12月11日のニュース<br>・東南アジア競技大会:ベトナムとの首位攻防戦に主力2名が合流<br>・ACLエリート:シュート48本を放ったジョホールはスコアレスドローに終わる<br>・ACL2:スランゴールは1分5敗でグループステージ敗退

東南アジア競技大会:ベトナムとの首位攻防戦に主力2名が合流

タイで開催中の東南アジア版オリンピックこと第33回東南アジア競技大会では、男子サッカーは各国のU22代表が対戦します。マレーシアが入る予選B組は、本日12月11日が最終第3節でマレーシアと前回大会準優勝のベトナムが対戦し、勝者が準決勝進出を果たします。

U22代表のナフジ・ザイン監督は、FIFA国際マッチデー期間外の開催となるこの大会では、複数クラブの選手の招集拒否に直面しながらも初戦のラオス戦でチームを4−1の勝利に導いています。

12月6日に行われたラオス戦の前には、いずれもA代表経験のあるDFウバイドラー・シャムスル(トレンガヌ)、FWアリフ・イズワン(スランゴール)、FWファーガス・ティアニー(サバ)の3選手が、クラブの都合で出場できませんでした。

しかしそれぞれ12月5日と7日に所属クラブの試合に出場したウバイドラー、アリフの両選手は本日のベトナム戦を前にバンコク入りしたことが報じられています。その一方で、12月14日にチームとしては27年ぶりのFAカップ決勝を控えるサバは、この決勝後でなければファーガス・ティアニーのU22代表合流は認められないとしています。

主力2選手が合流する一方で、ラオス戦でも先発したMFハジク・クティ(ペナン)はハムストリングを痛めて欠場することになりました。さらにラオス戦ではゴールも決めていたハキミ・アジム(クアラルンプール・シティ)は、12月9日に亡くなった義父の葬儀のためマレーシアに急遽帰国しています。なおハキミ選手は本日午前にバンコクに戻りチームに合流するとされていますが、深い悲しみの中、ベトナムと対戦することになりました。

ACLエリート:シュート48本を放ったジョホールはスコアレスドローに終わる

12月9日から10日にかけてACLエリート東地区リーグステージ第6節が行われ、マレーシアから出場のジョホール・ダルル・タジムは、ホームに上海海港を迎えて対戦しています。

以下は両チームの先発XIです。

中国1部スーパーリーグ3連覇を果たしたばかりの上海海港ですが、ACLエリートでは国内リーグを優先した結果、第5節を終えて1分4敗の最下位。ホームのジョホールはそんな相手から勝点3を奪うべく、試合開始から果敢に相手ゴールを狙います。

開始5分には早速、ベルグソン・ダ・シウバがシュートを放ちますが、上海海港GKチェン・ウェイがセーブ。さらにジョホールは上海海港の守備陣に襲いかかり、波状攻撃を続けますが、上海海港GKチェン・ウェイがその前に立ちはだかり好セーブを連発。6本の枠内シュートを阻止します。上海海港の4本に対してジョホールは前半だけで19本のシュートを放ったものの、いずれも得点には結びつきません。

後半が始まると、両チームは攻撃のギアを一段上げますが、依然として得点には至りません。63分にはベルグソンが絶好機を得てシュートを放つもゴールポストに阻まれ、73分にはナチョ・メンデスのシュートも同じくポストに当たってしまいます。

その後も次々とシュートを放ったジョホールでしたが、48本(枠内11本)のシュートの甲斐もなく、試合はスコアレスドローに終わっています。

2025/26ACLエリート リーグステージ第6節
2025年12月9日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
ジョホール・ダルル・タジム 0-0 上海海港

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

ACL2:スランゴールは1分5敗でグループステージ敗退

12月9日から10日にかけてACL2グループステージG組第6節が行われ、マレーシアから出場のスランゴールは、ホームにライオンシティ・セイラーズ(シンガポール)を迎えて対戦しています。

この試合の両チームの先発XIは以下の通りです。

ノックアウトステージ進出の可能性を残すライオンシティに対して、既にグループステージ敗退が決まっているスランゴールは一矢報いたいところ。そんなスランゴールは国内リーグでは3連勝中を調子を上げていることもあってか、この試合でも立ち上がりから積極的に攻め、序盤はライオン・シティ・セーラーズと互角に渡り合います。

最初のチャンスは12分。スランゴールのFWクリゴール・モラエスが最初の決定機を迎えたが、ライオンシティGKイヴァン・スサクに阻まれます。その5分後には前回の対戦ではスランゴール相手に4ゴールを挙げている前J横浜のアンデルソン・ロペスがシュートを放ちますが、今度はスランゴールGKカラムラー・アル=ハフィズがこれを防ぎます。

徐々にギアを上げるライオンシティは23分にはツィー・ンデンゲのシュートを放ちますが、GKカラムラが好セーブでこれを止め、4分後のマキシム・レスティエンヌのフリーキックはゴールポストにあたり、得点には至りません。

前半を0−0で折り返すと後半開始5分でした。韓国出身のシンガポール代表MFソン・ウィヨンのパスを受けたンデンゲがペナルティエリア内から強烈なシュートを放つとこれが決まり、ついにライオンシティがリードを奪います。

ホームのスランゴールは同点を目指して激しく攻め続けたが、好機は作れず、アディショナルタイムにはモラエスの惜しいシュートもあったが、わずかに枠を外れて万事休す。同じ東南アジアのクラブと同組となったG組で、スランゴールは屈辱の未勝利でリーグステージ敗退となりました。

G組のもう1試合はペルシブ・バンドン(インドネシア)がバンコク・ユナイテッド(タイ)に1-0で勝利し、勝点13でG組1位でノックアウトステージ進出を決めています。。破れたバンコク・ユナイテッドはライオンシティ・セーラーズと勝点10で並びましたが、バンコク・ユナイテッドはライオンシティ・セイラーズとの直接対決で2勝しているために2位隣やはりノックアウトステージへ進出しています。

*****

今大会のスランゴールは0勝1分5敗、またいずれもG組最低の7得点15失点という成績でした。7得点は、クリゴール・モラエス4、ファイサル・ハリムとアリフ・イズワンがそれぞれ1、そしてペルシブ・バンドンのディフェンダーによるオウンゴール1でした。また6試合で15失点は、3位のライオンシティの8失点と比べても突出しています。

2025/26ACL2グループステージ
2025年12月10日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 0-1 ライオンシティ・セイラーズ
⚽️ライオンシティ:ツィー・ンデンゲ(50分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節 試合結果とハイライト映像<br>・好調クチンの連勝がストップ<br>・スランゴールはクリゴールの3発で3連勝<br>・ナニン・ダービー勝利のマラッカが昇格9試合目で初勝利

現在タイで開催中の東南アジア版オリンピックとも言える東南アジア競技大会通称シーゲームズ。男子サッカーはU22代表が対戦しますが、昨日はフィリピンが前回大会優勝のインドネシアを破り1991年大会以来となる準決勝進出を決め、また東ティモールもシンガポールを逆転破るなどなかなか盛り上がっています。そのおかげでマレーシアも12月11日のベトナム戦に敗れても僅差であれば、前々回2021年大会以来の準決勝進出が見えてきました。

さてマレーシアスーパーリーグ第11節の5試合が12月5日から7日にかけて行われています。今節のもう1試合クアラルンプール・シティ対ジョホール・ダルル・タジム戦は、本日12月9日にACLエリート第6節でジョホールが上海海港とアウェイで対戦するため、12月17日に順延されています。

なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズの試合はありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。

好調クチンの連勝がストップ

FAカップ準決勝ではジョホールに敗れたもの、今季はそのジョホール以外のチームには敗れていないクチン。今季無敗のリーグ首位ジョホールとの差を詰めるには、他のチーム相手に勝ち点を積み上げて、少しでも首位との差を詰めておきたいところです。

一方のトレンガヌは今季は不安定な戦いが続き、現在リーグ5位ながら4勝3分3敗で首位のジョホールまでは勝点差13、2位のクアラルンプールまで同9となっています。昨季途中から指揮を取るバドルル・アフザン監督に対して、クラブ経営陣は前半戦終了となる第13節終了時を目処に、今季の目標である「リーグ5位以内」を達成できるかどうかを基準に去就を判断するといわば最後通牒を突きつけています。

そんな勢いに差がある両チームの対戦は、前半終了間際にリードを奪ったクチンが、アディショナルタイムにトレンガヌに追いつかれる展開。その後は両チームから退場者が出たもののスコアは変わらず、引き分けに終わっています。

この試合後にはトレンガヌのバドルル・アフザン監督がチームトップの6ゴールを挙げているフランス出身FWヤン・マベラが半月板のケガの治療を理由にチームを離脱し母国に帰国、さらに今季の復帰は絶望であることを明らかにしています。10月のFAカップ準決勝1stレグを最後に出場がなかったマベラですが、その後チームはFAカップ準決勝敗退、リーグ戦も1分1敗と失速し、来月開く今季2度目のトランスファーウィンドウではFWの補強が必須となりそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月5日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 1-1 クチン・シティ
⚽️トレンガヌ:ヌル・シャキル・エンク(90+5分)
⚽️クチン・シティ:ペトラス・シテムビ(45分)
MOM:ペトラス・シテムビ(クチン・シティ)
クチン・シティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。


不適切発言で後味の悪い試合に

21年ぶりとなるFAカップ決勝進出を果たしたサバと給料未払いが続いていることが報じられているPDRMの対戦は、チームの勢いそのままにアウェイのサバがPDRMを4−1で破っています。代表FWダレン・ロックの今季初ゴールに始まり、ミゲル・シフエンテス、アジディン・ムヤギッチ、そしてタイの東南アジア大会出場中のU22代表の招集を拒否してチームに残ったファーガス・ティアニーがゴールを決めて、12月14日に控えているFAカップ決勝に弾みをつけています。

