2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第15節の結果とハイライト映像(2)<br>・クチンシティが7試合無敗で上位に肉薄、マレーシアカップ決勝を控えるスリ・パハンは8試合白星なし

3月4日にマレーシアスーパーリーグ2024/25の第15節の1試合が行われています。この試合は昨年11月2日に予定されていましたが、豪雨によるピッチコンディション悪化のため試合続行不可能となり中断され、この日はその中断時点、前半32分からの試合となっていました。ホームのスリ・パハンは来月4月12日のマレーシアカップ決勝を控えているものの、この試合までのリーグ戦7試合を0勝2分4敗、最後の勝利は昨年10月と4ヶ月以上勝利がありません。一方のクチンシティは今年に入ってから2勝4分0敗と上位のトレンガヌFCとも引き分けるなど、着実に勝点を積み上げています。

そんな両チームの勢いの差がこの試合でも現れました。11月2日の試合では谷川由来選手が先制ゴールを挙げてリードしたクチンシティですが、この日の試合では1点ビハインドでスタートしたスリ・パハンが積極的に攻め込みます。フィニッシュの精度が低いスリ・パハンの攻撃に加え、過去6試合で4失点のクチンシティがこの攻撃に耐え、逆にクチンシティはカウンターで反撃するなど、前半は両チームとも無得点のまま折り返します。

後半に入るとスリ・パハンがチャンスを得ます。JDTからローン移籍中のマヌエル・イダルゴのパスを受けたデヴィッド・ローリーがシュートを放ちますが、これはゴールを捉えることができません。ローリーは61分にもシュートを放ちますが、こちらはクチンシティGKワン・モハマド・アザイがブロックして防ぎます。逆にクチンシティは途中交代出場のザフルル・ニズマンが後半のアディショナルタイムにゴールを決め、追い縋るスリ・パハンを振り切ったクチンシティが2−0で勝利し、無敗記録を7に伸ばすとともに、4位のトレンガヌに勝点差1、3位のサバにも勝点差5と迫っています。

一方のスリ・パハンはこれでリーグ戦8試合連続白星なしとなり、10位のクダ・ダルル・アマンFCとは勝点差3の11位と浮上の気配が見えません。このスリ・パハンとマレーシアカップ決勝で対戦するジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、ACLエリートでは決勝トーナメント進出を果たしており、チームの総合力だけでなく、勢いにも明らかに差がついている状態です。4月12日のマレーシアカップ決勝で奇跡でも起こらない限り、JDTのマレーシアカップ3連覇と史上初の3季連続国内三冠達成は濃厚です。

2025年3月4日@MBTスタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 0-2 クチンシティFC
⚽️クチンシティ:谷川由来(15分)、ザフルル・ニズマン(90+2分)
MOM:ペトラス・シテムビ(クチンシティFC)
この試合で今季2ゴール目を記録したクチンシティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

この試合のハイライト映像。マレーシアンフットボールリーグのYouTubeチャンネルより。
2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第22節終了)
順位チーム勝点
1JDT2058191070763
2SEL20431343331419
3SAB2035105537298
4TRE203187530228
5KCH203079430246
6#KLC202594731265
7PRK20236593334-1
8PDRM19215682129-8
9PEN20204882632-6
10*KDA18206571729-12
11SRP20173892236-14
12NSE191233131941-22
13KDN20721171359-43
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第22節終了)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT23
2パウロ・ジョズエKLC13
3ジョーダン・ミンターKCH11
4ルシアーノ・ゴイコチェアPRK10
ロドリゴ・ディアスPEN10
ロニー・フェルナンデスSEL10
7アルヴィン・フォルテスSEL8
イフェダヨ・オルセグンPDRM8
クレイトンPRK8
10アリフ・アイマンJDT7
ジョアン・ペドロSAB7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC
PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、NSE-ヌグリスンビランFC

ACLエリート決勝トーナメント1回戦1stレグ:ジョホールは敵地でスコアレスドロー

3月5日にACLエリート決勝トーナメントが開幕し、グループステージ最終節に山東泰山が棄権した影響で5位から3位となった、マレーシアから出場のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、東地区の1回戦で同5位のタイのブリーラム・ユナイテッドとアウェイで対戦し、0-0と引き分けています。

この両チームはグループステージでも対戦しており、昨年12月3日にJDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われた試合は0−0と引き分けに終わっていますが、JDTはムリロ・エンリケとパク・ジュンホン、ブリーラムはティーラトン・ブンマタンと双方合わせて3選手にレッドが出される激しい試合となっています。またこの試合後にブリーラム・ユナイテッドのこの試合後にブリーラム・ユナイテッドのネーウィン・チドチョーブ会長はタイのメディアに対して「JDTはそれほど強いチームじゃない」「(JDTのオーナーであるトゥンク・イスマイル殿下には、もっと投資することをお勧めする。そうすれば、2025年の対戦はもっと面白くなるはずだ」と語っていました。

12月3日に行われたグループステージの試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

この発言の後、JDTはラ・リーガやセリエAでプレー経験のあるアルバロ・ゴンサレス。ジョナタン・ビエラ、ロケ・メサ、アンセルモ・デ・モラエス、そしてサム・カスティジェホの5名を次々と補強し、第7節のセントラルコースト・マリナーズ戦ではアルバロ・ゴンザレスが2ゴールを挙げるなど、決勝トーナメント進出を決めたという背景も、この両チームの対戦を盛り上げることになりました。

JDTは国内リーグを11連覇中、ブリーラムも国内では過去10年で8回優勝と、いわば東南アジアの盟主を決める対戦とも言えるこの試合の先発メンバーは以下の通りです。JDTはブリーラム戦後に加入したアルバロ・ゴンザレス、アンセルモ・デ・モラエス、ジョナタン・ビエラが揃って先発しています。なおブリーラム・ユナイテッドの11番、ディオン・クールズはマレーシア代表のキャプテンです。


ブリーラムスタジアムで現地時間午後9時キックオフの試合は,両チームとも試合開始直後から攻撃を仕掛けますが、どちらも決定的なチャンスを掴むことはできません。

そんな中で試合開始から気になったのがピッチの状態でした。タイ王者のスタジアムのピッチとしては水を撒きすぎたのか?と思うくらい悪く,ブリーラムの選手も足を滑らせる場面などがみられる一方で、JDTは特にサイド攻撃の組み立てが困難な状況で、結局、前半は両チームとも得点なしのまま終了します。

JDTのエクトル・ビドリオ監督は後半開始と同時に、国内リーグでは20試合23ゴールを挙げているベルグソンに代えてホルヘ・オブレゴンを、ムリロ・エンリケに代えて加入したばかりのサム・カスティジェホとを投入し、攻撃の活性化を図ります。しかしブリーラムに傾きかけた流れは変わらず、JDTのDF陣とGKアンドニ・スビアウレが安定したプレーを見せて相手の得点を許さず、最終的に試合は0-0のまま終了しています。

JDTにとってはアウェイということもあって,安全第一でプレーしたのか、それともブリーラムの圧力に耐えるのが精一杯だったのか、はたまた最後までピッチのコンディションが影響したのか。その答えは3月11日にジョホール州のスルタン・イブラヒム・スタジアムで行われる2ndレグで明らかになりそうです。2022年シーズン以来2度目となる準々決勝進出を目指すJDTにとっては、代表戦も行われる国内最高のピッチを持つホームでの大歓声が勝利への後押ししてくれることを期待したいところです。

ACLエリート決勝トーナメント1回戦1stレグ
2025年3月4日@ブリーラム・スタジアム(タイ,ブリーラム)
ブリーラム・ユナイテッド 0-0 ジョホール・ダルル・タジムFC

