10月8日のニュース<br>・FIFAが国籍偽装疑惑のヘリテイジ帰化選手7名についてマレーシアにルーツなしと発表<br>・マレーシアサッカー協会はFIFAの発表内容が不正確だと指摘し、不服申し立ての準備を進める

マレーシアサッカー協会(FAM)の公式記録サイトCMSがハッキングの被害を受けていることを複数のメディアが報じています。この記事を書いている10月8日現在も閲覧できません。このCMSサイトは試合結果だけでなく、各クラブの登録選手やマレーシアリーグの試合記録などの情報が現在のシーズンだけでなく、過去に遡って閲覧もできるので、ボラセパマレーシアJPもほぼ毎日お世話になっているサイトです。しかし10月6日からアクセスできず、ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題関連で修正中なのかと思っていたのですが、報道によるとハッキングされており、しかも身代金が請求されおり、支払いがなければデータを全て消去すると脅されているということです。しかしこんなときに…。


FIFAが国籍偽装疑惑のヘリテイジ帰化選手7名についてマレーシアにルーツなしと発表

9月26日にFIFAがマレーシアサッカー協会(FAM)と7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に対して国籍偽装を理由に制裁措置を発表しました。FAMには35万スイスフラン(およそ6700万円)の罰金、7選手には2000スイスフラン(およそ38万円)罰金に加えて12ヶ月間に及ぶあらゆるサッカー活動の停止という非常に厳しい処分が科されました。

そして10月6日にはFIFAは処分の根拠となった詳細を発表しています。この発表によると、その祖父母がマレーシア生まれであることからマレーシア国籍を得て代表入りした7名のヘリテイジ帰化選手について、マレーシア国籍取得の根拠となった祖父母の出生地がいずれもマレーシア国外であると指摘し、FIFAに提出された書類はいずれも捏造されたものであるとしています。

以下はFIFA規律委員会のホルヘ・パラシオ副委員長名で発表した裁定の根拠を説明する書類ですが、この中でFIFAは、FAMが提出した書類に書かれていた内容とFIFAが独自で行った調査の結果との間に明らかな相違があることを指摘しています。書類からの抜粋である上の表は今回、国籍偽装が指摘された7名の選手の氏名と出生地が記載されています。下の表はそれぞれの選手の祖父あるいは祖母の出生地についてのFIFAの調査結果です。表の一番右はFIFAが入手した出生届に記載されている出生地で、その隣はマレーシアサッカー協会FAMが提出した「捏造されたとされる出征届」に記載されていた出生地です。例えばPlayer 1のガブリエル・フェリペ・アロチャ(通称ガブリエル・パルメロ)は、FAMが提出した出生届では祖母のマリア・ベレン・コンセプシオン・マルティン氏の出生地がマラッカとされていますが、FIFAが「発見」した出生届の原本によるとスペインのカナリア諸島、サンタ・クルズ・デ・ラ・パルマとなっています。他の6選手も同様で、出生地がペナンやジョホール、クチンなどとされていた祖母/祖父がいずれもマレーシア生まれでないことがFIFAの発表で明らかになっています。

またFIFAが発表した書類の中では、この7選手の祖父母の出生届を「再交付」したマレーシア内務省下の国民登記局にも言及しています。この国民登記局は国内の出生、死亡、結婚、離婚などの登録事務を行なっている役所でが、FAMがFIFAに提出した7選手の祖父母の出生届については、各選手の母国の関係機関に問い合わせた結果「原本が発見できなかった」として、「再交付」を行ったことを国民登記局のトップが認めています。

FIFAはマレーシアの国民登記局について、「7選手の祖父母の出生届の原本を入手できなかったことから、第三者の情報と外国からの非公式な書類をもとにして、マレーシアで出生したことを公式に証明する出生届を『再交付』した」と指摘し、「この手続きはマレーシア政府による法的有効性の審査が本来の原本の記載内容に基づいていないことを示しており、再交付書類の内容に基づくマレーシアサッカー協会による法的有効性の審査そのものを疑わざるを得ない。」と述べて正当な手続きによるものではないと批判しています。


マレーシアサッカー協会はFIFAの発表内容が不正確だと指摘し、不服申し立ての準備を進める

FIFAによる裁定の根拠が明らかになったことを受け、マレーシアサッカー協会(FAM)は、裁定の根拠として挙げられてる内容に誤りがあるとしています。

FAMは10月7日に声明を発表し、7名のヘリテイジ帰化選手について、捏造された書類を入手したことや、そもそもその書類が捏造されたものであることを知っていたことなど、FIFAが指摘している点については、確たる証拠がないとした上で、7選手全員が正当なマレーシア国籍保持者であると主張しています。

「これまで繰り返して説明してきたように、FAMからFIFAへの書類提出の時点で『軽微なミス』があった。具体的には、FAMの職員が国民登記局が交付した公式書類ではなく、「代理人」経由で入手した書類を誤ってFIFAに提出するというミスを犯してしまった。FAMはマレーシア政府によってその法的有効性が認められている出生届の「原本」とともに不服申し立てのための書類を正式に提出する予定である。これによりFAMはマレーシアサッカーの誠実さも証明できるだろう。」という声明を発表しています。


反論しなければ、不正を認めることになるので、不正がないのであればFIFAに誤った裁定を取り消させるためにも徹底的に争うのは当然です。その一方で言及されている「代理人」とは誰なのか、またそもそもFIFAが指摘している「再交付された出生届」に正当性はあるのか、さらに言えば、そのような公的書類を国民登記局という公的機関に再交付させるだけの影響力を持つ人物と、それに従ってしまう政府職員は違法行為をしていないのか、などツッコミどころはまだたくさんあるこの国籍偽装疑惑問題はその真実が明らかになるまでには時間がかかりそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第7節 試合結果とハイライト映像(1)<br>・ジョホールが大勝で開幕から7連勝<br>・ペナンが6試合目で今季初勝利<br>・昇格組2チームは未勝利が続く

2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグ第7節の5試合が10月3日から5日にかけて行われています。第6節を終えて未勝利だった4チームの内、ペナンが今季初勝利を記録し、今季未勝利のチームは、サバ、マラッカ、イミグレセンの3チームとなっています。いずれも今季初めてスーパーリーグに昇格したマラッカとイミグレセンが1部の壁に跳ね返されているのは理解できますが、その一方で過去3シーズン連続3位と安定した成績だったサバが開幕から3分3敗の12位に沈んでいるのは意外です。
なお、今節のマラッカFC対クアラ・ルンプール・シティFCの試合は、10月13日にウルグアイ代表対カザフスタン代表の試合がマラッカFCのホーム、ハン・ジェバ・スタジアムで行われるため、ピッチ補修が理由で両チーム合意の上、日程が11月30日への変更されています。また今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はブルネイのDPMMの試合がありません。
*この記事を執筆している時点でマレーシアサッカー協会(FAM)の公式記録サイトがハッキングの被害にあっていることが報じられています。このブログではこのサイトに掲載されている試合結果をこのサイトからリンクで貼っていますが、今回はそのリンクがありません。またこのサイトが発表しているMOM(Man of the Match)についても今回は記載しません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第7節
2025年10月3日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ FC 4-1 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC
⚽️トレンガヌ:ディエゴ・ルイス(23分)、ヌリロ・トゥクタシノフ(30分)、ヤン・マベラ2(40分、73分)
⚽️クランタン:T・サラヴァナン(51分)

マレー半島東海岸沿いのトレンガヌ州とクランタン州は、いずれもサッカー人気が高いことで知られており、この2州を本拠地にする両チームの対戦は「東海岸ダービー」と呼ばれて注目が集まる試合となります。この試合では、前節はクアラ・ルンプール・シティとの2位争いに敗れたトレンガヌが、いずれも外国籍選手による前半の3ゴールで試合の主導権を握るとそのまま快勝し、3位を守っています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第7節
2025年10月4日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナンFC 2-1 ヌグリ・スンビランFC
⚽️ペナン:チェチェ・キプレ2(13分、49分)
⚽️ヌグリ・スンビラン:フライデイ・オビロル(90+9分)

ペナンが今季初勝利を挙げています。この試合の立役者はマレーシアリーグでのプレーが8年目ながら今季加入したペナンが5チーム目となるチェチェ・キプレでした。37歳のキプレ選手はペナン移籍後の初ゴールを含む2発で勝利に貢献するとともに、自身のリーグ通算ゴール数を56(試合数124)まで伸ばしています。

