でした。
 このラオス戦にキム監督は、ミャンマー戦で負傷したクザイミ・ピーを含めた大量8名を入れ替えて臨みました。この試合の先発は、ファイサル・ハリム(スランゴール)、サファウィ・ラシド(タイ1部ラーチャブリーFC)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)がFW、ノー・ハキム・ハサン、ムカイリ・アジマル(いずれもスランゴール)、デヴィッド・ローリー、セルヒオ・アグエロ(いずれもスリ・パハン)がMF、そしてファズリ・マズラン、シャルル・ナジーム、クェンティン・チェンのスランゴールトリオがDF、そしてGKは192mと長身のラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)という布陣でした。
 今年最後の代表戦ということもあってか、ブキ・ジャリル国立競技場には3万人近い観衆が集まりましたが、その期待に応えるようにマレーシアは、アルゼンチン出身で今年マレーシア国籍を取得したばかりのセルヒオ・アグエロが26分に代表初ゴールを挙げて先制したものの、前半はこのゴールのみの1-0で終わっています。
 しかし後半に入ると65分、68分とファイサル・ハリムが2試合連続ゴールとなる2ゴールを決めて3-0、さらに77分には途中出場の19歳、ハキミ・アジム(KLシティ)が代表初ゴールをを決め、そして87分にはやはり途中出場のスチュアート・ウィルキンが公式戦初ゴールをを決めた一方で、守備陣も相手に枠内へのシュートは一本も撃たせない攻守を見せて快勝しています。

2022年12月24日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラルンプール)
マレーシア 5-0 ラオス
⚽️マレーシア:セルヒオ・アグエロ(29分)、ファイサル・ハリム2(65分、68分)、ハキミ・アジム(77分)、スチュアート・ウィルキン(87分)
🟨マレーシア(2)
🟨ラオス(1)
MOM:セルヒオ・アグエロ(マレーシア)

(試合の映像はアストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)

開幕2連勝で迎えた第3戦はアウェイのベトナム戦です。東南アジアの代表チームで唯一、FIFAワールドカップ2022アジア最終予選に残ったこの地域で最強のチームですが、前回大会では大会MVPを獲得したチャナティップ・ソングラシン(タイ)の2ゴールに沈み、準決勝で敗退しています。しかし今大会は東南アジアの盟主として2大会ぶりの優勝を果たして、今大会後に退任が決まっているパク・ハンソ監督の花道を飾りたいところでしょう。
 またマレーシアはベトナムとの対戦成績は2014年以来1分7敗と苦手にしており、この試合ではベトナムと初対戦となるキム監督が同胞のパク監督にどのように挑むが注目されました。
 そのキム監督は。FWにファイサル・ハリム、ダレン・ロック、そして今年マレーシア国籍を取得した英国出身のリー・タックを初スタメンに起用、MFはV・ルヴェンティラン、ムカイリ・アジマル、アザム・アズミ、DFにはシャルル・ナジームとドミニク・タンに加えて、本来はMFのブレンダン・ガンを起用しています。
 試合はホームのベトナムが試合開始からマレーシアを圧倒し、29分にはグエン・ティエン・リンのゴールでベトナムが先制。その後もベトナム優位の状態で試合が進むかと思われたその直後の33分にはベトナムのグエン・バン・トアンがこの試合2名のイエローカードで早々と退場となってしまいます。数的に有利となったマレーシアは徐々にペースを掴み始め、V・ルヴェンティランやムカイリ・アジマルがシュートを放つも、枠を捉えることができず、前半は1-0とベトナムリードで終了します。
 先日のワールドカップの日本代表ではないですが、1-0ならば後半で追いつき、さらに逆転も可能かと思われましたが、62分にはベトナムDFドアン・バン・ハウの体当たりでゴールラインの外に吹っ飛ばされたアザム・アジムがドアン・バン・ハウに対して報復したとして、この試合の主審を務めた佐藤隆治主審がアザム・アジムに一発でレッドカードを出すとともに、ベトナムにPKを与える判定を出しました。しかし映像を見る限りでは、アザム・アジムを吹っ飛ばしたドアン・バン・ハウ選手のプレーがそもそもファールであり、試合はそのファールによるFKで再開が順当にも見えましたが、佐藤主審はそうは見なかったようです。このPKはクエ・ゴック・ハイが決めてベトナムのリードは2点に広がりました。
 実はこの佐藤主審が裁くマレーシア対ベトナム戦は、以前にもこのカードで同様の「疑惑の判定」が物議を醸し出したことがありました。2021年6月11日に行われたFIFAワールドカップ2022アジア2次予選がその試合で、この試合ではベトナムが27分に先制し、マレーシアが72分にPKで追いついた直後にやはり佐藤主審がベトナムにPKを与え、これを決めたぺとナムが2-1で勝利するとともに、この2次予選突破を決めています。この試合ではマレーシアのブレンダン・ガンがペナルティエリア内でグエン・バン・トアンを倒したとして、ベトナムにPKが与えられました。しかしこのプレーは映像によっては、ブレンダン・ガンはグエン・バン・トアンと接触していないようにも見えたことから、グエン・バン・トアンの「シミュレーション」ではないかとして、逆転を許すPKを与えた佐藤主審のSNSには、その後、マレーシアサッカーファンからの非難や中傷などが大量に送り付けられました。
 そういった「因縁」もあったこのカードでしたが、今回の判定に対してもマレーシアサポーターからは非難はもちろん、誹謗、中傷が佐藤主審のインスタグラムに送られ、佐藤氏が「自分の家族も投稿内容を見ているので、自制してほしい。」と呼びかける事態となりました。また佐藤氏の判定に対して、マレーシアサッカー協会FAMもAFFに正式に文書で不満を伝えています。
 とは言え、シュート数はベトナム14、マレーシア13と大差なかったものの、枠内のシュートはベトナム8に対してマレーシアは3と実力的にはやはりベトナムの方が上だったことが改めて示されたこの試合では、前半の数的有利を活かせなかったマレーシアもアザム・アジムの退場で10人となり、83分にはグエン・ホアン・ドゥックにダメ押しとなるゴールを許して敗れています。