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

3月3日のニュース<br>・新生ハリマウ・マラヤのメンバーは来週発表か<br>・クチンシティのガーナ出身FWミンターもマレーシア国籍取得へ<br>・ルクマン・ハキムはマレーシア復帰が濃厚

新生ハリマウ・マラヤのメンバーは来週発表か

マレーシア語紙のブリタハリアンは、今年1月に就任したピーター・クラモフスキー マレーシア代表監督が、今月末の2027アジアカップ3次予選へ向けたマレーシア代表合宿に招集する選手リストを既に作成済みだと報じています。ハリマウ・マラヤ(マレーシア語で「マレーのトラ」の意味)の愛称を持つマレーシア代表は、予選F組の初戦で3月25日にネパール代表とジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで対戦します。

3月17日から予定されている代表合宿を前に、来週には発表されることが予想されている合宿参加メンバーですが、前FC東京監督のクラモフスキー代表監督就任後初の合宿となるため、そのメンバーについてはさまざまな憶測が飛び交っています。

クラモフスキー代表監督やコーチ陣は精力的にマレーシアリーグの試合を観戦していますが、その一方で国外でプレーするマレーシアにルーツを持つ選手(ハイブリッド選手)数名ががマレーシア国籍取得と同時に代表入りするという予測もあり、その編成には多くのファンが期待と注目しています。しかしその一方で、特にヨーロッパでプレーしてい選手の合流については、気候への適応など、環境面での調整に時間がかかるのではという不安の声も出ています。

2027アジアカップ出場権を獲得するのは予選各組の1位のみで、マレーシアのいるF組ではベトナムがその最有力です。このベトナムとホームで対戦する6月10日にベストの布陣で臨むためにも、このネパール戦は重要です。

クチンシティのガーナ出身FWミンターもマレーシア国籍取得へ

マレーシア1部スーパーリーグのクチンシティFCでプレーするガーナ出身のジョーダン・ミンターが、マレーシア国籍取得の手続きを進めていると、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

2020年にトレンガヌFCのセカンドチーム、トレンガヌFC IIに加入し、その後はトレンガヌFC、KLシティFCを経て、今季はクチンシティFCでかプレーしているミンター選手は、今年で帰化してマレーシア代表入りをするのに必要な5年間の居住要件を満たしています。

現在29歳のミンターは、先週2月25日のスーパーリーグ第22節、ケランタン・ダルル・ナイムFC戦ではハットトリックを達成するなど、今季ここまでは11ゴールでリーグ得点王争いの3位につけています。

ミンター選手が代表入りすれば、やはり来季のマレーシア国籍取得を目指しているとされるジョホール・ダルル・タクジムFC(JDT)のエース、ベルグソン・ダ・シルバとともにマレーシア代表の攻撃力が大幅にアップします。なお、現在の代表FW陣には、コロンビア出身のロメル・モラレス、ブラジル出身のパウロ・ジョズエ、英国出身のダレン・ロックら帰化選手がいますが、ミンターとベルグソンの加入は、しばしば得点力不足が批判されるマレーシア代表の弱点を一気に解消する可能性があります。

また、この記事では、ミンターとベルグソン両選手に加え、帰化候補としてスリ・パハンFCのFWマヌエル・ヒダルゴ、KLシティのDFジャンカルロ・ガリフオコ、ペナンFCキャプテンでDFラファエル・ヴィトールの3選手の名前も挙げています。

ルクマン・ハキムはマレーシア復帰が濃厚

マレーシア代表でもプレー経験がある22歳のFWルクマン・ハキム・シャムスディンが、約5年の海外挑戦を経てマレーシアに復帰する可能性が高まっていると、スポーツ専門サイトのスタジアム・アストロが報じています。

2018年にマレーシアで開催されたAFC U16選手権(現AFC U17アジアカップ)では、マレーシアはグループステージ敗退ながら、5ゴールを挙げて唐山翔自(現ガンバ大阪)、オーストラリアのノア・ボティック(現オーストラリア1部ウェスタン・ユナイテッド) とともに得点王に輝いたルクマン選手は、その後の2020年には、当時マレーシア人がオーナーだったベルギーのKVコルトレイクと5年契約を結びました。しかしその後は出場機会に恵まれず、アイスランド2部のニャルズヴィークFCやJ3のY.S.C.C.横浜へ期限付き移籍しましたが、そこでも十分な出場機会がありませんでした。

ルクマン選手はKVコルトレイクとの契約が今年6月で満了する予定で、契約満了後は出場機会を求めてマレーシアのプレーを視野に入れているということです。ルクマン選手は昨年、父親を亡くしており、そのこともマレーシア復帰に影響していると、スタジアム・アストロは伝えています。

またルクマン選手は、マレーシア語紙のハリアン・メトロの取材に対しては、90%の確率でマレーシアに戻ると思うと述べており、「長い間海外でプレーしてきたし、マレーシア・スーパーリーグで新たな挑戦をする準備ができている。」「どのクラブに行くかは重要ではない。重要なのは、自分のキャリアにとって長期的なプロジェクトに適したクラブで、試合に出場できる環境があるかどうかだ。」と述べ、契約金などの金銭の問題ではなく、試合に出場し、キャリアをさらに発展させること、そしてずっと離れていた母のそばにいたいという気持ちがマレーシア復帰の理由だと説明しているということです。

3月2日のニュース<br>・JDTの好成績によりマレーシアがAFCクラブランキングでアジア10位に躍進<br>・ACLエリートで対戦するブリーラムUオーナーの発言がジョホール戦力強化のきっかけ?<br>・アジア杯予選:ネパールは仮想マレーシアのシンガポールと対戦<br>・アジア杯予選:マレーシア代表の初戦はジョホールで開催<br>・代表入り目前オランダ出身選手の移籍先に注目が集まる

イスラム教の断食月が始まりました。1ヶ月続くこの断食月ラマダン中、ムスリム(イスラム教徒)は日の出から日没まで飲食をしません。首都圏ではおよそ午前6時から午後7時30分までがこの断食時間に当たりますが、国民の60%強がムスリムのマレーシアでは、この間の国内リーグのキックオフ時間も従来の午後9時から午後10時になり、翌日仕事があるサポーターにはなかなか厳しい時間帯の試合となります。(ムスリムが比較的少ないサバ州とサラワク州での試合を除く)ただし、今季は既に残り2節となっていることや、3月にはFIFA国際マッチカレンダーがあることで、ラマダン中の国内リーグは1節のみ、しかも週末開催となっています。

JDTの好成績によりマレーシアがAFCクラブランキングでアジア10位に躍進

アジアサッカー連盟(AFC)クラブコンペティションランキングの最新ランキング(シーズン中間発表)が行われ、マレーシアはACLエリートでベスト16進出を果たしたジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)の活躍により、その順位をこれまでの12位から10位に浮上しています。マレーシアのポイントは現在39.508と、前回の発表では10位だったイラク(39.280)と11位だったオーストラリア(36.920)をそれぞれ抜き去っています。

今季のACLにはマレーシアからはACLエリートにJDTが、ACL2にはスランゴールFCが出場しています。JDTはグループステージで4勝2分1敗の成績を残して21.290ポイントを、スランゴールは同じくグループステージで3勝1分2敗の成績により8.667ポイントを獲得し、合計で29.957ポイントを獲得していますが、このポイントはその国からACLで出場している参加チーム数で割って平均を求めるので、今季ここまでのマレーシアのポイントは14.978となります。

スランゴールFCはグループステージで敗退していますのでこれ以上のポイントの積み上げはありませんが、JDTは、ACLエリート東地区で横浜Fマリノス、川崎フロンターレに次ぐ3位でノックアウトステージへ進出し、その1回戦でタイのブリーラム・ユナイテッドと3月5日にアウェイで、また3月11日にホームで対戦が決まっており、この試合の結果次第では、さらにポイントの上積みが期待できます。

またこのAFCクラブコンペティションランキングの東地区では、現在5位のマレーシアですが、4位にいるのがタイでそのポイント差は14.142です。5位のマレーシアは、2028/27シーズンのACLエリートへ1チーム、ACL2へ1チームの出場枠がありますが、4位のタイはさらにACLエリートのプレーオフへの1チームの出場枠を持っています。今後、マレーシアがタイに代わって4位に浮上すれば、さらにマレーシアのクラブがアジアの舞台で戦える機会が増えるので、マレーシアサッカーファンとしてはJDTに是非とも頑張ってベスト8入りを果たしてもらいたいところです。

ACLエリートで対戦するブリーラムUオーナーの発言がジョホール戦力強化のきっかけ?