4試合負けなしと好調で、上位を狙える位置にいるヌグリ・スンビランでしたが、3試合ぶりとなる2失点で敗れています。

ペナンの鈴木ブルーノ選手はベンチ入りしましたが、出場はありませんでした。
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手はこの試合もキャプテンとして先発し、60分に交代しています。また常安澪選手は60分に交代出場し、試合終了までプレーしています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第7節
2025年10月4日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 2-1 クチン・シティFC
⚽️クチン:ジョーダン・ミンター(75分)

いずれもボルネオ島にあるサバ州とサラワク州に本拠地を持つ両チームの「ボルネオダービー」は、ジョーダン・ミンターの「代表選出お礼弾」でクチン・シティが3連勝を飾るとともに無敗記録を4試合と伸ばしています。

この試合の前日に発表された今月のアジアカップ2027年大会予選に向けた代表合宿のメンバーにラマダン・サイフラーとジョーダン・ミンターが選ばれクチン・シティ。ジョホールでは飼い殺し状態だったラマダン選手は、クチン移籍後には出場機会を増やして実力を証明し、今季ここまで3ゴールと活躍しています。またガーナ出身ながらマレーシアリーグで5年間のプレーを経て帰化したミンター選手は、昨季は14ゴールでチーム得点王でした。両選手は今回が代表初選出ですが、国籍詐称で主力7名が出場停止となる中、今月の代表戦では両選手の活躍が期待されます。

一方のサバはチームが絶不調。こちらもマレーシア代表にはMFスチュアート・ウィルキン、DFドミニク・タン、DFダニエル・ティンと3名が召集されていますが、今季は6試合を終えて未勝利。深刻なのは攻撃陣でこの試合も含めた6試合中、4試合が零封負け、残る2試合もそれぞれ1ゴールずつと6試合で2得点では勝てません。さらに新加入のU23代表FWファーガス・ティアニーもここまで不発。さらに代表FWダレン・ロックや、今季チーム2得点のうちの1点を挙げているFWガブリエル・ペレス、さらにMFミゲル・シフエンテスら攻撃の中心選手たちがいずれもケガでベンチ外となっています。頼りの外国籍選手もこの試合でも先発したのはDFデイン・イングラム1人と、サバはまだ苦しい状況が続きそうです。

クチン・シティの谷川由来選手は先発して、フル出場しています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第7節
2025年10月5日@ペナン州立スタジアム(ペナン州バトゥ・カワン)
イミグレセンFC 1-3 スランゴールFC
⚽️イミグレセン:エドゥアルド・ソーサ(66分)
⚽️スランゴール:アルヴィン・フォルテス(56分)、クリゴール・モラエス(67分)、ファイサル・ハリム(71分)

喜熨斗勝史監督解任後初の試合となったスランゴールが、今季未勝利のイミグレセンに快勝してクリストファー・ギャメル監督代行に初勝利をプレゼントしています。先制点をアシストしたキャプテンのファイサル・ハリムが自身もゴールを決め、今季から加入のクリゴールが6試合で5ゴール目となる逆転弾を決めています。

前半は全員が身体を張ったスランゴールの攻撃に耐えたイミグレセンは、後半にはエドゥアルド・ソーサの今季2得点目となるゴールで一度は追いついたものの、その直後に逆転を許して敗れています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第7節
2025年10月5日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 0-7 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️ジョホール:アリフ・アイマン2(28分、33分)、ベルグソン・ダ・シウバ(54分)、エディ・イスラフィロフ(67分)、ジャイロ・ダ・シウバ2(77分、85分)、ロメル・モラレス(83分)

所属するDFジョン・イラザバル、MFエクトル・へヴェル、FWジョアン・フィゲイレドの3選手が国籍偽装疑惑を理由にFIFAから12ヶ月の出場停止処分を受けている首位のジョホール。しかし選手層の厚さを見せつけ、前節のサバ戦の8ゴールに続き、この試合でも7ゴールで圧勝しています。

なおこの試合で2ゴールを決めた23歳のアリフ・アイマンは、この試合がジョホールでの170試合目(リーグ戦、カップ戦、ACLなど全て含む)の出場となった他、それまで並んでいた元キャプテンのサフィク・ラヒムを抜いてマレーシア人選手としてクラブ最多の61ゴールも記録しています。61ゴールの内訳は、リーグ戦30、カップ戦22、ACL8、そしてアセアン(東南アジア)クラブ選手権1となっています。なお外国籍選手では、やはりこの試合でゴールを挙げたベルグソン・ダ・シウバが166ゴールのクラブ記録を保持しています。

この試合は現地で観戦しましたが、PDRMはジョホールFW陣の圧倒的な数のシュートを浴びながらもゴール前を固めて、カウンター狙いの戦術が前半は功を奏しており、狙いは間違えていないように見えました。不運なミスとジョホールの執拗なボール回しに崩されて前半で2失点で前半を耐えましたが、後半にベルグソンによる3点目が入ったあたりから、徐々に連携が崩れ始めました。さらに点差が広がり始めたことで、カウンターの戦術から果敢な攻めに切り替えたところで逆に失点を重ねてしまいました。

なおボラセパマレーシアJP的には2ゴール2アシストのアリフ・アイマンがMOMでした。


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第7節途中)

チーム勝点
1ジョホール77003333021
2クアラ・ルンプール65101431116
3トレンガヌ74122091113
4クチン6411123913
5スランゴール630312939
6ヌグリ・スンビラン6222121118
7クランタン7223613-78
8PDRM6132815-76
9ペナン6114414-104
10DPMM6114416-124
11マラッカ503227-53
12サバ6033214-123
13イミグレセン6024315-122

2025/26マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第7節途中)

得点選手名所属
16ジャイロ・ダ・シウバジョホール
6アリフ・アイマンジョホール
6ヤン・マベラトレンガヌ
45ベルグソン・ダ・シウバジョホール
5ジョアン・フィゲイレドジョホール
5クリゴール・モラエススランゴール
74ジョン・イラザバルジョホール
4ヘンリ・ドゥンビアPDRM
4ジョヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
4サファウィ・ラシドクアラ・ルンプール
113ワンジャ・ンガ他クチン

10月6日のニュース<br>・今月のアジア杯予選2試合に向けた代表候補29名が発表-国籍詐称疑惑7選手はメンバー外<br>・出場停止処分の4選手全員が所属クラブを離れてマレーシアへ<br>・マレーシアサッカー協会はいまだ不服申し立てを行わず-FIFAによる裁定詳細の入手待ち

今月のアジア杯予選2試合に向けた代表候補29名が発表-国籍詐称疑惑7選手はメンバー外

マレーシアサッカー協会(FAM)は10月9日と10月14日に行われるAFCアジアカップ2027年大会予選に向けた代表候補29名を発表しています。今月の2試合はいずれもラオスが相手で、9日の試合はヴィエンチャンのラオス新国立競技場で、14日の試合はクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われます。

ラオスのヴィエンチャンで10月6日から始まる合宿のメンバーは、先月9月のシンガポール戦とパレスチナ戦に招集された29名から22名が残り、ここにU23代表からキャプテンのDFウバイドラー・シャムスル(トレンガヌFC)とFWアリフ・イズワン(スランゴールFC)が招集された他、DFデクラン・ランバート(クアラ・ルンプール・シティFC)、MFラマダン・サイフラー(クチン・シティFC)、そしてマレーシアリーグで5年間プレーした結果、今年8月29日にマレーシア国籍を取得したガーナ出身の帰化選手FWジョーダン・ミンターの3選手が嬉しい代表初招集を果たしています。

今回の合宿は本日10月6日から8日までラオスのヴィエンチャンで行われ、9日にラオスとの試合を行った後、10月10日から13日はマレーシアに戻って合宿を続け、14日に行われるホームでのラオス戦まで続く日程になっています。