しかしこの試合後にはPDRMの元ヨルダン代表MFファディ・アワドが、サバのジャン=ポール・ド・マリニー監督から人種差別的な発言を受けたことを自身のSNS上で明らかにしています。

マレーシアリーグ4季目となるファディ選手は、これまでサバとの対戦では経験したことがないほどの敬意を欠く不適切な発言が多くの人がいる前で発せられたとして、こういった発言はクラブの品位を下げるものだと激しく非難し、またPDRMの公式SNSもファディ選手の投稿をリポストしています。なおこの記事の執筆時点では、マリニー監督からはコメントは出されていないようです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月6日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM 1-4 サバ
⚽️PDRM:アグレ・ノエル(74分PK)
⚽️サバ:ダレン・ロック(44分)、ミゲル・シフエンテス(54分)、アジディン・ムヤギッチ(60分)、ファーガス・ティアニー(90+4分PK)
MOM:カイルル・ファーミ(サバ)


ナニン・ダービー勝利のマラッカが昇格9試合目で初勝利

隣接するマラッカ州とヌグリ・スンビラン州のチームの対戦は2022年以来3年ぶりですが、このカードは「ナニン・ダービー」と呼ばれています。

ナニンはマラッカ州にある地域で、16世紀にヌグリ・スンビランを形成した9つの構成国の1つでした。しかし、英国が1824年にオランダと締結した英蘭協約により、当時のオランダ領マラッカと、現在はインドネシアのスマトラ島のベンクーレン(現地名ブンクル)交換しました。(ちなみにこの英蘭協約によりマラッカ海峡の東側が英国領、現在のマレーシア、西側をオランダ領、現在のインドネシアに分かれました)

英国はナニンをマラッカの一部であると主張し、マラッカで定められた規則をナニンでも適用しようとしました。しかしナニンの首長ドル・サイドと住民がこれに反発すると、英国は軍隊を送って鎮圧しようとしますが、これに失敗すると、英国はより多くの軍勢を投入し、「ナニン戦争」が1832年に勃発します。この戦いに勝利した英国が、ナニンはマラッカの領土として併合されました。

この併合により、歴史的にはヌグリ・スンビランの一部であった地域が政治的に分断され、マラッカの一部となりました。この 歴史的な経緯や、特にナニンという地域をめぐる領有権の対立が、両州のサッカーチーム間の激しいライバル意識の背景にあることからこのカードが「ナニン・ダービー」と呼ばれるようになりました。

前置きが長くなりましたが、マラッカはこの試合で1部昇格9試合目にして待望の初勝利を挙げています。

しかしこの試合も、試合後に一悶着がありました。アウェイのマラッカ州ハン・ジェバ・スタジアムに足を運んだヌグリ・スンビランのサポーターと、ニザム・ジャミル監督との間で激しい口論が起こり、その様子がSNSの投稿されています。

この後の会見に現れニザム監督は、チームのパフォーマンスについての議論については喜んで話を聞き、また批判も受けいれるが、自分の家族についての誹謗中傷については許容できないと話すなど、スタンドのサポーターの口論がサッカーとは無関係な非難であったことを明らかにしています。

開幕からの5試合を2勝2分1敗とサポーターを期待させる成績でスタートしながら、続く5試合は1勝2分2敗、特にペナンやマラッカにそれぞれ今季初勝利を提供するなどやや失速気味のチーム状況への失望が出てしまった形かもしれません。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月6日@ハン・ジェバ・スタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ 2-0 ヌグリ・スンビラン
⚽️マラッカ:フアン・ダグラス2(4分、27分)
MOM:フアン・ダグラス(マラッカ)
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手は先発して前半で交代、常安澪選手は佐々木選手と交代で後半から出場し、試合終了までプレーしています。


スランゴールはクリゴールの3発で3連勝

FAカップ準決勝ではサバに敗れた敗退となったスランゴール。ACL2や東南アジアクラブ選手権ショピーカップでも勝ちきれない試合が続いています。

スランゴールはピッチ外でもドタバタ劇を起こしており、ACL2に向けて獲得した元コソボ代表MFトニ・ドムジョニは、獲得直後のプルシブ・バンドン(インドネシア)戦を食中毒を理由に欠場、するとその後に双方合意の上で契約解除となり、ドムジョニ選手は加入から1試合も出場することなくスランゴールを退団しています。

それでもリーグ戦は9月にクチンに敗れて以来、4戦無敗が続いており、この試合では今季1勝、直近では3試合勝星なしのペナンを相手に前半だけで3点を挙げて圧勝しています。

ケガ人が多い中で徐々に本来の調子を取り戻しつつあるスランゴールですが、その穴を埋めるべく、昨季はキャプテンを務めながら、喜熨斗勝史監督がチームに不要だとしてライオンシティ・セイラーズにローン移籍していたシンガポール代表CBサフアン・バハルディンが復帰するとの噂もあり、後半戦に向けての立て直しが期待されます。

一方のペナンはこの試合も含めた10試合で8得点24失点の13位最下位となっており、こちらはスランゴール以上に戦力補強が急務になっています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月7日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナン 1-5 スランゴール
⚽️ペナン:ホナタン・シウバ(6分)
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム(26分)、ピチャ・アウトラ(45+5分)、クリゴール・モラエス3(45+12分、59分、75分)
MOM:クリゴール・モラエス(スランゴール)
ペナンの鈴木ブルーノ選手は6試合ぶりに先発して、68分に交代しています。


DPMMが今季2勝目、イミグレセンは3連勝ならず

今季からマレーシアリーグに参戦中のブルネイのDPMMが今季ホーム初勝利を挙げるとともに、今季2勝目を記録しています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月7日@ハスナル・ボルキア国立競技場(ブラカス、ブルネイ)
DPMM 4-2 イミグレセン
⚽️DPMM:アズワン・アリ(15分)、ハキミ・ヤジド2(21分、26分)、ミゲル・オリベイラ(86分)
⚽️イミグレセン:ウィルマル・ホルダン2(5分、71分PK)
MOM:ミゲル・オリベイラ(DPMM)


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第11節途中)

チーム勝点
1ジョホール1010005545130
2クアラ・ルンプール97201941523
3クチン106312051521
4スランゴール1061321111019
5トレンガヌ104332216615
6ヌグリ・スンビラン103431716113
7クランタン10325918-911
8サバ102441221-910
9イミグレセン102351321-89
10DPMM102561031-218
11マラッカ9135619-136
12PDRM10136931-226
13ペナン10127824-165

2025/26スーパーリーグ得点トップ10(第11節途中)

得点選手名所属
112ベルグソン・ダ・シウバジョホール
211ジャイロ・ダ・シウバジョホール
39クリゴール・モラエススランゴール
47アリフ・アイマンジョホール
7ロナルド・ンガクチン
66ヤン・マベラトレンガヌ
6ジョアン・フィゲイレドジョホール
6ヨヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
95サファウィ・ラシドクアラルンプール
5ジョセフ・エッソヌグリ・スンビラン
5ラマダン・サイフラークチン

12月8日のニュース<br>・東南アジア競技大会男子サッカー:マレーシアはラオスに快勝でスタート<br>・東南アジア競技大会女子サッカー:マレーシアはベトナムに大敗

東南アジア競技大会男子サッカー:マレーシアはラオスに快勝でスタート

東南アジア版オリンピックとも言える東南アジア大会通称シーゲームズは、12月9日の開会式を前にいくつかの競技が始まっています。そのうちの一つ、男子サッカーも今大会の開催国であるタイのバンコクとチェンライを会場に12月3日から始まっています。

東南アジア11ヵ国の内、タイとの国境紛争問題を理由に出場を取りやめたカンボジア、そしてブルネイを除く9ヵ国が参加する男子サッカーはU22代表チームが対戦します。グループステージは、バンコクで開催されるA組に開催国タイ、シンガポール、東ティモールが入り、同じバンコクが会場となるB組にはベトナム、マレーシア、ラオス、そして北部の都市チェンライが会場となるC組には前回大会王者インドネシア、フィリピン、ミャンマーが入っています。(なおB組は当初、タイ南部の都市ソンクラでの開催予定でしたが、熱帯性低気圧「セニャール」がもたらした豪雨により洪水被害をもたらしたことから、試合会場が変更になっています。)

グループステージは1回戦総当たり方式で行われ、各組の1位3チームと、2位チーム中最高成績を収めた1チームが準決勝へ進出します。

B組は12月3日にラオス対ベトナム戦が既に行われており、この試合はベトナムがラオスを2−1で破り逆転勝利を収めています。マレーシアの初戦となった12月6日の試合はラオスが相手でした。以下はこの試合のマレーシアU22の先発XIです。

先発XIの内訳は、GKズルヒルミ・シャラニ(16)、DFアリフ・アフマド(4)、DFシャフィザン・アルサド(5)、MFダニシュ・ハキミ(6)、MFジアド・エル=バシール(12)、DFアイサル・ハディ(13、キャプテン)の6名がジョホール・ダルル・タジムU21、DF アイマン・ハキミ(2)、MFハイカル・ダニシュ(10)、DFモゼス・ラジ(20)の3名がスランゴールU21、そしてFWハキミ・アジム(7)がクアラルンプール・シティ、MFハジク・クティ(14)がペナンの所属です。

試合は立ち上がりからマレーシアがチャンスを作るも、4分には中盤でボールを奪ったラオスが速攻からDFブーンペング ・サイソムバットのシュートが決まり、マレーシアが追いかける展開となります。

マレーシアの同点弾は33分でした。左サイドからのダニシュ・ハキミからのクロスはゴール前のハキミ・アジムの頭には合わなかったものの、ボールはそのままゴール前へ。これをラオスの先制点を決めたDFブーンペング ・サイソムバットがクリアミス。そこへ詰めていたハイカル・ダニシュがこれを落ち着いて押し込みました。

1-1で前半を折り返すと、後半の59分には右サイドのハジク・クティからのグラウンダーのクロスにラオスGKが反応するも、伸ばした手に当てるのが精一杯でした。その手に当たったゴールがゴール前に転がると、それをハキミ・アジムが押し込んで、ついにマレーシアがリードを奪います。

