6月10日のニュース:東南アジア競技大会延期案にマレーシアは反対、トレンガヌFCはヴァーチャルチームを発足、JDTのU21チームのシンガポールリーグ参加希望に対し地元は賛否両論

東南アジア競技大会延期案にマレーシアは反対
 マレーシアの通信社ブルナマは今年2021年11月21日に開幕予定の東南アジア競技大会延期案に反対の意を表明したと報じています。
 東南アジア版オリンピックとも言える東南アジア競技大会通称シーゲームズは隔年開催の大会で、第31回大会となる2021年大会はベトナムのハノイを中心に開催されることになっていますが、先日、オンラインで開催された東南アジア競技大会連盟SEAGFの会合席上で、主催者となるベトナムより新型コロナウィルス感染拡大を理由に主催者側から来年2022年5月または7月への延期が提案されたということです。この対案に対してSEAGF所属国のうち、開催国ベトナムともう1カ国が支持を表明した一方で、マレーシアを含めた8カ国が反対を表明、ラオスは意思表明を行わなかったということですが、反対多数により主催者は2週間以内にSEAGF所属各国が了承できる新たな提案を行う必要があるということです。
 反対の理由についてマレーシアオリンピック協会OCMのモハマド・ノルザ・ザカリア会長は、来年2022年には*コモンウェルス競技大会(7月28日から8月8日まで英国バーミンガムで開催)、アジア競技大会(9月10日から25日まで中国杭州市で開催)など大会が続き選手の日程が過密になることを挙げています。
 東南アジア競技大会ではサッカーはオリンピック同様、U23代表チームの大会となっていますが、2024年パリオリンピック出場を目指すマレーシアはU19代表チームを出場させることをマレーシアサッカー協会が明らかにしています。

トレンガヌFCはヴァーチャルチームを発足
 Mリーグ1部のトレンガヌFCがEスポーツにも参戦することをクラブの公式サイトで発表しています。
 トレンガヌFCを運営するTFC社は、同じトレンガヌ州を拠点とするEスポーツマレーシアトレンガヌ社(ESMT)とパートナー契約を結び、仮想空間で「ヴァーチャル」トレンガヌFCを立ち上げるということです。このようなヴァーチャルチームを発足させるのはMリーグのクラブとしては初めてということです。
 TFC社のアブドル・ラシド・ジュソーCEOは、トレンガヌFCがEスポーツに参戦することで、クラブのサポーターなどにもEスポーツを体験する機会が提供できるだけでなく、このヴァーチャルチームを国内だけでなく国外へのトレンガヌFCのマーケティングの手段として活用したいと話しています。
 なおこのヴァーチャルトレンガヌFCの選手は、トレンガヌFCのユニフォームと同じユニフォームを着用して、EAスポーツのFIFAシリーズやプロエヴォリューションサッカーPES(日本語名ウイニングイレブン)などの国際大会にも出場するということです。
 

JDTのU21チームのSリーグ参加希望に対し地元は賛否両論
 Mリーグ1部JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下はJDTのU21チーム、JDT IIIをシンガポール1部のSリーグに参加するための交渉が行われていることを明らかにしました。
 イスマイル殿下はクラブがU21チームに多額の投資を行う一方で、マレーシア国内ではU21チームが出場できる試合が少ないことがその理由で、これに対してシンガポールサッカー協会FASのリム・キアトン会長は、Sリーグへの参加が公式に申請された場合、シンガポール国内サッカーにとって利益になるようであれば、JDT IIIの参戦を検討すると前向きな姿勢を見せています。
 これについてシンガポールの英字紙ストレイトタイムズはこのJDT IIIのSリーグ参加希望に対する様々な意見を取り上げています。
 元シンガポール代表のR・サシクマル氏はイスマイル殿下のサッカーに対する考えには共感するが、JDT IIIがU21のサードチームだとして、シンガポールサッカーにとっては何の利益もないとして、Sリーグ参加には反対だと述べています。さらに2034年のワールドカップ出場を目指しているシンガポール代表を強化するためには、外国のクラブ参加を認める代わりにSリーグに参加する国内クラブの数を現在の7から10に増やすべきだと述べています。
 またやはり元代表のシャーリル・ジャンタン氏はFASに対してSリーグの存在意義を再検討するよう求めています。強い国内リーグが強い代表チームや質の高いシンガポール代表選手を生み出す基盤になるとして、JDT IIIの参加はシンガポール人選手のレベルアップには全く繋がらないと話しています。
 その一方でSリーグ昨季5位のバレスティア・カルサFCの副会長でFASの理事でもあるダーウィン・ジャリル氏は、リーグ内の競争を激しくするようなクラブの参加は認めるべきだとしています。チーム数が増えることは歓迎すべきことで、チーム数が増えれば試合数も増えることから、国内クラブ数が増えることが望ましいものの、当座しのぎとしてはJDT IIIのSリーグ参加は悪いアイディアではないと述べています。
******
 昨季2020年シーズンのSリーグ優勝チームはアルビレックス新潟シンガポール、そしてその前年2019年シーズンブルネイのDPMMが優勝といずれも外国のクラブが2連覇を達成しています。また、それ以前にもマレーシアのU22代表が2012年に、またU21代表が2013年から2015年にSリーグに参加(同時にシンガポールU22がMリーグに参加)していたこともあります。ちなみにシンガポールU22代表は2013年にはMリーグ1部スーパーリーグで優勝しています。
 なお現在のSリーグは8チームが所属していますが、アルビレックス新潟シンガポールは先発に必ずシンガポール人選手2名を含めること、またベンチ入りも含めて最低10名のシンガポール人選手を登録することなどが義務付けられています。