以下が10月3日に発表された代表合宿参加の29名です。

氏名年齢所属
GKシーハン・ハズミ29ジョホール
ハジク・ナズリ27クチン・シティ
アズリ・ガニ26ヌグリ・スンビラン
DFラヴェル・コービン=オング34ジョホール
シャールル・サアド32ジョホール
ジュニオール・エルドストル34ジョホール
ハリス・ハイカル23スランゴール
クエンティン・チェン26スランゴール
デクラン・ランバート27KLシティ
ダニエル・ティン33サバ
ドミニク・タン28サバ
アザム・アズミ24トレンガヌ
ウバイドラー・シャムスル22トレンガヌ
ディオン・クールズ29セレッソ大阪
リチャード・チン23レイス・ローヴァーズ
MFアフィク・ファザイル31ジョホール
ナズミ・ファイズ31ジョホール
ノーア・ライネ23スランゴール  
スチュアート・ウィルキン27サバ
エンドリック・ドス・サントス30ホーチミンシティ公安
エゼキエル・アグエロ31カーンチャナブリ・パワー
FWアリフ・アイマン23ジョホール
ロメル・モラレス28ジョホール
ファイサル・ハリム27スランゴール
アリフ・イズワン21スランゴール
サファウィ・ラシド28KLシティ
パウロ・ジョズエ36KLシティ
ジョーダン・ミンター30クチン・シティ
ラマダン・サイフラー25クチン・シティ
レイス・ローヴァーズはスコットランド2部、ホーチミンシティ公安はベトナム1部、カーンチャナブリ・パラーはタイ1部のクラブ

なお以下は、代表合宿の予備参加者リストですが、10月6日にはGKハジク・ナズリとGKアズリ・ガニがケガにより合宿不参加が発表され、このリストからGKスハイミ・フシンとGKシーク・イズハンの代表合宿参加が発表されています。

氏名年齢所属
GKカラムラー・アル=ハフィズ30スランゴール
シーク・イズハン23スランゴール
スハイミ・フシン23トレンガヌ
DFイブラヒム・マヌシ24ジョホール
アダム・ノー・アズリン29KLシティ
サフワン・マズラン23トレンガヌ
シャールル・ニザム27トレンガヌ
アディブ・ラオプ26ペナン
MFナサニエル・シオ・ホンワン25ジョホール
シャミル・クティ28KLシティ
ライアン・ランバート27KLシティ
ワン・クザイン26セントルイス・シティ2
FWモハマドゥ・スマレ31ジョホール
セントルイス・シティ2はアメリカ合衆国3部相当のMLSネクスト・プロのクラブ

その一方で、国籍詐称疑惑によりFIFAから12ヶ月の出場停止処分が発表されている以下の7選手は、今回の代表合宿には招集されていません。

氏名年齢所属
DFガブリエル・パルメロ23ウニオニスタス
(スペイン3部) 
ファクンド・ガルセス26デポルティーボ・アラヴェス
(スペイン1部) 
ジョン・イラザバル28ジョホール
MFエクトル・へヴェル29ジョホール
FWロドリゴ・オルガド30アメリカ・デ・カリ
(コロンビア1部) 
イマノル・マチュカ25ベレス・サルスフィエルド
(アルゼンチン1部)
ジョアン・フィゲレイド29ジョホール

出場停止処分の4選手全員が所属クラブを離れてマレーシアへ

FIFAは9月26日に国籍詐称疑惑からマレーシア代表でプレーするヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に対して罰金処分に加えて12ヶ月の出場停止処分を、さらにマレーシアサッカー協会(FAM)にも罰金処分を科すことを発表しています。さらにFIFAはこの処分についての不服申し立ての期限を発表から10日以内としていますが、この処分を受けたヘリテイジ帰化選手のロドリゴ・オルガドが所属するコロンビア1部のアメリカ・デ・カリを離れ、出場停止処分解除について話し合うためにマレーシア入りしていると、複数のメディアが報じています。

所属するアメリカ・デ・カリもクラブ公式サイトでデルガド選手が、FAM理事と面会して、不服申し立てを行う際の協力を申し出るために無休休暇を申請してチームを離れることを了承したことを発表しています。

この数日前にはスペインメディアがデポルティーボ・アラヴェス(スペイン1部)に所属するファクンド・ガルセスがマレーシア入りしたことを報じた他、マレーシアの英字紙ニューストレイツタイムズはイマノル・マチュカ(アルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルド)とガブリエル・パルメロ(スペイン3部ウニオニスタス)も既にマレーシア入りしていると報じており、マレーシアリーグのジョホールでプレーするジョアン・フィゲレイド、エクトル・へヴェル、ジョン・イラザバルの3選手とともに、選手生命を脅かしかねない12ヶ月にも及ぶ出場停止処分に対する不服申し立てをFAMとともに行うことが予想されています。

*****

またこのような状況下で、ファクンド・ガルセスのインスタグラムのプロフィールからマレーシア国旗のアイコンが無くなっていることが報じられています。国籍詐称疑惑により処分を受けた選手7名の内、他の6名はいまだにマレーシア国旗がプロフィールに残っており、ガルセス選手の行動にマレーシアサッカーファンの注目が集まっています。

アルゼンチン出身のガルセス選手は今年8月には祖母がマレーシア出身であることから自分がマレーシア国籍を取得したと説明し、「母国」のためにプレーできることを誇りに思っているとメディアのインタビューに答えていました。


マレーシアサッカー協会はいまだ不服申し立てを行わず-FIFAによる裁定詳細の入手待ち

前述の通り、国籍詐称疑惑により出場停止処分を受けた7選手はマレーシアサッカー協会(FAM)とともにFIFAの裁定に対する不服申し立てを行う準備に入っているとされていますが、FAMのノー・アズマン事務局長は、FIFAの裁定に関する詳細が入手できていないとして、その詳細が明らかになり次第、不服申し立てを行うとしています。

FIFAは7名のヘリテイジ帰化選手がマレーシア代表の試合に出場するために必要な資格に関する書類が提出された際に、その一部が捏造されていたとして、FIFAの懲罰委員会による処分を発表しています。

なおFAMは、FIFAがその内容を精査した上で既に承認をされたはずの書類が今になって「捏造」だとされた理由が不明だとする一方で、FIFAの裁定発表後には提出した書類には「軽微な間違い」があったことは認めたものの、不服申し立てを行う意思を表明した上で、不服申し立てによりFIFAの裁定が変わらない場合には、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に仲裁を求める用意があるともしています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第6節 試合結果とハイライト映像

2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグ第6節の6試合が9月11日から28日にかけて行われています。第5節を終えて未勝利のチームが5つある一方で、首位のジョホールは開幕から6連勝で2位とは既に勝点差8をつけるなど、興味は優勝争いではなく2位争いになりつつあります。
今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はPDRM FCの試合がありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第6節
2025年9月11日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 6-0 ペナンFC
⚽️ジョホール:ジャイロ・ダ・シウバ(9分)、アリフ・アイマン2(18分、31分)、ジョアン・フィゲレイド(33分)、ジョン・イラザバル(45+3分)、アントニオ・グラウデル(52分)
MOM: アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)

ジョホールは開幕から6連勝で首位を堅持。前節のサバ戦の8点に続き、この試合でも大量6点を挙げて快勝しています。

鈴木ブルーノ選手はベンチ入りしましたが、出場はありませんでした。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第6節
2025年9月26日@ハサナル・ボルキア国立競技場(ブルネイ)
DPMM FC 1-2 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC
⚽️DPMM:ジョーダン・ロドリゲス(53分)
⚽️クランタン:イフェダヨ・オルセグン(38分)、アザム・アジー(42分)
MOM: アズファル・アリフ(クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC)

昨季は24試合でわずか2勝のクランタンが、6試合目にして早くも今季2勝目を挙げています。一方のDPMMは1分4敗と未だ勝利がありません。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第6節
2025年9月27日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
クアラ・ルンプール・シティFC 1-0 トレンガヌFC
⚽️クアラ・ルンプール:パウロ・ジョズエ(83分)
MOM: クインシー・カメラード(クアラ・ルンプールFC)

2位クアラ・ルンプール対3位トレンガヌの対戦は、パウロ・ジョズエとジャンカルロ・ガリフオカが1ヶ月ぶりに戦列復帰したクアラ・ルンプールが、ジョズエのゴールで挙げた1点を守り切って2位を堅持しています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第6節
2025年9月27日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビランFC 3-0 サバFC
⚽️ヌグリ・スンビラン:ジョヴァン・モティカ(26分)、アレクサンダー・アギャルカワ(40分)、ジョセフ・エッソ(80分)
MOM: ジョヴァン・モティカ(ヌグリ・スンビランFC)

開幕戦ではジョホールに敗れたヌグリ・スンビランですが、この試合に勝利して、無敗記録を4に伸ばすとともに、順位を5位まで上げています。一方5試合で2得点13失点と攻守共に不調なサバは未だ勝利がありません。

ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手はこの試合もキャプテンとして先発し65分に交代しています。また常安澪選手は70分から出場し、試合終了までプレーしています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第6節
2025年9月28日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチン・シティFC 4-0 イミグレセンFC
⚽️クチン:ラマダン・サイフラー(30分)、ダニアル・アスリ2(49分、65分)、ペトラス・シテムビ(75分)
MOM: ダニアル・アスリ(クチン・シティFC)