さらにその3分後には、右コーナー付近で得たフリーキックをダニシュ・ハキミがゴール前へ上げると、飛び込んできたモゼス・ラジがラオスDFに競り勝ちヘディングシュート!これが決まって、マレーシアはリードを広げます。

さらに85分にはラオスのキャプテンのペッタヴァン・ソムサニットがこの試合2枚目のイエローで退場になると、数的優位を生かしたマレーシアは中央付近でパスを受けた途中出場のロヒシャム・ハイカルがドリブルで持ち込むと、ペナルティエリア内でラオスDFに倒されますが、そのこぼれ球をムハマド・アブドル・カリルが落ち着いて4点目となるゴールを決めます。

試合はそのまま終了し、2敗となったラオスはグループステージ敗退が決まり、マレーシアは12月11日にベトナムとのグループ1位をかけて対戦します。ラオス戦後には、A代表でもプレーするトレンガヌのCBウバイドラ・シャムスルが昨日チームに合流したことも報じられており、次戦で対戦する前回大会準優勝のベトナムと接戦を演じることができれば、たとえ破れてもマレーシアにノックアウトステージ進出の可能性が残ります。

東南アジア競技大会男子サッカー グループステージB組第2節
12月6日@ラジャマンガラ・スタジアム(バンコク、タイ)
ラオス 1-4 マレーシア
⚽️ラオス:ブーンペング ・サイソムバット(4分)
⚽️マレーシア:ハイカル・ダニシュ(4分)、ハキミ・アジム(59分)、モゼス・ラジ(62分)、ムハマド・アブ・カリル(90分)


東南アジア競技大会女子サッカー:マレーシアはベトナムに大敗

一方の女子サッカーは、タイ、インドネシア、シンガポール、カンボジアがグループステージA組、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、マレーシアが同B組に振り分けられ、1回戦総当たりで行われるグループステージ各組の1位と2位が準決勝に進出します。

マレーシアが入ったB組には、2023年に行われた女子W杯に東南アジアから出場したフィリピンとベトナムが入っていますが、マレーシアはそのベトナムと初戦の12月5日に対戦。開始4分でファム・ハイ・イェンにゴールを決められると前半だけで4失点、後半もタイ・ティ・タオにハットトリックを許すなど、終わってみれば7失点と大敗しています。

マレーシアは12月8日にミャンマーと、そして12月11日にはフィリピンと対戦しますが、

東南アジア競技大会女子サッカー グループステージB組第1節
ベトナム 7-0 マレーシア
⚽️ベトナム:ファム・ハイ・イェン(4分、26分)、グエン・ティ・ビック・トゥイ(23分)、トラン・ティ・ハイ・リン(36分)、タイ・ティ・タオ(48分、59分、78分)

12月6日のニュース<br>・マレーシア代表のサードユニフォームが発表<br>・東南アジア競技大会開幕:マレーシアは主力抜きで初戦のラオス戦へ

マレーシア代表のサードユニフォームが発表-7年ぶりに青色が採用される

マレーシアサッカー協会(FAM)は12月4日に公式SNS上で、マレーシア代表のサードユニフォームを発表しています。2007年から18年間に渡り代表ユニフォームを供給してきたナイキ社から、2025年1月にプーマ社へと乗り換えたマレーシア代表。チームの愛称であるHarimau Malaya(ハリマウ・マラヤ「マレーの虎」の意味)にちなみ、黄色主体のホーム用と黒色主体のアウェイ用は既に試合でも着用されています。

今回発表になったのはマレーシア国旗で使われている青色と赤色主体のデザインで、FAMはマレーシア語でBangkit Bersama「共に立ち上がろう、皆で力を合わせよう」をテーマとした「国民の団結と、マレーシアのサッカーへの新たな精神を祝する」ものだと説明しています。

丸首デザインのこのユニフォームは左胸にマレーシア国旗、右胸にはプーマ社のロゴ、そして生地は虎の縞模様を象徴するパターンになっています。またこのユニフォームは、白いパンツと赤いソックスと組み合わされており、ユニフォームの胸に輝くジャルル・ゲミラン「栄光のストライプ」とも呼ばれるマレーシア国旗からインスピレーションを得たものだとも説明されています。

ちなみにマレーシア代表が最後に青いユニフォームを使用したのは、2018年のアウェイユニフォーム以来で、それ以降のアウェイユニフォームは黒色主体のデザインとなっています。

なおこのサードユニフォームは既にプーマ社のオンラインストアや国内スポーツ用品店で販売が始まっており、価格は319リンギ(およそ12000円)となっています。。

東南アジア競技大会開幕:マレーシアは主力抜きで初戦のラオス戦へ

東南アジア版オリンピックとも言える東南アジア競技大会通称シーゲームズが来週12月9日にタイで開幕します。各国のU22代表が対戦する男子サッカーは、開会式前に開幕するのが通例で、今大会でも既に12月3日より競技が始まっています。

グループステージではベトナム、ラオスと共にB組に入っているマレーシアの初戦は、予定されていたタイ南部、マレーシアとの国境に近いソンクラ県のティンスラノンダ・スタジアムで本日12月6日に予定されていました。しかし熱帯性低気圧「センヤール」がこの地域に洪水などで甚大な被害を与えたため、試合会場がバンコクのラジャマンガラ・スタジアムへと変更されています。

初戦となるラオス戦を前に、サバFCはU22代表に招集されているFWファーガス・ティアニーが12月14日に予定されているマレーシアカップ決勝に出場するため、招集を拒否することを発表しています。なおサバは27年ぶりのFAカップ決勝進出を果たしています。

今回のシーゲームズはFIFA国際マッチカレンダー外であることから、クラブは招集に応じる義務はなく、所属選手の招集拒否は可能になっています。

またU22代表のナフジ・ザイン監督は、先月11月のアジア杯予選ネパール戦に向けた代表合宿にも招集されたDFウバイドラー・シャム(トレンガヌ)、FWアリフ・イズワン・ユスラン(スランゴール)もそれぞれの所属クラブが招集に応じておらず、マレーシアサッカー協会(FAM)が12月3日に発表したメンバーからは、この3選手がラオス戦には出場しないということです。(その後、12月5日にリーグ戦を終えたウバイドラー選手はベトナム戦前にチームに合流すると報じられています。)

初戦のラオス戦はともかく、次戦となる12月11日のベトナム戦もこの主力3選手を欠くメンバーで臨むことになれば、各組の1位3チームと予選最優秀成績の2位1チームが出場する準決勝進出は容易ではありません。

2025/26アセアンクラブ選手権グループステージ第3節<br>・スランゴールは引き分けで準決勝進出に黄信号<br>・ジョホールはアディショナルタイムの2発でカンボジア王者に追いつき引き分けに

11月18日のアジア杯2027年大会予選ネパール戦で、開始からわずか8分で負傷退場していたアリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム・フットボール)が、その後、検査・治療のため渡航したことはこのブログでも取り上げました。その後の経過について、ジョホールのクラブ公式SNSが明らかにしています。

それによるとアリフ選手はフィンランドに渡り、著名なスポーツ整形外科医のレンパイネン・ラッセ医師の執刀によりハムストリングの手術を受け、その主日が無事に成功したことが明らかになっています。

ラッセ医師は2025年バロンドール受賞者のウスマン・デンベレ(フランス代表/パリ・サンジェルマン)、リース・ジェームズ(イングランド代表/チェルシー)、ルベン・ネヴェス(ポルトガル代表/アル・ヒラル)らを含む多くのアスリートを治療してきた経歴があるということです。


アセアンクラブ選手権グループステージA組第3節:スランゴールは引き分けで準決勝進出に黄信号

国内リーグ第10節を終え、スランゴールは首位のジョホールと勝点差14と離されています。また2位のクチンとも勝点差7の4位と不本意な成績です。また11月30日に行われたマレーシアFAカップ準決勝ではPK戦の末にサバに敗れ、プルシブ・バンドン(インドネシア)、バンコク・ユナイテッド(タイ)、ライオンシティー・セイラーズ(シンガポール)と同組となったACL2でも0勝1分4敗と2季連続のグループステージ敗退が決まっています。

今季のスランゴールは、開幕からの5試合で2勝3敗とスタートダッシュに失敗すると、昨季途中から指揮を取っていた喜熨斗勝史監督をあっさりと解任し、元スリ・パハン監督のクリストファー・ギャメル氏を監督代行に据えました。しかしこの監督交代は2020年からの5年間で8人目とあまりにも節操のない人事でサポーターからも非難を浴びています。さらにクラブにはテクニカル・ディレクター(TA)がおらず、監督交代が誰の責任で行われたのかが曖昧な上、このTA不在の状況を放置している経営陣への批判の声は日に日に大きくなっています。

そんな中でスランゴールが未だ優勝争いに加わる可能性を残しているのがアセアンクラブ選手「ショピーカップ」です。主催する東南アジアサッカー連盟(AFF)が今季から規約を変更し、各国のトップクラブのみの出場となったこの大会へは、マレーシアからは昨季優勝のジョホール・ダルル・タジムと2位のスランゴールが出場しています。

初戦のACLエリートにも出場するブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦をアウェイながら1−1と引き分けたスランゴールは、喜熨斗監督が指揮を取る最後の試合となった続くタンピネス・ローヴァーズ(シンガポール)戦を4−2と勝利し、同じ1勝1分のBGパトゥム・ユナイテッド(タイ)と勝ち点で並びならも得失差で上回り、A組の首位に浮上しました。

そして迎えて第3節はプレーオフを勝ち上がって本戦出場を果たしたダイナミック・ハーブ・セブFC(DHセブFC)が相手です。なおDHセブFCは、昨季2024/25のACL2ではスランゴールと同じH組で、その際にはスランゴールがホームで1−0、アウェイで4−0といずれも勝利しています。

