Mリーグ2022年シーズンは3月5日ピアラ・スンバンシー(チャリティーカップ)で開幕しますが、本日より全6回で今季のMリーグ1部スーパーリーグの12クラブを紹介します。第1回は昨季の覇者ジョホール・ダルル・タジムJDTと2位のクダ・ダルル・アマンFCです。
ジョホール・ダルル・タジムJDT(2021年シーズンスーパーリーグ優勝)
本拠地: スルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州イスカンダルプテリ)
2021年シーズン成績:1位(18勝3分1敗)得点50(リーグ1位)失点9(同1位)
過去5シーズンの成績:2017年1位-2018年1位-2019年1位-2020年1位-2021年1位
監督:ベンヤミン・モラ(メキシコ)
外国籍選手(*は新加入選手):
FWベルグソン・ダ・シルヴァ(ブラジル)
*FWフェルナンド・フォレスティエリ(アルゼンチン/イタリア)
*FWムサ・シディベ(マリ)
FWフェルナンド・ロドリゲス(ブラジル)
*FWビエンベニード・マラニョン(フィリピン-アセアン枠)
MFレアンドロ・ベラスケス(アルゼンチン)
DFマウリシオ(ブラジル)
DFシェーン・ローリー (オーストラリア-AFC枠)
*DFカルリ・デ・ムルガ(フィリピン-アセアン枠)
主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
#GKファリザル・マーリアス
#DFアイディル・ザフアン
#DFラヴェル・コービン=オング
#DFマシュー・デイヴィーズ
#*DFシャーミ・サファリ(スランゴールFCより加入)
#DFアダム・ノー・アズリン
#DFシャールル・サアド
MFナチョ・インサ
MFサフィク・ラヒム
MFアフィク・ファザイル
#MFナズミ・ファイズ
#MFシャマー・クティ・アッバ
*MFナサニエル・シオ・ホング・ワン(英国1部ウルヴァーハンプトンU23より加入)
#FWサファウィ・ラシド
#FWアキヤ・ラシド
#FWアリフ・アイマン
FWラマダン・サイフラー
#FWモハマドゥ・スマレ
#FWギリェルメ・デ・パウラ
チーム紹介:
ジョホール州王室の皇太子トゥンク・イスマイル殿下がオーナーを務めるJDTはスーパーリーグを2014年から7連覇中と国内では敵なしのクラブ。潤沢な資金で今季もフェルナンド・フォレスティエリ(セリエAのウディネーゼから加入)、ムサ・シディベ(スペイン2部のSDポンフェラディーナから加入)、ビエンベニード・マラニョン(フィリピン1部ユナイテッドシティより加入)、カルリ・デ・ムルガ(Mリーグのトレンガヌより加入)ら外国籍選手を獲得しています。さらにマレーシア代表シャーミ・サファリ(スランゴール)に加え、英国生まれながらマレーシア人の母親を持つ21歳のナサニエル・シオ・ホング・ワンを英国1部ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFCU23から獲得しマレーシア人選手として獲得するなど、リーグ戦はもちろん悲願のACLグループステージ突破に向けて余念がありません。
昨季からのメンバーを見てもリーグ2位の23ゴール(22試合)を挙げたエースのベルグソン・ダ・シルヴァに加え、マレーシア人選手もリーグMVPを獲得した19歳のアリフ・アイマン、スズキカップ2020で復活の兆しを見せた2018年と2019年のリーグMVPサファウィ・ラシド、さらに同じスズキカップ2020でゴールを決めたアキヤ・ラシドやシャールル・サアドなどメンバーははほぼ全員が代表選手という顔ぶれです。
なおMリーグ1部スーパーリーグの外国籍選手枠はAFC枠とアセアン枠を含めた5名、2部プレミアリーグはAFC枠を含めた4名ですが、JDTはセカンドチームのJDT IIが2部プレミアリーグに所属していることもあり、1部5名と2部4名の合わせて9名の枠いっぱいに外国籍選手を獲得しています。Mリーグを運営するMFLはトップチームとセカンドチームの間でのシーズン中の選手の入れ替え時期や回数に制限を設けていないため、9名の外国籍選手の中から調子の良い5名の選手をトップチームに置き、それ以外の4名の選手はセカンドチームでプレーさせることが可能です。個人的にはルールの盲点のような気もしますが、マレーシアのサッカーファンは「JDTのようにしたければ、他のクラブのセカンドチームをプレミアリーグでプレーさせれば良いだけだ」と、この仕組みにはあまり疑問を持っていないようです。
ボラセパマレーシアJP的注目選手:
・シャーミ・サファリ
ユース時代からプレーするスランゴールを飛び出したのは、ここ数年タイトル争いに絡めていないスランゴールへの不満か、それともより高いレベルでのプレーを目指す向上心からか。代表でも右サイドバックを争うマシュー・デイヴィーズとのチーム内での競争に勝てば、代表でも再び活躍できる日が訪れる日もそう遠くはなさそうです。
・ナサニエル・シオ・ホング・ワン-トゥンク
イスマイル殿下の帰化選手コレクションに新たに加わったシオ選手。MFが十分どころか多すぎるJDTに加わるシオ選手は守備的MFという触れ込みですが、ベテランのアイディル・ザフアンのバックアップという形でのデビューも考えられます。マレーシアの他に父親の出身国である中国や出生地の英国の代表としてプレーできる機会がある中でマレーシアを選んだのはなぜかにも興味が湧きますが、JDTは代表入りの近道ということもあるのかも知れません。