2022年12月29日@ミーディン国立競技場(ハノイ、ベトナム)
ベトナム 3-0 マレーシア
⚽️ベトナム:グエン・ティエン・リン(29分)、クエ・ゴック・ハイ(64分PK)、グエン・ホアン・ドゥック(83分)
🟨ベトナム(1)
🟨マレーシア(2)
🟥ベトナム(1)
🟥マレーシア(1)
MOM:ダン・バン・ラム(ベトナム)

(試合の映像はアストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより)

この後、12月30日にベトナムはシンガポールのホームで0-0で引き分けており、第3節を終えた順位は1位ベトナム(2勝1分)、2位シンガポール(2勝1分、1位と2位は得失差による)、3位マレーシア(2勝1敗)、4位ミャンマー(1分2敗)、5位ラオス(1分3敗)となっています。
 グループステージ最終節となる1月3日にはマレーシア対シンガポール、ベトナム対ミャンマーが予定されています。最終戦をホームで戦うマレーシアは準決勝進出のためにはシンガポール戦での勝利が必須ですが、ケガのクザイミ・ピーの回復は間に合うのか、ベトナム戦で退場となったアザム・アジムの代役は誰が務めるのかなど、不安要素が残るマレーシアですが、すでに2万枚を超えるチケットが売れているということで、期待が高まるホームのファンの前で起死回生の勝利を期待したいです。

最後になりますが、ボラセパマレーシアJPは2023年で5年目に入ります。今年もほぼ日でサッカーを通してマレーシアの様子を伝えていきますので、どうぞよろしくお願い致します。

12月17日のニュース(2)
AFF選手権三菱電機カップ出場の代表メンバー23名を発表

マレーシアサッカー協会FAMは公式サイトで、今月12月20日に開幕する東南アジアサッカー連盟AFF選手権、三菱電機カップに出場するマレーシア代表23名を発表しています。東南アジアの10ヵ国が出場するこの大会でマレーシアはグループステージではB組に入り、12月21日にヤンゴンのトゥウンナ・スタジアムで行われるミャンマー戦が初戦となります。その後は12月24日にホームのブキ・ジャリル国立競技場でラオス戦、12月27日にはハノイのミーディン国立競技場で行われるベトナム戦、そしてグループステジー最終戦は来年2023年1月3日のシンガポール戦が予定されています。