下は12月3日に行われたこの試合の両チームの先発XIです。スランゴールはサバと対戦した11月30日のFAカップ準決勝から中2日ということもあってか、先発XIはMFノーア・ライネ以外の10名がサバ戦から入れ替わっています。

試合はスランゴール優位で進んだのは予想通りで、好機を何度か作り出すものの得点を上げることはできず、前半0-0で終了します。

後半開始早々にセブはエスロム・パウロスが強烈なシュートを放ちますが、スランゴールGKカラムラー・アル=ハフィズが反応よくこれを防ぎます。しかし47分にパウロス選手のコーナーキックからのボールをアブー・シーが頭で合わせてゴール!ホームのセブが先制します。

しかしスランゴールも54分、フリーキックからのピチャ・アウトラのシュートをゴール前で元J甲府のウィリアン・リラがうまく角度を変えて押し込み、同点に追いつきます。

クリストファー・ギャメル監督代行はその後、クリゴール・モラエス、ファイサル・ハリムを投入し一気に逆転を狙いますが、スランゴールは追加点を奪えず、結局、試合はこのまま終了。

ここまで未勝利だったDHセブと引き分けたスランゴールは順位を一つ下げて2位に交代しています。残り試合の相手がタイとベトナムの強豪クラブであることを考えると、この試合は勝っておきたかった…。

2025/26アセアンクラブ選手権ショピーカップ グループステージA組第3節
2025年12月3日@リザル・メモリアル・スタジアム(マニラ、フィリピン)
ダイナミック・ハーブ・セブ 1-1 スランゴール
⚽️セブ:アブー・シー(47分)
⚽️スランゴール:ウィリアン・リラ(54分)
MOM:オミド・ムサウィ(スランゴール)

A組の他の2試合は、タンピネスが東川続選手のハットトリックでBGパトゥム・ユナイテッドに逆転勝利しグループ首位に浮上、またはアディショナルタイムのゴールでハノイ公安(ベトナム)に追いついたブリーラム・ユナイテッドは3試合連続の引き分けとしてます。

2025/26アセアンクラブ選手権ショピーカップ グループステージA組第3節
2025年12月3日@ジャラン・ブサル・スタジアム(シンガポール)
タンピネス・ローヴァーズ 3-2 BGパトゥム・ユナイテッド
⚽️タンピネス:東山続3(45+3分、61分、78分)
⚽️BGパトゥム:土井智之(7分)、ラニエル((27分)
MOM:東山続(タンピネス・ローヴァーズ)

2025/26アセアンクラブ選手権ショピーカップ グループステージA組第3節
2025年12月3日@ブリーラム・スタジアム(ブリーラム、タイ)
ブリーラム・ユナイテッド 1-1 ハノイ公安
⚽️ブリーラム:ギリェルメ・ビソリ(90+1分)
⚽️ハノイ:レオ・アルトゥール(10分)
MOM:チャン・ディン・チョン(ハノイ公安)

2025/26アセアンクラブ選手権A組順位表(第3節終了)

順位チーム勝点
1タンピネス32018716
2スランゴール312064 25
3BGパトゥムU31116604
4ハノイ公安31213304
5ブリーラムU30304403
6セブ301225-31

ジョホールはアディショナルタイムの2発でカンボジア王者に追いつき引き分けに

第2節を終えてB組首位のジョホール・ダルル・タジムは、プノンペンでカンボジア王者のPKRスバイリエンと対戦しています。11月25日にはACLエリートのメルボルン・シティ戦、同30日にはFAカップ準決勝クチン・シティ戦と続き、10日間で3試合目となったこの試合の先発XIは以下の通りです。11月30日のクチン・シティ戦からはラヴェル・コービン=オング以外の10名が変わっています。またこの記事の最初に書いた通り、アリフ・アイマンが現在、ケガの治療でチームを離れています。一方のPKRスヴァイ・リエンは、小田原貴、藤井亮の両日本人選手が先発しています。

試合はホームのスヴァイ・リエンがニーン・ソシダンが開始1分でシュートを放つなど開始早々から積極的に攻め続けると、これが功を奏します。

29分にはスヴァイ・リエンがパトリックのパスを受けたクリスチャン・ロケがジョホールGKアンドニ・ズビアウレの逆をつく素晴らしいシュートを決めて1-0とリードします。これで勢いづいたスヴァイ・リエンは、さらに37分に国内リーグでは10試合で10ゴール4アシストの成績でジョホールも警戒していたクワメ・ペプラからのパスを受けたニーン・ソシダンが今度は至近距離からのシュートを確実に決め、リードを2点に広げます。

ジョホールはムサ・シディベ、ラヴェル・コービン=オング、ジャイロ・ダ・シウバらが果敢に攻め込みますが、カンボジア代表GKでもあるGKビレアク・ダラを脅かすには至らず、前半は2-0のまま終了します。

後半に入っても、ジョホールはチャンスを何度か作るものの、決定力に欠け、さらにスヴァイ・リエンの強力な守備に阻まれます。GKビレアク・ダラは73分、ケガから1年ぶりに復帰したシャーミ・サファリのシュートを見事にセーブ、そして80分にはハイロのシュートも枠を捉えられず、マレーシアスーパーリーグの得点王争いを独走するベルグソン・ダ・シウバをベンチ外としてことが悔やまれる展開となります。

試合はアディショナルタイムが8分となる中、90+2分にヘベルチ・フェルナンデスのコーナーからシェーン・ローリーが頭で合わせて同点ゴールを決めると、そこから連続攻撃を続けます。すると90+6分にはシャーミ・サファリが右サイドでフリーとなっていたシェーン・ローリーへボールを送ると、これをローリーがゴール前へ折り返し、最後コービン・オンが頭で押し込み土壇場で同点に追いつきます。このまま試合は終了し、怒涛の攻撃で勝点1をもぎ取ったジョホールがB組首位を守っています。

2025/26アセアンクラブ選手権ショピーカップ グループステージB組第3節
2025年12月4日@モロドク・テコ国立競技場(プノンペン、カンボジア)
PKRスヴァイ・リエン 2-2 ジョホール・ダルル・タジム
⚽️スヴァイ・リエン:クリスティアン(29分)、ニーン・ソシダン(37分)
⚽️ジョホール:シェーン・ローリー(90+2分)、ラヴェル・コービン=オング(90+6分)
MOM:クリスティアン(PKRスヴァイ・リエン)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

B組の他の2試合は、1月29日の次節第4節にジョホールと対戦するシャン・ユナイテッド(ミャンマー)が、元J仙台のラファエルソンこと、ベトナム代表グエン・スアン・ソンのハットトリックでムディン(ベトナム)に敗れ、仲村京雅、久乗聖亜両選手を擁するバンコク・ユナイテッド(タイ)はライオンシティ・セイラーズ(シンガポール)と引き分けています。

2025/26アセアンクラブ選手権ショピーカップ グループステージB組第3節
2025年12月4日@トゥウンナ・スタジアム(ヤンゴン、ミャンマー)
シャン・ユナイテッド 0-3 ナム・ディン
⚽️ナム・ディン:グエン・スアン・ソン3(45+2分、51分、87分)
MOM:グエン・スアン・ソン(ナムディン)

2025/26アセアンクラブ選手権ショピーカップ グループステージB組第3節
2025年12月4日@パトゥムターニー・スタジアム(パトゥムターニー、タイ)
バンコク・ユナイテッド 2-2 ライオンシティ・セイラーズ
⚽️バンコク:ジャカパン・プレイスワン(24分)、久乗聖亜(76分)
⚽️ライオンシティ:マクシム・レスティエンヌ(11分)、アンデルソン・ロペス(20分)
MOM:久乗聖亜(バンコク・ユナイテッド)

2025/26アセアンクラブ選手権B組順位表(第3節終了)

順位チーム勝点
1ジョホール32109367
2ナムディン32005146
3スヴァイリエン31116424
4ライオンシティ301135-21
5バンコクU301126-41
6シャンU300206-60

12月2日のニュース<br>・2025/26マレーシアFAカップ準決勝2ndレグ試合結果とハイライト映像:決勝の組み合わせは4連覇を狙うジョホール対27年ぶり決勝進出のサバに決定<br>・U17アジア杯予選:全勝対決もベトナムに大敗のマレーシアは本戦出場を逃す<br>・国際プロサッカー選手会が、FIFAによる国籍偽装が疑われるマレーシア代表7選手へ処分を批判

決勝の組み合わせは4連覇を狙うジョホール対27年ぶりの決勝進出のサバに決定

11月30日にマレーシアFAカップの準決勝2ndレグが行われ、ジョホール・ダルル・タジムとサバが決勝進出を決めています。

ジョホールがクチンを完封で4連覇に王手

この試合のジョホールの先発XIでは、11月18日のアジア杯2027年大会予選ネパール戦では、開始9分でケガのため途中退場したアリフ・アイマンはこの試合でもベンチ外でした。(ちなみにアリフ選手は自身のSNSに検査・治療のため出国したことを投稿しています)。一方のクチンは、カップ戦6ゴール、そしてリーグ戦7ゴールといずれもチーム最多ゴールを挙げているロナルド・ンガが警告累積のため出場停止となっています。

11月9日にクチンのホームで行われた準決勝1stレグでは。ジョホールが2−1と勝利しており、ジョホールは引き分け以上で決勝進出が決まります。またこの試合はマレーシア代表でも正GKのジョホールGKシーハン・ハズミと、代表の第二GKハジク・ナズリの対戦でもあります。ちなみに27歳のハジク選手は昨季までの8シーズンはジョホールに所属していましたが、29歳のシーハン選手とのポジション争いに敗れ、今季からはクチンに所属しています。

試合は守備的布陣のクチンに手を焼いたジョホールが26分、クチンDFが一瞬、隙を見せたところをベルグソン・ダ・シウバがゴールを決めて先制します。このゴールで通算成績が2ゴール差となったクチンは反撃を仕掛けたいところでしたが、この試合最初のシュートが40分過ぎと、チャンスを作ることができません。