ACLエリート東地区のノックアウトステージ1回戦ではジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)とタイのブリーラム・ユナイテッドが対戦しますが、この両チームはグループステージでも対戦しており、昨年12月3日のACLエリート第6節にJDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われた試合では0-0と引き分けています。

この試合後にブリーラム・ユナイテッドのネ―ウィン・チドチョーブ会長はタイのメディアに対して「JDTとはまた会うことになるだろう。でも、今度はブリーラムが勝つ。JDTはそれほど強いチームじゃない」と話したネーウィン会長は、JDTのオーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下に対して、さらに挑発的な発言を行なったとされています。

「JDTは多くの外国人選手を獲得しているが、特に気にすることはない。」「(JDTのオーナーであるトゥンク・イスマイル殿下には、もっと投資することをお勧めする。そうすれば、来年(2025年)の対戦はもっと面白くなるはずだ」と昨年語っています。

この発言の後、JDTは第7節のセントラル・コースト・マリナーズ戦に2-1、第8節の浦項スティーラーズ戦に5−2と連勝。同時にラ・リーガやセリエAでプレー経験のあるアルバロ・ゴンサレス。ジョナタン・ビエラ、ロケ・メサ、アンセルモ・モラエス、そしてサム・カスティジェホの5名を次々と補強し、第7節のセントラルコースト・マリナーズ戦ではアルバロ・ゴンザレスが2ゴールを挙げるなど、決勝トーナメント進出を決めています。

ACLエリート第8節終了時点では、東地区5位のJDTは同4位の光州FC(韓国)と、また同6位のブリーラム・ユナイテッドは同3位のヴィッセル神戸と対戦するはずでしたが、山東泰山のまさかの最終節出場辞退によって順位が大きく変動した結果、3位となったJDT対ブリーラム・ユナイテッドの対戦が実現しています。

まさに運命とも言える再戦が実現したこの両チームの対戦で、ネーウィン会長の発言によってJDTが成長したのかどうかが、この決勝トーナメント1回戦で明らかになりそうで

アジアカップ予選:ネパールはシンガポールを仮想マレーシアとして対戦

3月25日に開幕する2027アジアカップ最終予選を前に、初戦でマレーシアと対戦するネパール代表は3月21日にシンガポール代表との国際親善試合を予定していると、東南アジアのサッカーニュースを報じるAsean Football のSNSが伝えています。。予選F組に入っているマレーシアは、このネパールの他、F組大本命のベトナム、そしてラオスと同組になっています。

また、この試合はイタリア出身のヴィンチェンツォ・アネーゼ前監督に代わり、昨年10月からネパール代表の指揮を取るオーストラリア出身で前韓国女子代表コーチのマット・ロス新監督にとっても初の試合となるということです。

1989年6月以来となる両チームの対戦は、ネパールだけでなく、シンガポールにとっても予選第1節の香港代表戦の準備となりそうです。

アジア杯予選:マレーシア代表の初戦はブキ・ジャリル国立競技場ではなくジョホールのホーム、スルタン・イスマイル・スタジアムで開催

2027アジア杯最終予選でマレーシアの初戦となる3月25日のネパール戦が、クアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場ではなく、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで開催されることをアジアサッカー連盟(AFC)が正式に承認したことを、マレーシアの英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

マレーシア出身のウィンザー・ポールAFC事務局長は、マレーシアサッカー協会(FAM)がスルタン・イブラヒム・スタジアムでの開催を要請し、AFCがそれを承認したと明らかにしています。

「試合会場の選択は開催国側に委ねられており、マレーシアはスルタン・イブラヒム・スタジアムを選択しました。このスタジアムはACLエリートの試合開催会場としてAFCにより承認されているため、追加の検査は不要である」と、ウィンザー事務局長は取材したニューストレイツタイムズに説明しています。

当初の予定では、第1節はネパールのホームマッチとして開催予定でしたが、AFCが試合会場として予定していたカトマンズのダサラス・スタジアムを視察した結果、スタジアムのピッチの状態、セキュリティ対策、練習施設、照明設備などが国際基準に達していないとして、アジア杯予選の開催基準を満たしていないことから開催地変更が発表されていました。今回の変更により、ネパールはまずマレーシアで試合を行い、2025年11月に予定されているリターンマッチをネパールで開催することになりました。


AFCは女子サッカーやクラブ大会の国際試合については、このダサラス・スタジアムでの開催を認めているものの、男子のネパール代表がW杯およびアジア杯予選のホームゲームを国外で行うのは、これで2大会連続となります。なお前回の予選では、ネパールはバーレーン戦とUAE戦をそれぞれバーレーンとサウジアラビアで開催しています。

代表入り目前とされるオランダ出身選手の移籍先に注目が集まる

インドネシアの躍進に見られるように、東南アジアの多くの国が自国にルーツを持つ選手の帰化を進めていますが、マレーシア代表入りが時間の問題とされているのがオランダ出身のFWフレディ・ドルイフ(オーストリア1部ラピード・ウィーン)です。27歳のドルイフ選手は、マレーシア国籍取得に関する手続きがすでに完了したとも報じられており、今月のアジア杯予選を前に代表入りするとされています。

190cmの大型ストライカーである26歳のドルイフ選手について、マレーシアのメディア、マジョリティが、マレーシアではなく隣国インドネシアのサッカーファンの間でも話題となっていると報じ、その反応を紹介しています。

「ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT」はマレーシア人としてドルイフ選手を獲得する絶好の機会で、既に受け入れる準備ができているはずだ」、「ACLエリートで決勝トーナメントに進んでいるJDTにとって理想的なストライカー候補だ。獲得する価値は十分ある」といった声がある一方で、オランダ国内のメディアはドルイフ選手が、かつて堂安律選手や板倉滉選手が所属したオランダ1部のFCフローニンゲン加入の可能性を報じています。SKラピッド・ウィーンとの契約が2024年2月5日に終了したドルイフ選手は、現在フリーエージェントとなっていますが、オランダ1部で現在8位で、上位進出を目指すFCフローニンゲンがその獲得に関心を示しているとしています。


マレーシアサッカー協会(FAM)は、このドルイフ選手の他、22歳のDMFセム・シェペルマン(オランダ1部ヘラクレス・アルメロ)、27歳のDFディラン・ファン・ヴァーヘニンゲン(オランダ1部スパルタ・ロッテルダム)の代表入りを近々発表するとされています。3月16日に予定されているマレーシアスーパーリーグ第23節終了後の翌日3月17日からは、今年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督が初めて行う代表合宿が予定されており、この合宿に上記の3選手が合流するのではないかと期待されています。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第22節の結果とハイライト映像(3)<br>・2位スランゴールはホームで3位サバと引き分け<br>・マレーシアカップ決勝進出のスリ・パハンはトレンガヌに完敗

