マレーシアがアジアトップ5入りするための指針F:30は見直しが必要
マレーシア代表が2030年までにアジアのトップ5入するための指針「F:30」を作成したマレーシアサッカー協会FAMですが、FAMのハミディン・アミン会長は、新型コロナの影響によりこの指針の修正が必要となっていることを認める発言をしていると英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。なお、ハミディンFAM会長は今月就任したスコット・オドネル テクニカルディレクターTDがこの修正を担当するとも話しています。
2018年10月にFAMが発表して指針「F:30」は、12年後の2030年までにマレーシア代表をアジアでのトップ5入りを実現するという何とも無謀な計画を進めるための指針です。2019年から今年2022年までの第一段階では、目標実現のためにマレーシアサッカーの基礎を固めるために、運営、競技レベル、人材育成および設備の各分野を向上させ、2023年から2026年までの第二段階では、これをアジアの上位国並みの水準まで引き上げ、第三段階となる2027年から2030年にはアジアはもとより世界と戦えるマレーシア代表チームを作り上げるという内容がこの指針では示されています。
ハミディン会長は新型コロナによる影響で過去2年間は指針で示された計画が進んでいないことを認めた上で、オドネルTDに対して2ヶ月程度を期限に必要に応じた指針の修正案を作成するよう指示したということです。「F:30」は単に代表チーム強化についてだけの指針ではなく、ユースや女子、フットサル、ビーチサッカー、さらには指導者や審判、また運営や財務などといった内容までを含むマレーシアサッカー再興のためのものであることを常に意識しておく必要がある。」と述べたハミディンFAM会長は、代表チームの成績は上がり下がりするもので、AFC選手権アジアカップ2023 出場という目標が達成できれば、東南アジアサッカー連盟AFF選手権ススキカップ2020でのグループステージ敗退により指針から遅れた分は取り戻すことができると話しています。
スズキカップ惨敗はFAMの意思疎通や計画性の欠如と監督の指導力不足が原因-JDTオーナー
Mリーグ1部スーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーで、ジョホール州皇太子のトゥンク・イスマイル殿下は、意思疎通や計画性の欠如と監督の指導力不足がスズキカップ2020でのグループステージ敗退の原因だと指摘し、大会後にマレーシアサッカー協会FAMが依頼した独立委員会による敗因分析すら時間の無駄だったと酷評しています。
JDTがプレシーズン合宿中のアラブ首長国連邦のドバイで、スポーツ専門チャンネルのアストロアリーナのインタビューに答えたイスマイル殿下は「何の見通しもないまま計画を立てることは夢を見るのと同じことだ。JDTでは、自分のところに報告が上がって来れば、それをもとに判断し、必要なことを直ちに実行する。判断にはスピードが必要で、形式的な手続きにこだわり過ぎると物事は前に進めなくなる。JDTではミーティングを何度も行うことはなしない。」と述べています。
また代表チームの選手選考に影響を及ぼした「見えない手」の存在や、さらにその「見えない手」がイスマイル殿下自身なのではないかという疑惑について問われると、それを一笑に付した上で、マレーシアサッカー協会FAMと代表監督だけが代表チームに関する決定権を持っていると指摘した上で、スズキカップグループステージ敗退については、そのFAMとタン・チェンホー前代表監督がその責任を負うべきであると個人的には考えていると述べています。「まず第一に意思疎通が不十分だった。FAMは当初、スズキカップ2020にはU23代表を派遣する予定でいたが、突如それがA代表派遣に変わった。またタン前代表監督には指導力が欠けていた。大会前から明確な計画が示されておらず、それが今回の惨敗につながった。またFAMは代表選手招集の際に、JDTの複数の選手がスズキカップに出場できない理由をメディアに説明しなかった。マシュー・デイヴィーズはスポーツヘルニアの手術を受け、ラヴェル・コービン=オングとシャマー・クティ・アッバはいずれも鼠蹊部の痛み、ナチョ・インサは心臓検査のためスペインへ帰国していたが、FAMはなぜこの事実をメディアを通じてファンに知らせなかったのか。その結果、JDTの選手がマレーシア代表でプレーすることを自分が望んでいなかった印象をファンに与えてしまった。」「また代表チームでは戦術に対する理解を監督と話し合って確認するのではなく、コーチングボード上で指示されただけだったと聞いている。その結果の戦術理解不足がスズキカップ敗退の原因であれば、監督がその責任を負うべきである。」
さらにイスマイル殿下はJDTの選手がそもそも代表チームでプレーすることに興味がないのではないかと指摘されると、代表チームでプレーすることは選手の履歴において重要であり、マレーシア人選手なら誰でも代表チームでプレーすることを望んでいるとし、「代表チームが勝てば誰もJDTについて言及しないが、代表チームが敗れるとなぜかJDTが非難される。スズキカップでも(JDTの)サファウィ・ラシドやアキヤ・ラシド、シャールル・サアドがゴールを決めているにもかかわらず、誰もそれを話題にしない理由が自分にはわからない。」とも述べ、指導力不足の監督と意思疎通能力が欠如しているFAMとは無関係にも関わらず、自分が諸悪の根源のように批判されていると話す一方で、誰かを避難することは簡単だが、それでは問題解決にはつながらないとして、問題の解決方法を模索することが重要だとしています。
またマレーシア代表の監督に就任したキム・パンゴン氏については、FAMはキム監督にチームマネージャの権限も与えた上で、その手腕を評価する前に一定の時間を与えるべきだとも述べています。自身の戦術や戦略、そしてその元になる哲学を代表チームに浸透させるには時間が必要だとして、今年6月のAFC選手権アジアカップ2023大会最終予選での成功を期待するべきではなく、また代表選手の選考についてはキム監督を全面的に支え、それに介入するべきではないとも提言しています。