7月22日のニュース:Mリーグ後半戦を勝手に予測(2部プレミアリーグ編)

 W杯アジア2次予選やAFCチャンピオンズリーグなどにより、Mリーグは5月8日より中断していましたが、いよいよ今週土曜日7月24日から再開されます。そこで今回と次回はボラセパマレーシアJPがその後半戦を勝手に予測してみます。1回目の今回はMリーグ2部プレミアリーグ編です。

 例年より1チーム少ない11チームが参加している今季のプレミアリーグは今週土曜日の第13節から後半戦が始まり、10月24日と25日に予定されている最終節第22節までのおよそ3ヶ月で、各クラブは平均10試合を行います。プレミアリーグ現在の順位表は以下の通りです。

2021年シーズンMリーグ2部プレミアリーグ順位(第12節終了時)

TeamGWDLGFGAGDP
1SU117312171424
2NS11641169722
3TFC1147024111319
4JDT114431711616
5SEL114431914516
6KU115151415-116
7KEL114341111015
8PDRM113261014-411
9KCH10244912-310
10PRK112451017-710
11FAM10028732-252


項目:G-試合数、W-勝利、D-引き分け、L-敗戦、GF-得点、GA-失点、GD-得失差、P-勝点
クラブ名:NS-ヌグリスンビラン、SU-サラワク・ユナイテッド、TFC-トレンガヌII、PRK-ペラII、SEL-スランゴール2、KEL-ケランタン、KU-ケランタン・ユナイテッド、KCH-クチンシティ、FAM-FAM MSNプロジェクト

 開幕前には代表FWのノーシャルル・イドラン・タラハ、昨季はスランゴールFCで主将を務めたテイラー・リガンなどプレミアリーグでもトップクラスの補強を行なったサラワク・ユナイテッドFCがプレミアリーグ前半戦では2位には勝点差2をつけて首位で折り返しています。ただし前半戦終盤には給料未払い問題が表面化、さらに今季開幕前に契約解除した前監督への給料未払いにより一時はFIFAにより新戦力獲得禁止処分なども出されるなどクラブ運営上の問題が噴出しています。また、それが原因かどうかは不明ですが、前半戦終了後のトランスファーウィンドウ期間には他チームが新戦力を獲得する一方で、目立った補強は行わないままま後半戦に臨みます。取りこぼしをしなければ2部プレミアリーグの上位2チームに与えられる1部スーパーリーグへの自動昇格権を獲得できそうですが、再び給料未払い問題が再燃すれば選手のモチベーションへの影響は必至です。
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 なおサラワク・ユナイテッドは日本人FW兼右ウイングのユウタ選手の獲得を公式Facebookで発表していますが、中断期間中に行われた練習試合に出場しておらず、本名や経歴などの詳細は不明です。(以下はサラワク・ユナイテッドFCの公式Facebookより。)

 サラワク・ユナイテッドFCを勝点差2で追うヌグリスンビランFCは、リーグ中断中のトランスファーウィンドウ期間中に、前半戦11試合で6ゴールのFWアライン・アコノ以外の3名の外国籍選手を入れ替えるなど、積極的な補強を行なっています。昨季2020年シーズンには当時プレミアリーグだったKLに在籍して10試合で7ゴールを挙げたFWフランシス・コネ(トーゴ)、2019年から2シーズンの間スーパーリーグのPJシティFCでもプレーした攻撃的MFペ・ボムグン(韓国)といったMリーグ経験者を補強しただけでなく、インドネシアでのプレー経験が長いことからマレーシア語に類似するインドネシア語でコミュニケーションが取れるというDFアルトゥール・クーニャ(ブラジル)を獲得して1部昇格はもちろん、2部優勝を目指す意欲を見せる補強を行なっています。リーグ2位ながら総得点はリーグ5位の16点(11試合)で、その内、アコノが6点、FWザクアン・アドハとMF R・バラトクマルがそれぞれ4点とこの3選手以外は得点ができていないことから、長身FWコネ選手の獲得によって攻撃の選択肢が増えることになりそうです。

 順当に行けば、この2チームがプレミアリーグの上位2チームに与えられる来季2022年シーズンの1部スーパーリーグ自動昇格権獲得の最有力候補です。現在3位トレンガヌFC II、4位JDT II、5位スランゴールFC2はいずれも1部スーパーリーグでトップチームがプレーしているセカンドチームであることから、上位2位以内に入っても1部自動昇格権を得ることができず、これらのチームが上位2位以内に入った場合は次点のチームが1部に昇格します。
 しかし優勝争いという点では今季ここまで11試合無敗の3位のトレンガヌFC IIも候補のうちの一つです。2019年シーズンは3位と勝点差3で4位、昨季2020年シーズンは優勝したペナンFCと勝点差4の2位と例年、優勝争いに絡んでくるトレンガヌFC IIは、今季も2位とは勝点差3、首位のサラワク・ユナイテッドFCとは勝点差5の両チームに迫っています。しかも今季開幕からは怪我人が多発したトップチームのトレンガヌFCでプレーし、トレンガヌFC IIではわずか5試合の出場ながら11ゴールを挙げているFWジョーダン・ミンターが常時プレーすることで、リーグトップの24得点(11試合)という攻撃力にはさらに磨きがかかりそうです。

