11月4日のニュース:クダ州FAは未払い給料を完済、クダ州FAは選手や監督、コーチとの来季契約は未だ検討中、JDTオーナーが名前ばかりの「民営化」を批判、スランゴール州政府は総工費2000億円超のスポーツ施設建設を発表

クダ州FAは未払い給料をやっと完済
 マレーシア語紙ブリタハリアン電子版はMリーグ1部のクダFAの選手や監督、コーチに対する給料未払い問題を抱えていたクダ州サッカー協会(クダ州FA)が、総額380万リンギ(およそ9580万円)にのぼる未払い給料の支払いを完了したと報じています。この未払い給料は今年の4月、5月、6月の3ヶ月分だということです。
 記者会見で支払い完了を発表したクダ州FAのムハマド・サヌシ会長は「シーズン終盤を好調で終えたチームは、今回の未払い給料支払いによって、その好調さを維持できると信じており、マレーシアカップ1回戦のパハンFAを破ることができるだろう。」と話しています。

クダ州FAは選手や監督、コーチとの来季契約は未だ検討中
 その一方でJDTに次ぐリーグ2位の成績を収めたクダFAですが、現時点で選手や監督、コーチには来季の契約の話はまだ何もされておらず、11月末に今季の契約が切れるということです。
 英字紙ニューストレイトタイムズは、クダ州FAのフィルダウス・アーマド名誉事務局長の話として、未払い給料問題の解決を優先したために、来季の契約についてはまだ何も決まっていないという談話を掲載しています。
 「今後の予定としては、財力以上の支払いはできないため、給与削減という形での運営費用の縮小を行う。現有戦力の70%から80%には残留を求める予定であるが、現在の契約内容を精査する必要があるため、このことについては選手、監督及びコーチにはまだ伝えていない。」
 「また選手がピッチ上以外でどのような貢献ができるかについても考えていきたい。具体的には、プレー以外にCSR活動やセールス、営業などについて選手に何ができるかを検討したい。」
 さらにフィルダウス名誉事務局長は、クダFAの選手たちは未払い給料問題を抱えながら、リーグ2位の成績を取ったことについては評価するとしながらも、契約更改については感情論は持ち込まないとも話しています。
 この他、アイディル・シャリン監督は他のMリーグクラブからのオファーを受けており、クダFAとの新たな2年契約について未だサインをしていないことも明らかにした上で、良い監督やコーチを持つことは重要だとしながらも、チームの成功には選手による貢献が大きいと話しています。
 「クダFAは豊かなクラブではないため、高額の給料を支払うことはできない。クラブの運営資金は賢く使わねばならないが、もし可能であればアイディル監督にはクラブに残って欲しい。」フィルダウス名誉事務局長はこのようにもコメントしています。
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 Mリーグの全クラブは民営化されることにより州サッカー協会が運営に関与できなくなるはずですが、このフィルダウス州FA名誉局長の発言は、これまでと全く変わらない立ち位置で行われているようで違和感があります。その辺りは次の記事のJDTのオーナーが指摘している点と関連します。

JDTオーナーが名前ばかりの「民営化」を批判
 Mリーグ1部7連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムJDTのオーナーでジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿下が「公的資金を使っての民営化は見せかけの民営化」というタイトルで、JDTの公式Facebookに投稿しています。
 2013年以来、JDTは本拠地のあるジョホール州の州政府からの公的資金に依存しないクラブとして存在していることを誇りに思うと述べるイスマイル殿下は、「州政府の公金は(サッカークラブの運営ではなく)民衆が利益を享受するために使われるべきものであり、特に新型コロナウィルスが蔓延している現在は特にそうである。」と述べ、クラブ運営資金を生み出し、長期的な計画に投資することができるビジネス戦略を持つJDTは、競技場などのインフラを州政府に依存するだけでなく、毎年のクラブ運営資金までも州政府に依存するクラブとは別物であるとしています。
 またFAMが主導して行われている民営化については、実際には民営化と呼べるものではなく、州政府依存の従来の方法が何も変わっておらず見掛けだけのものに過ぎないと批判しています。
 さらにイスマイル殿下は「2013年に自らがJDTを立ち上げて民営化した際には、それを揶揄する者もいたが、JDTはピッチの内外で様々な成功を成し遂げている。その一方で2020年現在、他のMリーグクラブは民営化について新たなロゴの意匠を考えるくらいしかできていない。」と綴っています。

スランゴール州政府は総工費2000億円超のスポーツ施設建設を発表
 スランゴール州政府は劣化したシャーアラムスタジアムとその周辺を青少年スポーツ施設として総工費80億リンギ(およそ2010億円)かけて改修することを発表しています。スランゴール州政府が投資するMBI社のメディア部門であるメディアスランゴールによれば、この改修計画は州政府と民間企業の合弁で行われるということです。
 スランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は「スランゴール州内地域の再開発は州政府が担う仕事の一つであり、長年の使用で劣化の激しいシャーアラムスタジアムとその周辺はその対象となっている。」と述べ、スランゴール州議会の2021年度予算審議の席上でこの計画を明らかにしたということです。
 アミルディン州首相は、老朽化により安全性に問題ありとMFLが判断し、今季は本拠地とするスランゴールFCが使用できなくなったシャーアラムスタジアムについて、ポリカーボネート製の屋根とその関連の補修だけで3000万リンギ(およそ7億5400万円)、スタジアム全体では2億5000万リンギ(およそ62億9000万円)が補修に必要であると発表しています。
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 シャーアラムスタジアムは8万を超える観客収容数を誇り、マレーシアはもとより、東南アジアでも有数の巨大スタジアムです。それでも開場から26年が経っており、老朽化は否めません。浮きと寒気が繰り返す熱帯の気候、その上、新しいものを作るのは大好きだが、施設維持や補修が苦手なマレーシア人気質もあり、その劣化の速度はおそらく日本の同等の施設よりもはるかに速いでしょう。また、本当にサッカーの人気が高ければ、陸上トラックを併設した多目的スタジアムではなく、収容規模を数万人減らしても観客の見やすいサッカー 専用スタジアムという選択肢も出てきても良いのではとも思います。