先月8月に開催され、ベトナムがタイを破り大会2連覇を果たしたヒュンダイカップことアセアン(東南アジア諸国連合)選手権には、東南アジアサッカー連盟AFFに所属する12カ国の内、オーストラリア以外の11カ国が参加しました。30年前に始まったこの大会は、かつては東南アジアを熱狂させましたが、近年はそれもやや下火に。その理由の一つはこの大会がFIFA国際マッチカレンダー外に行われること。マレーシアで言えば、この国の絶対王者である某チームは、代表からの招集に応じる義務がないことを盾に、主力どころかトップチームの選手は誰1人を代表に参加させていません。しかしこれはマレーシアに限ったことではなく、どの国もベストメンバーと呼ぶには心許ないチーム編成となっています。
そんな中で、昨年2025年10月にマレーシアでアセアン首脳会議が開催された際、議長国マレーシアを訪れていたFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長がアセアンのカオ・キム・ホルン事務総長と合意覚書に署名し、開催が決定したのがFIFAアセアン杯でした。オーストラリアを除いたAFF加盟国を1部(正式名称はプレミアディビジョン)6カ国と2部(同チャレンジディビジョン)5カ国に分けて行われる大会は、ホスト国のインドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールにバングラデシュとパキスタンが加わった8チームが1部、また香港をホスト国としてミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ、東ティモールの6チームが2部に参加します。
ちなみにこのアセアン杯には、当初は中国やインドの参加も発表されていました。しかし中国は、来年1月開幕のアジア杯にむけて国内で同じアジア杯出場を決めているウズベキスタンや北朝鮮などを招いた大会を同時期に予定しているとして、FIFAからの招待を断っています。(しかし、結局、愛知でのアジア大会サッカー競技と同時期となったこの大会は他国代表との調整ができなかったのか開催されませんでした。)またインドは10月3日にコルカタでブラジルとの対戦が組まれており、FIFAが規定する1回の国際マッチカレンダーで行うことができる最大試合数4を上回る可能性が出た上、代表を2チームに分けてアセアン杯とブラジル戦を実施する案がFIFAに却下されたことから、出場を取りやめ、代わりにバングラデシュが出場を決めたといった経緯もあります。
マレーシアが入った1部プレミアディビジョンは、A組にホスト国インドネシア(直近のFIFAランキング119位)、マレーシア(同136位)、シンガポール(同148位)、バングラデシュ(同182位)が、B組にはタイ(同92位)、ベトナム(同97位)、フィリピン(同135位)、パキスタン(同198位)が入っています。一方の2部チャレンジディビジョンは、A組にホスト国の香港(同156位)、ラオス(同185位)、ブルネイ(同194位)、B組にミャンマー(同158位)、カンボジア(同175位)、東ティモール(同201位)が入っています。なお、この大会はグループステージ終了後、各組の2位同士が3位/4位決定戦にまわり、同1位同士が決勝に進む方式で行われます。また1部プレミアディビジョンの優勝チームには100万米ドルが、2部チャレンジディビジョンの優勝チームには30万米ドルが優勝賞金として与えられる他、参加する全チームに出場費12万5000米ドルが与えられます。
1部は9月25日に、2部は9月24日に既に開幕しており、マレーシアは1部プレミアディビジョンの開幕試合でバングラデシュと対戦しました。バングラデシュは、かつてマレーシアリーグのスリ・パハン監督を務めたこともある元米国代表キャプテンのトマス・ドゥーリー監督が指揮を取ります。この試合の両チームの先発XIは以下の通りです。この大会から使用される2026/27年の代表ユニで写っているのは、昨年11月のアジア杯予選ネパール戦でハムストリングを痛め、その後は手術を受けるなど半年近く代表を離れ、この試合が復帰戦となるアリフ・アイマン(ジョホール)です。24歳ながら国内リーグMVP4度受賞のスーパースターが、この試合では初めて代表の10番を背負います。またいずれもマレーシアで5年以上プレーしたことで代表資格を得たリーグ通算最多ゴール記録を更新中のブラジル出身FWベルグソン・ダ・シウバ、アルゼンチン出身のMFマヌエル・イダルゴ(いずれもジョホール)、そして母親がマレーシアのペナン生まれであることから代表資格を得たオーストラリア出身のブラッド・タップ(ジョホール)の3選手が代表デビューを果たしています。


前述のヒュンダイカップに続き、このアセアン杯でもマレーシア代表の指揮を取るタン・チェンホー暫定監督は、ベルグソンをCF、左右のWGにファイサル・ハリム(スランゴール)とアリフの3人を配置し、中盤の3人は所属するスランゴールでもアンカーを務めるノーア・ライネの前にイダルゴとスチュアート・ウィルキン(ジョホール)を並べています。前任のピーター・クラモフスキー監督(現英国4部サフォード監督)が好んだ3バックからタン監督になり4バックを採用するマレーシアですが、クラモフスキー監督時代はSHやSBで起用されることが多かったキャプテンのディオン・クールズ(C大阪)は、タップとともにCBを務め、左右のサイドバックはラヴェル・コービン=オング(ジョホール)とクエンティン・チェン(ジョホール)が起用されています。