 4位のJDT IIは、開幕時の主力で本来ならトップチームでプレーすべきFWアキヤ・ラシドやFWアフィク・アフマドらがトップチームに合流し、また出場機会を求めてMFゲイリー・スティーヴェン・ロバットらがMリーグの他のクラブへ期限付き移籍するなど、戦力の低下が予想される一方で、オーストラリア1部Aリーグのニューカッスルジェッツへ期限付き移籍させていたMFシャヒラン・アビマニュを呼び戻し、英国1部ウルヴァーハンプトンFC U23からマレーシア人の親を持ち、マレーシア人選手として登録可能なMFナサニエル・シオを獲得するなど不足される戦力の補強は行なっており、侮れない存在です。
 また5位のスランゴールFCは、やはり前半戦途中から若手選手をトップチームに昇格させながらも、さらに若手を育てながら勝つことを目指しており、ガーナのアグラライオンズFCからはチームとしては3人目となる20歳のMFアレックス・アギャクワを期限付き移籍で獲得し、後半戦も「育てながら勝つ」方針を貫きそうです。

 上記のように現在3位から5位までのチームには自動昇格権がないため、サラワク・ユナイテッドFCとヌグリスンビランFCに続く昇格候補はいずれもケランタン州に本拠地を持つ6位ケランタン・ユナイテッドFCと7位のケランタンFCとなります。しかし勝点16で並ぶ両チームは、2位のヌグリスンビランFCは勝点差6、首位サラワク・ユナイテッドFCとは勝点差8となっており、両チームとも残り9試合中、上位と直接対決の機会はケランタン・ユナイテッドFCがヌグリスンビランFCと1試合、ケランタンFCがサラワク・ユナイテッドFC、ヌグリスンビランFCとそれぞれ1試合ずつ残しているものの、その試合に勝っても順位を逆転することはできず、上位の取りこぼしに期待せざるを得ない状況です。
 6位のケランタン・ユナイテッドFCは、クチンシティFCから移籍してきたMF谷川由来、日本から獲得したDF深井脩平、そして元日本代表のMF本山雅志の日本人トリオに加え、昨季はクチンシティFCを指揮した東山晃監督が就任するなど日本色を全面に打ち出して今季に臨んだものの、ここまでは5勝1分5敗と今一つ波に乗り切れず、リーグ中断期間中には突如、東山監督と昨季監督を務めたナズルレルワン・マクモル テクニカルディレクターの役割を交換する荒療治に出ましたが、果たしてこれが吉と出るのか、凶と出るのかが見ものです。
 7位のケランタンFCは、新たなオーナーとなったノリザム・トゥキマン氏が去る者は追わずと、開幕前に若手有望選手が隣接するトレンガヌ州のトレンガヌFCへの移籍を容認するなど、開幕前から戦力不足で上位進出は難しいことが予想されていましたので、7位は順当な順位でしょう。度々メディアに登場するノリザム オーナーの言動を見る限りでは、今季はチームとしての環境を整え、土台を作る時期、また来季の1部スーパーリーグ昇格を目指しているわけではなさそうな印象です。実際にリーグ中断期間に積極的な補強を行わなかったことからも、優勝を目指すのは来季以降、となりそうです。

 鈴木ブルーノが在籍する8位PDRM FCと鈴木雄太が在籍する9位クチンシティFCにとっては、いずれも開幕から10試合で2勝と苦しい試合が続いた前半戦でした。リーグ中断期間中のトランスファーウィンドウ期間中もPDRM FCはマレーシア人選手を獲得するも外国籍選手の入れ替えを行わず、一方のクチンシティFCは昨季は3部でプレーしたFWイジェジェ・マイケルをFWブライアン・ジョーンズに代えて獲得しただけで、両チームは後半戦も前半戦同様の厳しい環境は変わらなそうです。
 そしてこの2チームにとって脅威となりそうなのは、10位のペラFC IIです。開幕時は外国籍選手0でリーグに臨み、前半戦を2勝で終えると、トランスファーウインドウ期間中にはFWセルヒオ・アグエロを1部スリ・パハンから期限付き移籍で獲得した他、昨季はシンガポールでプレーしたMFチャーリー・マシェル 、そしてFWジスラン・ゲサンを獲得し、前半戦の未消化試合となった7月17日のケランタンFC戦では1-1で引き分けるなど、後半戦では台風の目となりうるチームとなっています。
 10試合を終えた時点で2分8敗とまだ勝ち星がない11位のFAM-MSNプロジェクトは、2024年パリオリンピック予選のためにU20年代の選手に経験を積ませるためのリーグ参戦という謳い文句でしたが、あまりにも弱すぎてその目的が達成できているのかどうかは不明です。またマレーシアサッカー協会FAMが今年10月のAFC U23W杯予選にU20代表を派遣すると発表しており、その代表合宿に果たして何名の選手がこのFAM-MSNプロジェクトから招集されるかに注目です。もし、誰も招集されないとしたら…やはりリーグ戦の頭数合わせの即席チームというリーグ参戦時の批判がFAMに向けられる可能性もあります。