FAMは契約書に「不可抗力」条項の導入を検討
隣国インドネシアでは新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、5月29日まで国内リーグ中断が確定していますが、これに伴い、インドネシアサッカー協会PSSIは、3月から6月までの期間に限り、国内リーグの各クラブに対して給料の25パーセントを上限として支払うことを認める特別措置を取っています。そしてPSSIがこの措置の根拠として挙げているが、国内リーグの中断は”Force majeure「不可抗力」”によるものであるという考え方です。
手元にあるスーパー大辞林によれば「不可抗力」とは「 通常,必要と認められる注意や予防方法を尽くしても,なお損害を防ぎきれないこと。債務不履行・不法行為の責任を免れる」となっており、今回のPSSIの場合で言えば、「契約書通りの給料を払う義務を免除される」という解釈でしょう。
これに倣ってかどうかはわかりませんが、マレーシアサッカー協会FAMが「不可抗力」条項を契約書に盛り込むことを検討中であることを、マレー語紙ハリアンメトロ電子版が報じています。この記事では、この条項を契約書に盛り込むことにより、現在、マレーシアの国内リーグを揺るがせているリーグ中断に伴う給料削減問題のような事態に対処することが容易になるとしています。
この「不可抗力」条項導入について、FAMのスチュアート・ラマリンガム事務局長は、今回の新型コロナウィルスによるリーグ中断はFAMにとっても全く未知の経験であるとし、今後このような状況に直面した際には選手との契約を見直す必要があるとして、各クラブやマレーシアプロサッカー選手会PFAMを含めた関係者と一緒に検討していきたいと話しています。
その一方で、この「不可抗力」は様々な解釈が可能であり、ヘイズ(煙霧-マレーシアやインドネシアで行われている焼畑が原因とされ、健康被害なども引き起こす大気汚染公害:筆者注)や豪雨なども含めるのかなどマレーシアでの適用条件やその目的などを包括的に検討する必要性があることや、マレーシアフットボールリーグMFLで使われている契約書は国際サッカー連盟FIFAが作成した定型書式を採用していることから内容の変更にはFIFAの承認が必要であることなどを指摘した上で、ラマリンガム事務局長は選手、クラブの双方はもちろん、サッカーファンにとっても公平となるようなものとしたいと話しています。
元U19代表監督は小規模クラブの将来を憂慮
クロアチア人のボヤン・ホダック氏は、現在マレーシアフットボールリーグMFL1部スーパーリーグ7連覇中のジョホール・ダルル・タジムが連覇をスタートした2014年に監督を努めた他、2012年にはケランタンFAを率いてスーパーリーグ、FAカップ、マレーシアカップの三冠を達成した名将です。その後2017年から昨年2019年まではマレーシアU19代表の監督を務め、2018年には東南アジアサッカー連盟AFF U19選手権優勝、さらにはアジアサッカー連盟AFC U19選手権本選に14年振りにマレーシアを出場させています。しかし、マレーシアでこれだけの実績がありながら、葉に絹着せぬ発言で知られるホダック氏はU19代表監督の契約を更新されず、現在はインドネシア1部リーグのPSSマカッサルの監督を務めています。
インドネシアの国内リーグが中断中ということで、クアラルンプールに滞在しているホダック氏は英字紙ニューストレイトタイムズ電子版のインタビューに答え、MFLの多くのクラブが州政府や政府機関を大口スポンサーとしており、現在の新型コロナウィルス感染が拡大する状況では、そう言った州政府や政府機関が充当していたクラブ運営資金が新型コロナウィルス感染対策に使われている可能性があるという持論を展開し、他のスポンサーを持たないクラブ、多くの入場料収入が期待できないクラブは生き残りが困難になり、そのツケは選手にも回ってくるだろうと話しています。
「年間予算1000万リンギ(およそ2億4600万円)程度のクラブが試合をせずにどのくらい持ちこたえることができるだろうか」と話すホダック氏は、州政府や政府機関といったクラブのスポンサーが既に年間支援額全額を支給していれば良いが、毎月、あるいは四半期ごとに支援が行われるクラブであれば持ちこたえるのが困難になるだろうと述べ、既に負債を抱えているクラブ(=給料未払い問題を抱えているクラブ)では選手が苦しむことになるのではないかと危惧していると語っています。
さらに中国、韓国、日本といった国のクラブは資金的に余裕があり、リーグを運営する組織から支援も期待できるが、国内リーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFL自身が十分なスポンサーを獲得できていないマレーシアはもとより、似たような状況に置かれている東南アジア各国のクラブが心配であるとしています。
また上の記事でも取り上げたインドネシアリーグの給料削減問題についても、報道されている内容とは異なり、選手会との交渉なしに決定されたと話すホダック氏は、アジアを含めた世界のサッカークラブの9割以上を占める小規模クラブの多くは、リーグ中断期間が3ヶ月以上に及べば破産しかねないのではと予測しています。
AFCは2027年アジアカップ開催希望の申請受付を3ヶ月延長
4年ごとに開催されるアジアサッカー連盟AFC選手権アジアカップ。昨年2019年にアラブ首長国連邦で開催された第17回大会では、カタールが日本を3-1で破って優勝しています。2023年開催予定の第18回大会は中国での開催が既に決まっていますが、その次の大会となる2027年の第19回大会について、AFCは開催希望国から出される申請の締め切りを3月31日から6月30日に延長したと、英国の通信社ロイターが報じています。
AFCは、十分な準備期間を与えられるように開催地をできるだけ早く確定したかったようですが、新型コロナウィルスの感染拡大により各国のサッカー協会がその対応に追われている現状を考慮した結果の決定であるとしています。
2027年大会については、過去3回の優勝実績を誇りながら、自国開催の経験がないサウジアラビアが開催に立候補している唯一の国となっています。