3月29日のニュース
W杯アジア2次予選D組-マレーシアはオマーンに連敗で3位のまま
ケガで途中交代のアザム・アズミはU23アジアカップ出場が危ぶまれる
ブキ・ジャリル国立競技場管理会社はピッチの事後検証予定発表も、ファンは社長の辞任を要求

オマーン戦から3日が経ち、ニュースというには鮮度が低いですが、私も現地で観戦した試合の振り返りなどを中心に記事にしました。ちなみにマレーシア国内メディアは、ベトナムに連勝したインドネシアが、オマーンに連敗したマレーシアを次のFIFAランキング発表では上回ることを報じています。フィリピンに代わって東南アジア3位となった後は、ベトナムとタイに追いつき追い越せと帰化選手を次々と生み出したマレーシアですが、その帰化選手がインドネシアの帰化選手と比べると圧倒的な戦力アップにつながっておらず、風当たりが強くなっているだけでなく、帰化選手不要論もちらほらと聞こえてきます。

W杯アジア2次予選D組-マレーシアはオマーンに連敗で3位のまま

2026年W杯アジア2次予選兼2027AFCアジアカップ予選の第4節が3月26日に行われ、D組のマレーシアはホームでオマーンと対戦し、いずれもロスタイムの失点で0-2で敗れています。この結果、2勝2敗となったマレーシアは勝点6で3位のまま、オマーンは勝点9でキルギスと並んだものの、総得点で上回るキルギスが1位、オマーンが2位となっています。また同じ第4節でキルギスに1-5で敗れた台湾はグループステージ敗退が決まりました。

3月21日の第3節ではアウェイでオマーンに敗れているマレーシアのキム・パンゴン監督は、この試合の先発メンバーを大きく入れ替えています。フォワードはロメル・モラレス(ジョホール・ダルル・タジムFC-JDT)とダレン・ロック(サバFC)、中盤は左右両サイドににファイサル・ハリム(スランゴールFC)とアリフ・アイマン(JDT)、インサイドハーフにスチュアート・ウィルキン(サバFC)とシャミル・クティ(JDT)を起用しています。そして最終ラインは前節の5バックから、この試合は左右SBにラヴェル・コービン=オング(JDT)とアザム・アズミ(トレンガヌFC)、CBにドミニク・タン(サバFC)とディオン・コールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)と4バックに変更しています。(以下はこの試合の先発XI)

この試合の観客は26,499名と、試合会場となったブキ・ジャリル国立競技場の収容定員の4割弱でしたが、それでも代表の愛称「ハリマウ・マラヤ(マレーのトラ)」のサポーターを沸かせるプレーが試合開始から見られました。2トップのロメル・モラレス、ダレン・ロックに加え、両サイドのファイサル・ハリム、アリフ・アイマン両選手を含めたFW4人が高い位置からプレスをかけた開始1分には、アリフ選手が右サイドで相手ボールを奪うとそのままペナルティエリアへ持ち込み、シュートを放ちますがGKの足に当たりゴールならず。この場面、ファーサイドにはファイサル選手が完全にフリーだったので、アリフ選手にはDFを引きつけてからマイナスのパスという選択肢もありました。試合を振り返ると、実はこれがこの試合最高のチャンスでした。

マレーシアFW陣は依然、高い位置をとっているものの、厳しいプレスが開始15分程度で影を潜めると、今度は逆にオマーンが最終ラインを挙げて、前線にロングフィードを送るようになります。それを奪ってカウンターを仕掛けたいマレーシアでしたが、前半はドミニク・タンとディオン・コールのCBコンビが前方に直接ロングフィードする場面が多く、ボランチで入ったはずのシャミ・クティが全く機能していませんでした。

また前節のオマーン戦ではケガのマシュー・デイヴィーズ(JDT)に代わって起用されたダニエル・ティン(サバFC)が積極的なオーバーラップを見せることができなかったこともあり、キム監督は代わってアザム・アズミを右SBに起用しています。そのアザム選手は、豊富な運動量でアリフ選手を追い越す動きを何度も見せました。それに合わせてアリフ選手が中へ切り込むなど、前節からは攻撃のバリエーションが明らかに増え、ゴールへの期待が膨らみます。しかし26分にはそのアザム選手がオマーンの選手から酷いダックルを受け足を痛めると早々と交代してしまいます。代わりにティン選手が入り、最初はアザム選手のように右サイドを上がる動きを見せたものの、オマーンが同じサイドにボールを集めて押し込み始めると自陣でのプレー時間が長くなってしまいます。

頼みのアリフ選手は相手ゴールに背を向けてボールを受けることが多く、自慢のスピードを発揮する機会もなく、ゴール前へクロスを上げるの精一杯でした。しかしこのアリフ選手も含め浮き球のクロスはことごとくオマーンGKにキャッチされ、素人目に見ていてもゴール前にFWが何人もいる状況なら、混乱を期待して低く速いクロスでワンチャンを狙ってみても良いのでは、と思いましたが、結局、同じようなクロス挙げてはキャッチされる繰り返しで点が入りそうな気配が全くありませんでした。

それでも前半はオマーンの拙攻とGKシーハン・ハズミの好守で無失点で後半勝負に持ち込むのもありだと思いかけた前半ロスタイムにシーハン選手がムーセン・アル=ガッサニーを倒してPKを与えると、オマル・アル=マルキがこれを決めてオマーンが1-0で前半を折り返します。この場面、マレーシアDFの数が相手を上回っていながらもムーセン選手にドリブルを許した結果でした。