AFF選手権出場のマレーシア代表最終登録23名

ポジション氏名年齢所属
DF シャルル・ニザム23SEL
DFクェンティン・チャン23SEL
DFファズリ・マズラン29SEL
MFブレンダン・ガン34SEL
MF ムカイリ・アジマル21SEL
MFアリフ・ハイカル22SEL
FW ノル・ハキム・ハサン31SEL
DFドミニク・タン25SAB
MF スチュアート・ウィルキン24SAB
FWダレン・ロック32SAB
GKラーディアズリ・ラハリム21TRE
DFアザム・アズミ21TRE
FWファイサル・ハリム24TRE
MFデヴィッド・ローリー32SRP
FWリー・タック34SRP
MFエセキエル・アグエロ28SRP
GKシーハン・ハズミ26NSE
DFクザイミ・ピー29NSE
GKカラムラー・アル=ハフィズ27KDA
20.V・ルヴェンティラン21PJC
21.シャミー・イスズハン27SWU
22.ハキミ・アジム19KLC
23.サファウィ・ラシド25RAT
所属クラブ:SEL-スランゴールFC、SAB-サバFC、TRE-トレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC、NSE-ヌグリスンビランFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、SWU-サラワク・ユナイテッドFC、KLC-KLシティFC、RAT-ラーチャブリーFC(タイ)

この発表に先立って代表候補合宿に招集された28名からは、GKアズリ・ガニ(KLシティFC)、FWコギレスワラン・ラジ(PJシティ)、FWラマダン・サイフラー(JDT)、MFアリフ・イズワン(スランゴール2)が外れた他、DFディオン・コールズ(チェコ1部FKヤブロネツ)が個人的事情を理由に辞退したことも、FAMから発表されています。

当初、FAMは代表候補合宿に41名を招集したものの、AFF選手権がFIFAの国際マッチカレンダー期間外に行われ、各クラブが選手の招集に応じる義務もないため、JDTからは先日のMリーグアウォーズで今年のMVPと最優秀FWを受賞したアリフ・アイマンや最優秀DF受賞のシャルル・サアド、最優秀MF受賞のアフィク・ファザイルら合計11名が辞退、さらにKLシティのDFデクラン・ランバートとMFアクラム・マヒナンも合宿初日に辞退を表明し、最終的には28名が代表候補合宿に参加していました。

マレーシア代表は、来週月曜日12月19日にグループステージB組の初戦となるミャンマー戦が行われるヤンゴンへ向けて出発し、12月21日にトゥウンナ・スタジアムで試合を行います。その後は12月24日にホームでのラオス戦、12月27日にはハノイのミーディン国立競技場でベトナム戦、そして来年1月3日にはホームでシンガポール戦が控えています。

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SNS上では「マレーシアB代表」などと揶揄されている今回の代表チームですが、最終メンバー発表時にディオン・コールズが辞退したことで、それも冗談ではなくなるほど、主力不在のチーム編成になっています。しかも、今回はなんと国内三冠達成のJDTから誰1人も加わらない顔ぶれになっています。しかし常連のJDTの選手がいないことは、他の選手にとっては大チャンス。出場機会を得た選手たちが、今回の三菱電機カップで前回大会以上の成績(前回はグループステージ敗退)を収めてくれれば、来年2023年のアジアカップ本戦に向けて選手層が厚くなり、チームの底上げにもつながるはず。そして今年2月の代表監督就任以来、7勝2分2敗と、昨年の3勝7敗からチームを大きく立て直したキム・パンゴン監督の手腕に注目したいところです。

12月17日のニュース(1)
Mリーグアウォーズ2022各賞の受賞者が発表-アリフ・アイマンが2年連続MVP受賞など今年もJDTの独壇場に

昨日12月15日に2022年ナショナルフットボールアウォーズの表彰式がオンラインで行われ、今季リーグ9連覇に加え、国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムJDTが12部門中9部門を受賞しています。

最優秀ゴールキーパー部門
シーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)-初
 2018年から4年連続で受賞していたファリザル・マーリアスが最終ノミネートから外れ、誰が受賞しても初受賞となる3人の候補の中から選ばれたのはシーハン・ハズミでした。先日のこのブログにも書きましたが、代表にも初招集されるなど今年最もその活躍が印象に残った選手で、カラムラー・アル=ハフィズ(PJシティFC)、ラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌFC)両選手を抑えて受賞しています。