後半に入ってもクチンはこの試合のMOMとなったGKハジク・ナズリが好セーブを連発しますが、83分に失点して万事休す。通算成績を4−1としたジョホールが12月14日のFAカップ決勝進出を決めるとともに、4季連続通算5度目のFAカップ優勝に王手をかけています。

2025/26マレーシアFAカップ準決勝2ndレグ
2025年11月30日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ・スタジアム)
ジョホール・ダルル・タジム 2-0 クチン・シティ(通算成績4-1)
⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シウバ(26分)、エディ・イスラフィロフ(83分)
MOM:ハジク・ナズリ(クチン・シティ)


サバがスランゴールとのPK戦を制して27年ぶりの決勝進出

11月9日にサバのホームで行われた準決勝1stレグでは0−0で終わっています。スランゴールのホームで行われたこの日の試合は無観客で行われています。理由は10月29日に同じMBPJスタジアムで行われたヌグリ・スンビランとのFAカップ準々決勝2ndレグでの観客への迷惑行為と警備措置違反です。サポーターによる観客席破壊や爆竹の投げ込みなどがあり、マレーシアサッカー協会(FAM)の規律委員会は主催義務を遵守していないとして、罰金と10万リンギ(およそ380万円)とFAカップ2試合を無観客で行う処分を下しています。スランゴールはこれに対して異議申し立てを行いましたが、FAMの控訴委員会はこれを却下しています。(スランゴールはこれを不服として、さらにアジア国際仲裁センターに控訴しています。)

試合はホームのスランゴールがリードを奪えば、すかさずサバが追いつく展開となりました。スランゴールに悔いが残るとすれば73分にファイサル・ハリムがこの試合2点目となるゴールを決めて逆転してからの展開でした。とにかく逃げ切るでもなく、かと言って追加点を奪って引き離しにかかるでもないものでした。

その一方でスランゴールに明らかに不利な判定に思えるものもありました。その一つがスランゴールDFライミ・シャムスルが自陣ペナルティエリア内でファルハン・ロスランを倒した場面でした。サバの同点ゴールにつながるPKとなったこのプレーはVARも介入しませんでした。さらにアディショナルタイムで出されたママドゥ・ディアラへのレッドカードはVARのチェックがありましたが、1発レッドほどの反則には見えませんでした。

PK戦に入った試合は、サバGKダミアン・リムがスランゴールのハリス・ハイカル、モハメド・アブアルナディの2本のPKを止めてサバに勝利をもたらし、27年ぶりの決勝進出に導いています。

2025/26マレーシアFAカップ準決勝2ndレグ
2025年11月30日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 3-3 サバ(通算成績5-5、PK戦4-5)
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム2(33分、73分)、クリゴール・モラレス(51分)
⚽️サバ:デイン・インガム(47分)、アジディン・ムヤギッチ2(62分、88分PK)
MOM:ダミエン・リム(サバ)


U17アジア杯予選:全勝対決もベトナムに大敗のマレーシアは本戦出場を逃す

U17アジア杯2026年大会予選C組の最終節が行われ、いずれもここまで全勝のマレーシアとベトナムが対戦し、マレーシアはベトナムに0-4で敗れて、来年2026年にサウジアラビアで開かれる本大会出場を逃すとともに、前回2023年大会まで続いていた連続出場記録が4で途絶えました。

この予選の前に行ったクロアチアでの合宿では、クロアチアU16代表と対戦して0−11で敗れるなど、ジョホール・ダルル・タジムのユースチームのコーチから転身したスペイン出身のハビエル・リベラ監督に批判が集まっていましたが、それでも予選が始まると、イマン・ダニシュ・シュコールのハットトリックなどで北マリアナ諸島に13-0と勝利、やはりイマン・ダニシュのゴールで香港を1−0で破りました。続くマカオ戦、そしてシンガポール戦でもイマン・ダニシュがそれぞれゴールを決めるなどして5−0、2−1で勝利していました。

最終節でのベトナムとの対戦は、同じ全勝とは言え、勝点差で6話されていたマレーシアは、予選突破のためには勝利が必要でした。しかし、開始4分でベトナムにリードを許すと、前半終了間際にも失点し、後半にも2点を失い0−4と完敗しています。

U17アジア杯2026年大会には東南アジアからは、ベトナムの他、タイ、インドネシア、ミャンマーが出場します。

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このU17代表の予選敗退により、マレーシアは今年行われたU19アジア杯をはじめ、U23アジア杯2026年大会、U17アジア杯2026年大会と年代別代表は全ての大会で予選は致しています。問題を起こしているヘリテイジ帰化選手による強化策によってFIFAランキングを上昇させ、ベトナムやタイに追いつけ追い越せの勢いのA代表とは違い、ヘリテイジ帰化選手なしの年代別代表では、地域内ではまだまだ太刀打ちできていないことを思い知らされます。またヘリテイジ帰化選手による強化策の負の側面が、年代別代表やそもそもの育成年代に表れていそうです。


国際プロサッカー選手会が、FIFAによる国籍偽装が疑われるマレーシア代表7選手へ処分を批判

国際プロサッカー選手会(FIFPRO)が、国籍偽装が疑われるマレーシア代表のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツがある帰化選手)7名にFIFAが科した12ヶ月間の出場停止処分について批判しています。

これを報じている英字紙スターの記事によると、FIFPROはこの処分を非常に不適切だとし、選手は自身の誤った行いではなく、事務方の手違いの「犠牲者」となっていると主張しています。

「実際のところ、該当選手たちはこの問題では被害者であるのは明らかだ。FIFAによる裁定の説明でも、マレーシア代表としてプレーする資格を得る目的で選手たち自身が書類を直接偽装したのではないこと、また、代表資格取得のために提出された書類が本物であるとも述べられている。」

「7名もの選手が同じ状況に置かれていることからも、書類偽装は選手一人一人が個人的に行った行為ではないことの証拠でもある。」

「さらに選手たちには自分たちが代表選手としてプレーする資格があるかどうかをFIFAに確認する方法さえない。なぜならばこれは現行の規則のもとでは義務化されていないからだ。」

といった声明を発表したFIFPROは、各国のサッカー協会がFIFAに提出した書類の内容に関して責任を持つのは困難だとも説明し、選手自身が発行、あるいは提出したわけではない書類の内容が正しいことを証明することも同様に困難だ、としています。

FIFFPROの声明では、該当選手たちは、1)個人文書を提出、2)マレーシア当局に出頭、3)国籍取得のための宣誓手続きを完了、4)政府発行のパスポートを取得、そして5)マレーシアサッカー協会(FAM)からの資格承認を待つ、という必要な手続きを踏んでいるともしています。そして全ての手続きは選手自身が管理できない組織によって行われたものであるにもかかわらず、選手たちは所属クラブから出場停止や契約解除といった深刻な影響を受けているとしています。

その上でFIFPROは、マレーシアサッカー協会(FAM)が予定しているFIFAの裁定に対するスポーツ仲裁裁判所(CAS)への控訴を全面的に支持するとともに、CASがFIFAによる「不当な採決」を覆すと強く信じていると、声明を結んでいます。

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FIFPROは、その役割から7名の選手生命を守るための声明を発表していますが、FIFAによる調査結果云々の前に、そもそも7名全員が自身の口からマレーシアにルーツを持っていることを公的に認めていない時点で、おそらくその事実はないのだろうとない推測できます。となると7名がマレーシア代表選手としてプレーする資格を得るための書類を提出する点で、全員が自分の祖父母の出生地を証明する書類が偽装されることは理解していたはず。それを横に置いての選手の権利の主張は、話題のすり替えにしか思えないのですが、この問題まだまだ解決には時間がかかりそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節 試合結果とハイライト映像<br>・ジョホールは8試合ぶりの失点を喫するもマラッカを粉砕し開幕から10連勝<br>・ヌグリ・スンビランはルクマン・ハキムの初ゴールを守れず10人のトレンガヌと引き分け<br>・クチンは今季初の2位、DPMMは2度のVARに泣く

今年最後のFIFA国際マッチデーも終わり、国内リーグが再開し、11月21日から24日にかけて第10節を迎えています。

今節は首位を独走するジョホールが開幕から10連勝する一方で、上位進出を狙うトレンガヌとヌグリ・スンビランが引き分けるなど、ジョホール以外のチームが互いに潰し合い、今節2位に浮上したクチン・シティとジョホールの勝点差が既に10と大きく開いてしまっています。

なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はクアラルンプール・シティFCの試合はありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。


ジョホールは8試合ぶりの失点を喫するもマラッカを粉砕し開幕から10連勝

国籍偽装が疑われているヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)3名が12ヶ月間の出場停止処分を受けたジョホール・ダルル・タジム。しかし国内での無双状態は相変わらずで、今節では今季未勝利の相手に7ゴールを挙げて大勝しています。

開始6分にDFホナタン・シウバの今季初ゴールで先制したジョホールでしたが、その後はマラッカを圧倒するも、前半はベルグソンの32分のゴールと合わせて2点のみで終了します。

しかし後半開始とともにヘベルチ・フェルナンデス、テト・マーティンが立て続けにゴールを決めると、ベルグソンもこの試合2試合目のゴールを決めて、自身の持つリーグ最多ゴール記録を116に伸ばします。

終わってみれば、ベルグソンの他にもヘベルチ、マーティンもこの試合2ゴールを挙げたジョホールがマラッカを粉砕しています。

マラッカは86分にセンターサークル付近で相手のボールを奪ったアジム・ラヒムが、ジョホールGKシーハン・ハズミが前に出ているのを見て、そのまま超ロングシュートを放つとシーハンは戻りきれず、ボールはそのままゴールイン。ジョホールにとっては8試合振りの失点となりましたが、所詮は焼け石に水でした。