と、ここまで書きましたが、この試合はマレーシア時間で午後5時、現地時間午後4時キックオフという時間帯に行われたため、私自身は試合のハイライト映像しか見ていません…。
18分の1点目は、ノーア・ライネが相手DFラインの裏へ送った絶妙のパスをアリフ・アイマンがGKの股下を抜いてゴール。37分の2点目は相手ペナルティエリア近くでボールを奪ったスチュアート・ウィルキンからボールを再びアリフが落ち着いて蹴り込みゴール。後半の52分にはラヴェル・コービン=オングのクロスを受けたベルグソンが自身の代表デビューを祝う初ゴールで3-0としたマレーシアが、そのままのスコアラインで勝利しています。
FIFAアセアン杯2026 プレミアディビジョンA組第1節
2026年9月25日@ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム(ジャカルタ、インドネシア)
バングラデシュ 0-3 マレーシア
⚽️マレーシア:アリフ・アイマン2(18分、37分)、ベルグソン・ダ・シウバ(52分)
バングラデシュ対マレーシア戦の後に行われたA組のもう一試合は、先発11名全員が国外生まれという帰化選手軍団インドネシアが、ラグナル・オラトマンゴエン(インドネシア1部ブルシブ・バンドン)とオレ・ロメニー(オランダ1部フォルトゥナ・シッタート)のゴールでシンガポールに快勝しています。なおシンガポールは70分にスランゴールでプレーするサフワン・バハルディンがVARが入って1発レッドで退場になっています。
FIFAアセアン杯2026 プレミアディビジョンA組第1節
2026年9月25日@ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム(ジャカルタ、インドネシア)
インドネシア 2-0 シンガポール
⚽️インドネシア:ラグナル・オラトマンゴエン(13分)、オレ・ロメニー(74分PK)
シンガポールの仲村京雅選手は先発して80分に交代しています。
第1節で勝利したマレーシアとインドネシア、そしていずれも黒星スタートとなったシンガポールとバングラデシュは、本日9月28日の第2節でそれぞれ対戦します。バングラデシュ戦では先発11名中8名が帰化選手だったマレーシアは、第1回開催国としてなりふり構わず優勝を目指すインドネシアとどのような試合を繰り広げるのかに注目が集まります。
かつては同じ国だったシンガポール対マレーシアは、両国をつなぐ陸路にちなんで「コーズウェイダービー」と呼ばれる強烈なライバル関係にありますが、インドネシア対マレーシアもそれに勝るとも劣りません。現在の両国がある地域は、13世紀から16世紀にかけて栄えた最後の非イスラム王朝のマジャパヒト王国の影響下にありました。そこからこの辺りの「島しょ部」を表す語「ヌサンタラ」を引用してヌサンタラダービーと呼ばれる両国の対戦は、やはり互いに負けられないマッチアップです。過去10試合の成績はマレーシアの4勝1分5敗とほぼ互角ですが、直近のヌサンタラダービーは2021年12月でした。つまりインドネシアが本格的に帰化選手によるチーム強化を始めて以降、今日の試合が初のヌサンタラダービーとなります。またマレーシアがジャカルタで試合をするのは2019年9月以来7年ぶりで、どのようなアウェイの洗礼が待っているのかも気になります。
プレミアディビジョンB組は、東南アジア2強のタイとベトナムがそれぞれパキスタンとフィリピンを破って順当に勝利しています。タイは英国生まれで年代別英国代表の経験もある22歳FWジュード・スーンサップ=ベル(タイ1部ポート)のゴールなどで格下のパキスタンに快勝しています。しかし、ベトナムは先のヒュンダイカップではマレーシアとの準決勝で3ゴールを挙げて、マレーシアの16年ぶりの決勝進出を阻んだグエン・スアン・ソン(ベトナム1部ナムディン)が試合中にハムストリングを痛めて途中交代しています。試合中に足を押さえた倒れたグエン・スアン・ソンは、その後に病院でMRIなどの検査を受けた結果、肉離れで全治6週間と報じられており、今大会残り試合の出場は絶望です。ベトナムは明日9月29日の第2節でヒュンダイカップ決勝の再戦となるタイ戦が控えていますが、エース不在で果たしてどのような結果になるのでしょうか。
FIFAアセアン杯2026 プレミアディビジョンB組第1節
2026年9月26日@シ・ジャラク・ハルパット・スタジアム(バンドン、インドネシア)
パキスタン 0-4 タイ
⚽️タイ:ティーラサック・ポーイピマイ2(31分、84分)、ジュード・スーンサップ=ベル(41分)、ハリス・ゼブ(64分OG)
シンガポールの仲村京雅選手は先発して80分に交代しています。
FIFAアセアン杯2026 プレミアディビジョンB組第1節
2026年9月26日@シ・ジャラク・ハルパット・スタジアム(バンドン、インドネシア)
ベトナム 1-0 フィリピン
⚽️ベトナム:グエン・ディン・バック(25分)
フィリピンのポールとジェファーソンのタビナス兄弟はいずれも先発してフル出場しています。