最優秀ディフェンダー部門
シャールル・サアド(JDT)-3年ぶり3度目
 ここでも昨年の受賞者、マシュー・デイヴィーズが最終候補に残らなかった中、チームメートのシャールル・サアドが受賞しています。ゴールキーパー部門同様、その活躍が今年最も印象的だったクザイミ・ピー(ヌグリスンビランFC)、クラブだけでなく代表でも常連のラヴェル・コービン=オングを推させて受賞しています。ボラセパマレーシア的にはコービン・オング選手が最有力候補、シャールル選手は候補者3選手中、3番手と思っていたので、予想が大きく外れてしまいました。なお、シャールル選手はペラ在籍時の2018年と2019年にもこの賞を受賞しています。

最優秀ミッドフィルダー部門
アフィク・ファザイル(JDT)-初
 2年連続4階目の受賞を狙うバドロル・バクティアル(サバFC)、初受賞を目指すムカイリ・アジマル(スランゴールFC)を抑えて、この部門でもJDTのアフィク・ファザイルが受賞しています。昨年も最終候補3名に残りながら、バドロル・バクティアルに敗れていたので、昨年の借りを返した形になります。ここもボラセパマレーシアJPはバドロル・バクティアルの2年連続受賞、大穴でムカイリ・アジマルと予想していたので、またしも大きく外れてしまいました。ちなみに2018年からは代表招集がないアフィク・ファザイルですが、これを機に代表復帰も見えてくるでしょうか。

最優秀フォワード部門
アリフ・アイマン(JDT)-2年連続2度目
 昨年の最優秀フォワード部門と全く同じ3選手が最終候補となりましたが、昨年19歳で初受賞したアリフ・アイマンが、ダレン・ロック(PJシティ)、ファイサル・ハリム(トレンガヌ)を抑えて、2年連続受賞しています。今、マレーシアで最も注目され、最も期待されている選手でもあり、この受賞は順当で異論はありません。しかし、自身でゴールを狙うだけでなく、臨機応変にパスも出せるファイサル選手は今年一番成長した選手でもあり、ボラセパマレーシアJPは、ファイサル選手の受賞が見たかったです。

最優秀監督部門
ナフジ・ザイン(トレンガヌFC)-初
 昨年も最終ノミネートされながら、ボヤン・ホダック(KLシティFC)に敗れたナフジ・ザインが雪辱を果たしています。過去2シーズンを3位、そして4位の成績でトレンガヌFCを今季2位に引き上げた実績が評価されたようです。FAカップ準優勝、マレーシアカップではベスト4と、どの大会でも好成績を上げながたナフジ・ザインは、来季はクダの監督に就任することが決まっています。ボラセパマレーシアJPは、AFCカップ決勝にチームを導いたボヤン・ホダック推しでしたが、国内ではリーグ6位を含め、昨季のマレーシアカップ優勝ほどの結果は残せていなかったので、そこが2年連続受賞を逃した原因だったかも知れません。

最優秀外国籍選手部門
ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)-初
今季リーグ新記録となる29ゴール(22試合)を挙げ、カップ戦も合わせれば今季は何と41ゴール(30試合)、さらにACLでも6試合で6ゴールとあわや年間50ゴール達成かとも思われるほどの大活躍をしたベルグソン・ダ・シルヴァが文句なしの受賞。最終ノミネートに残ったパウロ・ジョズエ(KLシティ)、そしてチームメートのフェルナンド・フォレスティエリ(JDT)も、この成績では需要を逃しても納得でしょう。リーグ3位の13ゴールを記録したフェルナンド・フォレスティエリが今季、JDTに加入したことで、自分に集中していたマークが外れたことも、今季の大量ゴール生産に繋がっています。またキャプテンとして所属チームをAFCカップ決勝に導いたパウロ・ジョズエのリーダーシップは素晴らしかったですが、今季に関しては受賞争いの相手が悪かったとしか言いようがありません。

最優秀若手選手部門
アリフ・アイマン(JDT)-2年連続2度目
 若い選手にとって励みになるこの賞を、2年連続で同じ選手に与えるのは少々疑問が残りますが、実績だけを見れば、20歳のアリフ・アイマンは文句なしの最優秀若手選手です。最終候補に残ったアザム・アズミ(トレンガヌFC)、ムカイリ・アジマル(スランゴールFC)も良い選手ではありますが、今季のアリフ・アイマンと比べると、やはりまだまだ差はあります。それでもボラセパマレーシアJPは、この賞は同じ選手に何度も与えるべき章ではないのでは、と思ったりもします。