6月2日のニュース:「秘密兵器」ディオン・コールズが代表に合流、JDT退団のハリス・ハルンはシンガポール代表を離脱、ディオン・コールズの代表加入にワン・クザインが反応

「秘密兵器」ディオン・コールズが代表に合流
 マレーシアサッカー協会FAMは公式Facebook上でベルギー出身のDFディオン・コールズがFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選に向けてアラブ首長国連邦のドバイで合宿中のマレーシア代表チームに合流したことを発表しています。
 前日にはFAMのハミディン・アミン会長自身がFAMの公式Youtubeチャンネルで代表26番目の選手が新たに参加することを知らせるティーザー映像を投稿していました。
 ベルギー出身のコールズ選手は25歳で2020/2021年シーズンはデンマーク1部で2位となったFCミッティランでプレーし、今季は22試合中21試合に出場した他、UEFAチャンピオンズリーグにも3試合出場しています。また、ベルギーの年代別代表でのプレー経験があり、U19代表時代にはUEFA U19選手権にも出場しています。
 FAMの公式Facebookへの投稿によると、コールズ選手がマレーシア代表としてプレーする意思を表示して以来、FAMはFIFAの選手地位委員会よりコールズ選手がベルギー代表(フル代表)としてのプレー経験がないことの承認や、コールズ選手がサラワク州クチン生まれで母親がマレーシア人でもあることなどを示した上で、ベルギーサッカー協会との交渉を経て、マレーシア代表としてプレーする資格取得の申請を行いました。その結果、マレーシア代表としてプレーする資格を得られると、FAMは直ちにアジアサッカー連盟AFCにW杯アジア2次予選出場資格の申請を行い、その申請が認められたことで晴れて今回の代表合流発表となったとしています。
 またコールズ選手がマレーシア代表としてプレーすることを決める際には、Mリーグ1部JDTのオーナーでジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下の尽力があったこともFAMの発表では明らかにされています。
(写真はFAMの公式Facebookに掲載されたハミディン会長とコールズ選手の写真)

JDT退団のハリス・ハルンはシンガポール代表を離脱
 Mリーグ1部JDTを退団し、母国シンガポール1部のライオンシティセイラーズへ移籍したハリス・ハルンは、6月3日からサウジアラビアのリヤドで行われるW杯予選に出場するシンガポール代表を辞退することをシンガポールサッカー協会FASが公式サイト上で発表しています。
 代表チームの主将を務めるハリス選手は家庭の事情を理由に代表を辞退し、リヤドへ移動するチームには帯同しないということです。
 ハリス選手の代表辞退についてシンガポール代表の吉田達磨監督は「どんなチームであれ主将を失うのは当然、大きな損失である。自分が監督に就任以来、ハリス選手は代表チームのリーダーとしてチームに尽くしてくれてきた。」とハリス選手の代表辞退を惜しみつつも、ハリス選手不在のままであっても試合に臨まなければならない現実と向かい合い、戦術の変更は必要なものの、勝利を目指す姿勢は変わらないと話しています。
 シンガポールは6月3日から始まるFIFAワールドカップ2022年大会アジア2次予選兼AFC選手権アジアカップ2023年大会予選D組でサウジアラビア、ウズベキスタン、パレスチナとの対戦が控えています。

ディオン・コールズの代表加入にワン・クザインが反応
 上で取り上げたディオン・コールズのマレーシア代表加入のニュースに対し、同じく将来の代表候補とされるアメリカ在住のワン・クザイン・ワン・カマルがソーシャルメディアに意味深な投稿しているとサッカー専門サイトのヴォケットFCが報じています。
 マレーシアサッカー協会FAMによるコールズ選手の代表加入を知らせる投稿を引用した上で、疑問を表すような絵文字をつけて再投稿しています。
 ヴォケットFCは、この投稿はワン・クザイン選手自身も代表招集があれば応じる用意があるという意味ではないかと分析しています。
 両親がマレーシア人のワン・クザイン選手はこれまでフル代表に招集されたことはありませんが、2019年の東南アジア競技大会通称シーゲームズに出場するU23代表に招集されたことはあります。しかし、この時は書類の不備などが理由で、結局、最終的には大会に出場できませんでした。
 22歳のワン・クザイン選手はアメリカ2部リーグにあたるUSLチャンピオンシップのスポルティング・カンザスシティIIから今季は同じUSLのリオ・グランデ・バレーFCトロスに在籍し、今季はここまでチームの全試合5試合(うち先発4試合)に出場しています。

