9月27日のニュース
なかなか一筋縄ではいかない給料未払い問題関連2題
スランゴールのタン監督就任は皇太子からの電話が決め手

マラッカ州サッカー協会が来季のマラッカ・ユナイテッドの運営を発表

マラッカ州サッカー協会MUSAは臨時総会を開き、選手や監督、コーチらへの給料未払い問題を抱えるMリーグ1部スーパーリーグのマラッカ・ユナイテッド(以下マラッカ)の運営を行うことを発表しています。

マレーシアの通信社ブルナマによると、MUSAのヌル・アズミ会長の話として、MUSAがマラッカの運営会社の株式40%を、残る60%を今後発表される4つの会社が保有し、共同でクラブを運営していく計画だということです。

「この計画はマラッカが来季もスーパーリーグでプレーすることを目的としており、現在、クラブが抱えている未払い給料問題の解決に向けてMUSAとして何ができるかを理事会のメンバーと関係者とで模索し、最善方法を見つけたい。」と話したヌル・アズミ会長はこの日の臨時総会で、マラッカ州首相でMUSA会長を兼任していたスライマン・モハマド・アリに代わって会長に任命されています。

また給料未払い問題について問われたヌル・アズミ会長は、問題解決のためにMUSAのジャスティン・リムCEOと話し合いを持つ予定があると述べています。このリムCEOは、現在のマラッカ運営会社のオーナー、ケンチーム社のオーナーでもあります。なお、この話し合いでは未払いとなっている所得税と授業員積立金EPF、総額およそ60万リンギ(およそ1880万円)についても取り上げられると言うことです。

ヌル・アズミ会長は、ケンチーム社は未払いとなっていた6月からの3ヶ月分の給料ではなく、1ヶ月分の給料しか未だ払っておらず、Mリーグを運営するMFLが設けた期限までにこの問題が解決できなかった結果、マラッカはMFLによりマレーシアカップ出場権を剥奪された経緯を説明し。このケンチーム社に代わってMUSAが問題解決に取り組むことを明らかにした上で、そのためには時間がかかることを理解するようサポーターに求めています。

ゴム手袋製造メーカーのケンチーム社は、昨年2021年4月にマラッカの運営会社の株式70%を取得してオーナーとなり、残る30%をMUSAが保持していました。

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FIFAの指導を受けたマレーシアサッカー協会FAMは、これまで各州のサッカー協会(FA)が州政府からの公金を使って運営してきたMリーグクラブの民営化を進める「FAからFCへ」という動きを進めており、2024年までにこれを完了する予定としています。この動きにより多くのMリーグクラブが州FAから独立する形で民営化を進めていますが、今回のマラッカ州サッカー協会MUSAによるマラッカ・ユナイテッドの株式保有率増加は、この動きに逆行する形となっています。州政府が関与する州サッカー協会が運営の比率が高まれば、クラブの公的資金依存の体質は改善せず、FAMの目指すクラブのFC化の実現は遠のいてしまいます。未払い給料問題が年間行事のように発生しているマラッカ・ユナイテッドへのMUSAの関与が一時的なもののなのか、今後も続いていくものなのかはこの記事では明らかになっていませんが、これはマレーシアでのFC化の実現の難しさを示す実例と言えるでしょう。

サラワク・ユナイテッドの前監督はMFLに給料未払い問題の調査を依頼

マラッカ・ユナイテッド同様、給料未払い問題を抱えていたMリーグ1部スーパーリーグのサラワク・ユナイテッド(以下サラワク)は、Mリーグを運営するMFLの設定した期限までに未払い給料の分割払いについて選手や監督、コーチらとの合意に達したことを発表、MFLもこれを承認し、マレーシアカップ出場権の剥奪処分を逃れています。

しかし、今年6月にガン治療を理由に監督を辞任していたB・サティアナタン氏は、クラブの主張とは異なり、未払い給料支払い方法などについて合意に達しておらず、MFLに対して詳細の調査を求めていると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています

サラワクのテクニカル・ディレクターだったサティアナタン氏は、E・エラヴァラサン監督がマレーシア代表のコーチに就任したことから、今季開幕前にサラワクの監督に就任しましたが、クラブと合意の上で今季途中の6月12日に健康上の理由から監督を自信していました。

「6月の辞任後、未払いとなっていた2021年の給料と今年2022年の2月から6月までの給料の支払いをクラブに求めたが、未だにを受け取っていない。さらに辞任の理由となったガン治療のために検査を受けた際には、クラブとの契約条件に含まれていた医療保険の保険料が支払われていないことも判明し、治療費の負担を強いられた。」と説明しています。さらにサティアナタン氏は、クラブがサティアナタン氏の支払い要求に応じていないことから、現在は弁護士を通じて訴訟を起こす準備をしていることも説明しています。

マレーシアサッカーコーチ協会の会長も務めるサティアナタン氏は「自分はクラブとの間で未払い給料の分割払いに合意する書類に署名しておらず、MFLには、クラブが提出した未払い給料に関する報告の内容の詳細を調査してもらいたい。クラブは未払い給料問題の解決を主張しているが、現時点では解決していない。」とのべて、MFLに調査を求めています。

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このサティアナタン氏の主張に対し、MFLは「選手らへの未払い給料の問題と(既にクラブを退団している)サティアナタン氏の未払い給料問題は『別の問題』である」という声明を発表しています。さらにMFLはクラブとサティアナタン氏の間の問題については審査の権限を持たないと説明し、両者による話し合いで解決しない場合には、サティアナタン氏はFAMのステータス委員会に審査を求めべきとしています。そしてステータス委員会での審査結果が出た段階で、MFLはその結果に基づいてサティアナタン氏の支援を行うことができると説明しています。

スランゴールのタン監督就任は皇太子からの電話が決め手

Mリーグ1部スーパーリーグのスランゴールFC(以下スランゴール)に前代表監督のタン・チェンホー氏が就任したことは、このブログでも取り上げましたが、監督就任の決め手となったのはスランゴール州サッカー協会会長でもあるスランゴール州皇太子のトゥンク・アミル殿下からの一本の電話だったことを、英字紙ニューストレイトタイムズとのインタビューで明らかにしています。

トゥンク・アミル殿下からの電話では、クラブが目指す方向性だけでなく、監督就任の際の契約条件などの説明も受けたと話したタン氏は、その電話で就任オファーを受けることを受諾したと話しています。

「トゥンク・アミル殿下は、スランゴールを次のレベルへと高める仕事を自分に託したいと述べてくれた。国内では最大クラブの一つであるスランゴールで仕事をすることは大きなプレッシャーもかかるが、名誉なことでもある。そして最も重要なことは、自分はその準備ができていると思っていることである。多くのコーチがスランゴールの監督になることを望んでいる中で。監督に就任したことは素直に嬉しい。」と述べたタン新監督は、代表監督辞任後もMリーグの試合を見続けており、スランゴールには質の高い選手が多いものの、安定感がないと言う問題を指摘し、まずはその問題を修正することから取り組みたいとしています。

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スランゴールの今季のリーグ戦は残り4試合で、リーグ戦後に開幕するマレーシアカップがタン監督の手腕を披露する場となりそうです。マレーシアカップ最多優勝33回を誇るかつての強豪も、マレーシアカップは2015年を最後に、リーグ戦は2010年を最後に優勝していません。近年は低迷が続き、特に今季はここまで18試合で5勝5分8敗、得点31失点32の8位と、首位のJDTからは勝点で23も離されてます。