2月27日に行われたスーパーリーグ第22節の結果の前にニュースを一つ。マレーシアの絶対王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が来週3月4日のACLエリートノックアウトステージ1回戦のブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦を前に大型補強を敢行しています。

今回JDTへの加入が発表されたのは、元ラ・リーガやセリエAで合わせて300試合以上に出場し、昨年8月にはセリエBのサッスオーロを退団していたスペイン出身のFWサム・カスティジェホです。スペインのマラガ、ビジャレアル、バレンシア、またイタリアではACミランでプレーした経験を持つ30歳のカスティジェホ選手は。JDTが2025年に入ってからACLエリートのためだけに獲得した5人目の選手となりました。JDTは既にいずれもスペイン出身のDFアルバロ・ゴンサレス、MFジョナタン・ビエラ、MFロケ・メサ、そしてブラジル出身のFWアンセルモ・デ・モラエスといずれもスペイン出身の4選手を獲得しています。

2位スランゴールと3位サバの直接対決は引き分けに

2位セランゴールFCがホームのMBPJスタジアムに、勝点差8で3位のサバFCを迎えた試合は、両者とも譲らず0-0の引き分けに終わっています。

スランゴールは、先週末のPDRM FCとの決勝に勝利しMFLチャレンジカップ優勝の勢いのまま試合に臨みました。しかしPDRM戦で活躍したアルヴィン・フォルテス、クエンティン・チャンの両サイドハーフが、サバFW陣に対して守備に追われる場面が多く、好機を演出できないまま前半は0-0で終了します。

後半に入るとサバが攻め入る場面が多くなりますが、スランゴールも攻撃時の3バックから守備に回ると両サイドハーフが戻り5バックに切り替えてしっかり守るなど、決定的なチャンスを作らせずに試合は進みます。しかし67分に右サイドからボールを持ち込もうとしたサバのサディル・ラムダニとスランゴールDFファズリ・マズランが倒してします。主審はこのプレーを流したものの、その後、VARが介入し、結局、サバがPKを獲得。しかしマレーシア代表でもプレーするFWダレン・ロックが蹴ったPKは、スランゴールGKカラムラー・アル・ハフィズに見事にセーブされます。その後も両チームともにゴールを破れず、結局、試合は0-0で終了します。


スランゴールはこの試合に勝てば今季の2位がほぼ確定するはずでしたが、チャレンジカップ決勝の2試合で6点を挙げた攻撃陣が、攻守の切り替えが素早いサバに攻撃の起点となる両サイドハーフが封じられる場面が多く、機能しませんでした。次節第23節ではスランゴールはリーグ最下位のケランタン・ダルル・ナイムFCと、サバは勝点差6で4位のトレンガヌFCと対戦します。

2024/25マレーシアスーパーリーグ第22節
2025年2月28日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 0-0 サバFC
MOM:カラムラー・アル=ハフィズ(スランゴールFC)

この試合のハイライト映像。マレーシアンフットボールリーグ(MFL)のYouTubeチャンネルより。

マレーシアカップ決勝進出のスリ・パハンはトレンガヌに大敗

マレーシアカップ決勝進出を決めているスリ・パハンFCはリーグ戦では3勝8分7敗で10位と低迷しています。そのスリ・パハンがトレンガヌFCとホームで対戦し、今季最多となる5失点を喫して敗れています。

開始2分でアキヤ・ラシドのゴールでリードを許したスリ・パハンは、20分にもサファウィ・ラシドがスリ・パハンGKザリフ・イルファン・ハシムディンをかわしてゴールを決められ、開始20分で2点差をつけられます。さらに26分にはCBアレクサンダー・ツヴェトコヴィッチがアキヤ・ラシドを倒して1発レッドで退場となり10人になってしまいます。こうなると試合は完全にトレンガヌのペースとなり、このプレーで得たPKでゴールウを狙ったマヌエル・オットのシュートはスリ・パハンGKザリフ・イルファン・ハシムディンにブロックされたもののそのこぼれ球を詰めていたサフワン・マズランが押し込んでトレンガヌに3点目が入ります。しかしスリ・パハンもミコラ・アハポフのパスから帰化選手のエゼキエル・アグエロがゴールを決め、トレンガヌのリードを2点差として前半を終了します。

後半に入るとトレンガヌは59分にイスマヒル・アキナデ、89分にはマヌエル・オットがそれぞれゴールを決め、数的有利を活かしてスリ・パハンに圧勝しています。一方のスリ・パハンは直近の5試合で2分3敗、リーグ戦最後の勝利は昨年10月のペナンFC戦で、リーグ戦では8試合白星がありません。

2024/25マレーシアスーパーリーグ第22節
2025年2月28日@MPTタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 1-5 トレンガヌFC
⚽️スリ・パハン:エゼキエル・アグエロ(40分)
⚽️トレンガヌ:アキヤ・ラシド(2分)、サファウィ・ラシド(20分)、サフワン・マズラン(28分)、イスマヒル・アキナデ(59分)、マヌエル・オット(89分)
MOM:サファウィ・ラシド(トレンガヌFC)

この試合のハイライト映像。マレーシアンフットボールリーグ(MFL)のYouTubeチャンネルより。
2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第22節終了)
順位チーム勝点
1JDT2058191070763
2SEL20431343331419
3SAB2035105537298
4TRE203187530228
5KCH192769428244
6#KLC202594731265
7PRK20236593334-1
8PDRM19215682129-8
9PEN20204882632-6
10*KDA18206571729-12
11SRP19173882234-12
12NSE191233131941-22
13KDN20721171359-43
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第22節終了)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT23
2パウロ・ジョズエKLC13
3ジョーダン・ミンターKCH11
4ルシアーノ・ゴイコチェアPRK10
ロドリゴ・ディアスPEN10
ロニー・フェルナンデスSEL10
7アルヴィン・フォルテスSEL8
イフェダヨ・オルセグンPDRM8
クレイトンPRK8
10アリフ・アイマンJDT7
ジョアン・ペドロSAB7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC
PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、SAB-サバFC

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第22節の結果とハイライト映像(2)<br>・KLシティが6位浮上、PDRMの連敗は止まらず<br>・ミンターのハットトリックでクチンシティが快勝、最下位クランタンは7連敗<br>・ヌグリスンビランは3試合ぶりの勝利で今季3勝目を挙げる

2月26日にマレーシアスーパーリーグの3試合が行われています。昨年5月に開幕した今季2024/25シーズンも今節を終えるとあと2節となりました。既にジョホール・ダルル・タジムFCが今季優勝を決めており、優勝争いの興奮はありませんが、来季のアセアンクラブ選手権の出場権がかかる4位以内をを争う4チームが勝点6差の中にひしめき合っており、このチーム同士の争いはまだまだその行方がわかりません。

KLシティが6位浮上、PDRMの連敗は止まらず

KLシティはいずれもマレーシア代表でプレーするキャプテンのパウロ・ジョズエとハキミ・アジムの両FWがゴールを決めています。クラブライセンス申請の際に虚偽の書類を提出したことにより今季の勝点6が剥奪されているKLシティですが、この勝利で順位を一つ挙げて6位に浮上しています。

試合は前半の23分にパウロ・ジョズエがペナルティエリアの外から強烈なシュートを決めてKLシティが先制すると、後半の50分にはPDRMのペナルティエリア内で相手DFのクリアミスを拾ったハキミ・アジムがそのままゴールを決めてリードを広げます。試合終了間際にチディ・オスチュクウが絶妙なボレーシュートを決めて1点を返しますが、とき既に遅し、でした。

