ケランタン州FAは未払い給料問題解決のためにサポーターからの寄付を募る
英字紙ニューストレイトタイムズ電子版は、国際サッカー連盟FIFAにより今月5月30日までに未払い給料問題の解決を求められているケランタン州サッカー協会KAFAが、未払い給料を補うためにサポーターから寄付を募っているとと報じています。
先日のこのブログでも取り上げましたが、KAFAは2018年から2019年にかけて在籍したブラジル出身のカッシオ・デ・ジーサスに対して62万9620リンギ(およそ1550万円)の未払い給料があり、今月末までに支払いを完了しなければ、リーグ戦の勝点剥奪や移籍期間トランスファーウィンドウでの新規選手獲得を禁じる裁定を受けることになっています。(KAFAは既に今年2020年の2回目と来年1回目のトランスファーウィンドウでの選手獲得を禁じられています。)
そこでKAFAはサポーターに対して窮状を訴え、アーマド・ムザッキル・ハミド実行委員長名で寄付を募る告知をクラブの公式Facebookに掲載しています。
(以下はKAFA公式Facebookに掲載された告知。Kafa buka derma atas talian selamatkan bolasepak kelantan「Kafaはケランタンのサッカーを救うためのオンラインでの寄付を始める。」という見出しがついています。
KAFAのムザッキル実行委員長は「Mリーグの中断と新型コロナウィルス拡大防止のための活動制限例MCOによって、収入を生み出し、負債を返済することが困難になっている。未払い給料問題を解消するためにKAFAはファンの支援が必要で、もし期限までに解消できなければ、KAFAはより厳しい状況に置かれることになる。」と述べています。
なおケランタンFAがFIFAの制裁対象となるのは今回が初めてではなく、昨年はかつてKAFAのテクニカルダイレクターを務めたウルグアイ出身のアルフレッド・カルロス・ゴンザレスに対する未払い給料23万5686リンギ(およそ580万円)を期限までに支払わなかったことにより、FIFAの支持を受けたFAMがMリーグの勝点3の剥奪処分を下しています。
なおKAFAはこの給料未払い問題以外にもマレーシアの年金制度にあたる従業員積立基金EPFの雇用主負担分100万リンギ(およそ2460万円)の未納なども明らかになっています。
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かつて2012年にはリーグ戦、マレーシアカップ、FAカップと国内のタイトルを総なめしながら、そのわずか8年後には給料未払い問題解決にファンの寄付を募ることになったケランタンFAですが、2018年と2019年の給料未払いは、新型コロナウィルスとは全く無関係の放漫経営の結果なのは明らかで、個人的にはその穴埋めをサポーターに求めるのはいかがなものかと思いますが、KAFAのFacebookには次々と「寄付した!」というサポーターのコメントが増えています。
ちなみにケランタン州はイスラム原理主義政党PASが州議会で与党を占めるイスラム色が非常に濃い州で、マレーシア航空のロゴにもなっているマレー凧(たこ)wauの凧上げやコマ回しgasingなどマレー文化や色濃く残す地域でもあります。また州都のコタバルは、太平洋戦争開戦の際、時差の都合で真珠湾攻撃よりも早く日本軍の侵攻が始まった戦場でもありました。
鈴木ブルーノ選手はTFC IIのプレミアリーグ優勝を信じる
Mリーグ2部プレミアリーグで開幕から4連勝し首位でリーグ中断を迎えたトレンガヌFC II(TFC II)。このTFC IIで主将を務める鈴木ブルーノ選手はこのまま首位でリーグ優勝を成し遂げられると語っていると、マレー語紙ブリタハリアン電子版が伝えています。
Mリーグを運営するマレーシアフットボールリーグMFLは、9月からのリーグ再開を予定してMリーグ1部、2部とも1回戦総当たりという暫定日程を発表しています。
鈴木選手は「新型コロナウィルスの影響により今期リーグ戦は残りは7試合だが、このチームは4連勝後も首位を維持するだけの力がある。(現在の首位という順位によって)チームは有利な立場におり、リーグ優勝を目指すには良い機会が与えられていると思っている。今季はチャレンジカップが中止されたので、TFC IIが優勝トロフィーを手にすることができるのはリーグ優勝だけである。」、「しかし(リーグが再開されれば)他のクラブも当然、優勝を狙って試合に挑んでくるので、大事なことは負けないことである。」と話し、リーグ中断期間中もピッチでは練習ができないものの、チームメイトがコンディションを維持していることを期待しているとも話しています。
Mリーグ1部のトレンガヌFC(TFC)のBチームでロシャディ・ワハブ監督とサピアン・ワヒドコーチが率いるTFC IIは、リーグ中断前までの好調さを、リーグ再開が予定されている9月1日まで維持できれば、TFC IIがプレミアリーグで優勝するのは決して不可能ではないでしょう。
最後に中止になったチャレンジカップについて鈴木選手は「2018年以来の優勝を目指していたチャレンジカップが中止になったのは残念だ」と話しています。
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記事に出てくるチャレンジカップとは2018年に創設された国内のカップ戦です。リーグ戦終了後に行われるマレーシアカップへの出場資格がないMリーグ1部12位のクラブと2部6位以下のクラブが対象です。ただし、鈴木選手が所属するTFC IIのようにMリーグ1部所属クラブのBチームはマレーシアカップへの出場資格がないため、リーグ戦の順位にかかわらずチャレンジカップに出場します。
ちなみにMリーグ中断期間中、マレーシアのテレビでは過去のリーグ戦やカップ戦の再放送を行なっていますが、その中でこの鈴木選手がTFC IIのAチーム、Mリーグ1部のトレンガヌFCに期限付き移籍(という呼び方が正しいのかどうかはわかりませんが)していた2018年の試合が放映されていました。攻撃ではTFCの主将リー・タック選手との息もあっていたので、またこの2人のコンビが見てみたいと思った次第です。
Mリーグ4部のアマチュアクラブが元エスパニョール関係者をテクニカルアドバイザーとして契約
以前このブログでもその健全な財務状況をFacebookで公開したことを取り上げたMリーグ4部M4リーグのアマチュアクラブ、クルテーFCが、スペイン人のテクニカル・アドバイザーと契約したことをクラブの公式ソーシャルメディアで発表しています。
クルテーFCと契約したのはスペインリーグのRCDエスパニョールでかつて国際部門のマネージャーを務めていたオスカル・リエラ氏です。
現在はスペインリーグの2部や4部の複数のクラブと共同で、外国籍選手がヨーロッパ市場向けに才能を披露する場を作るための環境づくりを行なっているリエラ氏は、マレーシアへ来るのは今年2020年の年末になるようですが、それまではバルセロナの自宅から「リモートワーク」でクルテーFCのテクニカル・ダイレクターを務めるチェ・ク・マルズキ氏とともに、クルテーFCからヨーロッパでのプロサッカー選手を目指すための育成プログラムの作成に関わるということです。
クルテーFCのサイド・カイリ・アミエルCEOは、長年の経験と実践的な考え方を持つリエラ氏はクルテーFCのテクニカル・アドバイザーには最適の経歴を持つ人物で、リエラ氏のテクニカルアドバイザー任命は、クルテーFCが目指している地元出身の選手の育成および強化にとって重要な役割を果たすと考えていると話しています。
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上記のケランタンFAのように、有力外国人選手を大金で雇い入れて、短期間で結果を出す方法もあれば、このクルテーFCのように長期的な視野に立って投資する方法もあるでしょう。小規模なMリーグクラブの中にはこのクルテーFCの運営方針を真似てみるべきクラブもありそうです。
(写真はクルテーFCの公式Facebookより)