好調のクチン・シティが今季2度目の4得点で快勝して4位に浮上しています。昇格組のイミグレセンFCはこの試合の4失点を加えると5試合で12失点と、1部スーパーリーグ初勝利はまだ遠そうです。

クチン・シティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第4節
2025年9月30日@ハン・ジェバ・スタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカFC 0-1 DPMM FC
⚽️DPMM:ジョーダン・マレー(36分PK)
MOM: ハイミー・ニャリン(DPMM FC)

なお延期されていた第4節の1試合が9月30日に行われ、今季からマレーシアリーグに参入しているブルネイのDPMM FCが初勝利を挙げています。DPMMは2枚のレッドカードをもらう一方で、GKハイミー・ニャリンがマラッカのPKを2本止める活躍を見せ波乱に満ちた試合を制し、今季6試合目にして待望の初勝利を挙げています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第6節終了)

チーム勝点
1ジョホール66002632318
2クアラ・ルンプール65101431116
3トレンガヌ6312167910
4クチン5311113810
5ヌグリ・スンビラン522111928
6クランタン622259-48
7スランゴール52039816
8PDRM51318806
9DPMM6114416-124
10マラッカ503227-53
11サバ5032213-113
12イミグレセン5023212-102
13ペナン5023213-111

2025/26マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第6節終了)

得点選手名所属
16ジョアン・フィゲイレドジョホール
25サファウィ・ラシドクアラ・ルンプール
34アリフ・アイマンジョホール
34ベルグソン・ダ・シウバジョホール
34ジャイロ・ダ・シウバジョホール
34ジョン・イラザバルジョホール
34クリゴール・モラエススランゴール
34イフェダヨ・オルセグンクランタン
34ヤン・マベラトレンガヌ
34ヘンリ・ドゥンビアPDRM
34ジョヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
123ワンジャ・ンガクチン
123ダニアル・アスリクチン
123ラマダン・サイフラークチン
123カレッカトレンガヌ
123ジョセフ・エッソヌグリ・スンビラン

2025/26ACL2 グループステージ第2節試合結果とハイライト映像:スランゴールは前横浜アンデルソンの4発に沈み連敗

9月26日に喜熨斗勝史監督を解任したスランゴールが、その後任に選んだのは元スリ・パハン監督などの経験もあるフランス人のクリストファー・ギャメル氏でした。監督代行就任からわずか5日のギャメル氏の初の試合がこのACL2第2節です。KUALA LUMPUR: Selangor’s new coach Christophe Gamel is determined to break the duck in the Asian Champions League 2 (ACL 2) when they face Singapore’s Lion City Sailors in a Group G clash at the Bishan Stadium tomorrow.

The Frenchman, who replaced Japanese Katsuhito Kinoshi last week, admitted that having only four days with the team has not been ideal, but he remains optimistic of a positive result.

“I’ve had just four days with the team and one game in between — not enough time, but in football, we all crave for time,” said the 53-year-old.

“The boys have to be motivated and compensate for the lack of time with more energy, motivating themselves and being motivated in the game. I can’t complain about that. It’s our job to try to make it happen no matter the conditions, and I trust them.”

Gamel stressed that he does not want to be compared with his predecessor, Katsuhito, who had set the target of reaching the knockout stage.

“I don’t compare myself with anyone. Our main priority is Selangor. It is difficult at the moment to talk about finishing first or second because we have zero points.”

The Red Giants are bottom of Group G after losing their opening match 4-2 to leaders Buriram United on Sept 18. However, recent wins against Singapore (2-1) in the Sultan of Selangor Cup and Tampines Rovers (4-2) in the Asean Club Championship could boost their confidence.

“First, we go for three points, then we can make better decisions,” said Gamel.


KUALA LUMPUR: Brazilian striker Anderson Lopes was the star of the show for Lion City Sailors (LCS) as they sank Selangor 4-2 in their Asian Champions League 2 (ACL 2) Group G clash at the Bishan Stadium on Wednesday.

After kicking off their ACL 2 campaign with a similar 4-2 defeat to Bangkok United on Sept 18, the Red Giants need a positive result to improve their standing in Group G.

Their leaky backline was exposed as early as the sixth minute when Lopes headed home following a swift counterattack and just six minutes later, the striker struck again for the Lions.

The match was then suspended for almost two hours in the 31st minute due to heavy rain, but upon resumption the Red Giants pulled one back through a Chrigor Moraes’ spot kick.

Just before the half-time whistle, Lopes completed his hat-trick to restore LCS’ two-goal cushion.

The Brazilian forward remained a constant menace and added a fourth goal barely into the second half, calmly finishing from Bart Ramselaar’s pass in the 54th minute.

Christophe Gamel’s men, however, refused to give in, with Noor Al Rawabdeh rattling the crossbar a minute later, much to the relief of goalkeeper Ivan Susak.

Their persistence finally paid off in the 73rd minute when Faisal Halim cleverly evaded his marker to slot in Selangor’s second of the night.

But the fight back proved insufficient as LCS quickly shored up their defence and held on to a comfortable win top Group G with four points, while the winless Selangor are bottom without a point.


KUALA LUMPUR: Selangor continue to struggle to gain points in this season’s Asian Champions League 2 (ACL2) after losing 2-4 to Singapore club Lion City Sailors in the second match of Group G at Bishan Stadium, a short while ago.

This was the second consecutive defeat suffered by the Red Giants squad in the tournament after losing by the same score to Thailand’s representative, Bangkok United, in the first match at the Petaling Jaya City Council Stadium (MBPJ), on September 18.

The result saw Selangor, currently managed by interim head coach Christophe Gamel, continue to struggle in the bottom position of the group after failing to pick up any points after two matches.

In the action just now, Lion City Sailors, who are also the leaders of the Singapore Premier League, started fiercely when they took a two-goal lead early in the game thanks to Anderson Lopes’ goals in the seventh and 13th minutes.

The match was, however, delayed for more than an hour after the referee was forced to stop play in the 31st minute due to bad weather.

Selangor managed to close the gap six minutes after the match resumed through a penalty kick by Chrigor Moraes, but the spirit of Gamel’s men to continue their comeback was slightly dampened when Lopes completed a hat-trick in first-half injury time.

In fact, the Brazilian-born striker continued to cheer up The Sailors squad when he scored the fourth goal in the 54th minute after cleverly finishing off Bart Ramselaar’s pass.

Selangor continued to fight back and scored a second goal through their captain, Faisal Halim, in the 73rd minute, but it was not enough to prevent the Lion City Sailors from winning.

The victory allowed Lion City Sailors to move to the top of the group with four points, pending the result of another match between Bangkok United and Persib Bandung.

2025/26ACLエリート リーグステージ第2節試合結果とハイライト映像:ヘリテイジ帰化選手3名を欠くジョホールはホームで町田相手にスコアレスドロー

マレーシアサッカー界がヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑の問題で揺れる中、ACLエリートのリーグステージ第2節が行われています。主力3選手を欠くジョホール・ダルル・タジムFCは第1節ではブリーラム・ユナイテッド(タイ)に1-2と破れています。またACLエリート初参戦の町田ゼルビアは第1節ではホームでFCソウルと引き分けと、初料理を目指す両チームがジョホールのホーム、スルタン・イスマイル・スタジアム対戦しています。

この日の両チームの先発XIは以下の通り。国籍偽装疑惑の渦中にいるFWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルはいずれもFIFAによる12ヶ月の出場停止処分によりこの試合はベンチ外。今季リーグ戦では、ここまでの6試合でチームが挙げた26点中、フィゲイレドが6点、イラザバルが4点をそれぞれ挙げており、戦力低下は否めません。しかし、その代わりに国内リーグ最多の108ゴールを挙げているベルグソン・ダ・シウバが今季のACLエリートで初先発を果たしています。

またこの試合でマレーシア代表GKシーハン・ハズミがACLエリートデビューを果たしています。2023年シーズンにジョホールに加入して以来、リーグ戦やカップ戦ではこれまで74試合に出場し、代表でも32試合に出場するマレーシアNo.1のGKのシーハン選手ですが、ACLエリートとなった昨季はジョホールが戦った10試合は全試合ベンチ入りも出場なし。代わってスペイン出身のGKアンドニ・スビアウレが昨季のACLエリートは全試合で先発、今季も初戦のブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦でも先発していました。しかしこの試合ではスビアウレがベンチ、シーハンが先発となっています。