最優秀選手(MVP)
アリフ・アイマン(JDT)-2年連続2度目
 各賞の受賞者(ただし、最優秀外国籍選手賞受賞者は除く)から選ばれる最優秀選手には、昨年に続きアリフ・アイマンが選ばれています。これも異論のないところですが、昨年は19歳でMVP初受賞、そして20歳の今年はMVP2連覇を果たしているアリフ・アイマンを脅かす選手がいないのは、Mリーグの問題点でもあります。ちなみ過去5年間のMVP受賞者を振り返ると、2018年、2019年とやはり2年連続で受賞したFWサファウィ・ラシド(JDT)は、このアリフ・アイマンとのポジションに敗れて出場機会を減らし、来季はタイ1部ラーチャブリーFCに期限付き移籍、2017年の受賞者、MFバドロル・バクティアルはサバで活躍しているものの、2016年の受賞者、FWハズワン・バクリ(JDT、受賞時はスランゴール所属)はまだ31歳ながら、今季はわずか出場3試合となっています。

この他の各賞の受賞者は以下の通りです。

最多ゴール(1部スーパーリーグ)
ベルグソン・ダ・シルバ(JDT:29ゴール)-初

マレーシア人選手最多ゴール(1部スーパーリーグ)
ダレン・ロック(PJシティ:10ゴール)-初

最多ゴール(2部プレミアリーグ)
アブ・カマラ(クチンシティ:11ゴール)-初

マレーシア人選手最多ゴール(1部スーパーリーグ)
ダリル・シャム(JDT II:9ゴール)-初
ヌルシャミル・アブドル・ガニ(クランタン:9ゴール)-初

最優秀クラブ
ジョホール・ダルル・タジムJDT-4年連続8回目.

フェアプレー賞(最小警告数)
PJシティ-初

年間ベストゴール(サポーターの投票により決定)
ムカイリ・アジマル(スランゴール)-初

以下は、ベストゴールを受賞したムカイリ・アジマルのゴールが生まれた10月1日の第19節スランゴール対マラッカ・ユナイテッドのハイライト映像。受賞したムカイリ・アジマルのゴールは1分55秒あたりから。

年間ベストXI(サポーターの投票により決定)
監督:ナフジ・ザイン(トレンガヌ)
GK:シーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)
DF:アザム・アズミ(トレンガヌ)、シャールル・サアド(JDT)、シェーン・ローリー(JDT)、ラベル・コービン=オング(JDT)
MF:レアンドロ・ヴァレスケス(JDT)、アフィク・ファザイル(JDT)、マヌエル・オット(トレンガヌ)
FW:アリフ・アイマン(JDT)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)、ファイサル・ハリム(トレンガヌ)

12月16日のニュース(1)
「新生」代表がモルジブ戦勝利

「新生」代表がモルジブ戦勝利

当初の招集メンバーからジョホール・ダルル・タジムJDTの選手10名が招集を辞退し、これまでのメンバーとは大きく顔ぶれた変わったマレーシア代表は、今週12月21日(土)のミャンマー戦(ヤンゴン)で幕を開ける東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップに向けての最後の練習試合となった12月14日のモルジブ戦で、FW陣が期待以上(失礼!)の活躍を見せ、3-0で快勝しています。

この日の先発は、GKシーハン・ハズミ(ヌグリスンビラン)、DFはクザイミ・ピー(ヌグリスンビラン)、シャルル・ナジーム(スランゴール)、ドミニク・タン(サバ)の3バック、MFはアザム・アズミ(トレンガヌ)とV・ルヴェンティラン(PJシティ)を左右に配置し、中央はブレンダン・ガンとムカイリ・アジマル(いずれもスランゴール)の4人、FWはサファウィ・ラシド(JDT)、ダレン・ロック(サバ)、ファイサル・ハリム(トレンガヌ)という布陣で、キム・パンゴン監督は4日前のカンボジア戦からは5名を入れ替えています。