引き分けでも良いオマーンに対して、負けられないマレーシアは、後半開始とともにシャミ・クティ、ダレン・ロックに代わりブレンダン・ガン(前スランゴールFC)とエンドリック(JDT)を投入します。さらに77分にはこの試合で精彩を欠いていたスチュアート・ウィルキンに代わりパウロ・ジョズエ(KLシティFC)を起用して中盤からの攻撃を組み立てようとしますが、運動量が落ちてきたFW陣がスペースに走り込む場面もなく、チャンスらしいチャンスがないまま後半のロスタイムに入ります。そして前半同様、オマーンの攻撃に対してゴール前では数で上回りながら、簡単にマレーシアDFのマークを外したムハメド・アル=ガフリに近距離から押し込まれてゴール。マレーシアは0-2というスコア以上の完敗でオマーンに2連敗しています。

次節第5節は6月6日にキリギスとのアウェイマッチがキルギスの首都ビシュケクで、第6節は6月11日にホームのブキ・ジャリル国立競技場で台湾との対戦が残っていますが、3次予選進出には必勝が義務付けられるキルギス戦に向けて、5月開幕のスーパーリーグの様子を見ながら代表でプレーする選手の選考を一からやり直す必要がありそうです。

FIFAワールドカップ2026アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027予選D組第3節
2024年2月26日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 0-2 オマーン
⚽️オマーン:オマル・アル=マルキ(45+4分PK)、ムハメド・アル=ガフリ(90+4分)
🟨マレーシア(1):シーハン・ハズミ、
🟨オマーン(2):ムハメド・アル=ガフリ、ハリブ・アル=サアディ

またD組のもう1試合は台湾がウー・イェンシュウ(呉彦澍、中国2部瀋陽城市足球倶楽部)が今回の予選でチーム初となるゴールを挙げましたが、ガーナ生まれのFWジョエル・コジョ(ウズベキスタン1部PFCディナモ・サマルカンド)にハットトリックを許すなどキルギスに大敗しグループステージ敗退が決まっています。

FIFAワールドカップ2026アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027予選D組第3節
2024年2月26日@スパルタク・スタジアム(ビシュケク、キルギス)
キルギス 5-1 台湾
⚽️キルギス:ジョエル・コジョ3(17分、38分、45分)、クリスティヤン・ブローズマン(79分)、キミ・メルク(90+5分)
⚽️台湾:ウー・イェンシュウ(呉彦澍、87分)
🟨キルギス(0)
🟨台湾(1):ウー・イェンシュウ(呉彦澍)

W杯2026アジア2次予選予選D組順位表(第4節終了)

順位勝点
1キルギス430111569
2オマーン43017169
3マレーシア420257-26
4台湾4004111-100
ケガで途中交代のアザム・アズミはU23アジアカップ出場が危ぶまれる

オマーンとの試合でケガのため26分に途中交代となったアザム・アズミ(トレンガヌFC)について、試合後の会見でキム・パンゴン監督は左膝を痛めており、その怪我が深刻であることを明らかにしています。スタンドからは退場後も担架に乗せられたまま運ばれていく様子が見えていました。また試合後の映像では、ギプスで膝を固定して松葉杖をついて歩くなど、キム監督の言葉を裏付けるような映像も見られました。

アザム選手は4月15日にカタールで開幕するAFC U23アジアカップに出場するマレーシアU23代表の主力選手でもありますが、膝前十字靭帯の損傷も疑われている今回のケガですが、検査の結果次第ではこの大会出場も危ぶまれます。

ブキ・ジャリル国立競技場管理会社はピッチの事後検証予定発表も、ファンは社長の辞任を要求

ブキ・ジャリル国立競技場を管理するマレーシア・スタジアム社(MSC社)は、来週、ピッチの状況に関して事後検証を行うことを発表しています。業務請負業者やコンサルタントも加わって行われるこの事後検証の後には、その内容を公表するとともに今後もピッチの状態を改善していくと、同社の公式SNSで述べられています。

ブキ・ジャリル国立競技場のピッチは昨年1月から10月まで行われた改修工事の一環として張り替えが行われましたが、芝が十分に根付く前の11月には英国のロックバンド、コールドプレイのコンサート会場となります。その直後に行われたマレーシアカップの決勝が行われたピッチは、コンサート時にその上にステージが設置された上、その回復状況が悪く、一部は土がむき出しのままであったことから、MSC社の管理能力はサッカーファンから激しく非難されました。

そして今年2月にはやはりブキ・ジャリル国立競技場で英国のシンガーソングライター、エド・シーランのコンサートが行われると、やはりステージが設置された部分の芝は削られて土が剥き出しになりました。MSC社はピッチの状況を回復できると公言したものの、今回のオマーン戦についても連日の雨などで結局、マレーシア、オマーンの両チームが試合会場での前日練習をFIFAのマッチコミッショナーが禁止するほど悪いピッチの状態でした。

そして試合当日も、ピッチの一部はつぎはぎのように芝があるところと剥がれているところの違いが明らかで、MSC社が約束したような状態には回復されておらず、多くのファンがMSC社の社長で、俳優兼映画監督でもあるハンス・イサック氏の辞任を求める事態となっています。