ちなみにこの試合のジョホールの先発XIの内、GKシーハン、この日はキャプテンマークをつけ、へヴェル選手に代わって入ったMFアフィク・ファザイル、FWアリフ・アイマンの3名のみがマレーシア出身、残る8名は外国籍選手という平常運転です。

一方、ACLエリートでは初のアウェイマッチとなった町田も、9月27日のJリーグ岡山戦で先発から外れた相馬勇紀、藤尾翔太、望月ヘンリー海輝らが先発に名を連ねる一方で、G大阪から加入したイスラエル代表MFネタ・ラヴィをチームに帯同させませんでした。同じイスラム教国としてパレスチナを国家として承認しているマレーシアは、イスラエルを「違法国家」と呼んで承認していないため、イスラエルパスポートの保持者は入国できないことが理由でしょう。

ちなみに最も最近イスラエルパスポートの保持者がマレーシアに入国した例は、2011年7月にEPLのチェルシーがマレーシアを訪れて親善試合をした際、「特別措置」により入国が認められたイスラエル代表のヨッシ・ベナユンがいます。しかしマレーシア選抜との試合に出場した際には、ボールに触るたびに85,000人が集まったスタンドから大ブーイングを浴びせられ続けて前半で交代し、最終的にマレーシアサッカー協会が「騒いだのは一部観衆のみ」としながらも、チェルシーと「この件に係る選手」に謝罪したというオチもついています。

なおAFCのXに投稿された両チームの先発XIを伝える下の写真は、ホームのジョホールがアウェイユニ、アウェイの町田がホームユニの写真なのはご愛嬌。(第1節はジョホールがアウェイ、町田がホームだったのでその試合からの流用でしょう)

試合は開始からジョホールが受け身に回る展開となります。ジョホールの選手はボールを受けてもなかなか前を向けない中、12分にはオスカル・アリバスの苦し紛れのバックパスに藤尾選手が反応。あわやというところに判断よくシーハン選手が飛び出し、なんとかクリアします。

さらに16分には町田が右サイドで得たコーナーキックのボールを仙頭啓矢選手が繋ぎ、ゴール前で待ち構えていた増山朝陽選手がシュートを放つも、再びシーハン選手が身体でブロックして失点を許しません。

そして20分、相馬選手の左コーナーキックはペナルティエリアのナ・サンホへと渡りますが、ホナタン・シウバが後ろから倒してしまい、キム・ジョンヒョク主審はPKと判定します。しかしこのPKを相馬選手がなんとゴールポストに当ててしまい、得点とはなりません。

そしてジョホールも徐々にペースを掴み始め、この試合では出場停止のフィゲイレドのポジションに入ったアヘル・アケチェが26分、そして43分といずれもシュートを放ちますがゴールを破ることができません。

町田優勢ながらも前半を0-0で終えて迎えた後半も、同様の試合展開となり、60分にはカウンターから町田がチャンスを掴み、左サイドを上がった相馬選手のクロスにナ・サンホ選手が反応するも、再びGKシーハン選手が身を挺してシュートを防ぎます。

試合終了間際にはアケチェ選手、そして途中出場のテト・マーティンらのシュートも決まらず、結局、試合は0−0のまま終了。ジョホールは今季初の勝ち点1を獲得し、町田は2試合連続の引き分けとなっています。第3節は10月21日に行われ、ジョホールはここまで1勝1敗の成都蓉城(中国)とアウェイで、町田は同じく今季未勝利の上海海港(中国)とやはりアウェイで対戦します。

2025/26ACLエリート リーグステージ第2節
2025年9月30日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジム 0-0 町田ゼルビア

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

*****

リーグ得点王のベルグソン・ダ・シウバもマレーシアの至宝アリフ・アイマンもゴールにすら近づくことができなかった試合は、相手のPKミスもあり、「負けなくてよかった」という試合でした。出場停止となっているフィゲレイド、へヴェル、イラザバルはマレーシアサッカー協会の不服申し立てが認められない限り今後も出場停止が続きますが、逆にベンチを温め続けているマレーシア出身選手にとっては貴重な出場機会を得るチャンス。その機会に輝くことができれば、この試合のシーハン選手のようにシスコ・ムニョス監督の信頼を得ることができそうです。

9月29日のニュース<br>・ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に新展開-FIFAはイスラエル問題から世間の目を逸らすためにマレーシアに制裁⁉︎<br>・マレーシアサッカー協会は書類提出の際の「軽微なミス」を認めるもヘリテイジ帰化選手の国籍取得の正当性を主張

セレッソ大阪でプレーするマレーシア代表DFディオン・クールズが、Jリーグ移籍後の初ゴールを京都サンガ戦で決めています。マレーシア人選手としてもJリーグ初とな利、本来ならマレーシア国内では大きく報道されそうですが、ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に揺れるマレーシアサッカー界はそれどころではありません

ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に新展開-FIFAはイスラエル問題から世間の目を逸らすためにマレーシアに制裁⁉︎

昨日のブログでも書いた通り、本来ならば発表までの手順に時間をかけるべきマレーシアサッカー連盟と国籍を偽装してアジアカップ予選に出場したとされる7名のヘリテイジ帰化選手への制裁措置について、マレーシアの一部メディアはFIFAがこの制裁措置をを唐突に発表したのは、別の目的があるのではと報じています。

ここまでのできこととを改めて時系列で整理すると次のようになります。
6月12日:FIFAがヘリテイジ帰化選手7名の試合出場を許可
6月25日:7名の選手がAFCアジアカップ予選・ベトナム戦に出場
7月5日:AFCが「不服申立ては出されていない」と発表
9月28日:FIFAが一転し、「書類捏造」を理由に制裁処分を発表

当初は正式に出場許可が出ていたため、FIFA自身の判断を覆す形となり、マレーシア国内では「なぜ急に処分を下したのか」という疑問が広がると当時に、FIFAには何か別の目的があるのではという疑惑へ繋がっています。

一部のマレーシアメディアは、FIFAの対応の背後には「イスラエル問題」があり、この「イスラエル問題」から世論の目を逸らすために制裁が行われたのではと分析しています。実際、現在のW杯予選ではイスラエルの参加資格を巡る議論がヨーロッパサッカー連盟(UEFA )内では激化しているとされています。

さらにFIFAとUEFAは2022年にロシアを即座に資格停止とした一方で、パレスチナ自治区への攻撃を続けるイスラエルには同様の措置を取っていないことが、「ダブルスタンダード」であるとして批判が集まっています。

UEFAでは、来週にもイスラエルのW杯予選参加を停止するかどうかの緊急採決が予定されており、可決されれば代表・クラブともに国際大会から締め出される可能性があります。こうした状況の中で、FIFAが「敢えて」マレーシアに焦点を当てたのではないか、という見方が浮上しているのです。

またマレーシアはパレスチナを国家として承認しており、政府も世論もパレスチナ支持を鮮明にしています。その一方でイスラエルとは国交を持たず、強い批判姿勢を示してきました。

その一例が、今月ジョホール州で行われたマレーシア対パレスチナの国際親善試合です。試合前にはジョホール州摂政トゥンク・イスマイル殿下が、パレスチナ代表に250万リンギ(約8900万円)を寄付するという行動も話題になりました。

こういった点を踏まえると、今回のマレーシアへの制裁は、単なる国籍偽装疑惑の問題ではなく、国際政治が深く絡んでいるとの見方も出ています。真相は不透明ですが、FIFAの判断基準に対する不信感と「ダブルスタンダード」批判は、今後さらに強まるかも知れません。

*****

別のマレーシアメディアは、この状況下で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は著名なサッカー関係者などに個人的に連絡をとり、イスラエルが資格取り消しにならないように手を尽くしたとしています。そして最終的にはアメリカのトランプ大統領まで巻き込み、トランプ大統領はFIFAのジャンニ・インファンティーの会長に対しイスラエルが資格停止された場合には、その影響として2026年北中米W杯の開催が危うくなる可能性も言及したとしていますが、流石にここまで行くと「陰謀論」のようにも聞こえます。

マレーシアサッカー協会は書類提出の際の「軽微なミス」を認めるもヘリテイジ帰化選手の国籍取得の正当性を主張

マレーシアサッカー協会(FAM)が9月29日に声明を発表し、FIFAへの書類提出の際に職員による「軽微なミス」があったことを明らかにし、この「軽微なミス」がFIFAが今回の制裁に踏み切った理由である可能性があると説明しています。