敗れたPDRM FCは好機を作りながらそれを生かすことができず惜敗。年明けから勝利がなく、先週末のチャレンジカップ決勝2ndレグ直前にP・マニアム監督を「休養」させる荒療治を敢行したPDRMでしたが、こリーグ戦、カップ戦合わせて今年に入ってからは5戦5敗と負の連鎖を止めることができませんでした。

2024/25マレーシアスーパーリーグ第22節
2025年2月28日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
KLシティFC 2-1 PDRM FC
⚽️KLシティ:パウロ・ジョズエ(23分)、ハキミ・アジム(50分)
⚽️PDRM:チディ・オスチュクウ(90+2分)
MOM:パウロ・ジョズエ(KLシティFC)
PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発してフル出場しています。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

ミンターのハットトリックでクチンシティが快勝、最下位クランタンは7連敗

ここまで4試合連続で引き分けが続いてクチンシティが、ジョーダン・ミンターのハットトリックで5試合ぶりの勝利を挙げ、5位を維持しています。ミンター選手は前半2分にチェチェ・キプレのシュートがゴールポストに当たって跳ね返ったところを頭で押し込んで、まずは先制点を決めます。さらにその3分後には左サイドでラマダン・サイフラーのパスを受けるとそのままシュート!これが決まってクチンシティはリードを2点に広げます。後半58分には、右サイドのチェチェ・キプレが挙げたクロスをファーサイドで待っていたミンターが再び頭で押し込み3点目を挙げています。

2024/25マレーシアスーパーリーグ第22節
2025年2月28日@スルタン・ムハンマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ダルル・ナイムFC 0-3 クチンシティFC
⚽️クチンシティ:ジョーダン・ミンター3(3分、6分、59分)
MOM:ジョーダン・ミンター(クチンシティFC)
クチンシティFCの谷川由来選手は、前節第21節トレンガヌFC戦で今季3枚のイエローをもらっていたため、警告累積による出場停止で今季初のベンチ外でした。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

ヌグリスンビランは3試合ぶりの勝利で今季3勝目を挙げる

12位のヌグリスンビランFCはホームに10位のクダ・ダルル・アマンFCを迎えて対戦し、今季2度目のクリーンシートで今季3勝目、ホームでは今季2勝目を挙げています。

4戦連続のホーム開催となったヌグリスンビランは、ハイン・テット・アウンとA・セルヴァンの両FWを中心に積極的に攻めるも、その精度の低さに加え、クダDF陣が安定した守備を見せて得点を挙げることができません。それでも39分に佐々木匠選手のフリーキックから最後は相手GKの弾いたボールをハリス・サムスリが押し込んで、ヌグリスンビランが先制し、前半はそのまま1−0で終了します。

後半に入るとクダもギアを上げて、試合を押し気味に進めます。70分にはミロシュ・ゴルディッチがドリブル突破で2人のヌグリスンビランDFをかわし、決定的なシュートを放ちますが、ヌグリスンビラン守護神アキル・アブドゥル・ラザクがこれをブロックして、ゴールを許しません。逆にヌグリスンビランは85分に、相手ペナルティエリアにボールを持ち込んだハイン・テット・アウンからのカットバックをA・セルヴァンが落ち着いて決め、追加点を挙げるとそのまま逃げ切ったヌグリスンビランが今季3勝目を挙げています。


クダ・ダルル・アマンFCのヴィクター・アンドラグ監督は試合後の会見で、クラブを取り巻く外部要因が現在のチームのパフォーマンスに大きな影響を与えていることを明らかにしています。財政問題の影響で主力外国人選手の契約解除や、練習への選手の参加が難しくなっていることが、チームにとって大きな障害になっていると説明した。

「長期の試合間隔がパフォーマンスに影響を与えたという意見もあるが、実際にはそれが原因ではない。」と述べたヴィクター監督は、「チームの成績に影響を与えているのは財政問題などの外部要因である。試合の準備に関して言えば、20人の選手が練習に参加できたことが一度もない。これは言い訳ではなく、我々が現在直面している現実である。」と話した元マレーシア代表のヴィクター監督は、この日の敗戦に落胆しながらも、選手にトレーニングや試合出場を強制できないとも述べています。

「我々は選手のキャリアを尊重しており、彼らを支援し、チームに残る意志のある選手を歓迎するが、その一方で無理にプレーさせることはできない。」と話した他、現在の財政状況では、来シーズンのチームの再構築が不透明であり、今季残りの6試合でどれだけの選手が残るかは不確かだと付け加えています。

クダ・ダルル・アマンFCは現在、9か月とも10ヶ月とも言われる給与未払い問題に直面していると報じられており、一部の選手は十分な給与を受け取れていないという報道も出ており、ヴィクター監督が述べる通り来季の存続すら危ぶまれる状況に直面しています。

2024/25マレーシアスーパーリーグ第22節
2025年2月28日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
ヌグリスンビランFC 2-0 クダ・ダルル・アマンFC
⚽️ヌグリスンビラン:ハリス・サムスリ(40分)、A・セルヴァン(81分)
MOM:A・セルヴァン(ヌグリスンビランFC)
ヌグリスンビランFCの佐々木匠選手は先発して90+3分に交代しています。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第22節途中)
順位チーム勝点
1JDT2058191070763
2SEL19421333331419
3SAB1934104537298
4TRE192877525214
5KCH192769428244
6#KLC202594731265
7PRK20236593334-1
8PDRM19215682129-8
9PEN20204882632-6
10*KDA18206571729-12
11SRP18173872129-8
12NSE191233131941-22
13KDN20721171359-43
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第22節途中)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT23
2パウロ・ジョズエKLC13
3ジョーダン・ミンターKCH11
4ルシアーノ・ゴイコチェアPRK10
ロドリゴ・ディアスPEN10
ロニー・フェルナンデスSEL10
7アルヴィン・フォルテスSEL8
イフェダヨ・オルセグンPDRM8
クレイトンPRK8
10アリフ・アイマンJDT7
ジョアン・ペドロSAB7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC
PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、NSE-ヌグリスンビランFC

2月26日のニュース<br>・マラッカFCがA1セミプロリーグを制覇し来季は1部スーパーリーグ昇格へ<br>・リーグ11連覇達成のジョホールの優勝賞金は8000万円<br>・マレーシア代表首脳陣の組閣が着々と進行-元豪州代表キャプテンがコーチ就任、さらに他の豪州出身者の名前も浮上

マラッカFCがA1セミプロリーグを制覇し来季は1部スーパーリーグ昇格へ

マレーシア国内リーグ3部に当たるA1セミプロリーグの最終節第28節が行われ、既に優勝を決めていたマラッカFCはマチャンFCを7-2で破り、優秀の美を飾っています。マラッカFCは第26節に勝利して勝点65とし、昨季のチャンピオンでこの時点で2位のイミグレセン(入国管理局)FCの勝点が57と、2試合を残して8点差となったことで、既に優勝を決めていました。

昨季はトップリーグのヌグリスンビランFCで監督を務めたマラッカFCのK・デヴァン監督は、「新たにチームを結成したにもかかわらず、シーズン開始から最終戦までトップレベルのパフォーマンスを維持することができた」と、今季を通じて安定した戦いぶりが優勝の要因であったと説明しています。