試合が行われたKLフットボールスタジアムは最大収容観客数1万8000人と、カンボジア戦が行われたブキ・ジャリル国立競技場の三分の一以下ですが、ブキ・ジャリルでのカンボジア戦では8332人と、スタンドがガラガラに見えたので、この日はさらに少ない公式発表観客数6002人でも、サイズ的にはむしろこちらで良かったかと。またカンボジア戦でナイキ社製の新しいホームユニフォームを披露したハリマウ・マラヤ「マラヤの虎」ことマレーシア代表は、この日は上下黒のアウェイユニフォーをお披露目しています。

試合の方は24分、この日、キャプテンマークをつけたサファウィ・ラシドから出たゴール前のボールへモルジブGKとDFの対応が遅れた隙をついてダレン・ロックがボールを奪いそのままシュート。これが決まって、マレーシアは1-0と先制します。後半に入ると、63分には今度がダレン・ロックが相手DFラインの裏に出したパスを受けたファイサル・ハリムがGKをかわしてゴールを決め2-0、さらに88分には途中出場のリー・タック(スリ・パハン)がゴールをめて3-0として、マレーシアがそのまま逃げ切っています。ファイサル、タック両選手は12月9日のカンボジア戦に続く2試合連続のゴールをとなりました。

またこの試合ではDFアリフ・ハイカル(スランゴール)が代表戦初出場を果たした一方で、今回の代表合宿に招集されたメンバーでは、FWラマダン・サイフラー(JDT)、FWハキミ・アジム(KLシティ)、MF R・コギレスワラン(PJシティ)、GKラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌ)、GKアズリ・ガニ(KLシティ)はカンボジア戦、そしてこの日のモルジブ戦とも出場機会がありませんでした。

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JDTの主力10人が代表招集を辞退した今回の代表チームは、ネット上では「B代表」などと揶揄されています。それでも代表初招集となった選手たちを含め多くの選手を実戦で起用するできたのは、AFF選手権での結果にかかわらず、選手層を厚くするための良い機会です。
 AFF選手権前に行われた2試合を振り返ると、個人的にはマレーシアの課題である攻撃で、帰化選手のリー・タックが活躍が目を引きました。34歳という年齢もあり、タック選手の帰化、そして代表招集には疑問の声が上がっていました。タック選手同様、FIFAの同一国で5年間プレーという規定に基づいて帰化し、代表選手となったブラジル出身のギリェルメ・デ・パウラ選手が代表チームでは活躍できなかったことにあります。しかし、それをものともせず、しかも2試合連続ゴールで自分の力を示したタック選手は、AFF選手権でも代表チームにとっては大きな戦力となることが期待されます。
 今回の2試合では前述のアリフ・ハイカルやリー・タックに加えて、GKカラムラー・アル=ハフィズ(クダ)、MFスチュアート・ウィルキン(サバ)、MFデヴィッド・ローリー(スリ・パハン)、シャミー・イスズアン(サラワク・ユナイテッド)、アリフ・イズワン(トレンガヌ)、そしてアルゼンチン出身でやはり今年マレーシア国籍を取得したエセキエル・アグエロ(スリ・パハン)と、8名を代表デビューさせたキム・パンゴン監督が、12月21日のミャンマー戦で開幕するAFF選手権でこの「B代表」をどこまで連れて行けるのかに注目したいと思います。

2022年12月14日
国際親善試合@KLフットボールスタジアム
マレーシア 3-0 モルジブ
⚽️マレーシア:ダレン・ロック(24分)、ファイサル・ハリム(63分)、リー・タック(88分)

下はこの試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

12月15日のニュース
Mリーグアウォーズ各賞の最終候補が発表

今季のマレーシアサッカー界で活躍した選手やチームに送られるナショナルフットボールアウォーズ2022の表彰式は、本日12月15日の午後9時(マレーシア時間)にオンラインで行われますが、その各部門の最終候補が発表されています。なお、このイベントはこちらから視聴可能です。