FAMのノー・アズマン事務局長は「職員による書類提出の過程において『軽微なミス』があることが発覚した。FAMはこの事態を重く見ているが、このミスは7名のヘリテイジ帰化選手がマレーシア国籍を持っているという事実には何ら影響を及ぼすものではない。」と述べています。

またFIFAによる7名のヘリテイジ帰化選手とFAMへの制裁措置に対する不服申し立てについては、現時点ではFIFAによる制裁判断を説明する公式文書が届くのを待っている最中だとし、それを受け取った上で、法的手順に則って行う予定であるとも説明しています。

9月28日のニュース<br>・ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑-国外組所属の4クラブは処分対象選手を出場停止に<br>・ヘリテイジ帰化選手強化策の中心人物イスマイル殿下は正当性を主張、さらに「陰謀論」の可能性も示唆

9月26日にFIFAはマレーシア代表でプレーする7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)が捏造書類による国籍偽装を行ったとして、2,000スイスフラン(およそ37万円)の罰金と12ヶ月間に渡るあらゆるサッカー活動への関与の禁止する処分を発表しましたが、この処分が発表されてからおよそ1日が経過し、マレーシアだけでなく世界各地から様々なニュースが入ってきています。

なお処分対象となった7選手は以下の通りです。

  • MFヘクトル・ヘヴェル(29)オランダ出身 
    所属:ジョホール・ダルル・タジム マレーシア国籍取得:2025年3月 
    代表デビュー:2025年3月25日アジアカップ予選ネパール戦 代表戦出場数:2
  • DFガブリエル・パルメロ(23)スペイン出身 
    所属:ウニオニスタス(スペイン3部) マレーシア国籍取得:2025年3月 
    代表デビュー:2025年5月29日親善試合カーボ・ベルデ戦  代表戦出場数:4
  • DFファクンド・ガルセス(26) 
    所属:デポルティーボ・アラヴェス(スペイン1部) マレーシア国籍取得:2025年6月 
    代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:2
  • FWロドリゴ・オルガド(30)アルゼンチン出身
    所属:アメリカ・デ・カリ(コロンビア1部) マレーシア国籍取得:2025年6月 
    代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:2
    • FWイマノル・マチュカ(25)アルゼンチン出身
      所属:ベレス・サルスフィエルド(アルゼンチン1部)マレーシア国籍取得:2025年6月 代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:1
    • FWジョアン・フィゲレイド(29)ブラジル出身 
      所属:ジョホール・ダルル・タジム マレーシア国籍取得:2025年6月 
      代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:3
    • DFジョン・イラザバル(28)スペイン出身 
      所属:ジョホール・ダルル・タジム マレーシア国籍取得:2025年6月 
      代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:2

国外組所属の各クラブは処分対象の選手の出場を見送る

渦中の7名のヘリテイジ帰化選手の内、FWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの3選手はマレーシアスーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムでプレーしていますが、残る4選手はいわゆる「国外組」です。この4選手が所属するクラブが次々にこの事態への対応を発表し、4選手全員が出場停止となっています。

国籍偽装疑惑の渦中にいる7名のヘリテイジ帰化選手の1人、DFファクンド・ガルセスが所属するデポルティーボ・アラベスは「クラブは、選手に適用される推定無罪の原則が尊重され、この問題が可能な限り迅速に解決されることを希望しています。」という声明を発表しています。なおガルセス選手は祖母がマレーシア人であることからヘリテイジ帰化選手の資格を満たしているとされています。

また9月27日のラ・リーガ第7節のマジョルカ戦では、ガルセス選手はベンチ外となっています。今季は開幕戦からの6試合全てに先発しフル出場しているアラベス選手を欠くデポルティーボ・アラベスは、前半37分にマジョルカの日本代表FW浅野拓磨選手のゴールで先制を許すと、そのまま逃げ切りを許して今季3敗目を喫するとともに、マジョルカに今季初勝利を献上しています。

*****

また渦中のヘリテイジ選手の1人であるFWロドリゴ・オルガドが所属するコロンビア1部アメリカ・デ・カリは、FIFAによる裁定を受けてオルガド選手を活動停止処分とすると発表しています。

「当クラブに所属するロドリゴ・オルガドがFIFAより12ヶ月の出場停止処分を受けたことを報告するとともに、当該選手は本日よりこの出場停止処分により当クラブのあらゆる活動への参加を停止することをファンやメディア、また一般に向けて告知する」

さらにクラブの法務部門はマレーシアサッカー協会(FAM)と現在の状況について緊密に連絡を取り合い、FAMと共同でオルガド選手の12ヶ月に及ぶサッカー活動停止処分についてFIFAに対して不服申し立てを行うと発表しています。なおオルガド選手は祖母がマレーシア人であることからヘリテイジ帰化選手の資格を満たしているとされています。

*****

また7選手の内の1人、DFガブリエル・パルメロが所属するスペイン3部のウニオニスタス・デ・サラマンカはFIFAの裁定を受け取ったことを明らかにするとともに、今後の方針を決定するために情報を収集中だとしています。またその間はパルメロ選手がクラブのあらゆる活動に参加しないことも発表しています。パルメロ選手は祖母がマレーシア人であることからヘリテイジ帰化選手の資格を満たしているとされています。

パルメロ選手は前述のロドリゴ・オルガド選手に続き、クラブから活動停止処分を科された選手となります。

*****

4人目のFWイマノル・マチュカが所属するアルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルドは声明を発表し、クラブがFIFAの裁定について連絡を受けたことを明らかにするとともに、クラブにはこの事態に介入する権限がないとして、今回の裁定に対して不服申し立ては行わないとしています。

「当クラブは、アルゼンチンサッカー協会経由で今回の裁定について、所属するイマノル・マチュカが12ヶ月の出場停止処分を受けたことを告知された。FIFAの(裁定を下した)規律委員会の法的手続きに関与しておらず、その結果として今回の裁定に影響を与えることも不服申し立てを行う立場にはない。」

「この裁定により、決定が覆る通知をFIFAから受け取るまでは、当クラブ所属選手(のマチュカ選手)はクラブの試合に出場することはない。」とも発表したベレス・サルスフィエルドですが、マチュカ選手については今後の事態に発展に沿って支援を続けるとしています。

*****

「国外組」4選手はいずれも所属クラブから出場停止となっていますが、その一方でジョホールでプレーするFWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの3選手については、クラブからは何も発表はありません。ジョホールは9月30日にACLエリート第2節でJリーグの町田ゼルビアとホームのスルタン・イスマイル・スタジアムで対戦しますが、果たしてこの3選手は出場するのか否かに注目が集まります。


ヘリテイジ帰化選手強化策の中心人物イスマイル殿下は正当性を主張、さらに「陰謀論」の可能性も示唆

ヘリテイジ帰化選手によるマレーシア代表の強化策の中心人物で、国内リーグで11連覇中のジョホール・ダルル・タジムのオーナーでもある、ジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、マレーシアに対するFIFAの制裁処分に対し、7選手がマレーシアにルーツを持つ選手であることを証明するマレーシア政府による公式文書があると主張しています。

さらに、マレーシアサッカー協会(FAM)は正規の手順に従って申請を行った結果、FIFA自身が一度はこの7選手がマレーシア代表として試合に出場する資格があるとの決定を下したにもかかわらず、今回、FIFAがFAMと7選手に対して唐突とも言える制裁処分を下したことに疑念を抱いているとも述べています。

さらにこの突然の決定変更に対してイスマイル殿下は、その原因について外部からの「見えない力」が働いている可能性もあると述べています。

「今回の制裁措置についてはその理由が明確にされておらず、さらにその不服申し立てが行われる前に今回の措置を公表している点も異例である。この決定が下された際にFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長がいたニューヨークにいた人物は誰だろう。FAMは速やかに不服申し立てを行うべきだ」と自身のSNSに投稿したイスマイル殿下は、この投稿とともに、インファンティーノFIFA会長とインドネシアサッカー協会のエリック・トヒル会長が並んで写っている写真も合わせて投稿しています。

またイスマイル殿下は、国民登録局(NRD)からの正式文書があるとし、「マラヤの虎」の愛称で知られるマレーシア代表の台頭を危惧する者からのどんな圧力にも屈しないと述べて、FIFAとの対決姿勢を明確にしています。
*国民登録局:マレーシアにおける国民の身分登録、身分証の発行、出生、死亡、婚姻、離婚などの公的記録を管理する政府機関。

さらにイスマイル殿下は、マレーシア人の祖父母を持つ外国生まれの人物についてマレーシア国籍を与えるとする連邦憲法第19条に基づく検証プロセスが完了していることを示す国民登録局局長のサイン済みの文書の写真も合わせて投稿しています。