この試合で気になったのは、11月18日に行われたアジア杯2027年大会予選ネパール戦で先発しながらハムストリングを痛めて10分足らずで交代したアリフ・アイマンがベンチ外だったこと。試合後の会見では、ジョホールのシスコ・ムニョス監督もアリフ選手のケガについて明言を避けていましたが、復帰までには数週間を要するとも報じられています。現在、ジョホールはACLエリートでは2勝1分1敗でヴィッセル神戸に次ぐ2位につけており、来週11月25日にアウェイのメルボルン・シティ戦が予定されています。しかしこの状況下では、勝点差1で迫るメルボルンとの試合に「マレーシアの至宝」が出場することはなさそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月21日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジム 7-1 マラッカ
⚽️ジョホール;ホナタン・シウバ(6分)、ベルグソン・ダ・シウバ2(32分、58分)、ヘベルチ・フェルナンデス2(48分、89分)、テト・マーティン2(49分、66分)
⚽️マラッカ:アジム・ラヒム(86分)
MOM:ベルグソン・ダ・シウバ(ジョホール・ダルル・タジム)


ヌグリ・スンビランはルクマン・ハキムの初ゴールを守れず10人のトレンガヌと引き分け

2019年にマレーシアで開催されたAFC U16選手権(現AFC U17アジア杯)で得点王を取った活躍が認められ、マレーシア人オーナーのベルギー1部のKVコルトレイクと5年契約を結んだものの、昨季ローン移籍で在籍した横浜Y.S.S.Cも含め、この間は十分な出場時間を得ることができなかったルクマン・ハキム。その契約も終わり、今シーズンからマレーシアに戻っています。シーズン当初こそ試合感不足やマッチフィットネスに問題もあってか、なかなか先発出場がありませんでしたが、ここ3試合ではいずれも先発XIに名を連ねています。

この試合では開始からトレンガヌDFを翻弄したルクマン選手ですが、12分にはミャンマー代表のトレンガヌDFチョー・ミン・ウーがそのルクマン選手を自陣ペナルティエリア手前で倒してしまいます。主審はイエローを出しましたが、VARが入って1発レッドとなり、トレンガヌは10人となってしまいます。

そんなルクマン選手がスーパーリーグ初ゴールを記録したのは前半アディショナルタイムでした。右サイドのアン・サンスからのクロスを頭で合わせたシュートが決まり、このゴールでヌグリ・スンビランが先制し、そのまま前半を1-0とリードして折り返します。

しかし試合は最後にドラマが待っていました。後半の90分を過ぎたアディショナルタイムに、11月18日のアジア杯予選ネパール戦にも出場した若きDFウバイドラー・シャムスルがヌリロ・トゥカタシノフのパスに抜け出し、ヌグリ・スンビランDFを交わして同点ゴール!

土壇場の同点ゴールで引き分けたトレンガヌは貴重な勝点1を獲得、一方のヌグリ・スンビランは、数的有利を活かしきれませんでした。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月22日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビラン 1-1 トレンガヌ
⚽️ヌグリ・スンビラン:ルクマン・ハキム(45+7分)
⚽️トレンガヌ:ウバイドラ・シャムスル(90+3分)
MOM:ウバイドラ・シャムスル(トレンガヌ)
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手は先発してフル出場、常安澪選手は後半開始から出場して、試合終了までプレーしています。


クチンは今季初の2位、DPMMは2度のVARに泣く

今季リーグ戦では首位のジョホール以外に敗れていないクチン。直近の6試合でも4勝2敗と好調を維持しています。一方、今季からマレーシアリーグ参戦のブルネイDPMMは今季ここまで1勝と、戦前の予想は圧倒的にクチン有利とされていました。

開始から主導権をつかんだのはクチンでしたが、10分にはDPMMのミゲル・オリベイラがゴール!しかしこれはVARが入って認められませんでした。結局、前半は両チームとも無得点で折り返します。

後半の69分には代表に招集されるなど今季好調のラマダン・サイフラーがペナルティエリアの手前から豪快に蹴り込み、それまでクチンの攻撃の前に立ちはだかっていたDPMMの196cmの巨漢GKミシェルを脇をすり抜けてゴールとなり、ついにクチンが先制します。

しかしこの試合もこのまますんなりとは終わりませんでした。アディショナルタイムにコーナーキックを得たDPMMは、アマニ・アギナルドからのボールをプロスパー・ボアキエがゴール前の混戦の中でボールを押し込み劇的な同点ゴール!DPMMが一旦は同点に追いついたかに見えましたが、ここで再びVARが介入。このゴールも取り消しとなり、逃げ切ったクチンが、今節試合のないクアラルンプールと勝点で並び、得失差で2位に浮上しています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月22日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチン・シティ 1-0 DPMM
⚽️クチン・シティ:ラマダン・サイフラー(69分)
MOM:ペトラス・シテムビ(クチン・シティ)
クチン・シティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。


スランゴールは連勝で4位浮上

スランゴールの先制ゴールは20分でした。自陣のクエンティン・チェンからの絶妙なロングフィードを受けたアルヴィン・フォルテスが落ち着いて相手GKを交わし、シュートを決めます。

後半の50分にはそのフォルテスのフリーキックがポストに当たって跳ね返ったところをエースのクリゴール・モラエスが押し込んでスランゴールに追加点が入ります。追いかけたいクランタンでしたが、60分にはアブドル・シセイがボールを競ったスランゴールDFハリス・ハイカルにファウル。いったんはイエローだったもののVARの介入でこれがリッドとなり1発で退場となってしまうと、このままスランゴールが2点のリードを守って連勝を果たしています。

この日の勝利で引き分けを挟み3連勝となり4位に浮上したスランゴールは、来週末のFAカップ準決勝1stレグ、サバ戦にも弾みをつけています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月23日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 2-0 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズ
⚽️スランゴール:アルヴィン・フォルテス(20分)、クリゴール・モラエス(50分)
MOM:アルヴィン・フォルテス(スランゴール)


イミグレセンが5ゴールの大勝で今季2勝目

今季1部に初昇格を果たしたイミグレセンが前節の初勝利に続き連勝しています。

前節の「ペナンダービー」でペナン相手に昇格後初勝利を挙げ、続いてホームでの初勝利を目指すイミグレセンに対し、給料未払い問題によりリーグからの警告を受けたことが明らかになったPDRMの対戦は、モチベーションの差が現れた試合となりました。

前半の2ゴールでリードを奪ったイミグレセンは、後半に入っても先制ゴールをアシストした司令塔エルヴィス・カムソバが自身で2ゴール決めるなど絶好調で、この試合のMOMにも輝いています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月24日@ペナン州立スタジアム(ペナン州バトゥ・カワン)
イミグレセン 5-0 PDRM
⚽️イミグレセン:ファズルル・ダネル(19分)、ジョアン・ペドロ(38分)、エルヴィス・カムソバ2(74分、77分)、ファイヤド・ズルキフリ(90分)
MOM:エルヴィス・カムソバ(イミグレセン)


過去3季連続3位のサバが9試合目にして今季初勝利

過去3シーズンいずれも3位と安定して成績を残していたサバは、2021年から指揮をとっていた元マレーシアU23代表監督オン・キムスウィ氏(現インドネシア1部プルシク・クディリ監督)との契約をなぜか延長しませんでした。そして迎えた今季は8試合を終えて4分4敗とここまで未勝利で13チーム中の12位と低迷しています。

一方のペナンもここまで1勝2分5敗の成績で10位と下位に沈んでおり、両チームに共通するのは8試合で5得点という深刻な得点力不足です。

先制したのはペナンでした。17分にディラン・ウェンゼル=ホールズのゴールでリードを奪います。しかしサバもその5分後にアジディン・ムヤギッチのゴールですぐさま同点に追いつきます。しかし39分にはウェンゼル=ホールズがこの試合2点目のゴールを決め、前半はペナンがリードして終了します。

しかしサバは後半の56分にジャフリ・フィルダウス・チュウのゴールで同点に追いつくと、71分には代表DFダニエル・ティンが決勝ゴールを決めて、今季初勝利をホームのサポーターの前で果たしています。

この結果、サバは12位から9位と順位を上げるとともに、今週末のFAカップ準決勝1stレグのスランゴール戦に向けて勢いをつけています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月24日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバ 3-2 ペナン
⚽️サバ:アジディン・ムヤギッチ(22分)、ジャフリ・フィルダウス・チュウ(56分)、ダニエル・ティン(70分)
⚽️ペナン:ディラン・ウェンゼル=ホールズ2(17分、39分)
MOM:ジェフリ・フィルダウス・チュウ(サバ)
ペナンの鈴木ブルーノ選手は83分から出場し、試合終了までプレーしています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第10節終了)

チーム勝点
1ジョホール1010005545130
2クチン96211941620
3クアラ・ルンプール86201641220
4スランゴール95131610616
5トレンガヌ94232115614
6ヌグリ・スンビラン93421714313
7クランタン10325918-911
8イミグレセン92341117-69
9サバ9144820-127
10PDRM9135827-196
11ペナン9126719-125
12DPMM9126629-235
13マラッカ7034416-123

2025/26スーパーリーグ得点トップ10(第10節終了)

得点選手名所属
112ベルグソン・ダ・シウバジョホール
210ジャイロ・ダ・シウバジョホール
37アリフ・アイマンジョホール
7ロナルド・ンガクチン
56ヤン・マベラトレンガヌ
6ジョアン・フィゲイレドジョホール
6ヨヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
6クリゴール・モラエススランゴール
95サファウィ・ラシドクアラルンプール
5ジョセフ・エッソヌグリ・スンビラン
5ラマダン・サイフラークチン

11月22日のニュース<br>最新FIFAランキング発表:マレーシアは20年ぶりとなる116位に上昇<br>・国籍偽装問題:FIFAは文書改ざんに関わったマレーシアサッカー協会職員の発言を公表<br>・FIFAの文書で「コンサルタント」と自称したとされた代表チームCEOはこれを否定

ウィキペディアに「マレーシアサッカー帰化スキャンダル」(原文は英語です)という記事が登場しています。しかも丁寧に英語とマレーシア語の両方が作成されるなど手が込んでいます。現在マレーシアサッカーを揺るがしているヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題についての資料などもまとめられていて、この問題の概要を理解するには便利な記事となっています。