昨季は8勝7分9敗(得点、失点とも38)で10位に終わったマラッカFCでしたが、今季は22勝5分1敗の成績を残し、リーグ最多得点81(2位はマレーシア大学の63)、リーグ最少失点13(2位はイミグレセンFCの20)といずれもリーグトップの成績で優勝を果たしました。なおA1セミプロリーグのチャンピオンとして、マラッカFCは来季2025/26スーパーリーグ自動昇格権に加え、A1セミプロリーグの優勝賞金10万リンギ(およそ330万円)の賞金も獲得しています。

A1セミプロリーグ制覇でを決めたマラッカFCですが、K・デヴァン監督はチームオーナーのヌール・アズミ・アフマド氏が選手への給料未払いなどなくチームの福利に尽力したことが成功の大きな原因と話しています。また初めての1部昇格となる来季の補強などについてそのヌール・アズミ・アフマド オーナーは、1部リーグへの昇格を見据え、慎重な計画が必要であると強調しています。

スーパーリーグ昇格前に、考慮すべき要素がたくさんあると述べたヌール・アズミ オーナーにとって、最大の課題がチームを財政的な持続可能性の確保でしょう。「スーパーリーグ昇格については、収入源を見極め、段階的に進めるべきだ。現在、マラッカ州サッカー協会はマラッカ州政府の支援を受けているが、スーパーリーグ昇格に向けてスポンサーシップを確保する必要があります」と述べたヌール・アズミ オーナーは、安定した資金確保の重要性を強調しました。

なお、スーパーリーグ昇格には第一審機関(FIB)が定めるクラブライセンス交付基準を満たす必要がありますが、ヌール・アズミ オーナーと経営陣はその条件を確実にクリアするための準備も進めていということです。


2022年シーズンに発足したこのマラッカFCは、下部リーグを経ず、当時の3部、M3リーグに参加した新しいクラブです。しかし、かつてマラッカ州には、1924年に発足したマラッカ州アマチュアサッカー協会(2014年からはマラッカ・ユナイテッド・サッカー協会)が運営するプロクラブ、マラッカ・ユナイテッドFCというクラブが存在しました。1983年シーズンには1部で優勝の経験もあるこのクラブは、2021年シーズンに300万リンギ(およそ1億円)の未払い給料が発覚し、2022年シーズンのクラブライセンスが交付されず、1部スーパーリーグから排除されてしまいました。

その後、このマラッカ・ユナイテッドFCは解散し、同じマラッカ州サッカー協会が関わる新たなクラブ、マラッカFCが誕生しました。しかしマラッカ・ユナイテッドFCの後継クラブと名乗れば、給料未払い問題を引き継ぐことになるため、解散したマラッカ・ユナイテッドFCとは全く無関係な「新しい」クラブとしてこのマラッカFCが発足しました、100年近いマラッカサッカーの歴史をリセットして新たなクラブとして出発したのは、マラッカ州首相をトップに持つマラッカ州サッカー協会が単に未払い給料問題から距離を置くためでした。

リーグ11連覇達成のジョホールの賞金総額は8000万円

マレーシア語紙ブリタハリアンの電子版は、一昨日国内リーグ11連覇を達成したジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が、優勝賞金として240万リンギ(およそ8000万円、1リンギはおよそ34円)を獲得したと報じています。

この240万リンギの内訳は、スーパーリーグ全チームに均等に配分される基本分配金が50万リンギ、そしてリーグ優勝による追加報奨金が190万リンギットとなっています。


国内リーグでは4試合を残して早々と優勝を決めるなど圧倒的な強さを見せたJDTですが、マレーシアから唯一の代表として出場しているてアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)では、最終節で浦項スティーラーズ(韓国)に5−2で破り、決勝トーナメントとなるベスト16進出を決めています。JDTはこの勝利により、グループステージの最終成績を4勝2分2敗としていますが、今季からリニューアルされたACLEは、グループステージの参稼報酬80万米ドルに加え、1勝あたり10万米ドル(およそ1500万円、1米ドルはおよそ150円)が支払われます。JDTにはさらにベスト16進出で20万米ドルが追加され、合計140万米ドル(およそ2億円)を獲得するなど、国内外の大会での成功を通じて、財政的にも大きな成果を収めています。

マレーシア代表首脳陣の組閣が着々と進行-元豪州代表キャプテンがコーチ就任、さらに他の豪州出身者の名前も浮上

元オーストラリア代表キャプテンのマーク・ミリガン氏がマレーシア代表のコーチに就任したことをマレーシアサッカー協会(FAM)が発表しています。今年1月にマレーシア代表の監督に就任した前FC東京監督のピーター・クラモフスキー監督、そしてスポーツ科学の専門家として、代表のハイパフォーマンス及びメディカル部門の責任者に就任したクレイグ・ダンカン博士に続く、代表首脳陣3人目のオーストラリア出身者となりました。

ミリガン氏は、FAMによる声明の中で、ジョホール州摂政トゥンク・イスマイル殿下が推進するマレーシア代表変革プロジェクトに魅力を感じたことが、マレーシアでの挑戦を決意した理由の一つであると明かしています。クラモフスキー代表監督から直接、連絡を受けてコーチ陣参加を要請された際には、決断するのは難しくなかったと話したミリガン氏は、自身の豊富な経験を活かし、マレーシア代表の発展に貢献したいとしています。また既にマレーシア入りしているミリガン氏は、2月17日のMFLチャレンジカップ決勝1stレグ、スランゴールFC対PDRM FCを観戦するなど、マレーシアサッカーについて積極的に情報収集しているということです。

39歳のミリガン氏は、2015年アジアカップでアンジェ・ポステコグルー監督のオーストラリア代表が優勝した時のメンバーで、代表では通算80試合に出場しています。


マレーシア代表については、オーストラリア出身のコーチがさらに加わるのではとされています。その1人が前BGパトゥム・ユナイテッド監督のマット・スミス氏です。BGパトゥム・ユナイテッド退団後は、オーストラリア1部のマッカーサーFCでコーチを務めていましたが、今月初旬に「海外での新たな挑戦の機会」を理由に退団しています。

このスミス氏は2月22日のMFLチャレンジカップ決勝2ndレグ、PDRM FC対スランゴールFCの試合をクラモフスキー代表監督やクレイグ・ダンカン博士とともに観戦する姿が目撃されています。スミス氏は現役時代はブリスベン・ロアー(オーストラリア1部)、BGパトゥム・ユナイテッドでプレーしたのち、セミプロリーグのブリスベン・シティFC(オーストラリア)やBGパトゥム・ユナイテッドで監督を務めた後、2023年からはマッカーサーFCのコーチを務めていました。

スミス氏の他にはやはりオーストラリア出身のジョン・クローリー氏の名前も上がっています。52歳のクローリー氏はGKコーチで、オーストラリアU23代表のGKコーチや、シドニーFCやセントラル・コースト・マリナーズなどでもGKコーチと歴任した他、現在はフランス1部のRCランスで正GKを務めるオーストラリア代表GKマシュー・ライアンを育てたことでも知られています。


マレーシアサッカー協会(FAM)の外から代表チーム改革を主導するイスマイル殿下の「個人的なアドバイザー」であるティム・ケイヒル氏の影響からか、一気にオーストラリア色となったマレーシア代表首脳陣。まずは3月から始まる2027年アジアカップ最終予選でその手腕が問われることになります。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第22節の結果とハイライト映像(1)・ジョホールが前人未到の国内リーグ11連覇で今季二冠達成

2月24日にマレーシアスーパーリーグ第22節の1試合、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)対ペラFCが行われ、ホームのスルタン・イブラヒム・スタジアムでペラFCを2-0で破ったJDTが国内リーグ11連覇を果たしています。JDTはこの試合の勝利で勝点58(20試合)となり、現在2位で勝点43のスランゴールFCが残り5試合を全勝し、JDTが残り4試合で全敗した場合でも、スランゴールがJDTを勝点で上回ることは出きず、JDTの優勝が決まっています。