*****

実はイスマイル殿下が示す国民登録局による文書が今回の争点になる可能性がある部分です。国民登録局によると、今回の7選手への国籍付与については彼らが提出した書類をブラジルやアルゼンチン、スペイン、オランダといった出身国の記録とマレーシア国内の記録とを使って多面的にチェックしたとしています。しかしマレーシア国内に保管されている書類の中に該当するマレーシア人祖父母の出生記録の原本が見つからなかったとして、「証拠に基づいた上でおそらく原本に間違いがないとする」認証コピーを交付したことを明らかにしています。さらに国民登録局局長は全ての手順がマレーシアの法律を遵守したものであり、また憲法で規定されている要件も満たしていると説明しています。

国籍申請に使われた書類が、マレーシア人の祖父母の出生証明の原本ではなく「認証コピー」であることが、おそらく国籍取得のために「捏造」された書類だととされる根拠だと考えられます。しかし、1957年に独立を果たすまでは英国の植民地だったマレーシア(独立当時の名称はマラヤ連邦でマレー半島部のみが英国から独立し、現在のサバ州とサラワク州は1963年のマレーシア成立まで英国の植民地状態が続いていた)は、市民権付与の要件についても紆余曲折を経験しています。戦後の1946年ごろから英国は19世紀後半から20世紀初頭にかけて錫鉱山の労働者として移住してきた華人や、ゴムのプランテーションの労働者として移住してきたインド人も含めたマレー半島に住む市民全員に市民権を付与しようと検討していましたが、それ以前からマレー半島に住むマレー人は、自らの既得権利の侵害につながると考えて猛反発しました。このため、マレー半島に住んでいた市民の中でも、特に移民やその末裔は自身の出自を証明する書類をそもそも持っていなかった可能性もあります。実際に私の周りでも、20世紀初頭に生まれた父親が出生証明を持っておらず、代わりにキリスト教の「洗礼証明書」をもとに身分証明書を作ったという話なども聞いたことあるので、原本がないから「捏造」だと簡単に言い切れない難しさもあります。

9月27日のニュース(2)<br>・スランゴールが喜熨斗勝史監督を解任!今季リーグの監督解任第1号に<br>・マレーシアの至宝、ジョホールのアリフ・アイマンがアジア年間最優秀選手候補に<br>・フットサルアジアカップ予選:マレーシアはG組2位で終了も3大会ぶりの本戦出場決定

スランゴールが喜熨斗勝史監督を解任!今季リーグの監督解任第1号に

開幕から2ヶ月足らずで解任。

今年8月に開幕した2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグで最初の監督交代劇が起こりました。第5節を終えて2勝3敗でリーグ5位のスランゴールFCが喜熨斗勝史監督の解任を発表しています。スランゴールは本日9月27日にムルデカ・スタジアムで開催されるスランゴール・スルタン・カップでシンガポール選抜と対戦する予定ですが、スランゴールは元スリ・パハン監督で、ベトナム代表監督時代のフィリップ・トルシエ監督の元でコーチも務めたクリストファー・ギャメル氏が監督代行を務めるとも発表しています。

過去2シーズン連続でリーグ2位のスランゴールですが、リーグ11連覇中のジョホールからは23年シーズンは勝点差15、昨シーズンは同18と大きく水を空けられての2位だっただけに今季は捲土重来を期したものの、開幕戦のジョホール戦で0-3と完敗すると、第3節は昨季は12位のヌグリスンビランに1-2と敗れ、さらに第5節ではクチン・シティに0-1で敗れ、今季早くも3敗となっていました。

特に昨季途中までスランゴールを指揮していたニザム・ジャミル監督率いるヌグリ・スンビラン戦での敗戦は、ニザム氏に代わって就任した喜熨斗勝史に大きくプレッシャーがかかるものでした。さらに前年の13位から昨季は4位へとチームを押し上げたシンガポール出身のアイディル・シャリン監督率いるクチン・シティとの上位争いに敗れたことで喜熨斗監督の立場はさらに悪くなっていきました。

また2季連続での出場となったACL2では、スランゴールは9月18日にグループステージ初戦のバンコク・ユナイテッド(タイ)戦に2-4で敗れた一方で、ジョホールが一昨日9月25日アセアン(東南アジア)クラブ選手権ショピーカップのグループステージでほぼ同じスタメンのバンコク・ユナイテッドを4-0と粉砕したことも少なからず影響していそうです。なおスランゴールは、9月24日に行われたショピーカップではBGタンピネス・ローバーズ(シンガポール)では4−2と快勝していましたが、この勝利では喜熨斗勝史監督の首はつながらなかったようです

昨年11月に前述の通りスランゴール監督を辞任したニザム・ジャミル氏に代わり、セルビア代表コーチの職を辞してマレーシアにやってきた喜熨斗氏ですが、これまでクラブチームでの監督経験が全くないこともあり、当初からその手腕に疑問の声が上がっていました。それでもシーズン途中の監督就任ながらも昨季は8勝3分3敗のリーグ2位で終えていました。しかし今季はここまで5勝1分4敗で、通算成績は、国内リーグやACL2など全てを合わせると13勝4分7敗、勝率は5割4分2厘となっています。また特にホームでは8勝1分3敗で勝率6割6分7厘なのに対し、アウェイでは5勝3分4敗の4割1分7厘で、今季リーグ戦での3敗はいずれもアウェイマッチでした。

*****

今季のスランゴールは国内リーグの他、ACL2とアセアン(東南アジア)クラブ選手権「ショピーカップ」に出場していることもあり、今月9月は12日間で4試合という過酷な日程に直面していましたが、その際には「ローテーションできるほど十分に選手がいない」と発言するほど「正直」である一方で、敗れた試合でも選手を批判せず、常にポジティブな対応は好印象でした。またモティベーター型の指導者であるようなエピソードが度々報じられた他、試合後のスタンドへの挨拶も非常に丁寧で「良い人」であることはサポーターには伝わっていましたが、今のスランゴールに必要なタイプの監督ではなかったのかも知れません。

また今回の解任劇で喜熨斗氏以上に批判を浴びているのがスランゴールの経営・運営陣です。2020年にB・サティアナタン氏(故人)が監督を解任されて以来、過去5シーズンで暫定監督の3名を加えると何と延べ9名がスランゴールの監督を務めています(ただし9名の内、ミヒャエイル・ファイヒテンバイナー(前ミャンマー代表監督、現TSG1899ホッフェンハイム アカデミー監督)とニザム・ジャミルの両氏は監督代行と監督の両方を経験しており、人数では7名)。また前任のニザム監督が辞任した理由の一つとして、ニザム監督が希望する選手ではなく、運営陣が選んだ選手を押し付けられて、戦術的に起用が難しかったと言った話もあり、サポーターの中では問題は監督ではなく運営・経営陣であるという認識があります。現在のCEOであるジョハン・カマル・ハミディン氏が就任したのは2020年ですが、今や年中行事とも言える監督交代の責任を負うジョハンCEOの去就にも注目が集まっています。


マレーシアの至宝、ジョホールのアリフ・アイマンがアジア年間最優秀選手候補に

アジアサッカー連盟AFCは9月25日に2025年のアジア年間最優秀選手(男子)の候補3名を発表し、そのうちの1名に国内リーグ11連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCに所属するアリフ・アイマン・ハナピが選ばれています。

マレーシア人選手としては初めて候補に上がったアリフ選手は、アジア杯2023年得点王でもあるカタールのFWアクラム・アフィフ(カタール1分アル・サッド)、サウジアラビアのサーレム・アル=ドーサリー(サウジアラビア1部アル=ヒラル)ともに最終候補3名にノミネートされています。

マレーシアの選手では2000年まで続いていたアジアンオールスター(ベスト11)には、ミュンヘンオリンピックに21歳で出場し、その代表キャップ数195は世界第3位のAFC殿堂入りしているソー・チンアウン、マレーシア史上最高のサッカー選手と言われ、その名が国内トップアカデミーに付けられているモクタル・ダハリ、そしてマレーシア人選手としては1985年に最後の受賞者となったザイナル・アビディン・ハサンらが選ばれたことはありますが、個人表彰へのノミネートはマレーシア人選手初となる快挙です。

マレーシア国内では4年連続のリーグMVPを獲得しているアリフ選手ですが、今回のノミネートで国外クラブからの注目を再度集めることになりそうです。なお全部20となる受賞者発表が行われる表彰式は、10月16日にサウジアラビアのリヤドにあるキング・ファハド文化センターで行われます。