最優秀ゴールキーパー部門
最終候補に残ったのはシーハン・ハズミ(ヌグリスンビランFC)、カラムラー・アル=ハフィズ(PJシティFC)、ラーディアズリ・ラハリム(トレンガヌFC)の3名です。この部門でのサプライズは、2018年から4年連続でこの賞を受賞していたファリザル・マーリアスが、所属チームのジョホール・ダルル・タジムJDTがスーパーリーグ9連覇を果たしたにもかかわらず最終候補に残らなかったことでしょう。
 なお今季のスーパーリーグでのクリーンシートはファリザル選手の11回がトップ、次いでカラムラー選手が9回、3位がシーハン選手の7回、ラーディアズリ選手が5回となっており、強固なDF陣を持つとはいえ、出場試合20試合で11試合がクリーンシートのファリザル選手が最終候補に残らなかったのは謎です。
 その一方で今年「最も印象に残った」GKと言えば、シーハン選手です。クラブでは今季1部に昇格したヌグリスンビランFCの正GKとして、昇格初年度4位の好成績に貢献しています。さらに今年2月に就任したキム・パンゴン監督に3月の3カ国対抗(シンガポール)の代表チームに初招集されると、6月のAFCアジアカップ最終予選のバングラデシュ戦では待望のA代表デビューを飾りました。さらに9月のキングズカップ(タイ)では2試合に先発しフル出場するなど代表正GKに近づいています。ちなみにこのシーハン選手は2021年まではPJシティFCに所属しており、その時には今回最優秀GK部門の最終候補3名の内の1人、カラムラー選手の控えでしたが、昨季オフにヌグリスンビランFCへ移籍したことが功を奏しています。
 シーハン選手が最有力、それを追うのがカラムラー選手で、左膝前十字靭帯損傷から復帰した21歳のラーディアズリ選手はこの中では3番手というのがボラセパマレーシアJPの最優秀GK賞争いの予想です。

最優秀ディフェンダー部門
ここでも昨年の受賞者、マシュー・デイヴィーズが最終候補に残らず、今回選出されたのはザイミ・ピー(ヌグリスンビランFC)、ラヴェル・コービン=オング、シャールル・サアド(いずれもジョホール・ダルル・タジムJDT)です。クラブはもちろん、いずれも代表選手の主力選手でもあるこの3選手の中で、やはり今年「最も印象に残った」選手を選ぶとすれば、クザイミ選手でしょう。GK部門のシーハン選手同様、今季のヌグリスンビランFCの躍進に貢献したクザイミ選手は、昨季はUITM FCでプレーしていましたが、チームが2部降格となったことから、昨季終了後にヌグリスンビランFCに移籍しています。
 シーハン選手同様、今年3月の3カ国対抗に出場する代表チームに2016年以来6年振りに招集されると、その後はセンターバックのポジションを、今回も最優秀DF部門候補になっているシャールル・サアドやディオン・コールズ(チェコ1部FKヤブロネツ)と争いながらも、徐々に出場機会を増やし、キム監督の起用に応えています。
 ボラセパマレーシアJP的には印象に残ったクザイミ選手を推したいところですが、と、2018年、2019年と2年連続でこの賞を受賞しているシャールル選手や、国内リーグ、ACL、代表戦と年間を通して安定した力を見せたコービン=オング選手との勝負となると、コービン=オング選手が初受賞に一番近いのではないでしょうか。

最優秀ミッドフィルダー部門
昨年に続き2年連続4階目の受賞を狙うバドロル・バクティアル(サバFC)にいずれも初受賞を目指すアフィク・ファザイル(JDT)とムカイリ・アジマル(スランゴールFC)が候補となっている最優秀ミッドフィルダー部門はベテラン、中堅、若手の争いです。
 ユース時代を含めると実に16年間クダFC一筋だったバドロル選手は、U23代表時代の監督だったオン・キムスイ氏が監督を務めるサバFCに今季から移籍し、昨季はリーグ9位だったチームを今季は3位に躍進させる原動力となりました。一方、ムカイリ選手はシーズン序盤は空回りする場面が目についたもののと、特にタン・チェンホー前代表監督が所属チームのスランゴールFC監督に就任以降は、チームの司令塔としてリーグ戦とカップ戦での9連勝に貢献しています。また2年連続でこの部門の候補に上がったアフィク選手は、リーグ線、カップ戦など合わせて27試合に出場し、いわゆる「汗かき役」の選手として活躍し、チームの国内三冠達成に貢献しました。
 チーム成績に対する貢献度で言えばバドロル選手が2年連続の最有力候補、大穴でムカイリ選手、というのがボラセパマレーシアJPの予想です。