この国籍偽装疑惑問題についてマレーシアのアンワル・イブラヒム首相もコメントを出しています。現在アフリカ諸国を公式訪問中のアンワル首相は訪問先の南アフリカでの会見の際にこの国籍偽装疑惑問題について問われると、FIFAによるマレーシアサッカー協会(FAM)に対する強い非難は軽視できるものではないと述べ、政府も調査しており、この事件を隠蔽しようとするつもりはないと答えています。さらに多くの人々が直ぐに結果を求めるのは理解できるが、我々(政府)が何も行動していないという批判は当たらず、通常の手続きを経て捜査を進めなければならい」と答えたということです。

またマレーシア政府青年スポーツ省も、FAMに対しては、独立調査委員会の調査終了まで、政府による金銭的支援を一時的に停止することを発表、さらにFAMがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴する場合の費用については、政府からの金銭的支援は行わず、すでに提供済みの1500万リンギ(およそ5億7000万円)の政府資金をこれに流用することも禁じると発言しています。

最新FIFAランキング発表:マレーシアは20年ぶりとなる116位に上昇

11月20日に最新のFIFAランキングが発表され、マレーシアは前回10月の発表から2ランクアップした116位となっています。マレーシアが最後に116位だったのは、2005年11月でしたので、今回は実に20年ぶりの達成となります。

今年4月の時点では131位だったマレーシアは、11月18日に行われたアジア杯2027年大会予選でのネパール戦に勝利したことで、2025年は9試合で8勝1分と無敗で終えています。

なお東南アジアの他国のFIFAランキングは、タイが域内1位で95位(1ランクアップ)、2位がベトナムで111位(1ランクアップ)、3位のマレーシアに続くのは4位インドネシアが122位(変動なし)、5位フィリピンが136位(5ランクアップ)、6位シンガポールが151位(4ランクアップ)、以下ミャンマー163位(変動なし)、カンボジア179位(変動なし)、ラオス187位(1ランクアップ)、ブルネイ189位(4ランクダウン)、東ティモール198位(1ランクダウン)となっています。

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20年ぶりの116位、さらに2位ベトナムとは5ランク差とその背中も見えてきていますが、素直に喜ぶことはできません。今年4月の131位からの大躍進は、国籍偽装疑惑によりFIFAから12ヶ月間の出場停止処分を科されている7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の活躍による部分が大きいからです。ベトナム戦11年ぶりの勝利となった今年6月のアジア杯予選では先制点をジョアン・フィゲレイド(ジョホール・ダルル・タジム)、2点目をロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリと契約解除)が挙げるなど、彼らがいなければ同じ結果とはなっていなかったはずです。AFCは、マレーシアサッカー協会(FAM)がFIFAの裁定についてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴するとしていますが、後述する諸々の状況からFAMが望むような判決が出るとは考えにくく、その判決に基づき7選手が出場した試合結果をAFCが全て無効にする可能性も高いです。その試合で得たFIFAランキングポイントも消失し、マレーシアは一気にランクを下げることになりそうです。


国籍偽装問題:FIFAは文書改ざんに関わったマレーシアサッカー協会職員の発言を公表

ヘリテイジ帰化選手がマレーシアにルーツを持つことを示す証拠となる出生証明書について、マレーシアサッカー協会(FAM)の事務局職員が文書の改ざんを認める発言をしていることが明らかになりました。

国籍偽装疑惑を持たれている7名のヘリテイジ帰化選手は、いずれも祖父母がマレーシアで生まれたことを根拠にマレーシア国籍を取得し、マレーシア代表でのプレーが可能になりましたが、その根拠となったのが祖父母の出生証明書です。7名の祖父母に該当する人物の出生証明がマレーシア国内では見つからなかったことから、FAMはブラジルやアルゼンチン、スペインからその祖父母の出生証明書を取り寄せました。またマレーシア政府国民登録局は、その出生証明書の正当性に審査を行い、7選手にはマレーシア国籍が与えられました。

しかし11月18日にFIFAが裁定の根拠を説明を文書で公表しましたが、その中ではFAM事務局の職員が国民登録局の審査を待ちきれないどこかからの圧力を受けた結果、国外から取り寄せた出生証明書に「調整作業(=改ざん)」を行なったことを認める発言をしていることが公表されています。

FIFAの書類の中では、この出生証明の改ざんについては、現在FAM理事会から無期限の職務停止処分を受けているノー・アズマン事務局長が感知しないところで行われたと、FAMは主張しているということです。(ではなぜFAMはノー・アズマン事務局長を職務停止にしたのか、という疑問は湧きますが。)

またFAMは、7名のヘリテイジ帰化選手はこの出生証明の改ざんについては何も知らなかったとも主張しているということですが、FIFAはFAMと7選手への裁定には何の変更もないとしています。

またFIFAはノー・アズマン事務局長の「FAMの事務局職員が、FIFAに提出する資格審査用ファイルを作成する過程で、出生証明書や関連書類の一部コピーを扱い、形式を整え直したことは認識している」という発言や、「その中には、代理人から提供された証明書の内容が変更されたものも含まれていました。これらの作業は事務的な手続きであり、公的に認証されたコピーを置き換えたり、正式な確認手続きを代替したりする意図は決してなかった」といった発言も公開しています。

なおFAMは、FIFAの規律規定の第22条(文書の偽造および改ざんを扱う条項)は裁量的なものであり、必ずしも協会の責任を自動的に生じさせるものではないと、控訴委員会に対して弁明し、さらにこの不正行為は「協会が許可しておらず、また独立したものであり、組織的なものでもなければ、制度を不正に利用しようとする意図的な試みでもない。またマレーシアのルーツを捏造したり、資格規定を迂回するような計画もなかった」とも主張していました。

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FIFAの規定では、親または祖父母がその国で生まれていれば、選手はその国を代表できることから、FAMは国籍偽装が疑われる7選手について、その祖父母はマレーシア出身であるという文書をFIFAに提出し、FIFAは一旦はこれを認めたため、7選手はアジア杯予選などに出場しました。

その7選手とは、ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェルです。

しかし、その後のFIFAによる調査では、「選手の祖父母はマレーシア出身」というFAMが提出した文書とは異なり、原本記録から7選手の祖父母全員がマレーシア国外のスペイン、アルゼンチン、ブラジル、オランダ生まれであることを突き止められたことが公表されています。この結果、FIFAがFAMに科した35万スイスフラン(およそ6800万円)の罰金、7選手に科した2,000スイスフランの罰金と、あらゆるサッカー活動から12カ月の出場停止処分が確定しています。

さらにFIFAは、FAMが控訴委員会に対して行なった裁定の控訴を全面的に棄却しさらマレーシア代表は2027年アジア杯予選で試合結果が無効となり、勝点剥奪の可能性があると警告しています。

一方のFAMはFIFAから文書による裁定の根拠の説明を受け取った後、この件をスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ持ち込むとしています。


代表チームCEOは自身が「コンサルタント」ではないと主張

本当のことを言っているのは誰なのか。

マレーシア代表チームのCEOを務めるカナダ出身のロブ・フレンド氏は、FIFAの文書の中で自身が「コンサルタント」とされていることについて、これを否定しています。

国籍偽装が疑われている7名のヘリテイジ帰化選手とマレーシアサッカー協会(FAM)への処分について、FIFAはその根拠を詳細に述べた文書を公表していますが、その中でフレンド氏が自信を「自国カナダをベースとし、代表戦の時だけチームに合流する『コンサルタント』」と説明したという記述があり、フレンド氏はこれまで代表チームのCEOとFAMが公表していたことから、マレーシアサッカーファンの間で大きな波紋を広げています。

FIFAによる聴聞会では、自身の役職をマレーシア代表のCEOと述べた、と英字紙ニューストレイツタイムズに説明したフレンド氏は、誤解の原因は自身の代表チームとの関係性を説明した際に法律上の関係を述べたからだと説明にならない説明を述べています。

アジア杯2027予選:マレーシアはネパールに辛勝も予選5連勝で首位堅守-年間成績も7勝1分の無敗で終える

アジア杯2027年大会3次予選もいよいよ第5節。今節では予選E組のシリアと同C組のシンガポールがグループ首位を確定させて本大会出場を決めています。仲村京雅選手も先発した11月18日の香港戦に勝利したシンガポールは1984年大会以来2度目の出場となりますが、1984年大会は開催国としての出場で、予選突破による出場は初となります。


マレーシアが入る予選F組は、第4節を終えて4勝のマレーシアが首位、3勝1敗のベトナムが2位となっています。国籍偽装疑惑問題で主力のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名を欠くマレーシアは今節ではネパールと対戦しました。この試合は本来、ネパールで行われる予定でしたが、AFCの視察後に試合会場予定のスタジアムの使用が認められなかったことから、会場をクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場へ移し、ネパールのホームゲームとして行われました。

この試合の両チームの先発XIは以下の通り。いつもなら公表される先発XIとベンチ入りメンバーについて、この試合ではなぜかマレーシアサッカー協会(FAM)、マレーシア代表いずれの公式SNSでも発表はありませんでした…。

前節10月のラオス戦からは、ケガから復帰のDFマシュー・デイヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジム)が復帰した他、FWサファウィ・ラシド(クアラルンプールシティ)とMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が、それぞれFWロメル・モラレス、MFアフィク・ファザイル(いずれもジョホール・ダルル・タジム)に代わって先発しています。

7名のヘリテイジ帰化選手不在でも予選F組前節の3位ラオス戦では5-1と圧勝した首位マレーシアにとって、ここまで0勝4敗、得点2失点8の4位ネパールは難しい相手ではないはずでした。しかし、開始8分で若きエース、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)がハムストリングの肉離れで途中退場するアクシデントがマレーシアを襲います。それでもマレーシアはラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジム)、ディオン・クールズ(セレッソ大阪)の左右SHを中心に攻めますが、ネパールもGKゴール前にボールを送りますが、ネパールGKキラン・クマル(バングラデシュ1部バングラデシュ警察FC)の好守や、ほぼ全員が自陣ゴール前を固める戦術の前に、結局、ゴールを挙げることができず、前半は両チーム無得点で終了します。

