KLシティFCのマレーシアカップ優勝の興奮が冷めやらぬ中、多くのクラブが来季に向けて動き始めています。マレーシアでは一般に選手とクラブの契約は11月末までとなっており、前所属クラブとの契約満了を待って、次が変わった12月から続々と新加入選手の発表が行われそうです。
KLシティFCのマレーシアカップ優勝を祝って12月3日が祝日に
11月30日に行われたマレーシアカップ決勝では、Mリーグ優勝との2冠達成を目指したJDTをKLシティFCが2-0で破り、前身のクアラルンプールFAから数えて32年振りとなるマレーシアカップ優勝を果たしていますが、これを祝してクアラルンプールを含む連邦直轄地では12月3日が祝日になることが発表されています。
昨日急遽、開かれた記者会見でシャヒダン・カシム連邦直轄地担当大臣は、クアラルンプールだけでなくプトラジャヤ、ラブアンも含めた全ての連邦直轄地で12月3日が祝日となると発表しています。マレーシアにはどの州にも属さない政府の直轄地(マレーシアは連邦制をとっていることから連邦直轄地と呼ばれています。)があり、首都クアラルンプール、行政府が集まるプトラジャヤ、そして東マレーシア(ボルネオ島)の沖にあるオフショア金融センターのラブアン島がこれにあたります。
マレーシアカップ決勝前にはJDTが勝てばジョホール州の祝日を設けるとジョホール州首相も話しており、サッカーで勝ったから祝日!というのはマレーシアでは「あるある」なのですが、前任者のアヌアル・ムサ前連邦直轄地大臣、そしてその前任者であるカリド・サマド元連邦直轄地大臣とともにスタンドでマレーシアカップ決勝を観戦しながら、前任者の2人はフィールドでの表彰式に呼ばれて参加した一方で、自分だけが呼んでもらえなかったといった愚痴を試合後に自身のFacebookに投稿したシャヒダン連邦直轄地担当大臣による発表だけに、祝日制定自体は合法とはいえ政治家特有の人気取りパフォーマンス的な面もありそうです。ちなみにアヌアル前連邦直轄地大臣はKLシティFCの会長、カリド元連邦直轄地大臣はクアラルンプールサッカー協会会長を務めています。
サバFCが来季に向けて大型補強を敢行
今季のMリーグ1部スーパーリーグでは4勝7分け11敗で9位に終わったサバFCが次々と大物選手を獲得しています。昨季に続き今季も指揮を取ったインドネシア出身のクルニアワン・ドゥイ・ユリアント監督が後半戦10試合を0勝3分7敗としたことからリーグ閉幕後に解任され、マレーシアサッカー協会FAMのテクニカルディレクターを務めていたオン・キムスイ監督が10月1日付で就任したサバFCは、マレーシアカップではグループステージを突破し、マラッカ・ユナイテッドFCに敗れたもののベスト8に進出しています。
2009年から2018年までU22やU23代表監督を務めてきたオン監督は、各年代に指導した選手がいることから、サバFCはその人脈を使った大型補強を次々と発表しています。2011年にインドネシアのジャカルタで開催された東南アジア競技大会通称シーゲームズの男子サッカーでマレーシアは優勝していますが、この大会に出場したU23代表の指揮を取ったのがオン監督のもとで主将を務めたMFバドロル・バクティアルが同じ1部スーパーリーグで今季2位のクダ・ダルル・アマンFCから移籍する他、2018年のAFC U23選手権(現U23アジアカップ)予選で監督を務めたU23代表の主将DFドミニク・タンも出場機会がなかったタイ1部のポリス・テロFCからの移籍が決まっています。
この他FAMのテクニカルディレクター時代に設立に関わったFAM-MSNプロジェクト(2部プレミアリーグ)でプレーし、今季リーグ戦でマレーシア人選手としてはリーグ2位の8ゴールを挙げた18歳のFWアズハド・ハラズの獲得のために地元サバ州サンポルナ出身のアズハド選手の実家を電撃訪問するなど、今季は得点はリーグ8位、失点はリーグ9位と降格した11位のチームとは勝点差がわずか3だったチームの立て直しを図るオン監督ですが、バドロル、タンの両代表選手やU22代表のアズハド選手に加え、今後も代表クラスの加入が噂されているサバFCは来季の台風の目になることは間違いなさそうです。
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2部プレミアリーグから1部スーパーリーグへ昇格した際に、それまでクラブレベルでの指導経験がなく、インドネシアU23代表のアシスタントコーチの経験しかなかったクルニアワン・ドゥイ・ユリアント氏を監督に据えた時点で既にサバFCは失敗していたようにも思えます。また昨季の10位から捲土重来を期したクルニアワン氏でしたが、インドネシア代表では歴代2位の33ゴール(キャップ数59)を挙げている「レジェンド」にとっては、期待していた自国代表のFWサディル・ラムダニがケガによりシーズン途中で脱落するなどの誤算もあり、今季を最後まで全うすることができませんでした。
ペラFCの給料未払いは新オーナーが10日以内の解決を約束
今季開幕直後から給料未払いが発覚し、大半の主力選手がシーズン途中に退団したことから今季のMリーグ1部スーパーリーグでは11位となり、来季の2部プレミアリーグ降格が決まっているペラFCですが、先日のこのブログでもニュースとして取り上げたように広告会社のインパクトメディアアンドコミュニケーション社(IMC社)がクラブの株式100%を購入して新たなオーナーとなっています。
このIMC社に株式を譲渡したペラ州サッカー協会PAFAを統括するペラ州政府青年・スポーツ・コミュニケーション・マルチメディア委員会のカイルル・シャーリル委員長は、既に3ヶ月分を超えるとされる未払い給料について、IMC社がこの問題解決の時間を必要としているとして10日の猶予を与えたと話しています。なおペラFCの給料未払い問題に関しては、マレーシアプロサッカー選手会PFAMも選手から訴えがあったことを明らかにしています。
また、このIMC社への株式譲渡にはペラ州サッカー協会メンバーの総意を得られないまま譲渡が決定したとして、臨時総会の開催を求めた協会傘下の地区サッカー協会の代表者12名をムハマド・ヤザン会長代行が評議員から免職処分を下すと、この12名が独自に臨時総会を告知する泥試合となっており、ペラFCを取り巻く問題はまだまだ一件落着とはならなそうな気配です。