クダ・ダルル・アマンFC(2021年シーズンスーパーリーグ2位)
本拠地: ダルル・アマンスタジアム(クダ州アロースター)
2021年シーズン成績:2位(13勝4分5敗)得点44(リーグ3位)失点9(同4位)
過去5シーズンの成績:2017年4位-2018年6位-2019年4位-2020年2位-2021年2位
監督:アイディル・シャリン・サハク(シンガポール)
外国籍選手(*は新加入選手):
*FWロナルド・ンガ(カメルーン)
*FWデニス・ブシェニング(タイ/ドイツ-アセアン枠)
*MFデチ・マルセル(コートジボアール)
*DFチャン ソグォン(韓国-AFC枠)
*DFマルク・バレス(アンドラ)
主なマレーシア人選手(*は新加入選手、#は2021年にマレーシア代表に招集された選手):
GKシャーリル・サアリ
GKイフワット・アクマル
DFロドニー・ケルヴィン
DFロクマン・ハキム
DFファイルズ・ザカリア
*MFカイルル・アズリン(ペナンFCより加入)
MFアミルル・ヒシャム
MFファズルル・ダネル
MFファイアッド・ズルキフリ
MFアリフ・ファルハン
FWシャズワン・ザイノン
FWフィクリ・ズルキフリ
*FWアメル・アザハル(ペナンFCより加入)
#*FWアル=ハフィズ・ハルン(ペナンFCより加入)
#*FWシャフィク・アフマド(JDTより期限付き移籍で加入)
チーム紹介:
昨季途中に開幕から給料未払いだったことが明らかになったクダ。さらにMリーグがFIFA国際マッチデー期間に試合を開催したことで、自国の代表に招集されたリベリア代表のクパー・シャーマンやレバノン代表のラビ・アタヤがシーズン中に離脱するなど、チームの士気も上がらず、ベストメンバーで戦えない試合も少なくありませんでした。しかしシンガポール出身のアイディル・シャリン監督がその手腕を発揮して2季連続でJDTに次ぐリーグ2位となったのは見事としか言いようがありません。そのアイディル監督は昨季終了後に契約を延長し3年目を迎えますが、今季はさらに厳しい状況が続きそうです。何と言っても大きいのがユース時代からクダ一筋でプレーしてきた「ミスター・クダ」とも言えるMFバドロル・バクティアルの退団です。ここ数年間は主将としてチームを引っ張り、3年ぶりの代表復帰を果たすなどチームの中心だったバクティアル選手退団によって空いた穴を埋めるのは容易ではありません。さらに代表でもチームメートのDFリザル・ガザリも退団し、絶対的な主力選手2名抜けたクダは、外国籍選手5名も全員が入れ替わり、昨季とは全く違うチームになっています。
今季は若手中心の起用とならざるを得ないチーム状況の中、外国籍選手の内、昨季はトレンガヌでプレーしたデチ・マルセルと、マラッカでプレーしたチャン ソグォン、そして2部に降格したUITMでプレーしたデニス・ブシェニングといずれもMリーグでの経験がある選手が加入しています。またマレーシア人選手で言えばJDTから期限付きで移籍したシャフィク・アフマドと、ペナンから完全移籍したアル=ハフィズ・ハルンの代表FWコンビが加入したこと、そしてスランゴールから期限付き移籍していたロドニー・ケルヴィンの残留は明るい材料と言えます。
昨季はMリーグ1部スーパーリーグで2位となったことでAFCカップの出場権を得ているクダは、2019年のACLプレーオフ出場以来のアジアの舞台に臨みますが、これによる日程が過密になることで、選手勝の薄さが露呈しないかどうかが最大の懸念材料です。
ボラセパマレーシアJP的注目選手:
・ファズルル・ダネル、ファイアッド・ズルキフリ、フィクリ・ズルキフリ
名前がFで始まることからクダサポーターの間で「3F」と呼ばれるファズルル・ダネル、ファイアッド・ズルキフリ、フィクリ・ズルキフリのトリオの内、ファイアッド選手はリーグ戦とマレーシアカップ合わせて27試合に出場し、東南アジアサッカー連盟AFF選手権スズキカップ2020の予備メンバーとして代表合宿に招集されるなど、主力定着間近です。またファズルル、フィクリ両選手も昨季の主力選手退団により今季は出場機会が多くなるはず。そこでチャンスをつかんで主力選手としてチームに定着できるかどうかが、クダの今季チーム成績にも大きく関わってきそうです。
・シャフィク・アフマド
新型コロナ前2019年のW杯予選ではインドネシアやアラブ首長国連邦を相手にゴールを挙げるなど、代表のエースとも言える活躍を見せたシャフィク選手ですが、昨季はJDTで出場わずか3試合、しかも通算出場時間は90分に満たないなどクラブでの出場機会をほとんど得られませんでした。それでも再開されたW杯予選やスズキカップ2020ではかつての活躍にもう一度期待したタン・チェンホー前監督によって代表に招集されましたが、失った輝きを取り戻すことができませんでした。自身が運転する車の事故で子どもを亡くし、またJDTでの出場機会が得られないことをSNSで呟いたところをクラブオーナーのトゥンク・イスマイル殿下にたしなめられるなど、ストレスが溜まる環境が影響したのかもしれません。そんな中で出場機会を求めてのクダへ期限付き移籍を選択したシャフィク選手ですが、ユース時代を過ごしたクダに戻った今季は、再びマレーシア屈指のストライカーとして新たに代表監督に就任したキム・パンゴン監督へ代表復帰アピールをして欲しいです。