今季は20試合で19勝1分0敗とここまで無敗のJDTですが、残り4試合でも引き分け以上であれば、3シーズン連続で国内リーグ無敗という記録も達成します。ちなみにJDTが最後に国内リーグ戦で敗れたのは2021年4月24日の2021年シーズン第10節、トレンガヌFC戦ですが、この2021年は11月30日のマレーシアカップ決勝でもKLシティに敗れています。言い換えれば、2021年11月30日を最後、JDTはマレーシア国内で1敗もしていません。

試合の方は、前半はペラが健闘し、JDTは苦戦を強いられましたが、前半終了間際に試合が動きました。アリフ・アイマンが見事なドリブルで相手DFをかわして巧みなクロスを上げると、このクロスにヘセ・ロドリゲスが反応してゴールを決め、JDTが1-0として前半を終えました。

後半に入ると、JDTがさらにリードを広げます。64分にペラのDFアリフ・アル=ラシドがが自陣ペナルティエリアでハンドを犯して得たPKを、ホルヘ・オブレゴンが決めて、20とすると、この2点を守ってJDTが勝利を挙げています。

既に今季のFAカップで優勝しているJDTは、これでリーグ戦と合わせて二冠を獲得し、4月12日のスリ・パハンFCとのマレーシアカップ決勝で前人未到の3季連続の国内三冠を目指します。

一方、ペラFCはこの敗戦により9敗目となり、勝点23でリーグ6位に留まっています。

国王もJDTのリーグ11連覇を祝福

このJDTの11連覇に対して、JDTのオーナー、トゥンク・イスマイル殿下の父君でもあるマレーシア国王スルタン・イブラヒム陛下は、公式フェイスブックページを通じて祝辞を述べられました。

2013年にジョホール州摂政トゥンク・イスマイル殿下によって設立されて以来、JDTにとって通算29個目のタイトルとなることも併せて投稿したスルタン・イブラヒム国王は、「JDTにとって11シーズン連続のリーグ優勝はこの前例のない偉業はである」として祝意を表しています。

2024/25マレーシアスーパーリーグ第22節
2025年2月24日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 2-0 ペラFC
⚽️ジョホール:ヘセ・ロドリゲス(45分)、ホルヘ・オブレゴン(64分PK)
MOM:ハジック・ナズリ(ペラFC)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。
2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第22節途中)
順位チーム勝点
1JDT2058191070763
2SEL19421333331419
3SAB1934104537298
4TRE192877525214
5KCH182459425241
6PRK20236593334-1
7#KLC192484729254
8PDRM18215672027-7
9PEN20204882632-6
10*KDA17206561727-10
11SRP18173872129-8
12NSE18923131741-24
13KDN19721161356-43
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第22節途中)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT23
2パウロ・ジョズエKLC12
3ルシアーノ・ゴイコチェアPRK10
ロドリゴ・ディアスPEN10
ロニー・フェルナンデスSEL10
6アルヴィン・フォルテスSEL8
イフェダヨ・オルセグンPDRM8
クレイトンPRK8
ジョーダン・ミンターKCH8
10アリフ・アイマンJDT7
ジョアン・ペドロSAB7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC
PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、NSE-ヌグリスンビランFC

2月23日のニュース<br>・MFLチャレンジカップ決勝2ndレグ:スランゴールが10年ぶりの国内タイトル獲得、喜熨斗勝史監督にも初タイトル

色々とスッキリしない点もあるが、スランゴール再生へのきっかけが見えたのか。

MFLチャレンジカップの決勝2ndレグが2月22日にスランゴール州のMBPJスタジアムで行われ、1stレグで勝利していたスランゴールFCが0−4で昨季のチャンピオンPDRM FCを破り、2015年のマレーシアカップ優勝以来となる国内タイトルを獲得しています。

1週間前の2月15日にスランゴールのホーム、MBPJスタジアムで行われた1stレグに対し、この日の2ndレグは本来ならPDRMのホーム、MPSスタジアムで行われる予定でしたが、MBPJスタジアムが「決勝開催のための条件を満たしている」ことを理由に試合会場の変更を主催者であるマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)に申請し、MFLもこれを認めることを2月18日に発表しました。

1週間前の1stレグは3-2とスランゴールが勝利したもののその差は1点と、2ndレグではPDRMも逆転優勝を狙えると思われていましたが、試合前日に驚くようなニュースが飛び込んできます。

MFLは公式サイト上で、マレーシアサッカー協会(FAM)の懲戒委員会が、2月15日のチャレンジカップ決勝1stレグで、出場資格のない選手を起用したことを理由にPDRM FCに処分を下したことを発表しました。具体的には、準々決勝と準決勝でそれぞれイエローをもらっており、決勝1stレグは警告累積により出場停止処分を受けていたはずのモハマド・サフィー・アフマドが58分に交代出場したことが原因でした。MFLの発表を読んだだけでは、なぜこのサフィー選手がそもそもベンチ入りしていたのか、また本人も含めてチーム内でそれに気づく者がなぜ1人もいなかったのか、など不明な点が多すぎますが、この規定違反についてMFLは以下のような処分内容を発表しました。

1. 2月15日の決勝1stレグはスランゴールに3−0の勝利を与える
2. 3,000リンギ(およそ10万円)の罰金
3. 厳重注意処分が与えられ、同様の違反が繰り返された場合にはより重い処分が課される

さらにMFLの公式サイトではこの決定については上訴不可であること、選手の出場停止に関する全ての事案は、MFLではなく、FAMの懲罰委員会の管轄にあることなども説明されていました。この結果、PDRMは決勝2ndレグを3点ビハインドの状態で始めることになってしまいました。

この時点でPDRMのチーム内の士気が消沈したことは予想できますが、さらに驚くニュースが続きました。決勝2ndレグを前に、PDRMはP・マニアム監督の「休養」を発表し、決勝2ndレグ、そして今季終了まではエディ・ガピル コーチが監督代行としてチームを指揮することを発表しました。重要な試合前日の監督の「休養」も、またその理由も発表されず、メディアでもチーム内が混乱していることも報じられましたが、真相は藪の中です。

試合前からそんな波乱に富んだ決勝2ndレグですが、スランゴールは1stレグで退場になったキャプテンのCBサフワン・バハルディンに代わり、マレーシア代表でもプレーする22歳のアリフ・ハイカルを起用した以外は1stレグと全く同じ布陣、一方のPDRMは鈴木ブルーノ、シャーレル・フィクリの2トップを中心に早い段階でのゴールを狙います。

PDRMがこのFWコンビを中心に積極的に前に出る中、先制点はスランゴールでした。決勝1stレグでは左サイドハーフとして起用されると機動性を発揮してPDRM守備陣を翻弄したアルヴィン・フォルテスがこの試合でも躍動。これに引っ張られるようにPDRM守備陣が動くと、これまで中央でパスを受けることが多かったいわゆる「アウトアンドアウトストライカー」のロニー・フェルナンデスが、この試合では大きな身体に似合わず積極果敢に空いたスペースに走ってボールを受けるなど新たな一面を見せ、まずは開始4分でアリ・オルワンの先制ゴールをアシストします。さらにその6分後には左サイドに開いたフェルナンデスからのクロスをヨハンドリ・オロスコが頭で合わせて2点目のゴールを決め、開始10分でスランゴールが通算成績で5−0とします。