以下は主な賞のノミネートリストです。

男子年間最優秀選手
選手国籍所属
アリフ・アイマンマレーシアジョホール・ダルル・タジム
アクラム・アフィフカタールアル=サッド
サーレム・アル=ドーサリーサウジ・アラビアアル=ヒラル
女子年間最優秀選手
選手国籍所属
ホリー・マクナマラオーストラリアメルボルン・シティ
ワン・シュアン(王霜)中国武漢江大女子
高橋はな日本浦和レッドダイヤモンズ・レディース

男子国際最優秀選手賞

選手国籍所属
ホリー・マクナマラオーストラリアメルボルン・シティ
ワン・シュアン(王霜)中国武漢江大女子
高橋はな日本浦和レッドダイヤモンズ・レディース

男子国際年間最優秀選手(アジア以外のクラブチームに所属するアジア国籍の選手が対象)

選手国籍所属
メフディ・タレミイランオリンピアコス(ギリシャ)
久保建英日本レアル・ソシエダ(スペイン)
イ・ガンイン(李康仁)韓国パリ・サンジェルマン(フランス)

女子国際年間最優秀選手(アジア以外のクラブチームに所属するアジア国籍の選手が対象)

選手国籍所属
ステファニー・キャトリーオーストラリアアーセナル(英国)
浜野まいか日本チェルシー(英国)
長谷川唯日本マンチェスター・シティ(英国)

フットサルアジアカップ予選:マレーシアはG組2位で終了も3大会ぶりの本戦出場決定

パハン州クアンタンで行われていたAFCフットサルアジアカップ2026年大会予選G組の最終第3節が行われ、マレーシアはアジア王者のイランに0-4で敗れてG組2位となったものの、通算成績を2勝1敗とした結果、全2位チームの成績上位7チームに入り、2018年の第15回大会以来、3大会ぶり(2020年大会はコロナ禍のため中止)のフットサルアジアカップ出場を決めています。

初戦のアラブ首長国連邦戦を1-0の僅差で勝利すると、続くバングラデシュ戦を7−1と快勝して2勝とし、やはり2連勝中のイランと最終節で無条件で本選出場となる1位を争って対戦しました。前々回2022年大会準優勝、そして前回2024年大会優勝の成績を残すイラン相手に

タイ出身のラクポル・サイネットガム代表監督は予選を通じて選手たちが闘志を見せてくれたことが勝因と述べ、当初の目的だった本選出場が果たせたことは喜ぶ一方で、来年1月に開催されるアジアカップではより厳しい試合となるとして、インドネシアのジャカルタで開催される本選に向けた準備を早めに始めたいとも述べています。このためラクポル監督は、マレーシアサッカー協会(FAM)のフットサル委員会と会合を持ち、年内12月の東南アジア競技大会通称シーゲームズ、そして翌1月の不ットサルアジアカップと続く試合に向けての準備のための話し合いを持つ予定であるとも述べています。

「できれば10月半ばから1ヶ月あるいは2ヶ月程度の合宿と他国の代表チームとの試合を組んで、選手たちを高いレベルのフットサルに慣れさせたい。」と話しラクポル監督ですが、年末に切れる自身の3年契約の更新については、あくまでもFAMとの話し合いを優先するとし、現状では何も話すことはできないと述べています。

9月27日のニュース<br>・マレーシアサッカーに激震!FIFAがマレーシアサッカー協会と7名のヘリテイジ選手の資格停止処分を発表-偽装書類提出による国籍詐称が理由か

スランゴールの喜熨斗勝史監督解任や、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)のAFC年間最優秀選手ノミネートなど全てのニュースが吹っ飛ぶようなニュースが昨日金曜日の夜に入ってきました。

FIFAがマレーシアサッカー協会と7名のヘリテイジ選手の資格停止処分を発表-偽装書類提出による国籍詐称が理由か

FIFA規律委員会は、FIFA規律規程第22条(文書偽造・改ざんに関する条項)違反を理由にマレーシアサッカー協会(FAM)および7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に対する制裁を科すことを発表しています。FIFAによると、FAMはFIFAに対し選手資格に関する照会を行った際、7名のヘリテイジ帰化選手がアジアカップ予選に出場可能とするために改ざんされた書類を使用していたということです。

なお今回処分の対象となった7名のヘリテイジ帰化選手は以下の通りです。

氏名(出身国)所属(リーグ)
DFガブリエル・パルメロ
(スペイン)
23ウニオニスタス・デ・サラマンカ
(スペイン3部)
DFファクンド・ガルセス
(アルゼンチン)
26デポルティーボ・アラベス
(スペイン1部)
FWロドリゴ・オルガド
(アルゼンチン)
30アメリカ・デ・カリ
(コロンビア1部)
FWイマノル・マチュカ
(アルゼンチン)
25ベレス・サルスフィエルド
(アルゼンチン1部)
FWジョアン・フィゲイレド
(ブラジル)
29ジョホール・ダルル・タジム
DFジョン・イラザバル
(スペイン)
28ジョホール・ダルル・タジム
MFエクトル・へヴェル
(オランダ)
29ジョホール・ダルル・タジム

この7選手はいずれもマレーシアにルーツ(父母あるいは祖父母がマレーシア出身)を持つということで、今年に入ってからマレーシア国籍を取得した選手たちで、この7選手全員が2025年6月10日にクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われたAFCアジアカップ2027年大会3次予選のベトナム戦に出場しました。試合はジョアン・フィゲイレドの先制ゴールでリードしたマレーシアが、ロドリゴ・オルガドのゴールなどで追加点を挙げ、4-0で大勝しましたが、この勝利は対ベトナム戦11年ぶりの勝利でした。

しかしこの試合後に後、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラザバル、エクトル・ヘベルの5選手についてその資格適格性に関する異議申立てがFIFAに寄せられたため、FIFAの規律委員会はすべての証拠を精査し、以下の制裁を決定しました。

1)マレーシアサッカー協会(FAM)はFIFAに対し、35万スイスフラン(およそ6600万円)の罰金をFIFAに支払う。
2)7名のヘリテイジ帰化選手(ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘベル・)は、それぞれ2,000スイスフラン(およそ37万円)の罰金をFIFAに支払う。
3)上記の7選手はさらに、本決定の通知日から12か月間、全てのサッカー関連活動への関与を停止される。なおこの7選手のマレーシア代表としての試合出場資格の適格性については、FIFA規律委員会からFIFAフットボール審判部門へ付託され、審理される。

FIFAからは9月26日付でFAMおよび7名のヘリテイジ帰化選手に対して、FIFA規律委員会による決定の内容が正式に通知されまており、FIFA規律規程の関連条項に従い、通知から10日以内に理由付き決定(不服申し立て)を請求することが可能だということです。

またマレーシアサッカー協会(FAM)も9月27日早朝に公式声明を発表し、FIFAからの通知が届いていることを明らかにした上で、以下のような声明をモフド・ユソフ会長代理名で発表しています。

「FAMは、関係する選手たちとFAM自身が、このプロセス全体を通して誠意を持って、完全な透明性をもって行動してきたことを強調したい。」

「FAMは、定められたガイドラインに従い、すべての書類手続きと関連手続きを透明性をもって管理してきた。実際にFIFAは既に選手たちの資格を審査し、マレーシア代表として出場する資格があることを公式に確認していた。」

「FIFAによる今回の決定に関して、FAMは控訴を行い、選手たちとマレーシア代表チームの利益が常に保護されるよう、利用可能なあらゆる法的手段と手続きを活用する。FAMは、毅然とした行動、国際規則の遵守、そしてマレーシアサッカーの公正性の擁護に引き続き尽力する。」

「また、マレーシア政府およびすべての関係者と緊密に連携し、このプロセスが透明性、公正性、そしてスポーツマンシップ精神に基づいたものとなるよう努めるつもりだ。」とした声明では、控訴手続きおよびFAMによる今後の対応に関する今後の進展については、随時公表されるということです。

******

FIFAからの発表には含まれていませんが、勝利していた6月のベトナム戦はもちろん、3月のネパール戦の勝利が剥奪されるなど試合結果が変更となる可能性があるだけでなく、現在出場中のアジアカップ予選すら出場禁止となる可能性すらあります。

報道ではFAMのユソフ・マハディ会長代理が不服申し立てを行う旨の発言をしたとも伝えられており、マレーシアのサッカー界は当面はこの話題で持ちきりとなりそうです。