最優秀フォワード部門
今年の最優秀フォワード部門は、アリフ・アイマン(JDT)、ダレン・ロック(PJシティFC)、ファイサル・ハリム(トレンガヌFC)と、昨年の最優秀フォワード部門と全く同じ3選手が候補となっています。昨年19歳で初受賞したアリフ選手が2年連続受賞を狙う一方で、今季、マレーシア人選手として最多ゴールを決めたいわゆるアウトアンドアウトストライカーのロック選手、そしてトレンガヌの今季リーグ2位の原動力となったファイサル選手はいずれも見劣りしない選手です。ゴール数で見ると、ロック選手が12ゴール(24試合)でリードし、以下、ファイサル選手が11ゴール(30試合)、アリフ選手が8ゴール(31試合)となっています。しかしアシスト数はアリフ選手がトップの16、続いてファイサル選手が14アシスト、ロック選手は2アシストとなっています。
 ベルグソン・ダ・シルヴァという絶対的なストライカーがいるJDTでは、前線にボールを運び、ベルグソン選手に供給する役割を担うアリフ選手、1人でも敵陣に残ってとにかくゴールを狙うロック選手、いずれも良い選手ですが、自身のドリブルで相手DFをかわし、自身でゴールを狙うだけでなく、臨機応変にパスも出せるファイサル選手は今年一番成長した選手でもあり、ボラセパマレーシアJPは、ファイサル選手を押したいです。

最優秀監督部門
昨年に続きノミネートされたボヤン・ホダック(KLシティFC)、ナフジ・ザイン(トレンガヌFC)の両氏にオン・キムスイ(サバFC)が加わって争われる最優秀監督部門。昨年の受賞者ホダック監督は、KLシティFCを32年振りに優勝へ導いた功績が大きかったですが、今季もチームをAFCカップ決勝に導いており、その手腕には大会評価が当てられそうです。南アジアや中央アジアのクラブを破り、2015年のJDT以来となる東南アジアのクラブとしては2チーム目となる決勝進出の実績に対し、トレンガヌFCをリーグ2位に導いたナフジ監督、そして昨季9位のサバFCを同じく3位に導いたオン監督の三つ巴の争いです。
 リーグ戦では6位にとどまったものの、ナフジ、オン両監督に比べると潤沢な資金があるとは言えないKLシティFCをAFCカップ決勝に導いたその功績は、今季の最優秀監督に値いし、2年連続受賞となるだろうとボラセパマレーシアJPは考えています。

最優秀外国籍選手部門
昨年この賞を受賞したロメル・モラレス(KLシティFC)は、ケガがちだったこともあり、シーズンを通して調子が上がりませんでした。そんな中、今年はモラレス選手のチームメートのパウロ・ジョズエ、そしていずれもJDTのベルグソン・ダ・シルヴァ、フェルナンド・フォレスティエリの3選手がノミネートされています。
 いずれも今季活躍した選手3名ですが、今季に関してはベルグソン選手一択となるのは明らかでしょう。今季リーグ新記録となる29ゴール(22試合)を挙げ、カップ戦も合わせれば今季は何と41ゴール(30試合)、さらにACLでも6試合で6ゴールとあわや年間50ゴールに迫る勢いでした。リーグ3位のフォレスティエリ選手でも13ゴール、ジョズエ選手は6ゴールと、その差は歴然としています。ジョズエ選手もキャプテンとしてチームをAFCカップ決勝に導いたリーダーシップは素晴らしかったですが、それでもボラセパマレーシアJPが予想する必要もないくらい確実なベルグソン選手の受賞です。

最優秀若手選手部門
今週末から始まる東南アジアサッカー連盟AFF選手権出場のA代表候補にもなっているアザム・アズミ(トレンガヌFC)、ムカイリ・アジマル(スランゴールFC)そして、今回のA代表招集を辞退したアリフ・アイマン(JDT)の3名がノミネートされている最優秀若手選手賞。昨年はアリフ選手が受賞しており、これまで2年連続受賞がないことからも、ここはムカイリ、アザム両選手の一騎打ちが予想されます。(勝手な想像ですが。)今季は所属チームで主力として活躍し、甲乙つけがたい両選手ですが、ここは単純にチームの成績が影響するかも知れません。アザム選手の所属するトレンガヌFCは今季2位、ムカイリ選手が所属するスランゴールは5位でしたので、ここはアザム選手が賞レースでは一歩リートしているのではないかと、というのがボラセパマレーシアJPの予想です。

ナショナルフットボールアウォーズでは、こららの賞のほか、各賞の受賞から選ばれる年間MVPやファンが選ぶベストXIや年間ベストゴールなども合わせて発表されることになっています。