PDRMにとって痛かったのは、22分のイズルル・アシュラフの1発レッドによる退場でした。ボールを持つヨハンドリ・オロスコへチャージした際、その足を踏みつけた行為はVARが介入した結果、イエローがレッドとなり5点を追うPDRMは10人になってしまいます。30分にはここまで2アシストのロニー・フェルナンデスがヘディングシュートで3点目を決めると、前半だけでこの試合の行方は決まってしまいました。

後半にはPDRMの正GKブライアン・シーがケガで後退を余儀なくされると、さらに1点を加えたスランゴールがこの試合を4−0で制し、通算成績7−0でMFLチャレンジカップの優勝を果たした試合でした。なおこの試合のMOM2は1ゴール2アシストと活躍したロニー・フェルナンデスが選ばれています。(写真上は試合後の記念写真。Juaraはマレーシア語でチャンピオンを意味します。写真下は大会最優秀選手賞を受賞したロニー・フェルナンデス選手。)

しかし冷静になって考えると… 優勝とは言え、この大会は国内で最も権威のあるマレーシアカップでベスト8進出を逃したチームのための大会で、手放しで喜ぶほどのタイトルではありません。しかしその一方で、前述の通り、アルヴィン・フォルテスやロニー・フェルナンデスに新たな可能性を見出した喜熨斗勝史監督が、今季は大事なところで勝ちきれなかったスランゴールを再生させている印象はしっかりと感じられる大会でした。なお、スランゴールの次戦は2月27日のリーグ戦22節で、勝点差8でスランゴールに次ぐ3位のサバと対戦します。この試合に勝利すれば、今季の2位が確定する重要な試合で、チャレンジカップ決勝の2戦で見せたサッカーが、リーグ3位のサバを相手にはたして機能するのかに注目したいと思います。

MFLチャレンジカップ決勝2ndレグ
2025年2月22日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
PDRM FC 0-4 スランゴールFC(通算成績:0-7)
⚽️アリー・オルワン(4分)、ヨハンドリ・オロスコ2(10分、80分)、ロニー・フェルナンデス(30分)
MOM:ロニー・フェルナンデス(スランゴールFC)
PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発して67分に交代しています。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

2024/25チャレンジカップ決勝1stレグ:10人のスランゴールがPDRM相手に先勝

2月15日にMFLチャレンジカップの決勝1stレグが行われ、スランゴールFCが開始10分で10人となるも、昨季のチャンピオンPDRM FCに逆転勝ちし、優勝に王手をかけています。

国内で最も盛り上がるカップ戦マレーシアカップの1回戦で敗れたチームが参加するいわばワンランク下のカップ戦がこのチャレンジカップです。決勝に駒を進めたのは、前年覇者PDRM FCと、現在リーグ2位のスランゴールです。

特にスランゴールは、今季もリーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)打倒の一番手と期待されながら、昨年8月のFAカップの決勝ではそのJDTに1-6と一蹴され、マレーシアカップは1回戦敗退、そして現在は首位(JDT)と残り5試合で勝点差12をつけられています。さらに昨年11月にセルビア代表コーチから転身した喜熨斗勝史監督就任以降、ACL2でもグループステージ敗退するなど、苦しいシーズンとなっており、いわばこのチャレンジカップは「赤い巨人」のニックネームを持つ古豪が復活に向けてのプライドをかけた闘いとなります。

この試合の布陣はこれまで喜熨斗監督が何度か採用していた3-4-3でしたが、これまでウィングとして1列目で起用されてきたアルヴィン・フォルテスを、この試合では1列下げて左サイドハーフとしたのが見事にハマった試合でした。これで右にはクエンティン・チャン、左にはフォルテスと、いずれも守備の意識も高いサイドハーフが揃ったことで、試合開始からチーム全体が躍動します。

1点目はまさにこの起用が功を奏した得点でした。試合開始からわずか4分、右サイドのフォルテスからのパスを受けたアリ・オルワンがペナルティエリアまでドリブルで持ち込むと、ゴール前のロニー・フェルナンデスへ。フェルナンデスが相手DFを惹きつけながら、その間にゴール前に走り込んできたフォルテスへパスすると、これをノートラップでフォルテスが蹴り込んでスランゴールが先制しました。

しかし10分にスランゴールは10人になってしまいます。スランゴールDFラインの裏へ出たボールに合わせてPDRMのシャーレル・フィクリが飛び出すと、1対1となったGKカラムラー・アル=ハフィズがペナルティエリアの外へ飛び出し、そのボールを胸でクリアしようとしますが、これがシャーレル選手の足元へ。このピンチにシンガポール代表CBのサフワン・バハルディンが必死のスライディングタックルでクリアしますが、同時にシャーレル選手も倒してしまいます。ここでVARが介入し、結局、キャプテンでもあるサフアン選手にはレッドカードが出され、開始わずか11分でスランゴールは10名となってしまいます。

しかし、その8分後、何と10人のスランゴールが追加点を挙げます。オーバーラップしたアフロことシャルル・ナジームのヘディングからのボールはロニー・フェルナンデスが再びポストとなり、ニコラ・ジャンボルへ。ニコラのシュートは弾かれたものの、ゴール前に詰めていたフォルテスがこのルーズボールを蹴り込んでゴール!スランゴールがリードを2点に広げます。

しかし、喜熨斗監督は3バックでのCBのサフワン・バハルディンが退場となったにもかかわらず、選手交代を行わず、右SBのシャルル・ナジームがCBとなり、その結果、空いたところを右サイドハーフのクエンティン・チャンが下がり気味で守る布陣を取ります。

その後もスランゴールはチャンスは作るものの、ゴールに至らない状態が続くと、PDRMは28分にはシャーレル・フィクリが素晴らしい個人技で、39分にはそのシャーレルのコーナーキックをバドルル・アフェンディが頭で合わせてそれぞれゴールを決めてPDRMが追いつき、前半は2ー2で終了します。

後半開始とともに喜熨斗監督はFWのロニー・フェルナンデスに替えて、右SBにファズリ・マズランを投入して本来の3バックにもどすと、守備の負担が減ったクエンティン・チェンが躍動。そしてこのチェン選手が決勝点となるゴールの起点になりました。

右サイドをドリブルで駆け上がったチェン選手からのクロスをアリ・オルワンが押し込んで決勝点を挙げ、試合終了直前のPDRMの猛攻を防ぎ切ったスランゴールがチャレンジカップに王手をかけた試合でした。

終わってみれば、個人的には喜熨斗勝史監督就任後のスランゴールのベストマッチという印象でした。今週末2月22日の決勝2ndレグは、出場停止になるであろうキャプテン、サフワン・バハルディンに代わりシャルル・ナジームがCBに、左右SBにはニコラ・ジャンボルとハリス・ハイカルが入り、後は特に布陣の変更はなさそうに思いますが、喜熨斗監督がどのような選手起用をするのかも楽しみです。一方のPDRMもこのタイトルの連覇がかかっている上、わずか1点差ということで、この試合でも先発したイフェダヨ・オルセグン、シャーレル・フィクリのFWコンビに加えて、鈴木ブルーノ、ハディ・ファイヤッドと4人の同時先発もありえる派手な撃ち合いも期待できそうです。

MFLチャレンジカップ2024/25決勝1stレグ
2025年2月15日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 3-2 PDRM FC
⚽️スランゴール:アルヴィン・フォルテス2(4分、18分)、アリ・オルワン(51分)
⚽️PDRM:シャーレル・フィクリ(28分)、バドルル・アフェンディ(39分)
MOM:

この試合のハイライト映像。マレーシアンフットボールリーグ(MFL)のYouTubeチャンネルより。