後半に入っても膠着した展開の中、やはり頼りになるのはこの人でした。アリフ・アイマンに代わって入っていたファイサル・ハリム(スランゴール)が、サファウィ・ラシドのパスに合わせて抜け出すとDFを振り切り、一気にゴール前までドリブルで上がりシュート。これが決まって55分にマレーシアが先制します。

その後もマレーシアは徐々にペースを上げて行きますが、追加点が奪えなかった90分に、ネパールのMFラケン・リンブ(カンボジア1部キリヴォン・ソク・セン・チェイFC)が自陣ゴール前でハリス・ハイカルを倒してしまい、この日2枚目のイエローをもらい退場、マレーシアはPKを獲得します。しかしこのPKをパウロ・ジョズエ(クアラルンプール・シティ)がポストの上に大きく外してしまいます。

しかしアディショナルタイムの3分を守り切ったマレーシアが1点のリードで逃げ切って5連勝でF組の首位を守るとともに、2025年の通算成績も7勝1分と無敗で終えています。

AFCアジア杯3次予選F組第4節
2025年11月18日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
ネパール 0-1 マレーシア
⚽️マレーシア: ファイサル・ハリム(55分)

この試合のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeチャンネルより。

マレーシアを勝点差3で追うベトナムは、翌日の11月19日にラオスと対戦しています。今年1月のアセアン選手権で骨折していた元Jリーグ仙台のブラジル出身FWグエン・スアン・ソンことラファエルソンが復帰、出場した後半にはPKを挙げるなどし、ラオスを2-1で破ったベトナムは来年3月のマレーシアとの最終節での対戦に逆転でのF組首位突破の可能性を残しています。


アジア杯2027年大会3次予選F組順位(第5節終了)

順位チーム勝点
1マレーシア55001511415
2ベトナム5401115612
3ラオス5104316-133
4ネパール400429-70

*****

予選の5試合全勝のマレーシアは、最終第6節のベトナム戦で敗れても3点差以内であればF組の首位を守って、再来年2027年のアジア杯に出場が決定します。しかし、その前には国籍偽装に関するFIFAの裁定に基づく、AFCによるマレーシアサッカー協会(FAM)への処分が出される可能性があります。W杯2018年大会兼アジア杯2019年大会予選で、ブラジル出身の選手に国籍偽装をさせて試合に起用した東ティモールは、国籍偽装を行った選手が出場した試合は全てが無効試合となっただけでなく、アジア杯2023年大会予選への出場禁止処分を受けています。もしAFCが同様の処分を下せば、アジア杯2027年大会への夢が潰えるだけでなく、マレーシアサッカーにとっては100名を超える選手と監督、コーチが捜査を受け、79名が出場停止(うち21名は永久追放処分)を受けた1994年「八百長騒動」以来のスキャンダルとなります。マレーシアサッカーはこの八百長騒動から立ち直るのに多くの時間を費やし、その間にFIFAランキンは下落の一途を辿りましたが、あの悪夢が再来する可能性は否定できないだけに、ネパール戦に勝利した選手たちも心の底から喜ぶことはできていないかも知れません。

11月18日のニュース<br>・辞任の噂をクラモフスキー監督自ら否定<br>・国籍偽装問題:FIFA控訴委員会が処分決定の理由を公表<br>・国籍偽装問題:FIFAはマレーシアサッカー協会の内部運営も調査か<br>・国籍偽装疑惑:FIFAはアルゼンチンやスペイン当局に文書偽造の調査を勧告

辞任の噂をクラモフスキー監督自ら否定

昨日のこのブログでも伝えたマレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督辞任の噂ですが、これをクラモフスキー監督自身が否定しています。

本日11月18日キックオフの2027アジア杯予選ネパール戦の試合前会見が行われ、その席上でこの噂を尋ねられたクラモフスキー監督は、キッパリと否定し、現在の契約が満了となる2026年末までマレーシア代表を指揮する意向を明らかにしています。

会見でクラモフスキー監督は、勝点3を獲得して予選F組首位の座を維持することでサポーターからの信用を得られるだろうと述べる一方で、アジア杯出場に向けては、一歩一歩積み上げていくことが重要であり、現在は明日(11月18日)の試合に向けて集中していると述べています。

11月10日からの代表合宿を経てネパール戦に向けてできる準備は全て行なったと述べたクラモフスキー監督は、11月13日に行なった親善試合でバングラデシュとの試合を2−2と引き分けたネパールは高いモチベーションで臨んでくるとして、楽な試合とはならないと考えていると話しています。

しかしマレーシア代表もケガから復帰のマシュー・デイヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジム)やファイサル・ハリム(スランゴール)など全員が先発できる状態にあるとして、誰を起用するかに頭を悩ませていると話す一方で、サポーターにはこのチームを誇りに思ってもらえるようなサッカーを見せたいと意気込んでいました。


国籍偽装問題:FIFA控訴委員会が処分決定の理由を公表

FIFAの控訴委員会は、7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の国籍偽装のための文書偽造問題に関してマレーシアサッカー協会(FAM)と7選手に対する処分を維持する決定の理由を明らかにしています。

FIFAは11月18日に公式サイトを通じて、11月3日に発表されていた控訴委員会の決定に関する64ページにわたる詳細な報告書を公開しています。

FIFAの調査によると、FAMがFIFAに提出した書類には7選手の祖父母をマレーシア生まれと記載していたが、スペイン、アルゼンチン、ブラジル、オランダから入手した記録により、彼らが関係国で生まれたことが証明された。

さらにFAMは矛盾した文書を提出、ルーツについても不当な主張をしながら、FIFAから繰り返し説明を求められたにもかかわらず適切な調査を行わなかったと告発されています。

偽造された文書は、7名の選手たちがマレーシア代表として試合に出場する上で重要な役割を果たし、その結果、6月のアジア杯予選ベトナム戦に4-0で勝利した試合では、7選手の内2選手が得点を挙げて勝利に貢献しとしています。

また控訴委員会は調査結果の中で、偽造はマレーシアに「不当な利益」を与えたと述べ、偽造は軽微なもの、あるいは単に事務上の問題であるというFAMの主張を完全に否定しいます。

控訴中、FAMはFIFAに対し、事務局長が一時的に職務停止処分を受けた他、ラウス・シャリフ元最高裁判所長官が率いる独立委員会が国内でこの問題を調査するために任命されたと伝えていましたが、FIFAの上訴委員会は、処分を覆す、あるいは軽減する根拠はないとの結論を下し、FAMの対応は誠実さを損ねるものだと主張しています。

9月にFIFAの規律委員会はFAMに35万スイスフラン(およそ6800万円)の罰金を科し、7人の選手にもそれぞれ2,000スイスフラン(およそ39万円)の罰金と12か月間のあらゆるサッカー関連活動からの出場停止処分を科しています。

今回処分を受けた7選手はスペイン出身のガブリエル・パルメロとジョン・イラサバル、アルゼンチン出身のファクンド・ガルセス、ロドリゴ・ホルガド、イマノル・マチュカ、ブラジル出身のジョアン・フィゲイレド、そしてオランダ出身のエクトル・ヘヴェルで、いずれの選手も祖父母がマレーシア国内生まれだとして、マレーシア国籍を取得した上でマレーシア代表として試合に出場しています。


国籍偽装問題:FIFAはマレーシアサッカー協会の内部運営も調査か

マレーシア語紙ブリタ・ハリアンによると、ヘリテイジ帰化選手7名が関与した文書偽造問題を受けて、FIFAはマレーシアサッカー協会(FAM)の内部運営について調査を行うようです。

FIFAの控訴委員会が11月18日に発表した64ページにおよぶ報告書では、控訴委員会は、提出された証拠と事件の審理結果に基づき、FIFA規律規定第30条、第35条、第55条(1)(f)および第55条(2)に従ってさらなる調査を開始する強力な根拠があると判断したと書かれているということです。

「この規定は控訴委員会に対して、不正行為のあらゆる側面またはその影響が十分に調査されることを保証する権限を与えている。この点に関して、控訴委員会は控訴委員会の事務局に対し、FAMの内部活動に関する正式な調査を開始するために直ちに措置を取るよう指示した。」

「この調査は、文書偽造の責任者を特定し、FAMのコンプライアンス体制と内部統制の妥当性と有効性を評価し、FAM職員に追加の懲戒処分を課すべきかどうかを判断することを目的とする。」

控訴委員会が発表した報告書の中で、「最初の調査対象として、FAMノー・アズマン事務局長(現在は職務停止処分中)と、今回の手続きで名指しされた2人の代理人、ニコラス・プッポとフレデリコ・モラエスの役割を検証する必要がある。彼らの関与は深刻な懸念を提起しており、徹底的な調査が必要だ」と新たに2名の代理人の名前が挙げられています。これはFAMによる会見では全く上がらなかった名前です。また今回の文書偽造の責任を負うべき個人あるいは団体が特定できないことにFIFAはFAM構造上の問題を指摘しています。


国籍偽装疑惑:FIFAはアルゼンチンやスペイン当局に文書偽造の調査を勧告

またFIFA控訴委員会の報告書では、マレーシア代表の7名のヘリテイジ帰化選手が関与した文書偽造疑惑は、該当国で裁判にかけられるべきだと考えており、関係5カ国にこの「犯罪」の調査を勧告しています。

「公文書の偽造という『犯罪』の性質と重大性を考慮し、控訴委員会は事務局に対し、ブラジル、アルゼンチン、オランダ、スペイン、マレーシアの管轄の刑事当局に通知するための適切な措置を講じるよう指示する。」

「偽造は刑事犯罪であり、適切な捜査と刑事訴訟が行えるよう当局に通知することが重要だ」とFIFAの報告書には記されています。