1月2日のニュース:サファウィ・ラシドが2020年アジア最優秀選手の候補に、UITM FCはクロアチア出身GKと契約、クダFCはシンガポール代表MFを獲得

サファウィ・ラシドが2020年アジア最優秀選手の候補に
 スポーツ専門サイトのフォックススポーツアジアが選ぶ2020年アジア最優秀選手にノミネートされた24名の選手が発表され、その中にMリーグ1部ジョホール・ダルル・タジムJDTのサファウィ・ラシドが含まれていることが明らかになりました。
 昨季2020年シーズンは国内リーグMリーグでは7試合出場で7ゴールと活躍しただけでなく、アジアサッカー連盟AFCチャンピオンズリーグACLヴィッセル神戸戦ではゴールを決めるなどアジアレベルでも名前を残しています。(ただしJDTは新型コロナウィルスによる中断を挟んで再開されたACLグループステージの出場を辞退したため、正式記録扱いになっていません。)
 ノミネートされた24名中唯一、東南アジア出身のサファウィ選手ですが、残る23選手の中にはこの賞を過去6年間で昨年までの3年連続を含む計5回受賞しているソン・フンミンやファン・ヒチャン(いずれも韓国)や久保建英や遠藤航、冨安健洋らの日本勢、ショジャー・ハリルザデー(イラン)がいる他、ノミネート資格がAFC加盟国の代表チームや国内リーグでプレーする選手であることからJリーグでプレーするアンドレス・イニエスタ(スペイン)や中国リーグでプレーするアレックス・テイシェイラ(ブラジル)もノミネートされています。
(下はフォックススポーツアジアのFacebookに掲載されたノミネート選手のリスト)

UITM FCはクロアチア出身GKと契約
 昨季2020年シーズンに初めてMリーグ1部に昇格したUITM FCは、昇格1年目のシーズンを6位で終える好成績を収めました。しかしその躍進に貢献したラビ・アタヤ(レバノン)ら外国籍選手が他のMリーグクラブに移籍するなどして退団し、戦力ダウンが予想されています。
 そんな中、UTIM FCがクロアチア出身のGKドミニク・ピチャックと契約したとサッカー専門サイトのヴォケットFCが報じています。今回初めてアジアでプレーするというピチャック選手は28歳で、母国クロアチアのNKディナモ・ザグレブを皮切りにドイツでもプレーし、 昨季2020年シーズンはドイツ4部のSVバベルスベルク03に所属していたということです。この他、ピチャック選手はU19やU21代表でもプレー経験もあるということです。

クダFCはシンガポール代表MFを獲得
 Mリーグ1部クダ・ダルル・アマンFC(KDA FC-今季から、昨季まではクダFA)がシンガポール代表MFアヌマンサン・モハン・クマールを獲得しました。
 シンガポールの英字紙ニューペーパー電子版は、昨季2020年シーズンはシンガポールリーグのホウガン・ユナイテッドでプレーした26歳のアヌマンサン選手が1年契約結んだと報じ、その給料はホウガン・ユナイテッドFC時代から倍増したとも伝えています。
 「アヌ」の愛称で知られるアヌマンサン選手は国外でのプレーは初めていうことですが、同じシンガポール出身のアイディル・シャリンKDA FC監督がシンガポールリーグのホーム・ユナイテッドFC(現ライオンシティセイラーズFC)の監督時代にその下でプレーした経験があるそうです。
 そのアイディル監督もアヌマンサン選手に注目しており、現在は選手として成熟しているとし「現在、KDA FCには埋めなければいけないポジションがあるが、アヌはそこにピッタリとはまる選手である。」と話しています。
 KDA FCの他、今季からMリーグ1部に昇格するペナンFC(今季から、昨季まではペナンFA)、さらには国内リーグのタンピネス・ローヴァーズFCやライオン・シティー・セイラーズFCなどからも獲得オファーを受けていたことを明かしたアヌマンサン選手は、「これまでもいつか国外でプレーしたいと思ってきたが、今がその時だと決断した。」と述べています。
 アヌマンサン選手のKDA FC加入で、今季Mリーグでプレーするシンガポール出身選手はハリス・ハルン(JDT)、サフアン・バハルディン(スランゴールFC)、そしてKDA FCからペラFCに移籍したシャキル・ハムザと合わせて4名となります。